特許第6110903号(P6110903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110903
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】地中埋設杭撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20170327BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   E02D9/02
   E02D13/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-143740(P2015-143740)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-25534(P2017-25534A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年8月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514234584
【氏名又は名称】株式会社高橋重機
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 作司
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5700611(JP,B1)
【文献】 特開2007−332559(JP,A)
【文献】 特開2006−241919(JP,A)
【文献】 特開平11−286934(JP,A)
【文献】 特開2001−003363(JP,A)
【文献】 特表2008−504471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側破砕ビットが装着された筒状のケーシングと、内側破砕ビットが装着されたスクリューとを用いて、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法であって、
前記スクリューは、前記ケーシングの内部を上下移動及び回転可能に構成され、
前記ケーシングを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め工程と、
前記ケーシングを回転させながら下降させることにより、前記外側破砕ビットで地中を掘削しながら前記ケーシングが前記柱状改良杭の一部を包囲するまで前記ケーシングを地中に挿入する挿入工程と、
前記スクリューを前記ケーシングの上方位置にセットする掘削準備工程と、
前記ケーシングの内部を貫通するように、前記スクリューを回転及び下降させながら前記内側破砕ビットで前記柱状改良杭を破砕して掘削孔を形成する掘削工程と、
前記スクリューの基端側から圧縮空気を注入して先端側から噴射させることにより、前記掘削孔内に存在する前記柱状改良杭の破砕物を前記ケーシングの上部から排出する排出工程と、
を包含し、
前記ケーシングを地中に挿入したまま、前記スクリューを前記ケーシングから引き抜く第一準備工程と、
前記スクリューが引き抜かれた前記ケーシングの上部にホッパーを装着する第二準備工程と、
前記ホッパーを介して、前記ケーシングの上部から前記掘削孔の最深位置まで前記スクリューを再挿入する第三準備工程と、
前記スクリューを逆回転及び上昇させながら前記ホッパーに土壌を投入する充填工程と、
前記掘削孔に土壌が充填された状態で、前記ケーシングを引き抜く引抜工程と、
をさらに包含する地中埋設杭撤去方法。
【請求項2】
前記挿入工程において、前記ケーシングは、前記柱状改良杭を上から長手方向で1〜50%包囲する深さに到達するまで挿入される請求項1に記載の地中埋設杭撤去方法。
【請求項3】
前記挿入工程において、前記外側破砕ビットは、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転する請求項1又は2に記載の地中埋設杭撤去方法。
【請求項4】
前記掘削工程において、前記内側破砕ビットは、前記ケーシングの直径の90〜99%の回転径で回転する請求項1〜3の何れか一項に記載の地中埋設杭撤去方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物を建築する場合、その地盤の強度が不十分であることが判明すると、地盤を安定させるための地盤改良工事が行われることがある。例えば、「柱状改良工法」と呼ばれる地盤改良工事が知られている。柱状改良工法は、地盤を掘削してセメントスラリーを注入し、その状態で攪拌を行ってセメントスラリーと地盤に含まれる土壌とを混合し、その混合物を固化させて地中に柱状の杭を形成する工法である。この杭は柱状改良杭と呼ばれ、軟弱な地盤の上に建築された建物を安定化させるように機能するものである。柱状改良工法は、軟弱層が地表面から続いている場合に有効な工法であり、比較的小型の機械を用いて施工することができるため、近年、一般住宅向けの地盤改良工事において施工実績が増加している。
