(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110910
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】高効率映像符号化のデルタ量子化パラメータ処理の方法と装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/70 20140101AFI20170327BHJP
H04N 19/126 20140101ALI20170327BHJP
H04N 19/157 20140101ALI20170327BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20170327BHJP
【FI】
H04N19/70
H04N19/126
H04N19/157
H04N19/176
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-170793(P2015-170793)
(22)【出願日】2015年8月31日
(62)【分割の表示】特願2013-536989(P2013-536989)の分割
【原出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-26433(P2016-26433A)
(43)【公開日】2016年2月12日
【審査請求日】2015年8月31日
(31)【優先権主張番号】13/018,431
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/425,996
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/411,066
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516251901
【氏名又は名称】寰發股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HFI Innovation Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユーエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チンイェ
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヂーミン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ヂーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン, ユーリン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュゥアン,ズーデァ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,シャオミン
【審査官】
岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/042890(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/023806(WO,A2)
【文献】
国際公開第2011/140211(WO,A2)
【文献】
Yu-Wen Huang et al.,A Technical Description of MediaTek's Proposal to the JCT-VC CfP,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,1st Meeting: Dresden, DE,2010年 4月,JCTVC-A109,pp.1-28
【文献】
Kazushi Sato,Proposal on Large Block Structure and Quantization,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,3rd Meeting: Guangzhou, CN,2010年10月,JCTVC-C167,pp.1-8
【文献】
Madhukar Budagavi and Minhua Zhou,Delta QP signaling at sub-LCU level,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,4th Meeting: Daegu, KR,2011年 1月,JCTVC-D038_r1,pp.1-5
【文献】
Tzu-Der Chuang et al.,AhG Quantization: Sub-LCU Delta QP,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,5th Meeting: Geneva,2011年 3月,JCTVC-E051_r2,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 − 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の符号化方法であって、
前記各映像は最大符号化単位(以下、LCUと称す)に分割され、
少なくとも1つのLCUが前記LCUより小さい符号化単位(以下、CUと称す)で分割されることで複数のリーフCUを形成し、
前記方法は、
少なくとも1つの変換単位(以下、TUと称す)を有した現在のリーフCUを受信する工程、
量子化パラメータ最小CUサイズ(以下、QP最小CUサイズと称す)を決定する工程、
前記QP最小CUサイズに対する前記現在のリーフCUのサイズの関係を決定し、かつ、前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数を有するか決定する工程、
前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数が存在し、かつ、前記現在のリーフCUのサイズが前記QP最小CUサイズと等しいかそれより大きい場合には、ビットストリームの前記現在のリーフCUに第1の量子化パラメータ情報を組み込む工程、及び、
前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数が存在し、前記現在のリーフCUのサイズが前記QP最小CUサイズより小さく、かつ、前記現在のリーフCUの親のCUサイズが前記QP最小CUサイズに等しい場合には、前記ビットストリームの前記現在のリーフCUを有した少なくとも2つリーフCUに第2の量子化パラメータ情報を組み込む工程
を含む方法。
【請求項2】
前記QP最小CUサイズは、シーケンスレベル、画像レベル又はスライスレベルにより示される
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リーフCUが、スライス中における前記LCUの最初のCUである場合には、前記リーフCUのサイズにかかわらず、前記第1の量子化パラメータ情報を前記リーフCUに組み込む工程を含む
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数を有するか決定する前記工程は、予測モード (以下、PredModeと称す)、符号化ブロックパターン、符号化ブロックフラグ (以下CBFと称す)、又は、これらの組み合わせを確認する工程を含む
