(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1.3mgナロキソンHClもしくは1.4mgナロキソンHClもしくは1.5mgナロキソンHClまたは1.6mgナロキソンHClに相当する量のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が鼻腔内投与される、請求項1に記載の剤形。
前記量または前記量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含み、該含む量は、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または2つの鼻孔への投与によって供給されるかに依拠する、請求項1から6のいずれかに記載の剤形。
前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または2つの鼻孔への投与によって供給されるかによって、単一の投薬単位または2つの投薬単位を含み、単回使用用である、請求項7に記載の剤形。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、ナロキソンのバイオアベイラビリティがかなり高く、迅速な作用発現および比較的長時間の作用を伴う、ナロキソンを含む医薬剤形を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するためのかかる剤形を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、かかる剤形の投薬単位用に特定の体積中に溶解した特定の量でナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を使用することにある。
【0016】
これらのおよび他の目的は、以下の説明から明らかになるとおり、各独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態のうちのいくつかに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、1つの態様において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦250μlの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻腔内医薬剤形に関する。
【0018】
好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は≧0.6mgに相当する。
【0019】
別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する。
【0020】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給されるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻腔内医薬剤形に関する。
【0021】
さらに好ましい実施形態において、適用流体の体積は≦200μlである。
【0022】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、0.6mgナロキソンHCl〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内である。前記範囲は、0.5mgナロキソンHCl〜20mgナロキソンHClに相当する範囲内、もしくは0.5mgナロキソンHCl〜15mgナロキソンHClに相当する範囲内、または0.5mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範囲内とすることもできる。最も好ましいのは、約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する範囲である。
【0023】
別の好ましい実施形態において、約1.3mgナロキソンHClもしくは約1.4mgナロキソンHClもしくは約1.5mgナロキソンHClまたは約1.6mgナロキソンHClに相当する量のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給されるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積は≦250μlである。
【0024】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしくは250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlもしくは100μlまたは50μlである。場合によっては、体積75μlを使用することもできる。
【0025】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、0.6mgナロキソンHCl、もしくは0.7mgナロキソンHCl、もしくは0.8mgナロキソンHCl、もしくは1.2mgナロキソンHCl、もしくは1.4mgナロキソンHCl、または1.6mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、200μl〜50μl、好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。以下も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.9mgナロキソンHCl、もしくは1.0mgナロキソンHCl、もしくは1.1mgナロキソンHCl、もしくは1.8mgナロキソンHCl、もしくは2.0mgナロキソンHCl、または2.2mgナロキソンHClに相当し、上記の体積範囲が適用可能である。
【0026】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0027】
好ましくは、本明細書に特許請求するとおりの鼻腔内剤形の投薬単位は、1つの鼻孔に投与される。したがって、好ましくは、上記の量のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩は、1つの鼻孔への投与によって供給される。
【0028】
鼻孔が2つ存在するため、下記で定義される1つの適用ステップは、2つの投薬単位の各々を2つの鼻孔の1つずつに連続投与することからなるものとすることができる。次に述べる好ましい実施形態は、かかる適用ステップ、すなわち2つの鼻孔への連続投与に関する。最も好ましくは、2つの鼻孔への連続投与によるかかる適用ステップは、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量のナロキソンの鼻腔内投与となる。
【0029】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、0.6mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜3mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜1.8mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜1.0mgナロキソンHClに相当する範囲内である。前記範囲は、0.5mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範囲内、もしくは0.5mgナロキソンHCl〜7.5mgナロキソンHClに相当する範囲内、または0.5mgナロキソンHCl〜5mgナロキソンHClに相当する範囲内とすることもできる。
【0030】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしくは250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlまたは100μlである。場合によっては、体積75μlを使用することもできる。
【0031】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、0.6mgナロキソンHCl、もしくは0.7mgナロキソンHCl、または0.8mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、200μl〜50μl、好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。以下も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.9mgナロキソンHCl、もしくは1.0mgナロキソンHCl、または1.1mgナロキソンHClに相当し、上記の体積範囲が適用可能である。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0033】
鼻孔が2つ存在するため、下記で定義される1つの適用ステップは、2つの鼻孔のうち1つのみへの単一の投与からなるものとすることができる。次に述べる好ましい実施形態は、かかる適用ステップ、すなわち1つの鼻孔のみへの単一の投与に関する。最も好ましくは、1つの鼻孔のみへのかかる適用ステップは、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量のナロキソンの鼻腔内投与となる。
【0034】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、1.2mgナロキソンHCl〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは1.2mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは1.2mgナロキソンHCl〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ましくは1.2mgナロキソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内である。前記範囲は、1.0mgナロキソンHCl〜20mgナロキソンHClに相当する範囲内、もしくは1.0mgナロキソンHCl〜15mgナロキソンHClに相当する範囲内、または1.0mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範囲内とすることもできる。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしくは250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlまたは100μlである。場合によっては、体積75μlを使用することもできる。
