(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110934
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】棒状石鹸組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 9/26 20060101AFI20170327BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20170327BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20170327BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20170327BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20170327BHJP
C11D 9/50 20060101ALI20170327BHJP
C11D 13/16 20060101ALI20170327BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20170327BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20170327BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20170327BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
C11D9/26
A61K8/34
A61K8/365
A61Q19/10
A61K8/36
C11D9/50
C11D13/16
C11D1/02
C11D3/20
C11D3/37
C11D3/48
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-502175(P2015-502175)
(86)(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公表番号】特表2015-516481(P2015-516481A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】EP2013054333
(87)【国際公開番号】WO2013143808
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年1月5日
(31)【優先権主張番号】863/MUM/2012
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】12168864.2
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アガルケド,アジット,マノハー
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボルッティ,アミット
(72)【発明者】
【氏名】チェビティ,バラット
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,シャシャンク,ナレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アイイェル,ビドュラ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ニティッシュ
(72)【発明者】
【氏名】メデパッリ,スリラクシミ,ベンカタ
(72)【発明者】
【氏名】サンズギリ,ビブハブ,ラムラオ
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−536205(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/036048(WO,A1)
【文献】
特表2012−505851(JP,A)
【文献】
特開平02−053900(JP,A)
【文献】
特表2013−505907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 9/26
A61K 8/34
A61K 8/36
A61K 8/365
A61Q 19/10
C11D 1/02
C11D 3/20
C11D 3/37
C11D 3/48
C11D 9/50
C11D 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)組成物の30〜60重量%の無水石鹸と;
(ii)組成物の20〜50重量%の多価アルコールと;
(iii)組成物の0.01〜5重量%のテルピネオールと;
(iv)組成物の0.01〜5重量%のチモールと;
(v)組成物の5〜25重量%の水と
