(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原子力関連施設が、事故原子炉、使用済燃料再処理施設及び使用済燃料貯蔵施設の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0017】
<実施形態>
本発明に係る実施形態は、核燃料が核分裂をして放出する核分裂生成(FP)ガスを測定することにより、中性子増倍率を推定し、臨界からどの程度離れているか(以下、「未臨界度」ともいう)を監視する方法に関するものである。中性子には、核燃料の自発核分裂(Spontaneous Fission)に伴い発生する中性子と、それを吸収して起こる中性子誘起核分裂(Induced Fission)により発生する中性子とがある。後者の中性子は、核燃料に吸収されてまた核分裂を起こすという連鎖反応を起こし中性子を増倍させるので、臨界事故に発展する可能性がある。一回の連鎖反応ごとに増倍する中性子の割合である中性子増倍率(k
eff)を求め、k
effが1.0未満であれば未臨界、1.0で臨界、1.0以上では超臨界と判断される。
【0018】
核燃料の取り扱いは、通常、未臨界の状態で行われなければならない。自発核分裂と中性子誘起核分裂により発生するFPガスの構成核種の収率は異なる。本実施形態は、FPガスのうち、希ガスのガンマ線強度を測定することによりこのガスの核種組成を同定し、核分裂について自発核分裂によるものと連鎖反応によるものの割合を求め、中性子増倍率を推定し、未臨界度を推定するものであり、この方法により、臨界からどの程度離れているかが分かり、未臨界度の監視に使用できる。
【0019】
すなわち、本実施形態の方法では、FPガスを捕集しそのガンマ線を測定することにより、捕集されたガスの核種組成を同定し、未臨界度を推定する。FPガスのうち希ガスは周囲物質と化学反応を起こすことなく、わずかな隙間を通り抜け検出器に到達するので、多くの構造材に包まれた核燃料の核分裂ガスを、放射線強度の弱い離れた場所から検出できる。また、FPガスの組成は臨界から遠く離れている段階から測定可能であるので、これを用いて未臨界度を監視しておけば、早期に従事者を退避させることができる。
【0020】
まず、本実施形態の基礎となる、FPガスの測定値から中性子増倍率を求める基本的考え方を詳しく説明する。
【0021】
FPガスには1000核種以上の多くの同位体が含まれるので、どの同位体を測定するかが重要である。使用済燃料中には、通常、キュリウム244(
244Cm)とウラン235(
235U)が含まれる。
244Cmの自発核分裂の場合と
235Uの熱中性子吸収による核分裂の場合のFPの生成割合(核分裂収率)を「核データライブラリーJENDL−4」から引用して
図1に示す。ここで、着目するのは、FPガスであるクセノン135(
135Xe)とクリプトン88(
88Kr)の生成割合の比で、
235U核分裂の場合の1.86に対し、
244Cmの自発核分裂の場合には17.6と大きく異なる。この大いなる違いに着目して、また、中性子増倍率が
135Xeと
88Krの放射能比にほぼ直線的に変化することを見出し、中性子増倍率を算出する方式を見出すことにより、本実施形態を導出した。なお、
88Krもガンマ線測定が可能な同位体である。このことにより、直接核燃料から放出される中性子を測定することなくFPガンマ線を測ることにより、臨界接近の早い時期から未臨界度を監視できる。
【0022】
KrとXeの核分裂生成核種と中性子増倍率の関係を導き出す手順を以下に示す。
【0023】
例として使用済ウラン燃料を取り扱うことを考える。この中には、通常、
244Cmと
235Uが含まれる。
244Cmは自発核分裂する核種で、1回の自発核分裂により放出される中性子の数をv
SPとし、自発核分裂の数をF
SPとすると、自発核分裂により放出される中性子の数はv
SPF
SPである。
235Uがこの中性子を吸収して核分裂して放出する中性子の数はk
eff×v
SPF
SPである。これが1世代後の中性子数である。ここで、1世代とは、発生した中性子が体系内で吸収されたり、漏れ出たりしてなくなるまでの平均の時間である。この中性子を
235Uが吸収すると、また核分裂し中性子を放出する。この連鎖反応は無限世代まで続く。ここでk