【0003】
地盤の深層部が軟弱である場合には、「スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法」と呼ばれる地盤改良工事が行われる。スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法は、地盤を掘削しながら、セメントスラリーの注入及び攪拌機による攪拌を行い、掘削が所定の深度に到達したら、攪拌機を上下に反復移動させることで、深層部でのセメントスラリーと土壌との混合性を高めたものであり、これも柱状改良工法の一種である。スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法では、攪拌機の攪拌速度、並びに上下移動速度(掘削速度及び引き揚げ速度)を管理することにより、高品質の柱状改良杭を形成することができる。
【0004】
このように、柱状改良工法によって地中に形成される柱状改良杭は、基本的にはセメントスラリーと土壌との混合物から構成される中実の柱状体であり、鉄骨等の筋材やピアノ線等の線材が含まれないコンクリートを主成分としたシンプルな構造物となる。
【0005】
ところで、土地を売却する場合、その土地に建築されている建物を解体し、整地することが求められることがある。ところが、上記のような地盤改良工事を施工した土地では、地中に柱状改良杭が残存しているため、地表面を更地にしただけでは不十分であり、柱状改良杭を撤去しなければ土地の評価額が低くなることがある。そこで、地中に杭等が埋設されている場合には、これらを完全に撤去する等して土地をほぼ元の状態に回復させることが望まれている。
【0006】
地中に埋設された杭を撤去する技術として、例えば、杭に振動を与えて周辺地盤との摩擦を低減することにより、杭を引き抜き易くする工法があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、地中に突き刺さっている既設杭を引き抜くために、チャック装置を備えた振動杭打機が使用される。この工法では、既設杭をチャック装置の中心に位置させた状態で振動杭打機を地盤の所定位置まで貫入し、チャック装置で既設孔を保持した状態で振動杭打機を上昇させる。これにより、既設杭は地中から撤去される。
【0007】
地中に埋設された杭を撤去する他の技術として、杭が埋設されている地盤に存在する地下水を利用し、杭が打設されている地層を緩ませた状態で杭を引き抜く工法があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、既設杭の内部に詰まった土砂等の充填物を既設杭の下端まで掘削し、土砂等を地下水とともに排出することにより、既設杭下端でボイリング現象を誘発させる。これにより、既設杭を支持している地盤に緩みが発生し、この状態で既設杭を一旦下方に貫入させた後、上方に引き揚げると、既設杭は地中から撤去される。
【0008】
地中に埋設された杭を撤去する別の技術として、杭を細かく切断した状態で繰り返し地上に排出する工法があった(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3によれば、既設杭の軸心近傍を掘削して貫通孔を形成し、この貫通孔の内部にガイドレールを敷設し、当該ガイドレールに既設杭を切断するための切断手段、及び切断片を地上に搬送するための排出手段を走行させている。既設杭は、切断手段による切断、及び排出手段による切断片の搬送が繰り返されることにより、地中から順次撤去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−146282号公報
【特許文献2】特開2000−352053号公報
【特許文献3】特開平7−216886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1〜3に記載される技術は、工場やビル等の比較的大規模な建築物に使用されることが多い既設杭を対象とした工法であり、近年、施工実績が増加している一般住宅向けの地盤改良工事等において用いられる柱状改良杭を想定したものではない。このため、特許文献1〜3の既設杭の撤去工法をそのまま柱状改良杭の撤去に転用すると、様々な問題が発生することが予想される。
【0011】
特許文献1の工法は、既設杭を撤去するために振動杭打機を使用しているが、一般住宅等に使用される柱状改良杭は、筋材又は線材を含まないため、既設杭と比べると脆く砕け易いものとなっている。そのため、振動杭打機を用いて柱状改良杭に振動を与えると、柱状改良杭が地中で破断し、地上に引き揚げることができなくなる虞がある。また、振動杭打機は大掛かりな装置構成となるため、日本の一般的な住宅地では、装置や機材の搬入自体が難しいケースが多いと予想される。
【0012】
特許文献2の工法は、それほど大掛かりな装置構成とはならないが、大量の地下水が土砂とともに地表に噴出するため、杭を引き揚げた後に泥水処理が必要となる。また、地下水が存在する地盤でなければ実施できないため、日本の一般的な住宅地において適用できるケースは限られている。