を含む棒状石鹸組成物であって、
当該棒状石鹸組成物の1cm厚さの試料が可視光の少なくとも5%を透過させる棒状石鹸組成物。
【請求項2】
前記多価アルコールがグリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1〜20重量%の非石鹸洗浄活性剤を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非石鹸洗浄活性剤がアニオン界面活性剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の無水石鹸の1〜15重量%の12−ヒドロキシステアリン酸の塩を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)40〜90℃の範囲の温度で組成物の溶融物を調製する工程と;
(ii)前記溶融物を適当な型に注ぎ込む工程と;
(iii)前記組成物を20〜30℃の範囲の温度に冷却する工程と;
(iv)前記組成物を離型する工程と
を含む方法により調製される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(i)請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
(ii)表面を適当な溶媒ですすぐかまたは表面を適当な拭き取りにより拭き取る工程と
を含む、表面の病原体を減少させる方法。
【請求項8】
前記表面をすすぐかまたは拭き取る前記工程を、前記組成物を塗布する工程の5分以内に行う、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に透明な棒状石鹸組成物に関する。本発明は、より具体的には、優れた使用時特性(in−use properties)、視覚的魅力および消費者により使用された場合に皮膚表面の病原体減少をもたらす透明な石鹸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な石鹸は、審美的魅力を有し、不透明な石鹸よりも低刺激であると認知される。石鹸は棒形で納品されることが多く、透明な棒状石鹸を調製するためのいくつかの方法が知られており、使用されている。
【0003】
透明な棒状石鹸は通常、脂肪酸のアルカリ金属塩を他の従来成分と共に水と混合することによって調製される。これらの棒状石鹸は通常、石鹸組成物が溶融状態で調製され、所望のサイズの型に注ぎ込まれるいわゆる溶融流延(melt−cast)経路を使用して調製される。型を冷却すると、石鹸組成物が硬化し、次いで、これを離型し、所望のサイズの棒に切り分けてもよい。従来、透明な棒を調製するために、多量の揮発性アルコールが使用されていたが、これは、透明な外観を得る前に棒を数週間熟成させなければならないプロセスを要するものであった。本出願人らは、米国特許第6730643号明細書において、選択した脂肪酸混合物および選択した多価アルコールを使用して調製した透明な棒状石鹸組成物を開示している。本出願人はまた、国際公開第20100046238号パンフレットにおいて、テルピネオールおよびチモールを含む組成物が、速効性の時間枠で、多くの場合、組成物を所望の表面に塗布したほんの15秒後に、強化された病原体減少をもたらすことを開示している。本発明によって、透明な棒状石鹸組成物にチモールおよびテルピネオールを組み込むことによって、強化された視覚および他の感覚上の利点だけでなく、さらにこのような速効性の時間枠において強化された病原体減少の利益がもたらされることが分かった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、強化された病原体減少の利益をもたらしつつ、優れた視覚および他の感覚上の属性の二重の利益を有する棒状石鹸組成物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6730643号明細書
【特許文献2】国際公開第20100046238号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
本発明は、組成物の(i)30〜60重量%の総脂肪分と;(ii)20〜50重量%の多価アルコールと;(iii)0.01〜5重量%のテルピネオールと;(iv)0.01〜5重量%のチモールと;(v)5〜25重量%の水とを含む実質的に透明な棒状石鹸組成物を提供する。
【0007】
本発明の好ましい態様は、(i)40〜90℃の範囲の温度で組成物の溶融物を調製する工程と;(ii)溶融物を適当な型に注ぎ込む工程と;(iii)組成物を20〜30℃の範囲の温度に冷却する工程と;(iv)組成物を離型する工程とを含む方法により調製される組成物を提供する。
【0008】
別の好ましい態様は、(i)本発明の組成物を表面上に塗布する工程と、(ii)表面を適当な溶媒ですすぐかまたは表面を適当な拭き取りにより拭き取る工程とを含む、表面の病原体を減少させる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
