(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鍵挿入孔を有した内筒、前記内筒を相対回転可能に収容保持する外筒、および前記外筒に対する前記内筒の相対回転を規制・解除するロック機構を備えた錠と、前記鍵挿入孔に挿入されて前記ロック機構による前記相対回転の規制を解除させるための鍵とから構成されるシリンダー錠において、
前記内筒が、前記鍵挿入孔を有するメイン内筒と、前記メイン内筒の外周部に配置されたサブ内筒とを備えて構成され、
前記ロック機構が、前記メイン内筒内に配置されて前記鍵挿入孔内に挿入された鍵と係合して軸直角方向に移動される第1タンブラーと、前記第1タンブラーと係合して前記サブ内筒内に配置されて前記第1タンブラーとともに軸直角方向に移動される第2タンブラーと、前記第2タンブラーの移動位置に応じて前記相対回転を規制・解除するロック部材とを備え、
前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとを係脱させるコード解除手段を備え、
前記鍵挿入孔内に所定の鍵を挿入して前記第1タンブラーを介して前記第2タンブラーをアンロック位置に移動させて前記ロック部材による前記相対回転の規制を解除した状態で、前記コード解除手段により前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとの係合を解除させ、前記所定の鍵に代えて第2の鍵を挿入して前記第1タンブラーのみを軸直角方向に移動させた後、前記コード解除手段により前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとを再び係合させることにより、前記第2の鍵のみにより前記第2タンブラーをアンロック位置に移動させることができるようにキーコード変換可能であり、
前記コード解除手段により前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとの係合を解除させたときに、前記第2タンブラーの少なくとも一部を受容保持する係止保持部が前記メイン内筒に形成されており、
前記コード解除手段は、前記メイン内筒に対して前記サブ内筒を軸方向に相対移動させて前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとの係合を解除させるように構成され、
前記係止保持部は、前記第1タンブラーと前記第2タンブラーとの係合を解除させたときに、前記第2タンブラーにおける前記第1タンブラーとの係合部を受容保持して、前記第1タンブラーとの係合が解除された状態で前記第2タンブラーが前記サブ内筒内で軸直角方向に移動しないように保持することを特徴とするシリンダー錠。
前記第2タンブラーがロック位置のときに前記ロック部材が前記サブ内筒と前記外筒とに跨がって前記相対回転を規制し、前記第2タンブラーがアンロック位置のときに前記ロック部材が前記サブ内筒内に入り込んで前記相対回転を許容するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシリンダー錠。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用したシリンダー錠(ディスクタンブラー錠)の鍵および錠の全体外観を示す斜視図である。
【
図2】前記シリンダー錠の全体外観を示す正面図である。
【
図4】前記シリンダー錠を構成する錠の軸方向に沿った断面図である。
【
図5】前記錠の一部を拡大して示す分解斜視図である。
【
図6】前記シリンダー錠において、錠に鍵を半挿入した状態での外観を示す正面図である。
【
図7】前記シリンダー錠において、鍵を半挿入した状態での半挿し防止タンブラーを有する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図8】前記シリンダー錠において、鍵を未挿入の状態での第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図9】前記シリンダー錠において、鍵を半挿入した状態での第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図10】前記シリンダー錠において、錠に鍵を完全挿入した状態での外観を示す正面図である。
【
図11】前記シリンダー錠において、鍵を完全挿入した状態での半挿し防止タンブラーを有する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図12】前記シリンダー錠において、鍵を完全挿入した状態での全体外観図[