【0036】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、1.2mgナロキソンHCl、もしくは1.4mgナロキソンHCl、または1.6mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、200μl〜50μl、好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。以下も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、1.8mgナロキソンHCl、もしくは2.0mgナロキソンHCl、または2.2mgナロキソンHClに相当し、上記の体積範囲が適用可能である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0038】
上記のすべての実施形態に関連するまた別の好ましい実施形態において、適用流体は、水、任意選択で医薬溶媒を含む水性溶液剤、医薬溶媒および共溶媒を含む水性溶液剤、および水性食塩溶液を含む群から選択される。好ましくは、水性食塩溶液は、NaCl溶液、より好ましくは濃度約1.0%重量/体積のNaClの精製水溶液、最も好ましくは濃度約0.9%重量/体積のNaClの精製水溶液である。好ましくは、適用流体のpH値は、pH≦約6.0、好ましくはpH≦約5.8、より好ましくはpH≦約5.6、最も好ましくはpH≦約5.5に相当する。
【0039】
別の好ましい実施形態において、剤形は、少なくとも2つの投与単位、好ましくは少なくとも3つの投与単位、より好ましくは少なくとも4つの投与単位、最も好ましくは少なくとも5つの投与単位を含む。剤形は1つの投与単位のみを、または厳密に2つ、3つ、4つまたは5つの投与単位を含むこともできる。一般的に、剤形は、上記の量または前記量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含むことができ、その量は、前記全量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、2つの鼻孔への投与によって供給されるかに依拠する。したがって、前記量が1つの鼻孔に投与される場合、剤形は、好ましくは前記全量を適用流体中に溶解して投薬単位中に含む。前記量が2つの鼻孔に投与される場合、剤形は、好ましくは前記全量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含む。
【0040】
好ましくは、単一の適用ステップが2つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間に相当する量で含む。約0.65mg、約0.70mg、約0.75mgまたは約0.80mgが特に好ましいとすることができる。
【0041】
好ましくは、単一の適用ステップが1つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量で含む。約1.30mg、約1.35mg、約1.40mg、約1.45mg、約1.50mg、約1.55mgまたは約1.60mgが特に好ましいとすることができる。
【0042】
前記量が1つの鼻孔に投与される場合、剤形は単一の投薬単位のみを含むものでもよく、したがって単回使用用とすることができる。前記量が2つの鼻孔に投与される場合、剤形は2つの投薬単位を含んでもよく、やはり単回使用用とすることができる。しかし、前記剤形は少なくとも2つの投薬単位、好ましくは少なくとも3つの投薬単位、より好ましくは少なくとも4つの投薬単位、最も好ましくは少なくとも5つの投薬単位を含むこともでき、したがって複数回使用用とすることができる。
【0043】
さらに別の好ましい実施形態において、剤形は、鼻内噴霧剤(噴霧器具と呼ぶこともできる)、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具(Mucosal Atomizer Device)を含む剤形の群から選択される。鼻内噴霧剤が、本発明には特に好ましいとすることができる。前記鼻内噴霧剤は、とりわけ、シリンジ駆動の噴霧器具またはポンプ駆動の噴霧器具とすることができる。
【0044】
好ましくは、剤形はナロキソンを唯一の医薬活性剤として含む。したがって、剤形に含まれうるさらなる医薬活性剤(複数可)(たとえばエピネフリンなど)はない。
【0045】
また別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンのバイオアベイラビリティは高く、静脈内投与したナロキソンのバイオアベイラビリティを100%としてこれを基準に算出した場合のバイオアベイラビリティが、好ましくは約20%〜約40%、より好ましくは約25%〜約35%である。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンの作用発現は迅速であり、すなわちtmaxが短く、好ましくは迅速な作用発現は、投与して約5分〜約18分以内、好ましくは投与して約5分〜約12分以内、より好ましくは投与して約5分〜約10分以内、最も好ましくは投与して約6分以内である。
【0047】
また別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンの血漿内半減期は長く、すなわち排出パターンが緩慢であり、好ましくは血漿内半減期は投与して約1.5時間〜約9時間、より好ましくは血漿内半減期は投与して約2.5時間〜約9時間、最も好ましくは血漿内半減期は投与して約4時間〜約9時間である。ヒトにおける活性剤ナロキソンの血漿内半減期は、本発明による剤形を投与して約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間または約9時間とすることもできる。
【0048】
本発明は、第2の態様において、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療に関する。
【0049】
したがって、前記態様において、上記のすべての好ましい実施形態を含む上記の剤形は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するためのものである。
【0050】
特に好ましい実施形態では、本発明は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するための、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給されるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦約250μl、好ましくは≦約200μlである、鼻腔内医薬剤形に関する。
【0051】
したがって、本発明は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療方法であって、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が、体積≦250μlの適用中≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、鼻腔内投与される治療方法にも関する。
【0052】
オピオイド過量投与の原因は、ヘロイン、ブプレノルフィン、メタドン、フェンタニル、オキシコドン、モルヒネおよびヒドロモルホンの乱用である場合がある。したがって、オピオイド過量投与はオピオイドの不正使用によって生じる場合がある。しかし、オピオイド過量投与は、オピオイド療法中にオピオイドの誤用事故によって生じることもある。
【0053】
好ましい実施形態において、オピオイド過量投与の症状は、呼吸抑制、場合により術後のオピオイドによる呼吸抑制、意識レベルの変化、縮瞳、低酸素血症、急性肺損傷および誤嚥性肺炎を含む群から選択される。
【0054】
さらに好ましい実施形態において、剤形は、有効量のナロキソンを供給するために初期力価測定時間中に再適用される。したがって、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状を治療するために使用される場合、有効量のナロキソンを供給するために、初期力価測定時間中に上記の量を再投与することができる。好ましくは、前記初期力価測定時間は、最初の適用ステップから約15〜約30分の間である。オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状を治療するのに有効な量のナロキソンを供給するために、本発明による剤形を、2回、3回、4回、5回または6回さえも再適用するのが好ましいとすることができる。
【0055】
別の好ましい実施形態において、本発明による剤形は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形と組み合わされる。前記筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約0.4mg〜約2mgの範囲の量で含むのが好ましいとすることができる。
【0056】
本発明は、1つの態様において、≧1.0mgナロキソンHClに相当する量、好ましくは約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間の量、または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間の量で、鼻腔内医薬剤形の投薬単位中の体積≦250μlの適用流体中に溶解した、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の使用にも関する。
