特許第6110562号(P6110562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6110562遠心力を利用したマイクロ構造体の製造方法およびそれから製造されたマイクロ構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110562
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】遠心力を利用したマイクロ構造体の製造方法およびそれから製造されたマイクロ構造体
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
   B81C1/00
【請求項の数】23
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-512826(P2016-512826)
(86)(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公表番号】特表2016-518997(P2016-518997A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】KR2014003964
(87)【国際公開番号】WO2014182022
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0050462
(32)【優先日】2013年5月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0053423
(32)【優先日】2014年5月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516225821
【氏名又は名称】ユービック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヒュン イル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フイ スク
(72)【発明者】
【氏名】キム ス ヨン
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−273772(JP,A)
【文献】 特開平11−284243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00−99/00
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む、マイクロ構造体の製造方法であって、前記方法は、遠心力の調節を通じて長さ、直径およびアスペクト比(aspect ratio)で構成された群から選択される前記マイクロ構造体のすくなくとも一つのディメンジョン(dimension)を調節することを特徴とする、マイクロ構造体の製造方法
(a)下部基板上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階。
【請求項2】
前記粘性組成物は生体適合性または生分解性物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記粘性組成物は滴(drop)形態(form)で前記基板上に位置することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記滴は前記粘性組成物の特性(properties)、前記下部基板の特性または前記粘性組成物の特性と下部基板の特性を変化させることによってその形状(shape)、大きさ、または前記下部基板との接触面積が調節されることを特徴とする、請求項3に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記方法は前記滴形態を構成する粘性組成物の量または濃度を調節して前記マイクロ構造体の形状を多様に調節することを特徴とする、請求項3に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記段階(b)は硬化(solidifying)が同時に起きるように実施することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記下部基板は一定のパターンの屈曲または凹凸が形成された表面を有することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記段階(b)の引張は、前記屈曲または凹凸の最高点(highest point)から前記遠心力の方向に前記マイクロ構造体の上端部を形成させることを特徴とする、請求項に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記遠心力の印加は調節された回転加速度で実施し、これによって前記粘性組成物の引張角度が調節され、これによって変形された形状を有するマイクロ構造体が製造されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記方法は前記下部基板の平坦度(flatness)または均一度(uniformity)にかかわらず、マイクロ構造体を製造可能であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記方法は前記段階(a)および(b)の間に次の段階(ab)を追加的に含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法:(ab)前記下部基板上に用意された前記粘性組成物を空洞を有する蓋基板で覆う段階。
【請求項12】
前記段階(b)は追加的な上部基板を利用して実施し、前記上部基板は前記粘性組成物から空間的に離隔した上部に位置し、前記段階(b)での粘性組成物の引張は前記粘性組成物の一部が前記上部基板に結合するようにし、結局(whereby)、前記下部基板および前記上部基板の間に互いに連結されて形成されるかまたは前記下部基板および前記上部基板のそれぞれに結合されて両マイクロ構造体が分離された形態で形成されたマイクロ構造体が製造されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記マイクロ構造体は前記下部基板および前記上部基板の間に互いに連結されて形成されたマイクロ構造体であり、前記方法は前記段階(b)の後に次の段階(c)を追加的に含むことを特徴とする、請求項12に記載のマイクロ構造体の製造方法:(c)前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを移動させて前記互いに連結されて形成されたマイクロ構造体を切断する段階。
【請求項14】
前記切断は前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを特定方向に移動させてなされ、これを通じてマイクロ構造体が特定の角度を有するチップ(tip)が形成されることを特徴とする、請求項13に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項15】
前記粘性組成物が親水性物質であり、前記下部基板および前記上部基板のうち少なくとも一つの表面が疎水性性質を有することを特徴とする、請求項12に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項16】
記粘性組成物が疎水性であり、前記下部基板および前記上部基板のうち少なくとも一つの表面は親水性を有することを特徴とする、請求項12に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項17】
次の段階を含むマイクロ構造体の製造方法:
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階。
【請求項18】
前記中空型構造体は円筒状の中空型構造体であることを特徴とする、請求項17に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項19】
次を含む遠心力によってマイクロ構造体を製造するための装置:
(a)遠心分離機の回転軸
(b)前記遠心分離機の回転軸に連結され、長さを調節可能な形態で提供される回転アーム;および
)前記回転アームに連結されて粘性組成物を収容する下部基板。
【請求項20】
前記装置は前記遠心分離機の回転軸に回転力を付与するモーターを追加的に含むことを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
次の段階を含む中空型マイクロ構造体の製造方法:
(a) 請求項1または請求項18に記載されたマイクロ構造体の製造方法により製造されたマイクロ構造体に金属蒸着する段階;
(b)前記金属蒸着されたマイクロ構造体を金属でメッキする段階;
および
(c)前記マイクロ構造体を除去して中空型マイクロ構造体を収得する段階。
【請求項22】
次の段階を含む薬物封入型マイクロ構造体の製造方法:
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階;
(c)前記段階(b)での遠心力の印加がなされる途中、または遠心力の印加が終了した後に前記吐出部を通じてマイクロ構造体内部に薬物を注入する段階。
【請求項23】
次の段階を含む中空型マイクロ構造体の製造方法:
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階;