【0013】
特許文献3の工法は、既設杭に形成した貫通孔内部にガイドレール等の構造物を設置することから、径が大きい杭を対象とするものである。一般住宅等に使用される柱状改良杭は、通常、既設杭より径が小さいため、同様の工法を適用することは困難である。また、装置構成が複雑になるため、施工に多大なコストを要するという問題もある。
【0014】
このように、地中に埋設された既設杭を撤去する技術は種々が知られているが、地中に埋設された柱状改良杭を撤去するための技術については、柱状改良杭の歴史が比較的浅いこともあって、有効な工法は未だ開発されていないのが現状である。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、近年、一般住宅等に使用されるようになってきた筋材又は線材を含まない柱状改良杭を対象とし、地中に埋設された柱状改良杭を低コストで且つ確実に撤去する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係る地中埋設杭撤去方法の特徴構成は、
外側破砕ビットが装着された筒状のケーシングと、内側破砕ビットが装着されたスクリューとを用いて、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法であって、
前記スクリューは、前記ケーシングの内部を上下移動及び回転可能に構成され、
前記ケーシングを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め工程と、
前記ケーシングを回転させながら下降させることにより、前記外側破砕ビットで地中を掘削しながら前記ケーシングが前記柱状改良杭の一部を包囲するまで前記ケーシングを地中に挿入する挿入工程と、
前記スクリューを前記ケーシングの上方位置にセットする掘削準備工程と、
前記ケーシングの内部を貫通するように、前記スクリューを回転及び下降させながら前記内側破砕ビットで前記柱状改良杭を破砕して掘削孔を形成する掘削工程と、
前記スクリューの基端側から圧縮空気を注入して先端側から噴射させることにより、前記掘削孔内に存在する前記柱状改良杭の破砕物を前記ケーシングの上部から排出する排出工程と、
を包含し、
前記ケーシングを地中に挿入したまま、前記スクリューを前記ケーシングから引き抜く第一準備工程と、
前記スクリューが引き抜かれた前記ケーシングの上部にホッパーを装着する第二準備工程と、
前記ホッパーを介して、前記ケーシングの上部から前記掘削孔の最深位置まで前記スクリューを再挿入する第三準備工程と、
前記スクリューを逆回転及び上昇させながら前記ホッパーに土壌を投入する充填工程と、
前記掘削孔に土壌が充填された状態で、前記ケーシングを引き抜く引抜工程と、
をさらに包含することにある。
【0017】
上述のとおり、一般住宅向けの地盤改良工事において施工される柱状改良杭は、比較的新しい技術であるため、建物を解体して柱状改良杭が埋設されている土地を整地するというケースはまだそれほど多くはない。従って、地中に埋設されている柱状改良杭の撤去技術は、これから本格的に検討されていく技術であり、既設杭の撤去方法とは異なる新たな技術開発が望まれている。
そこで、本発明者らは、筋材又は線材を含まない柱状改良杭は、従来公知の既存杭と比較して脆く砕け易いという性質に着目し、鋭意研究の結果、柱状改良杭を対象とした新たな撤去工法を開発するに至った。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、第一段階として、外側破砕ビットが装着された筒状のケーシングを回転させながら下降させて地中に挿入することにより、柱状改良杭の一部がケーシングで包囲され、第二段階として、内側破砕ビットが装着されたスクリューを回転させながら下降させることにより、柱状改良杭が破砕される。このとき、スクリューをケーシングの内部を貫通するように下降させるため、スクリューは柱状改良杭までガイドされるとともに掘削時の横振れが抑制され、柱状改良杭を確実に破砕することができる。また、柱状改良杭の破片は、スクリューの基端側から注入し、先端側から噴射される圧縮空気の力により、ケーシングの上部から地上に排出される。柱状改良杭の破片は、筋材又は線材を含まないことから軽量であり、圧縮空気の力によって地上に排出することが可能である。このように、本発明では、既設杭を撤去する場合に従来は必要であった杭の引き抜き作業が不要となる。本発明は、脆く砕け易い柱状改良杭を無理やり引き抜くのではなく、敢えて地中で破砕してしまうことで、地中から撤去し易くするものである。また、破砕物の搬送に圧縮空気を利用しているため、掘削現場が水でぬかるんだり、薬剤で汚染されたりすることがない。従って、土地を回復させるにあたり、地盤の損傷や汚染を最小限に抑制することができる。
さらに、本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、上記第一準備工程乃至第三準備工程を実施した上で、スクリューを逆回転及び上昇させながらホッパーに土壌を投入する充填工程を行っている。これにより、土壌が掘削孔内に圧入されるため、掘削孔を隙間なく確実に土壌で埋めることができる。その結果、土地はほぼ元の状態にまで回復し、整地が完了する。
