(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を図面に基づき詳説する。
【0012】
図1は、採取した草花を半乾燥状態に乾燥する半乾燥工程S1の一形態を示す分解説明図である。
【0013】
すなわち、
図1では、押花として使用する草花Aを採取した後に、複数枚の吸水紙1のそれぞれの間に採取した多数の草花Aを挟持する。
【0014】
重ねた複数枚の吸水紙1の最上面と最下面には薄い上下硬板2,2を重ねて上下硬板2,2を紐体13等で強く緊締しその間に草花Aを挟持した状態とする。他の実施例としては複数枚の吸水紙1を上下硬板2,2と共に一体の重複形態としてゴムバンドで緊締するか、あるいは重錘で上方から押圧する。
【0015】
草花Aは、葉や茎や小枝のついた花を主体的に採取する。特に半乾燥草花A´の葉の葉脈や茎のように隆起状になった隆起部分aの乾燥処理に本発明の実施例の特徴がある。この隆起部分aの葉脈や茎の処理を適切に行うことができない場合は、半乾燥草花を密封袋中で適切に乾燥して草花本来の姿態や色彩を発現できない。
本実施例では、上下硬板2で挟持して重複とした吸水紙1間に挟んだ草花Aには上下硬板2の外部より約10kgの加圧力をかけ、その状態で室温約25℃で一昼夜放置しておく。
【0016】
このような加圧状態を保持することにより、草花Aは乾燥率約70%前後の半乾燥状態となり、半乾燥草花A´が形成される。
【0017】
加圧力約10kg、室温約25℃、加圧時間一昼夜の条件により草花Aを乾燥することにより、乾燥状態が徐々に緩慢に進行し、急速乾燥による変色、色むらを防止することができる。
【0018】
半乾燥工程S1においては、
図6に示すように草花の葉脈や茎などの隆起部分aが原形を可及的に残した状態となっており、かかる状態の半乾燥形成にも本実施例の特徴がある。
【0019】
すなわち、吸水紙1の間に挟持して草花Aの脱水を行うに際しては、上下硬板2による加圧状態を隆起部分aが扁平とならない原形を保つ程度の押圧力とする。
【0020】
かかる前処理した草花Aを半乾燥状態で後述する押花ケース3中に収容し乾燥処理する場合に、押花ケース3中での乾燥工程の中途において、花びらや葉の折れ曲がった部分の姿態の矯正を容易に行うことができる。
【0021】
なぜならば、半乾燥状態であるためにまだ一定の水分を含有しており、柔軟性を保持しているため形の矯正が容易に行えるからである。
【0022】
上述の半乾燥工程S1の終了後には、台紙4上に半乾燥状態の半乾燥草花A´を配置する配置工程S2に移行する。
【0023】
すなわち、吸水紙1の間から半乾燥草花A´を取出し、
図2に示すように台紙4上に半乾燥草花A´を絵画的に配置する。
【0024】
台紙4としては、天然パルプ繊維を分散させて通気マット状に形成したものを使用し、厚みは約5mm〜約10mmのものを使用する。必要に応じてその表面にパステルを擦り付けて着色したものを使用することもできる。なお、台紙4の表面は一定のクッション性を保持させておく。
【0025】
配置工程S2が終了した後には、
図2に示すように半乾燥草花A´を押花ケース3中に封入する密封工程S3へ移行する。
【0026】
すなわち、密封工程S3は、半乾燥した半乾燥草花A´を吸水紙1の間から取出して上面に絵画的に配置した台紙4と、台紙4下方に配置する乾燥剤5及び脱酸素剤6をアルミ箔7の上面に載置する工程から始める。アルミ箔7は可撓性を有して凹凸形状になじむので、当然台紙4やその下方の乾燥剤5や脱酸素剤6等の外形となじみ、特に密封状の押圧ケース3中を小型ポンプを用いて脱気することにより更なる密着状態となる。
【0027】
次いで、これらの台紙4の上面に透明硬質板8を重ねる。すなわち、透明硬質板8と台紙4との間に半乾燥草花A´を載置挟持した状態とし、この状態で透明硬質板8とアルミ箔7の周縁を接着して半乾燥草花A´を透明硬質板8と台紙4との間で挟持封止状態とする。
【0028】
このようにして密封した状態のケースを押圧ケース3とする。すなわち、透明硬質板8とアルミ箔7とより構成された押圧ケース3内に台紙4や乾燥剤5や脱酸素剤6や半乾燥草花A´等を封入する。
【0029】
かかる押圧ケース3における透明硬質板8とアルミ箔7との周縁接着部の一部には、袋中の空気を外方へ排出するための脱気パイプαを挿入可能とした開放口9を形成しており、開放口9は開閉自在に構成し、通常は閉塞しておき、後述の脱気作業に際しては小型ポンプに連通した脱気パイプを開放口9に挿入して脱気する。
