(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110847
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】水素転化用装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/00 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
C10G45/00
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-514505(P2014-514505)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2014-520185(P2014-520185A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012040132
(87)【国際公開番号】WO2012170272
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】61/494,320
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/162,742
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソング、スティーブン エックス.
(72)【発明者】
【氏名】クエン、ドナルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ケムン アブデヌール
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ、ブルース
【審査官】
村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−097041(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0223924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素転化反応器用の格子板アセンブリーであって:
当該水素転化反応器を、格子板上部の上のゾーンと格子板ボトムの下のゾーンに分割する上部及びボトムを有する格子板;
格子板を通って伸びる複数のチューブラーライザー;
を含み、
ここで、各チューブラーライザーは、少なくとも1つの外側に配置された開口及び少なくとも1つの外側に配置されたバーティカルスロット、開放エンドを有し当該格子板ボトムの下に伸びている下部区域及びバブルキャップで密閉されて当該格子板上部の上に伸びている上部区域を含み、
ここで、各チューブラーライザーにおける当該少なくとも1つの外側に配置された開口及び当該少なくとも1つの外側に配置されたバーティカルスロットは、当該格子板ボトムから可変距離で配置されており、当該格子板ボトムの下のゾーン中の傾斜液面が、当該外側に配置されたバーティカルスロットと当該少なくとも1つの外側に配置された開口との間に維持されており、
ここで、当該少なくとも1つの外側に配置されたバーティカルスロットは、下部区域の長さの1/8〜1/2の範囲の長さで、当該下部区域の開放エンドから伸びており、そして、
ここで、当該外側に配置された開口は、チューブライザーの開放ボトムエンドの直径の1/16〜1/2の範囲の最短寸法を持つ当該格子板ボトムの下の1〜5”(25mm〜127mm)に配置されている、格子板アセンブリー。
【請求項2】
各チューブラーライザーにおける当該外側に配置された開口が、1/8〜1/2”(3mm〜13mm)の範囲の最短寸法を有する、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項3】
各チューブラーライザーの上部区域が、チューブラーライザー中で気液混合用の圧縮部分を含む、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項4】
各チューブラーライザーの上部区域中に圧縮部分の上に配置された逆止弁を更に含む、請求項3に記載の格子板アセンブリー。
【請求項5】
各チューブラーライザーにおける逆止弁が鋼球及びバルブシートを含む、請求項4に記載の格子板アセンブリー。
【請求項6】
バブルキャップが管状の形状である、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項7】
バブルキャップが鐘形である、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項8】
各チューブラーライザーが、同じ又は異なるサイズの複数の外側に配置された開口を有する、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項9】