【0020】
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記挿入工程において、前記ケーシングは、前記柱状改良杭を上から長手方向で1〜50%包囲する深さに到達するまで挿入されることが好ましい。
【0021】
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、ケーシングが柱状改良杭を上から長手方向で1〜50%包囲するように地中に挿入すれば、地中の柱状改良杭と周囲の地盤との摩擦抵抗が十分に確保されるため、後の掘削工程においてスクリューが柱状改良杭に触れた際に柱状改良杭はスクリューとともに空回りすることなく、確実にスクリューによって破砕される。
【0022】
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記挿入工程において、前記外側破砕ビットは、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転することが好ましい。
【0023】
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、外側破砕ビットによる破砕範囲がケーシングの直径を確実に含むため、地盤の掘削時にケーシングをスムーズに下降させることができ、その結果、ケーシングの内部に柱状改良杭を確実に収容することができる。
【0024】
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記掘削工程において、前記内側破砕ビットは、前記ケーシングの直径の90〜99%の回転径で回転することが好ましい。
【0025】
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、内側破砕ビットがケーシングの内壁に干渉することがないため、ケーシング内をスクリューがスムーズに下降することができ、その結果、柱状改良杭を確実に破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の地中埋設杭撤去装置の構成図である。
図2図2は、本発明の地中埋設杭撤去方法の実施手順を示した工程説明図である。
図3図3は、本発明の地中埋設杭撤去方法の実施手順を示した工程説明図である。
図4図4は、本発明の地中埋設杭撤去方法を実施するにあたり、ケーシング及びスクリューと柱状改良杭との適切な位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を図1図4に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0032】
〔柱状改良杭〕
初めに、本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置において施工対象となる柱状改良杭について説明する。柱状改良杭は、前述したように、柱状改良工法やスラリー系機械攪拌式深層混合処理工法等の地盤改良工事を施工する場合において、地中に形成される筋材や線材を含まない中実の柱状体である。柱状改良杭の構成成分は、主に、セメントと土壌との混合物である。地盤改良工事を行うにあたっては、先ず、セメントスラリーが調合される。セメントスラリーの配合は、水/セメント比(重量比)として、50/50〜90/10、好ましくは60/40〜80/20、より好ましくは70/30に調整される。セメントスラリーに混合される土壌は、通常は地盤改良工事を行う地盤に存在する土壌(すなわち、掘削土)である。セメントスラリーと土壌との混合比率は、施工する地盤の状態(掘削土の種類、粒度、硬度、粘度、含水量等)を考慮し、施工後の柱状改良杭を含む改良地盤が、後述の許容鉛直支持力度を満たすように調整される。
【0033】
柱状改良杭は、地盤の掘削穴の内部に形成されるため、通常は円柱形状である。柱状改良杭のサイズは、掘削穴のサイズ、すなわち掘削条件によって決まる。柱状改良杭のサイズは、通常、直径が400〜1000mm、好ましくは500〜800mm、より好ましくは500〜600mmに設定され、高さが1〜10mに設定される。また、一般的な住宅地における地盤改良工事の場合、一回の工事において、10〜80本程度の柱状改良杭が住宅の基礎下方の地中に形成される。
【0034】
柱状改良杭は、安全性等の観点から一定の基準を満たすことが要求される。例えば、柱状改良杭を施工した改良地盤の指標として、許容鉛直支持力度が定められている。許容鉛直支持力度とは、地盤がせん断破壊するときの鉛直方向の極限支持力を所定の安全率で割った数値である。長期的に見た場合、改良地盤の許容鉛直支持力度は、20kN/m以上を達成することが望ましいとされている。また、柱状改良杭そのものの強度は、一軸圧縮試験において、600kN/m以上を達成することが望ましいとされている。
【0035】
〔地中埋設杭撤去装置〕
