(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110936
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】イヤースピーカチャネル間の適応雑音消去(ANC)の調整された制御
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20170327BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20170327BHJP
H04M 1/60 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
G10K11/16 H
H04R1/10 104Z
H04M1/60 Z
H04R1/10 101B
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-508986(P2015-508986)
(86)(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公表番号】特表2015-519602(P2015-519602A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】US2013034808
(87)【国際公開番号】WO2013162831
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】13/795,160
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/638,607
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504371240
【氏名又は名称】シラス ロジック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アルダーソン, ジェフリー
【審査官】
菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−240989(JP,A)
【文献】
特表2009−532926(JP,A)
【文献】
特開平06−230789(JP,A)
【文献】
特開2009−272946(JP,A)
【文献】
特開平07−056583(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0272282(US,A1)
【文献】
特表平08−510565(JP,A)
【文献】
特開平06−186985(JP,A)
【文献】
特開2008−060759(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0166206(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0034748(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0279709(US,A1)
【文献】
米国特許第05425105(US,A)
【文献】
米国特許第06118878(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
H04R 1/10
H04M 1/24− 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルオーディオシステムであって、
第1のオーディオ信号を再現するための第1のイヤースピーカであって、前記第1のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含む、第1のイヤースピーカと、
第2のオーディオ信号を再現するための第2のイヤースピーであって、前記第2のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含む、第2のイヤースピーと、
前記周囲オーディオ音を示す少なくとも1つのマイクロホン信号を提供するための少なくとも1つのマイクロホンと、
前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、前記第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、前記第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカと前記聴取者の耳との間の第1の結合度を決定し、前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定し、前記処理回路は、前記第1の反雑音信号および前記第2の反雑音信号を発生させ続ける間に、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すこと、または、前記第2のイヤースピーカが前記聴取者の別の耳にゆるく結合されていることを前記第2の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタと前記第2の適応フィルタとの両方の係数の更新を停止させる、処理回路と
を備えている、パーソナルオーディオシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのマイクロホンは、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載され第1の基準マイクロホン信号を提供するための第1のマイクロホンと、前記第2のイヤースピーカの筐体上に搭載され第2の基準マイクロホン信号を提供するための第2のマイクロホンとを備え、前記第1の適応フィルタは、前記第1の反雑音信号を前記第1の基準マイクロホン信号から発生させ、前記第2の適応フィルタは、前記第2の反雑音信号を前記第2の基準マイクロホン信号から発生させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項3】
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得をさらに低減させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項4】
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出し、前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じる、請求項1に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項5】
前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタに関する措置を講じるより長い期間の間の前記第2の適応フィルタに関する措置を講じる、請求項4に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項6】
前記処理回路は、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応を停止させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項7】
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出し、前記第2のイヤースピーカの第2の筐体上のスクラッチ音または前記第2のイヤースピーカにおける風雑音を検出せず、前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させ、前記第2の反雑音信号をミュートしない、請求項1に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項8】
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減させる、請求項7に記載のパーソナルオーディオシステム。