これらのおよび他の態様、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付する特許請求の範囲を読めば当業者に明らかになるであろう。疑義を回避するために、本発明の一態様の任意の特徴を、本発明の任意の他の態様に利用してもよい。「含む(comprising)」という単語は、「含む(including)」を意味するが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「で構成される(composed of)」を意味するわけではないことを意図している。換言すれば、列挙した工程または選択肢が網羅的である必要はない。以下の説明で示される例は、本発明を明らかにすることを意図しており、これらの例それ自体に限定することを意図していないことに留意する。同様に、特に指示しない限り、全ての百分率は重量/重量百分率である。
【0010】
実施例および比較例を除いて、または明示的に指示しない限り、反応の材料または条件の量、材料および/または使用の物理特性を示す本明細書の全ての数字は、「約」という単語により修飾されるものと理解すべきである。特に指定しない限り、「x〜y」という形式で表される数値範囲は、xおよびyを含むと理解される。具体的な特徴について、複数の好ましい範囲が「x〜y」という形式で記載されている場合、異なる終点を組み合わせた全ての範囲も熟慮されると理解される。
【0011】
透明という単語により、棒状石鹸が光を透過することができることが意味される。より具体的には、実質的に透明により、材料の1cm厚さの試料が可視光の少なくとも5%、好ましくは可視光の少なくとも20%、より好ましくは可視光の少なくとも50%を透過させることが意味される。より好ましくは、棒状石鹸は透明である。材料の1cm厚さの試料が可視光の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%を透過させる場合、棒状石鹸は透明である。光のいくらかのほとんど不可避の吸収および/または散乱のために、透過は一般的に可視光の95%未満となる。可視光は一般的に、約390nmと約750nmとの間の波長を有する光を指すと理解される。さらに、例えば、染料または別の有色成分が存在する場合、透過する光の百分率は、全ての波長で同じである必要はない。
【0012】
本発明の組成物は、非治療用途に好ましく、より具体的には、皮膚および毛髪を含むヒトの体の表面の洗浄に使用するのに好ましい、または硬表面の洗浄用途に使用してもよい。
【0013】
本発明は、透明な石鹸という利点を示しながら、少量の総脂肪分(TFM)を含むという利点を有する。本発明の透明な棒を調製する方法では、最小量の揮発性アルコールが使用され、熟成時間が従来の透明な石鹸と比べて大いに減少される。棒状石鹸は所望の透明性ならびに優れた石鹸泡、手触り、硬さを示しながら、従来の高TFM棒(通常、製粉および圧出(plodded)棒状石鹸製造法を使用して調製される)と比べて強化した病原体減少をもたらす。
【0014】
本発明は、病原体減少を示すこのような型の棒状石鹸で今までに知られていない一定の他の追加の利点を有する。1つの利点は、本発明の棒状石鹸の形式で抗菌活性剤を送達することによって、チモールおよびテルピネオールの激臭(好きでない人もいる)が、チモールおよびテルピネオールが従来の製粉および圧出棒(はるかに少量の多価アルコールを含む)を通して送達される組成物に比べて低レベルで認知されることが分かったことである。
【0015】
本発明の別の利点は、他の抗菌剤を含む類似の組成物と比べて強化した低刺激性を有すると見られることである。棒状石鹸がTCN(トリクロカルバン)などの従来の病原体減少剤を含む場合、その棒は高いゼイン数(zein number)を示すことが観察された。ゼイン数は、組成物の皮膚に対する優しさの尺度であり、低いゼイン数はより低刺激であることを示す。本発明によって今や、皮膚に使用した場合に優れた優しさを確保しながら、本発明の病原体減少剤を含めることによる非常に優れた病原体減少の利益を得ることが可能である。
【0016】
本発明のさらに別の利点は、本発明の組成物(特に遊離アルカリ含量が高いもの)を用いると、流延棒組成物の熟成時間を短縮することが可能となる(これは商業規模での方法の生産性を増加させるのに非常に有利である)ことである。溶融流延経路により調製した石鹸を、熟成させる、すなわち、安定な組成物を達成し、最終的な透明状態に達する前に数時間〜数日の一定期間空気中に保持することが必要であることが周知である。本発明によって、特に、遊離アルカリ分を含めると、従来の流延棒状石鹸で必要とされる約24〜48時間から本発明の棒状石鹸で必要とされる24時間未満まで、熟成時間を短縮することが可能になる。遊離アルカリ分を含有させることのさらなる利点は、チモールおよびテルピネオールの抗菌効果が強化されることである。
