特許第6110959号(P6110959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッドの特許一覧 ▶ アメリカ合衆国の特許一覧

特許6110959(R)−3−ヒドロキシブチル(R)−3−ヒドロキシブチレートの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110959
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】(R)−3−ヒドロキシブチル(R)−3−ヒドロキシブチレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20170327BHJP
   C07C 69/675 20060101ALI20170327BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20170327BHJP
   C07C 29/136 20060101ALN20170327BHJP
   C07C 31/20 20060101ALN20170327BHJP
   C12P 7/62 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   C07C67/03ZAB
   C07C69/675
   !C07B53/00 G
   !C07C29/136
   !C07C31/20 B
   !C12P7/62
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-562212(P2015-562212)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-511278(P2016-511278A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】EP2014055156
(87)【国際公開番号】WO2014140308
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】61/783,167
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502006782
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】クラーク キーラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーチ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】キング トッド
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500264(JP,A)
【文献】 特表2008−513017(JP,A)
【文献】 Tetrahedron: Asymmetry,1994年,Vol.5, No.1,p.117-118
【文献】 Tetrahedron,1987年,Vol.43, No.10,p.2229-2239
【文献】 Biotechnology Advances,2004年,Vol.22,p.261-279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/00−69/96
C07B 53/00
C07C 29/00−31/44
C12P 7/00−7/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換条件下で、ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換することができるC1-6の1価、2価又は3価のアルコールと接触させて、ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換して(R)-3-ヒドロキシ酪酸と前記アルコールのエステルを生成し、
(ii) 工程i)の生成物を第一の部分及び第二の部分に分離し、(R)-3-ヒドロキシ酪酸エステルの第一の部分を還元して(R)-1,3-ブタンジオールを生成し、
(iii) エステル交換条件下で工程ii) からの(R)-1,3-ブタンジオールをエステル交換されたエステルの第二の部分と接触させて(R)-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを生成することを特徴とする(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートの製造方法。
【請求項2】
ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをトウモロコシ澱粉又はサトウキビから得る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートを工程i)でエタノールを使用してエステル交換する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