【請求項9】
パーソナルオーディオシステムによって周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第1の発生させることと、
第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第2の発生させることと、
前記第1のイヤースピーカと聴取者の耳との間の第1の結合度を決定することと、
前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定することと、
前記第1の発生させることおよび前記第2の発生させることを続ける間に、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すこと、または、前記第2のイヤースピーカが前記聴取者の別の耳にゆるく結合されていることを前記第2の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタと前記第2の適応フィルタとの両方の係数の更新を停止させることと
を含む、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのマイクロホンは、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載され第1の基準マイクロホン信号を提供するための第1のマイクロホンと、前記第2のイヤースピーカの筐体上に搭載され第2の基準マイクロホン信号を提供するための第2のマイクロホンとを備え、前記第1の発生させることは、前記第1の適応フィルタを使用して前記第1の反雑音信号を前記第1の基準マイクロホン信号から発生させ、前記第2の発生させることは、前記第2の適応フィルタを使用して前記第2の反雑音信号を前記第2の基準マイクロホン信号から発生させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得を低減させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することをさらに含み、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記更新を停止させることは、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタの係数の更新を停止させるより長い期間の間、前記第2の適応フィルタの係数の更新を停止させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記検出することは、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、前記方法は、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタ両方の適応を停止させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出し、前記第2のイヤースピーカの第2の筐体上のスクラッチ音または前記第2のイヤースピーカにおける風雑音を検出しないことをさらに含み、前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させる一方、前記第2の反雑音信号をミュートしないことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
パーソナルオーディオシステムの少なくとも一部を実装するための集積回路であって、
第1の出力信号を第1のイヤースピーカに提供するための第1の出力であって、前記第1の出力信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの第1の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含む、第1の出力と、
第2の出力信号を第2のイヤースピーカに提供するための第2の出力であって、前記第2の出力信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの第2の音響出力内の前記周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含む、第2の出力と、
前記周囲オーディオ音を示す少なくとも1つのマイクロホン信号を受信するための少なくとも1つのマイクロホン入力と、
前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、前記第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、前記第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカと前記聴取者の耳との間の第1の結合度を決定し、前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定し、前記処理回路は、前記第1の反雑音信号および前記第2の反雑音信号を発生させ続ける間に、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すこと、または、前記第2のイヤースピーカが前記聴取者の別の耳にゆるく結合されていることを前記第2の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタと前記第2の適応フィルタとの両方の係数の更新を停止させる、処理回路と
を備えている、集積回路。
【請求項18】
前記少なくとも1つのマイクロホン信号は、第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンから提供される第1のマイクロホン信号および第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンから提供される第2のマイクロホン信号を備え、前記処理回路は、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホン信号から発生させ、前記処理回路は、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホン信号から発生させる、請求項17に記載の集積回路。
【請求項19】
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得をさらに低減させる、請求項17に記載の集積回路。
【請求項20】
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出し、前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じる、請求項17に記載の集積回路。
【請求項21】
前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタに関する措置を講じるより長い期間の間の前記第2の適応フィルタに関する措置を講じる、請求項20に記載の集積回路。
【請求項22】
前記処理回路は、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応を停止させる、請求項17に記載の集積回路。
【請求項23】
前記少なくとも1つのマイクロホン信号は、第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンから提供される第1のマイクロホン信号および第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンから提供される第2のマイクロホン信号を備え、前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出し、前記第2のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出せず、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させ、前記第2の反雑音信号をミュートしない、請求項17に記載の集積回路。