【0017】
本発明の棒状石鹸のさらに別の利点は、「浸漬によるマッシュ(Mush by immersion)」試験によって試験した場合、本発明で遊離アルカリ分を含めたときには、遊離アルカリ分を含めない棒状石鹸と比べて棒状石鹸の摩耗率がはるかに低くなることが分かったことである。
【0018】
本発明は、組成物の30〜60重量%の総脂肪分を含む透明な棒状石鹸に関する。石鹸という用語は、これらの脂肪酸の塩を指す。適当なカチオンには、ナトリウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、アルキルアンモニウムおよびアルミニウムが含まれる。ナトリウムが特に好ましいカチオンである。本発明の透明な石鹸は、脂肪酸もしくは油またはこれらのブレンドをけん化することによって得られる。適当な脂肪酸はC8〜C22脂肪酸である。本発明に特に適した脂肪酸には、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸またはこれらの混合物が含まれる。これらはまた、植物および/または動物源から得ることができ、例えば、獣脂脂肪酸またはパーム脂肪酸であり得る。
【0019】
18個の炭素原子を有する石鹸については、付随するナトリウムカチオンは、一般的に約8重量%になる。
【0020】
油または油と脂肪酸の混合物をけん化することも可能である。本発明に適した油には、獣脂、獣脂ステアリン、パーム油、パームステアリン、大豆油、魚油、米糠油、ヒマワリ油、ヤシ油、ババス油およびパーム核油が含まれる。特に好ましいのは硬化パーム核油である。
【0021】
透明な石鹸の総脂肪分は、30〜60%、より好ましくは30〜50%、最も好ましくは35〜45%である。
【0022】
石鹸を調製するための脂肪酸装入量に含めるための好ましい脂肪酸は、12−ヒドロキシステアリン酸である。存在する場合、これは石鹸組成物中の総脂肪分の1〜15重量%含まれる。約85%の12−ヒドロキシステアリン酸エステルを含有する硬化ヒマシ油が本発明の組成物に使用するのに適している。
【0023】
組成物が遊離アルカリを含むことが好ましい。遊離アルカリ含量(遊離水酸化ナトリウムの百分率に関する)は、好ましくは0.01〜0.1%の範囲、より好ましくは0.02〜0.05%の範囲にある。対照的に、従来の流延棒状石鹸は、0〜1%の範囲の残留遊離脂肪酸含量(オレイン酸の重量%により測定)を有する。
【0024】
好ましくは、本発明の透明な石鹸を製造するために使用される脂肪装入量は、0〜20、より好ましくは2〜15のヨウ素価を有する。
【0025】
本発明の棒状石鹸組成物は、20〜50%の多価アルコールを含む。本発明に適した多価アルコールには、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはこれらの混合物が含まれる。多価アルコールは、総棒状石鹸の20〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、最も好ましくは−20〜40重量%の量で存在する。本発明に使用されるポリエチレングリコールは、含有される場合、好ましくは200〜1500の分子量を有する。
【0026】
ソルビトールが含まれる場合、これは好ましくは組成物の5〜20重量%、より好ましくは8〜18重量%で存在する。グリセロールが含まれる場合、これは好ましくは組成物の0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%で存在する。ポリエチレングリコールが含まれる場合、これは好ましくは組成物の1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%で存在する。プロピレングリコールが含まれる場合、これは好ましくは組成物の1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%で存在する。組成物がソルビトール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールの混合物を含むことが好ましい。上に列挙した3種の多価アルコールに加えて、グリセロールをさらに含むことが最も好ましい。
【0027】
チモール
本発明の棒状石鹸組成物は、0.01〜5%のチモールを含む。
【0028】
チモールの構造を以下に示す:
【化1】
【0029】