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記QP最小CUサイズは、LCUサイズから生成される
請求項1記載の方法。
【請求項6】
構文要素(qp_max_depth)は、最大CUから、前記QP最小CUサイズの深さを定義する
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記構文要素(qp_max_depth)は、シーケンスヘッダ、画像ヘッダ、又はスライスヘッダに取り込まれている
ことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
映像に対応するビデオビットストリームを復号する方法であって、
前記各映像は最大符号化単位(以下、LCUと称す)に分割され、少なくとも1つのLCUが前記LCUより小さい符号化単位(以下、CUと称す)で分割されることで複数のリーフCUが形成され、
前記方法は、
前記ビデオビットストリームから、複数の変換単位(以下、TUと称す)を有した現在のリーフCUに関連する符号化データを受信する工程、
前記ビデオビットストリームから量子化パラメータ最小CUサイズ(以下、QP最小CUサイズと称す)を決定する工程、
前記ビデオビットストリームから、前記現在のリーフCUのリーフCUサイズを決定する工程、
前記QP最小CUサイズに対する前記現在のリーフCUのサイズの関係を決定し、かつ、前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数を有するか決定する工程、
前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数が存在し、かつ、前記現在のリーフCUのサイズが前記QP最小CUサイズと等しいかそれより大きい場合には、前記ビデオビットストリームから、前記現在のリーフCUの第1の量子化パラメータ情報を得る工程、及び、
前記少なくとも1つのTUに関連する非ゼロ量子化変換係数が存在し、かつ、前記現在のリーフCUのサイズが前記QP最小CUサイズより小さい場合には、前回受信した量子化パラメータ情報に基づいて、前記現在のリーフCUを有した少なくとも2つのリーフCUの第2の量子化パラメータ情報を決定する工程
を含む方法。
【請求項9】
前記QP最小CUサイズは、シーケンスレベル、画像レベル又はスライスレベルのうち、少なくとも1つのレベルの最初のフラグにより示される
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リーフCUが、スライス中における前記LCUの最初のCUである場合には、前記リーフCUのサイズにかかわらず、前記ビデオビットストリームから、前記現在のリーフCUのための前記第1の量子化パラメータ情報を取得する工程を含む
請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記現在のリーフCUを有した少なくとも2つのリーフCUの前記第2の量子化パラメータ情報は、少なくとも1つの他のリーフCUの情報から生成される
請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記現在のリーフCUの第1の量子化パラメータ情報は、前記ビデオビットストリームから明示的に取得される
請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記QP最小CUサイズは、LCUサイズから生成される
請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記ビデオビットストリームから前記QP最小CUサイズを決定する工程は、前記ビデオビットストリームから構文要素(qp_max_depth)を決定する工程、及び、前記LCUサイズから前記QP最小CUサイズの深さを特定する前記構文要素(qp_max_depth)を決定する工程を含む
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記構文要素(qp_max_depth)は、シーケンスヘッダ、画像ヘッダ、又はスライスヘッダに含まれる
ことを特徴とする請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年11月8日に出願された「Delta Quantization Parameter for High Efficiency Video Coding (HEVC)」と題された米国特許仮出願番号61/411066号から合衆国法典第35編第119条の下、優先権を主張するものであり、その内容は引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明はビデオ符号化に関するものである。特に、本発明は、量子化パラメータ処理(quantization parameter processing)に関連する符号化技術に関するものである。
【背景技術】
【0003】
HEVC (高効率映像符号化)は、ITU-T研究会により、ビデオ符号化専門家の映像符号化共同研究部会 (JCT-VC)グループ下で開発される先進的なビデオ符号化システムである。HEVCは、とてもフレキシブルなブロック構造を有するブロックベースのハイブリッドビデオ符号化である。3個のブロックコンセプトとして、符号化単位 (coding unit:CU)、予測単位 (prediction unit:PU)、および、変換単位 (transform unit:TU)がHEVCに導入される:。符号化構造全体は、再帰方法(recursive fashion)で、CU、PUおよびTUの各種サイズにより特徴付けられ、各ピクチャは、64×64画素から構成される最大CU (LCU:largest CU)に分けられる。その後、リーフCUまたは最小CUが届くまで、各LCUは、再帰的に、小さいCUに分けられる。CU階層木(hierarchical tree)の分割(splitting)が一旦行われると、予測タイプおよびPUパーティションに従って、各リーフCUは、さらに、予測単位(PU)に分ける。さらに、変換がTUに適用されて、空間データ(spatial data)を変換係数に変換して、データ表現を圧縮する。H.264符号化規格中、基礎をなすビデオフレームがスライス(slice)に分けられ、各スライスは、最小符号化単位として、非-重複マクロブロックから構成される。スライスは独立して処理されるので、一のスライスからのエラーや欠測データは、像中の別のスライスに伝えられない。近年のHEVC発展において、スライスは、マクロブロックに代わって、複数のLCUを含む。LCUサイズは、16×16画素のマクロブロックサイズよりかなり大きい。よって、HEVC中のLCU-位置合わせスライス(LCU aligned slice)は、ビデオフレーム分割およびビットレート制御に十分な粒度(granularities)を提供しない。LCU-位置合わせスライスがHEVCにより用いられ、非-LCU位置合わせスライス(LCU-aligned slice)を使用することが可能である。非-LCU位置合わせスライスは、さらにフレキシブルなスライス構造およびよい粒度レート制御(granular rate control)を提供する。
【0004】