アルコール対ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートの質量比が1:1 から10:1までである、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程i)を酸性条件で行なう、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程i)の生成物を処理して酸を中和し、アルコールを蒸留により除去する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
蒸留を110 ℃〜150 ℃の温度で行なう、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程ii) における還元が、ヒドリド移動試薬を使用して(R)-3-ヒドロキシ酪酸エステルを還元することを含む、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ヒドリド移動試薬が水素化リチウムアルミニウム、水素化ナトリウムビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウム、ホウ水素化ナトリウム、ホウ水素化ニッケルから選ばれる、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はARMY/AROにより授与された補助金第W911NF-05-1-0479のもとに政府の支持でなされた。政府は本発明に特定の権利を有する。
本発明は(R)-3-ヒドロキシブチル (R)-3-ヒドロキシブチレートの製造方法に関する。特に、本発明はポリ-(R)-3-ヒドロキシの単一出発物質供給原料からの(R)-3-ヒドロキシブチル (R)-3-ヒドロキシブチレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケトン体は脂肪組織から放出される脂肪酸から肝臓により生成される化学化合物である。ケトン体それら自体は生体の殆どの組織中でエネルギーの源として使用し得る。血液中のケトン体のレベルを増大する化合物の摂取は肉体的性能及び認知性能の強化並びに心血管症状、糖尿病、神経変性疾患及び癲癇の治療を含む、種々の臨床上の利益をもたらし得る。ケトン体として、(R)-3- ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートが挙げられる。
WO2004/108740 はケトン体が直接投与されて対象のケトン体の上昇されたレベルを達成し得ることを開示している。しかしながら、これらの化合物の直接投与は実用的ではなく、しかも潜在的に危険である。例えば、遊離酸形態の(R)-3- ヒドロキシブチレート又はアセトアセテートの直接投与は胃腸道からの迅速な吸収後に重大なアシドーシスをもたらし得る。調節されない量のこれらの化合物のナトリウム塩の投与がまた治療上妥当な量の化合物の投与を伴い得る潜在的に危険なナトリウム過負荷のために不適である。
誘導体の例として、エステル、例えば、種々のアルコール及び(R)-3- ヒドロキシブチレートのオリゴマーから誘導されるエステルが挙げられる。
WO2010021766は3-ヒドロキシブチレートの一種の特別なエステルの一種の特別な鏡像体がケトン体(R)-3- ヒドロキシブチレートの有効かつ美味な前駆体であることを開示している。こうして、WO2010021766は(R)-3-ヒドロキシブチル (R)-3-ヒドロキシブチレートに関して鏡像体上濃縮された3-ヒドロキシブチル3-ヒドロキシブチレートを開示している。
種々の合成アプローチがこの立体異性体の合成のために開発されていた。ヒドロキシブチレートをポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートから製造するための方法が知られているが、多数の工程を伴ない、複雑である。その他の合成アプローチが試みられたが、低収率、不純な生成物の生成、大規模での実施不能及びコストを含む種々の技術上かつ商業上の欠点を有する。
WO2010/120300 は式I、II又はIII の化合物のエナンチオ選択的還元を伴なう(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートの種々の製造方法を開示している。
【0003】
【化1】
【0004】
WO2010/120300 はまたHOCH2CH2COCH3 をWO2010/120300 中の式VIのジケテン、CH2=C(CH2)-O-C=Oで処理し、その反応をエナンチオ選択的還元にかけることを伴なう方法を開示している。ブタン-1,3-ジオールをエナンチオ選択的還元でケテンVIで処理することを伴なう更なる方法及び4-ヒドロキシブタノンから開始する方法がまた開示されている。エナンチオ選択的還元はケトレダクターゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼを使用して行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートを製造するのに有効であるが、これらの出発物質はコストがかかることがあり、反応の一層高い速度が望ましいかもしれない。(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートを高容積で製造し、製造の経済性を改良することができることについての要望が存する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこれらの課題が比較的低いコストの出発物質である、ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換反応を伴う方法にかけて出発物質又は供給原料を二つの部分又は流れに分け、還元された中間体を第一の部分又は流れから生成し、次いでこれを第二の部分又は流れと反応させて(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートを得ることにより取り組み得ることを今見出した。