本発明の組成物は、好ましくは0.01〜1重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.4重量%のチモールを含む。チモールを、精製した形態で組成物に添加してもよい。あるいは、チモールが本発明の組成物中に所望の濃度で存在することを確保しながら、チモールを含むタイム油またはタイム抽出物を組成物に添加してもよい。タイム油またはタイム抽出物は、タイム植物から得られる。タイム植物は、チムス(Thymus)属に属する植物を指し、それだけに限らないが、以下の種を含む:チムス・ブルガリス(Thymus vulgaris)、チムス・ジギス(Thymus zygis)、チムス・サツレオイデス(Thymus satureoides)、チムス・マストキナ(Thymus mastichina)、チムス・ブルーソネッティ(Thymus broussonetti)、チムス・マロカヌス(Thymus maroccanus)、チムス・パリダス(Thymus pallidus)、チムス・アルゲリエンシス(Thymus algeriensis)、チムス・セルピルム(Thymus serpyllum)、チムス・プレゴイデ(Thymus pulegoide)およびチムス・シトリオドラス(Thymus citriodorus)。
【0030】
テルピネオール
本発明の棒状石鹸組成物は、0.01〜5%のテルピネオールを含む。
【0031】
テルピネオール化合物の構造を以下に示す:
【化2】
【0032】
テルピネオールは、好ましくはα−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールまたはこれらの混合物から選択される。テルピネオールがα−テルピネオールであることが特に好ましい。テルピネオールを、精製した形態で抗菌組成物に添加してもよい。あるいは、テルピネオールが本発明の組成物中に所望の濃度で存在することを確保しながら、テルピネオールを含む松根油を抗菌組成物に添加してもよい。組成物は、好ましくは0.02〜5重量%、さらにより好ましくは0.03〜1重量%、なおさらに好ましくは0.04〜0.6重量%のテルピネオールを含む。
【0033】
他の精油活性剤、例えば、オイゲノール、ゲラニオールまたはこれらの混合物を、追加の病原体減少の利益のために組成物に含めてもよい。より好ましくは、組成物は、チモール、テルピネオールおよびオイゲノールの混合物を含む。
【0034】
好ましくは、非石鹸洗浄活性剤を本発明の棒状石鹸組成物に含める。非石鹸洗浄活性剤は、アニオン、カチオン、双性イオン、両性界面活性剤またはこれらの混合物から選択され得る。
【0035】
非石鹸洗浄活性剤は、好ましくはアニオン界面活性剤である。好ましくは、非石鹸洗浄活性剤の量は、組成物の1〜20重量%で含まれる。
【0036】
組成物には、塩を含めてもよい。適当な塩にはナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。塩化ナトリウムが特に好ましい塩であり、好ましくは0.1〜2%の量で使用される。
【0037】
石鹸の透明性が保持される限り、抗酸化剤、芳香剤、ポリマー、キレート剤、着色剤、脱臭剤、染料、皮膚軟化剤、保湿剤、酵素、起泡力増進剤、殺菌剤、抗菌剤、起泡剤、真珠光沢剤(pearlescer)、皮膚コンディショナー、溶媒、安定剤、過脂肪剤、日焼け止め等などの他の任意の成分を本発明の方法に適量で添加してもよい。
【0038】
本発明の組成物は、好ましくは以下の方法ステップ:(i)40〜90℃の範囲の温度で組成物の溶融物を調製する工程と;(ii)溶融物を適当な型に注ぎ込む工程と;(iii)組成物を20〜30℃の範囲の温度に冷却する工程と;(iv)組成物を離型する工程とを使用して調製される。
【0039】
したがって、本発明の棒状石鹸組成物を製造する方法は、当該方法において最小量の揮発性アルコールを利用する。好ましい方法は、少なくとも1種の脂肪酸および/または油、少なくとも1種の多価アルコール、水を混和する工程と、適当なアルカリを使用して混合物を中和する工程と、任意で適当な非石鹸洗剤活性剤を添加する工程と、好ましくは塊を濾過する工程と、適当な型に注ぎ込む工程と、冷却する工程とを含む。その後、通常、長丸太の形態の冷却した成形石鹸を所望のサイズの棒に切り分けてもよい。これに0〜4週間にわたる熟成が続いてもよい。
【0040】
好ましい方法について、より詳細な説明を以下に示す:
1種以上の脂肪酸および/または油と、任意で12−ヒドロキシステアリン酸と、少なくとも1種の多価アルコールと、水と、任意で揮発性アルコールとを混合する。次いで、アルカリ、好ましくは苛性ソーダを使用して、この塊を中和する。中和は、好ましくは80℃または約80℃で行う。中和の完了をアルカリの消費により監視する。いったん中和が完了したら、他の成分を塊に添加してもよい。次いで、混合物を好ましくは適当な手段により、例えば、フィルタプレスを通して濾過する。次いで、混合物を冷却型で冷却する。好ましくは、Schicht冷却器を使用して冷却を行う。棒を典型的には冷却の最後で長い円筒として形成する。次いで、棒を、そのまま若しくは小さいビレットに切り分けた後で、または、棒、次いで切断されたビレットとして順次、0〜4週間の期間熟成する。揮発性アルコールを方法に使用しない場合、熟成は必要とされない。
【0041】