【0030】
なお、脱気時間は、小型ポンプの性能にもよるが4〜5分でよい。
なお、乾燥剤5としては無水塩化カルシウムを主剤とする配合乾燥剤を使用し、透明硬質板8は、透明硬質のプラスチック板を使用する。
【0031】
ここで、乾燥剤5についてより詳細に説明する。乾燥剤5は、
図8に示すように、半乾燥状態の押花の水分を吸収するための配合乾燥剤20と、同配合乾燥剤20を収容する収容袋21とで構成されている。
【0032】
配合乾燥剤20は、前述の乾燥主剤としての無水塩化カルシウムの他に、乾燥を助長する乾燥助剤が約50%対50%の割合で配合される。この乾燥助剤としては、例えば、ゼオライトやタルク、バーミキュライト等を挙げることができる。
【0033】
一般に、塩化カルシウムは効率良く水分を吸収するため、乾燥剤の成分として使用されている。しかしながら、塩化カルシウムは潮解性を有しているため、水分(空気中の水蒸気等)を吸着し続けると高濃度の溶液状となってしまい、同乾燥剤の周辺を汚染する可能性がある。
【0034】
塩化カルシウムは押花の乾燥剤として、その強力な水分吸着力が有用であると考えられるものの、この潮解性によって高濃度の塩化カルシウム溶液が押花に付着すると、押花としての価値が全く喪失してしまうこととなる。
【0035】
そこで、本実施形態に係る乾燥剤5では、塩化カルシウムと共に、乾燥助剤としてゼオライトやタルク、バーミキュライトを添加するようにしている。
【0036】
しかも、配合乾燥剤20、すなわち塩化カルシウムや乾燥助剤は流動性を有する程度の粒子径に粉体化されたものを使用している。
【0037】
これら乾燥助剤として機能する成分は、塩化カルシウムによって引き寄せられた水分を奪い取って保持することにより、塩化カルシウムが潮解してしまうことを効率的に防止する。
【0038】
なお、塩化カルシウムとタルク等の乾燥助剤とは吸水機能の点では互いに補完作用を行い、タルクの微細孔に吸着される水分は、塩化カルシウムにより吸着除去されて、両者が補完しあいながら押圧ケース3内に滲潤した水分を吸着することになる。
【0039】
したがって、これら乾燥助剤は、次に述べる収容袋21と協働することにより、塩化カルシウムの高濃度溶液によって押花が汚染してしまうことを防止することができる。
【0040】
一方、配合乾燥剤20が収容されている収容袋21は、水分透過シートを袋状に形成したものである。ここで使用する水分透過シートは、収容袋21の表面側に配置される不織布層22と、収容袋21の内面側に配置される樹脂層23との2層によって構成されたシートである。換言すれば、収容袋21は水蒸気透過性を有する樹脂により構成される裏地を備えた不織布シートを袋状に形成したものである。
【0041】
乾燥剤5は、この収容袋21に配合乾燥剤20を収容して形成されるのであるが、このとき配合乾燥剤20は、収容袋21内に厚さ1〜5mm程度に薄く均一に配置しており、収容袋21内の空気を抜いた状態で熱溶着シールを施して密封することにより形成している。
【0042】
なお、ここで「空気を抜いた状態」とは、必ずしも完全に空気を抜いた状態をいうのではなく、目視した際に密封した収容袋21の空気による膨らみがない程度に、大部分の空気が抜かれた状態をいう。換言すれば、収容袋21内の空気が実質的に排出されており、薄くのばした配合乾燥剤20の両側面に、収容袋21がぴったりとフィットしている状態をいう。
【0043】
このような構成とすることにより、乾燥剤5を配置した際に、乾燥剤5の略全体から満遍なく周辺雰囲気の水分を吸収することができる。
【0044】
しかも、前述のように収容袋21を不織布層22と樹脂層23とで構成したため、乾燥剤5周囲の雰囲気の水分を配合乾燥剤20に吸収可能としつつも、収容袋21内への急激な空気の流入を避けることができ、収容されている配合乾燥剤20の収容袋21内での偏りを防ぐことができ、さらに安定した吸湿性能を発揮させることができる。付言するならば、空気を抜いて均一に薄くのばした配合乾燥剤20と、収容袋21内面とを密着させた上で封止しているため、収容袋21の袋壁が、粉体流動性を有する配合乾燥剤20の支持材として機能し、配合乾燥剤20の偏りを防止することができる。
【0045】
かかる密封工程S3の終了後、押圧ケース3を2〜3日間放置し乾燥剤5による乾燥及び脱酸素剤6による脱酸素を行う。その後、密封袋10の開放口9より内部の空気を吸引排除する乾燥工程S4へと移行する。
【0046】