地盤改良工事によって形成した柱状改良杭を撤去する必要が生じた場合、地中埋設杭撤去装置が用いられる。本発明では、掘削機能を備えた工事用重機を地中埋設杭撤去装置に利用している。図1は、本発明の地中埋設杭撤去装置100の構成図である。地中埋設杭撤去装置100は、オーガー10、車両20、及びコンプレッサー30を備えている。
【0036】
オーガー10は、車両20に取り付けた状態で使用される。オーガー10には、スクリュー11又はケーシング12を装着することができる。スクリュー11は、地盤Gを掘削して柱状改良杭Pを破砕する機械部品であり、ケーシング12の内部を上下移動及び回転可能に構成されている。つまり、スクリュー11は、ケーシング12を貫通することができる。ここで、スクリュー11のうち、地盤Gを掘削する側(下側)を先端側11Aとし、その反対の上側を基端側11Bと規定する。スクリュー11は、回転軸Xに沿って延在するスクリューロッド11aと、スクリューロッド11aの周囲に螺旋状に形成される回転翼11bとを備えている。スクリューロッド11aの内部には回転軸Xに沿って中空部11cが形成されている。従って、スクリュー11は、回転軸Xの方向に沿って、基端側11Bからスクリューロッド11a内の中空部11cを介して先端側11Aまで通じる管状構造となっている。スクリュー11は、先端側11Aに柱状改良杭Pを破砕するための内側破砕ビット14が装着され、基端側11Bはオーガー10が接続可能に構成されている。オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させると、内側破砕ビット14及び回転翼11bによる地盤Gの掘削が進行する。そして、スクリュー11の進行方向(掘削方向)に柱状改良杭Pが存在すると、当該柱状改良杭Pは内側破砕ビット14により破砕される。オーガー10の駆動中、スクリューロッド11a内の中空部11cは、コンプレッサー30から供給された圧縮空気によって高圧に維持されている。このため、スクリュー11は、地盤Gの掘削土や柱状改良杭Pの破砕物によって閉塞されることはなく、掘削作業を継続することができる。
【0037】
ケーシング12は、スクリュー11の外径より大きい内径を有する筒状部材である。ケーシング12は、本来は掘削中の地盤Gの崩壊を防止するための機械部品であるが、本発明においては、柱状改良杭Pの一部(上部)を包囲してスクリュー11を柱状改良杭Pまでガイドするとともに、掘削時のスクリュー11の横振れ(回転振れ)を抑制する機能を有している。また、ケーシング12は、掘削土及び破砕物の散乱を防止する役割も担っている。ケーシング12を貫通するスクリュー11は、撤去対象となる柱状改良杭Pに合わせて交換可能である。そのため、スクリュー11は、種々のサイズのものが準備されている。典型的な一般住宅用の柱状改良杭を対象とする場合、スクリュー11のサイズは、外径400〜1000mm、長さ1000〜10000mmに設定される。ケーシング12は、スクリュー11が内部を貫通するときにスクリュー11がケーシング12の内壁と干渉しないように構成され、例えば、前述したサイズのスクリュー11と組み合わせる場合、内径が405〜1100mm、長さが1000〜10000mm程度に設定される。このように、ケーシング12のサイズ(内径)は、スクリュー11のサイズ(外径)より1〜10%程度、好ましくは1〜5%程度大きくなるように構成される。なお、スクリュー11及びケーシング12として、さらに長いサイズのものを要する場合は、既存のスクリュー11及びケーシング12を複数用意し、これらを縦に結合して使用することも可能である。ケーシング12は、下端側12Aに柱状改良杭Pの周囲の地盤Gを掘削するための外側破砕ビット13が装着され、上端側12Bには必要に応じてケーシングキャップ12Cが設けられる。オーガー10を駆動してケーシング12を回転させると、外側破砕ビット13による地盤Gの掘削が進行し、ケーシング12の進行方向(掘削方向)に柱状改良杭Pが存在すると、そのままケーシング12は柱状改良杭Pを包囲するように進行する。このとき、ケーシング12は、柱状改良杭Pの全体(全長)を包囲するのではなく、柱状改良杭Pを上から長手方向で1〜50%、好ましくは5〜30%包囲する深さに到達するまでケーシング12を進行させる。この場合、地中の柱状改良杭Pは周囲の地盤と完全に分断されることなく一部が接続された状態となっているので、柱状改良杭Pと周囲の地盤との摩擦抵抗が十分に確保される。従って、掘削時にスクリュー11が柱状改良杭Pに触れた際に柱状改良杭Pはスクリュー11とともに空回りすることはなく、確実にスクリュー11によって破砕される。柱状改良杭Pの破砕物は、ケーシング12の上端側12Bの開口部からそのまま排出することができる。従って、ケーシング12の開口部は、柱状改良杭Pの破砕物を排出する排出手段となる。なお、ケーシング12にケーシングキャップ12Cを設ける場合は、当該ケーシングキャップ12Cの側方に排出口(図示せず)を設ける。柱状改良杭Pの破砕物の排出工程については、後述の「地中埋設杭撤去方法」のところで詳しく説明する。
【0038】