HEVCにおいて、各LCUはそれ自身の量子化パラメータ (QP)を有し、LCUに選択されるQPはデコーダー側に伝達されて、デコーダーは、同じQP値を用いて、適切な復号プロセスを行う。QPに関連する情報を減少させるため、現在の符号化QPとリファレンスQP間の差が、QP値自身の代わりに伝送される。リファレンスQPは異なる方法で生成される。たとえば、H.264において、リファレンスQPは、前のマクロブロックに基づいて生成され、HEVCにおいて、リファレンスQPは、スライスヘッダで定義されるQPである。AVC/H.264のマクロブロック-ベースの符号化と比較すると、HEVCの符号化単位は、64×64画素の大きさ、すなわち、最大CU (LCU)である。LCUは、AVC/H.264のマクロブロックよりかなり大きいので、一デルタQP/LCUの使用は、レート制御を、快速にビットレートに適合させることができなくなる。それ故、デルタQPをLCUより小さいユニットに導入して、さらなる粒度レート制御を提供する必要がある。さらに、さらにフレキシブルなおよび/または適応デルタQP処理を促進することができるシステムを発展させることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
量子化パラメータに関連する映像を符号化する装置および方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様において、ビデオ符号化の装置および方法は、リーフCUを受信する工程と、QP最小CUサイズを決定して、量子化パラメータ情報を伝送する工程、および、リーフCUサイズがQP最小CUサイズと同じかそれ以上である場合、量子化パラメータ情報を組み込む工程、を含む。QP最小CUサイズは、シーケンスレベル、画像レベルまたはスライスレベルで示され、QP選択フラグが用いられて、スライスレベルまたはシーケンス/画像レベル中で、QP最小CUサイズ表示を選択する。本発明の別の態様において、本方法は、さらに、少なくとも二つの第二リーフCUがQP最小CUサイズより小さく、且つ、少なくとも二つの第二リーフCUのCUサイズがQP最小CUサイズに等しい場合、少なくとも二つの第二リーフCUに、第二量子化パラメータ情報を組み込んで、第二量子化パラメータ情報をシェアする工程を含む。本発明の更に別の態様において、 本方法は、さらに、第三リーフCUが、スライス中、第一の符号化単位である場合、第三リーフCUのサイズにかかわらず、第三リーフCUに、第三量子化パラメータ情報を組み込む工程を含む。適応量子化パラメータ処理に関連するビデオビットストリームを復号する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオビットストリームを復号する装置および方法は、ビデオビットストリームを受信する工程と、ビデオビットストリームから、QP最小CUサイズを決定する工程と、ビデオビットストリームからリーフCUのサイズを決定し、リーフCUのサイズがQP最小CUサイズと同じかそれ以上である場合、リーフCUの量子化パラメータ情報を得る工程、を含む。本発明の別の態様において、本方法は、さらに、少なくとも二つの第二リーフCUがQP最小CUサイズより小さく、少なくとも二つの第二リーフCUの親のCUサイズがQP最小CUサイズに等しい場合、少なくとも二つの第二リーフCUの第二量子化パラメータ情報を得て、第二量子化パラメータ情報をシェアする工程を含む。本発明の更に別の態様において、本方法は、第三リーフCUが、スライス中、第一の符号化単位である場合、第三リーフCUのサイズにかかわらず、第三リーフCUの第三量子化パラメータ情報を得る工程を含む。
【0007】
量子化パラメータに関連する映像を符号化する装置および方法が開示される。以下の開示において、本発明の態様に従って、LCU-位置合わせスライスが例として用いられて、デルタ-QP処理を説明する。非-LCU-位置合わせスライスに関しては、スライスの第一リーフCUの関連操作が同様に操作される。本発明の一態様において、ビデオ符号化の装置および方法は、リーフCUを受信する工程と、リーフCUサイズがQP最小CUサイズと同じかそれ以上、且つ、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、QP最小CUサイズを決定して、リーフCUの量子化パラメータ情報を伝送し、量子化パラメータ情報を組み込む工程を含む。本発明の別の態様において、本方法は、さらに、少なくとも二つの第二リーフCUがQP最小CUサイズより小さく、且つ、少なくとも二つの第二リーフCUの親のCUサイズがQP最小CUサイズと等しく、少なくとも二つの第二リーフCUが、少なくともひとつの第二非ゼロ量子化変換係数を有する場合、少なくとも二つの第二リーフCUに、第二量子化パラメータ情報を組み込んで、第二量子化パラメータ情報をシェアする工程を含む。非ゼロ量子化変換係数の検出は、PredMode、CBP、CBF、または、PredMode、CBPおよびCBFの組み合わせに基づく。適応量子化パラメータ処理に関連するビデオビットストリームを復号する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオビットストリームを復号する装置および方法は、ビデオビットストリームを受信する工程と、ビデオビットストリームから、QP最小CUサイズを決定する工程、および、ビデオビットストリームから、リーフCUのリーフCUサイズを決定する工程、を含む。リーフCUサイズがQP最小CUサイズと同じかそれ以上である場合、リーフCUが、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有するかどうか判断する。リーフCUが、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、リーフCUの量子化パラメータ情報を得る。
【0008】
量子化パラメータに関連する映像を符号化する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオ符号化の装置および方法は、リーフCUを受信し、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、リーフCUに、量子化パラメータ情報を組み込む工程を含み、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数は、PredMode、CBP、CBF、または、PredMode、CBPおよびCBFの組み合わせに基づいて検出される。少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有するリーフCUに、量子化パラメータ情報を組み込む方法は、明示的または黙示的である。たとえば、量子化パラメータ情報は、明示的方法で、ビデオビットストリーム中で直接伝送される; または、量子化パラメータ情報は、黙示的方法で、少なくとも別のリーフCUの情報、たとえば、量子化パラメータ情報、PredMode、CBF、CBP、リーフCU位置、または、上述の組み合わせから生成される。適応量子化パラメータ処理に関連するビデオビットストリームを復号する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオビットストリームを復号する装置および方法は、ビデオビットストリームを受信し、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有するかどうか検出する工程を含む。リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、リーフCUの量子化パラメータ情報を得る。量子化パラメータ情報は、明示的または黙示的方法で得られ、たとえば、量子化パラメータ情報は、ビデオビットストリームから得られる、または、少なくとも別のリーフCUの情報から生成される。