図12(a)]および第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図[
図12(b)]である。
【
図13】前記シリンダー錠において、鍵を完全挿入してこれを時計回りに回転させるときにおける全体外観図[
図13(a)]および第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図[
図13(b)]である。
【
図14】前記シリンダー錠において、鍵を完全挿入してこれを時計回りにある程度回転させた状態での第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図15】前記シリンダー錠において、錠の後側を示す図である。
【
図16】前記シリンダー錠を構成する錠に変換治具を挿入した状態を示す軸方向に沿った断面図である。
【
図17】前記シリンダー錠において、錠を構成する外筒部材の仕切り壁の前面形状を示す斜視図である。
【
図18】前記シリンダー錠において、鍵により内筒をコード変換位置まで180度回転させた状態を示す斜視図である。
【
図19】前記シリンダー錠において、鍵により内筒をコード変換位置まで180度回転させた状態において、第1および第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図である。
【
図20】前記シリンダー錠における第1および第2タンブラーの形状および位置関係を示す斜視図である。
【
図21】前記シリンダー錠において、鍵により内筒をコード変換位置まで180度回転させた状態において、第2タンブラーを保持する部分の軸直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るディスクタンブラー錠DTKは、
図1および
図2に示すように、施錠および解錠操作を行うための鍵1と、この鍵1が挿入される鍵挿入孔(鍵穴)35を備えた錠2とから構成される。
【0013】
鍵1は、人が手で持って鍵挿入孔35に挿入して回転させて、錠2による施錠および解錠を行うためのもので、把持部11と挿入部12とを一体に有して構成される。把持部11は円盤状で図示のように指で持ちやすい形状になっている。挿入部12は帯板状に形成され、上下両面にそれぞれ独立してキー溝13が形成されている。さらに、挿入部12の片側端面に挿入方向に伸びる誤挿入防止突起15が設けられており、反対側端の根元部に側方に突出する解除突起14が設けられている。
【0014】
鍵1により施錠および解錠が行われる錠2は、
図3および
図4に示すように、前側が開口した円筒状の挿入空間21aを有する外筒部材21を備えて構成される外筒20と、挿入空間21a内に前側から回転自在に受容される内筒30と、挿入空間21a内において
内筒30に連結板63を介して連結されて外筒20の後側に突出するテール部6を備えて構成される。
【0015】
外筒20は、外筒部材21の後端面に皿ネジ25aにより取り付けられる蓋25を備える。外筒部材21は円筒状に形成され、内部に前後に貫通して挿入空間21aが形成されている。挿入空間21aは、前面側から大きく開口した大径の円筒状空間21bと、中間部において内径側に絞られて形成される小径の円筒状空間21cと、後側に位置して外径側に広がつて形成されるとともに後面側に開口する中間径の円筒状空間21dとからなり、小径の円筒状空間21cを形成する内径側に絞られた中間部により仕切り壁28が形成される。外筒部材21の前側の円筒状空間21b内に、前端側から仕切り壁28に向かって軸方向に延びて、上下一対のロック溝22a,22bと、左右対称に対向する上側逃がし溝23a,23bおよび下側逃がし溝24a,24bが形成されている。(
図8など参照)
【0016】
内筒30は、
図5に拡大して示すように、前側に円盤状のフランジ部31aを有し、上下に切頭平面が形成されたメイン内筒31と、メイン内筒31の上側切頭平面上に載置される上サブ内筒40と、下側切頭平面に載置される下サブ内筒50を備える。メイン内筒31の中央に前面に開口した鍵挿入孔35が形成され、鍵挿入孔35の側端に軸方向に延びて誤挿入防止溝35aが形成されている。なお、後述するように、誤挿入防止溝35aに鍵1の誤挿入防止突起15が係合する。メイン内筒31の上載置面には左右に延びる複数の第1タンブラー受容溝32が前後に並んで形成されており、ここに第1タンブラー43が受容配置される。第1タンブラー43は、