(c)前記段階(b)での遠心力の印加がなされる途中、または遠心力の印加が終了した後に前記吐出部を通じてマイクロ構造体内部に気体または流体を注入して空いた空間を形成させる段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2013年5月6日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10−2013−0050462号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として挿入される。
【0002】
本発明は、遠心力を利用したマイクロ構造体の製造方法およびそれから製造されたマイクロ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
疾病治療のための多くの薬物および治療剤などが開発されたが、薬物を身体内に伝達するにおいて、生物学的障壁(biological barrier、例えば、皮膚、口腔粘膜および脳−血管障壁など)の通過問題および薬物伝達の効率問題は依然として改善されるべき点として残っている。
【0004】
一般に、薬物は錠剤型またはカプセル剤型で経口投与されるが、殆どの薬物が胃腸管で消化または吸収されるか、肝の機転によって消失するなどの理由で前記のような投与方法だけでは有効に伝えられない。その上、いくつかの薬物は腸の粘膜を通過するので有効に拡散することができない。また、患者の順応度も問題となる(例えば、特定間隔で薬物を服用しなければならないか、薬を服用できない重症患者の場合など)。
【0005】
薬物伝達において、さらに他の一般的な技術は従来の注射針(needle)を利用するものである。
【0006】
この方法は経口投与に比べて効果的である反面、注射部位での痛みの隨伴および皮膚の局部的損傷、出血および注射部位での疾病感染などを引き起こす問題点がある。
【0007】
前記のような問題点を解決するために、マイクロニードル(microneedle)を含む様々のマイクロ構造体が開発された。現在まで開発されたマイクロニードルは、主に生体内薬物伝達、採血、体内分析物質の検出などに用いられてきた。マイクロニードルは既存のニードルとは異なり、無痛の皮膚貫通と無外傷を特徴とし、無痛皮膚貫通は最小針鋭性のための上端部(top)の直径が重要である。また、マイクロニードルは、皮膚のうち最も強力な障害物である10−20umの角質層(stratum corneum)を貫通しなければならないので、十分な物理的硬度を有することが要求される。また、毛細血管まで到達することによって薬物伝達の効率性を高めるための適正長さも考慮されなければならない。
【0008】
従来、In−planeタイプのマイクロニードル(Lin Liwei et al.,“Silicon−processed Microneedles”、Journal of microelectromechanical systems: a joint IEEE and ASME publication on microstructures、microactuators、microsensors、and microsystems 8(1):78−84(1999))が提案された後、多様な類型のマイクロニードルが開発された。エッチング方法を利用したout−of−planeタイプのソリッドマイクロニードル(アメリカ特許出願公開第2002138049号“Microneedle devices and methods of manufacture and use thereof”)の製作方法は50−100um直径,500umの長さでソリッドシリコンマイクロニードルを製作し、無痛皮膚貫通を実現することが不可能であり、目的部位に薬物および美容成分を伝達するのに困難があった。
【0009】
一方、アメリカ、ジョージア大学のプラウスニッツ(Prausnitz)は、ガラスをエッチングしたりフォトリソグラフィ(photolithography)で注型を作って生分解性ポリマーマイクロニードルの製作方法を提案したことがある(Jung−Hwan Park et al.,“Biodegradable polymer microneedles:Fabrication,mechanics and transdermal drug delivery”,Journal of Controlled Release 104(1) −51− 66(2005))。また、2006年にはフォトリソグラフィ方法を通じて製作した注型の先端にカプセル形態で製作された物質を搭載して生分解性ソリッドマイクロニードルを製作する方法が提案された(Park JH et al.,“Polymer Microneedles for Controlled−Release Drug Delivery”,Pharmaceutical Research 23(5):1008−19(2006))。この方法を用いれば、カプセル形態に製作可能な薬物の搭載が可能であるという長所はあるものの、薬物の搭載量が多くなると、マイクロニードルの硬度が弱くなるので多量の投薬が必要な薬物には適用に限界が現れた。
【0010】
2005年には吸収型マイクロニードルがナノデバイスエンドシステムズ社によって提案された(日本特許出願公開第2005154321号;およびTakaya Miyano et al.,“Sugar Micro Needles as Transdermic Drug Delivery System”,Biomedical Microdevices、7(3):185−188(2005))。このような、吸収型マイクロニードルは皮膚内に挿入されたマイクロニードルを除去せずに、薬物伝達、または美容に使用しようとするものである。この方法では、注型にマルトース(maltose)と薬物を混合した組成物を加えてこれを凝固させてマイクロニードルを製作した。前記日本特許はマイクロニードルを吸収型に製作して薬物の経皮吸収を提案しているが、皮膚貫通時に痛みを伴った。また、注型製作の技術的限界によって、無痛を伴う適切な上端部直径を有しながら、効果的な薬物伝達に要求される水準の長さ、すなわち、1mm以上の長さを有したマイクロニードルを製作することが不可能であった。
【0011】
2008年アメリカ、ジョージア大学のプラウスニッツ(Prausnitz)により製作された生分解性マイクロニードルはポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)注型でポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)とメタクリル酸(Methacrylic acid:MM)を混合した物質を用いて製作された(Sean P Sullivan et al.,|“Minimally Invasive Protein Delivery with Rapidly Dissolving Polymer Microneedles”,Advanced Materials 20(5):933−938(2008))。また、カルボキシメチルセルロースをピラミッド構造の注型に入れてマイクロニードルを製作したりもした(Lee JW et al.,Dissolving microneedles for transdermal drug delivery,Biomaterials 29(13):2113−24(2008))。注型を用いた方法は迅速で簡便な製作が可能であるという長所にもかかわらず、マイクロニードルの直径と長さを調節して製作し難いという限界を解決できていない。
【0012】
皮膚は、表皮から角質層(<20um)、外皮(epidermis)(<100um)、および真皮(dermis)(300〜2,500um)で構成されている。したがって、特定皮膚層に痛みを伴わずに薬物と皮膚美容成分を伝達するためにはマイクロニードルの上端部の直径を30um以内、有効長さは200〜2,000um、皮膚貫通のための十分な硬度を有するように製作することが薬物と皮膚美容成分の伝達に効果的である。また、生分解性ソリッドマイクロニードルを通じて薬物または美容成分などを伝達するためには、マイクロニードル製造工程の中で高熱処理、有機溶媒処理など、薬物または美容成分の活性を破壊できる工程を排除できなければならない。
【0013】
従来の金型を利用したマイクロ構造体製造方法は最も普遍的に用いられる製造方法である。しかしながら、金型を利用した製造方法の場合、金型との分離過程で損失が発生する限界点がある。これは、金型内に製造されたマイクロ構造体と金型との間の接触力によってマイクロ構造体を金型から分離する過程において、製作されたマイクロ構造体に損傷が発生するためである。また、金型を利用したマイクロ構造体の製造方法はアスペクト比が大きいマイクロ構造体を製作できないという限界を有する。これは大きいアスペクト比を有するマイクロ水準の金型に粘性組成物を満たすことが難しいため発生する限界である。
【0014】
また,フィラーまたは基板との接触を通じて粘性組成物を延ばしてマイクロ構造体を製造する方法は、比較的高いアスペクト比の構造体を製作できる製作方法である。しかしながら、このような方法も構造体の分離過程で損失が発生する。また、フィラーや基板の平板度は粘性組成物の接触程度を決定するが、これによってマイクロ構造体の製作歩留まりに限界が発生する。すなわち、平板度の維持が難しく、これによって製作されるマイクロ構造体の均一性および歩留まりが低くなる。
【0015】
本発明者らは、本発明の完成を通じて従来技術の問題点を克服しようとした。
【0016】
