(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上の追加のカチオンは、B、Al、Sn、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、GeおよびTiのうちの1つ以上をさらに含み、但し、前記1つ以上の追加のカチオンは、前記少なくとも1つの遷移金属イオンとは異なる、請求項1〜3の何れか一項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、ドーパント量は、水溶液に添加し、そしてセラミック生成物に含有させてその性質のうちの1つ以上を改変するための追加のイオンの量を説明するために使用される場合、実験式に存在する酸素以外の元素の約0.1モル分率以下の量であり、ここで、実験式に存在する酸素以外の元素のモル分率の合計は、1である。したがって、例えば、セラミック生成物は、実験式M
1xM
2yM
3zD
1aO
mを有し、ここで、M
1、M
2、およびM
3は、遷移金属イオンまたはリチウムイオンであり、D
1は、追加のイオンまたはドーパントイオンであり(ここでは簡単のため1つだけを示すが複数でもよい)、x、y、z、aおよびmは、各元素のモル量であり、x+y+z+a=1であり、x、y、zおよびaのうちの任意の1つ以上は、0であり得、但し、x、y、zおよびaのうちの少なくとも2つは、0でなく、かつm=1〜3であり、または、中性分子のセラミック生成物を得る必要がある際には、通常m=2であり、ドーパント量存在する1つ以上の追加のイオンまたはドーパントイオン(D、D
1、D
2など)の各々は、実験式に存在する酸素以外の元素の約0.1モル分率以下を構成する。上記式は、例えばM
4、M
5などの追加の金属、および追加のドーパントを含み得るが、その場合、それらのモル分率は、1に等しい合計の中に含まれ、各ドーパント量は、0.1モル分率以下のままである。したがって、例えば、上記実験式は、M
1vM
2wM
3xM
4yM
5zD
1aD
2bO
mであり得、ここで、v+w+x+y+z+a+b=1であり、かつここで、v、w、x、y、z、aおよびbのうちの任意の1つ以上は、0であり得、但し、v、w、x、y、z、aおよびbのうちの少なくとも2つは、0でなく、mは、上記の通りであり、追加のイオンまたはドーパントイオンD
1およびD
2のモル分率aおよびbのそれぞれは、0.1以下である。一実施形態において、ドーパント量は、約0.05モル分率以下の量であり、ここで、モル分率は、上記と同じ意味を有する。a=0の場合、ドーパントは、一切存在しない。ドーパント量で存在するいずれのイオンも、遷移金属イオンまたは付加イオンにかかわらず、ドーパントイオンであると考えられる。
【0021】
リチウムが金属Mのうちの1つである場合、その結果得られるセラミック材料は、リチウムイオン電池における正極としての使用に適し得る。
【0022】
本明細書において、冠詞「a(単数)」、「an(単数)」、および「the(前記)」は、「at least one(少なくとも一つ)」と交換可能に使用され、1つ以上の要素が記載されていることを意味する。
【0023】
本明細書において、用語「金属」は、金属、ならびに炭素、ケイ素およびゲルマニウムなどのメタロイドの両方を指し、それらは元素状態またはイオン状態のいずれにあってもよい。
【0024】
本明細書中のすべての数値は、正確な数値が明確に意図されていなければ、用語「約」が係っているとされる。端点によって限定された数値範囲は、その範囲(例えば、1〜5の範囲は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内の任意の部分範囲に包含されるすべての数値を含む。
【0025】
本明細書に記載されるように、本発明は、セラミック材料を製造するためのプロセスであって、少なくとも以下の工程:
少なくとも1つの遷移金属イオンならびに1つ以上のさらなる遷移金属イオンおよび/または1つ以上の追加のイオンを含む水溶液を提供する工程と、
前記水溶液に、炭素数が約8以上である少なくとも1つのアルキル基を含む第4級水酸化アンモニウムまたは第4級水酸化ホスホニウムを添加して、複合水溶液を形成する工程と、
前記複合水溶液を混合して、ゲルを形成する工程と、
前記形成されたゲルを炉に移す工程と、
前記形成されたゲルを、前記ゲルをか焼するのに十分な温度に十分な時間で加熱して、固体セラミック材料を生成する工程と、
を含むプロセスに関する。
【0026】
一実施形態において、前記形成されたゲルは、水または溶媒を除去する工程を介在させずに、前記炉にそのまま移される。
【0027】
一実施形態において、前記1つ以上の追加のイオンは、リチウムイオンを含む。
【0028】
一実施形態において、前記少なくとも1つの遷移金属イオンは、IUPAC周期表の第3〜12族からの1つ以上のイオンを含む。前記遷移金属は、セラミック材料における使用について公知である任意の遷移金属であり得る。一実施形態において、前記遷移金属は、リチウムイオン電池における使用について公知である遷移金属である。