第一の局面において、本発明は
(i) ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換条件下でアルコールと接触させてポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートをエステル交換して(R)-3-ヒドロキシブチレートとアルコールのエステルを生成し、
(ii) 工程i)の生成物を第一の部分及び第二の部分に分離し、(R)-3-ヒドロキシブチレートエステルの第一の部分を還元して(R)-1,3-ブタンジオールを生成し、
(iii) エステル交換条件下で工程ii) からの(R)-1,3-ブタンジオールをエステル交換されたエステルの第二の部分と接触させて(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートを生成することを含む(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートの製造方法を提供する。
その方法は、例えば、トウモロコシ澱粉又はサトウキビ(sugar cane)の発酵により大規模で、かつ許容し得るコストで商業上入手し得るバルクのポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートからの(R)-3-ヒドロキシ酪酸と(R)-1,3-ブタンジオールの鏡像体上濃縮されたモノエステルの工業規模の製造を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に使用される“濃縮された(enriched)”という用語は、濃縮異性体のレベルが、ラセミ混合物中にその異性体が存在するレベルよりも高いことを意味する。濃縮%が言及されている場合、濃縮異性体が存在する全3-ヒドロキシブチル3-ヒドロキシブチレート生成物のモル%を構成する。
鏡像体の純度はキラル高性能液体クロマトグラフィー(キラルHPLC)を使用して測定されることが好ましい。測定は典型的には相当するラセミ混合物に対してなされる。また、キラルガスクロマトグラフィー(キラルGC)が信頼して使用し得る。従って、濃縮%が本明細書に言及される場合、濃縮%は典型的にはキラルHPLC又はキラルGCにより測定されたものである。濃縮%がキラルHPLCにより測定されたものであることが好ましい。通常、使用される酵素は式(II)、(III) 又は(IV)の前記化合物を還元して(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートに関して、少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%まで鏡像体濃縮される3-ヒドロキシブチル3-ヒドロキシブチレートを生成し得る酵素である。
その方法は連続又はバッチであってもよい。有利には、本発明はトウモロコシ澱粉から得られてもよいポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートからの(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートの高処理量の工業的製造を可能にする。
ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレート供給原料は微生物によるトウモロコシ澱粉の発酵により単一供給原料から用意されることが好ましい。
【0008】
ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレート供給原料は生成されたエステルが(R)-1,3-ブタンジオールに還元されることを可能にするあらゆる好適なアルコールを使用して工程i)でエステル交換されてもよい。2価又は3価のアルコールが使用されることが好適であるが、アルコールが1価、例えば、C1-6アルコールであることが好ましい。(R)-3-ヒドロキシブチル(R)-3-ヒドロキシブチレートが、例えば、食品又は栄養スプリメントとしての消費のためである場合、アルコールがエタノールであることが好適である。何とならば、これがその他のアルコールよりも消費に許容し得るからである。
アルコールはポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレート部分がエステル化し得るのに充分な量で存在することが好適である。好ましくは、アルコール対ポリ-(R)-3-ヒドロキシブチレートの質量比が1:1 から10:1まで、更に好ましくは2:1 から6:1 までである。