【請求項24】
前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減させる、請求項23に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、適応雑音消去(ANC)を含むヘッドホン等のパーソナルオーディオデバイスに関し、より具体的には、別個のイヤースピーカに供給するANCシステムの制御がチャネル間で調整されるANCシステムの構造特徴に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル/セルラー電話、コードレス電話等の無線電話、およびMP3プレーヤ等の他の消費者オーディオデバイスが、広く使用されている。明瞭度に関するそのようなデバイスの性能は、基準マイクロホンを使用して、周囲音響事象を測定し、次いで、信号処理を使用して、反雑音信号をデバイスの出力に挿入し、周囲音響事象を消去して雑音消去を提供することによって改良されることができる。
【0003】
無線電話およびイヤースピーカ等のパーソナルオーディオデバイス周囲の音響環境は、存在する雑音源およびデバイス自体の位置に応じて劇的に変化し得るので、そのような環境変化を考慮する雑音消去を適応することが望ましい。
【0004】
したがって、可変音響環境において雑音消去を提供する、イヤースピーカを含むパーソナルオーディオシステムを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
可変音響環境において雑音消去を提供するイヤースピーカを含むパーソナルオーディオシステムを提供する前述の目的は、パーソナルオーディオシステム、動作方法、および集積回路において達成される。
【0006】
パーソナルオーディオシステムは、一対のイヤースピーカを含み、各々は、聴取者への再生のためのソースオーディオと、対応する変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための対応する反雑音信号との両方を含むオーディオ信号を再現するための出力変換器を有する。パーソナルオーディオデバイスはまた、適応雑音消去(ANC)機能性を提供する集積回路も含む。方法は、パーソナルオーディオシステムおよび集積回路の動作方法である。少なくとも1つのマイクロホンは、周囲オーディオ音を示す少なくとも1つのマイクロホン信号を提供する。パーソナルオーディオシステムはさらに、反雑音信号が、対応する変換器において、周囲オーディオ音の実質的消去を生じさせるように、反雑音信号を少なくとも1つのマイクロホン信号から適応的に発生させるためのANC処理回路を含む。ANC処理回路はさらに、適応フィルタのうちの1つの適応に関する措置が講じられるべきときを検出し、それに応答して、他の適応フィルタの適応に関するさらなる措置を講じる。
【0007】
別の特徴では、パーソナルオーディオシステムは、各イヤースピーカに1つずつ、2つのマイクロホンを含む。パーソナルオーディオシステムは、2つのマイクロホンのうちの対応する1つを使用して、イヤースピーカにおける周囲オーディオを測定し、イヤースピーカの対応する変換器に供給される、対応する反雑音信号を発生させる。パーソナルオーディオシステムはさらに、パーソナルオーディオシステムのユーザの近接発話を測定し、2つのマイクロホンの各々の出力に従って、近接発話にさらなる処理を行なう。
【0008】
本発明の前述ならびに他の目的、特徴、および利点は、付随の図面に図示されるように、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的説明から明白となるであろう。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
パーソナルオーディオシステムであって、
第1のオーディオ信号を再現するための第1のイヤースピーカであって、前記第1のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含む、第1のイヤースピーカと、
第2のオーディオ信号を再現するための第2のイヤースピーであって、前記第2のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含む、第2のイヤースピーと、
前記周囲オーディオ音を示す少なくとも1つのマイクロホン信号を提供するための少なくとも1つのマイクロホンと、
前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、前記第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、前記第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの適応に関する措置を要求する事象を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応に関して措置がさらに講じられるように、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの適応を管理する、処理回路と
を備えている、システム。
(項目2)
前記少なくとも1つのマイクロホンは、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンと、前記第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンとを備え、前記処理回路は、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホンから発生させ、前記処理回路は、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホンから発生させる、項目1に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目3)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカと前記聴取者の耳との間の第1の結合度を決定し、前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定し、前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応を停止させる、項目1に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目4)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得をさらに低減させる、項目3に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目5)
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出し、前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じる、項目1に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目6)
前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタに関する措置を講じるより長い期間の間の前記第2の適応フィルタに関する措置を講じる、項目5に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目7)