【0009】
量子化パラメータに関連する映像を符号化する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオ符号化の装置および方法は、リーフCUを受信する工程と、パフォーマンス基準に従って、最大符号化単位 (最大の符号化単位、LCU)ベースのQPフラグを組み込む工程と、LCUベースQPが、LCUベースQPフラグに示されているように選択され、且つ、LCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を含む場合、量子化パラメータ情報をLCUに組み込む工程、および、非-LCUベースQPが、LCUベースQPフラグに示されているように選択され、且つ、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を含む場合、量子化パラメータ情報をリーフCUに組み込む工程を含む。適応量子化パラメータ処理に関連するビデオビットストリームを復号する装置および方法が開示される。本発明の一態様において、ビデオビットストリームを復号する装置および方法は、ビデオビットストリームを受信し、ビデオビットストリームから、LCUベースQPフラグを取り出す工程を含む。LCUベースQPが、LCUベースQPフラグに示されるように選択される場合、本方法は、さらに、各LCUの量子化パラメータ情報を得る工程を含む。非-LCUベースQPが、LCUベースQPフラグに示されるように選択される場合、本方法は、さらに、各リーフCUの量子化パラメータ情報を得る工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】四分木に基づいた符号化単位パーティションを示す図である。
【
図2】パーティション境界が最大符号化単位と一致するスライスパーティションの例を示す図である。
【
図3】スライスが分別最大符号化単位を有するスライスパーティションの構造の例を示す図である。
【
図4】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連するシーケンスヘッダシンタックスを示す図である。
【
図5】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連するスライスヘッダシンタックスを示す図である。
【
図6】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連するスライスデータシンタックスを示す図である。
【
図7A】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスを示す図である。
【
図7B】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの残りの部分を示す図である。
【
図8】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連するスライスデータシンタックス他の例を示す図である。
【
図9A】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの他の例を示す図である。
【
図9B】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの他の例の残りの部分を示す図である。
【
図10】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する変換単位シンタックスの例を示す図である。
【
図11】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理の従来のHEVCに基づいたシーケンスヘッダシンタックスを示す図である。
【
図12】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理の従来のHEVCに基づいたスライスヘッダシンタックスを示す図である。
【
図13】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理の従来のHEVCに基づいたスライスデータシンタックスを示す図である。
【
図14A】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理の従来のHEVCに基づいた符号化単位シンタックスを示す図である。
【
図14B】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理の従来のHEVCに基づいた符号化単位シンタックスの残りの部分を示す図である。
【
図15】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する変換単位シンタックスの他の例を示す図である。
【
図16A】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの別の例を示す図である。
【
図16B】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの他の例の残り部分を示す図である。
【
図17】本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する変換単位シンタックス他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
HEVC (高効率映像符号化)は、ITU-T研究会により、ビデオ符号化専門家の映像符号化共同研究部会 (JCT-VC)グループ下で開発される先進的なビデオ符号化システムである。HEVCは、とてもフレキシブルなブロック構造を有するブロックベースのハイブリッドビデオ符号化である。3個のブロックコンセプトとして、符号化単位 (coding unit:CU)、予測単位 (prediction unit:PU)、および、変換単位 (transform unit:TU)がHEVCに導入される。符号化構造全体は、再帰方法(recursive fashion)で、CU、PUおよびTUの各種サイズにより特徴付けられ、各ピクチャは、64×64画素から構成される最大CU (LCU)に分けられる。その後、リーフCUまたは最小CUが到達するまで、各LCUは、再帰的に、小さいCUに分けられる。CU階層木(hierarchical tree)の分割(splitting)が一旦行われると、予測タイプおよびPUパーティションに従って、各リーフCUは、さらに、予測単位(PU)に分ける。H.264/AVC規格において、新しい特徴のひとつは、イメージを、スライスと称される領域に分ける能力である。スライスの使用は、各種の潜在的利点、たとえば、優先伝送、エラー回復伝送(error resilient transmission)等を提供する。LCU-位置合わせスライスがHEVCにより用いられる間、非-LCU位置合わせスライスを用いること可能である。非-LCU位置合わせスライスは、さらにフレキシブルなスライス構造およびよい粒度レート制御を提供する。
【0012】