車両20は、オーガー10に装着されたスクリュー11又はケーシング12を地盤Gに対して鉛直方向に立てた状態で支持しながら、オーガー10を掘削地点まで移動させる重機である。つまり、車両20は、スクリュー11又はケーシング12を柱状改良杭Pが埋設されている地点の上方位置にセットする位置決め手段となる。オーガー10の昇降動作(上下移動)は、車両20に設けられたクレーン21によって行われる。クレーン21は、オーガー10を昇降することにより、スクリュー11又はケーシング12を上下移動させることができる。例えば、オーガー10にスクリュー11を接続し、スクリュー11をケーシング12に対してフリー状態(完全に相対移動可能な状態)にしてクレーン21を上昇させると、スクリュー11をケーシング12の内部から引き抜くことができる。このように、クレーン21は、スクリュー11をケーシング12に対して相対移動させる移動手段となる。また、オーガー10にケーシング12を接続した状態でクレーン21を上昇させると、ケーシング12のみを上方に移動させることもできる。従って、クレーン21は、ケーシング12を地中から引き抜く引抜手段としての機能も有する。なお、図1では、車両20としてクレーンタイプの重機を示してあるが、昇降タイプの重機を使用することも可能である。昇降タイプの重機の場合、垂直上下方向に駆動する昇降機が移動手段及び引抜手段となる。
【0039】
本発明の地中埋設杭撤去装置100は、柱状改良杭Pの破砕物を圧縮空気の力で地上まで搬送するものである。そのため、圧縮空気源として、コンプレッサー30を備えている。コンプレッサー30は、内側破砕ビット14に圧縮空気を供給するように、オーガー10を介してスクリュー11の基端側11Bに接続される。スクリュー11の基端側11Bに注入された圧縮空気は、スクリューロッド11a内の中空部11cを通過し、スクリュー11の先端側11Aから内側破砕ビット14の周囲に噴射される。これにより、地中が高圧状態となり、柱状改良杭Pの破砕物は上方に押し上げられる。そして、柱状改良杭Pの破砕物は、ケーシング12の上端側12Bの開口部から地上に排出される。コンプレッサー30から吐出される圧縮空気は、コンプレッサー30の出力制御や、コンプレッサー30のバルブ31の調節により、適切な空気圧および吐出量に調整される。柱状改良杭Pの破砕物の搬送及び排出をスムーズに行うためには、コンプレッサー30から吐出される圧縮空気を、空気圧0.6MPa以上、吐出量5m/分以上に維持することが好ましい。なお、圧縮空気源として、コンプレッサー30の代わりに高圧の空気ボンベ(図示せず)を使用し、空気ボンベから噴射される圧縮空気によって柱状改良杭Pの破砕物を搬送及び排出することも可能である。
【0040】
〔地中埋設杭撤去方法〕
図2及び図3は、本発明の地中埋設杭撤去方法の実施手順を示した工程説明図である。図2及び図3においては、説明簡略化のため、図1に示していた車両20については記載を省略してある。図4は、本発明の地中埋設杭撤去方法を実施するにあたり、オーガー10と柱状改良杭Pとの適切な位置関係を示した説明図である。ここで、図4は、地盤側からオーガー10を見たものであるが、柱状改良杭Pとの位置関係を分かり易くするため、地中に埋設されている柱状改良杭Pの輪郭を破線で示してある。
【0041】
本発明の地中埋設杭撤去方法では、図2及び図3に示す(a)位置決め工程、(b)挿入工程、(c)掘削準備工程、(d)掘削工程、及び(e)排出工程が実施され、さらに、(f)第一準備工程、(g)第二準備工程、(h)第三準備工程、(i)充填工程、及び(j)引抜工程が実施される。その結果、(k)に示すように、整地作業が完了する。以下、地中埋設杭撤去方法の各工程について、詳細に説明する。
【0042】
図2(a)の位置決め工程では、ケーシング12を柱状改良杭Pの上方位置にセットする。地中の柱状改良杭Pの位置については、予め事前調査や建物の設計図面等から正確に把握しておくことが好ましい。車両20のオーガー10にケーシング12を取り付けた後、車両20を操縦して地盤Gの掘削地点まで移動し、オーガー10を撤去対象の柱状改良杭Pの上方に正確に配置する。このとき、ケーシング12が、上面視で柱状改良杭Pを包囲するように配置することが好ましい。すなわち、図4のように、ケーシング12が破砕対象の柱状改良杭Pを完全に取り囲むように位置決めする。
【0043】
図2(b)の挿入工程では、図2(a)の状態からオーガー10を駆動してケーシング12を回転させながら下降させることにより、ケーシング12の外側破砕ビット13で地中を掘削しながらケーシング12が柱状改良杭Pの一部を包囲するまでケーシング12を地中に挿入する。このとき、ケーシング12が柱状改良杭Pを上から長手方向で1〜50%、好ましくは5〜30%包囲する深さに到達するまで挿入する。この場合、地中の柱状改良杭Pと周囲の地盤Gとの摩擦抵抗が十分に確保されるため、後の掘削工程においてスクリュー11が柱状改良杭Pに触れた際に柱状改良杭Pはスクリュー11とともに空回りすることなく、確実にスクリュー11によって破砕される。ちなみに、ケーシング12として長さが2000mm程度のものを使用する場合、1500mm程度を地中に挿入すればよい。ケーシング12に取り付けられる外側破砕ビット13は、ケーシング12の直径より大きい回転径で回転させることが好ましい。この場合、外側破砕ビット13による破砕範囲がケーシング12の直径を確実に含むため、地盤Gの掘削時にケーシング12をスムーズに下降させることができ、その結果、ケーシング12の内部に柱状改良杭Pを確実に収容することができる。ケーシング12が所定の深さまで挿入され、柱状改良杭Pの一部を包囲していることが確認されたら、オーガー10をケーシング12から切り離す。