本明細書の全体に渡って多数の論文および特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文および特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照として挿入され、本発明が属する技術分野の水準および本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、マイクロ単位の直径、十分な有効長さおよび硬度を有しつつ、熱に敏感な薬物を変性または非活性なく容易に内包できるソリッドマイクロ構造体を開発しようと努力した。その結果、本発明者らは、粘性組成物に遠心力を印加(apply)し、前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する方法を開発し、これによれば、(i)マイクロ単位の直径、十分な有効長さおよび硬度を有するマイクロ構造体の提供;(ii)高熱処理、有機溶媒処理など、薬物または美容成分の活性を破壊し得る工程の排除;(iii)接触および分離による損失減少;(iv)製造されたマイクロ構造体のアスペクト比の限界の克服;(v)平板度による歩留まり限界を克服;および(vi)多様な形状のマイクロ構造体の製造が可能であることを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0018】
したがって、本発明の目的はマイクロ構造体の製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、前記製造方法によるマイクロ構造体を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、マイクロ構造体を製造するための装置を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的および利点は下記の発明の詳細な説明、請求範囲および図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一形態によれば、本発明は次の段階を含むマイクロ構造体の製造方法を提供する:
(a)下部基板上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階。
【0023】
本発明者らは前述した従来技術の問題点を解決して次のような利点を有するマイクロ構造体の新規の製造方法を開発しようと努力した:(i)マイクロ単位の直径、十分な有効長さおよび硬度を有するマイクロ構造体の提供;(ii)高熱処理、有機溶媒処理など、薬物または美容成分の活性を破壊し得る工程の排除;(iii)接触および分離による損失減少;(iv)製造されたマイクロ構造体のアスペクト比の限界克服;(v)平板度による歩留まりの限界を克服;および(vi)多様な形状のマイクロ構造体製造可能。研究の結果、遠心力を粘性組成物に印加する、比較的簡便な工程を通じて前述した利点を有するマイクロ構造体が成功的に提供されることを確認した。熱処理をせずとも遠心力の印加によってマイクロ構造体を製造することができる。
【0024】
本発明の方法をそれぞれの段階にしたがって詳細に説明すると次の通りである;
【0025】
段階(a):下部基板上に粘性組成物を用意
マイクロ構造体を製造するために本発明で利用される物質は粘性組成物である。本明細書において、用語、“粘性組成物”は本発明で利用される遠心力によって形状が変化してマイクロ構造体を形成できる能力を有する組成物を意味する。
【0026】
このような粘性組成物の粘性は、粘性物質固有の粘性によって調節することができ、組成物に含まれる物質の種類、濃度または温度などにより本発明の目的に適合するように多様に変化させることができる。また、粘性組成物に追加の増粘剤(viscosity modifying agent)を用いて調節することもできる。
【0027】
例えば、当業界で通常的に利用される増粘剤、例えばヒアルロン酸とその塩、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(cellulose polymer)、デキストラン、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、プロピレングリコール、ポビドン、カルボマー(carbomer)、ガッチガム(gum ghatti)、グアガム、グルコマンナン、グルコサミン、ダマーガム(dammer resin)、レンネットカゼイン(rennet casein)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、微小繊維状セルロース(microfibril lated cellulose)、サイリウムシードガム(psyllium seed gum)、キサンタンガム、アラビノガラクタン(arabino galactan)、アラビアガム、アルギン酸、ゼラチン、ゲランガム(gellan gum)、カラギナン、カラヤガム(karaya gum)、カードラン(curdlan)、キトサン、キチン、タラガム(tara gum)、タマリンドガム(tamarind gum)、トラガカントガム(tragacanth gum)、フルセララン(furcellaran)、ペクチン(pectin)またはプルラン(pullulan)のような増粘剤をマイクロ構造体の主成分、例えば生体適合性物質を含む組成物に添加して粘性を本発明に適合するように調節することができる。好ましくは、本発明で利用される粘性組成物は200000cSt以下の粘性を示す。
【0028】
本発明の一実施例によれば、本発明で利用される粘性組成物は生体適合性または生分解性物質を含む。本明細書において、用語、“生体適合性物質”とは、実質的に人体に毒性がなく化学的に不活性であり、免疫源性のない物質を意味する。本明細書において、用語、“生分解性物質”とは、生体内で体液または微生物などによって分解され得る物質を意味する。
【0029】
好ましくは、本発明で利用される粘性組成物は、ヒアルロン酸とその塩、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(cellulose polymer)、デキストラン、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、プロピレングリコール、ポビドン、カルボマー(carbomer)、ガッチガム(gum ghatti)、グアガム、グルコマンナン、グルコサミン、ダマーガム(dammer resin)、レンネットカゼイン(rennet casein)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、微小繊維状セルロース(microfibrillated cellulose)、サイリウムシードガム(psyllium seed gum)、キサンタンガム、アラビノガラクタン(arabino galactan)、アラビアガム、アルギン酸、ゼラチン、ゲランガム(gellan gum)、カラギナン、カラヤガム(karaya gum)、カードラン(curdlan)、キトサン、キチン、タラガム(tara gum)、タマリンドガム(tamarind gum)、トラガカントガム(tragacanth gum)、フルセララン(furcellaran)、ペクチン(pectin)またはプルラン(pullulan)を含む。より好ましくは、本発明で利用される粘性組成物に含まれる粘性物質は、セルロースポリマー、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースであり、より一層好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースであり、最も好ましくはカルボキシルメチルセルロースである。
選択的に、前記粘性組成物は主成分として生体適合性および/または生分解性物質を含むことができる。
【0030】
本発明で利用され得る生体適合性および/または生分解性物質は、例えばポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリ(a−ヒドロキシ酸)、ポリ({3−ヒドロキシ酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−ヒドロキシバリレート;PHBV)、ポリ(3−ヒドロキシプロプリオネート;PHP)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート;PHH)、ポリ(4−ヒドロキシ酸)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバリレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(エステルアミド)、ポリカプロラクトン、ポリラクタイド、ポリグリコリド、ポリ(ラクタイド−co−グリコリド;PLGA)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリアンハイドライド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(タイロシンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(タイロシンアリレート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、PHA−PEG、エチレンビニルアルコールコポリマー(EV0H)、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンとエチレン−アルファオレフィン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレントゥリブルロク共重合体、アクリル重合体および共重合体、ビニルハーライト重合体および共重合体、ポリビニルクロライド、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニリデンハーライト、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンクロライド、ポリフルオロアルケン、ポリパーフルオロアルケン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニルアロマチクス、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリビニルアセテート、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂とエチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリアミド、アルキド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸−co−マレイン酸、キトサン、デキストラン、セルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギネート、イヌリン、澱粉またはグリコーゲンであり、好ましくはポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリ(a−ヒドロキシ酸)、ポリ(p−ヒドロキシ酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−CO−バリレート;PHBV)、ポリ(3−ヒドロキシプロプリオネート;PHP)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート;PHH)、ポリ(4−ヒドロキシ酸)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバリレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(エステルアミド)、ポリカプロラクトン、ポリラクタイド、ポリグリコリド、ポリ(ラクタイド−co−グリコリド;PLGA)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリアンハイドライド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(タイロシンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(タイロシンアリレート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、PHA−PEG、キトサン、デキストラン、セルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギネート、イヌリン、澱粉またはグリコーゲンである。
【0031】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明で利用される粘性組成物は適合する溶媒に溶解して粘性を現わす。一方、粘性を現わす物質中には熱により溶融した場合に粘性を現わすものもある。本発明の長所の中の一つである、非加熱工程という長所を最大化するためには、粘性組成物に利用される物質は、適合する溶媒に溶解した時に粘性を現わすことである。
【0032】
粘性物質を溶解して粘性組成物を製造する際に利用される溶媒は特に制限されず、水、炭素数1−4の無水または含水低級アルコール、アセトン、エチルアセテート、クロロホルム、1、3−ブチレングリコール、ヘキサン、ジエチルエーテルまたはブチルアセテートを溶媒として利用することができ、好ましくは水または低級アルコールであり、最も好ましくは水である。
【0033】
本発明の好ましい具現例によれば、粘性組成物は薬物をさらに含む。本発明のマイクロ構造体の主な用途中の一つはマイクロニードルであり、これは経皮投与を目的とする。したがって、粘性組成物を用意する過程で生体適合性物質に薬物を混合して用意する。
【0034】
本明細書において、用語、“マイクロ構造体”とは、ソリッドマイクロ構造体および中空型マイクロ構造体をすべて含む意味と解釈され得る。
【0035】
本発明で利用できる薬物は特に制限されない。例えば、前記薬物は、化学薬物、蛋白質医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療用核酸分子およびナノ粒子などを含む。
【0036】
本発明に利用できる薬物は例えば、抗炎症剤、鎮痛剤、抗関節炎剤、鎮痙剤、抗うつ剤、抗精神薬物、神経安定剤、抗不安剤、麻薬拮抗剤、抗パーキンソン疾患薬物、コリン性アゴニスト、抗癌剤、抗血管新生抑制剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、抗生剤、食欲抑制剤、鎮痛剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、抗片頭痛剤、ホルモン剤、管状血管、脳血管または末梢血管拡張剤、避妊薬、抗血栓剤、利尿剤、抗高血圧剤、心血管疾患治療剤、美容成分(例えば、シワ改善剤、皮膚老化抑制剤および皮膚美白剤)などを含むが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明に係るマイクロ構造体の製造過程は非加熱条件(non−heating treatment)の下で実施される。したがって、本発明に利用される薬物が蛋白質医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療用核酸分子などのように熱に弱い薬物であっても、本発明に従うと前記薬物を含むマイクロ構造体の製造が可能である。
【0038】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の方法は熱に敏感な薬物、より好ましくは蛋白質医薬、ペプチド医薬またはビタミン(好ましくは、ビタミンC)を内包するマイクロ構造体の製造に利用される。
【0039】
本発明の方法によってマイクロ構造体に内包される蛋白質/ペプチド医薬は特に制限されず、ホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、信号伝達蛋白質またはその一部分、抗体またはその一部分、単鎖抗体、結合蛋白質またはその結合ドメイン、抗原、付着蛋白質、構造蛋白質、調節蛋白質、毒素蛋白質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子およびワクチンなどを含むが、これに限定されない。より詳細には、前記蛋白質/ペプチド医薬はインスリン、IGF−lCinsulin−like growth factor 1)、成長ホルモン、エリスロポエチン、G−CSFs(granulocyte−colony stimulating factors)、GM−CSFs(granulocyte/macrophage−colony stimulating factors)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマー、インターロイキン−1アルファおよびベータ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−2、EGFs(epidermal growth factors)、カルシトニン(calcitonin)、ACTH(adrenocorticotropic hormone)、TNF(tumor necrosis factor)、アトビスバン(atobisban)、ブセレリン(buserelin)、セトロレリクス(cetrorelix)、デスロレリン(deslorelin)、デスモプレシン(desmopressin)、ダイノルフィンA(dynorphin A)(1−13)、エルカトニン(elcatonin)、エレイドシン(eleidosin)、エプチフィバチド(eptifibatide)、GHRH−II(growth hormone releasing hormone−II)、ゴナドレリン(gonadorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ヒストレリン(histrelin)、リュプロレリン(leuprorelin)、リプレシン(lypressin)、オクトレオタイド(octreotide)、オキシトシン(oxytocin)、ピトレシン(pitressin)、セクレチン(secretin)、シンカリド(sincalide)、テルリプレシン(terlipressin)、チモペンチン(thymopentin)、チモシン(thymosine) al、トリプトレリン(triptorelin)、ビバリルジン(bivalirudin)、カルベトシン(carbetocin)、シクロスポリン、エキセジン(exedine)、ランレオタイド(lanreotide)、LHRH(luteinizing hormone−releasing hormone)、ナファレリン(nafarelin)、副甲状腺ホルモン、プラムリンタイド(pramlintide)、T−20(enfuvirtide)、チマルファシン(thymalfasin)およびジコノタイドを含む。
【0040】
本発明の好ましい具現例によれば、粘性組成物はエネルギーをさらに含む。この場合、マイクロ構造体は熱エネルギー、光エネルギー、電気エネルギーなどのようなエネルギー形態を伝送または伝達するための用途に利用され得る。例えば、光力動治療(photodynamic therapy)において、マイクロ構造体は光が直接的に組織に作用できるようにするかまたは光感応性(light−sensitive)分子のような媒介体に光が作用するように、身体内の特定部位に光を誘導することに利用され得る。
【0041】
本発明の方法を説明するために用いられた、用語、“下部基板”は、本発明の他の形態で用いられる用語、“上部基板”および“蓋基板”との混同を避けるために本明細書上にて定義して用いる用語に該当する。下部基板とは、本発明の方法のうち、段階(a)で粘性組成物を滴下(dropping)または塗布(coating)するために用いる基板を意味する。本明細書上において、“下部基板”とは、一般に平面状の下部基板を指し示すものと理解され得るが、下部基板は必ずしも平面状である必要はなく、遠心力の印加とともに粘性組成物が下部基板から離脱するのを防止するために、粘性組成物と一時的な相互結合を形成することができるのであれば、その形態は制限されず、具体的に、例えば注射針のような中空の円筒状、針のようなアスペクト比が長い円筒状(参照:図30)であり得る。