【0029】
一実施形態において、前記追加のイオンは、B、Al、Sn、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、GeおよびTiを含み、但し、前記追加のイオンは、前記セラミック材料中に存在する遷移金属イオンとは異なる。一実施形態において、前記追加のイオンは、上記のように、前記セラミック材料中にドーパント量で存在する。前記追加のイオンのいずれかがまた遷移金属イオンである限りは、前記イオンが上記のようにドーパント量存在するならば、前記イオンは、ドーパントイオンであり、そうでなければ、前記イオンは、前記遷移金属イオンのうちの1つである。
【0030】
本発明に係るセラミック材料は、複数の金属イオンおよびメタロイドイオンを含み得る。一実施形態において、前記セラミック生成物は、実験式M
1xM
2yM
3zD
1aO
mを有し、ここで、M
1、M
2、およびM
3は、上記のように遷移金属イオンであり、前記Mイオンのうちの1つは、リチウムイオンであり得、D
1は、追加のイオンまたはドーパントイオン(ここでは簡単のため1つだけを示すが複数でもよい)であり、x、y、z、aおよびmは、前記セラミック材料中に存在する各元素のモル分率であり、x+y+z+a=1であり、x、y、zおよびaのうちの任意の1つ以上は、0であり得、但し、x、y、zおよびaのうちの少なくとも2つは、0でなく、かつm=1〜3であり、または、中性分子であるセラミック生成物を得る必要がある際には、通常m=2である。上記式は、例えばM
4、M
5などの追加の金属、および追加のドーパントを含み得るが、その場合、それらのモル分率は、1に等しい合計の中に含まれ、各ドーパント量は、0.1モル分率以下のままである。したがって、例えば、上記実験式は、M
1vM
2wM
3xM
4yM
5zD
1aD
2bO
mであり得、ここで、v+w+x+y+z+a+b=1、かつここで、v、w、x、y、z、aおよびbのうちの任意の1つ以上は、0であり得、但し、v、w、x、y、z、aおよびbのうちの少なくとも2つは、0でなく、mは、上記の通りであり、前記ドーパントイオンD
1およびD
2のモル分率aおよびbのそれぞれは、0.1以下である。上記のように、ドーパント量で追加のイオンが含まれ得る。任意の追加のイオンがドーパント量で存在する場合、ドーパント量の限度は、そのような追加の(ドーパント)イオンのそれぞれに適用される。したがって、ドーパント量で存在する各追加の(ドーパント)イオンのモル分率は、すべてのモル分率(酸素を除く)の合計(1である)の0.1以下である。
【0031】
上記遷移金属イオンおよび追加のイオンは、任意の適切な塩または酸化物の形態でプロセスに提供され得る。一実施形態において、前記遷移金属イオンおよび追加のイオンは、硝酸塩として提供される。前記遷移金属イオンおよび追加のイオンが酸化物として提供され、硝酸溶液中に加えられる場合、前記酸化物は、硝酸イオン含有量がはるかに大きいことと、前記酸化物の酸素原子のプロトン化によって生じる水分子形成とによって、一般に硝酸塩に変換されると考えられる。硫酸塩(SO
4−2)、リン酸塩(PO
4−3)、ピロリン酸塩(P)などの他のポリ酸素アニオンが使用され得るが、本明細書中においては硝酸塩(NO
3−)が好適である。
【0032】
一実施形態において、前記少なくとも1つのアルキル基の炭素数は、約8〜約40、または約12〜約20、または約16もしくは約18である。一実施形態において、前記第4級水酸化アンモニウムまたは第4級水酸化ホスホニウムは、炭素数が1から8未満、または1〜4である3つのより低級なアルキル基をさらに含む。
【0033】
一実施形態において、前記第4級水酸化アンモニウムまたは第4級水酸化ホスホニウムは、炭素数が8〜約40、または12〜約20、または約16もしくは18である2つのアルキル基を含む。一実施形態において、前記第4級水酸化アンモニウムまたは第4級水酸化ホスホニウムは、炭素数が1から8未満、または1〜4である2つのより低級なアルキル基をさらに含む。一実施形態において、より長いアルキル鎖は、16個の炭素原子を含み、非分岐であり、他の3つのアルキル基は、メチル基であるので、前記第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウムは、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(例えば、実施例を参照のこと)または水酸化ヘキサデシルトリメチルホスホニウムであり得る。
【0034】
一実施形態において、上記炭素数が約8以上である少なくとも1つのアルキル基のいずれかは、非分岐である。
【0035】