図20に示すように、下側に突出する左右の支持脚43b,43bと中央の係合脚43aを有し、上面に複数の連結溝43cが形成されている。メイン内筒31の下載置面にも左右に延びる複数の第1タンブラー受容溝33が前後に並んで形成されており、ここに第1タンブラー53が受容配置される。第1タンブラー53は上記第1タンブラー43と同一形状である。また、メイン内筒31の上載置面には、
図5に示すように、幅方向中央に位置して各第1タンブラー受容溝32とその前側において繋がる係止保持溝32aが形成されている。
図5には現れないが、メイン内筒31の下載置面にも同様に、幅方向中央に位置して各第1タンブラー受容溝33とその後側において繋がる係止保持溝33aが形成されている。
【0017】
上サブ内筒40は、
図5に示すように、その下面に、左右に延びる複数の第2タンブラー受容溝41が前後に並んで形成されており、ここに第2タンブラー44が受容配置される。第2タンブラー44は、
図20に示すように、下面側に第1タンブラー43の連結溝43cと係合可能な一対の連結脚44bを有し、上面側にバー受容溝44aが形成されている。上サブ内筒40の上面にはバー配置空間42が形成されており、ここに上サイドバー45が配置される。このとき、上サイドバー45の前後の下面にバネ46が配置され、バネ46により上サイドバー45が上サブ内筒40に対して上方に(外径方向に)付勢される。下サブ内筒50は上サブ内筒40と同様な構成であり、詳細説明は省略するが、第2タンブラー受容溝51およびバー配置空間52が形成され、それぞれに第2タンブラー54および下サイドバー55が配置され、下サイドバー55はバネ56により下方に(外径方向に)付勢される。
【0018】
さらに、メイン内筒31のフランジ部31aの直後に半挿し防止タンブラー36がバネ37により側方に付勢されて取り付けられる。半挿し防止タンブラー36をメイン内筒31に取り付けた状態を
図7に示しており、右端に防止突起36aを有し、左端に係合部36bを有し、バネ37により右方に付勢される。外筒部材21には半挿し防止溝21aが形成されており、防止突起36aが半挿し防止溝21aに入り込んで内筒20が外筒30に対して回転するのが規制される。
【0019】
このように構成される内筒30を外筒部材21の前側の円筒状空間21b内に挿入配置した状態を
図4に示している。この状態では、メイン内筒31の後端部31bが小径の円筒状空間21cを通って後側の円筒状空間21d内に突出するので、後端部31bの外周にスナップリング38を取り付けて内筒30を外筒部材21に保持する。このとき、上サブ内筒40および下サブ内筒50は、フランジ部31aとの間に配置されたバネ42,52により後方に付勢され、後端部が仕切り壁28の前面と当接する。仕切り壁28の前面は、
図17に示すように、上サブ内筒40の後端部が当接する後方に下がった第1当接面28aと、下サブ内筒50の後端部が当接する前方に位置する第2当接面28bを有し、両面28a,28bの間に斜めに延びるテーパ面28cが形成されている。
【0020】
このように内筒30を外筒20内に取り付けた状態では、
図8に示すように、メイン内筒31の第1タンブラー受容溝32に受容配置された第1タンブラー43の連結溝43cに、上サブ内筒40の第2タンブラー受容溝41に受容配置された第2タンブラー44の連結脚54bが係合する。これにより、第1タンブラー43および第2タンブラー44が一体となって左右に移動可能な状態となる。下サブ内筒50側においても同様で、第1タンブラー53と第2タンブラー54が連結溝53cと連結脚54bとの係合により一体となって左右に移動可能な状態となる。このとき、第1タンブラー43,53および第2タンブラー44,54の組み合わせは、前後に複数並んで設けられ、鍵1を外した状態で、第2タンブラー44,54のバー受容溝44a,54aは中央位置から外れて位置する。この状態で、第1タンブラー43,53の係合脚43a,53aは鍵挿入孔35内に突出する。
【0021】
一方、バネ46により外径方向に付勢された上サイドバー45は、その上部に位置するロック部45bが外筒部材21の上ロック溝22a内に入り込み、下部に位置する突部45aは第2タンブラー44の上面に対向して上サイドバー45が下動するのが規制される。下サイドバー55についても同様で、その下部に位置するロック部55bが外筒部材21の下ロック溝22b内に入り込み、上部に位置する突部55aは第2タンブラー54の下面に対向して下サイドバー55が上動するのが規制される。
【0022】