【0042】
粘性組成物を滴下または塗布するための下部基板は特に制限されず、例えば、ポリマー、有機化学物質、金属、セラミック、半導体などの物質で製造され得る。下部基板上に粘性組成物を滴下または塗布する時には下部基板それ自体を用いることができ、コート組成物を利用して下部基板をコーティングした後に用いることもできる。本明細書において、用語、“コート組成物”は本発明で使われる基板をコーティングするために用いる組成物であって、基板の上で多様な構造を形成できるように粘性を有する物質を意味する。ただし、コート組成物は、下部基板上に滴下または塗布される粘性組成物との区別のためにその用語を別表現にしたが、実質的に使用できる物質の種類は同一である。このようなコート組成物の粘性は組成物に含まれる物質の種類、濃度、温度または増粘剤の添加などにより多様に変化させることができ、本発明の目的に適合するように調節することができる。
【0043】
本明細書において、用語、“滴下(dropping)”は、粘性組成物を基板上に滴形態で粘性組成物を用意することを意味する。
【0044】
本明細書において、用語、“塗布(coating)”は対象の表面上にある特定物質の一定厚さの層を作ることを意味する。
【0045】
本発明の他の具現例によれば、粘性組成物は滴(drop)形態(form)で前記下部基板上に位置する。すなわち、粘性組成物は滴形態で前記下部基板上に滴下され得る。
【0046】
本発明の一具体例によれば、前記滴は前記粘性組成物の特性(properties)、前記下部基板の特性または前記粘性組成物の特性と下部基板の特性を変化させることによって、前記滴の形状(shape)および/または前記下部基板との接触面積が調節される(図1)。
【0047】
前記粘性組成物の特性は、粘性組成物を下部基板に滴下するとき、形状に変化を与えるものであればよく、特に限定されないが、例えば粘性組成物の親水性(hydrophilicity)、粘度(viscosity)である。また、前記下部基板の特性は、粘性組成物を基板に滴下するとき、形状に変化を与えるものであればよく、特に限定されないが、例えば基板の親水性、基板表面の粗さ(roughness)、基板表面の物理的パターンまたは親水性パターンである。粘性組成物と下部基板との間の親水性の差が大きいほど同じ量の粘性組成物を滴下するとき、粘性組成物と基板との間の接触面積は狭くなり、遠心力の印加時に高いアスペクト比のマイクロ構造体が生成される。反対に粘性組成物と下部基板との間の親水性の差が小さくなるほど粘性組成物と基板との間の接触面積は広くなり、遠心力の印加時にアスペクト比が小さいマイクロ構造体が生成される。また、粘度の大きい粘性組成物を用いる場合、下部基板上に滴下した滴の形状は球状に近くなり、遠心力の印加時に高いアスペクト比のマイクロ構造体が生成される。粘度の小さい粘性組成物を用いる場合には、これとは反対に下部基板上に滴下した滴は広く広がる形状(widely spread shape)に近くなり、遠心力の印加時に小さいアスペクト比のマイクロ構造体が生成される。一方、下部基板表面の粗さ(roughness)が大きいほど基板上に滴下した形状は球状に近くなり、遠心力の印加時に高いアスペクト比のマイクロ構造体が生成される。反対に下部基板表面の粗さが小さくなるほど基板上に滴下した粘性組成物の滴状は広く広がった状に近くなり、遠心力の印加時に小さいアスペクト比のマイクロ構造体が生成される。
【0048】
前記下部基板の性質を説明するために用いた用語、‘基板表面の物理的パターン’は、基板上に一定間隔で溝を設けて形成したパターンを意味する。
【0049】
また、前記下部基板の性質を説明するために用いた用語、‘基板表面の親水性パターン’は、基板上に一定間隔で親水性領域と疎水性領域が繰り返し配列されたパターンを意味する。
【0050】
前記下部基板の性質のうち基板表面の物理的パターンまたは親水性パターンの多様な適用は下記のように具体化される。
【0051】
最初の具体例によれば、下部基板上に一定間隔の溝を設けて物理的パターンを形成することである。この場合、粘性組成物を物理的にパターンが形成された領域に塗布または滴下することによって、粘性組成物と下部基板との間の接触面積を狭くすることができ、段階(b)の遠心力の印加時に、高いアスペクト比のマイクロ構造体を生成することができる。この場合、下部基板上の所望しない領域に粘性組成物が塗布されることを防止し、用いる粘性組成物の損失を最小化する効果も発揮される。
【0052】
二番目の具体例によれば、下部基板を親水性領域と疎水性領域とが繰り返し配列されるように設計することである。この場合、粘性組成物は、粘性組成物の親水性または疎水性特性によって、下部基板における付着の容易な領域に塗布または滴下され、例えば粘性組成物が親水性である場合には下部基板の親水性領域に主に塗布または滴下される。また、粘性組成物を下部基板上に全体的に塗布または滴下しても下部基板の付着の容易な領域に粘性組成物が集まり、粘性組成物と下部基板との間の接触面積を狭くすることができ、段階(b)の遠心力の印加時に、高いアスペクト比のマイクロ構造体を生成することができる。前記の物理的パターンを形成する時と同様に、この場合にも下部基板上の所望しない領域に粘性組成物が塗布されることを防止して、用いる粘性組成物の損失を最小化する効果も発揮される。
【0053】
三番目の具体例によれば、前記最初の具現例と二番目の具現例の両方を利用したものである。この場合、下部基板は物理的に溝を形成しており、粘性組成物をパターン化されるように用意することができ、全体としてまたは滴下するときにも重力の影響および親水性または疎水性粘性組成物の化学的性質によりパターン化された領域に粘性組成物が集まれるようにして、粘性組成物と下部基板との間の接触面積を狭くすることができ、段階(b)の遠心力の印加時に、高いアスペクト比のマイクロ構造体を生成することができる。
【0054】
本発明の他の具現例によれば、前記滴形態を構成する粘性組成物の量を調節して前記マイクロ構造体の形状を多様に調節することができる。
【0055】
図2は粘性組成物の量に応じて遠心力の印加によって生成されるマイクロ構造体の形状の変化を現わす。一定量以上の粘性組成物を下部基板上に滴形態で滴下する場合、遠心力の印加時に上端部が球状であるマイクロ構造体が生成される。
【0056】
段階(b):粘性組成物に遠心力を印加(applv)させ前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造。
【0057】
続いて、前記粘性組成物に遠心力を印加して粘性組成物の引張(extension)を誘導し、これを硬化させて高いアスペクト比を有するマイクロ構造体を製造する。図3は遠心力を利用したマイクロ構造体製造方法の概念図である。
【0058】
本発明の段階(b)における“遠心力を印加(apply)”するとは、粘性組成物が滴下または塗布された下部基板が円運動をするようにして求心力が作用する反対方向に慣性を受ける状態に置かれることを意味する。
【0059】
遠心力の印加は当業界に公知された多様な方式を通じて実施することができる。粘性組成物を用意した下部基板を固定させて回転させることができる装置を利用することができ、好ましくは回転速度と回転加速度、回転時間の調節ができる装置を利用する。粘性組成物が用意された下部基板は回転軸と一定の半径距離を維持しながら、所望のマイクロ構造体の引張方向に沿って遠心力が加えられる方向と所定の角度を維持するように固定して、遠心力を印加する。
【0060】
回転を通した遠心力の印加によって生成されたマイクロ構造体を硬化する過程を経て3次元のマイクロ構造体を形成する。
【0061】
本発明の他の具現例によれば、前記段階(b)は硬化(solidifying)が同時に起きるように実施することができる。粘性組成物を回転させる過程で自然に硬化が同時に進行され得る。
【0062】
本発明の他の具現例によれば、本発明は遠心力の調節を通じて長さ、直径およびアスペクト比(aspect ratio)から構成された群から選択される前記マイクロ構造体の少なくとも一つのディメンジョン(dimension)を調節することができる。本明細書で用いられた用語、“長さ”は、マイクロ構造体の上端部から支持体表面までの垂直の長さを意味する。本明細書おいて用いられる用語、マイクロ構造体の“上端部”とは、最小直径を有するマイクロ構造体の一末端部を意味する。本明細書おいて用いられる用語、マイクロ構造体の“直径”は最大値を有するマイクロ構造体の一断面の直径を意味する。本明細書において、“アスペクト比(aspect ratio)”は、生成されたマイクロ構造体の長さと直径の比率を意味するもので、アスペクト比が大きいほど相対的に長さが長く、直径が小さいことを意味する。下部基板上に用意された粘性組成物に印加される遠心力が大きくなれば生成されたマイクロ構造体の直径は小さくなり、長さおよびアスペクト比は大きくなる。反対に印加される遠心力が小さくなれば生成されたマイクロ構造体の直径は大きくなり、長さおよびアスペクト比は小さくなる(図4)。
【0063】
本発明の他の具現例によれば、本発明の下部基板は一定のパターンの屈曲または凹凸が形成された表面を有する。屈曲または凹凸の形状は特に制限されず、例えば図5に示した通り、屈曲または凹凸が形成された表面を有する。前記一定のパターンの屈曲または凹凸が形成された表面を有する下部基板上に粘性組成物を均一に塗布し、遠心力を印加すれば、基板上の高い部分と低い部分の位相差によって粘性組成物が引っ張られマイクロ構造体を形成することになる。