各チューブラーライザーが、ライザーの鉛直の長さに沿って間隔が空いた複数の外側に配置された開口を有する、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項10】
チューブラーライザーが、ライザーの周囲に等距離に間隔が空いた複数の外側に配置された開口を有する、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項11】
各チューブラーライザーが、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の開放ボトムエンドとして外管と内管との間の環状の開口を定義する外管及び内管を含む、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【請求項12】
複数のチューブラーライザーの各々が、外側に配置された開口を少なくとも有し、少なくとも2つのチューブラーライザーは、異なるサイズの外側に配置された開口を有する、請求項1に記載の格子板アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスレフェレンス
この出願は、2011年6月7日の出願日を持つUS仮特許出願番号第61/494,320の米国特許法第119条の利益の権利を主張する。この出願は、その開示が参照によってここに取り込まれる前述の利益及び優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、水素転化プロセス用反応器中の分配器アセンブリー、当該分配器アセンブリーを含有する反応器、及び、水素転化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
「重」炭化水素供給流、特に、石油残油、タールサンドビチューメン、シェール油などは、硫黄、窒素、金属及び有機金属化合物などの望ましくない汚染物質を、一般的に含有する。炭化水素供給流から望ましくない成分を除去するための水素化処理などの水素転化プロセスは、重炭化水素フィードを接触処理する公知の方法であり、それらの商業的価値を増加させる。他の水素転化プロセスは、特に石炭などの化石燃料から合成ガスへ転化し、その後、FT触媒上で液体炭化水素に転化する、液体炭化水素を調製するフィッシャー・トロプシュ(FT)プロセスである。
【0004】
石炭又は重炭化水素供給原料をより軽質の生成物に転化するのにうまく使用されてきた接触反応器システムは、沸騰床反応器である。模範的な沸騰床反応器は、US特許No.4,400,263に記載されているようなH−石炭プロセスにおいて、US特許No.4,526,676に記載されているような残油を水素化処理するH−オイルプロセスにおいて、US特許No.4,886,644に記載されているような残油を水素化処理するLC−ファイニングプロセスにおいても、使用される。コロイド状の又は分子触媒を使用する重油供給原料のアップグレード用の他の模範的な沸騰床反応器システムは、US特許No.7,449,103に記載されている。水素転化用の他のタイプの反応器システムは、US特許公報Nos.2007/0140927A1及び2009/0134064A1に記載されているような内部循環スラリー反応器又は液体再循環反応器を、及び、US特許No.4,220,518に記載されているような流動床反応器を、含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上で示されたいくつかの反応器システムでは、格子板(又は分配器トレー)は、反応器のボトム区域を2つのゾーンに分割する。作動中、格子板上の触媒及びコークス凝集は、運転停止を必要とする反応器壁温度の大きな変動を引き起こし得るのであり、そして、運転時間を低減させ得る。格子板を通るガス及び液体流の改善された均一の分配は、反応器性能を最適化する上で、格子板上のコークス及び触媒の形成を最小化する上で、及び、プロセス運転時間を伸ばす上で、重要な要因である。ガス及び液体流の均一な分配用の改善された分配設計を持つ反応器システムの必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
1つの側面では、本発明は、触媒を使用して高い温度及び圧力で水素ガスでの炭化水素供給原料の水素転化用反応器に関し、当該反応器容器は、格子板アセンブリーを含有し、当該格子板アセンブリーは:当該反応器を、格子板の上のゾーンと格子板の下のゾーンの2つのゾーンに分割する格子板;水素ガス及び炭化水素供給原料を格子板の下のゾーンから格子板の上のゾーンに送るために、格子板を通って伸びる複数のチューブラーライザーを含むバブルキャップアセンブリー;格子板の上の上部区域及び格子板の下の下部区域を各々が有するチューブラーライザーであって、下部区域が、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の開放ボトムエンドで終端となり、上部区域が、収容蓋で終端となる密閉上部を有する、チューブラーライザー;開放ボトムエンドから伸びているバーティカルスロットを少なくとも有するチューブラーライザーの当該下部区域;作動中、格子板の下のゾーン中の液面がバーティカルスロットの上に及びサイドホール開口の下にあるように、十分なサイズで配置されたサイドホール開口を少なくとも有するチューブラーライザーの当該下部区域、を含む。