effは中性子増倍率で、1世代の間に消滅する中性子に対する生成する中性子の平均の割合である。それ故、2世代目の中性子は1世代目の中性子のk
eff倍に増倍し、k
eff2×v
SPF
SPになる。いまここでは、連鎖反応の中で、核分裂により中性子を放出するのは
235Uのみと単純化して説明する。
【0024】
自発核分裂により中性子は常に供給されるので、場の中に存在する中性子数S(k
eff)は下記のように、各世代の中性子の和となる。場の中性子数は連鎖反応を起こし下記のように増倍してゆく。ここで、S(Cm)は
244Cmの自発核分裂により供給される中性子の数v
SPF
SPである。また、S(U)は、
235Uの連鎖反応で生成された中性子で現存している数の合計である。
【数3】
【0025】
式(3)の右辺の第1項は自発核分裂により放出された中性子で、第2項以降は
235Uの連鎖反応の世代の進行に伴う中性子の増大分である。中性子の1世代の時間は非常に短いので、すぐ、無限世代まで反応が進む。
244Cmの自発核分裂により中性子は常に場に供給されるので、場に存在する中性子の数は式(3)のように全ての世代の中性子の和になる。式(3)において、k
effnはn世代での中性子数の増倍を表している。n世代に入ってくる中性子はS(Cm)×k
effn−1で、これがn世代でS(Cm)×k
effn−1×k
effになる。
【0026】
244Cmの自発核分裂による中性子放出量が、燃焼燃料から放出される中性子量の、通常、50%以上になっているので、ここでは、
244Cmの自発核分裂のみを外部中性子源として取り扱う。外部中性子源というのは、連鎖反応とは別に中性子を供給するものを指す。
【0027】
他の外部中性子源(例えば、
242Cmの自発核分裂による中性子の放出等)の影響は、以下の説明で
244Cmによる中性子放出量S(Cm)が増加するとして取り扱うことができる。
【0028】
自発核分裂(Spontaneous Fission)による中性子放出数をS
SF、中性子を吸収して核分裂する誘起核分裂(Induced Fission)による中性子放出数をS
IFとすると、S
SF=S(Cm)、S
IF=S(U)=S(Cm)×k
eff/(1−k
eff)である。そうすると、S
IF/S
SF=k
eff/(1−k
eff)が中性子源増倍係数であり、中性子源増倍係数を測定することにより、k
effが求まる。
【0029】
また、それぞれに起因する核分裂数F
SF,F
IFは、F
SF=S
SF/v
SF、F
IF=S
SF/v
IF×k
eff/(1−k
eff)である。ここで、v
SF及びv
IFはそれぞれ、自発核分裂及び誘起核分裂当たりの平均放出中性子数である。
244Cmの自発核分裂により放出される中性子数v
SF及び
235Uの誘起核分裂により放出される中性子数v
IFは熱中性子炉で、v
SF(
244Cm)=2.84、v
IF(
235U)=2.40が世界的に多く使用されている(JAERI 1324、1992年1月発行を参照)。
【0030】
FPガス核種の時間変化(下記の式(4)の左辺)は、生成するFPガス核種の数から崩壊して消滅するFPガス核種の数を差し引く(下記の式(4)の右辺)ことにより求まる。
【数4】
ここで
、YI(J)はI核種が核分裂したときJ核種を生成する収率である。また、λ
JはJ核種の崩壊定数である。N
Xe、N
Krは、各核種の数密度を表す。
【0031】
核種組成が平衡状態になっていると仮定すると、式(4)の右辺はゼロとなるので、次式(5)で示される関係が求まる。
【数5】
ここで、
【数6】
である。核分裂の収率Y
Cm,Y
Xe及び崩壊定数λ
Xe,λ
Krは表1に示す核種特有の物理定数である。即ち、KrとXeの放射能比R
0が測定されると式(5)からk
effが求まる。表1は、原子炉過酷事故時に検出される可能性のある放射性希ガス核種とその関連データを示す。
【0032】
上記した基本的考え方を踏まえ、本実施形態についてさらに詳しく説明する。下記表1において、核分裂収率は「累積核分裂収率」である。注目核種は
88Krと
135Xeである。
88Krのプレカーサー(先行核)は
88Brであるが、その半減期は16.6sと
88Krに比して非常に短い。それ故、累積核分裂収率に含めて用いることができる。一方、
135Xeの先行核は
135Iで半減期は6.61hとなっている。核分裂して生成された