本発明の一具体例によれば、本発明の段階(b)の引張は前記屈曲または凹凸の最高点(highest point)から前記遠心力の方向に前記マイクロ構造体の上端部を形成させる。これは前述の通り、基板上の高い部分と低い部分の位相差によるものである。
【0064】
本発明の他の具現例によれば、本発明の遠心力の印加は調節された回転加速度で実施し、これによって前記粘性組成物の引張角度が調節され、これによって変形された形状を有するマイクロ構造体が製造される。図6は調節された回転加速度によるマイクロ構造体の形状変化を示したものである。回転加速度が大きい値で維持されるほど粘性組成物はその引張方向が回転加速度の反対方向でさらに曲がることになる。これを通じて垂直形状ではない、変形された形状のマイクロ構造体を得ることができる。
【0065】
本発明の他の具現例によれば、本発明は前記下部基板の平坦度(flatness)または均一度(uniformity)にかかわらずマイクロ構造体を製造ができることを特徴とする方法を提供する(図7)。
【0066】
本発明の他の具現例によれば、本発明は前記段階(a)および(b)の間に次の段階(ab)をさらに含むことを特徴とする方法を提供する:(ab)前記下部基板上に用意された前記粘性組成物を空洞を有する蓋基板で覆う段階。
【0067】
前記空洞の形状は特に限定されず、所望のマイクロ構造体の形状に応じて多様に選択が可能である。例えば、前記空洞は円、楕円または多角形の形状である(図8a)。図8bに示した通り、下部基板上に用意された粘性組成物を空洞を有する蓋基板で覆った後に遠心力を印加すれば、蓋基板の空洞位置にある粘性組成物は蓋基板の空洞を通過して引張が誘導され、マイクロ構造体が生成される。本具現例を説明するために用いた用語、“蓋基板”は前記の他の具現例で用いた用語、“下部基板”および今後用いられる用語、“上部基板”と区分するために本明細書上で定義して用いる用語に該当する。蓋基板の用意に対しては前記下部基板に対する説明内容と同一であり、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために重複する部分に限ってその記載を省略することにする。
【0068】
本発明の他の具現例によれば、本発明の段階(b)は追加的な上部基板を利用して実施し、前記上部基板は前記粘性組成物から空間的に離隔した上部に位置し、前記段階(b)での粘性組成物の引張は前記粘性組成物の一部が前記上部基板に結合するようにし、結局(whereby)、前記下部基板および前記上部基板の間に互いに連結されて形成されるかまたは前記下部基板および前記上部基板のそれぞれに結合されて両マイクロ構造体が分離された形態で形成されたマイクロ構造体が製造される方法を提供する。
【0069】
本具現例を説明するために用いた用語、“上部基板”は前記の他の具現例で用いた用語、“下部基板”および“蓋基板”と区分するために本明細書上で定義して用いる用語に該当する。上部基板の用意に対しては、前記下部基板に対する説明内容と同一であり、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために重複する部分に限ってその記載を省略することにする。図9は本具現例に対する概念図を示す。下部基板に用意された粘性組成物が遠心力の印加によって引張されることになり、上部基板に接触および結合することになる。この時、前記下部基板および前記上部基板の間に互いに連結されて形成されるかまたは前記下部基板および前記上部基板のそれぞれに結合して両マイクロ構造体が分離された形態で形成されたマイクロ構造体が製造される。本具現例において、前記下部基板と上部基板の間の距離を調節することによって生成されるマイクロ構造体の形状を調節することができる(図10)。図10に示した通り、両基板間の距離が遠くなるほど細くて長い高アスペクト比のマイクロ構造体が得られる。また、本具現例において、遠心力が印加される時間によって生成されるマイクロ構造体の形状を多様に変化させることができる(図11)。遠心力が印加される時間が長くなるほど上部基板に付着する粘性組成物の量が増加することになる。また、本具現例において、印加される遠心力の大きさを調節して生成されるマイクロ構造体の形状を多様に変化させることができる(図12)。印加される遠心力の大きさが大きくなるほど上部基板に付着する粘性組成物の量が増加することになる。また、本具現例において、基板上に滴形態で滴下される粘性組成物の量を調節して生成されるマイクロ構造体の形状を多様に変化させることができる(図13)。粘性組成物の量が多くなるほど粘性組成物に作用する遠心力の大きさは大きくなる効果があり、上部基板に付着する粘性組成物の量が増加することになる。
【0070】
本発明の他の具現例によれば、前記マイクロ構造体は前記下部基板および前記上部基板の間に互いに連結されて形成されたマイクロ構造体であり、前記方法は、前記段階(b)の以降に次の段階(c)をさらに含むことを特徴とする方法を提供する:(c)前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを移動させて、前記互いに連結されて形成されたマイクロ構造体を切断する段階。
【0071】
本発明の一具体例によれば、前記切断は前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを特定方向に移動させてなり、これを通じてマイクロ構造体が特定の角度を有するチップ(tip)が形成されるのである。
【0072】
本発明を説明するために用いる用語、“チップ(tip)”はマイクロ構造体の上端部の先端部位を意味する。すなわち、前記下部基板と粘性組成物が接している面から最も距離が遠いマイクロ構造体の端の部分を意味する。前記段階(c)での切断が前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを特定方向に移動させてなる場合に、前記チップはベベルアングル(Bevel angle)を有するようになる(図14)。マイクロ構造体のチップに形成されるベベルアングルに関しては、大韓民国特許第1195974号に記載されており、前記特許の内容は本明細書のベベルアングルを説明するために参照することができる。前記段階(c)において、前記下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを移動させる方向の設定を通じて簡単にベベルアングルを調節することができる。
【0073】
本発明の他の具現例によれば、追加的な上部基板を用いる具現例において、前記粘性組成物が親水性物質であり、前記下部基板および前記上部基板のうち少なくとも一つの表面が疎水性の性質を有するものであり得る。また、その反対の場合として、前記粘性組成物が疎水性の物質であり、前記下部基板および前記上部基板のうち少なくとも一つの表面が親水性の性質を有するものであり得る。
【0074】
このように粘性組成物と前記下部基板および前記上部基板のうち少なくとも一つの表面の親水性の性質が異なる場合、図15または図16に示したようなマイクロ構造体を生成することができる。
【0075】
本発明の一形態によれば本発明は次の段階を含むマイクロ構造体の製造方法を提供する(参照:図29上段):
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階。
【0076】
本発明の一形態は前述した発明の他の一形態において、下部基板の代わりに粘性組成物吐出部を含む中空型構造体を利用するという特徴を有する。本明細書上の“粘性組成物吐出部を含む中空型構造体”は、粘性組成物吐出部としての一つまたは二以上の空隙を含む一つの基板であることもあり、円筒状の中空型構造体を利用することができる(参照:図29)。
【0077】
本発明の一具体例において、本発明の“中空型構造体”は円筒状の中空型構造体である。さらに具体的には例えば、注射器用針の形状を有する円筒形シリンダーを利用することができる。中空型構造体の内部空隙である空いた空間に粘性組成物を位置させて、遠心力を印加し、その力によって粘性組成物の吐出部を通じて中空型構造体の空隙から粘性組成物が外部に排出されて引張され、マイクロ構造体を形成することができる。本明細書上の用語、“粘性組成物吐出部”とは、中空型構造体の内部の空いた空間が中空型構造体の外部に露出した部分を意味し、中空型構造体の内部空間と外部の通路を意味する。円筒形状の中空型構造体においては最も大きい遠心力を受ける円筒形構造体の空隙の末端を意味する。本発明の一形態は前述した下部基板を利用したマイクロ構造体製造方法において、下部基板の代わりに粘性組成物吐出部を含む中空型構造体を利用するという特徴を有するので、重複する内容に対しては本明細書記載の過度な複雑性を避けるために省略することにする。
【0078】
本発明のマイクロ構造体製造方法の応用として、既にマイクロ構造体が形成されている上部基板(参照:図25の上部基板)を利用して多層マイクロ構造体を製造することができる(参照:図26)。本明細書上の“多層マイクロ構造体”とは、複数回のマイクロ構造体製造過程を経て形成された二以上の層からなるか(参照:図25のA)、内部に他のマイクロ構造体を含む(参照:図25のB)マイクロ構造体を意味する。
【0079】
本発明のマイクロ構造体製造方法の他の応用として、下部基板および上部基板を利用したマイクロ構造体製造方法において、マイクロ構造体が形成された下部基板および上部基板の位置を相互変更して、マイクロ構造体製造過程を追加的に遂行し、これを通じて複数形状のマイクロ構造体を一つの平面上に製作することができる(参照:図27)。複数回の同一の製造過程を経て多様な形状のマイクロ構造体を一つの平面上に製作することができる。
【0080】
本発明の他の形態によれば、本発明は前記の方法によって製造されるマイクロ構造体を提供する。
【0081】