【0007】
1つの形態では、チューブラーライザーは、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の開放ボトムエンドとして外管と内管との間の環状の開口を定義する外管及び内管を有する二重管ライザーであり、そして、サイドホール開口が、外管上に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、改善された気液分配デバイスの形態を使用する反応器システムの高架図であり、当該反応器システムは、外部沸騰ポンプを使用する。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、バブルキャップアセンブリーの1つの形態の断面図である。
【0010】
【
図2B】
図2Bは、バブルキャップアセンブリーの第2の形態の断面図である。
【0011】
【
図3】
図3は、バブルキャップライザーを持つ格子板の1つの形態を例証する、
図1の反応器容器のフラグメントの分解斜視図である。
【0012】
【
図4】
図4は、バブルキャップアセンブリーを通る流れ分配を例証する概要図である。
【0013】
【
図5】
図5は、スラリー相反応器、及び、内部沸騰ポンプを有する沸騰床反応器、及び、ホットセパレーター、及び、どちらか又は両方の反応器で使用される改善された気液分配デバイス、を使用する水素転化システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な記述
1つの形態では、本発明は、炭化水素供給原料の水素転化用の高い圧力反応器容器用の、格子板などの、改善された気液分配デバイスに関する。改善された気液分配デバイスは、H−オイルプロセス、LC−ファイニングプロセス、H−石炭プロセス、重油アップグレードプロセス及び同様にその他で使用される公知の反応器用に使用できる。前述したように、これらの反応器の使用は、業界で周知である。ここに記載された形態が、まさに沸騰床反応器、スラリー反応器、再循環反応器、又は流動床反応器の範囲外の有用な用途を有し得ることは、当業者に明白であろう。それらは、例えば100〜5000psi及び300〜1800°Fなどの高い圧力及び高い温度で水素で炭化水素フィードを処理するために、液体、液体−固体スラリー、固体及びガスを高い温度及び圧力で反応させるのに適切な、固定床反応器、重合反応器、及び水素化反応器などの他のタイプの反応器において、個別に又は組合せて有用かもしれない。
【0015】
1つの形態では、反応器容器は、反応器内壁の周囲に接続した孔あき格子板を含有する。当該格子板は、反応器のボトム区域を2つのゾーンに分割する。当該板は、上部ゾーンで固体触媒粒子の固定床、スラリー床、又は沸騰床を支持するのに使用できる。当該格子板は、供給流が流れるために格子板孔を通って接続された複数のバブルキャップライザーを含有し、多数の気泡を形成して例えば触媒床又はスラリー床などの上部ゾーン中に入る。
【0016】
多数のライザー(短管)は、各々の格子板ホールから、反応器容器のサイズに依存して例えば約8〜24インチ、格子板裏面の下に、下向きに伸びている。各々のライザーは、ライザー管のボトムに少なくともバーティカルスロットを具備し、バブルキャップを通る2つの相の流れの役に立っている。当該スロットは、もしオイル表面の上昇レベルがライザー管のボトムに到達したならば蒸気がスロットを介してライザーに依然として入り得るような、サイズである。1つの形態では、当該スロットは、液面をスロットの中間高さ周辺に維持するようなサイズである。1つの形態では、当該スロットは、1/8”〜1”の範囲の幅及び2”〜12”の範囲の鉛直の長さを有する。他の形態では、鉛直の長さは、4〜6”の範囲である。他の形態では、当該スロットは、分配板の下のライザーの長さの1/8〜1/2の範囲の鉛直の長さを有する。
【0017】
例えば環状分配器又は噴霧器から反応器システム中に供給されたガスは、ボトムゾーン中で解放され、分配器トレーの下部に蓄積し、そして、ガスポケットを形成するであろう。スラリー触媒フィードを持つ1つの形態では、スラリーは、スロットの下部及びボトム開放エンドを通ってライザー中に流れる。過剰のガスは、液面を押し下げ、そして、スロットのトップ区域を通ってライザー中に流れるであろう。所望のガス速度では、定常状態液面がスロットの高さ内で確立される。分配器トレーを通過するガスの流れ分配は、トレーアセンブリーの平面度に敏感である。完全にレベル化されたトレーにとってさえ、ガス流分配は、液面の変化によっても影響されるであろう。
【0018】
