特許第6110815号(P6110815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110815
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/00 20060101AFI20170327BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   G01J1/00 B
   B60L5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-119530(P2014-119530)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-232499(P2015-232499A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000151036
【氏名又は名称】株式会社電業
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】早坂 高雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 政利
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優
(72)【発明者】
【氏名】吉原 誠
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275841(JP,A)
【文献】 特開2010−153151(JP,A)
【文献】 特開昭60−54094(JP,A)
【文献】 特開2002−329591(JP,A)
【文献】 特開2007−290329(JP,A)
【文献】 特開2000−315416(JP,A)
【文献】 早坂 高雅,“紫外線検出式離線測定装置の基礎特性”,平成24年電気学会産業応用部門大会(CD-ROM),2012年 8月21日,pp.V-215〜V-218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−13/00
5/00−5/42
15/00−15/42
B60M 1/00−7/00
G01J 1/00−1/60
11/00
H01L 33/00−33/64
H05B 37/00−39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子と、
前記光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御部であって、所定の発振周波数で発振する発振器と、前記発振器の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する計数器と、前記計数器の計数結果に基づいて前記光半導体素子を駆動する駆動回路とを有する発光制御部と、
前記光半導体素子が発した光を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づき、前記発振周波数を制御することにより前記光半導体素子の発光時間を修正する発光時間修正部と、
を備えた試験装置。
【請求項2】
前記光半導体素子は、紫外線発光ダイオードである、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記発振器は、
可変抵抗とコンデンサとからなる時定数回路を備え、前記可変抵抗の抵抗値と前記コンデンサの容量値により定まる時定数に応じた周波数で発振する、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御段階を含み、
前記発光制御段階は、
発振器が所定の発振周波数で発振する段階と、
計数器が、前記発振器の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する段階と、
駆動回路が、前記計数器の計数結果に基づいて前記光半導体素子を駆動する段階と、
前記光半導体素子が発した光を検出する段階と、
前記光を検出した検出結果に基づき、前記発振周波数を制御することにより前記光半導体素子の発光時間を修正する段階と、
を含む試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気鉄道システムにおいてパンタグラフがトロリ線から離線した時に発生するアーク光を検出する保安装置等を試験する試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道において、電力は変電所からトロリ線を通じて車両のすり板及びパンタグラフへと送られる。電車が走行している際に、トロリ線とすり板との接触が損なわて離線があると、その離線箇所でアーク放電が発生する。このアーク放電は、騒音、トロリ線及びすり板の損耗を引き起こすため、極力、発生がおこらないようにすることが望ましく、そのため、アーク放電が発生する箇所を正確に検出して、発生防止策を講じる必要がある。
【0003】
このアーク放電を検出する技術として、特許文献1及び2に示されるパンタグラフ離線検知装置が提供されている。これら特許文献1及び2に示されるパンタグラフ離線検知装置は、パンタグラフの近傍に設置された紫外光受光部と、車両の内部に配置されて該紫外光受光部で受光した光を光量測定器に伝送するプラスチック光ファイバと、を有する。前記紫外光受光部は、アーク光の所定の波長以下の紫外光成分を通過させるフィルタと、該フィルタを通過した紫外光を可視光に変換する蛍光ガラスとを有する。
【0004】
上記パンタグラフ離線検知装置では、前記紫外光受光部にて、前記フィルタにて所定の波長以上の非紫外光成分を取り除くことにより、アーク光に含まれる紫外光を、太陽光に対して高い割合で透過する。その後、前記蛍光ガラスにて前記紫外光を可視光に変換した後、前記プラスチック光ファイバを経由して前記光量測定器に伝送する。