HEVCは、非常にフレキシブルなブロック構造を有するブロックベースのハイブリッドビデオ符号化であり、符号化プロセスは、各符号化単位に適用される。CU階層木の分割が一旦行われると、各リーフCUは、予測タイプおよびPUパーティションに従って、さらに、予測単位 (PU)に分けられる。その後、変換は、予測残余またはブロックイメージデータ自身に関連する変換単位に適用される。変換係数は量子化され、量子化された変換係数は、エントロピー符号器(entropy coder)により処理されて、ビデオデータの表示に必要な情報を減少させる。量子化パラメータ (QP)は、量子化ステップサイズを決定し、それ故、画質および圧縮されたビットレートを調整する制御パラメータである。従来のHEVCにおいて、量子化パラメータは、LCUの原理で調整されている。よって、QPに関連する情報が各LCUに伝送される。QPの伝送に関連するビットレートを保護するため、QP値自身の代わりに、現在の符号化QPとリファレンスQP間の差が用いられる。現在QPとリファレンスQPの間の差はデルタQPと称される。リファレンスQPは異なる方法で生成される。たとえば、H.264において、リファレンスQPは、通常、前のマクロブロックに基づいて生成され、HEVC中において、リファレンスQPは、スライスヘッダで特定されるQPである。
【0013】
高効率映像符号化 (HEVC)の発展において、H.264/AVCの固定サイズのマクロブロックは、フレキシブルな符号化単位により代替される。
図1は、四分木に基づいた符号化単位パーティションを示す図である。深さ0で、64×64画素から構成される初期符号化単位CUO、112は、最大CUである。初期符号化単位CUO、112は、ブロック110で、四分木分割を行う。分割フラグ0は、基礎をなすCUが分割されないことを示し、一方、分割フラグ1は、基礎をなすCUが、四分木により、4個の小さい符号化単位CU1、122に分割されることを示す。得られた4個の符号化単位は、0、1、2および3として示され、得られた各符号化単位は、さらに、次の深さに分割される。符号化単位CUO、112から生じる符号化単位はCU1、122と称される。符号化単位が四分木により分割された後、得られた符号化単位は、符号化単位が、事前に定められた最小CU(SCU)サイズにならない限り、さらに、四分木分割される。それ故、深さ1で、符号化単位CU1、122は、ブロック120で、四分木分割を行う。再び、分割フラグ0は、基礎をなすCUが分割されないことを示し、一方、分割フラグ1は、基礎をなすCUが、四分木により、4個の小さい符号化単位CU2、132に分割されることを示す。符号化単位 CU2、132のサイズは16×16で、事前に定められた最小符号化単位が到達するまで、ブロック130に示される四分木分割のプロセスが継続される。たとえば、最小符号化単位が8×8に選択される場合、符号化単位CU3、142は、深さ3で、ブロック140で示されるように、更なる分割を行わない。可変サイズの符号化単位を形成する像の四分木パーティションの収集は、エンコーダが入力イメージ領域を処理するために、符号器のパーティションマップを構成する。パーティションマップがデコーダーに伝えられて、復号プロセスが実行される。
【0014】
高効率映像符号化 (HEVC)規格の発展系において、最大符号化単位 (LCU)が初期符号化単位として用いられる。LCUは、適応的に、小さいCUに分けられ、さらに効果的に処理する。H.264のマクロブロック-ベースのスライスパーティションは、HEVCのLCU-ベースのスライスパーティションまで拡張できる。HEVCのLCU-ベースのスライスパーティションの例は
図2に示され、24個のLCUは3個のスライスに分割される。LCU00からLCU07はスライス0、210に割り当てられ、LCU08からLCU15はスライス1、220に割り当てられ、LCU16からLCU23はスライス2、230に割り当てられる。
図2に示されるように、スライス境界の位置はLCU境界の位置に合わせている。LCU-位置合わせスライスパーティションは容易に実行され、LCUのサイズはマクロブロックのサイズよりかなり大きく、LCU-位置合わせスライスは、符号化システムの動的環境をサポートする十分な粒度を提供することができない。よって、非-LCU位置合わせスライスパーティションがHEVC規格発展系に提案される。
【0015】
図3は、分別LCUパーティションを有するスライス構造の例を示し、パーティション境界はLCUを通過する。スライス0、310は、LCU00からLCU06を含み、LCU07のリーフCUで終了する。LCU07は、スライス0、310とスライス1、320の間で分割されている。スライス1、320は、スライス0、310に含まれないLCU07の残りのリーフCUとLCU08からLCU15、および、LCU16の一部を含む。スライス1、320は、LCU16のリーフCUで終了する。LCU16は、スライス1、320とスライス2、330間で分割されている。スライス2、330は、スライス1、320に含まれないLCU16の残りのリーフCUおよびLCU17からLCU23を含む。
【0016】
現在のHEVCにおいて、各LCUはそれ自身の量子化パラメータ (QP) を有し、LCUに選択されるQPがデコーダー側に伝えられて、デコーダーは同じQP値を用いて、適切な復号プロセスを行う。QPに関連する情報を減少させるために、現在の符号化QPとリファレンスQP間の差が、QP値自身に代わって伝送される。それ故、デルタQPは各LCUに伝送され、デルタQPは、現在の符号化LCUのQPとリファレンスQP間の差として定義される。現在のLCUが、スライス中で、第一LCUである場合、スライスQPはリファレンスQPと見なされる。別の設計方法に基づいて、スライス中、第一LCU以外のLCUのリファレンスQPは、スライスQP、所定のQP値または前のLCUのQPである。LCUのデルタQPは、通常、LCUデータの最後の構文要素である。LCUの予測モード (PredMode)がSKIPモードの時、デルタQPは伝送されない。AVC/H.264のマクロブロック-ベースの符号化と比較すると、HEVCの符号化単位は、64×64画素の大きさ、すなわち、最大CU (LCU)である。LCUは、AVC/H.264のマクロブロックよりかなり大きいので、一のデルタQP/LCUの使用は、レート制御を、快速にビットレートに適合させることができなくなる。それ故、デルタQPをLCUより小さいユニットに導入して、さらなる粒度レート制御を提供する必要がある。さらにフレキシブルなQP処理を促進することができるシステムを発展させることが望まれる。
【0017】
デルタQPが、LCUより小さい符号化単位に割り当てられる時、符号化単位サイズが減少するのに伴い、パーピクセル(per-pixel)基準のデルタQPに関連する情報が増加する。よって、QP最小CUサイズが特定されて、デルタQPは、QP最小CUサイズに等しいかそれより大きいCUにだけ伝送される。さらに、フレキシブルなデルタQPを提供するため、QP最小CUサイズが、シーケンスヘッダ、画像ヘッダまたはスライスヘッダで特定される。たとえば、シーケンスヘッダ中のSPS中の構文要素 sps_qp_max_depth は、
図4に示されるように定義される。従来のHEVCで必要な追加の構文要素は、ブロック410で示される。sps_qp_max_depth 構文要素は、最大CUから、QP最小CUサイズの深さを定義する。よって、QP最小CUサイズは、sps_qp_max_depthに従って、最大のCUサイズから生成される。同様に、画像ヘッダ中、構文要素により、QP最小CUサイズの深さが定義される。各スライスヘッダにおいて、別の構文要素、sh_qp_max_depthは