ディスクタンブラー錠DTKは、外筒部材21の挿入空間21a(大径の円筒状空間21b)に挿入配置された内筒30を鍵1により回転させて錠2による施錠、解錠を行うものである。このため、外筒部材21に対する内筒30が摺接する円筒状嵌合面(大径の円筒状空間21bの外周面)が重要であり、これをシェア面と称し、その断面におけるシェア面を示す線をシェアラインと称して説明する。上記の状態では、上および下サイドバー45,55のロック部45b,55bがシェア面(シェアライン)を横切って位置しており、これにより、外筒20に対して内筒30が回転するのが規制される。
【0023】
以上のようにして内筒30を外筒20内に取り付けると、次にその後端部にテール部6を取り付ける。テール部6は、バネ64により後方に付勢される連結板63と、連結板63を内部に位置させてメイン内筒31の後部31bを覆うようにして取り付けられるテールジョイント60と、テールジョイント60の中間部60bに取り付けられる角度規制カム65とを備える。テールジョイント60は円筒状に形成された前部60aがメイン内筒31の後部31bを覆って外筒部材21の後部円筒状空間21d内に回転自在に配置され、外筒部材21の後端面に皿ネジ25aで固定された蓋25により回転自在なまま保持される。この蓋25の後に位置して角度規制カム65がテールジョイント60の中間部60bに固定される。メイン内筒31の後部31b内およびテールジョイント60の前部60a内に互いに対向して断面矩形状の連結板受容空間31c,62が形成されており、連結板63は連結板受容空間31c,62内に跨がって前後移動可能に受容され、バネ64の付勢を受けて連結板63の先端が連結受容空間62に入り込んだ状態となる。これにより、メイン内筒21とテールジョイント60とが連結板63を介して一体回転するように連
結される。なお、テールジョイント60はその後部60cの後端から連結板受容空間62内に貫通する治具挿入孔60dが形成されている。
【0024】
以上のように構成された錠2は、ロック対象物に装着して用いるときには、まず内筒30に連結されたテール部6にロック部材(図示せず)を取り付ける。このため、テール部6の後部60cの外周に雄ネジが形成されており、ロック部材をテール部6の後部60cに螺合させて取り付ける。さらに外筒20をロック対象物に取り付ける。そして鍵1の挿入部12を鍵挿入孔35に挿入して内筒30を回転させることによりテール部6に取り付けられたロック部材を回転させ、これをロック対象物の被係合部に係合させてロック(施錠)し、ロック部材を逆回転させてアンロック(解錠)する。
【0025】
この鍵1による施錠および解錠作動について説明する。鍵1を錠2から取り外した施錠状態では、
図8に示すように、上サイドバー45はロック部45bが外筒部材21の上ロック溝22a内に入り込み、突部45aは第2タンブラー44の上面に対向して上サイドバー45が下動するのが規制され、下サイドバー55はロック部55bが外筒部材21の下ロック溝22b内に入り込み、突部55aは第2タンブラー54の下面に対向して下サイドバー55が上動するのが規制される。このため、上および下サイドバー45,55のロック部45b,55bがシェア面(シェアライン)を横切って位置し、外筒20に対して内筒30が回転するのが規制され、ロック部材がロック対象物の被係合部に係合した施錠状態が維持される。
【0026】
この状態から鍵1の挿入部12を鍵挿入孔35に挿入する。このとき、誤挿入防止突起15を誤挿入防止溝35a内に嵌入させる方向においてのみ挿入部12を挿入可能であり、挿入部12を上下逆にして誤挿入することを防止している。
図6に示すように、挿入部12を鍵挿入孔35に半挿入した状態での半挿し防止タンブラー36を
図7に示している。この状態では、半挿し防止タンブラー36はバネ37により右方に付勢されているため、防止突起36aが外筒部材21の半挿し防止溝21aに嵌入している。なお、係合部36bは鍵1の挿入部12の左端面と近接する。このように防止突起36aが半挿し防止溝21aに嵌入することにより、防止突起36aがシェア面(シェアライン)を横切って位置し、鍵1の半挿し状態で、内筒30が外筒20内で相対回転することを防止する。
【0027】
鍵1の半挿し状態での第1および第2タンブラー43,44,53,54と、上下サイドバー45,55の位置関係を
図9に示している。鍵1の挿入部12が鍵挿入孔35内に挿入されると、鍵挿入孔35内に突出する第1タンブラー43,53の係合脚43a,53aがキー溝13内に入り込む。キー溝13は挿入部12の上下両面に独立して形成された上下のキー溝13a,13bから構成される。これらキー溝13a,13bは、