【0005】
従来、上記パンタグラフ離線検知装置の動作確認や校正を行うための試験装置がある。通常、上記パンタグラフ離線検知装置の動作確認を行う場合、上記試験装置として可搬型の重水素ランプが用いられている。また、上記パンタグラフ離線検知装置の校正を行う場合、上記試験装置として、実際のアーク放電を発生させるための設備や、大型の重水素ランプとチョッパを備えた校正装置が用いられている。上記校正装置に備えられた重水素ランプの発光時間は、国際規格で定められた100マイクロ秒に設定されており、チョッパを用いて重水素ランプの発光時間を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−183088号公報
【特許文献2】特開2010−233391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記パンタグラフ離線検知装置の動作確認を行うための可搬型の重水素ランプは、アーク放電に比較して光量が小さいため、複数台の可搬型の重水素ランプを必要とする場合がある。また、上記パンタグラフ離線検知装置の校正を行うためのアーク放電を発生させる設備は大型であり、放電時に安全性に配慮する必要がある。更に、上記大型の重水素ランプを用いた校正装置は、チョッパによる複雑な制御を必要とする上、装置コストが上昇する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、可搬性に優れると共に、アーク放電を検出する装置の動作試験を簡易かつ安価に行うことができる試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の試験装置および試験方法を提案している。
本発明の一態様による試験装置は、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子と、前記光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御部と、を備えた試験装置の構成を有する。
また、前記試験装置において、例えば、前記発光制御部は、所定の発振周波数で発振する発振器と、前記発振器の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する計数器と、前記計数器の計数結果に基づいて前記光半導体素子を駆動する駆動回路と、を備える。
また、前記試験装置において、例えば、前記光半導体素子が発した光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出結果に基づき、前記光半導体素子の発光時間を修正する発光時間修正部と、を更に備える。
【0010】
上記構成によれば、発光制御部の制御の下、光半導体素子が紫外光を含んだ光を所定時間に亘って放出するので、気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電を検出する装置が光半導体素子から放出される光を受光することにより、アーク放電を発生させることなく、上記アーク放電を検出する装置の動作試験が可能になる。
【0011】
前記試験装置において、例えば、前記光半導体素子は、紫外線発光ダイオードである。
上記構成によれば、トロリ線とすり板との離線箇所で発生するアーク放電を模擬することができる
【0012】
前記試験装置において、例えば、前記発振器は、可変抵抗とコンデンサとからなる時定数回路を備え、前記可変抵抗の抵抗値と前記コンデンサの容量値により定まる時定数に応じた周波数で発振する。
上記構成によれば、可変抵抗の抵抗値を調整することにより、発振器の発振周波数の修正が可能となる。
【0014】
本発明の一態様による試験方法は、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御段階を含み、前記発光制御段階は、発振器が所定の発振周波数で発振する段階と、計数器が、前記発振器の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する段階と、駆動回路が、前記計数器の計数結果に基づいて前記光半導体素子を駆動する段階と、前記光半導体素子が発した光を検出する段階と、前記光を検出した検出結果に基づき、前記発振周波数を制御することにより前記光半導体素子の発光時間を修正する段階と、を含む試験方法を有する。
上記構成によれば、前述した試験装置に係る発明と同様の技術的効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、可搬性を改善することができると共に、アーク放電を検出する検出装置の動作試験を簡易かつ安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による試験装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態による試験装置の動作を説明するための波形図である。
図3】本発明の第2実施形態による試験装置の構成例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態による試験装置の動作を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による試験装置10の構成例を示す図である。
試験装置10は、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電を検出する検出装置の動作確認や校正に用いられるものである。試験装置10は、光半導体素子の一種である発光ダイオードからなる光源11と、所定の発光起動信号STに応答して光源11を所定時間に亘って発光させる発光制御部12とを備えている。
【0018】