乾燥工程S4において、押圧ケース3の内部空気を脱気することにより、押圧ケース3中の空気圧を可及的に減少させて、押圧ケース3中で、透明硬質板8と台紙4との間で半乾燥押花A´を挟持した状態とする。
【0047】
しかも、脱酸素剤6により内部は無酸素状態となり、半乾燥草花A´の酸化現象を防止しながら乾燥が徐々に行われる。
【0048】
すなわち、半乾燥草花A´の最終的な乾燥工程S4において、押圧ケース3内の脱気、脱酸素及び乾燥が並行して行われることになり、脱気にともなう減圧によって半乾燥草花A´が台紙と透明硬質板8との間をより密着状態となると共に、脱気制御による押圧制御によって草花の隆起部分の効率的な乾燥を促進し、かつ酸化防止と共に、緩慢なる乾燥が進行していく。
【0049】
一般に草花の変色、退色は乾燥末期に生起するものであるため、この乾燥末期に押圧ケース3内を無酸素状態として徐々に乾燥していくことから、変色、退色を防止し、かつ、採取時の原色を保持しながら乾燥草花を作ることができ、草花の採取時の原色を長期間維持することができる。
【0050】
図2は押花絵の作成工程における押圧ケースの3の断面説明図を示し、
図4は完成した押花絵の断面説明図を示す。
【0051】
ここで、台紙4は、一定のクッション性を保有させ、上面に半乾燥草花A´が密着配置され乾燥が徐々に行われるようにするために下記のような加工処理が行われる場合もある。
【0052】
すなわち、
図3に示すように厚手の紙や硬質プラスチックス板よりなる芯紙4´の上面にクッション性を有する厚手の不織布11、すなわち、天然パルプ繊維を分散させて通気マット状に形成したものを敷設し、必要に応じてその上面に更に織目の細かい布体12を巻回して構成しておく。
【0053】
このように、芯紙4´上に不織布11と布体12とを重ねて被覆し、布体12表面粉体顔料としてのパステルを擦り付けて塗布した場合には、織目の細かい布体12の内表面に粉体顔料としてのパステルが埋入して確実に顔料を塗着することができ、乾燥後のパステルの剥離を防止し、台紙4上の草花の背景色彩を正確に現出し、同時に台紙4に乾燥した草花Aを固着状態とすることができる。
【0054】
本発明の実施例により上記の半乾燥工程S1、配置工程S2、密封工程S3、乾燥工程S4を経ることにより押花絵Mが完成するが、半乾燥状態の草花を材料として密封袋10中に吸収して徐々に末期乾燥を行うために各工程において次のような各種制御が行われる。
【0055】
すなわち、先ず、半乾燥工程S1において、吸水紙1の間に挟持した採取草花を弾性ゴムバンド13で囲繞した上下硬板で加圧するに際し、当初は、
図6に示すように草花の葉脈や茎等の隆起部分aを圧迫しない押圧力で挟持する。徐々に草花を乾燥して乾燥率70%前後にして草花の含水率を低下させて、草花の隆起部分aを残す(
図6)。すなわち、完全な扁平状となる前に低い隆起部分aの凸状部分を残した状態とする。このように凸状部分がまだ残った状態で押圧ケース3中に収納して内部脱気、本乾燥、脱酸素などの処理を行う(
図7)。
【0056】
特に、
図7に示すように、押圧ケース3中では、半乾燥草花A´が完全扁平ではなく凸状部分が残っているため、内部での乾燥処理は半乾燥草花A´の表面積を可及的に大きく空気中に露出させることができ、乾燥効率を向上し乾燥むらをなくして全体的に均一な乾燥を緩慢に行うことができる。
【0057】
乾燥に伴い蒸散した水分を含む湿気は、押圧ケース3の開放口9より小型ポンプ等を使って脱気することにより外部に排出し、同時に内部圧を低下させて残留酸素を可及的に除去し、酸化による変色を防止することにより押圧ケース3内部の乾燥処理を有効に遂行できる。
【0058】
特に、完全乾燥の末期において押圧ケース3内を脱気し、酸化原因となる酸素を消去し、無水塩化カルシウムやタルクを粒状に混合し、水分透過シートの袋に収容した乾燥剤により可及的に乾燥するために、乾燥草花の変色は防止され、採取時の鮮やかな色彩を保持しながら押花処理が行える。
【0059】
同時に、更なる脱気による押圧制御により押圧ケース3では台紙と透明硬質板8とに押圧力が徐々に加えられて、乾燥終了時には草花は扁平状となり、背景の色彩を帯有した台紙4上と透明硬質板8とに挟着され安定した状態で配置される。
【0060】
脱気と乾燥とのタイミングとしては、末期乾燥がほぼ完了した時点で一気に脱気を行い、押圧ケース3の内部空気を完全に吸引して内部空気に含まれる水分を空気と共に外気に排出し、草花を台紙4と透明硬質板8との間に密着挟持させて、長期間の保存に耐えうるような押圧、脱水制御を行う。