図11に示すように、係合脚43a,53aを受容する幅を有して所定の形状に形成されており、挿入部12が挿入されるのに応じて係合脚43a,53aを介して第1タンブラー43,53がキー溝13a,13bの形状に対応して左右に移動される。ここで、第2タンブラー44,54は連結脚44b,54bおよび連結溝43c,53cの係合により第1タンブラー43,53と係合されているので、第2タンブラー44,54は第1タンブラー43,53と一緒に左右に移動される。この結果、第1および第2タンブラー43,44,53,54は、
図8の位置から
図9の位置まで、例えば左動される。この状態では、上サイドバー45のロック部45bが外筒部材21の上ロック溝22a内に入り込み、突部45aは第2タンブラー44の上面に対向して上サイドバー45が下動するのが規制され、下サイドバー55はロック部55bが外筒部材21の下ロック溝22b内に入り込み、突部55aは第2タンブラー54の下面に対向して下サイドバー55が上動するのが規制されたままである。このため、上および下サイドバー45,55のロック部45b,55bがシェア面(シェアライン)を横切って位置し、外筒20に対して内筒30が回転するのが規制されたままである。
【0028】
さらに鍵1を押し込んで、
図10に示すように鍵挿入孔35に完全に挿入すると、鍵1の挿入部11の解除突起14が係合部36bと当接し、バネ37の付勢に抗して半挿し防止タンブラー36を左動させる。この結果、
図11に示すように、防止突起36aが外筒部材21の半挿し防止溝21aから離脱し(シェア面の内側に移動し)、半挿し防止タンブラー36による内筒30の外筒20内での相対回転規制を解除する。
【0029】
また、挿入部12が完全挿入位置まで挿入されるのに応じて、係合脚43a,53aを介して第1タンブラー43,53がキー溝13の形状に対応して左右に移動され、これと一緒に第2タンブラー44,54も左右に移動される。この結果、鍵1を完全挿入した状態では、
図12に示すように、第2タンブラー44,54のバー受容溝44a,54aが上下サイドバー45,55の突部45a,55aと上下に対向した状態となる。このような状態となるように、キー溝13の形状と、連結脚44b,54bおよび連結溝43c,53cの係合位置が設定されており、この設定はディスクタンブラー錠DTK毎に相違する。
【0030】
この状態から
図13(a)に示すように鍵1を時計方向に回転させると、
図13(b)〜
図14に示すように上下サイドバー45,55が、ロック部45b,55bのテーパ面および上下ロック溝23a,23bのテーパ面に沿って押し下げられ、突部45a,55aがバー受容溝44a,54a内に入り込み、外筒20に対する内筒30の回転を許容する。このようにして鍵1を回転させて内筒30を回転させることができ、これにより内筒30に連結板63を介して連結されたテール部6を一緒に回転させることができる。上述のようテール部6にロック部材が取り付けられており、テール部6と一緒にロック部材を回転させ、これをロック対象物の被係合部に係合させてロック(施錠)することができる。さらに、鍵1を反時計回りに逆回転させて、ロック部材を逆回転させてアンロック(解錠)することができる。
【0031】
なお、
図15に示すように、テールジョイント60の中間部60bに角度規制カム65が固定されており、鍵1により内筒30を回転させるときの角度規制が行われる。具体的には、角度規制カム65は所定角度間隔を置いて形成された規制突起65a,65bを有しており、これらの間に外筒部材21の後部の一部が後方に突出した規制突出部21eが位置するようになっている。
図12(a)に示すように鍵1を完全挿入した状態から鍵1を回して内筒30およびテール部6を回転させる開始時に、角度規制カム65は
図15に示す位置関係であり、鍵1を時計回り(
図15では反時計回り)に回転させることが可能である。この回転は規制突起65bが規制突出部21eに当接するまで可能で、内筒30およびテール部6の約90度の回転を許容する。この角度範囲が施錠・解錠を行う通常作動範囲であり、鍵1を挿入したときの回転開始位置を施錠位置、90度回転した位置を解錠位置と称する。一方、
図15の状態(鍵1を挿入したときの回転開始位置)から鍵を反時計回り(
図15では時計回り)に回転させようとしても、規制突起65aが規制突出部21eに当接するため、反時計方向については内筒30を回転させることができないようになっている。
【0032】
以上、ディスクタンブラー錠DTKの構造および作動を説明したが、このディスクタンブラー錠DTKにおいては、錠2を代えることなくキーコードを変換して今まで使用してきた鍵1を使えなくして、新しい鍵1’を使用可能とすることができる構成となっている。このキーコードの変換について以下に説明する。
【0033】
キーコード変換は、変換治具7(
図3参照)を用いて行われる。上述のように、鍵1を鍵挿入孔35に完全挿入した状態(