【0057】
好ましい実施形態において、上記のすべての量のナロキソンおよびすべての体積の適用流体は、鼻腔内医薬剤形の投薬単位中に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、部分的には、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を体積≦250μlの適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形が、かなりのバイオアベイラビリティ、迅速な作用発現および比較的緩慢な排出パターンを示すという驚くべき発見に属する。
【0060】
したがって、オピオイド過量投与における使用のために、かかる鼻腔内剤形は、投薬単位中にオピオイドの作用を相殺するのに有効な量のナロキソンを含むことができ、当該剤形は、上記の薬物動態パラメーター、すなわちかなりのバイオアベイラビリティ、迅速な作用発現および比較的緩慢な排出パターンを備えた使いやすく安全な剤形である。
【0061】
本発明の実施形態のいくつかをより詳細に説明する前に、次の定義を提起しておく。
【0062】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「a」および「an」は、文脈上明らかに他の意味が示されていない限り、対応する複数形も含む。
【0063】
本発明の内容における「約(about)」および「ほぼ(approximately)」という用語は、当業者が理解して、引き続き当該の特徴の技術的な効果を確保するであろう、ある区間の正確度(interval of accuracy)を意味する。この用語は、通常、示された数値からの±10%および好ましくは±5%の差を示す。
【0064】
「含む(comprising)」という用語は制約を与えるものではないことを理解される必要がある。本発明においては、「からなる(consisting of)」という用語は「からなる(comprising of)」という用語の好ましい具現化であると考えられる。以下で、ある群が少なくともある数の実施形態を含むと定義される場合、この群は、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を包含することも意図される。
【0065】
本明細書で言及される「ナロキソン」は、業務用として入手可能な麻薬拮抗薬であり、外因的に投与されたオピオイドの遮断のために必要である。これはすべてのオピオイド受容体部位(μ、κおよびδ)で作用する。経口投与後、ナロキソンは迅速に吸収される(5〜30分以内に)が、初回通過代謝の量が多いため、経口バイオアベイラビリティが<3%と非常に低い。経口での低用量では、ナロキソンは全身的に有効にはならないが、胃腸管内の局所的なオピオイド受容体に主に作用する。オピオイド過量投与の症例において、ナロキソンは乱用されたオピオイドの効果を逆行し、したがって、過量投与を治療するために使用される。
【0066】
ナロキソンの「薬学的に許容される塩」という用語は、たとえば塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フメレート(fumerate)塩、コハク酸塩などのことである。ナロキソンは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムを含むアルカリ金属の金属塩などの塩基性付加塩として存在することもできる。好ましい塩は、ナロキソンの塩酸塩である。
【0067】
本明細書で使用する「鼻腔内剤形」という用語は、活性剤を鼻内に放出する医薬剤形として定義される。放出されると、その後活性剤は鼻粘膜を介して体循環の中へと輸送される。通常、特定の投薬単位または計量した体積が、1つの投与ステップにつき鼻の1つの鼻孔に鼻腔内剤形から適用される。完成した投薬単位または完璧に計量した体積を供給するために、投与前に鼻腔内剤形の少なくとも1つの準備ステップを実施することが必要な場合がある。鼻内噴霧剤の場合、これはたとえば、噴霧剤のポンプが、計量した適用されるべき体積で完璧に充填されるまで、少なくとも1回、鼻内噴霧剤を鼻の外にポンプで放出することを意味する。
【0068】
本明細書で使用する「投薬単位」という用語は、単一の投与ステップで1つの鼻孔に投与される特定の量の活性剤のことである。以下に記載するとおり、かかる量は、オピオイド過量投与を治療する初期ステップにおいて、たとえば1つの鼻孔当たり0.6mgナロキソンHClとすることができる。好ましくは、前記量は、単一の適用ステップで全量が投与によって1つの鼻孔のみに供給される場合、投薬単位中約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当するものとすることができる。または、前記量は、単一の適用ステップで全量が2つの鼻孔への投与によって供給される場合、投薬単位中約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間に相当するものとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が適用流体中に溶解して特定の最終濃度になるため、単一の投与ステップにつき投与される量は、投与されるべき特定の体積に相当する。本発明において、前記体積は好ましくは≦200μlである。
【0069】
本発明の鼻腔内剤形は、たとえば鼻内噴霧剤とすることができる。鼻内噴霧剤は、ほとんどの場合≦200μlの最終体積を含むだけにはならないことは当業者には明らかである。むしろ、前記鼻内噴霧剤は、たとえば1.5mlを含むことができ、1つの投与ステップにつき、すなわち適用ごとに計量した体積として、たとえば100μlの体積が投与される。上記のとおり、噴霧剤の準備が適用前に必要となる場合がある。
【0070】
2つの鼻孔が存在するため、鼻腔内剤形は、2つの連続ステップに分かれた投与レジメン、すなわち1つの鼻孔に投与されることになる、活性剤の半分量の第1の投与ステップ、その後のもう1つの鼻孔内への残り半分の投与で投与することができることを、当業者は承知している。この「分かれた」方式の投与は、1つの鼻孔当たり、より小さい体積を使用することができるため、本発明にとって好ましい。
【0071】
したがって、特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が2つの鼻孔への投与によって供給され、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻腔内医薬剤形に関する。したがって、1つの鼻孔当たり約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間に相当する量を投与して、上記の全量に到達させることができる。
【0072】
しかし、単一の投与ステップで1つの鼻孔内に活性剤を投与することもできる。2つの鼻孔に分かれた投与の場合と同様に、1つの鼻孔当たりに同一体積を使用するため、この場合、投与流体中の活性剤の濃度は、同じ量の活性剤を供給するために濃度を2倍にする必要があることが当業者には自明である。
【0073】
したがって、別の特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む鼻腔内医薬剤形であって、1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給され、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻腔内医薬剤形に関する。したがって、1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量を、1つの鼻孔のみに投与することができる。
【0074】
一般的に、医薬剤形は、特定の効果を達成するために、活性剤を特定の量で含む。したがって、活性剤は、たとえば、錠剤、すなわち経口剤形中に10mgの量で含まれうる。かかる錠剤を、1つの適用ステップで患者に投与することによって、10mgの有効量が患者の身体中に供給される。既に上述したとおり、活性剤の鼻腔内投与については、2つの鼻孔が存在するため、状況が異なる。この点で、当然ながら、鼻腔内投与される活性剤の最終的な量は、投与レジメンが1つの鼻孔のみへの単一の投与ステップを含むのか、2つの鼻孔への2つの連続投与ステップを含むのかに関係なく、常に治療的に活性な量である。単一の投与ステップでも、2つの連続投与ステップでも、どちらの方式も、所望される治療的に活性な量、たとえば1.2mgまたは1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量を供給するという意味で、本明細書においては「1つの適用ステップ」と呼ぶ。
【0075】
本明細書で使用する「適用流体」という用語は、好ましくは、活性剤を溶解した状態で含む溶液のことである。しかし、本明細書で使用する「適用流体」は、液相全体にわたって分散した固相中に活性剤の少なくとも一部(および任意選択でさらなる成分)を含む懸濁液のことを指すこともできる。したがって、懸濁液について述べる場合、「溶解した」という用語は「分散した」の意味で使用される。下記のとおり、使用される製剤は、ゲルまたはゲル様の製剤とすることもできる。したがって、「適用流体」という用語は、ゲルまたはゲル様の相のことでもある。
【0076】
本明細書で使用する「バイオアベイラビリティ」という用語は、体循環中の活性剤の広がりおよび活性剤が体循環に入る率を表す。種々の剤形に関する活性剤のバイオアベイラビリティは、とりわけ、分析対象の剤形(たとえば鼻腔内剤形)から得られるAUCt値(下記参照)を静脈内用剤形から得られるAUCt値と比較することによって評価することができる。したがって、%で表されるバイオアベイラビリティは、分析対象の剤形のAUCt値および静脈内用剤形のAUCt値を除算し、係数100を乗じて計算することができる。
【0077】
「Cmax値」とは、活性剤ナロキソンの最高血漿中濃度を指す。
【0078】
「tmax値」とは、Cmax値に到達する時点を指す。換言すれば、tmaxは最高血漿中濃度が観察される時点である。