前記処理回路は、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応を停止させる、項目1に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目8)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出し、前記第2のイヤースピーカの第2の筐体上のスクラッチ音または前記第2のイヤースピーカにおける風雑音を検出せず、前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させ、前記第2の反雑音信号をミュートしない、項目1に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目9)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減させる、項目8に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目10)
パーソナルオーディオシステムによって周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第1の発生させることと、
第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第2の発生させることと、
前記第1の適応フィルタの適応に関する措置を要求する事象を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応に関する措置を講じることと
を含む、方法。
(項目11)
前記少なくとも1つのマイクロホンは、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンと、前記第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンとを備え、前記第1の発生させることは、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホンから発生させ、前記第2の発生させることは、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホンから発生させる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記第1のイヤースピーカと前記聴取者の耳との間の第1の結合度を決定することと、
前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定することと
をさらに含み、前記措置を講じることは、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応を停止させることを含む、ことと
項目10に記載の方法。
(項目13)
前記措置を講じることは、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得をさらに低減させることを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することをさらに含み、前記措置を講じることは、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じることを含む、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記第2の適応フィルタに関する措置を講じることは、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタに関する措置を講じることより長い期間の間、行なわれる、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記検出することは、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、前記措置を講じることは、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタ両方の適応を停止させることを含む、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記第1のイヤースピーカの第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出し、前記第2のイヤースピーカの第2の筐体上のスクラッチ音または前記第2のイヤースピーカにおける風雑音を検出しないことをさらに含み、前記措置を講じることは、前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させる一方、前記第2の反雑音信号をミュートしないことを含む、項目10に記載の方法。
(項目18)
前記措置を講じることは、前記第1のイヤースピーカの前記第1の筐体上のスクラッチ音または前記第1のイヤースピーカにおける風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
パーソナルオーディオシステムの少なくとも一部を実装するための集積回路であって、
第1の出力信号を第1のイヤースピーカに提供するための第1の出力であって、前記第1の出力信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの第1の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含む、第1の出力と、
第2の出力信号を第2のイヤースピーカに提供するための第2の出力であって、前記第2の出力信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの第2の音響出力内の前記周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含む、第2の出力と、
前記周囲オーディオ音を示す少なくとも1つのマイクロホン信号を受信するための少なくとも1つのマイクロホン入力と、
前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、前記第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、前記第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの適応に関する措置を要求する事象を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応に関して措置がさらに講じられるように、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの適応を管理する、処理回路と
を備えている、集積回路。
(項目20)
前記少なくとも1つのマイクロホン信号は、第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンから提供される第1のマイクロホン信号および第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンから提供される第2のマイクロホン信号を備え、前記処理回路は、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホン信号から発生させ、前記処理回路は、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホン信号から発生させる、項目19に記載の集積回路。
(項目21)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカと前記聴取者の耳との間の第1の結合度を決定し、かつ、前記第2のイヤースピーカと前記聴取者の別の耳との間の第2の結合度を決定し、前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの適応を停止させる、項目20に記載の集積回路。
(項目22)
前記処理回路は、前記第1のイヤースピーカが前記聴取者の耳にゆるく結合されていることを前記第1の結合度が示すことを検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの応答の利得をさらに低減させる、項目21に記載の集積回路。