当該反応器システムでは、スラリーは、カラムのボトムの内部ポンプを通って降下管から外へ放射状に排出される。このスラリー流の運動量は、それを壁に向かって押し、そして、壁領域に近接したより高いスラリーレベルを引き起こすであろう。例えばUS公報Nos.2007/0140927A1及び2009/0134064A1に開示されているような、スラリー触媒を使用する重油アップグレード用の反応器システムの1つの形態では、関連が参照によってここに含まれ、反応器システムは泡の多い体制中で操作され、そして、ガス速度は、液面をスロットの中間に押し留めるほど十分には高くないかもしれない。低いガス速度を有する操作では、スラリーレベルは、ライザー上のスロットを十分に覆ってカラムの中間のスロットのみをガスポケットにさらすのに十分に壁領域内で高いであろう。結果として、カラムの中間のバブルキャップのみが、通って流れるガスを有し、そして、壁に近接するバブルキャップは、主にスラリーを有し、それらを通って流れるガスは非常に少量かまたは存在しないであろう。より高い液面を持つカラムの一面上のバブルキャップ上のスロットは、液体中に完全に浸され得る。その結果、これらのバブルキャップを通るガス流は存在しないかもしれない。高い温度操作下では、これは、壁に近接したバブルキャップ中でのコークス形成に導き、最終的にこの領域での目詰まり及び非流体化を引き起こすであろう。
【0019】
改善された反応器システムでは、分配器板の下のライザー区域は、各々のライザー中へのガス流れ用のサイドホールを少なくとも有する。サイドホールは、例えば円形又は楕円形の異なる機何学的形状であることができる。1つの形態では、サイドホールは、各々のライザーの一面上にある。第2の形態では、各々のライザーの両面上にサイドホールがある。第3の形態では、複数のサイドホールは、ライザーの周囲の周りに等距離で間隔が空いている。第4の形態では、ホールを持つトップからボトムへの列でのライザーの鉛直の長さに沿った複数のサイドホールは、サイドホールの列のトップからボトムまで同じ又は異なるサイズである。
【0020】
1つの形態では、(最もトップの)サイドホール(のトップ)は、分配器板から1〜5”に配置されている。他の形態では、(最もトップの)サイドホール(のトップ)は、分配板から少なくとも2”に配置されている。
【0021】
サイドホールの1つの形態は、すべてのライザーにとって同じサイズである。他の形態では、サイドホールは、分配板上のライザーの配置に依存して異なるサイズである。1つの形態のサイドホールは、ホールとスロットとの間のスラリーレベルを維持するのに十分なサイズである。1つの形態では、当該ホールは、ライザー開口の直径(ライザー管の直径)の1/16〜1/2の範囲の直径を有する。他の形態では、サイドホールは、作動中の機器のサイズに依存して、1/16”〜1”の開口の範囲の直径(又は楕円形の開口の最短寸法)を有する。1つの形態では、サイドホールは、1/8〜1/2”の範囲の開口を有する。
【0022】
ライザー直径、粒子サイズ及び密度、流れ特性、流体特性、ガス及び液体及び/又はスラリー流れなどを含むがそれらに限定されない要因を考慮して、圧力バランスモデル、展開表設計ツール、及び、FLUENTなどの業界で公知の計算流体動的モデルパッケージを使用して、サイドホールの大きさをとることができる。スロット及びサイドホールを持つ改善されたライザー設計は、ガス速度に関して柔軟な操作を可能とし、ガス流分配は変化する液面に独立であり、レベル外の分配器トレーの許容範囲の均一のガス分配を可能にする。操作を設計仕様よりも高いガス速度で運転する時、ガスポケットが液面をより下に押して余分のガスがライザー上のスロットを通って流れることを可能にする一方で、当該区域を横断するガス流を依然として維持することが、予期される。
【0023】
反応器(充満)のボトム区域への触媒の逆流を妨げるための沸騰床の1つの形態では、格子板の上のライザー区域は、内部に流体流を制限するための逆止弁区域を有する。1つの形態では、逆止弁は、バルブシート及びボールを持つボール逆止弁を含む。改善された反応器システムの他の形態では、流体は、ライザー中に、すなわち、ライザー中の鋼球又は逆止弁などの可動部の内部で、遮るもののない流れが可能である。逆止弁の代わりに、1つの形態では、収縮された開口を持つバブルキャップライザー中の混合を高める例えばベンチュリ又はスロートノズルなどの圧縮部分を、バブルキャップライザーは具備する。当該圧縮部分は、流体特性及び操作条件などの要因を考慮して、高せん断二相流からの発泡形成を避けるようなサイズであることができる。
【0024】
改善された気液分配プロファイルを持つ反応器容器を例証する
図1を参照する。反応容器10は、重油及び水素含有ガスを供給するための入口管12を具備する。出口管24は、ライン24aを通って蒸気及び液体を抜き出すために設計されている。差込管15は、フレッシュな触媒フィード16用であり、退出管17は、使用済触媒14の抜き出し用である。重油供給原料はライン11を通って導入され、その一方で、水素含有ガスはライン13を通って導入される。当該2つのフィードは、反応器のボトム中のライン12を介して組合せて導入されてもよい。充満チャンバーであってもよい下部チャンバー40から床22の中に流体を分配するバブルキャップ19を含有する分配器板18を、当該フィードは通過する。液体とガスの混合物は上向きに流れ、そして、それにより、反応器10の内部又は外部にあってもよいリサイクルポンプ20によって運ばれるガス流及び液体流による沸騰運動の中に、触媒粒子が置かれる。このリサイクルポンプによって運ばれた上向きの液体流は、床22内の触媒粒子の質量を増大させるのに十分であり、こうして、方向矢印21によって示されるようにガス及び液体流が反応器10を通ることを展開する。