【0079】
「AUC(曲線下面積)」値は、血漿中濃度−時間曲線下面積に相当する。AUC値は、血液循環中に吸収される活性剤ナロキソンの合計量に比例し、このため、バイオアベイラビリティの尺度となる。
【0080】
「AUCt値」とは、投与時から測定可能な最終濃度までの血漿中濃度−時間曲線下面積の値である。AUCt値は、通例、線形台形法を使用して計算される。
【0081】
「λZ」とは終末相速度定数のことであり、終末対数−線形相中にあると判定されるそれらの箇所を使用して推定する。
【0082】
「t1/2」とは「t1/2z」とも呼ばれ、見かけの終末相半減期であり、通常ln2対λZの比率から求められる。
【0083】
最終測定点と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、観察される最終血漿中濃度(Clast)対λZの比率から計算することができる。次いで、これをAUCtに加算して「AUCinf」を得る。これは、投与時から無限大までの血漿中濃度−曲線下面積である。
【0084】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載する鼻腔内医薬剤形は、投与されると、短いtmaxで示されるとおり体循環中に早期に出現し、これに加えて体循環中のナロキソンの血漿半減期が比較的長いということを発見した。さらに、本発明による剤形は、約25%と約35%との間の範囲の適度に高いバイオアベイラビリティも示す。
【0085】
科学的な理論に縛られるものではないが、本発明者らは、現在のところ、早期tmaxおよび/もしくは比較的長い排出半減期(すなわちナロキソンの持続作用)ならびに/またはかなり高いバイオアベイラビリティという前記顕著な効果は、血管分布の度合いが高い鼻粘膜でナロキソンの全量が迅速に吸収されるためであろうと考える。この効果を達成するためには、ナロキソンを小体積で投与し、それにより、嚥下(これはバイオアベイラビリティが低い経口投与に該当することになる、上記を参照)、鼻孔からの漏出などによる損失を回避することが必須であると思われる。したがって、好ましくは0.5ml未満の小体積の適用流体、より好ましくは0.25ml未満の小体積の適用流体が投与に使用されるべきである。一般的に、体積は、30μl〜400μl、35μl〜350μl、40μl〜300μl、50μl〜250μl、60μl〜200μl、70μl〜150μlまたは80μl〜120μlの範囲とすることができる。
【0086】
本発明は、緊急事態における即時医療という背景において、明言するとオピオイド過量投与の場合において経験されるべきものである。ほとんどの場合、過量投与の原因はオピオイドの静脈内投与による乱用であり、乱用者が意識消失する場合がある。本発明を手近に用意しておけば、オピオイドの過量投与を相殺するために、安全で効果的な方法で、すなわち鼻腔内投与によって、ナロキソンを投与することができる。
【0087】
さらに、ナロキソンは、過量投与の状況に直面した場合即時に、オピオイド嗜癖者の家族、友人またはケアラーが投与することができる。したがって、救急医療関係者が到着する前でも治療を開始することができ、このため、過量投与の致死的転帰または過量投与による主な続発症のリスクが明らかに低減される。したがって、かかる状況において、家族、友人または他のケアラーは、オピオイドの過量投与の可能性のある対象とともに生活する場合、本発明による鼻腔内剤形を備えておくべきである。
【0088】
ナロキソンは、オピオイドの効果を相殺するのに十分な濃度で乱用者の体循環中に存在する必要があるため、有効量のナロキソンが1つの適用ステップで供給されなければならない。しかし、乱用者および過量投与の重症度によってこの有効量は変化する。したがって、有効量に到達するまで、比較的短時間内に適用ステップを繰り返すことによる力価測定を実施することが必要な場合がある。
【0089】
通常、有効量のナロキソンは、対象の呼吸数を評価することによって決定することができ、呼吸数の増加はナロキソンの相殺効果を示す。かかる増加が最初のナロキソン用量の投与後約5〜約10分時点で検出可能にならない場合、第2の用量を投与してから、再び対象の呼吸数を評価するべきである。ナロキソンが有効用量に到達するために2つ以上の適用ステップが必要である場合、通常これを「力価測定」という。本件の場合、かかる力価測定ステップは、通例、最初の15〜20分以内に実施される。
【0090】
オピオイド過量投与および/またはその症状を治療する場合、ナロキソンの静脈内投与用の特に好ましい標準的な開始量は約0.4mgIVに相当する(本願の実施例2も参照)。驚くべき本発見(たとえばナロキソンの鼻腔内投与時のバイオアベイラビリティに関する)によると、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するための、鼻腔内投与されるナロキソンの最も好ましい開始量は、したがって、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量に該当する(前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給される)。約1.3mgナロキソンHCl、約1.4mgナロキソンHCl、約1.5mgナロキソンHClおよび約1.6mgナロキソンHClに相当する量のナロキソンが、標準的な開始量として特に好ましいとすることができる。
【0091】
有効量のナロキソンの別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約1.2mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0092】
したがって、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0093】
または、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0094】
他に、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0095】
有効量の別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約1.6mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0096】
したがって、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0097】
または、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき10.7mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき10.7mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき10.7mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0098】
他に、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0099】
有効量のさらに別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約2.4mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0100】
したがって、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0101】
または、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0102】
他に、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0103】
有効量のさらに別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約3.2mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0104】
したがって、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0105】
または、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき21.4mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき21.4mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき21.4mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0106】
他に、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1mlにつき32mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき32mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき32mgナロキソンHClに相当する濃度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0107】
4mgナロキソンHCl、6mgナロキソンHCl、8mgナロキソンHCl、10mgナロキソンHCl、12mgナロキソンHCl、14mgナロキソンHClまたは16mgナロキソンHClに相当する量で開始するのも好ましいとすることができ、前記量は、好ましくは、1つの適用ステップで、2つの鼻孔に2つの連続投与をするために2×100μlの適用流体で供給される。開始点として、鼻腔内投与される1mgまたは2mgナロキソンHClに相当する量は除外するのが好ましいとすることができるであろう。
【0108】
当然のことながら、上記の第2の投与ステップ、すなわち第2の鼻孔への連続投与は、本発明において、力価測定のための反復投与とはみなされない。正確に言うと、上記のとおり、第1の鼻孔への投与と第2の鼻孔への投与とは1つの適用ステップとみなされる。