図4および
図8の状態)で、変換治具7の把持部72を指で持って先端に位置する棒状部71をテールジョイント60の治具挿入孔60d内に
挿入する。棒状部71を治具挿入孔60d内に完全に挿入した状態を
図16に示しており、このときには棒状部71の先端が連結板63の後端に当接してバネ64の付勢に抗して連結板63を前動させる。この結果、連結板63は連結受容空間62から抜け出してメイン内筒31の連結板受容空間31c内に入り込み、メイン内筒31とテールジョイン60との連結が解除される。そして、この状態で鍵1を
図18に示す位置まで180度回転させる。このとき連結板63による連結が解除されているので、テールジョイント60は固定のまま回転せず、内筒30および連結板63のみが回転する。また、角度規制カム65も回転しないので角度規制が作用せず、内筒30を、90度を超えて180度まで回転させることが可能である。このように内筒30を180度回転させた位置をキーコード変換位置と称する。但し、逆方向の回転と、180度を超える回転を規制するように、内筒30に角度規制手段を設けているが、これについては図示していない。
【0034】
上記のようにして鍵1により内筒30を180度回転させると、
図19に示すように、上サブ内筒40が下側に、下サブ内筒50が上側に位置する。このとき、上サイドバー45が真下に位置して下ロック溝22bと対向し、下サイドバー55が真上に位置して上ロック溝23bと対向するが、一方のサイドバーは前後端がロック溝の外側に位置し、他方のサイドバーは中央部がサイドバー抑え29(
図16参照)により抑えられて、いずれのロック溝23a,23b内にも入り込まないようになっている。なお、連結板受容空間31c,62は、内筒30の回転中心から偏心した位置に形成されており、内筒30および連結板63を180度回転させると、連結板63はテールジョイント65の連結板受容空間62とは偏心量に応じて横にずれて位置し、変換治具7を取り外しても、連結板63が連結板受容空間62に入り込めず、
図16に示すように前方に移動した状態のまま保たれる。
【0035】
上述のように、上サブ内筒40および下サブ内筒50はバネ42,52により後方に付勢されており、鍵1を180度回転させる前の状態では、上サブ内筒40の後端部が仕切り壁28の前面における後方に下がった第1当接面28aと当接し、下サブ内筒50の後端部が前方に位置する第2当接面28bと当接している。この状態から内筒30を180度まで回転させると、上サブ内筒40の後端部が第1当接面28aからテーパ面28cを経て第2当接面28bと当接するようになる(但し、通常使用範囲内での90度の回転では上サブ内筒40の後端部が第1当接面28aに当接したままとなるように第1当接面28aが形成されている)。これにより上サブ内筒40はメイン内筒31に対して両当接面28a,28bの高さの差だけ前方に移動する。同様に、内筒30を180度まで回転させると、下サブ内筒50の後端部が第2当接面28bからテーパ面28cを経て第1当接面28aと当接するようになり、下サブ内筒50はメイン内筒31に対して上記高さの差だけ後方に移動する。
【0036】
上サブ内筒40が前方に移動すると、上サブ内筒40の第2タンブラー受容溝41に受容されている第2タンブラー44も一緒に前方に移動し、メイン内筒31の第1タンブラー受容溝32に受容されている第1タンブラー43から前方に離れる。上記高さの差は、第1タンブラー43,53および第2タンブラー44,54の厚さより若干大きく、第2タンブラー44は、
図20(b)に示すように、第1タンブラー43から前方に離れた状態となる。すなわち、第1タンブラー43の連結溝43cと第2タンブラー44の連結脚44bとの係合が外れる。このとき、第2タンブラー44の連結脚44bは、メイン内筒31の上載置面に形成された係止保持溝32a内に入り込み、
図21に示すように、係止保持溝32aにより左右の移動が規制された状態で保持される。同様に、第1タンブラー53の連結溝53cと第2タンブラー54の連結脚54bとの係合が外れ、第2タンブラー54の連結脚54bは、メイン内筒31の下載置面に形成された係止保持溝33a内に入り込み、係止保持溝33aにより左右の移動が規制された状態で保持される。
【0037】
次に、鍵1を鍵挿入孔35から抜き取る。このとき、第1タンブラー43,53は第1タンブラー受容溝32内で左右移動が可能であり、鍵1のキー溝13に対応して左右に移動され、鍵1をそのまま抜き取ることを許容する。このとき、第2タンブラー44の連結脚44bは係止保持溝32aにより左右の移動が規制された状態で保持され、第2タンブラー54の連結脚54bは係止保持溝33aにより左右の移動が規制された状態で保持されている。