【0025】
ポンプによって供給される上向きの流れ及び重力によって供給される下向きの力に起因して、触媒床粒子は沸騰又は進行の上向きのレベルに到達し、一方、より軽質の液体及びガスはそのレベルを超えて上向きに動き続ける。触媒液体界面又は触媒の上部レベルは、23として示されており、そして、触媒反応ゾーンは分配器板18からレベル23まで横断して伸びる。定常状態では、ほとんどの触媒粒子は触媒液体界面23の上には上昇しない。界面23の上の容積29は、液体及び同伴ガス又は蒸気で満たされている。ガス及び蒸気は、リサイクルカップ30中で液体から分離され、そして、実質的に低減したガス及び蒸気含有量を持つ液体が、降下管25を通ってリサイクルされる。ガス、蒸気及び液体生成物は、管24を通って一緒に抜き出される。1つの形態では、複数の垂直方向の管27及び28は、反応ゾーンとリサイクルカップ30との間の流体連通を提供する。ガス同伴流体は、管27及び28を通って上向きに動き、そして、これらの管の上部端を出た時、流体の一部は、反対方向になり、リサイクル管25を通ってリサイクルポンプ20に下向きに流れ、それにより、反応器10の下部を通ってリサイクルされる。
【0026】
図2Bは、改善されたガススラリー分配用のバブルキャップアセンブリーの1つの形態を通る縦面図を例証する。この形態でのバブルキャップアセンブリーは、二重管ライザータイプであり、すなわち、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の環状の開口を定義する外管102及び内管103を有し、当該内管のトップ105を持つベルキャップ104を支持する。キャップハウジング(収容蓋)は、傾斜壁を持つ鐘形である。ベルキャップのボトムエッジ107は、鋸歯状三角形に刻んだり切り込みを入れたりできる。外管103のボトムエッジは、グリッドスペースの下の蒸気スペースと連通して、110で終端する。内管102のボトムエッジ111は、格子板の下の液体の下に隠れる。複数のスペーサー112は、内管と外管との間に配置されている。ガス流れ用の外管103上に少なくとも1つのサイドホール(開口)108がある。(図示されない)1つの形態では、外管102は、当該管の開放ボトム区域から伸びあがっている少なくとも1つのバーティカルスロットを含み、内管と外管との間の環状の開口を通って上向きに流れるガスの通過を可能とする。
【0027】
バブルキャップアセンブリーの第2の形態を通る縦面図を例証する
図2Bを参照する。この形態でのキャップハウジングは、管状の形状である。ライザー56は、下部チャンバー40と触媒床22との間の流体連通を提供する流体出口ポート60を含む。バブルキャップ19の下部エッジ19bが分配器板18の上に配置されるようなやり方で、バブルキャップ19は、溶接、座金、ボルト及びナット又はそれらの組合せなどの取付手段により、ライザー56に取付けられる。ライザー56は、ライザー56中への板18の下でのガスの通過を可能とするように配置された少なくとも1つのスロット58を含む。ガス流れ用にライザー56の内側に及びスロット58の上に少なくとも1つのサイドホール(開口)50がある。
【0028】
図3は、改善されたガススラリー分配用の
図1及び2Bのバブルキャップアセンブリー及び格子板18の形態の分解斜視図である。
【0029】
図4は、商業的な反応器システムでオイル/水素/触媒を模倣するために水/空気/砂が使用されている4フィートの直径カラムを持つ大スケール低温流での実験に基づき、
図2aのバブルキャップアセンブリーを通る流れ分配を例証する概要図である。図示されているように、ガス流の均一の分配が、ライザー上のサイドホールを横切る圧力降下(DP)制御を通して実現される。当該実験では、低温流ユニットは、6ミクロンの平均粒子サイズを有する細かいケイ砂である固体を0〜12%の固体濃度で操作される。格子板は、3”のキャップODを持つ合計で72のバブルキャップを有する。1つの実験では、従来技術で教示されているように触媒スラリーの逆流を妨げるためにバブルキャップ中にステンレス鋼球が設置されており、それは、当該球を支持するスロートを通る高速スラリー及びガス混合物流で望ましくない振動を発生する。第2の実験では、当該球は除去され、スロートのサイズが変更される。
【0030】