好ましい態様では、Schicht冷却器から得た棒を0〜2週間の期間熟成する。次いで、棒を必要な形状およびサイズに切断し、必要であれば型押しし、0〜2週間の期間さらに熟成する。
【0042】
本発明はまた、(i)本発明の組成物を塗布する工程と、(ii)表面を適当な溶媒ですすぐかまたは表面を適当な拭き取りにより拭き取る工程とを含む、表面の病原体を減少させる方法を提供する。
【0043】
好ましい態様では、表面をすすぐかまたは拭き取る工程を、組成物を表面に塗布する工程の後5分以内、より好ましくは1分以内、さらにより好ましくは30秒以内、最も好ましくは15秒以内に行う。
【0044】
本発明を、以下の実例となる非限定的実施例によりさらに説明する。
【0045】
[実施例]
[例1〜3]種々の石鹸組成物により与えられる病原体減少
表−1に示される組成を有する異なる棒状石鹸を調製した。
【0046】
これらの棒状石鹸を以下の手順によりインビトロアッセイで試験した。
【0047】
約10
7個の細菌細胞(大腸菌ATCC10536)を試験管に入れ、15秒の期間、種々の組成物と接触させた。15秒の接触後に細菌を取り出し、系列希釈および寒天平板に蒔くことによって生存細胞の存在を決定した。データを15秒の接触後に残っている生存大腸菌の数のlog
10であるlog(生存大腸菌)で提示する。したがって、10
4残っていた場合、log(生存大腸菌)は4となる。
【0048】
アッセイに使用した試料は、棒状石鹸の8%水溶液とした。最初に添加した大腸菌の量は約10
7とした。15秒間の活性剤との接触後に残っている病原体の結果を表1に要約する。
【表1】
【0049】
表−1のデータは、テルピネオールおよびチモールを含む従来の石鹸(例−2)が、15秒の試験で、これらの活性剤を含まない石鹸(例−1)と比べて病原体減少をもたらすことができることを示している。これと比較すると、本発明の石鹸組成物(例−3)にテルピネオールおよびチモールをさらに低濃度で含めることは有意に優れている。
【0050】
例4〜7:従来の棒状石鹸と比べて改善した本発明の組成物の臭気の影響。
【0051】
表2で以下に示される組成物を調製した。
【表2】
【0052】
チモールの臭気の影響に関し、訓練調香師によって組成物が試験された。多くの消費者はこの臭気を好まないので、組成物が有するチモールの臭気の影響が小さいことが好ましい。以下のスケールを使用した:
+++:チモールの強力な臭い
++:チモールのわずかな臭い
+:チモールの認知できる臭い
o:チモールの臭い無し
臭気の影響のスコアは、2つの状態:(a)棒状石鹸の乾いた臭気、および(ii)使用時の臭気に関して以下の表−3に従う。
【表3】
【0053】
上の表3のデータは、本発明に入らない例(例4および5)と比べて、本発明の組成物(例6および7)においてチモールの臭気の影響が減少することを示している。
【0054】
例8および9:抗菌石鹸の市場サンプルと比較した、本発明の低刺激性および病原体減少の利益。
【0055】
例8:表4の通り、棒状石鹸組成物を調製した。
【表4】
【0056】
例−9:以下の通り包装に列挙された成分:パルミチン酸ナトリウム、水、パーム核脂肪酸ナトリウム、タルク、芳香剤、塩化ナトリウム、トリクロカルバン、C14〜16オレフィンスルホン酸ナトリウム、エチドロン酸、CI11680、PEG−7、アモジメチコン、シクロデキストリン、トリデセス−10、酢酸、テトラブチルアンモニウムブロミド、EDTAジナトリウム、CI12150を含むDettolという商品名で販売される棒状石鹸の市場サンプルを使用した。
【0057】
例1〜3で使用した手順を使用して測定される、細菌の対数減少と共に、以下の手順を使用して、2種の組成物のゼイン数を測定した。
【0058】
ゼイン試験:
1.5%ゼインを、25℃で1時間、1%石鹸溶液30ml中で攪拌した。混合物を2000rpmで30分間遠心分離した。ゼインペレットを10ml水中に30分間浸漬し、全ての水が蒸発するまで45℃のオーブンで48〜72時間真空下で乾燥させた。ゼイン重量の差の%を界面活性剤のゼイン溶解度とみなした。
【0059】
ゼイン数が高いほど、界面活性剤の皮膚に対する優しさが小さい。
【0060】
例8および9の試料についてのデータを以下の表5に要約する:
【表5】
【0061】
上の表3のデータは、本発明による組成物が、低いゼイン数により証明されるように、より優しく、細菌を減少させるのにより有効であることを示している。
【0062】
例8、10:遊離アルカリ分の効果
例10:組成物中に(遊離NaOHとして0.035%の)遊離アルカリ分を含まないことを除いて、例8の通り、棒状石鹸を調製した。
【0063】
例8および10の棒状石鹸を、製造法パラメータおよび種々の棒状石鹸利用者属性について分析した。本発明の例10による棒状石鹸(追加の遊離アルカリ分を含まない)が約24〜48時間の熟成時間を要した一方で、遊離アルカリ分を含む本発明の好ましい態様(例8)は約24時間の熟成時間のみを要し、したがって、強化した製造生産性をもたらすことが認められた。