工程i)におけるエステル交換は酸性条件で行なわれることが好適である。反応混合物が酸触媒を含むことが好ましい。酸は有機又は無機であってもよく、鉱酸、例えば、硫酸であることが好ましい。触媒は所望により固体であってもよい。
エステル交換は、好ましくは50℃より高く、90℃より高く、望ましくは150 ℃以下の高温で行なわれることが好適である。高圧が使用されてもよい。エステル交換はエステル交換を温度、触媒及び使用されるアルコールに関して経済的に許容し得る程度までに影響するのに充分な時間にわたって行なわれることが好適である。好ましくは、エステル交換工程が少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも10時間、特に15〜30時間、例えば、20時間、22時間及び24時間にわたって行なわれる。
次いでエステル交換反応の生成物は濾過、精製(例えば、蒸留による)及び中和(例えば、存在する酸を中和するための塩基、例えば、水酸化物、重炭酸塩及び酢酸塩、特に水酸化カルシウム又は重炭酸ナトリウムの添加による)を含む一つ以上の任意の工程により処理されてもよい。
(R)-3-ヒドロキシブチレートのエステルはアルコール及び反応の任意の副生物の除去により反応混合物から分離されることが好適である。分離は所望により多段階で行なわれてもよい。好ましい実施態様において、エステルがアルコール及び反応副生物から分離され、精製される。エステルが、例えば、アルコール及びアルキルクロトネートの蒸留による液相の分離により未反応のアルコール及びその他の望ましくない物質、例えば、アルキルクロトネートから分離されてもよい。アルコール及び副生物が、好適には大気圧で、アルコールの沸点より上の温度、例えば、80℃より高く、110 ℃より高く、例えば、110 〜150℃の温度で多くの蒸留により除去されてもよい。次いで(R)-3-ヒドロキシブチレートのエステルが分離されて第一の部分を得ることが好適であり、これが還元反応にかけられる。
【0009】
工程ii) における還元はヒドリド移動還元、水素化、ヒドロシリル化続いてシリルエーテル加水分解であってもよい。還元がケトエステルを還元するためのあらゆる好適な還元剤を用いて行なわれることが好ましい。還元剤が有機又は無機であってもよい。還元工程が酵素、例えば、ケトレダクターゼ(KRED)又はアルコールデヒドロゲナーゼ (ADH)により媒介されてもよく、天然産であってもよく、又は、例えば、WO2010/120300 に記載されたように、市販されていてもよい。
還元剤が水素を含んでもよく、水素化触媒、例えば、ラネーニッケルが使用されてもよく、望ましくは高圧及び高温で使用されてもよく、触媒が白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム又はルテニウムを含んでもよい。還元剤がヒドリド移動試薬を使用することが好ましい。好適な還元剤の例として、錯体金属水素化物、例えば、水素化リチウムアルミニウム、リチウムテトラヒドリドアルミネート、水素化ナトリウムビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウム、ホウ水素化ナトリウム、ホウ水素化ニッケル、その他の無機還元剤、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、テトラヒドロホウ酸ナトリウム及び当業界で知られているルテニウム水素化触媒、例えば、水素化ルテニウム及び当業界で知られているロジウム水素化触媒、アルミニウムトリイソプロポキシド、並びにキラルボランを含む有機還元剤、例えば、2,5-ジメチルボロラン、ボロントリヒドリド:テトラヒドロフラン又はカテコールボラン、並びに酵素及びコファクター、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート (NADPH)が挙げられる。所望により、コファクター循環系が好適に使用される。
還元工程が還元条件下で行なわれることが好適である。溶媒が使用されてもよい。溶媒が無水の、例えば、ジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフランであってもよく、又は還元剤に応じて、極性プロトン性溶媒、例えば、水、アルコール及び塩基性水性媒体中で行なわれてもよい。
還元工程が水溶液中で行なわれることが好ましく、適度に強い還元剤が所望される立体化学の保持を確実にするように使用されることが好ましい。望ましくは、還元工程の温度が重大な温度上昇を回避するために制御され、望ましくは通常の温度よりも下の温度、望ましくは10℃より下、例えば、-5〜3℃で行なわれる。
【0010】
好適には、還元剤が不当な温度上昇を回避するために第一の部分と徐々に接触させられる。還元剤及び第一の部分が好適には時間の延長された期間、例えば、少なくとも30分、好ましくは少なくとも1時間、更に好ましくは1〜20時間、特に4〜10時間にわたって反応させられる。所望の程度までの還元反応の完結後に、反応が、反応停止剤の添加により、例えば、酸、例えば、硫酸の添加により停止されてもよく、時間の期間、例えば、少なくとも1時間、好ましくは1〜20時間、例えば、一夜にわたって放置される。その後に、反応混合物が除去剤、例えば、水酸化物、特に水酸化カルシウムと接触させられて還元剤の塩及び反応停止剤を除去してもよい。
第一の部分から生成されたブタンジオールがその後に(R) 3-ヒドロキシブタノエートのエステルの第二の部分と接触させられる。