【0044】
図2(c)の掘削準備工程では、スクリュー11をケーシング12の上方位置にセットする。車両20のオーガー10にスクリュー11を取り付けた後、車両20を操縦してケーシング12の挿入地点まで移動し、オーガー10をケーシング12の上方に正確に配置する。このとき、スクリュー11の回転軸Xが、上面視で柱状改良杭Pの中心と略一致するように配置することが好ましい。すなわち、図4のように、スクリュー11がケーシング12の内側に完全に収まるように位置決めする。
【0045】
図2(d)の掘削工程では、オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させる。図2(c)の状態からスクリュー11を回転させて下降させると、スクリュー11の先端側11Aに装着されている内側破砕ビット14が地表面に接触して地盤Gの掘削が開始される。そして、このままスクリュー11の下降を続けると、スクリュー11はケーシング12を貫通し、掘削孔Hが形成される。このとき、ケーシング12は、スクリュー11を柱状改良杭Pまでガイドするとともに掘削時のスクリュー11の横振れを抑制するように機能する。スクリュー11に取り付けられる内側破砕ビット14は、ケーシング12の直径の90〜99%の回転径で回転させることが好ましい。この場合、内側破砕ビット14がケーシング12の内壁に干渉することがないため、ケーシング12内をスクリュー11がスムーズに下降することができ、その結果、柱状改良杭Pを確実に破砕することができる。スクリュー11によって破砕された柱状改良杭Pの破砕物pは、ケーシング12及び掘削孔Hの内部(内側)に留まっており、広範囲に飛散することはない。
【0046】
図2(e)の排出工程では、図1に示したコンプレッサー30を駆動し、スクリュー11に圧縮空気を供給する。スクリュー11の基端側11Bに注入された圧縮空気は、スクリューロッド11a内の中空部11cを通り、スクリュー11の先端側11Aから内側破砕ビット14の周囲に噴射される。これにより、地中が高圧状態となり、柱状改良杭Pの破砕物pが地上まで押し上げられる。そして、柱状改良杭Pの破砕物pは、ケーシング12の上端側12Bから外部に排出される。コンプレッサー30からスクリュー11への圧縮空気の注入量は、柱状改良杭Pの破砕物pの排出量に応じて適宜調整される。圧縮空気の注入量と、柱状改良杭Pの破砕物pの排出量とのバランスをとることで、柱状改良杭Pの撤去作業を連続的に行うことが可能となる。
【0047】
図2(d)の掘削工程、及び図2(e)の排出工程は、実際には、並行して又は交互に実施される。掘削工程と排出工程とを並行して実施する場合、両工程を同期させることが好ましい。この場合、オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させると同時に、コンプレッサー30からスクリュー11に圧縮空気を注入することで、両工程を同期させることができる。掘削工程と排出工程とを同期させると、柱状改良杭Pの破砕物pが地中に過剰に滞留したり、柱状改良杭Pの破砕物pが地上に一気に排出されたりすることなく、安定した定常状態で柱状改良杭Pの撤去作業を連続的に行うことが可能となる。掘削工程と排出工程とを交互に実施する場合は、夫々の作業を独立して行うことになるので、一人のオペレーターでも余裕を持って柱状改良杭Pの撤去作業を進めることができ、さらに、掘削工程と排出工程とを交互に反復実施することで、最終的に柱状改良杭Pを完全に撤去することが可能となる。このように、(a)位置決め工程、(b)挿入工程、(c)掘削準備工程、(d)掘削工程、及び(e)排出工程を実施することにより、地中に埋設された柱状改良杭Pは撤去される。そして、整地作業を完了するためには、引き続いて(f)第一準備工程、(g)第二準備工程、(h)第三準備工程、(i)充填工程、及び(j)引抜工程を実施する。
【0048】
図2(f)の第一準備工程では、ケーシング12を地中に挿入したまま、スクリュー11をケーシング12から引き抜く作業が行われる。スクリュー11の引き抜きは、スクリュー11をケーシング12に対してフリー状態(完全に相対移動可能な状態)にし、スクリュー11に接続したオーガー10を上昇させることにより行われる。スクリュー11が引き抜かれたケーシング12は、内部が空洞状態となり、掘削孔Hと連通している。
【0049】
