特許第6110867号(P6110867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6110867粉末の選択的溶融によって部品を製造するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110867
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】粉末の選択的溶融によって部品を製造するための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20170327BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20170327BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20170327BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20170327BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y30/00
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-539377(P2014-539377)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公表番号】特表2015-501245(P2015-501245A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】FR2012052426
(87)【国際公開番号】WO2013064767
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】1159958
(32)【優先日】2011年11月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リクス,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ビラロー,トマ
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0241947(US,A1)
【文献】 特開2010−042524(JP,A)
【文献】 特表2012−506803(JP,A)
【文献】 特開2010−196099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B22F 3/105
B22F 3/16
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の選択的溶融によって部品を製造するための装置であって、可動プレート(6)によって構成された底部を有する容器(5)と、粉末(2)を容器(5)内に入れる手段(1、3、9)と、容器(5)内の粉末の選択的溶融を生じさせるように設計されたレーザビーム(12)または電子ビームを発生および移動させる手段(10、11)と、を含み、可動プレート(6)の平面と平行な少なくとも1つの方向(X、Y)に可動プレート(6)を引っ張るための張力手段(24)を含み、
可動プレートが、張力手段が当接する少なくとも1つのリム(20、21、22、23)を含み、
可動プレート(6)のリム(20、21、22、23)と張力手段(24)との間に力分散スペーサ(26、28、29、30)が実装されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
張力手段が、2つの直交する方向(X、Y)に沿って配向された引張力を可動プレート(6)に受けさせるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
引張力が、可動プレートの二辺と平行であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
張力手段が、可動プレート(6)の少なくとも1つの縁(20、21)を通じて力を印加する、少なくとも1つのアクチュエータ(24)を含むことを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の装置。
【請求項5】
可動プレート(6)が、3mmから10mmの範囲内の厚み(e)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
張力手段が可動プレート(6)の下の可動支持体(7)上に実装されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
可動プレート(6)が、長方形または正方形の形状であり、その縁の各々に、容器(5)から下方に向かって延びるリム(20、21、22、23)を含み、各リム(20、21、22、23)は張力手段によって発生した力を受けることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームまたは電子ビームの支援を受けて粉末の選択的溶融によって部品を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、直接金属レーザ焼結または電子ビーム溶融の名称で知られる方法の支援を受けて、部品が製造されることを可能にする。
【0003】
方法は、作成される連続層の点の三次元座標を記録したデータ処理システムによって制御されるレーザビームまたは電子ビームを用いて粉末の連続層を溶融することによって、部品を製造するステップからなる。実際の形式において、垂直並進可能なプレートによって形成される底部を有する容器は、スクレーパの支援を受けてその底部に配置された粉末の第一層を有する。すると層は、プレートの上面に対応する底面と、レーザビームまたは電子ビームが向けられてその上を移動する上面とを有する。ビームによって生じるエネルギーは粉末を局所的に溶融させ、凝固時に粉末は金属部品の第一層を形成する。
【0004】
この第一層が作成された後、プレートは1層分の厚みに対応する距離にわたって降下され、次に粉末の第二層がスクレーパによって先行層の上にもたらされる。以前と同じ形式で、金属部品の第二層が、レーザビームまたは電子ビームの支援を受けて溶融することによって形成される。
【0005】
これらの作業は、部品全体が製造されるまで繰り返される。
【0006】
可動プレートは通常、アクチュエータを作動することによってそれ自体が容器の内部を垂直並進させられる可動支持体に、ネジによって保持されている。
【0007】
可動プレートの上面が部品の製造の間ずっと平坦であることを保証する必要がある。残念ながら、レーザビームまたは電子ビームの連続通過は可動プレートに熱応力を生じさせ、これはプレートが十分に硬くない場合に、プレートを変形させる可能性がある。
【0008】
十分な剛性を有するために、可動プレートはかなりの厚み、たとえばInconel718で作られたプレートでは約60ミリメートル(mm)の厚みを有する。
【0009】
このようなプレートの費用は非常に高く、可動プレートおよび部品を含むアセンブリは非常に重くもあり、このため輸送を困難にする。
【0010】