(項目23)
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタを含む第1のオーディオ経路および前記第2の適応フィルタを含む第2のオーディオ経路におけるクリッピングを検出し、前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路または前記第2のオーディオ経路のいずれかにおけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応に関する措置を講じる、項目19に記載の集積回路。
(項目24)
前記処理回路は、前記第1のオーディオ経路におけるクリッピングを検出することに応答して、前記第1の適応フィルタに関する措置を講じるより長い期間の間の前記第2の適応フィルタに関する措置を講じる、項目23に記載の集積回路。
(項目25)
前記処理回路は、前記第1のマイクロホンに到達した前記周囲オーディオ音が所定の振幅閾値を超えたことを検出し、周囲オーディオ音が前記所定の振幅閾値を超えたことを検出することに応答して、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタおよび前記第2の適応フィルタの両方の適応を停止させる、項目19に記載の集積回路。
(項目26)
前記少なくとも1つのマイクロホン信号は、第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンから提供される第1のマイクロホン信号および第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンから提供される第2のマイクロホン信号を備え、前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出し、前記第2のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出せず、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出することに応答して、前記第1の反雑音信号をミュートし、前記第1の適応フィルタの適応を停止させ、前記第2の反雑音信号をミュートしない、項目19に記載の集積回路。
(項目27)
前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号内のスクラッチ音または風雑音を検出することに応答して、前記第2の適応フィルタの利得を低減させる、項目26に記載の集積回路。
(項目28)
パーソナルオーディオシステムであって、
第1のオーディオ信号を再現するための第1のイヤースピーカであって、前記第1のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含み、前記第1のイヤースピーカは、第1のマイクロホン信号を発生させるために、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンを含む、第1のイヤースピーカと、
第2のオーディオ信号を再現するための第2のイヤースピーカであって、前記第2のオーディオ信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含み、前記第2のイヤースピーカは、第2のマイクロホン信号を発生させるために、前記第2のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンを含む、第2のイヤースピーカと、
前記聴取者の音声を示す発話マイクロホン信号を発生させるための発話マイクロホンと、
第1の適応フィルタを使用して、前記第1のマイクロホン信号に従って、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホン信号から発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、第2の適応フィルタを使用して、前記第2のマイクロホン信号に従って、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号をさらに使用して、前記発話マイクロホン信号に関してさらなる処理を行なう、処理回路と
を備えている、パーソナルオーディオシステム。
(項目29)
前記処理回路は、前記発話マイクロホン信号と併せて前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号を使用し、ビームを形成することにより、前記聴取者の音声と前記周囲オーディオ音とを区別をする、項目28に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目30)
前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号、前記第2のマイクロホン信号、および前記発話マイクロホン信号を使用して、前記聴取者の音声が存在するときを決定する、項目28に記載のパーソナルオーディオシステム。
(項目31)
パーソナルオーディオシステムによって周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第1の適応フィルタを使用して、第1の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第1の発生させることと、
第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、前記少なくとも1つのマイクロホン信号に従って、第2の適応フィルタを使用して、第2の反雑音信号を前記少なくとも1つのマイクロホン信号から発生させる第2の発生させることと、
音声マイクロホン信号を発生させる近接発話マイクロホンを用いて、近接発話を測定することと、
前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号を使用して、前記音声マイクロホン信号に関するさらなる処理を行なうことと
を含む、方法。
(項目32)
前記音声マイクロホン信号と併せて前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号を使用して、ビームを形成することにより、前記聴取者の音声と前記周囲オーディオ音とを区別をすることをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記第1のマイクロホン信号、前記第2のマイクロホン信号、および前記音声マイクロホン信号を使用して、前記聴取者の音声が存在するときを決定することをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目34)
パーソナルオーディオシステムの少なくとも一部を実装するための集積回路であって、
第1の出力信号を第1のイヤースピーカに提供するための出力であって、前記第1の出力信号は、聴取者への再生のための第1のソースオーディオと、前記第1のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第1の反雑音信号との両方を含み、前記第1のイヤースピーカは、第1のマイクロホン信号を発生させるために、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第1のマイクロホンを含む、出力と、
第2の出力信号を第2のイヤースピーカに提供するための出力であって、前記第2の出力信号は、聴取者への再生のための第2のソースオーディオと、前記第2のイヤースピーカの音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すための第2の反雑音信号との両方を含み、前記第2のイヤースピーカは、第2のマイクロホン信号を発生させるために、前記第1のイヤースピーカの筐体上に搭載された第2のマイクロホンを含む、出力と、
前記聴取者の音声を示す音声マイクロホン信号を受信するための音声マイクロホン入力と、