図3(g)の第二準備工程では、スクリュー11が引き抜かれたケーシング12の上端側12Bにホッパー15を装着する。ホッパー15は、後の充填工程において、バックホー等の重機を用いて土壌を投入し易いよう、投入口15Aが拡大されている。
【0050】
図3(h)の第三準備工程では、ホッパー15の投入口15Aに、オーガー10に接続されたスクリュー11が差し込まれる。このとき、スクリュー11は、ケーシング12の上端側12Bから掘削孔Hの最深位置まで到達するように挿入される。
【0051】
図3(i)の充填工程では、ケーシング12から掘削孔Hの内部(空洞)にかけて新たな土壌Sが充填される。このとき、スクリュー11を逆回転及び上昇させながらホッパー15に土壌Sを投入すると、土壌Sが掘削孔H内に圧入されるため、掘削孔Hを隙間なく確実に土壌Sで埋めることができる。充填工程に使用される土壌Sは、土地をほぼ元の状態に回復させるという観点から、掘削を行った地盤Gを構成する土壌と同種の土壌が好ましいが、地盤の強度を確保できる土壌であれば、他の場所から持ち込んだ土壌であっても構わない。そのような土壌として、例えば、真砂、川砂、自然砕石、山ズリ等を使用することができる。充填工程は、土壌を効率よく扱うことができる充填手段、例えば、バックホー40を用いて行われる。バックホー40を用いて土壌Sの充填作業を行えば、複数の柱状改良杭Pの撤去作業を効率よく実施することができる。なお、ケーシング12の内径(すなわち、掘削孔Hの直径)が小さい場合は、バックホー40を用いるまでもなく、作業員が手作業により、ケーシング12の内部に土壌Sを充填するようにしても構わない。
【0052】
図3(j)の引抜工程では、オーガー10をケーシング12に接続し、オーガー10を上昇させてケーシング12を撤去する作業が行われる。ケーシング12を引き抜く際、ケーシング12に振動を付与しながらオーガー10を上昇させると、ケーシング12の外面に接触している地盤Gとの摩擦が低減されるため、撤去作業を容易に行うことができる。ケーシング12を引き抜くと、図3(k)に示すように、地盤Gの掘削により形成された掘削孔Hの埋め戻しが完了する。
【0053】
なお、図3(j)の引抜工程において、ケーシング12を地中から引き抜くと、ケーシング12の体積(厚み分)に相当する筒状の空隙が瞬間的に地盤Gに発生し、埋め戻した土壌Sが外側に拡がって地盤Gに緩みや窪みが発生することがある。そこで、このような不具合を未然に防止するため、図3(i)の充填工程において、周囲の地表面より若干高い位置まで土壌Sを過剰に充填することが好ましい。このような対策をしておくと、ケーシング12を地中から引き抜いた際、過剰に充填した土壌Sがケーシング12の体積減少分を補填し、地盤Gの緩みや窪みの発生を防止することができる。
【0054】
本発明の地中埋設杭撤去方法によれば、(a)位置決め工程、(b)挿入工程、(c)掘削準備工程、(d)掘削工程、(e)排出工程、(f)第一準備工程、(g)第二準備工程、(h)第三準備工程、(i)充填工程、及び(j)引抜工程を実施することにより、地中に埋設されていた柱状改良杭Pは土壌Sによって完全に置換され、その結果、土地は(k)のように、ほぼ元の状態に回復される。
【0055】
以上のように、本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置は、脆く砕け易い柱状改良杭を無理やり引き抜くのではなく、敢えて地中で破砕し、破砕物を圧縮空気の力によって地上に排出するという全く新しい技術を採用するものである。特に、本発明では、ケーシングを地盤に挿入して柱状改良杭の一部を包囲する第一段階と、ケーシングの内部をスクリューが貫通しながら地盤を掘削する第二段階とに分けて掘削作業を行っているため、柱状改良杭を確実に破砕し、地盤の損傷を少なく抑えることができる。また、この新技術によれば、掘削現場が水でぬかるんだり、薬剤で汚染されたりすることがないため、土地を回復させるにあたり、地盤の汚染を最小限に抑制することが可能となる。しかも、本発明は、低コストで且つ確実に地中埋設杭を撤去することができるため、特に、一般の住宅地の整地に適した工法となり得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置は、一般住宅向けの地盤改良工事において施工される柱状改良杭の撤去に利用可能であるが、筋材又は線材を含まない地中埋設物であれば、他の地中埋設物の撤去においても適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 オーガー
11 スクリュー
11a スクリューロッド
11b 回転翼
11c 中空部
11A スクリューの先端側
11B スクリューの基端側
12 ケーシング
12A ケーシングの下端側
12B ケーシングの上端側
12C ケーシングキャップ
13 外側破砕ビット
14 内側破砕ビット
15 ホッパー
20 車両(位置決め手段)
21 クレーン(移動手段、引抜手段)
30 コンプレッサー(圧縮空気源)
31 バルブ
40 バックホー(充填手段)
100 地中埋設杭撤去装置
G 地盤
H 掘削孔
P 柱状改良杭
p 破砕物
S 土壌
X 回転軸
図1
図2
図3
図4