光源11は、トロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発するものであり、例えば紫外線発光ダイオード(UV LED)が用いられる。ただし、この例に限定されず、トロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電を模擬することができることを限度として、光源11として任意の光半導体素子(発光素子)を用いることができる。
【0019】
発光起動信号STは、試験装置10を起動させて光源11を発光させるためのトリガー信号である。例えば、試験装置10をコンピュータ等の上位の制御装置の管理下に置く場合、発光起動信号STは、上位の制御装置から供給される制御信号である。また、試験装置10を手動で起動する場合、発光起動信号STは、手動による操作を示す信号である。
【0020】
また、本実施形態では、光源11の発光時間である上記所定時間は、トロリ線とパンタグラフのすり板の離線箇所で発生するアーク放電の検出について国際規格で定められた100マイクロ秒である。この国際規格では、上記アーク放電の検出装置の検出感度について、100マイクロ秒以下の光パルスに反応しなければならないことが規定されている。ただし、上記所定時間は、試験装置10の用途に応じて任意に設定し得る。
【0021】
光源11をなす発光ダイオードのアノードは発光制御部12の出力部に接続され、そのカソードは接地されている。光源11を発光させる場合、発光制御部12の出力電流Ioutが光源11に供給される。発光制御部12の出力電流Ioutは、直流電流であっても高周波電流であってもよいが、本実施形態では、発光制御部12の出力電流Ioutは直流電流であるものとする。
【0022】
発光制御部12は、発振器121、計数器122、駆動回路123から構成される。発振器121は、単安定マルチバイブレータから構成される。本実施形態では、発振器121は、図示しない可変抵抗とコンデンサとからなる時定数回路を備えた所謂CR発振器である。ただし、この例に限定されず、発振器121の構成は任意であり、例えば水晶発振回路から発振器121を構成してもよい。発振器121は、上記可変抵抗の抵抗値とコンデンサの容量値とにより定まる時定数に応じた所定の発振周波数で発振する。
【0023】
本実施形態では、発振器121は、光源11の発光周期(サイクル)の基本周波数を得るためのものであり、10kHzを含む周波数領域で発振周波数を調整可能なように構成されている。また、本実施形態では、発振器121の周波数領域は、約2kHz以下の第1周波数領域と、2kHzから10kHzまでの第2周波数領域とに区分されている。このような周波数領域の区分は、発振器121の周波数帯域として広範な周波数帯域を確保するために、容量値の異なる2つのコンデンサと1つの可変抵抗を用いて発振器121の時定数回路を構成したことに基づいている。このように容量値の異なる2つのコンデンサと1つの可変抵抗とを組み合わせて時定数回路を構成したことにより、可変抵抗のみでは得られない広範な周波数帯域に亘って発振周波数を安定化させると共に、発振周波数の精度を高めている。ただし、所望の光パルスを得ることができることを限度として、発振器121の発振周波数は任意に設定し得る。発振器121の発振出力は波形整形され、クロック信号CLKとして発振器121から出力される。
【0024】
計数器122は、光源11による光パルスの発光時間を定める計数信号CNTを発生させるものであり、発振器121の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する。本実施形態では、計数器122は、発振器121の発振出力に含まれるクロック信号CLKの立ち上がりエッジをトリガーとして計数を開始する。そして、計数器122は、計数値が所定の設定値に到達するまで計数を実施することにより、上記設定値に応じたパルス幅を有する計時信号CNTを出力する。
【0025】
計数器122の上記設定値は、光源11が発生させる光パルスのパルス幅、即ち光源11の所望の発光時間を規定する。上記設定値は、所望の発光時間(100マイクロ秒)を有する光パルスが光源11から放出されるように任意に定められる。本実施形態では、上記国際規格に規定された100マイクロ秒の光パルスが得られるように上記設定値が定められる。
【0026】
駆動回路123は、計数器122の計数結果に基づいて光源11を駆動するものである。本実施形態では、駆動回路123は、紫外線発光ダイオードからなる光源11を電流駆動することにより光源11を発光させる。駆動回路123は、計数器122から出力される計数信号CNTに基づいて光源11を電流駆動する。具体的には、駆動回路123は、計数信号CNTがハイレベルになると、光源11の電流駆動を開始し、計数信号CNTがローレベルになると、光源11の電流駆動を停止する。これにより、駆動回路123は、計数信号CNTがハイレベルの期間、光源11を電流駆動して発光させる。また、駆動回路123は、発光ダイオードからなる光源11を駆動する電流を得るために、必要に応じて昇圧回路を備えてもよく、その駆動方式自体は公知技術を用いることができる。
【0027】
次に図2を参照して、本発明の第1実施形態による試験装置10の動作を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による試験装置10の動作を説明するための波形図である。図2において、縦軸は各波形の振幅を示し、横軸は時間を示している。また、最上段の波形は、発光起動信号STの波形を示し、上から2段目の波形は、発振器121から出力されるクロック信号CLKの波形を示し、上から3段目の波形は、計数器122から出力される計数信号CNTの波形を示し、最下段の波形は、駆動回路123の出力電流Ioutの波形を示している。図2に示す各波形のスケールは実際のものとは異なり、図2は、各波形の変化の様子を模式的に示している。