第1の適応フィルタを使用して、前記第1のマイクロホン信号に従って、前記第1の反雑音信号を前記第1のマイクロホン信号から適応的に発生させ、前記第1のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させる処理回路であって、前記処理回路は、第2の適応フィルタを使用して、前記第2のマイクロホン信号に従って、前記第2の反雑音信号を前記第2のマイクロホン信号から発生させ、前記第2のイヤースピーカにおける前記周囲オーディオ音の存在を低減させ、前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号をさらに使用して、前記音声マイクロホン信号に関するさらなる処理を行なう、処理回路と
を備えている、集積回路。
(項目35)
前記処理回路は、前記音声マイクロホン信号と併せて前記第1のマイクロホン信号および前記第2のマイクロホン信号を使用し、ビームを形成することにより、前記聴取者の音声と前記周囲オーディオ音とを区別をする、項目34に記載の集積回路。
(項目36)
前記処理回路は、前記第1のマイクロホン信号、前記第2のマイクロホン信号、および前記音声マイクロホン信号を使用し、前記聴取者の音声が存在するときを決定する、項目34に記載の集積回路。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本明細書に開示される技法が実装され得る、パーソナルオーディオシステムの実施例である、一対のイヤホンEB1およびEB2に結合された無線電話10の例証である。
【
図2】
図2は、
図1Aの無線電話10および/またはイヤホンEB1およびEB2内の回路のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2のオーディオ集積回路20A、20BのANC回路30内の信号処理回路および機能ブロックを描写する、ブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3の近接発話プロセッサ50の例示的実装を描写する、ブロック図である。
【
図5】
図5は、本明細書に開示されるようなANCシステムを実装する集積回路内の信号処理回路および機能ブロックを描写する、ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無線電話等のパーソナルオーディオデバイス内に実装され得る、雑音消去技法および回路が、開示される。パーソナルオーディオデバイスは、一対のイヤースピーカを含み、各々は、周囲音響環境を測定し、周囲音響事象を消去するために、イヤースピーカ変換器に投入される信号を発生させる対応する適応雑音消去(ANC)チャネルを伴う。各イヤースピーカ上に1つずつの一対のマイクロホンであり得るマイクロホンが、周囲音響環境を測定するために提供され、周囲音響環境は、周囲オーディオ音を消去するために、ANCチャネルの適応フィルタに提供され、変換器に提供される反雑音信号を発生させる。ANCチャネルの制御は、第1のチャネルに対して、適応フィルタの適応に関する措置を要求する事象が検出されると、措置が、他のチャネルにおいても講じられるように行なわれる。開示されるデバイスの別の特徴では、近接発話マイクロホンによって測定される近接発話は、イヤースピーカ上に位置する一対のマイクロホンによって行なわれる周囲音測定に従って処理されることができる。
【0011】
図1Aは、無線電話10と、各々が聴取者の対応する耳5A、5Bに取り付けられる一対のイヤホンEB1およびEB2とを示す。図示される無線電話10は、本明細書の技法が採用され得る、デバイスの実施例であるが、無線電話10または後続例証に描写される回路内に図示される要素または構成の全てが要求されるわけではないことを理解されたい。無線電話10は、有線または無線接続、例えば、Bluetooth(登録商標)接続(Bluetooth(登録商標)は、Bluetooth(登録商標) SIG,Inc.の商標である)によって、イヤホンEB1、EB2に接続される。イヤホンEB1、EB2の各々は、無線電話10から受信される遠隔発話、呼出音、記憶されたオーディオプログラム材料、および近端発話(すなわち、無線電話10のユーザの発話)の投入等のソースオーディオを再現するスピーカSPKR1、SPKR2等の対応する変換器を有する。ソースオーディオは、例えば、無線電話10によって受信されるウェブページまたは他のネットワーク通信からのソースオーディオ、低バッテリ量および他のシステム事象通知等のオーディオ指標等、再現するために無線電話10が必要とされる任意の他のオーディオも含む。基準マイクロホンR1、R2は、周囲音響環境を測定するために、それぞれのイヤホンEB1、EB2の筐体の表面上に提供される。別の対のマイクロホンである、エラーマイクロホンE1、E2は、イヤホンEB1、EB2が、耳5A、5Bの外側部分内に挿入された場合、対応する耳5A、5Bに近接するそれぞれのスピーカSPKR1、SPKR2によって再現されるオーディオと組み合わせられた周囲オーディオの評価基準を提供することによって、ANC動作をさらに改善するために提供される。
【0012】
無線電話10は、反雑音信号をスピーカSPKR1、SPKR2に投入し、スピーカSPKR1、SPKR2によって再現される遠隔発話および他のオーディオの明瞭度を改善する適応雑音消去(ANC)回路および特徴を含む。無線電話10内の例示的回路14は、信号を基準マイクロホンR1、R2、近接発話マイクロホンNS、およびエラーマイクロホンE1、E2から受信するオーディオ集積回路20を含み、オーディオ集積回路20は、無線電話送受信機を含むRF集積回路12等の他の集積回路とインターフェース接続する。他の実装では、本明細書に開示される回路および技法は、MP3プレーヤオンチップ集積回路等のパーソナルオーディオデバイスの全体を実装するための制御回路および他の機能性を含む、単一集積回路内に組み込まれ得る。代替として、ANC回路は、イヤホンEB1、EB2の筐体内または無線電話10とイヤホンEB1、EB2との間の有線接続に沿って位置するモジュール内に含まれ得る。例証の目的のために、ANC回路は、無線電話10内に提供されるように説明されるが、前述の変形例は、当業者によって理解可能であり、イヤホンEB1、EB2、無線電話10、および第3のモジュール間に要求される、結果として生じる信号は、要求に応じて、それらの変形例のために容易に決定されることができる。近接発話マイクロホンNSは、無線電話10の筐体に提供され、無線電話10から他の会話参加者に伝送される近端発話を捕捉する。代替として、近接発話マイクロホンNSは、イヤホンEB1、EB2の一方の筐体の外側表面上、イヤホンEB1、EB2の一方に添着された支持部材上、あるいは無線電話10とイヤホンEB1、EB2の一方または両方との間に位置する付属物上に提供され得る。
【0013】
図1Bは、基準マイクロホンR1、R2に結合されるANC処理を含むオーディオ集積回路20A、20Bの簡略化された概略図を示し、基準マイクロホンR1、R2は、対応するイヤホンEB1、EB2内に位置するオーディオ集積回路20A、20B内のANC処理回路によってフィルタ処理される周囲オーディオ音、Ambient1、Ambient2の測定値を提供する。オーディオ集積回路20A、20Bは、代替として、無線電話10内の集積回路20等の単一集積回路内に組み合わせられ得る。オーディオ集積回路20A、20Bは、その対応するチャネルに対する出力を発生させ、その出力は、増幅器A1、A2のうちの関連付けられた1つによって増幅され、スピーカSPKR1、SPKR2のうちの対応する1つに提供される。オーディオ集積回路20A、20Bは、(特定の構成に応じて、有線または無線)信号を基準マイクロホンR1、R2、近接発話マイクロホンNS、およびエラーマイクロホンE1、E2から受信する。オーディオ集積回路20A、20Bはまた、