【0109】
概して好ましいとすることができるのは、各投与ステップが100μlの適用流体を含む、2つの鼻孔への2つの連続投与ステップからなる1つの適用ステップで、ナロキソンを投与することである。さらに、好ましいとすることができるのは、かかる適用ステップでは、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の濃度が、適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき80mgナロキソンHClとに相当する濃度間、好ましくは適用流体1mlにつき10mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClとに相当する濃度間、より好ましくは適用流体1mlにつき20mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき60mgナロキソンHClとに相当する濃度間、最も好ましくは適用流体1mlにつき20mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき50mgナロキソンHClとに相当する濃度間であるということである。この構成において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の特に好ましい濃度は、適用流体1mlにつき18mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき20mgナロキソンHClとに相当する濃度間である。
【0110】
開始用量がナロキソンの有効用量として不十分である場合、別の適用ステップが必要になることがある。この場合、有効量になるまで力価測定を実施する(上記を参照)。したがって、第2の用量を投与する場合があり、前記第2の用量は、好ましくは投与した最初の第1の用量に相当する。すなわち1.2mgナロキソンHCl、1.6mgナロキソンHCl、2.4mgナロキソンHClまたは3.2mgナロキソンHClに相当するものとすることができる。好ましい実施形態において、前記第2の用量は、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量に該当するものとすることができる(前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給される)。
【0111】
第1の用量についてと同様に、第2の用量の投与は、単一の投与ステップのみ、すなわち1つの鼻孔への投与を含んでもよく、1つの適用ステップを提供するための、2つの鼻孔への2つの連続投与ステップを含んでもよい。
【0112】
一部の症例において、所望の効果を達成するために、ナロキソンの第3の用量または第4もしくは第5の用量さえをも別々の適用ステップで適用することが必要な場合がある。
【0113】
当然のことながら、上記のすべての適用ステップは、初期治療段階中に、通常最初の約15〜約30分以内に実施されるステップとして経験されるものである。既に上述したとおり、本発明者らは、驚くべきことに、緩慢な排出パターンが本発明によって達成されることを発見した。したがって、ナロキソンの反復投与は必要でない場合がある。
【0114】
しかし、過量投与の症例によっては、相殺効果を維持するために、ナロキソンを鼻腔内にまたは異なる経路で再投与することが必要な場合がある。かかる再投与は、たとえば最初の投与から約2時間後、3時間後、4時間後、5時間後または6時間後に必要な場合がある(最初の投与は初期力価測定中にいくつかの適用ステップを含んでもよい)。
【0115】
ナロキソンを鼻腔内経路で再投与する場合、上記と同じ用量および体積を使用することができる。したがって、前記再投与の用量は、好ましくは、投与された第1の用量に相当する。
【0116】
別の好ましい実施形態において、本明細書に記載する鼻腔内医薬剤形のうち少なくとも1つは、ナロキソンを含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形と組み合わされる。したがって、鼻腔内医薬剤形は、ナロキソンを含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形の投与の前または後に投与することができる。かかる組合せ投与は、治療すべき対象の状態によって必要な場合があり、通例、熟練した医療関係者によって判断されるであろう。本鼻腔内投与を筋肉内投与および/または静脈内投与と組み合わせる場合、約0.4mg〜約2mgのナロキソンが筋肉内および/または静脈内に投与されるのが好ましいとすることができる。
【0117】
本発明の実施例の部分から推論することができるとおり、小体積中に溶解したナロキソンを含む鼻腔内剤形のtmaxは短く、バイオアベイラビリティは高く、排出半減期は比較的長い。
【0118】
ナロキソンを含む経口剤形と比較して、本発明の鼻腔内剤形が示すバイオアベイラビリティは、少なくとも約10倍高いようである。さらに、tmaxは経口剤形のtmaxと比較してより短いようである。
【0119】
静脈内投与したナロキソンのバイオアベイラビリティを100%とし(基準として使用する)、これと比較すると、本発明の剤形のバイオアベイラビリティは適度に高いようである。静脈内投与したナロキソンは、約1〜2分以内に迅速な作用発現をするが、本発明の剤形による作用発現よりわずかに速いだけのようである。
【0120】
本発明の実施例の部分に記載する試験によって立証されたとおり、静脈内投与したナロキソンの排出半減期は約60〜90分である。静脈内投与したナロキソンの排出半減期がこのようにやや短いため、オピオイド過量投与の症状、たとえば呼吸抑制などの再発を回避するために、反復投与または持続注入が必要となる。
【0121】
明らかに、この静脈内の再投与または持続注入には、繰り返される針刺し損傷の危険を扱うのに適格な医療関係者の必要性またはかかる関係者による持続注入の監視の必要性などの欠点が伴う。本発明の鼻腔内剤形の排出半減期は約数時間であるため、このような欠点は本発明の剤形によって克服することができる。
【0122】
したがって、本発明の医薬剤形は、過量投与および/またはその症状、たとえば呼吸抑制などを逆行させるために、オピオイド過量投与の場合において投与するのに特に好適であると思われる。
【0123】
好ましくは、鼻腔内剤形は、鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形または粘膜用霧状化器具であり、これらはすべて、熟練した医療関係者だけでなく、医療に未熟練の人でも容易に投与することができる。本適応症にとって、鼻腔内剤形は仰臥位でも体を起こした姿勢でも機能することが可能な器具に対応することが好ましく、かかる器具は本発明において明らかに好ましい(上記の器具も参照)。
【0124】
鼻腔内剤形中に使用される製剤は、溶液剤、懸濁剤または鼻用ゲル/ゲル様製剤とすることができる。ゲルまたはゲル様製剤は、ナロキソンの追加の徐放が意図される場合に特に使用することができる。
【0125】
鼻腔内用製剤中に使用される標準的な医薬品添加剤は当業者に公知であり、本発明による製剤に使用することができる。これには当業者に公知の吸収/浸透エンハンサーおよび結合剤、担体などが含まれる。当業者は、他の標準的な試剤、たとえば等張化剤、緩衝剤、溶媒、共溶媒、粘稠剤またはゲル化剤を製剤中に使用することができることをさらに承知している。
【0126】
鼻内噴霧剤の使用は特に好ましい。したがって、たとえばナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、≧0.6mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦200μlの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻内噴霧剤を使用することができる。特に好ましいとすることができるのは、鼻内噴霧剤の投薬単位1つにつき体積100μlの適用流体中0.6mgナロキソンHClの使用である。したがって、2つの鼻孔への2つの連続投与を含む1つの適用ステップを行うと、1.2mgの量のナロキソンHClを供給することになる。最も好ましいのは、約0.65mgナロキソンHClと0.8mgナロキソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量である。
【0127】
または、鼻内噴霧剤の投薬単位1つにつき体積100μlの適用流体中0.8mgナロキソンHClを使用することができる。したがって、2つの鼻孔への2つの連続投与を含む1つの適用ステップを行うと、1.6mgの量のナロキソンHClを供給することになる。鼻内噴霧剤は合計で少なくとも600μlを含むことができ、これは少なくとも5つの投与単位およびたとえば準備のために必要な残余の体積として十分であると思われる。明らかに、初期力価測定用または後の段階での適用のための再適用が、かかる噴霧剤を使用して可能になるべきである。
【0128】
一般的に、投薬単位1つにつき次の体積を本発明による鼻内噴霧剤中に特に使用することができる。約25μl、約50μl、約70μl、約90μl、約100μl、約120μl、約130μlまたは約140μl。
【0129】
血漿曲線を説明するパラメーターは、臨床試験において、最初に複数の試験対象者に1回限定で活性剤ナロキソンを鼻腔内投与することによって得ることができる。次いで各試験対象者の血漿値の平均値を取り、たとえば平均AUC、Cmaxおよびtmax値が得られる。本発明の内容において、AUC、Cmaxおよびtmaxなどの薬物動態パラメーターは平均値を表す。さらに、本発明の内容において、AUC、Cmax、tmaxの値などのin vivoパラメーターは、ヒト患者および/または健常なヒト対象への単一用量の投与後に得られるパラメーターまたは値を表す。
【0130】