第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子上の長鎖アルキル基の数、例えば、1または2、および長鎖アルキル基の長さ、例えば、8〜40個の炭素原子、の両方は、種々のイオンが組み合わされた水性酸性溶媒中の第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子の溶解度によって制限される。第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子上の他の3つまたは2つのアルキル基のサイズはまた、アルキル基の分岐の有無と同様に、いくらかの影響をこの制限に与える。すなわち、より長いアルキル置換基の長さおよび/または数が過度に大きいと、その結果得られる第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子は、溶解度が不十分であり得る。したがって、炭素数が8〜約40であるアルキル基の大きさ、および1または2個のそのような置換基があるかどうか、に対する実際の現実的な制限は、得られる第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子の溶解度であることが理解される。
【0036】
理論に制限されないが、本発明が機能するゲル形成を導く分子間の一次分子会合および/または一次イオン会合は、3種類あると考えられる。
【0037】
3つの一次会合のうちの第1の一次会合は、負電荷を持つ硝酸イオンと正電荷を持つ第4級アンモニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンとの間に生じる。
【0038】
3つの一次会合のうちの第2の一次会合は、隣り合う第4級アンモニウム分子および/または第4級ホスホニウム分子の長いアルキル基間の分子間相互作用であり、隣り合う第4級アンモニウム分子および/または第4級ホスホニウム分子間のある種の「架橋」点を提供する。この「架橋」が本発明にしたがって形成されるゲルを維持するための結合力を提供すると考えられる。用語「架橋」は、引用符で囲まれることで、この架橋が一般に、実際の共有結合が隣り合う第4級アンモニウム分子および/または第4級ホスホニウム分子上のアルキル基間に形成され得る、化学結合に基づく架橋ではなく、その代わりに、界面活性剤を含む水溶液中のミセル形成において生じる、隣り合う長鎖アルキル基間の上記タイプの会合を示す。すなわち、本発明においては、分子間相互作用は、実際のミセル形成相互作用ではなく、後で詳細を記載する
図1および
図2に模式的に示す相互作用と同様であると考えられる。
図1および
図2の模式図によって示唆されるように、一般に2つの第4級アンモニウム分子または第4級ホスホニウム分子が各硝酸イオンと会合すると考えられる。なお、やはり、これが本発明を現在において説明する理論であるが、本発明者および本発明は、この理論またはいずれの他の理論によっても限定されない。
【0039】
3つの一次会合のうちの第3の一次会合は、
図3に示すように、硝酸イオンと、遷移金属イオンと、追加のイオンとの間で生じる。
【0040】
図1は、本発明の実施形態にかかる、硝酸イオンと、長アルキル鎖を有する第4級アンモニウム分子との会合の第1の推定される、理論的機構を示す模式図である。
図1に示す会合は、硝酸イオンと第4級アンモニウムイオンとの混合時に得られる初期会合であり得る。
【0041】
図2は、本発明の実施形態にかかる、硝酸イオンと、長アルキル鎖を有する第4級アンモニウム分子との会合の第2の推定される、理論的機構を示す模式図である。
図2に示す会合は、その後の、硝酸イオンを第4級アンモニウムイオンと混合した後のある時点の、さらに進展した会合であり得る。
【0042】
図3は、本発明の実施形態にかかる、遷移金属イオンと、硝酸イオンと、長アルキル鎖を有する第4級アンモニウム分子との間の会合の第3の推定される、理論的機構を示す模式図である。
図3に示す会合は、リチウムイオンと、遷移金属イオンと、第4級アンモニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンと、その第4級アンモニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンと会合していた対イオン、およびその場合は、その遷移金属イオンおよび追加のイオンと会合していた対イオンとの間の種々の会合をより正確に示すと考えられる。それぞれの第4級アンモニウムの長アルキル鎖間の「架橋」は、
図3においては陰を付けた円またはボールとして示され、あくまで模式的であり、この関係をボールまたは球体として示す意図はなく、むしろ単に長アルキル鎖が互いに「架橋」または密に会合していることを示す。
【0043】
上記例に記載されるように、プロセスは、通常まず種々の遷移金属塩または遷移金属酸化物、リチウム塩、必要に応じてドーパント塩またはドーパント酸化物、および水を組み合わせて、これらの塩の水溶液を与えることによって実施される。塩が硝酸塩として添加される場合、硝酸などの硝酸イオンのさらなる供給源を別途添加する必要はない。
【0044】
一実施形態において、加熱は、約750℃〜約1000℃の範囲内の最終温度に段階的に昇温するように行われる。一実施形態において、加熱は、4段階で行われ、各段階の温度は前段階よりも高い。一実施形態において、加熱は、合計約20時間以上行われる。
【0045】