エステル交換はエステル交換触媒、例えば、酵素、酸又は塩基の存在下で行なわれることが好適である。酵素の好適な例として、リパーゼが挙げられ、好適な酸の例として、鉱酸、例えば、硫酸及び塩酸が挙げられ、好適な塩基の例として、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。
第二の部分と(R)-1,3-ブタンジオールの間のエステル交換反応は高温、例えば、30℃から150 ℃まで、特に40〜100 ℃で行なわれることが好ましい。
このエステル交換方法はバッチ方法又は連続方法で行なわれてもよい。
好適には、エステル交換方法が少なくとも1時間、好ましくは1〜20時間、例えば、5〜10時間にわたって行なわれる。所望の程度までの反応の完結後に、反応の生成物がその後に更なる処理、例えば、濾過、蒸留等にかけられて触媒、未反応の出発物質及び副生物を除去してもよい。
本発明が下記の非限定実施例により説明されるであろう。
【実施例】
【0011】
実施例1
エステル交換工程i)
5ガロン(19リットル)のパール反応器に無水エタノール12.5L(10kg)及びポリ(R)-3-ヒドロキシブタノエート(バイオサイクル、Fazenda de Pedra, c Postal 02 CEP 14158-00, Serenaa, S.P. Brazil)2.5 kgを仕込み、2-5 分撹拌して混合を完結し、その後に濃硫酸0.1 Lをその混合物に徐々に添加する。その混合物を300 ℃/時間の傾斜で110 ℃に加熱し、その反応器を22時間である全運転時間にわたって浸漬モードに保つ。冷却水を使用してそのユニットを約30℃に冷却する。温度が60℃より下に低下した後に、ダイジェスターをガス抜きし、窒素でパージして生成されたエーテルを除去する。酸の当量に等しい、量の塩基を撹拌とともに粗蒸解物に添加して酸を中和する。撹拌を約16時間続け、その後に撹拌を停止し、固体を沈降させる。液相をワイプトフィルム蒸留装置にサイフォンで送り、相中で蒸留して最初にエタノール及びエチルクロトネート(副生物)、次いでエチル(R)-3-ヒドロキシブチレートを除去する。エタノール/エチルクロトネートを一般に大気圧で夫々120 &5 L/時間、120 &3L/時間及び140 &3L/時間のバンドヒーター流量及びポンプ流量で3回通過により蒸留して除く。エチル(R) 3-ヒドロキシブチレートを10mmHg、バンドヒーター=88及び供給流量4L/時間で蒸留する。一次冷却器を全ての蒸留について5℃にセットし、二次冷却器を-1℃にセットする。トラップにドライアイス及びアセトン又はIPA を仕込む。エチル(R) 3-ヒドロキシブチレートを集める場合、最初の通過からの残渣をスチルに循環して一層多くの生成物を回収する。エチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを純度についてGC-MS 及びNMR により分析する。
【0012】
還元工程ii)
ヘビーデューティステンレス鋼ストックポットに水12L及びエチル (R) 3-ヒドロキシブチレートの一部(3.49L)を仕込む。水及びエステルの両方を少なくとも24時間にわたって4℃に前もって冷却した。ストックポットを氷により包囲し、窒素でガス供給し、撹拌する。約1時間後に、温度上昇を最小にするためにホウ水素化ナトリウム1Kgを少しずつ添加する。ホウ水素化物添加は約1時間を要し、温度がNaBH4 添加中に20℃より下に保たれるべきである。ホウ水素化物添加の約5時間後に、濃硫酸745 mlを徐々に添加することにより反応を停止する。その混合物を一夜撹拌及び室温への温度上昇でもって放置する。その混合物を濾過し、濾液を90℃に加熱し、撹拌しながら水酸化カルシウムを添加することにより中和する* 。2時間後に、混合物を冷却し、濾過し、イオン交換樹脂を使用して濾液イオン濃度を低下し、その後に溶液をブッチ・ロートバップに入れ、水の本体を除去する。これが粘稠な液体を残し、10Mより多い(R) 1,3-ブタンジオールと分析され、5-10%の水を含む。残っている水を窒素パージ又は蒸留により除去する。純度を酵素アッセイ、GC-MS 及びNMR によりチェックする。
【0013】
R-1,3-ブタンジオールを使用するエステル交換
(R) 1,3-ブタンジオール600ml 及びエチル (R)-3-ヒドロキシブタノエート1200mlをステンレス鋼パン中で合わせ、混合することにより溶液を調製する。リパーゼを含むナイロンメッシュの“ティーバッグ”をその溶液に入れ、パンを40℃にセットされた加熱パッドの上に置く。“ティーバッグ”をレーンで縫って酵素を分散して保つ。反応を撹拌しながら窒素雰囲気下で行なう。6時間後に、“ティーバッグ”を除去し、溶液を集めることにより反応を停止する。溶液をフィルターに通して酵素樹脂“微粉”を除去し、集める。充分な粗溶液が一旦集められると、溶液を連続して蒸留して最初に脱気し、残っているエタノールを除去し、次いでエチル (R)-3-ヒドロキシブタノエート、(R) 1,3-ブタンジオールを除去し、最後に所望の純粋なケトンエステル、(R)-3-ヒドロキシブチル (R)-3-ヒドロキシブチレートを集める。回収されたエチル (R)-3-ヒドロキシブタノエート及び(l)1,3-ブタンジオールをその後のエステル交換実験で循環する。粗溶液及びスチル留分をGC-MS により分析する。