マイクロ構造体はそれらが有する物理的特性と高い集積度のような長所により多様な分野に活用される。マイクロ構造体としては、薬物伝達の効率性を最大化するためのマイクロニードル、フォトリソグラフィー(Photolithography)を基盤としたMEMSOnicro electro mechanic system)および半導体素子などの多様な用途で活用され得る。
【0082】
本発明のさらに他の形態によれば、図17に示した通り、本発明は次を含む遠心力によってマイクロ構造体を製造するための装置を提供する:(a)遠心分離機の回転軸に連結される回転アーム2;および(b)前記回転アームに連結されて粘性組成物を収容する下部基板1。
【0083】
前記回転アームは遠心分離機の回転軸と一体に提供されるか、回転軸に結合および分離される形態で提供され得る。回転アームはその長さを調節可能な形態で提供することができ、回転アームの長さによって粘性組成物の回転半径が決定され、これは遠心力の大きさを決める因子として作用することになる。前記下部基板は回転アームと一体に提供されるか、回転アームに付着および分離される形態で提供され得る。粘性組成物が下部基板に収容されるとは、下部基板に粘性組成物が滴下または塗布されることを意味する。
【0084】
本発明の一実施例によれば、本発明である遠心力によってマイクロ構造体を製造するための装置は遠心分離機の回転軸3をさらに含む(図18)。
【0085】
本発明の他の具体例によれば、前記装置は前記遠心分離機の回転軸に回転力を付与するモーター4をさらに含む(図18)。
【0086】
本発明の他の具体例によれば、前記装置は前記の構成の外部を取り囲むハウジング(housing)をさらに含むことができる。これを通じて装置の安全性を期し、マイクロ構造体の製造時に介入され得る外部の妨害要素を遮断する効果がある。
【0087】
本発明の一形態によれば、本発明は次の段階を含む中空型マイクロ構造体の製造方法を提供する(参照:図29下段):
(a)前述した本発明の他の一形態により製造されたマイクロ構造体に金属蒸着する段階;
(b)前記金属蒸着されたマイクロ構造体を金属でメッキする段階;
および
(c)前記マイクロ構造体を除去して中空型マイクロ構造体を収得する段階。
【0088】
本発明の形態において、前述した本発明の他の一形態により製造されたマイクロ構造体は中空型マイクロ構造体を製造するためのモールドの役割をする。本発明の段階(a)の金属蒸着は以降の中空型マイクロ構造体製造のための金属メッキ反応がさらによく起きるようにする過程に該当する。本明細書において、用語、“蒸着(deposition)”とは、物質の機械的強度を高めるためにコーティングさせようとする物質を物理的方法または化学的方法で気化または昇華させて原子または分子単位で基板表面に凝固するようにすることによって被膜を形成させることをいう。本発明の蒸着は当業界で通常的に利用されるすべての物理的蒸着(Physical Vapor Deposition)および化学的蒸着(Chemical Vapor Deposition)を用いることができる。本発明の蒸着用金属は例えばステンレス鋼、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)またはこれらの合金である。より具体的には、例えば、銀鏡反応(tollens reaction)を利用して化学的に銀(Ag)を蒸着させることができる。
【0089】
本発明の段階(b)でのように、既製造されたマイクロ構造体にメッキをすることで中空型マイクロ構造体を製造することができる。本発明によれば、メッキの厚さを調節することによって最終的に製造される中空型マイクロニードルの多様な外形的要素、すなわち外径および硬度を調節することができる。メッキの厚さを増加させるほど中空型マイクロニードルの外径および硬度が増加することになる。本発明で利用されるメッキ材料は、例えばニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、クロム、コバルト系合金、チタニウムおよびそれらの合金を含むが、これに制限されず、生体適用可能な金属として毒性や発がん性、人体拒否反応がなく、引張強度と弾性率、耐摩耗性など機械的性質が良好で、人体内の腐食環境に耐え得る耐腐食性を備える金属として当業界に知られているすべての金属を用いることができる。具体的には、例えば、本発明のメッキ金属はステンレス鋼、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)またはこれらの合金である。
【0090】
メッキ処理後、粘性組成物からなる内部マイクロ構造体を除去することによってメッキ処理した金属からなる中空型マイクロ構造体を製作することができる。粘性組成物からなる内部のマイクロ構造体は適切な有機溶媒を用いて溶解、または燃焼させるか、あるいは物理的に除去することができる。前記中空型マイクロ構造体の製造過程において、マイクロ構造体のチップの部分の空隙形成のために上端部を切削する過程をさらに含むことができる。
【0091】
本発明の一形態によれば、本発明は次の段階を含む薬物封入型マイクロ構造体の製造方法を提供する:
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してマイクロ構造体を製造する段階;
(c)前記段階(b)での遠心力の印加がなされる途中、または遠心力の印加が終了した後に前記吐出部を通じてマイクロ構造体内部に薬物を注入する段階。
【0092】
本明細書上の用語、“薬物封入型マイクロ構造体”とは、ソリッド構造体の内部に追加的な薬物が封入された形態で含まれているマイクロ構造体を意味する。本発明の前述した他の一形態のマイクロ構造体の製造において、粘性組成物はそれ自体が薬学的効能を有する物質であるか、薬学的効能を有する物質を含め得るが、本発明の形態のように追加的な薬物をマイクロ構造体の内部にさらに含むことができる。前記薬物に特に制限はなく、客体(subject)の皮膚を通じて提供する方が適切な薬物を好ましく含むことができ、本発明の他の一形態で具体的な例を前述した。
【0093】
本発明の一形態によれば、本発明は次の段階を含む中空型マイクロ構造体の製造方法を提供する:
(a)粘性組成物吐出部を含む中空型構造体の内部空間上に粘性組成物を用意する段階;および
(b)前記中空型構造体の吐出部を通じて粘性組成物が吐出されるように粘性組成物に遠心力を印加(apply)し前記粘性組成物の引張(extension)を誘導してソリッドマイクロ構造体を製造する段階;
(c)前記段階(b)での遠心力の印加がなされる途中、または遠心力の印加が終了した後に前記吐出部を通じてソリッドマイクロ構造体内部に気体または流体を注入して空いた空間を形成させる段階(参照:図31)。
【0094】
本発明の形態は、前述した金属メッキを通した中空型マイクロ構造体製造方法と関連した発明の他の形態において、金属蒸着、メッキおよびソリッドマイクロ構造体の除去過程を利用せずとも、粘性組成物からなる中空型マイクロ構造体を提供できる方法に該当する。本発明である中空型マイクロ構造体製造方法は、前述した“粘性組成物吐出部を含む中空型構造体”の製造方法と同じ方法で実施されるが、遠心力の印加がなされる途中、または遠心力の印加が終了した後に前記吐出部を通じてソリッドマイクロ構造体内部に気体または流体を注入して空いた空間を形成させる段階をさらに含む。ソリッドマイクロ構造体内部に気体または流体を注入する過程を通じて中空型マイクロ構造体を製造することができ、必要に応じて追加的に気体または流体を除去する過程を含むことができる。また、生成されたマイクロ構造体の上端部空隙形成可否により、追加的にマイクロ構造体の上端部を切削する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明の特徴および利点を要約すると次の通りである:
(a)本発明は、熱処理をしなくてもソリッドマイクロ構造体を製造することが可能な方法を提供する。これを通じて熱に敏感で容易に破壊または変性される多様な物質をマイクロ構造体に搭載することができる。これはマイクロニードルの適用可能分野をさらに拡張させる。
(b)本発明によれば、従来技術で利用していたモールドやフィラーのような他の構造体に接触せず非接触式でマイクロ構造体を製作することができる。これはマイクロ構造体の成形が終了した後、接触した構造体との分離過程または物理的破壊を通した切断過程により発生した損失および製作歩留まりの限界を克服できるようにする。
(c)本発明は、基板の平坦度や均一度にかかわらず高い歩留まりでマイクロ構造体を製造する方法を提供する。
(d)本発明は、滴下される粘性組成物の量、粘性組成物および基板の特性、回転半径、回転加速度、回転速度、回転持続時間などの調節を通じて多様な形状のマイクロ構造体を製造する方法を提供する。
(e)本発明は比較的迅速で簡便な工程で所望の形状およびディメンジョン(例えば、直径またはアスペクト比(aspect ratio))を有するマイクロ構造体を製造するようにする。このような特徴はマイクロ構造体の大量生産および品質管理がよくできるようにする。
(f)本発明において、下部基板および上部基板を利用する方法の場合には、一度の過程でより多くのマイクロ構造体の生産が可能となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】下部基板上に粘性組成物滴を互いに異なる形状(shape)および接触面積で滴下後、遠心力を印加した場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図2】下部基板上に互いに異なる量の粘性組成物を滴下後、遠心力を印加した場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図3】粘性組成物が用意された下部基板に遠心力を印加する方法に対する概念図を示す。
図4】互いに異なる大きさの遠心力を印加する場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図5】特定パターンの屈曲または凹凸を含む下部基板上に粘性組成物を塗布して遠心力を印加する時に生成されるマイクロ構造体を示す。