平均tmax、CmaxおよびAUCなどの薬物動態パラメーターを健常なヒト対象について測定する場合、これらは通常、ほぼ10〜25人の健常なヒト対象の試験集団において経時で血漿値の動きを測定することによって得られる。European Agency for the Evaluation of Medicinal Products(EMEA)またはFood and Drug Administration(FDA)などの規制機関は、通例、たとえば20〜24人の試験対象者から得たデータを承認するであろう。好ましくは、得られるパラメーターは単一用量投与の試験に関する。
【0131】
この文脈において「健常な」ヒト対象という用語は、身長、体重および血圧などの生理学的なパラメーターに関する値が平均的な、通例コーカシアン起源の標準的な男性または女性のことを指す。本発明において、健常なヒト対象は、International Conference for Harmonization of Clinical Trials(ICH)の推奨に基づき、これに準拠する組み入れ基準および除外基準によって選択される。本発明においては、健常な対象は、実施例の部分で概説する組み入れ基準および除外基準によって特定することができる。
【0132】
さらに好ましい本発明の実施形態は、以下に関する。
【0133】
1.適用流体中に溶解して、適用流体1mlにつき5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき100mgナロキソンHClとに相当する濃度間、好ましくは適用流体1mlにつき5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClとに相当する濃度間の最終濃度にした、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む鼻腔内医薬剤形。
【0134】
2.体積200μlと50μlとの間の適用流体、好ましくは体積200μlの適用流体、より好ましくは体積100μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、1に記載の剤形。
【0135】
3.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき6.5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき33mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0136】
4.体積200μlの適用流体、好ましくは100μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、3に記載の剤形。
【0137】
5.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき8.5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき44mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0138】
6.体積150μlの適用、好ましくは75μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、5に記載の剤形。
【0139】
7.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき13mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき66mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0140】
8.体積100μlの適用流体、好ましくは50μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、7に記載の剤形。
【0141】
9.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき18.5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき94mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0142】
10.体積70μlの適用流体、好ましくは35μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、9に記載の剤形。
【0143】
11.オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するためのものである、1から10のいずれかに記載の剤形。
【0144】
別のさらに好ましい本発明の実施形態は、以下に関する。
【0145】
1.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、好ましくは≧0.6mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦250μl、好ましくは体積≦200μlの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻腔内医薬剤形。
【0146】
2.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.6mgナロキソンHCl〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内である、1に記載の剤形。
【0147】
3.適用流体の体積が、200μl〜35μl、好ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましくは150μl〜100μlの範囲内である、1または2に記載の剤形。
【0148】
4.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.6mgナロキソンHClまたは1.2mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積が200μl〜50μl、好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である、1から3のいずれかに記載の剤形。
【0149】
5.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンのバイオアベイラビリティが、静脈内投与したナロキソンのバイオアベイラビリティを100%としてこれを基準に算出した場合に20%〜40%である、1から4のいずれかに記載の剤形。
【0150】
6.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンの作用発現が、投与して5分〜18分以内である、1から5のいずれかに記載の剤形。
【0151】
7.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンの血漿内半減期が、投与して1.5時間〜9時間である、1から6のいずれかに記載の剤形。
【0152】
8.適用流体が、水および水性食塩溶液、好ましくはNaClの水溶液、より好ましくは濃度が0.9%重量/体積までのNaClの水溶液を含む群から選択される、1から7のいずれかに記載の剤形。
【0153】
9.少なくとも2つの投与単位、好ましくは少なくとも3つの投与単位、より好ましくは少なくとも4つの投与単位、最も好ましくは少なくとも5つの投与単位を含む、1から8のいずれかに記載の剤形。
【0154】
10.鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具を含む剤形の群から選択される、1から9のいずれかに記載の剤形。
【0155】
11.オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用するためのものである、1から10のいずれかに記載の剤形。
【0156】
12.オピオイド過量投与の症状が、呼吸抑制、意識レベルの変化、縮瞳、低酸素血症、急性肺損傷および誤嚥性肺炎を含む群から選択される、12に記載の剤形。
【0157】
13.有効量のナロキソンを供給するために、剤形が初期力価測定時間中に再適用される、11または12に記載の剤形。
【0158】
14.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形と組み合わされる、11から13のいずれか1つに記載の剤形。
【0159】
15.≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、鼻腔内医薬剤形の投薬単位中の体積≦250μlの適用流体中に溶解した、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の使用。
(実施例)
【0160】
本発明の実施形態の実施例を以下に概説する。しかし、実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0161】
次に、4−wayクロスオーバー試験において、鼻腔内および舌下でのナロキソンのバイオアベイラビリティを測定するための、健常な志願者における単施設、非盲検、無作為化試験の結果を説明する。
【0162】
試験の概要
目的:健常な被験者に対して、1mgの静脈内投与したナロキソンと比較して、8mgおよび16mgの鼻腔内投与したナロキソンおよび16mgの舌下投与したナロキソンの絶対バイオアベイラビリティを評価する。
【0163】
試験方法:単施設、非盲検、無作為化、4−wayクロスオーバー試験、8mgおよび16mgナロキソンを鼻腔内に、16mgナロキソンを舌下に、1mgのナロキソンを静脈内に使用。4連続Williamsデザインを使用した。
【0164】
被験者数:計画:12被験者、PK測定のための完全解析:12被験者、安全性解析対象集団:12被験者、終了:10被験者、中止:2被験者[被験者自身の選択による]。
【0165】
組み入れの指標および基準:被験者は、≧18歳および≦55歳の男性および/または女性で、病歴、身体検査(鼻咽頭および口腔を含む)、心電図(ECG)および臨床検査診断において、臨床的に重要な所見がないことで健康であると判断された人とした。
【0166】
試験治療、用量および投与方法:
1:ナロキソン8mgおよび16mgを、400μlとして鼻腔内投与した(1つの鼻孔当たり200μl)。これはほぼ0.11mg/kg体重(8mgについて)および0.22mg/kg体重(16mgについて)に相当する。
【0167】
投与は次のとおりである。
【0168】
鼻内噴霧剤のポンプを、キャップを外し、下方に押下して準備した。これを少なくとも6回または微細な噴霧剤が出てくるまで繰り返す。準備は投薬の直前に実施する。
【0169】
被験者は立位または体を起こした姿勢で、静かに鼻をかんで鼻孔の通りをよくするものとする。被験者は前方にわずかに頭を傾け、閉じようとする鼻孔側の鼻の外側を指で押して1つの鼻孔を緩やかに閉じるものとする。
【0170】
器具を、開いている鼻孔内に挿入し、鼻孔内に2回噴霧する。被験者は鼻孔から静かに息を吸うものとし、器具を取り出し、もう1つの鼻孔でこのステップを繰り返す。
【0171】
2:1ml溶液中のナロキソン16mgを舌下投与し、舌下に5分保持した。
【0172】
ナロキソン塩酸塩粉末をMallenckrodt Chemicalから得た(ロット番号E09611)。溶液を0.9%塩化ナトリウム溶液中に調製した(pHを5.6に調整した)。
【0173】
参照治療、用量および投与方法:1mlのボーラスとして30秒間にわたって投与する静脈内用ナロキソン1mg。
【0174】
10mlバイアル入りナロキソン塩酸塩1mg/mlを、Bristol−Meyers Squibb Holdings Pharma,Ltd、米国から得た。
【0175】
治療および試験期間:スクリーニング期間を、期間1の投薬前14日以内に設けた。4種の単一用量、非盲検治療とし、各治療の間に最低限14日のウォッシュアウトを設けた。被験者は、第4の投薬の評価が45日目に終了した後、または早期試験中止時に試験終了の医学的評価を受けた(
図1を参照)。
【0176】
治療スケジュール:4つの試験期間の各々に単一用量の試験薬、試験薬の各投薬後に少なくとも14日のウォッシュアウト期間(期間1、2および3のみ)。
【0177】
評価基準:
解析対象集団:登録集団を、インフォームドコンセントの書式に署名した任意の被験者と定義した。安全性解析対象集団を、いずれかの試験治療を受け、これに続く少なくとも1つの安全性評価を受けた任意の被験者と定義した。薬物動態測定のための完全解析対象集団を、試験治療を受け、これに続く少なくとも1つの有効なPK測定を受けた被験者と定義した。
【0178】
薬物動態/血液採取時間:薬物動態用の血液採取を、各投薬に関して次の時間に実施した:0時間(投薬直前)、1、2、4、10、30、40分および1、2、4、6、8、12、16、24時間。
【0179】
薬物動態測定:ナロキソンおよび6β−ナロキソールのAUCt、AUCINF、Cmax、tmax、λZおよびt1/2zについて、個々の被験者の薬物動態測定値を、有効な薬物動態解析プログラムによるノンコンパートメント法を使用して導いた。
【0180】
安全性:安全性を、有害事象、臨床検査の結果、バイタルサインおよびECGを使用して評価した。
【0181】
生体分析方法:ナロキソンおよび6β−ナロキソールの血漿中濃度を、LC−MS/MS法によって、以前に検証済みのアッセイを使用して定量した。加えて、被験者の血漿試料を、他の関連するナロキソン代謝産物についてアッセイした(GLPおよび/または非GLP法によって)。
【0182】
統計方法:血漿中濃度および薬物動態測定値を、各治療の各分析物について、記述により要約した(n数、平均、SD、幾何平均(AUCt、AUCINFおよびCmaxについて適宜)、SE(濃度のみ)、中央値、最小値および最大値を決定した)。鼻腔内治療および舌下治療の絶対バイオアベイラビリティを計算した。
【0183】
試験の詳細
試験デザイン:試験は、単一用量、非盲検、4治療、4期、無作為化クロスオーバー試験とし、健常な成人男性および女性被験者において、2種の用量の経鼻投与したナロキソンおよび1種の用量の舌下投与したナロキソンの薬物動態を、静脈内投与したナロキソンと比較して評価するためのものとした。被験者に、無作為のコードによって4治療の各々を施し、各投薬間に少なくとも14日のウォッシュアウト期間を置いた。被験者を最初の投薬日前14日以内にスクリーニングした。その後、適格の被験者に、各試験期間の投薬の前夜に試験単位に入院してもらった。被験者に、終夜絶食の後の翌朝、試験薬を投与した。各試験期間の試験薬の投与後36時間にわたって薬物動態用の血液試料を採取したが、被験者を24時間時点の血液試料の採取後に退院させた。被験者は、試験単位に再来して36時間後のPK血液試料を提供した。試験期間中、バイタルサインをモニターし、有害事象(AE)を記録した。被験者は、スクリーニング時に手続きをしたように、最後の外来通院時または試験の早期終了/中止時に試験終了手続きをした。
【0184】
試験集団の組み入れ基準:
− 任意の人種群の男性および女性。
【0185】
− 年齢は上下限を含めて≧18歳および≦55歳。
【0186】
− BMIは上下限を含めて18〜32kg/m
2の範囲内、体重は上下限を含めて50〜100kgの範囲内。
【0187】
− 女性は、授乳中でなく、妊娠しておらず、スクリーニング時の血清妊娠検査が陰性で、各用量の試験薬を投与する前24時間以内の尿妊娠検査が陰性でなければならない。WOCBPは、ホルモン避妊薬、殺精子薬を追加したバリア型避妊具または子宮内避妊器具の使用に同意しなければならない。閉経後の女性被験者は、閉経後>1年で、血清FSHが高く、閉経後の状態に矛盾しない値でなければならない。
【0188】
− 概して、病歴、身体検査、臨床検査試験、バイタルサインおよびECGに著しく異常な所見がないことによって証明される、良好な健康状態。
【0189】
− 書面によるインフォームドコンセントを提出すること。HIPAAの基準が同意書に組み込まれていない場合、インフォームドコンセントの書式に別に補遺したものに署名しなければならない。
【0190】
− 外来への再来院を含む実施計画書のすべての規則に進んで従うことができること。
【0191】
試験集団の除外基準:
− ナロキソンまたは関連する化合物に対していずれかの過敏性の既往歴がある。
【0192】
− American Academy of Pain medicine、American Pain SocietyおよびAmerican Society of Addiction Medicineの嗜癖の基準:「次の1つまたは複数を含む行動を特徴とする:薬物使用、強迫的使用、有害であるにもかかわらず継続使用することに対する制御障害、および欲求」、しかしこの試験ではタバコ依存は含めない基準に合致する対象。
【0193】
− OOWSL4スコアが投薬前I時間以内に>4である。
【0194】
− 薬物の吸収、分布、代謝、および/または排泄を妨げうる状態の既往歴または任意の現在の状態。
【0195】
− 任意のタイプの鼻炎、ポリープ、任意の病因による完全閉塞もしくは部分閉塞(たとえば鼻中隔の著しい弯曲、最近の外傷または手術)、活動性出血もしくは最近の反復性鼻出血の既往歴または任意の潰瘍を含む、鼻腔内の薬物吸収を妨げうる鼻の状態。
【0196】
− 鼻腔内または口腔内の任意の異物(装身具を含む)またはいずれかの腔内の、または中隔もしくは舌を貫通する任意の穿孔(装身具用のピアス孔を含む)。
【0197】
− 以下を含む、鼻鏡検査での異常な粘膜:
萎縮性粘膜、穿孔、多発性ポリープ、いずれかの側の鼻道の完全閉塞、血管腫。
【0198】
− 任意のタイプの潰瘍、感染症または最近の外傷もしくは手術を含む、口腔内の(舌下の)薬物吸収を妨げうる口の状態。過去2週間以内に定期的な歯の清掃を行った、または試験期間中に歯の清掃の予定がある。
【0199】
− 歯肉炎を含む口腔不衛生。
【0200】
− 以下を含む、検査での異常な経口粘膜:
萎縮性粘膜、悪性腫瘍もしくは良性腫瘍(線維腫および血管腫を含む)または嚢胞、水疱性病変(たとえば天疱瘡または多形紅斑)、舌炎、アフタ性潰瘍、扁平苔癬、白板症、感染症[細菌性、真菌性、ウイルス性(たとえばヘルペス)]。鼻腔内用製品(処方、非処方または鼻腔内投与される他のいずれかのもの)の、投薬前4週間以内の任意の使用。
【0201】
− 最初の投薬の前4週間以内または試験期間中の、任意の処方薬(閉経後の女性用のホルモン補充療法(HRT)または避妊薬剤を除外)の使用。半減期の短い薬物(たとえばテトラサイクリン)および/または著しい薬物相互作用が知られていない薬物(たとえばフィナステリド)については個別に例外を設定してもよい。
【0202】
− 任意の投薬の前7日間または後2日間の、ビタミンおよびハーブサプリメントまたはミネラルサプリメントを含む任意の非処方薬剤の使用。半減期の短い薬剤については個別に例外を設定してもよい。
【0203】
− この試験の最初の投薬の前30日間の薬物臨床試験への参加。
【0204】
− 最初の投薬の前4週間以内の重大な任意の疾病。
【0205】
− 試験薬投与前30日間または試験期間中の献血または血液生成物の提供。
【0206】
− 試験薬投与前少なくとも10時間および投与後4時間絶食することの拒否、または各拘束中の全体にわたってカフェインまたはキサンチンを含有する飲料を断つことの拒否。
【0207】
− >21単位/週(12ozのビール=4ozのワイン=1.5ozのショット=1単位)に相当する量を超えるアルコール摂取。
【0208】
− 試験薬投与から48時間以内のアルコール飲料の摂取。
【0209】
− 試験薬投与の45日以内の喫煙履歴(スクリーニング時に尿中コチニンが陰性でなければならない)。
【0210】
− 尿中薬物スクリーニング、血中アルコール、または抗HBcおよび抗HCVを含む血清学的検査のスクリーニングで陽性の結果。
【0211】
− 試験責任医師が、除外基準には特に述べられていない何らかの理由で、対象が不適格であると考える。
【0212】
投与の方法:各投薬日の午前に、被験者に試験薬剤を投与した。被験者に、終夜少なくとも10時間の絶食の後に投薬した。投薬後、被験者には体を起こした座位で最低限4時間過ごしてもらった。鼻腔内用の用量を、定量鼻内噴霧器具によって投与した。1つの鼻孔当たり200μlを投与して全体積を400μlとした。各鼻腔内投与のために、頭を前方にわずかに傾けた。被験者に、投与後は鼻をかんだりくしゃみをしたりしないように指示した。鼻腔内の投薬を受けた被験者について、投薬の5分以内に発生したいかなるくしゃみも原資料に記録した。