【0028】
図2において、時刻t1以前で試験装置10の電源スイッチ(図示なし)が作業者により投入されると、発振器121が発振動作を開始し、一定時間経過後に発振器121の発振周波数が発振器121の上記定数回路の時定数に応じた一定の発振周波数に安定する。
【0029】
発振器121が発振した状態で時刻t1において発光起動信号STが試験装置10に供給され、発光起動信号STの信号レベルがローレベルからハイレベルに遷移すると、駆動回路123は、発光起動信号STがハイレベルに遷移した後の時刻t2で最初に到来するクロック信号CLKの立ち上がりエッジに対応した計数信号CNTの立ち上がりエッジに応答して、出力電流Ioutを光源11に供給する。これにより駆動回路123が光源11の駆動を開始し、光源11が発光する。
【0030】
一方、時刻t1において発光起動信号STの信号レベルがローレベルからハイレベルに遷移すると、計数器122が計数を開始する。計数器122が計数を開始すると、計数信号CNTの信号レベルはローレベルからハイレベルに遷移される。その後、時刻t3において計数器122の計数値が所定の設定値に到達すると、計数器122は、計数信号CNTの信号レベルをハイレベルからローレベルに遷移させる。
【0031】
なお、図において、点線により示される波形部分は、光パルスの発光時間を増加させるために、計数器122の所定の設定値を増加させた場合の波形の一例を示している。この例では、時刻t3の後の時刻t3’において計数信号CNTがハイレベルからローレベルに遷移し、計数器122の設定値の増分に応じて、光パルスの発光時間が延長される。ただし、この例に限らず、光パルスの発光時間が減少するように、上記設定値を減少させることもできる。
【0032】
計数信号CNTがハイレベルになると、駆動回路123は、出力電流Ioutの供給を停止し、光源11の駆動を停止する。これにより、時刻t2から時刻t3に亘って、出力電流Ioutとして100マイクロ秒の電流パルスが得られ、この電流パルスが供給される光源11が100マイクロ秒の光パルスを放出する。この後、計数器122および駆動回路123の動作状態が初期化され、次の発光動作に備える。
【0033】
光源が発生させた100マイクロ秒の光パルスは試験対象の検査装置の受光部に向けて照射される。検査装置では、試験装置10から受光された光パルスに反応するように、例えば各周波数帯の受光感度等の各種の校正が実施される。
【0034】
第1実施形態によれば、発光ダイオードからなる光源11を用いて光パルスを発生させるので、可搬型の重水素ランプを用いて光パルスを発生させる場合に比較して大きな光量を得ることができる。
【0035】
また、第1実施形態によれば、アーク放電を発生させる場合に必要とされるような大型の設備を必要とせず、重水素ランプやチョッパを用いる場合に比較して試験装置10を安価で小型に実現することができる。
【0036】
更に、第1実施形態によれば、アーク放電により光パルスを得る場合に比較して、光パルスを発生させるための準備作業を簡略化することができ、作業者の負担を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、光源11として紫外線発光ダイオードを用いたことにより、離線アークの紫外線検出装置の評価・試験を行うための試験装置の光源として、比較的高速で点滅が可能な小型の紫外線光源を実現することができ、また、一定の周波数範囲で精度の良い周期で発光制御が可能になる。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、第1実施形態による試験装置10の機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの何れの形態でも実現することができる。ソフトウェアの形態で実現する場合、例えば試験装置10はマイクロコンピュータを搭載し、このマイクロコンピュータ上で実行されるプログラムとして試験装置10の各種の機能を実現することができる。この場合、マイクロコンピュータの水晶発振回路を発振器121として流用してもよい。またこの場合、試験装置10は、タッチパネル方式の液晶パネルをユーザインターフェイスとして備えてもよく、これにより各種のスイッチ類を効率化することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、本発明を試験装置として表現したが、本発明は試験方法として表現することもできる。この場合、本発明による試験方法は、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御段階を含み、前記発光制御段階は、発振器が所定の発振周波数で発振する段階と、計数器が、前記発振器の発振出力に応答して計数を開始し、計数値が所定の設定値に到達したときに計数を停止する段階と、駆動回路が、前記計数器の計数結果に基づいて前記光半導体素子を駆動する段階と、を含む試験方法として表現することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図3は、本発明の第2実施形態による試験装置20の構成例を示す図である。
第2実施形態による試験装置20は、上述の第1実施形態による図1に示す試験装置10の構成において、光検出部13と発光時間修正部14とを更に備えている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
光検出部13は、光源11が発した光を検出するためのものであり、例えば、試験対象の検出装置の受光部の近傍に配置される。光検出部13は、負荷抵抗131とフォトトランジスタ132とから構成されている。負荷抵抗131の一端は電源VDDに接続され、負荷抵抗131の他端はフォトトランジスタ132のコレクタに接続されている。フォトトランジスタ132のエミッタはグランドGNDに接続されている。負荷抵抗131とフォトトランジスタ132のコレクタとの間の接続点の電圧信号は検出信号SENとして発光時間修正部14に供給される。