最後に、可動プレートは非常に優れた熱慣性を有し、したがって、たとえば応力を解放または緩和するための熱処理など、製造中または製造後に適用される熱処理の間、長い加熱時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の具体的な目的は、この問題に対して単純で、有効で、安価なソリューションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明は、粉末の選択的溶融によって部品を製造するための装置を提供し、本発明は、可動プレートによって構成された底部を有する容器と、粉末を容器内に入れる手段と、容器内の粉末の選択的溶融を生じさせるように設計されたレーザビームまたは電子ビームを発生および移動させる手段と、を含み、本発明は、プレートの平面と平行な少なくとも1つの方向に可動プレートを引っ張るための張力手段を含むことを特徴とする。
【0013】
可動プレートを引っ張ることにより、プレートの厚みが小さくても、プレートが平坦であることを効果的に保証することができるようにする。
【0014】
可動プレートの厚みおよびひいては重量ならびに熱慣性は、これにより低減されることが可能である。
【0015】
有利なことに、張力手段は、2つの直交する方向に沿って配向された引張力を可動プレートに受けさせるように設計されている。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、張力手段は、可動プレートの少なくとも1つの縁を通じて力を印加する、少なくとも1つのアクチュエータを含む。
【0017】
可動プレートはまた、張力手段が当接する少なくとも1つのリムも含んでよい。
【0018】
本発明の特徴によれば、可動プレートのリムと張力手段との間にスペーサが実装される。
【0019】
スペーサは、具体的にはリムに沿って力を分散させるのに役立つ。
【0020】
一例として、可動プレートは、3mmから10mmの範囲の厚みを有する。
【0021】
好ましくは、張力手段は可動プレートの下の可動支持体上に実装される。
【0022】
本発明の一実施形態において、可動プレートは、長方形または正方形の形状であり、その縁の各々に、下方に延びるリムを含み、各リムは張力手段によって発生した力を受ける。
【0023】
非限定例によって、および以下の添付図面を参照してなされる以下の説明を読むと、本発明がより良く理解されることが可能であり、本発明のその他の詳細、特徴、および利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】粉末の選択的溶融によって部品を製造するための、従来技術による装置の模式図である。
図2】従来技術において可動プレートが可動支持体上にどのように実装されるかを示す、詳細図である。
図3】本発明において可動プレートが可動支持体上にどのように実装されるかを示す、分解模式図である。
図4】本発明において可動プレートが可動支持体上にどのように実装されるかを示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
粉末の選択的溶融によって金属部品を製造するための周知の装置が、図1に示される。これは、金属粉末2を収容し、アクチュエータのロッド4によって垂直並進可能な底部3を有するタンク1と、底部が可動支持体7上に締結され、アクチュエータのロッド8によって同様に垂直並進可能な可動プレート6によって構成されている隣接する容器5と、を含む。
【0026】
装置はまた、水平面Aに沿って移動することによってタンク1から容器5に粉末を持って行くスクレーパ9と、レーザビームまたは電子ビームを発生する手段10であって、ビーム12を誘導および移動させるための装置11に結合されている手段とを、有する。
【0027】
この装置の支援を受けて金属部品を製造するステップは、以下のとおりである。
【0028】
まず、一定量の粉末2が水平面Aより上に来るように、タンク1の底部3が上方に移動させられる。次にスクレーパ9が、タンク1から来る粉末2の前記層をかき集めてこれを容器5に入れるように、左から右に移動させられる。粉末2の量およびプレート6の位置は、選択された一定の厚みの粉末の層を形成するように決定され、過剰な粉末15は容器16内に排出される。
【0029】
次にレーザビームまたは電子ビーム12が、走査された領域内で局所的に粉末2を溶融するように、容器5内に形成された層の所定領域を走査する。溶融した領域は、製造される部品の第一層13を形成するように凝固し、この層13は、たとえば10マイクロメートル(μm)から100μmの範囲の厚みを有する。
【0030】
次にプレート6が降下され、以前と同じ形式で粉末2の第二層が粉末の第一層の上にもたらされる。ビーム12の制御された移動により、金属部品の第二層14が第一層13上の粉末の溶融によって形成される。
【0031】
これらの作業は、部品全体が作成されるまで繰り返される。
【0032】
図2に示されるように、従来技術の装置において、可動プレート6はボルト17によって可動支持体7に締結されている。
【0033】
部品の製造中の可動プレート6の変形を回避するために、前記プレート6の厚みeは比較的大きく、たとえば約60mmである。上記で説明されたように、このようなプレートは比較的高額かつ重量があり、著しい熱慣性を有する。
【0034】
これらの欠点を緩和するために、本発明は、可動プレート6に張力手段を取り付けることを提案する。するとプレート6は、もはやネジによって可動支持体7に締結されない。
【0035】
より具体的には、可動プレート6は、上面18が容器の内側に向いて底面19が可動支持体7の方に向いている、長方形または正方形の形状である。
【0036】
底面19は、可動プレート6の周縁から可動支持体7に向かって下方に延びるリム20、21、22、23を有する。
【0037】
張力手段は、水平面内の軸Xに沿って配向された第一油圧アクチュエータ24を含む。第一アクチュエータの第一末端25は、リム20の全長に沿って延びるスペーサ26を介してリム20に当接し、第一アクチュエータ24の第二末端27は、リム21の全長に沿って延びるスペーサ28を介して、リム20に対向するリム21に当接している。
【0038】
張力手段はまた、軸Xに直交する軸Yに沿って水平面内に配向された第二油圧アクチュエータも含む。第二アクチュエータの第一末端は、リム22の全長に沿って延びるスペーサ29を介してリム22に当接し、第二アクチュエータの第二末端は、リム23の全長に沿って延びるスペーサ30を介して、リム22に対向するリム23に当接している。
【0039】
図示される実施形態において、可動プレートが引っ張られる軸XおよびYは、プレートの縁と平行である。
【0040】
アクチュエータを作動することにより、可動プレートは水平面内で引っ張られ(図3の矢印によって模式的に示されるとおり)、これによってその厚みも低減しながら、粉末の選択的レーザ溶融によって部品を製造している間、これが平坦であることを保証できるようにする。
【0041】
一例として、可動プレート6は、Inconel718で作られ、3mmから10mmの範囲の厚みeを有する。軸XおよびYに沿ったプレート6の寸法は、それぞれ250mmおよび250mmである。
【0042】
第一アクチュエータ24によって付与される力は100ニュートン(N)から1000Nの範囲内であり、第二アクチュエータによって付与される力は100Nから1000Nの範囲内である。
【0043】
可動プレート6の厚みおよびアクチュエータによって印加される力は、具体的にはKirchhof Love理論の支援を受けて、材料強度計算によって、より正確に決定される。
【0044】
当然ながら、たとえば油圧アクチュエータの代わりにネジアクチュエータなど、可動プレートを引っ張るためにいずれのタイプの手段が使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4