図5に示されるように定義される。従来のHEVCで必要とされる追加の構文要素はブロック510で示される。sh_qp_max_depth 構文要素は、最大CUから、QP最小CUサイズ、QpMinCuSizeの深さを特定し、QpMinCuSize は、sh_qp_max_depthに従って、最大のCUサイズから生成される。各スライスにとって、シーケンスレベルまたはスライスレベルで示されるQP最小CUサイズは、現在のスライスのQpMinCuSizeとして選択される。ブロック510に示されるchange_qp_max_depth_flag 構文要素は、シーケンスレベルまたはスライスレベルから、QP最小CUサイズの選択を示すために、用いられる。たとえば、 change_qp_max_depth_flag 値が0に等しいことは、デルタQPを伝送する最小CUサイズがsps_qp_max_depthから生成されることを意味する。change_qp_max_depth_flag 値が1に等しいことは、デルタQPを伝送する最小CUサイズが sh_qp_max_depthから生成されることを意味する。デルタQPを伝送する一般規則が以下で記述される。QpMinCuSizeと同じかそれ以上のリーフCUに対し、一デルタQPが伝送される。全てがQpMinCuSizeより小さく、QpMinCuSizeに等しいサイズの同じ親のCUを有する複数のリーフCUに対し、一デルタQPが複数のリーフCUに伝送され、QP情報をシェアする。非-LCU-位置合わせスライスが用いられる時、第一リーフCUのサイズにかかわらず、一のデルタQPは、常に、スライスの第一リーフCUに伝送される。
【0018】
本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連するスライスデータシンタックスの例が
図6に示される。従来のHEVCで必要される追加の構文要素がブロック610により示される。FirstCuFlag 構文要素は、CUがスライス中の第一CUであるかを示すのに用いられるフラグである。FirstCuFlagはブロック610で1に初期化される。SendQpFlag 構文要素は、デルタQPがCUに伝送され、且つ、ブロック610で、0に初期化されるかを示すのに用いられるフラグである。coding_unit() ルーティンの後の実行で、FirstCuFlag および SendQpFlagの値が変わる。デルタQPが、スライス中の第一CUに伝送された後、FirstCuFlag は、coding_unit() ルーティンで、0にリセットされる。
【0019】
本発明によるデルタ量子化パラメータ処理に関連する符号化単位シンタックスの例が
図7Aおよび7Bに示される。従来のHEVCで必要な追加の構文要素が、ブロック710と720により示される。ブロック710で、SendQpFlag は1にリセットされて、現在のCUサイズ, CurrCuSizeがQP最小CUサイズ(QpMinCuSize)と同じ場合、一デルタQPを伝送する必要があることを示す。ブロック720で、以下の3条件がテストされる。現在のCUがスライス中の第一CU(FirstCuFlag)であるかどうか、SendQpFlagが設定されるか、および、CurrCuSize が QpMinCuSizeと同じか。3条件のいずれかがアサート(assert)される場合、デルタQP( delta_qp)が伝送され、SendQpFlag および FirstCuFlag 両方が0にリセットされる。本発明の一実施形態において
図4から
図7Bに示した構文要素により、LCUより小さいユニットに基づくデルタQP処理を許し、分別LCUを有するシステムに対してデルタQP処理を提供する。さらに、本発明の一実施形態において
図4から
図7Bに示した構文要素により、システムは、適応的に、シーケンス/画像ヘッダまたはスライスヘッダで示されるQP最小CUサイズを選択する。
【0020】
図4から
図7Bのシンタックス設計は本発明の一例を説明し、特定の構文要素が例として用いられて、本発明を実施しているが、当業者は構文要素を修飾して、同様に、本発明を実施することができる。
図4から
図7Bに示される構文要素によると、デコーダーは所要のQP情報を生成して、ビットストリームを復号する。たとえば、デコーダーは、change_qp_max_depth_flag 構文要素を引き出して、QP最小CUサイズが、スライスヘッダまたはシーケンスヘッダで示されるかどうか判断する。それ故、QP最小CUサイズが決定される。リーフCUのサイズがビットストリームから復号され、スライス中のリーフCUの順序が決定される。リーフCUサイズが、QP最小CUサイズに等しいかそれより大きい、または、リーフCUが、非-LCU-位置合わせスライスにおいて、第一CUである場合、デルタQPが符号化単位データに存在する。デコーダーは、デルタQP値を引き出して、デルタQPを符号化単位データに適用して、符号化単位を復号することができる。
【0021】
上述のQP処理は、LCUより小さい粒度レベルで、QP変化を許し、シーケンスヘッダまたはスライスヘッダで示されるQP最小CUサイズを適切に選択し、量子化パラメータ情報に関連する伝送の効率をさらに改善する余地がある。従って、本発明の第一の実施態様が以下で記述される。一デルタQPが伝送される時、デルタQPによりカバーされる領域が非ゼロ量子化変換係数を有さない可能性がある。QPは、非ゼロ変換係数を量子化し、非ゼロ変換係数を非量子化するために用いられるので、QPまたはデルタQPを、非ゼロ量子化変換係数を有さない領域に伝送する必要がない。それ故、デルタQPまたはQPに関連する情報QPは、これらの領域に保存される。この特徴をサポートするため、シンタックス修正がcoding_unit()と transform_unit()に行われ、説明を簡潔にするため、LCU-位置合わせスライスだけが例とされている。シーケンスヘッダとスライスヘッダーのシンタックスは、
図4および
図5と同じ程度である。slice_data()のシンタックスは、
図8に示される従来のHEVCと同じで、
図6に示されるFirstCuFlag および SendQpFlagの初期化は、LCU-位置合わせスライスに実行されないが、非-LCU-位置合わせスライスにおいて、FirstCuFlagの初期化は、スライス中の、少なくともひとつの非-ゼロ係数(zero coefficient)を有する第一リーフCUを処理することが必要である。他の実施態様によると、coding_unit()シンタックスが修正されて、デルタQPは、QpMinCuSizeに等しいかそれより大きいサイズのリーフCUの末端、または、QpMinCuSizeと同じサイズの分割CUの最後のリーフCUの後にだけ存在する。さらに、デルタQPに関連するtransform_unit() シンタックスが修正されて、対応する領域が、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する時だけ、デルタQPが伝送される。一領域中の少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数の条件は、予測モード (PredMode)、符号化ブロックパターン (coded block pattern、CBP)、符号化ブロックフラグ (coded block flag、CBF)、または、PredMode、CBPおよびCBFの組み合わせに基づいて検出される。たとえば、PredModeがSKIPであるとき、リーフCU中に残りが存在しないことを意味する。VLCが用いられ、CBPがゼロの時、リーフCU中に残りが存在しないことを意味する。CABACが用いられ、CBFがゼロの時、 再び、リーフCU中に残りが存在しないことを意味する。QP情報がそれらのリーフCUのために省略されて、符号化および伝送効率を改善する。