図5は、改善された格子板設計を取り込む模範的な沸騰床ハイドロプロセス反応器システム400を例証する。沸騰床ハイドロプロセスシステム400は、スラリー相水素化分解反応器402と、ホットセパレーター404と、スラリー相反応器402とホットセパレーター404との間に配置された沸騰床反応器430とを、含む。重油供給原料406は、触媒組成物408と最初にブレンドされて調整される。ミキサー410からの調整された供給原料は、ポンプ412によって加圧され、プレヒーター413を通過し、そして、スラリー相反応器402のボトムに又はその近くに配置された引込口418を通って水素ガス414と一緒にスラリー相反応器402中に連続的に又は周期的に供給される。スラリー相反応器402のボトムの撹拌器420は、供給原料406の中に、気泡422として図解されている、水素414をより均一に分散するのに役立つ。
【0031】
撹拌器420の代替としてまたは追加して、スラリー相反応器402は、リサイクルチャンネル、リサイクルポンプ、及び改善された分配器格子板(図示されない)を含むことができ、反応物質、触媒及び熱のより一様な分散を加速させる。供給原料406中のコロイド状の又は分子触媒は、触媒粒子424として図解されている。気泡422及び触媒粒子424を図中で見ることができるようにそれらは特大サイズで示されていることが、理解されるであろう。実際には、それらは肉眼では見にくい。
【0032】
重油供給原料406は、スラリー相反応器402中で水素及びコロイド状の又は分子触媒の存在下に触媒的にアップグレードされて、アップグレードされた供給原料426を形成し、それは、スラリー相反応器402のトップに又はその近くに配置された出口ポート428を通ってスラリー相反応器402から及び残留水素と一緒に連続して抜き出される。アップグレードされた供給原料426は、ポンプ432によって場合により加圧され、そして、沸騰床反応器430のボトムに又はその近くに配置された入口ポート436を通って沸騰床反応器430中に補足水素414と一緒に導入される。アップグレードされた供給原料426は、沸騰床反応器430の内部に触媒粒子424’として及び反応器430の上部区域中に424”として図解されている、水素及びスラリー触媒又は分子(コロイド状の)触媒をも含有する。改善された分配器格子板470を持つ沸騰床反応器430は、沸騰床反応器430のトップに又はその近くに出口ポート438をも含み、更にハイドロプロセスした供給原料440がそこを通って抜き出される。
【0033】
1つの形態では、分配器格子板470の上の拡張触媒ゾーン442は、多孔性の支持された触媒444を更に含む。他の形態では、水素転化は、スラリー触媒又は分子触媒のみで実施される。触媒フリーゾーン448は、分配器格子板470の下に配置される。上部の支持された触媒フリーゾーン450は、拡張触媒ゾーン442の上に配置される。スラリー触媒又は分子触媒424は、拡張触媒ゾーン442及び支持された触媒フリーゾーン448、450、452を共に含む沸騰床反応器430中で供給原料中にわたって分散されており、それにより、従来の沸騰床反応器中で触媒フリーゾーンを構成するものの中でのアップグレード反応を促進するのに有効である。沸騰床反応器430中の供給原料は、沸騰ポンプ454と連通してリサイクルチャンネル452の手段により、上部の支持された触媒フリーゾーン450から下部の支持された触媒フリーゾーン448まで連続して再循環される。リサイクルチャンネル452のトップには漏斗形状のリサイクルカップ456があり、そこを通って、上部の支持された触媒フリーゾーン450から供給原料が引き出される。リサイクルされた供給原料は、フレッシュなアップグレードされた供給原料426及び補足水素ガス434とブレンドされる。
支持された触媒を使用する1つの形態では、フレッシュな支持された触媒444が、触媒入口管458を通って沸騰床反応器430中に導入され、そして、使用済の支持された触媒444は、触媒抜出管460を通って抜き出される。沸騰床反応器430から抜き出されたハイドロプロセス供給原料440は、ホットセパレーター404中に導入され、そこでは、揮発分405は、ホットセパレーター404のトップから抜き出され、そして、触媒粒子424”を含有する非揮発分407は、ホットセパレーター404のボトムから抜き出される。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的では、反対に指示されていない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用されている量、パーセンテージ又は比率及び他の数値を表すすべての数は、用語「約」によってすべての場合に修正されていると理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているような、単数形「1」、「1つ」及び「当該」は、1つの対象に明白に及びはっきりと限定されていない限り、複数の参照を含むことが注目される。ここでは、「包含する」、「含む」、又は「有する」、「含有する」、「を含む」及びそれらの変形の使用は、その後にリストされた項目及びそれらの同等物と同様に追加の項目を含むことが、意味される。
【0035】