図1Aに示される無線電話送受信機を含む、RF集積回路12等の他の集積回路とインターフェース接続する。他の構成では、本明細書に開示される回路および技法は、MP3プレーヤオンチップ集積回路等のパーソナルオーディオデバイスの全体を実装するための制御回路および他の機能性を含む、単一集積回路内に組み込まれ得る。代替として、複数の集積回路は、例えば、無線接続がイヤホンEB1、EB2の各々から無線電話10に提供される場合、および/または、ANC処理の一部または全部が、イヤホンEB1、EB2または無線電話10をイヤホンEB1、EB2に接続するケーブルに沿って配置されるモジュール内で行なわれる場合に使用され得る。
【0014】
一般に、本明細書で図示されるANC技法は、基準マイクロホンR1、R2に衝突する周囲音響事象(スピーカSPKR1、SPKR2の出力および/または近端発話ではない)を測定し、また、エラーマイクロホンE1、E2に衝突する同一の周囲音響事象を測定する。集積回路20A、20BのANC処理回路は、対応するエラーマイクロホンE1、E2における周囲音響事象の振幅を最小化する特性を有するように、対応する基準マイクロホンR1、R2の出力から発生される反雑音信号を個々に適応させる。音響経路P
1(z)は、基準マイクロホンR1からエラーマイクロホンE1に延びているので、オーディオ集積回路20A内のANC回路は、オーディオ集積回路20Aのオーディオ出力回路の応答とスピーカSPKR1の音響/電気伝達関数とを表す電気音響経路S
1(z)の影響を除去した音響経路P
1(z)を本質的に推定している。推定される応答は、耳5Aと、イヤホンEB1に近接し得る他の物理的物体およびヒト頭部構造との近接性および構造によって影響される、特定の音響環境内におけるスピーカSPKR1とエラーマイクロホンE1との間の結合を含む。同様に、オーディオ集積回路20Bは、オーディオ集積回路20Bのオーディオ出力回路の応答およびスピーカSPKR2の音響/電気伝達関数を表す、電気音響経路S
2(z)の影響を除去した音響経路P
2(z)を推定する。
【0015】
次に、
図2を参照すると、イヤホンEB1、EB2および無線電話10内の回路が、ブロック図に示される。さらに、
図2に示される回路は、オーディオ集積回路20A、20Bが、無線電話10の外部(例えば、対応するイヤホンEB1、EB2内)に位置するとき、無線電話10内のCODEC集積回路20と他のユニットとの間の信号伝達がケーブルまたは無線接続によって提供されることを除き、前述の他の構成にも適用される。そのような構成では、集積回路20A−20Bを実装する単一集積回路20と、エラーマイクロホンE1、E2、基準マイクロホンR1、R2、およびスピーカSPKR1、SPKR2との間の信号伝達は、オーディオ集積回路20が、無線電話10内に位置するとき、有線または無線接続によって提供される。図示される実施例では、オーディオ集積回路20A、20Bは、別個かつ実質的に同じ回路として示され、したがって、オーディオ集積回路20Aのみ、以下に詳細に説明される。
【0016】
オーディオ集積回路20Aは、基準マイクロホン信号を基準マイクロホンR1から受信し、基準マイクロホン信号のデジタル表現refを生成するアナログ/デジタルコンバータ(ADC)21Aを含む。オーディオ集積回路20Aはまた、エラーマイクロホン信号をエラーマイクロホンE1から受信し、エラーマイクロホン信号のデジタル表現errを生成するためのADC21Bと、近接発話マイクロホン信号を近接発話マイクロホンNSから受信し、近接発話マイクロホン信号のデジタル表現nsを生成するためのADC21Cとを含む。(オーディオ集積回路20Bは、前述のように、無線または有線接続を介して、近接発話マイクロホン信号のデジタル表現nsをオーディオ集積回路20Aから受信する。)オーディオ集積回路20Aは、増幅器A1からスピーカSPKR1を駆動するための出力を発生させ、増幅器A1は、結合器26の出力を受信するデジタル/アナログコンバータ(DAC)23の出力を増幅する。結合器26は、内部オーディオソース24からのオーディオ信号iaと、反雑音信号anti−noiseとを組み合わせ、オーディオ信号iaは、ANC回路30によって発生され、通例、基準マイクロホン信号ref内の雑音と同一の極性を有し、したがって、結合器26によって減算される。結合器26はまた、無線電話10のユーザが、無線周波数(RF)集積回路22から受信されるダウンリンク発話dsに適切に関連して彼ら自身の音声を聞き取れるように、近接発話信号nsの減衰された部分(すなわち、側音情報st)も組み合わせる。近接発話信号nsはまた、RF集積回路22にも提供され、アンテナANTを介して、アップリンク発話としてサービスプロバイダに伝送される。
【0017】
次に、
図3を参照すると、
図2のオーディオ集積回路20Aおよび20B内の例示的ANC回路30の詳細が、示される。適応フィルタ32は、基準マイクロホン信号refを受信し、理想的状況下、その伝達関数W(z)をP(z)/S(z)となるように適応させ、反雑音信号anti−noiseを発生させ、反雑音信号は、
図2の結合器26によって例示されるように、スピーカSPKRによって再現されるように、反雑音信号とオーディオを組み合わせる出力結合器に提供される。利得ブロックG1は、制御信号muteに応答して、以下にさらに詳細に説明されるようなある条件下、反雑音信号をミュートする。適応フィルタ32の係数は、W係数制御ブロック31によって制御され、W係数制御ブロック31は、2つの信号の相関を使用して適応フィルタ32の応答を決定し、適応フィルタ32は、概して、最小二乗平均的意味において、マイクロホン信号err内に存在する基準マイクロホン信号refのそれらの成分間のエラーを最小化する。W係数制御ブロック31によって処理される信号は、フィルタ34Bによって提供される経路S(z)の応答の推定のコピー(すなわち、応答SE
COPY(z))によって成形された基準マイクロホン信号refと、エラーマイクロホン信号errを含む別の信号とである。基準マイクロホン信号refを経路S(z)の応答の推定のコピーである応答SE
COPY(z)で変換し、ソースオーディオの再生に起因するエラーマイクロホン信号errの成分を除去した後、エラーマイクロホン信号errを最小化することによって、適応フィルタ32は、P(z)/S(z)の所望の応答に適応される。
【0018】
エラーマイクロホン信号errに加え、W係数制御ブロック31によってフィルタ34Bの出力とともに処理される他の信号として、ソースオーディオ(ds+ia)の逆の(inverted)量を含み、ソースオーディオは、応答SE(z)を(応答SE
COPY(z)は、そのコピーである)有するフィルタ34Aによって処理されたダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaを含む。応答SE(z)によってフィルタ処理されたソースオーディオ(ds+ia)の逆の量を投入することによって、適応フィルタ32は、エラーマイクロホン信号err内に存在する比較的に大量のソースオーディオに適応することを防止される。経路S(z)の応答の推定でソースオーディオ(ds+ia)の逆の(inverted)コピーを変換することによって、処理前にエラーマイクロホン信号errから除去されるソースオーディオは、エラーマイクロホン信号errにおいて再現されるソースオーディオ(ds+ia)の予期されるバージョンに一致するはずである。S(z)の電気および音響経路は、エラーマイクロホンEに到達するためにソースオーディオ(ds+ia)によって辿られる経路であるので、ソースオーディオ量は、一致する。フィルタ34Bは、それ自体は、適応フィルタではないが、適応フィルタ34Aの応答に一致するように同調される調節可能応答を有し、フィルタ34Bの応答は、適応フィルタ34Aの適応を追跡する。前述を実装するために、適応フィルタ34Aは、SE係数制御ブロック33によって制御される係数を有する。適応フィルタ34Aは、ソースオーディオ(ds+ia)を処理し、エラーマイクロホンEに送達される予期されるソースオーディオを表す、信号を提供する。適応フィルタ34Aは、それによって、ソースオーディオ(ds+ia)から信号を発生させるように適応され、該信号は、エラーマイクロホン信号errから減算されると、ソースオーディオ(ds+ia)に起因しないエラーマイクロホン信号errの内容を含むエラー信号eを形成する。結合器36Aは、フィルタ処理されたソースオーディオ(ds+ia)をエラーマイクロホン信号errから除去し、前述のエラー信号eを発生させる。