135Iは水に溶けたり、周囲構造材に吸着して閉じ込められる。それ故、ヨウ素が発生位置で核改変してXeとなり、検出器に移行し測定されると想定する。
【0034】
R
0は核分裂生成核種の発生位置での放射能比で、測定できるのは測定位置での放射能比R(Kr/Xe)で、R
0とは下記の式(7)の関係になる。
【数7】
ここで、τは希ガスが発生位置から測定位置までに移行する時間である。λは崩壊定数である。R
0(Kr/Xe)は発生位置での放射能比である。
【0035】
この時間τは、希ガスでは移行途中で化学反応をしないので拡散速度が近く測定に便利な
133Xeと
133mXeを測定することにより求める。この2核種は
235Uと
244Cmの核分裂による収率が非常に近く、Y
U(Xe)/Y
Cm(Xe)の値は
133Xeについて1.18(=6.69/5.66)、
133mXeについて1.12(=0.196/0.175)である(表1を参照)。この特性に着目して、下記の関係式(8)を用いてτを求める。
【数8】
【0036】
測定値の放射能比R(
133mXe/
133Xe)を用いて減衰時間τを下記の式(9)から求める。
【数9】
【0037】
放射能比Rの測定値から式(9)でτを求め、式(7)に代入しR
0(Kr/Xe)を求めることにより、式(5)からk
effが求まる。1−k
effが臨界からの距離を示す量である。臨界から離れたk
effがゼロの状態では、式(5)の分母はゼロに近く、R
0(Kr/Xe)はY
Cm(Kr)/Y
Cm(Xe)に近づく。k
effが増大して1.0に近づくと、式(5)の分子がゼロに近づき、R
0(Kr/Xe)はY
U(Kr)/Y
U(Xe)に近づく。即ち、KrとXeの放射能比R
0(Kr/Xe)を監視することにより、k
effを監視できる。この関係を
図2に示す。
図2の代表的な数値を抽出すると、表2のとおりである。
【0039】
中性子数S(k
eff)は、式(3)から分かるように、k
effが1.0に近づくにともない双曲線的に急上昇するが、R
0(Kr/Xe)の変化は急激ではない。放射能比R
0(Kr/Xe)の変化に対する中性子増倍率の変化は、
図2に示すように、ほぼ直線的で管理が容易である。KrとXeの放射能比R
0(Kr/Xe)を監視することにより、臨界近接の早い時期から臨界からの距離を推定できる。式(5)を変形し整理すると、
【数10】
となり、更に近似すると、
【数1】
となり、中性子増倍率は式(1)からR
0の一次式で近似できることが分かる。
【0040】
図2に示された線は、表2に示された、k
eff=0.0(R
0=0.057)とk
eff=1.0(R
0=0.538)の2点を結ぶ実質的な直線関係が良い近似になっていることが分かる。このことは、R
0を測定値から求めれば、複雑な検証計算をすることもなく、k
effが求まることを意味する。即ち、当該事業者に新たな検証実験等の負担をかけることがない。これを直線の一次式で近似すると、次式(2)
【数11】
で表される。
【0041】
以上述べたようにFPガスを捕集して、そのうち希ガスであるKrとXeの放射能比をゲルマニウム検出器で測定し、中性子増倍率を推定して臨界を監視する。このように従来の臨界警報装置では役に立たない中性子の検出が困難な場合や、臨界接近をできるだけ早く知る必要がある場合に役立つ未臨界度監視の方法を考案した。
【0042】
FPは1000以上の核種からなっており、この中で今回着目したのは希ガスである。放出される希ガスを適当な場所で捕集し、そこから放出されるガンマ線を測定し希ガスの同位体組成を求める。通常、ガスの捕集はチャコールフィルターを、ガンマ線の測定はゲルマニウム検出器を用いる。測定される同位体の量の絶対値はガス採取場所や周囲状況の変化により異なるが、XeやKrなど希ガスの場合、それらの放射能比Rは、発生位置から測定位置まで移行する間の減衰補正は必要であるが、何処で、何時測ってもほとんど変わらない。従って、測定
位置での放射能比Rから発生
位置の放射能比R
0を推定することは容易である。
【0043】
R
0と中性子増倍率の関係は、
図2に示すように、線形的である。この直線は、
88Krと
135Xeの
244Cmと
235Uの核分裂収率から求まる2点を結んだもので良く近似できることが分かったので、特別な計算等により求める必要はない。