本発明の実施形態によれば、リチウム(存在すれば)の塩、選択された遷移金属の塩、ならびに含まれるべき任意の追加の元素および/またはドーパント元素の塩は、水中において組み合わされ、十分に溶解するまで攪拌され(通常、一晩)、透明な溶液が得られる。激しく攪拌しながら、必要量の長鎖第4級水酸化アンモニウムまたは長鎖第4級水酸化ホスホニウムを加える。このとき、有色のゲルが短時間で形成される。本発明の実施形態によれば、このように形成されたゲルは、さらに濃縮したり、水を除去することなく、直ちにかつそのまま、か焼のための炉に移され得る。炉において、温度は、段階的に徐々に昇温される。
【0046】
か焼プロセスにおいて種々の温度で所定の保持時間にわたり行う、典型的な一例としての昇温手順は、以下の通りである。
1.ゲルを150℃の炉に配置し、0.5時間保持する。
2.炉の温度を150℃から180℃に5℃/分で昇温し、180℃で5時間保持する。
3.炉の温度を180℃から480℃に5℃/分で昇温し、480℃で5時間保持する。
4.炉の温度を480℃から900℃に5℃/分で昇温し、900℃で10時間保持する。
5.粉状のセラミックを炉から取り出し、放置して室温に冷却する。
【0047】
使用される正確な時間および温度は、ゲルが十分にか焼される範囲で変更され得ることが当業者には理解され得る。昇温は、上記変化を生じさせるのに役立ち、初期のセラミックおよび最終的には十分にか焼されたセラミック材料を形成する。
【0048】
本発明は、セラミック材料の製造に広く利用可能であり、特にリチウムイオン電池用の正極材料における使用に適したセラミック材料の作成に有用である。以下の材料例は、そのうちのいくつかはリチウムイオン電池用の正極材料に有用であり得るが、本発明にしたがって製造可能である。
【0049】
酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2
酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2
酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム、LiNi
0.79Co
0.20Al
0.01O
2
酸化リチウムニッケルコバルト、LiNi
0.8Co
0.2O
2
リン酸リチウム鉄、LiFePO
4
酸化リチウムニッケル、LiNiO
2
三バナジン酸リチウム、LiV
3O
8
炭酸マンガンニッケル、Mn
0.75Ni
0.25CO
3
酸化銅バナジウム、CuV
2O
6
リン酸リチウムコバルト、LiCoPO
4
二酸化リチウムマンガン、LiMnO
2
酸化リチウムマンガン、LiMn
2O
4
酸化リチウムマンガンニッケル、Li
2Mn
3NiO
8
酸化リチウム鉄、LiFeO
2
酸化リチウムコバルト、LiCoO
2
モリブデン酸リチウム、LiMoO
4
チタン酸リチウム、Li
2TiO
3
酸化リチウムコバルトマンガン、LiCo
0.8Mn
0.2O
2
酸化リチウムニッケルマンガン、LiNi
0.85Mn
0.15O
2
酸化リチウムコバルトニッケルマンガン、LiCo
0.45Ni
0.45Mn
0.10O
2
酸化リチウムニッケルマンガン、LiNi
0.8Mn
0.2O
2
酸化リチウムニッケルコバルトホウ素、LiNi
0.79Co
0.2B
0.01O
2
酸化リチウムニッケルコバルトスズ、LiNi
0.79Co
0.2Sn
0.01O
2
酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム、LiNi
0.72Co
0.2B
0.08O
2
【0050】
本発明にしたがって形成される上記酸化物化合物は、一般化され得、以下にいくつかの化合物例を示す。
【0051】
酸化リチウムニッケルコバルト、LiNi
xCo
1−xO
2
ドープ酸化リチウムニッケルコバルト、LiNi
xCo
1−x−dM
dO
2、ここで、Mは、追加のイオンであり、かつd=0.1以下であるので、ドーパントイオンである
酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、LiNi
xMn
yCo
zO
2、ここで、x+y+z=1
ドープ酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、LiNi
xMn
yCo
zM
dO
2、ここで、x+y+z+d=1、Mは、追加のイオンであり、かつd=0.1以下であるので、ドーパントイオンである
酸化リチウムコバルトマンガン、LiCo
xMn
1−xO
2
ドープ酸化リチウムコバルトマンガン、LiCo
xMn
1−x−dM
dO
2、ここで、Mは、追加のイオンであり、かつd=0.1以下であるので、ドーパントイオンである
酸化リチウムニッケルマンガン、LiNi
xMn
1−xO
2
ドープ酸化リチウムニッケルマンガン、LiNi
xMn
1−x−dM
dO
2、ここで、Mは、追加のイオンであり、かつd=0.1以下であるので、ドーパントイオンである
酸化リチウムコバルトニッケルマンガン、LiCo