【0022】
上述の他の実施形態をサポートするため、coding_unit()シンタックス修正が、
図9Aおよび
図9Bのブロック910から940により示される。ブロック910で、CurrCuSizeが QpMinCuSizeと同じ時、NonZeroFoundが0に設定される。その後、後続の coding_unit() ルーティンが、再帰方法で実行され、NonZeroFound 値が交代される。ブロック920で示される処理において、CurrCuSize がQpMinCuSizeと同じ場合、NonZeroFound 値が確認される。NonZeroFound が値1を有する場合、delta_qpが伝送される。prediction_unit() ルーティンが呼ばれた後、PredModeがSKIPでない場合、ブロック930が実行される。ブロック930で、CurrCuSize が QpMinCuSizeと同じかそれより大きい場合、NonZeroFound は0に設定される。その後、後続のtransform_unit() ルーティンが実行され、NonZeroFound 値が交代される。transform_unit() ルーティンが呼ばれた後、ブロック940が実行される。ブロック940で示される処理において、CurrCuSizeが QpMinCuSizeと同じかそれより大きい場合、NonZeroFound 値がテストされる。NonZeroFound の値が1の場合、delta_qpが伝送される。
【0023】
上述の他の実施形態をサポートするため、transform_unit()シンタックス修正が
図10のブロック1010に示される。VLCが用いられ、CBPがゼロでない場合、少なくともひとつの非ゼロ変換係数がリーフCUに存在し、 NonZeroFound が1に設定されることを意味する。VLCが用いられ、CBPがゼロの時、NonZeroFoundは、同じ値、すなわち、0を有する。CABACが用いられて、CBFがゼロでない時、少なくともひとつの非ゼロ変換係数がリーフCUに存在し、NonZeroFound が1に設定されることを意味する。CABACが用いられ、CBFがゼロの時、NonZeroFoundは、同じ値すなわち、0を有する。
【0024】
上述の他の実施形態をサポートするため、シーケンスヘッドおよびスライスヘッダーシンタックスは、
図4および
図5と同じままである。前述同様に、シーケンスヘッド中のsps_qp_max_depth 構文要素は、最大CUから、QP最小CUサイズの深さを定義する。各スライスヘッダにおいて、sh_qp_max_depth 構文要素は、最大CUから、QP最小CUサイズの深さを定義する。ブロック510に示されるchange_qp_max_depth_flag 構文要素が用いられて、シーケンスレベルまたはスライスレベルから、QP最小CUサイズ, QpMinCuSizeの選択を示す。たとえば、change_qp_max_depth_flag 値が0に等しいことは、QPを伝送する最小CUサイズが sps_qp_max_depthから生成されることを意味する。change_qp_max_depth_flag 値が1に等しいことは、QPを伝送する最小CUサイズがsh_qp_max_depthから生成されることを意味する。QpMinCuSizeと等しいかそれより大きいリーフCUにとって、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する時、一デルタQPが伝送される。全てが QpMinCuSizeより小さく、および、QpMinCuSizeに等しい同じ親のCUを有する複数のリーフCUに対し、これらのリーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、一デルタQPが伝送される。他のの実施態様によると、QpMinCuSizeと等しいかそれより大きいリーフCUは、リーフCUが、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する時、一デルタQPが伝送される。つまり、非ゼロ量子化変換係数がない場合、デルタQPは伝送されない。さらに、QpMinCuSize より小さく、QpMinCuSizeに等しいサイズの親のCUを有する複数のリーフCUにとって、これらのリーフCUが、少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する時、一デルタQPがリーフCUに伝送されて、QP情報をシェアする。このほか、非ゼロ量子化変換係数の検出は、PredMode、CBP、CBFまたはPredMode、CBPおよびCBFの任意の組み合わせに基づく。
【0025】
図4、
図5、
図8、
図9A、
図9Bおよび
図10のシンタックス設計は本発明の他の実施形態を説明し、特定の構文要素の例として用いられて、本発明を実施しているが、当業者は構文要素を修飾して、同様に、本発明を実施することができる。例の構文要素によると、デコーダーは、所要のQP情報を生成して、ビットストリームを復号する。たとえば、デコーダーはchange_qp_max_depth_flag 構文要素を引き出して、QP最小CUサイズが、スライスヘッダまたはシーケンスヘッダ中で示されるかどうか判断する。それ故、QP最小CUサイズが決定される。リーフCUのサイズが、ビットストリームから復号され、スライス中のリーフCUの順序が決定される。リーフCUサイズがQP最小CUサイズと等しいかそれ以上である場合、NonZeroFound 値が確認される。NonZeroFound の値が0の場合、リーフCU中に非ゼロ変換係数がなく、リーフCUの変換係数が全て0に設定されることを意味する。NonZeroFound の値が1の場合、デルタQPが符号化単位データに存在する。デコーダーはデルタQPを引き出し、デルタQPを符号化単位データに適用して、符号化単位を復号する。
【0026】
本発明の第二の実施態様において、非ゼロ量子化変換係数を有する各リーフCUのデルタQPは、同じLCUに属する少なくともひとつの別のリーフCUの情報に基づいて、明示的に伝送されるかまたは黙示的に生成される。リーフCU中の非ゼロ量子化変換係数の条件は、PredMode、CBF、CBP、または、上記の組み合わせに基づいて生成される。たとえば、リーフCU予測モード( PredMode) が SKIPではなく、且つ、符号化ブロックパターン, CBPが、VLCで使用される状況下、または、符号化ブロックフラグ(CBF)が、CABACで使用される状況下で非ゼロの場合、リーフCUは、少なくともひとつの非ゼロ変換係数を含む。以下において、デルタQP情報を、明示的に、非ゼロ量子化変換係数を有するリーフCUに伝送するケースだけを例としている。第二の実施形態をサポートする所要のシンタックスが、
図11から
図15に示される。
図11のシーケンスヘッダ、
図12のスライスヘッダ、
図13のslice_data() シンタックス、および、
図14Aと
図14Bの coding_unit() シンタックスは、従来のHEVCと同じである。従来のHEVCからの所要のtransform_unit()シンタックス修正は、