本発明は、その本質及び本質的な特性から離れることなく、他の特定の形態で具体化できる。記載された形態は、すべての点で、限定されずに例証としてのみ考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記述よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の同等物の範囲及び意味の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
(1)
触媒を使用して高い温度及び圧力で水素ガスでの炭化水素供給原料の水素転化用反応器用の格子板アセンブリーであって:
当該反応器を、格子板の上のゾーンと格子板の下のゾーンの2つのゾーンに分割する格子板;
水素ガス及び炭化水素供給原料を格子板の下のゾーンから格子板の上のゾーンに送るために、格子板を通って伸びる複数のチューブラーライザーを含むバブルキャップアセンブリー;
格子板の上の上部区域及び格子板の下の下部区域を各々が有するチューブラーライザーであって、下部区域が、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の開放ボトムエンドで終端となり、上部区域が、収容蓋で終端となる密閉上部を有する、チューブラーライザー;
開放ボトムエンドから伸びているバーティカルスロットを少なくとも有するチューブラーライザーの当該下部区域;
作動中、格子板の下のゾーン中の液面がバーティカルスロットの上に及びサイドホール開口の下にあるように、十分なサイズで配置されたサイドホール開口を少なくとも有するチューブラーライザーの当該下部区域、
を含む、格子板アセンブリー。
(2)
前記サイドホールが、チューブライザーの開放ボトムエンドの直径の1/16〜1/2の範囲の最短寸法を持つ開口用のサイズである、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(3)
サイドホールが、1/8〜1/2”(3mm〜13mm)の範囲の最短寸法を有する、(2)に記載の格子板アセンブリー。
(4)
前記サイドホール開口が、分配板の下の少なくとも1”(25mm)に配置されている、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(5)
前記サイドホール開口が、分配器板の下の1〜5”(25mm〜127mm)に配置されている、(3)に記載の格子板アセンブリー。
(6)
各チューブラーライザーが、下部区域の長さの1/8〜1/2の範囲の長さを持つ開放ボトムエンドから伸びているバーティカルスロットを有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(7)
上部区域が、チューブラーライザー中で気液混合用の圧縮部分を有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(8)
チューブラーライザーの上部区域中に圧縮部分の上に配置された逆止弁を更に含む、(6)に記載の格子板アセンブリー。
(9)
逆止弁が鋼球及びバルブシートを含む、(5)に記載の格子板アセンブリー。
(10)
圧縮部分を有する上部区域が、流体が収容蓋と圧縮部分との間で遮るものがなく動くことを可能とする可動部を有しない、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(11)
収容蓋が管状の形状である、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(12)
収容蓋が鐘形である、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(13)
チューブラーライザーが、同じ又は異なるサイズの複数のサイドホールを有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(14)
チューブラーライザーが、ライザーの鉛直の長さに沿って間隔が空いた複数のサイドホールを有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(15)
チューブラーライザーが、ライザーの周囲に等距離に間隔が空いた複数のサイドホールを有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(16)
チューブラーライザーが、水素ガス及び炭化水素供給原料の進入用の開放ボトムエンドとして外管と内管との間の環状の開口を定義する外管及び内管を含む、(1)に記載の格子板アセンブリー。
(17)
沸騰床反応器用の(1)に記載の格子板アセンブリー。
(18)
流動床反応器用の(1)に記載の格子板アセンブリー。
(19)
固定床反応器用の(1)に記載の格子板アセンブリー。
(20)
スラリー床反応器用の(1)に記載の格子板アセンブリー。
(21)
複数のチューブラーライザーの各々が、サイドホール開口を少なくとも有し、少なくとも2つのチューブラーライザーは、異なるサイズのサイドホール開口を有する、(1)に記載の格子板アセンブリー。