xNi
yMn
zO
2
酸化ドープリチウムコバルトニッケルマンガン、LiCo
xNi
yMn
zM
dO
2、ここで、x+y+z+d=1、Mは、追加のイオンであり、かつd=0.1以下であるので、ドーパントイオンである
【0052】
なお、上記において、種々のドープされた化合物を単一のドーパントイオンを有するものとして示した。これは、あくまで例示を目的とするものであり、1個より多くのドーパントイオンが上記化合物のいずれに追加されてもよいことが理解され得る。
【0053】
上記の化合物は、本発明の種々の実施形態にしたがって作成され得るセラミック材料であり、本明細書においてさらに記載され、上記リストの化合物のうちのいくつかにおいて例示されるように、上記の化学量論およびその得られる上記製造されるセラミック材料の性質を若干変更するために添加されるドーパントを含み得る。ドープセラミックの一例は、上記酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2であり、これは、非ドープ酸化リチウムニッケルコバルト、LiNi
0.8Co
0.2O
2に存在するリチウム、ニッケル、コバルトおよび酸素の他にドーパント量のアルミニウム(約0.1モル分率未満)を含む。
【0054】
一実施形態において、リチウムイオン電池の正極において使用するためのリチウムセラミック物質は、以下の式のうちの1つを有する化合物であり得る。
【0055】
Li
xNi
1−yCoO
2、ここで、0.9≦x≦1.1および0≦y≦1.0
Li
1+aM
1bMn
2−bO
4、ここで、−0.1≦a≦0.2および0≦b≦1.0、M
1は、Li、B、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、F、IおよびSのうちの1つである
Li
mMn
2−nM
2nO
2、ここで、M
2は、遷移金属であり、0.9≦m≦1.1および0≦n≦1.0
【0056】
遷移金属化合物、ドーパント金属化合物およびリチウム化合物を初期に溶解させる水の量は、必要に応じて変更され得る。水の量は、できるだけ少なくすべきであり、遷移金属および/または追加の化合物ならびに溶液に添加されるべきすべての他の種を完全に溶解するのにちょうど十分な量でよい。一般に、存在する水が少ないほど、形成されるゲルからの結果はより良好となる。一実施形態において、選択された遷移金属化合物、ドーパント化合物およびリチウム化合物を溶解することによって得られる溶液は、飽和しているか、完全かつ適時な溶解と一致し得る程度に飽和に近い。
【0057】
図1〜
図3に示すように、調製されたままの遷移金属塩溶液、または混合遷移金属塩溶液は、好ましくは金属イオンに対する塩対イオンとして硝酸塩をともない、炭素数が約8〜約40である少なくとも1つのアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンと会合した硝酸イオンを含み、遷移金属ポリアニオン塩または混合遷移金属ポリアニオン塩を与える。さらに、
図1〜
図3に示すように第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオン上の長い脂肪族鎖は、強い分子間相互作用を形成し得、炭素数が約8〜約40であるアルキル基間の架橋または会合を与える。これらの会合によってゾル−ゲル形成が生じると考えられる。しかし、本発明は、すべての場合にゾル−ゲルまたはゲルが形成されることを必要とするわけではない。下記の実施例4に示すように、ゲルは形成されなかったが、セラミック材料は、本発明にしたがい首尾よく形成される。この実施例は、ゲルが実際には形成されないが、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0058】
得られたままのゾル−ゲルは、そのまま高温度に加熱され、か焼を達成し、改善された性質を有するセラミック材料を形成する。これにより、リチウムイオン電池における正極としての使用に適したセラミック材料が調製される。セラミック材料からリチウムイオン電池のための実際の正極を製造することは、当業者に公知の技術によって達成され得、本開示の範囲を超えている。なお、セラミック材料は、セラミック材料について公知である他の目的に対しても有用であり得る。
【実施例】
【0059】
実施例1:酸化リチウムニッケルコバルトLiCo
0.2Ni
0.8O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8908g(0.01338モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9734g(0.003345モル)の硝酸コバルト六水和物、1.7915g(0.01756モル、1.05モル過剰)の酢酸リチウム二水和物および5.2690gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、17gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。緑色のゲルが形成される。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図4に示す。