【0038】
そして、新たなキー溝13’を設けた新たな鍵1’を用意し、その挿入部12’を鍵挿入孔35に挿入する。これにより、新たなキー溝13’に応じて第1タンブラー43,53が左右に移動され、新たな鍵1’を完全挿入すると、この鍵1’のキー溝13’に対応する位置に第1タンブラー43,53が位置決めされる。次に、鍵1’をキーコード変換位置から上記とは逆方向に180度回転させ、元の位置(施錠位置)に戻し、変換治具7を取り外す。そうすると、連結板63はバネ64の付勢を受けてテールジョイント65の連結板受容空間62内に入り込み、
図4に示す状態となって、連結板63により内筒30とテール部6とが連結される。
【0039】
また、上記のように鍵1’を逆方向に180度回転させて内筒30を元の位置に戻すと、上サブ内筒40の後端部が第2当接面28bからテーパ面28cを経て第1当接面28aと当接するようになり、上サブ内筒40はメイン内筒31に対して後方に移動する。このとき、第2タンブラー44および第1タンブラー43の位置関係は、
図20(b)から
図20(a)に示すように変化し、第1タンブラー43の連結溝43cと第2タンブラー44の連結脚44bとが再度係合する。なお、第2タンブラー44の連結脚44bは係止保持溝32aにより左右の移動が規制された状態で保持されているので、その位置が変化することがなく、第1タンブラー43の連結溝43cと第2タンブラー44の連結脚44bとをスムーズに再係合させることができる。下サブ内筒50の後端部は同様に第1当接面28aからテーパ面28cを経て第2当接面28bと当接する状態に戻り、下サブ内筒50はメイン内筒31に対して前方に移動する。これにより、第1タンブラー53の連結溝53cと第2タンブラー54の連結脚54bとが再度係合する。この場合にも、第2タンブラー54の連結脚54bは係止保持溝33aにより左右の移動が規制された状態で保持されているので、その位置が変化することがなく、第1タンブラー53の連結溝53cと第2タンブラー54の連結脚54bとをスムーズに再係合させることができる。
【0040】
以上のように新たな鍵1’を鍵挿入孔35に差し込んで逆方向に180度回転させて元に戻すと、この新たな鍵1’のキー溝13’に対応して
図12の状態となり、キーコードは新たな鍵1’に対応したものとなる。この後、鍵1’を引き抜けば、キー溝13’に応じて第1タンブラー43,53および第2タンブラー44,54が左右に移動され、
図8の状態となり、内筒30の回転が規制された状態となる。
【0041】
以上、錠2をそのまま用いて、新たな鍵1’に対応するようにキーコードを変換する構成および作動を説明した。この場合、鍵1’の挿入部12’の上下面にそれぞれ独立してキー溝13’を設け、上サブ内筒40および下サブ内筒50のそれぞれの第1および第2タンブラー43,53,44,54の係合位置(連結溝53cと連結脚54bとの係合位置)を互いに独立して設定できるようにしているので、外筒20および内筒30の前後方向寸法を増やすことなく、キーコードの変換数を多くすることができる。
【0042】
以上においては、変換治具7の棒状部71をテールジョイント60の治具挿入孔60d内に挿入し連結板63を前動させてメイン内筒31とテールジョイン60との連結を解除し、この状態で鍵1を180度回転させて、第1タンブラー43の連結溝43cと第2タンブラー44の連結脚44bとの係合を外したときに、第2タンブラー44の連結脚44bをメイン内筒31の係止保持溝32a内に入り込ませて、
図21に示すように、係止保
持溝32aにより左右の移動が規制して保持する構成を特徴としている。但し、本発明はこの構成に限られるものではなく、第1タンブラー43の連結溝43cと第2タンブラー44の連結脚44bとの係合を外したときに、第2タンブラー44の一部をメイン内筒31により保持して左右の移動を規制するものであれば良い。
【0043】
また以上においては、メイン内筒31の上下に二つのサブ内筒(上および下サブ内筒40,50)を設けた構成を例にして説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、メイン内筒の外周に一つのサブ内筒を設けても良く、等間隔で複数(例えば、120度間隔で三つ)のサブ内筒を設ける構成でも良い。
【0044】
また、上記実施形態ではディスクタンブラー錠を例に挙げて説明したが、本発明の対象となるシリンダー錠はこれに限られるものではなく、ピンタンブラー形式のシリンダー錠など他の形式のシリンダー錠も対象となるものである。