【0044】
使用済核燃料周辺の空気を抜出し、空気に含まれるFPガスを捕集し、そのガンマ線を測定することにより、KrとXeの放射能比Rを求め、燃料位置から検出器までの減衰補正を行い、燃料位置の放射能比を求め、
図2から中性子増倍率(k
eff)を推定し臨界を監視する。
【0045】
(実施形態の効果)
冒頭で述べた課題を解決するために、本発明の方法では、FPガスを捕集しそのガンマ線を測定することにより、捕集されたガスの核種組成を同定し、未臨界度を推定する。FPガスのうち希ガスは周囲物質と化学反応を起こすことなく、わずかな隙間を通り抜け検出器に到達するので、多くの構造材に包まれた核燃料の核分裂ガスを、放射線強度の弱い離れた場所から検出できる。また、FPガスの組成は臨界から遠く離れている段階から測定可能であるので、これを用いて未臨界度を監視しておけば、早期に従事者を退避させることができる。
【0046】
従来の、中性子を検出して臨界監視する方法に比べ、FPガスの内希ガスの同位体組成の相関をとり臨界を監視する本手法は、下記の場合に有効である。
(1)中性子測定が困難な施設(原子炉事故炉心の熔融燃料取り出し):臨界発生場所(FPガスの発生場所)が多くの構造材に囲まれた場所でも希ガスは不活性ガスであり漏れ出てくるので、発生場所から離れたバックグラウンドの低い場所でFPガンマ線の測定ができる。
(2)臨界事故に備え作業従事者が早期に退避することが必要な施設(使用済燃料再処理施設に加えて事故原子炉や使用済燃料貯蔵施設などの自発核分裂核種を燃料中に含む燃焼燃料を取り扱う原子力関連施設):臨界接近の早い時期から希ガスの組成の変化を検知でき、警報を発することができる。
(3)使用済燃料を貯蔵する施設(使用済燃料の破損の恐れがある場合):燃料棒の破損をFPガスの燃料棒からの漏えいで知り、臨界への接近をFPの希ガスの組成比から知ることができ早期に臨界接近を施設従事者に知らせることができる。
(4)FP希ガスであるクリプトンとクセノンの放射能比率をゲルマニウム検出器等で検出することによりk
effを推定できることが、特別な検証実験をすることなしに、分かったことは本方法を採用する当該事業者の負担を軽減することになる。
【0047】
(応用例1)
図3を参照しつつ、本実施形態を事故原子炉10に応用した場合の例について、説明する。
図3に示すように、事故原子炉10においては、冷却材喪失事故で燃料が熔融すると、熔融燃料13が圧力容器11の下部または格納容器12の下部に堆積している。熔融燃料13を取り除く作業は、臨界にならないことを監視しながら行わなければならないが、炉心は崩壊しており、周囲は放射線レベルが高くて近づけず、熔融燃料13を含む核燃料は厚い遮蔽材に取り囲まれており中性子を測定することも極めて困難である。一方、FPガスのうち希ガスは、遮蔽材の隙間を通り抜け格納容器12の外部に放出されている。原子炉内部の希ガスはチャコールフィルター14及び排気ファン15を経由して屋外へ排出されているが、チャコールフィルター14からこの希ガスを捕集し、半導体検出器16を用いてガンマ線測定により希ガスの核種を同定する。
【0048】
ここで、熔融燃料13は燃焼した核燃料であり、表3に示すように、キュリウム等の自発核分裂性核種と、ウランやプルトニウム等の連鎖反応する核種が含まれている。表3は、熔融燃料13の核種組成(アクチニド核種重量)を示したものであり、臨界から離れた状態(深い未臨界)では、核分裂は自発核分裂が多く、FPガスも自発核分裂によるものが多い。臨界に近づくにつれ連鎖反応の割合が増大し、FPガスも連鎖反応によるものが多くなる。
88Krと
135Xeの生成比をみると、特に
88Krの生成率の
244Cmと
235U核分裂による違いが大きい(
図1参照)。
【0050】
測定は、前述のとおり、格納容器12から引き出した希ガスをチャコールフィルター14で捕集し、半導体検出器16(好適には、ゲルマニウム検出器)でガンマ線を計測する。その結果から捕集された希ガスの
88Krと
135Xeの比率が分かり、減衰補正をしてそれら核種の生成の比率を推定する。
88Krと
135Xeは、希ガスであるため、放出源から検出器までの移行の途中で周囲物質と化学反応を起こさないので減衰補正が比較的容易である。この比率から
244Cmの核分裂と
235Uの核分裂の比率が分かる。すなわち、