【0060】
実施例2:酸化リチウムニッケルコバルトLiCo
0.2Ni
0.8O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8908g(0.01338モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9734g(0.003345モル)の硝酸コバルト六水和物、1.7915g(0.01756モル、1.05モル過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3443gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液が緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図5に示す。
【0061】
実施例3:酸化リチウムニッケルコバルトLiCo
0.2Ni
0.8O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8908g(0.01338モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9734g(0.003345モル)の硝酸コバルト六水和物、1.7915g(0.01756モル、1.05モル過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3443gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、29gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液が緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図6に示す。本発明の本実施形態にしたがって得られたLiCo
0.2Ni
0.8O
2セラミック材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図16に示す。
【0062】
実施例4:酸化リチウムマンガンLiMn
2O
4の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、4.9164g(0.02006モル)の硝酸マンガン四水和物、1.0744g(0.01053モル、1.05モル過剰)の酢酸リチウム二水和物および8.0238gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、青色に変化するが、ゲルは、一切形成されない。混合物を140℃で加熱し、水を除去する。黄色の粘り気のある混合物が形成される。調製されたままの混合物を直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図7に示す。これは、本発明の非ゾル−ゲル実施形態の一例である。本発明の本実施形態にしたがって得られたLiMn
2O
4セラミック材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図17に示す。
【0063】
実施例5:酸化リチウムマンガンニッケルLi
2Mn
3NiO
8の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.6053g(0.01471モル)の硝酸マンガン四水和物、1.0505g(0.0103モル、1.05x過剰)の無水酢酸リチウム、1.4259g(0.004903モル)の硝酸ニッケル六水和物および7.9394gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。上記溶液に、激しく攪拌しながら、7.4964gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図8に示す。
【0064】
実施例6:大気雰囲気中での酸化リチウムコバルトLiCoO
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、4.8654g(0.01672モル)の硝酸コバルト六水和物、1.7909g(0.01755モル、1.05x過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3437gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、青色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図9に示す。
【0065】
実施例7:N
2雰囲気中での酸化リチウムコバルトLiCoO