図15に示されるブロック1510で示される。ブロック1510に示されるように、VLCが用いられ、CBPが非-ゼロの時、デルタQPが伝送される。また、CABACが用いられて、CBFが非-ゼロの時、デルタQPが伝送される。第二実施態様によると、各リーフCUは、それ自身の量子化パラメータを有し、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合だけ、量子化パラメータ情報が伝送される。
【0027】
図11から
図15中のシンタックス設計は本発明による第二実施形態を説明し、特定の構文要素が例として用いられて、本発明を実施しているが、当業者は構文要素を修飾して、同様に、本発明を実施することができる。例の構文要素によると、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、デコーダーは、所要のQP情報を生成して、ビデオビットストリーム中で、リーフCUを復号する。たとえば、VLCが用いられ、および、リーフCUの符号化ブロックパターン、CBPが非-ゼロの場合、デコーダーは、ビデオビットストリームから、明示的に、または、黙示的に、同じ最大符号化単位 (LCU)に属する少なくとも別のリーフCUの情報からQP情報、たとえば、デルタQPを得る。デコーダーはデルタQPを引き出し、デルタQPを符号化単位データに適用して、復号する。VLCが用いられ、CBPがゼロの場合、リーフCUの変換係数が全て0であることを示す。同様に、CABACが用いられ、および、符号化ブロックフラグ、CBFが非-ゼロの場合、デルタQPが存在する。デコーダーはデルタQPを引き出して、デルタQPを符号化単位データに適用して、復号する。CABACが用いられ、CBFがゼロの場合、リーフCUの変換係数が全て0であることを示す。
【0028】
本発明の第三の実施態様において、符号化システムは、量子化パラメータ処理の二モード間で切り換わる。第一モードで、LCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、符号化システムは一デルタQP/LCUを用いる。第二モードにおいて、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合、符号化システムは、一デルタQP/リーフCUを用いる。第三実施態様をサポートするため、従来のHEVCのように、同じシーケンスヘッダシンタックス、スライスヘッダシンタックス、および、slice_data() シンタックスが用いられる。coding_unit() シンタックス修正は、
図16Aおよび
図16Bに示されるブロック1610および1620により示される。ブロック1610で、lcu_based_qp_flag が組み込まれて、現在のCUがLCUと同じサイズを有する場合、LCUベースQPが用いられるかどうかを示す。lcu_based_qp_flag が設定される場合、NonZeroFound が0にリセットされる。後続の transform_unit() ルーティンが実行された後、NonZeroFound 値が交代される。ブロック1620に示されるように、現在のCUがLCUと同じサイズを有する場合、構文要素, lcu_based_qp_flag 値が確認される。 lcu_based_qp_flag の値が1である場合、NonZeroFound 値が確認される。NonZeroFound の値が1である場合、delta_qp が組み込まれて、NonZeroFound が0にリセットされる。従来のHEVCからの所要の transform_unit() シンタックス修正が、
図17のブロック1710に示される。ブロック1710に示されるように、lcu_based_qp_flag の値が1の時、第一の二条件として、VLCが用いられるか、および、符号化ブロックパターン(CBP)が非-ゼロであるか、がテストされる。第一の二条件を満たす場合、NonZeroFound が1に設定される。さらに、第二の二条件もテストされる。この二条件は、CABACが用いられるか、および、符号化ブロックフラグ,(CBF)が非-ゼロであるか、である。第二二条件を満たす場合、NonZeroFound が1に設定される。第一の二条件または第二の二条件のどちらも満たされない場合、NonZeroFoundの値は、前述同様に、すなわち、0である。lcu_based_qp_flag が設定されない時、第三の二条件として、VLCが用いられるか、および、CBPが非-ゼロであるか、がテストされる。第三の二条件を満たす場合、デルタQPが伝送される。さらに、第四の二条件
として、CABACが用いられるか、および、CBFが非-ゼロであるか、がテストされる。第四の二条件を満たす場合、デルタQPも伝送される。第三の実施態様によると、第一モードで、各LCUはそれ自身の量子化パラメータを有し、LCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合だけ、量子化パラメータ情報が伝送される。第二モードで、各リーフCUはそれ自身の量子化パラメータを有し、リーフCUが少なくともひとつの非ゼロ量子化変換係数を有する場合だけ、量子化パラメータ情報が伝送される。
【0029】
図16A、
図16Bおよび
図17のシンタックス設計は、本発明の第三実施形態を説明し、特定の構文要素が例として用いられて、本発明を実施しているが、当業者は構文要素を修飾して、同様に、本発明を実施することができる例の構文要素によると、デコーダーは所要のQP情報を生成して、ビットストリームを復号する。たとえば、デコーダーは、lcu_based_qp_flag が設定されたか確認することができる。lcu_based_qp_flag が設定された場合、デコーダーは、NonZeroFoundが設定されたか確認する。NonZeroFoundが設定され、デコーダーはQP情報、たとえば、デルタQPを引き出し、デルタQPをLCUに適用する。NonZeroFound が設定されない場合、LCU中に、非ゼロ変換係数がないことを意味する。lcu_based_qp_flag が設定されないとき、デコーダーは、VLCが用いられるか、および、符号化ブロックパターン, CBPが非-ゼロであるかの条件を確認する。条件が満たされる場合、デコーダーは、QP情報、たとえば、デルタQPを引き出し、デルタQPをリーフCUに適用して、復号する。デコーダーは、CABACが用いられるか、および、符号化ブロックフラグCBFが非-ゼロであるかの条件を確認する。条件が満たされる場合、デコーダーは、QP情報、たとえば、デルタQPを引き出して、デルタQPをリーフCUに適用して、復号する。VLCが用いられ、CBPがゼロの場合、リーフCUの変換係数は全て0に設定される。同様に、CABACが用いられ、CBFがゼロの場合、リーフCUの変換係数は全て0に設定される。
【0030】
本発明は、 その思想または本質的特徴を逸脱することなく、その他の特定の形式で具体化される。本発明は、本発明のある機能とタスクまたはハードウェアおよびソフトウェア/ファームウェアの組み合わせを実行するプロセッサに関連する集積回路(IC)および特定用途向けIC(ASIC)などのハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアコードで具体化される。本発明では好ましい実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の思想を脱しない範囲内で各種の変形を加えることができる。