88Krの割合が少なければ
244Cmによる自発核分裂の割合が
235Uによる核分裂の割合より相対的に大きいことがわかる。この結果は(1−k
eff)/k
effになっており、前述の関係式(5)から中性子増倍率k
effが求まる。例として、
88Krと
135Xeの放射能濃度の実測値が0.3×10
−6Bq/cm
3と7×10
−6Bq/cm
3であったとすると、放射能比R(Kr/Xe)は0.04となる。ガス発生源から測定位置までの希ガスの移行時間が希ガスに関係なく12時間を要したとして減衰補正したとすると、ガス発生源における放射能比R
0(Kr/Xe)は0.30となり、R
0(Kr/Xe)とk
effの関係式(5)又は
図2を用いると中性子増倍率k
effは0.5となる。
【0051】
ところで、
図3は事故原子炉10からのFPガスを測定している系統の模式図であるが、これは、
135Xeを測定して、事故炉心の出力を監視している系統のものである。この監視のためには、
135Xeの全量の推定が必要で、大きな格納容器12内に分散する
135Xeを収集しなければならない。そのために、窒素ガスの圧入により格納容器12内の
135Xeガスをチャコールフィルター14の方へゆっくり追い出している。このため、希ガスの濃度は薄められ、半減期の比較的長い
135Xeは測定されているが、発生量の小さくしかも半減期の比較的短い
88Kr等の測定が困難になっている。
【0052】
応用例1では、FPガスの核種間の相関を使用して臨界監視をしているので、核種量の絶対値は不要であり、採り易い場所で希ガスをチャコールフィルター14で捕集し、半導体検出器16で分析することにより、希ガスのKrとXeの放射能比を求める。即ち、希ガス濃度の濃い場所の希ガスを採取し速やかに半導体検出器16で計測すればよい。
図3の発生位置から半導体検出器16までの希ガスのパスを短くすると効率的に測定できる。
【0053】
(応用例2)
次に、
図4を参照しつつ、本実施形態を使用済燃料再処理施設20に応用した場合の例について、説明する。使用済燃料再処理施設20においては、使用済の燃料棒をせん断して硝酸溶液に溶かす工程に適用する。
図4は、溶解槽21での臨界監視の状態を模式的に示しており、溶解槽21の中の核燃料23は、非密封の溶液燃料となっている。燃料棒のせん断により核燃料23は非密封状態になっており、FPガスが放出される。それ以降の廃棄物のガラス固化体生成工程までは、核燃料23は非密封の状態で取り扱われる。これらの過程で、燃料中のキュリウム等の自発核分裂と、その結果放出される中性子によりウランやプルトニウムとの連鎖反応によりFPガスが発生する。応用例1と同様に、このFPガスを捕集してガンマ線を計測し、
88Krと
135Xeの放射能比率を求めて中性子増倍率k
effを求める。例として沸騰水型軽水炉の使用済み燃料を4年冷却した場合の核種組成を表4に示す。表4は、使用済燃料再処理施設の溶解槽の核種組成(濃縮度4.0%、燃焼度40GWD/T、4年冷却時使用済燃料)を示す。
【0055】
この場合には発生源すなわち溶解槽21から測定位置すなわち半導体検出器26までのFPガスの移行時間は5分と応用例1に比して短く、
88Krと
135Xeの放射能の比は発生位置におけるR
0(Kr/Xe)と測定位置におけるR(Kr/Xe)では差はわずかである。表4の核種組成のものについて、中性子輸送計算した結果、
88Krと
135Xeの放射能比R(Kr/Xe)が0.25で、中性子増倍率k
effは0.07と推定された。この計算では、溶解槽21の溶液は硝酸溶液としているが、それが水と置き換わった場合の中性子増倍率k
effは0.14と計算され、その場合の
88Krと
135Xeの放射能の測定値の比率は0.18になる。放射能比R(Kr/Xe)が0.25から0.18に変化したことが計測されれば、硝酸溶液が水溶液に置き換わり、中性子増倍率k
effが0.07から0.14に変化したと考えられる。この体系では、従来の臨界監視系でも中性子の測定は可能であり臨界になったかどうかの判定はできるが、臨界からどの程度離れているかを常時監視することは困難であった。但し、この例は小さな溶解槽で臨界にならない体系であるが、中性子増倍率k
effの変化が測定できる可能性を示唆しており、臨界監視が必要な溶解槽に設置をしておけば、有効な監視装置となると考えられる。