【0041】
発光時間修正部14は、光検出部13から検出結果として供給される検出信号SENに基づき、光源11の発光時間を修正するものである。具体的には、発光時間修正部14は、光検出部13から供給される検出信号SENがローレベルとなる時間を計測し、その計測により得られる時間と所望の発光時間(目標値)との差分が縮小するように計数器122の設定値を修正する。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態の動作を説明する。
図4は、本発明の第2実施形態による試験装置20の動作を説明するための波形図である。図4において、縦軸は各波形の振幅を示し、横軸は時間を示している。また、最上段の波形は、発光起動信号STの波形を示し、上から2段目の波形は、発振器121から出力されるクロック信号CLKの波形を示し、上から3段目の波形は、計数器122から出力される計数信号CNTの波形を示し、上から4段目の波形は、駆動回路123の出力電流Ioutの波形を示し、最下段の波形は、光検出器13から出力される検出信号SENを示している。図4に示す各波形のスケールは実際のものとは異なり、図4は、各波形の変化の様子を模式的に示している。
【0043】
上述した第1実施形態と同様に、時刻t1以前で、試験装置20の電源スイッチが投入されると、発振器121から一定の周波数を有するクロック信号CLKが出力される。時刻t1において発光起動信号STの信号レベルがローレベルからハイレベルに遷移すると、駆動回路123は、発光起動信号STがハイレベルに遷移した後の時刻t22で最初に到来するクロック信号CLKの立ち上がりエッジに応答して、出力電流Ioutを光源11に供給する。これにより光源11が発光する。
【0044】
一方、時刻t1において発光起動信号STの信号レベルがローレベルからハイレベルに遷移すると、計数器122が、時刻t1の後の時刻t2におけるクロック信号CLKの立ち上がりエッジに応答して計数を開始し、時刻t2から時刻t3に亘ってハイレベルの計数信号CNTを出力する。
【0045】
駆動回路123は、時刻t2で計数信号CNTがハイレベルになると、光源11に対する出力電流Ioutの供給を開始し、時刻t3で計数信号CNTがローレベルになると、出力電流Ioutの供給を停止する。これにより、光源11は、時刻t2から時刻t3に亘って発光して光パルスを発生させる。
【0046】
光検出部13は、光源11が発生させた光パルスを受光し、この光パルスを受光している期間、ローレベルの検出信号SENを発光時間修正部14に供給する。発光時間修正部14は、光検出部13から供給される検出信号SENがローレベルに維持される時間を計測する。そして、発光時間修正部14は、検出信号SENがローレベルに維持される時間と所望の発光時間との差分が縮小するように、計数器12の設定値を調整する。即ち、発光時間修正部14は、光源11の発光時間が所定時間(所望の発光時間)となるように計数器12の設定値をフィードバック制御する。
【0047】
なお、本実施形態では、計数器12の設定値をフィードバック制御することにより光源11の発光時間を制御するものとしているが、発振器121の発振周波数を制御することにより光源11の発光時間を制御するものとしてもよく、光源11の発光時間を制御することができることを限度として、任意の回路パラメータを調整してもよい。
【0048】
第2実施形態によれば、光源11の発光時間が所定時間となるように計数器12の設定値をフィードバック制御するので、第1実施形態に比較して、光源11が発生させる光パルスの発光時間の精度を向上させることができる。
従って、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電を検出する検出装置の動作確認や校正の精度を改善することができる。
【0049】
なお、第2実施形態では、本発明を試験装置として表現したが、本発明は試験方法として表現することもできる。この場合、本発明による試験方法は、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電に含まれる紫外光を含む光を発する光半導体素子を所定時間に亘って発光させる発光制御段階を含み、更に、光検出部が、前記光半導体素子が発した光を検出する光検出段階と、発光時間修正部が、前記光検出部の検出結果に基づき、前記光半導体素子の発光時間を修正する発光時間段階と、を含む試験方法として表現することができる。
【0050】
以上、第1および第2実施形態の各実施形態によれば、試験装置の可搬性を改善することができると共に、アーク放電を検出する検出装置の動作試験を簡易かつ安価に行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の第1および第2実施形態では、発振制御部12は発振器121と計数器122とを備えるものとしたが、所望のパルス幅を有する光パルスを得ることができることを限度として、その構成は任意である。例えば、発振器121と計数器122とに代えて、発光起動信号STに応答して所定パルス幅のワンショットパルス信号を発生させるパルス信号発生回路を用いることもできる。
【0052】
また、光源11として紫外線発光ダイオードを用いるものとしたが、電気鉄道システムにおけるトロリ線とパンタグラフのすり板との離線箇所で発生するアーク放電を表現し得ることを限度として任意の発光素子を用いることができ、その個数および配列は任意である。
【符号の説明】
【0053】
10,20…試験装置、11…光源、12…発光制御部、13…光検出部、14…発光時間修正部、121…発振器、122…計数器、123…駆動回路、131…負荷抵抗、132…フォトトランジスタ。
図1
図2
図3
図4