【0019】
ANC回路30内では、監視制御論理38が、以下にさらに詳細に開示されるように、ANCチャネルの一方または両方内で検出された種々の条件に応答して、種々の措置を行い、該措置は、両方のANCチャネルに措置を概して生じさせる。監視制御論理38は、W係数制御ブロック31の適応を停止させる、制御信号haltW、SE係数制御ブロック33の適応を停止させる、制御信号haltSE、応答W(z)の利得を低減またはリセットするために使用され得る、制御信号Wgain、および利得ブロックG1を制御し、反雑音信号を徐々にミュートする、制御信号muteを含む、いくつかの制御信号を発生させる。以下の表1は、
図1の無線電話10の環境内で生じ得る、周囲オーディオ事象または条件、ANC動作に伴って生じる問題、および特定の周囲事象または条件が検出されるとき、ANC処理回路によって行われる応答のリストを描写する。
【0022】
図3に図示されるように、W係数制御ブロック31は、算出ブロック37に係数情報を提供し、算出ブロック37は、適応フィルタ32の応答を成形する係数W
n(z)の大きさの和Σ|W
n(z)|の時間導関数を算出し、この時間導関数は、適応フィルタ32の応答の全体的利得の変動の指標である。和Σ|W
n(z)|における大きな変動は、基準マイクロホンR1、R2の対応する1つに衝突する風、または対応するイヤホンEB1、EB2の筐体上の変動する機械的接触(例えば、スクラッチ音)、または大き過ぎ、不安定な動作を生じさせる適応ステップのサイズが、システム内で使用される他の条件によって生成されるような機械的雑音を示す。コンパレータK1は、和Σ|W
n(z)|の時間導関数と閾値を比較し、指標Wind/Scratchを機械的雑音条件の監視制御38に提供する。聴取者の耳とイヤホンEB1、EB2の対応する1つとの間の結合度は、耳圧推定ブロック35によって推定されることができる。耳圧推定ブロック35は、聴取者の耳とイヤホンEB1、EB2の対応する1つとの間の結合度の指標である、制御信号Pressureを発生させる。監視制御38は、次いで、制御信号Pressureを使用して、両チャネルに対するW(z)の適応を停止すべきとき、およびイヤホンEB1、EB2の反対の1つ内のW(z)の利得を低減させるべきときを決定することができる。聴取者の耳と耳圧推定ブロック35を実装するために使用され得る無線電話10との間の結合度を決定するための技法は、米国特許出願公開第US20120207317A1号「EAR−COUPLING DETECTION AND ADJUSTMENT OF ADAPTIVE RESPONSE IN NOISE−CANCELING IN PERSONAL AUDIO DEVICES」に開示され、本開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。適応フィルタ32はまた、適応フィルタ32によって生成されるデジタル値がクリッピングされているとき、またはクリッピングが、反雑音を表す後続アナログまたはデジタル信号内に生じることが予期されるときを示す、指標clipを提供する。指標clipのアサートに応答して、監視制御は、表Iに示されるもの等の措置を講じ、一例示的実装によると、クリッピングを生じさせた周囲条件が終了することを確実にするために、指標clipがアサートされたチャネルと反対のチャネルにより長い期間の間、措置を講じる。link信号は、監視制御38が、適応フィルタ32の適応に関する措置および反雑音信号のミュート等の他の措置を要求する条件を検出すると、前述のものと異なる措置であり得る適切な措置が、反対チャネルにも講じられ得るように、イヤホンEB1、EB2に対応するチャネルの各々に対するANC回路30間に提供される。
【0023】
図4を参照すると、
図3のANC回路30内に含まれ得る、近接発話プロセッサ50の詳細が、示される。例証される近接発話プロセッサ50は、2つの基準マイクロホン信号ref1およびref2が、対応するイヤホンEB1、EB2から利用可能であり、発話が、近接発話マイクロホン信号nsを提供する第3の近接発話マイクロホンNSにおいて受信される場合に行なわれ得る処理のタイプの簡略化された実施例にすぎない。図示される実施例では、基準マイクロホン信号ref1、ref2および近接発話マイクロホン信号nsの各々は、それぞれの低域通過フィルタ52A−52Cに提供され、フィルタ52A−52Cは、基準マイクロホン信号ref1、ref2と近接発話マイクロホン信号nsとの間の位相が、対応するマイクロホン間の物理的距離のため不明確となるであろう高周波数内容を除去する。フィルタ処理された基準マイクロホン信号と近接発話マイクロホン信号とは、結合器53によって加算され、それは、ビームフォーマを作製する。なぜなら、
図1の基準マイクロホンR1、R2は、概して、近接発話ソース(聴取者の口)から等距離にあり、基準マイクロホン信号ref1、ref2を加算することは、基準マイクロホンR1、R2間で直接的でない方向から生じる音を消去する傾向となるであろうからである。フィルタ52Cの位相応答は、基準マイクロホン信号ref1、ref2によって形成されるビームの位相と近接発話マイクロホン信号nsの位相とを整合させるために、フィルタ52Aおよび52Bに関して調節される必要があり得る。結合器53の出力は、周囲雑音に関して増加した振幅を有する、向上した近接発話出力信号nsoutとして使用されることができる。近接発話プロセッサ50の別の特徴は、向上した近接発話信号nsoutを使用して、音声区間検出(Voice activity detection、VAD)を改善する。近接発話出力信号nsのレベルは、検出器54によって検出され、検出器54は、音声区間が周囲音に勝る十分なエネルギーにおいて存在するときを区別するために、VAD論理ブロック56に入力を提供する。
【0024】
次に、
図5を参照すると、
図3に描写されるようなANC技法を実装し、
図2のオーディオ集積回路20A、20B内に実装され得るような処理回路40を有するためのANCシステムのブロック図が、示され、処理回路40は、1つの回路内に組み合わせられるように図示されるが、相互通信する2つ以上の処理回路としても実装され得る。処理回路40は、プログラム命令が記憶されたメモリ44に結合されたプロセッサコア42を含み、プログラム命令は、前述のANC技法の一部または全部ならびに他の信号処理を実装し得るコンピュータプログラム製品を含む。随意に、専用デジタル信号処理(DSP)論理46が、処理回路40によって提供されるANC信号処理の一部、または代替として、全部を実装するために提供され得る。処理回路40はまた、ADC21A−21Eを含み、ADC21A−21Eは、それぞれ、基準マイクロホンR1、エラーマイクロホンE1、近接発話マイクロホンNS、基準マイクロホンR2、およびエラーマイクロホンE2からの入力を受信する。基準マイクロホンR1、エラーマイクロホンE1、近接発話マイクロホンNS、基準マイクロホンR2、およびエラーマイクロホンE2のうちの1つ以上がデジタル出力を有するか、または遠隔ADCからデジタル信号として通信される代替実施形態では、ADC21A−21Eのうちの対応する1つは、省略され、デジタルマイクロホン信号は、処理回路40に直接、インターフェース接続される。DAC23Aおよび増幅器A1もまた、前述のような反雑音を含むスピーカ出力信号をスピーカSPKR1に提供するために、処理回路40によって提供される。同様に、DAC23Bおよび増幅器A2は、別のスピーカ出力信号をスピーカSPKR2に提供する。スピーカ出力信号は、デジタル出力信号を音響的に再現するモジュールに提供するためのデジタル出力信号であり得る。
【0025】
本発明は、特に、その好ましい実施形態を参照して図示および説明されたが、形態および詳細における前述ならびに他の変形例も本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において行なわれ得ることが、当業者によって理解されるであろう。