図6】互いに異なる回転加速度を適用する場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図7】下部基板の平坦度と均一度にかかわらず遠心力の印加によってマイクロ構造体が形成されることを示す。
図8a】蓋基板の平面図を示す。
図8b】蓋基板を用いた実施例を示す。
図9】上部基板をさらに含む実施例を示す。
図10】上部基板と下部基板の距離を異ならせた場合に生成されるマイクロ構造体の形状を示す。
図11】上部基板をさらに含む実施例において、遠心力の印加時間による上部基板および下部基板に生成されるマイクロ構造体の形状を示す。
図12】上部基板をさらに含む実施例において、印加される遠心力の大きさによる上部基板および下部基板に生成されるマイクロ構造体の形状を示す。
図13】上部基板をさらに含む実施例において、滴下される粘性組成物の量による上部基板および下部基板に生成されるマイクロ構造体の形状を示す。
図14】上部基板をさらに含む実施例において、下部基板および前記上部基板のうち少なくともいずれか一つを移動させて互いに連結されて生成されたマイクロ構造体を切断する場合に形成されるベベルアングルを示す。
図15】上部基板をさらに含む実施例において、親水性である粘性組成物を用いる時、上部基板および下部基板のうちいずれか一つが疎水性である場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図16】上部基板をさらに含む実施例において、疎水性である粘性組成物を用いる時、上部基板および下部基板のうちいずれか一つが親水性である場合に生成されるマイクロ構造体を示す。
図17】遠心力によってマイクロ構造体を製造するための装置を示す。
図18】遠心分離機の回転軸およびモーターを追加的に含む遠心力によってマイクロ構造体を製造するための装置を示す。
図19】遠心力を印加して形成したマイクロ構造体の形状を示す。
図20】下部基板および上部基板を利用して遠心力の印加を通じて製造したマイクロ構造体を示す。
図21】下部基板および上部基板を利用して遠心力の印加を通じて製造したマイクロ構造体を電子顕微鏡で観察した結果を示す。
図22】下部基板および上部基板を利用して遠心力の印加を通したマイクロ構造体の製造において、下部基板上に製造されたソリッドマイクロ構造体およびこれを皮膚に適用した後、4時間経過後のマイクロ構造体の溶解状態を示す。
図23】下部基板および上部基板を利用して遠心力の印加を通したマイクロ構造体の製造において、上部基板上に製造されたマイクロ構造体およびこれを皮膚に適用した後、4時間経過後のマイクロ構造体の溶解状態を示す。
図24】印加される遠心力の大きさを変化させて製造されるマイクロ構造体の形状を観察した結果を示す。
図25】既にマイクロ構造体が形成されている上部基板を利用して(A)複数層を有するかまたは(B)内部に他のマイクロ構造体を含むマイクロ構造体を製造する方法に対する模式図を示す。
図26】既にマイクロ構造体が形成されている上部基板を利用して複数層を有する多層マイクロ構造体を製造したことを示す。
図27】下部基板および上部基板を利用したマイクロ構造体製造方法において、マイクロ構造体が形成された下部基板および上部基板の位置を相互変更して、マイクロ構造体製造過程を追加的に遂行する複数形状マイクロ構造体の製造方法に対する模式図を示す。
図28】下部基板および上部基板を利用したマイクロ構造体製造方法において、マイクロ構造体が形成された下部基板および上部基板の位置を相互変更して、マイクロ構造体製造過程を追加的に遂行する方法を通じて製造した複数形状マイクロ構造体を示す。
図29】下部基板の代わりに粘性組成物吐出部を含む中空型構造体を利用するマイクロ構造体製造方法およびこれを通じて形成されたマイクロ構造体にメッキ処理過程を経て中空型マイクロ構造体を製造する方法に対する模式図を示す。
図30】平面上の下部基板に粘性組成物を滴下または塗布する代わりに針のような形態の下部基板を利用してマイクロ構造体を形成する方法を示す。
図31】遠心力を利用したマイクロ構造体の形成と同時に粘性組成物吐出部を通じて気体または流体を注入してマイクロニードル内に空いた空間を形成して中空型マイクロニードルを形成する過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨にしたがって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界で通常の知識を有した者において自明である。
【0098】
実施例
【0099】
実施例1:遠心力を利用した高アスペクト比マイクロ構造体の製造
ポリスチレン(Polystylene)基板(SPL Life Science)にカルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose、Sigma − Aldrich、Inc.)をコーティングした後、40重量%ヒアルロン酸(Soliance)粘性溶液滴(drop)を形成させた。引き続き、前記基板を遠心分離機(Beckman coulter)に装着し、遠心分離機を5g/sで加速した後、900gの重力加速度にて3分の間運行した。それから、遠心分離機を9g/sの速度で減速した。前記遠心力の印加過程を通じて、高アスペクト比のマイクロ構造体を製造した(参照:図19):有効長さ1,500m、上端部直径45um、下端部直径300um。
【0100】
一方、製造されたマイクロ構造体の硬化は別途の過程が不要で、遠心力を印加する過程で硬化が同時に発生した。
【0101】
したがって、本発明の遠心力の印加過程を通じて、高アスペクト比のマイクロ構造体を成功的に製作できることが分かる。
【0102】
実施例2:内部および外部の両基板を利用したマイクロ構造体の製造
29kDaヒアルロン酸(Hyaluronic acid)40%(w/v)溶液をディスペンサー(MUSASHI engineering、ML−5000XII)を利用して下部基板であるアルミニウム基板上に0.200MPaの圧力で0.220秒の間吐出して溶液滴を形成した後、遠心分離機(Hanil science industrial、Combi 514R)を利用して1mm間隔を置いた下部基板および上部基板である二つのアルミニウム基板の間で溶液滴を500gの遠心力で30秒の間回転させてマイクロ構造体を形成させた(参照:図20)。図20の左図は下部基板(内板)に形成されたマイクロ構造体であり、右図は上部基板(外板)に形成されたマイクロ構造体である。
【0103】
実施例3:電子顕微鏡を通したマイクロ構造体の形成確認
実施例2によって製造したマイクロ構造体を電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope、JSM−7001F、JE0L Ltd.,Japan)で観察した。上部基板および下部基板の両方でマイクロ構造体が形成された(参照:図21)。
【0104】
実施例4:マイクロ構造体パッチの人体吸収評価
実施例2によって製造したマイクロ構造体パッチを人体の皮膚に適用した後、4時間経過後マイクロ構造体の吸収の可否を確認した。図22は前記実施例2で下部基板上に形成されたマイクロ構造体を利用した結果であり、図23は実施例2で上部基板上に形成されたマイクロ構造体を利用した結果である。両方とも、マイクロ構造体が溶解して体内で吸収されたことを確認した。
【0105】
実施例5:遠心力の変化によるマイクロ構造体のアスペクト比変化試験
実施例2の方法を通じてマイクロ構造体を製造するにおいて、上部基板なしで下部基板のみを使用し、遠心力を400gまたは500gを印加して、生成されるマイクロ構造体の形状を観察した。500gの遠心力を印加した場合に生成されたマイクロ構造体のアスペクト比が400gを印加した場合に比べてより大きいことを確認し(参照:図24)、これは印加される遠心力の大きさを調節することによって、生成されるマイクロ構造体の形状を調節可能であることを示している。
【0106】
実施例6:多層マイクロ構造体の製造
下部基板および上部基板を利用した実施例2のマイクロ構造体製造方法において、既にマイクロ構造体が形成されている上部基板(参照:図25の上部基板)を利用してマイクロ構造体を製造した。上部基板上に既に形成されていたマイクロ構造体上に新しいマイクロ構造体が層をなし、多層マイクロ構造体を製造した(参照:図26)。これは多様な形状のマイクロ構造体を製造したり、複数の物質で構成されたマイクロ構造体を製造するのに遠心力を利用したマイクロ構造体製造方法を容易に適用できることを示している。
【0107】
実施例7:複数形状マイクロ構造体の製造
下部基板および上部基板を利用した実施例2のマイクロ構造体製造方法において、マイクロ構造体が形成された下部基板および上部基板の位置を相互変更して、実施例2のマイクロ構造体製造過程を追加的に遂行した(参照:図27)。これを通じて二つの形状のマイクロ構造体を一つの平面上に製作した(参照:図28)。これは複数回の製造過程を経て多様な形状のマイクロ構造体を一つの平面上に製作できることを示している。
【0108】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有した者にとってこのような具体的な技術は単に好ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が制限されないことは明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とその等価物によって定義されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25(A)】
図25(B)】
図26
図27
図28
図29
図30
図31