【0213】
舌下用の用量のナロキソンを、被験者に溶液(0.4ml)を舌下に5分間保持してもらうことによって投与し、その後、口を水で入念にすすぎ、吐き出されたすすぎ残留物を処分した。被験者の姿勢は立位または体を起こした座位とした。被験者に、すすぎ水を決して嚥下しないように指示した。被験者は、すすぎ後の1時間水を飲むことも避けた。被験者が座っている間に静脈内用のナロキソンを30秒のボーラスとして投与することになる。
【0214】
結果:
安全性:治療により発現した有害事象(TEAE)の発生率は、すべての治療群にわたって類似していた。すなわち、8mg鼻腔内用ナロキソン[3件のTEAE]、16mg鼻腔内用ナロキソン[5件のTEAE]、16mg舌下用ナロキソン[1件のTEAE]、1mg静脈内用ナロキソン[4件のTEAE]であった。最も多く見られたTEAEは、SOC(器官別大分類)の胃腸障害および神経系障害において発現した。胃腸障害のTEAEは16mg鼻腔内群、1mg静脈内群および16mg舌下群のみに観察され、神経系TEAEは8mgおよび16mg鼻腔内群および1mg静脈内群のみに観察された。
【0215】
死亡、重篤な有害事象、または他の重要な有害事象はなかった。1人の被験者が、著しく異常に高いトリグリセリド値(8.355mmol/l)を試験の44日目に記録した。しかしこの被験者は、試験薬を投与する前の−9日目に、正常範囲を超えるトリグリセリド値(4.189mmol/l)を記録していた。
【0216】
別の被験者から、著しく異常に低いカリウム値(3.3mmol/l)、著しく異常に高いSGPT値(371U/l)および著しく異常に高い総ビリルビン値(39.33umol/l)が試験の44日目に報告された。この被験者のカリウム、SGPTおよび総ビリルビン値は、試験薬を投与する前は正常であった。これらの検査所見は日常的な検査評価中に観察されたものであり、疑わしい有害事象として試験責任医師によって報告されたものではなかった。したがって、因果関係評価は実施されなかった。調査した薬物の投与と折よく関連したため、試験依頼者はこの事象を、WHOアルゴリズムに従って、関係ある「かもしれない」と評価した。
【0217】
ECGにおいて臨床的に関連のある変化は発現しなかった。
【0218】
3人の被験者には脈拍数に著しく異常な変化があり、1人の被験者には血圧に著しく異常な変化があった。血管迷走神経発作のTEAEは、3人の被験者について、鼻腔内にナロキソンを適用した後(2人の被験者:1人の被験者は8mgを投与後、1人の被験者は16mgを投与後)および静脈内にボーラス(1mg)投与した後(1人の被験者)、報告された。異常なバイタルサインの変化における全体的な傾向はこの試験では観察されなかった。
【0219】
併用療法を、10件のTEAEについて6人の被験者に施した。これら10件のTEAEのうち3件は血管迷走神経発作であり、被験者を仰臥位に寝かせて回復させた。これらの被験者に追加の薬剤は使用しなかった。1人の被験者には追加の頭痛用の薬剤を2回投与した。追加の薬剤を、痔核切除、蕁麻疹、胃食道逆流症、悪心および尿路感染症の各単一の事象について投与した。
【0220】
薬物動態:ナロキソンの鼻腔内投与後、体循環中に薬物がきわめて早期に出現し、投薬後6分もの速さでピーク血漿中濃度に達した(中央値は18分)。平均絶対バイオアベイラビリティは、8mgおよび16mgの用量でそれぞれ32%および27%と記録され、これは鼻腔内用ナロキソンのAUCを、基準とする静脈内用ナロキソンのAUCで除算し、100%を乗じて得た。基準とする静脈内用では排出半減期が短い(<1h)のとは対照的に、平均半減期は、8mgおよび16mgの鼻腔内用用量でそれぞれ数時間が記録された。これらのデータは、鼻腔内経路によりナロキソンの吸収が相当なレベルであることと、適度に緩慢な排出パターンとが備わっていることを示している。これに対し、舌下経路で投与した場合、ナロキソンの平均絶対バイオアベイラビリティは静脈内用の基準に対してほぼ2%であった。これは以前経口投与後に記録されたものと類似している。
【0221】
ナロキソンの平均薬物動態パラメーターは
図2に記載されている。
【実施例2】
【0222】
実施例1で得られたデータに基づいて、静脈内投与または鼻腔内投与されるナロキソンの量を次のとおり予測した。
【0223】
ナロキソンの静脈内投与の標準的な開始点は、約0.4mg(IV)の範囲内である。実施例1の1mgIVナロキソン、8mgINナロキソンおよび16mgINのAUC値に基づいて、1mgIVに対する用量比例の範囲はINナロキソンについて3mg〜4mgの範囲内であると推定することができる。0.4mgIVナロキソンについては、鼻腔内投与されるナロキソンの標準的な開始量が1.2mg〜1.6mgの範囲ということになる。
【0224】
鼻腔内に(IN)投与した8mgナロキソンまたは16mgナロキソンについての実施例1の試験の元データ、および静脈内に(IV)投与した1mgナロキソンの元データに基づいて、血漿中濃度を次の量について予測した:0.4mgナロキソンIV、1.2mgナロキソンINおよび1.6mgナロキソンIN。
【0225】
第1の方法(Excel)を使用して、IN投与した8mgナロキソンおよび1mgナロキソンIVの元データに基づいたCmax値およびAUCt値を、提示した各用量に合わせて変倍した平均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計算し、次の結果を得た。
【0226】
【表1】
【0227】
対応する曲線を
図3(合計時間枠36時間で)および
図4(時間枠4時間で)に示す。
【0228】
Excelを使用して、IN投与した16mgナロキソンおよびIV投与した1mgナロキソンの元データに基づいたCmax値およびAUCt値も、提示した各用量に合わせて変倍した平均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計算し、次の結果を得た。
【0229】
【表2】
【0230】
対応する曲線を
図5(合計時間枠36時間で)および
図6(時間枠4時間で)に示す。
【0231】
第2の方法(WinNonlinモデリング)を使用して、IN投与した8mgナロキソンの元データをコンパートメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて濃度のシミュレーションを行った。対応するCmax値およびAUCt値は次のとおりである(合計時間枠36時間で)。
【0232】
【表3】
【0233】
対応する曲線を
図7に、時間枠4時間で、Excelを使用して予測した濃度(上記参照)と一緒に示す。
【0234】
WinNonlinを使用して、IN投与した16mgナロキソンの元データもコンパートメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて濃度のシミュレーションを行った。対応するCmax値およびAUCt値は次のとおりである(合計時間枠36時間で)。
【0235】
【表4】
【0236】
対応する曲線を
図8に、時間枠4時間で、Excelを使用して予測した濃度(上記参照)と一緒に示す。
【0237】
図7から特に導出することができるとおり、1.2mgおよび1.6mgの量についてそれぞれ予測したINナロキソンの血漿中濃度は、0.4mgのIV投与と比較して増加が緩やかでプラトーが長い。しかしIN曲線の初期勾配はかなり急でもある。さらに、IN曲線は、IV曲線と比較して、Cmax後の下り勾配がかなり緩やかである。
【実施例3】
【0238】
特に
図4、6、7および8から明らかであるように、0.4mgの量のナロキソンIVについて予測した血漿中濃度曲線にはピークが2回あり、第1のピークの数分後にCmaxピークに相当する第2のピークがある。
【0239】
IVプロファイルがこのようにかなり異常であるため、静脈内投与した0.4mgの量のナロキソンについて血漿中濃度曲線を予測する際に、「ダブルピークIVプロファイル」の原因であるらしく見える1件の異常値を示した対象を除外することにした。1.2mgナロキソンINおよび1.6mgナロキソンINについてExcelおよびWinNonlinを使用して計算したものは実施例2で示したデータに相当する。
【0240】
Excelを使用して、異常値を示した対象を除外した1mgナロキソンIVのデータに基づいたCmax値およびAUCt値を、0.4mgIVの用量に合わせて変倍した平均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計算し、次の結果を得た(再度8mgINのデータに基づいたIN値で示した)。
【0241】
【表5】
【0242】
対応する曲線を
図9(合計時間枠36時間で)および
図10(時間枠4時間で)に示す。
【0243】
次の表に、異常値を示した対象を除外した1mgナロキソンIVのデータに基づいてCmaxおよびAUCtを計算した値を、16mgINのデータに基づいて1.2mgINおよび1.6mgINについて計算したCmax値およびAUCt値との比較として示す。
【0244】
【表6】
【0245】
対応する曲線を
図11(合計時間枠36時間で)および
図12(時間枠4時間で)に示す。
【0246】
既に実施例2に記載したとおり、IN投与した8mgナロキソンの元データもコンパートメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて濃度のシミュレーションを行った(WinNonlinモデリング)。対応する曲線を、異常値を示した対象を除外した0.4mgIVの曲線(Excelによる)と一緒に
図13に時間枠4時間で示す。
図14は、16mgナロキソンINのデータに基づいたモデリングに対応する曲線を、異常値を示した対象を除外した0.4mgIVの曲線(Excelによる)と一緒に示す。
【0247】
最後に、
図15および
図16は、上記の実施例3のデータを時間枠4時間でまとめたものである。
【0248】
特に
図15は、1.2mgおよび1.6mgの量についてそれぞれ予測したINナロキソン血漿中濃度は、0.4mgのIV投与と比較して増加が緩やかでプラトーがかなり長いことを示している。IN曲線は、IV曲線と比較して、Cmax後の下り勾配が緩やかであることも明らかである。