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、4.8654g(0.01672モル)の硝酸コバルト六水和物、1.7909g(0.01755モル、1.05x過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3437gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、青色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図10に示す。
【0066】
実施例8:アルミニウムをドープした酸化リチウムニッケルコバルトLiNi
0.79Co
0.2Al
0.01O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8366g(0.01319モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9720g(0.00334モル)の硝酸コバルト六水和物、0.06266g(0.000167モル)の硝酸アルミニウム九水和物、1.7889g(0.01753モル、1.05x過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3398gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図11に示す。
【0067】
実施例9:ホウ素がドープされた酸化リチウムニッケルコバルトLiNi
0.79Co
0.2B
0.01O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8567g(0.01326モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9771g(0.003357モル)の硝酸コバルト六水和物、0.01038g(0.0001679モル)のホウ酸、1.7983g(0.01763モル、1.05x過剰)の酢酸リチウム二水和物および3.3575gの脱イオン水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図12に示す。
【0068】
実施例10:スズがドープされた酸化リチウムニッケルコバルトLiNi
0.79Co
0.2Sn
0.01O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.8419g(0.01321モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9733g(0.003344モル)の硝酸コバルト六水和物、0.03773g(0.0001672モル)の塩化スズ二水和物、1.7914g(0.01756モル、1.05x過剰)の酢酸リチウム二水和物および5.0257gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図13に示す。
【0069】
実施例11:アルミニウムをドープした酸化リチウムニッケルコバルトLiNi
0.72Co
0.2Al
0.08O
2の調製
磁気攪拌子を入れた100mlプラスチックビーカーに、3.4636g(0.01191モル)の硝酸ニッケル六水和物、0.9628g(0.003308モル)の硝酸コバルト六水和物、0.4964g(0.001323モル)の硝酸アルミニウム九水和物、1.7720g(0.01737モル、1.05倍過剰)の無水酢酸リチウム、1.97gの69.5重量%硝酸および7.9552gの脱イオン化水を加える。混合物を一晩攪拌し、透明な溶液を与える。この溶液に、激しく攪拌しながら、20gの10.98重量%水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加える。溶液は、緑色のゲルに変化する。調製されたままのゲルを直ちに炉中に移し、以下の段階的昇温手順で加熱する。
150℃/0.5時間、180℃/5時間、480℃/5時間、900℃/10時間。黒色の固体が定量的収率で形成される。そのXRDスペクトルを
図14に示す。本発明の本実施形態にしたがって得られたLiNi
0.72Co
0.2Al
0.08O
2セラミック材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図18に示す。
【0070】
比較のために、
図15に、従来技術のセラミック材料である市販の酸化リチウムマンガンのX線回折スペクトルを示す。
【0071】
比較のために、
図19に、従来技術のセラミック材料である市販の酸化リチウムマンガンのSEM写真を示す。
【0072】
本発明の原理をある特定の実施形態に関して説明し、例示のために提示したが、本明細書を参照すれば当業者には種々の変更が想起され得ることが理解される。したがって、本明細書中に開示される発明は、添付の特許請求の範囲を超えないような変更を包含することを意図したものであることが理解される。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。