(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属屋根材を基台に緊結する工程と、前記基台に緊結された前記金属屋根材の端部を浮き上げようとする荷重を前記端部に付与し、前記荷重に対応する前記端部の浮き上がり量を測定する工程と、測定された前記浮き上がり量の変化量に対する前記荷重の変化量で表される浮き上がり係数を求める工程とを含む金属屋根材の強度試験方法を実施した際に、前記浮き上がり係数が6N/mm以上となるように構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の金属屋根材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態.
図1は本発明の実施の形態による金属屋根材1を示す正面図であり、
図2は
図1の金属屋根材1を示す背面図であり、
図3は
図1の線III−IIIに沿う金属屋根材1の断面図であり、
図4は
図1の板状補強部材5を示す斜視図である。
【0011】
図1〜3に示す金属屋根材1は、短手方向1S(奥行方向)及び長手方向1L(幅方向)を有する平面視略矩形状の部材であり、例えば家屋等の屋根において屋根下地の上に配置されるものである。後に図を用いて説明するが、金属屋根材1は、屋根の軒棟方向6に短手方向1Sが沿い、軒棟方向6に直交する軒方向7(軒と平行な方向)に長手方向1Lが沿うように屋根下地の上に配置される(
図5参照)。
図1〜
図3に示すように、金属屋根材1は、表基材2、裏基材3、芯材4及び複数の板状補強部材5を有している。
【0012】
<表基材について>
表基材2は、金属板を素材とする金属製の部材であり、金属屋根材1が屋根下地の上に配置された際に屋根の外面に表れる部材である。
図3に特に表れているように、表基材2には、天板20a及び周壁20bを有する箱状の本体部20が設けられている。
【0013】
表基材2の素材である金属板としては、溶融Zn系めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板、溶融Zn系めっきステンレス鋼板、溶融Alめっきステンレス鋼板、ステンレス鋼板、Al板、Ti板、塗装溶融Zn系めっき鋼板、塗装溶融Alめっき鋼板、塗装溶融Zn系めっきステンレス鋼板、塗装溶融Alめっきステンレス鋼板、塗装ステンレス鋼板、塗装Al板又は塗装Ti板を用いることができる。表基材2を箱状とするとき、鋼板を絞り加工して表基材2を構成することが好ましい。これは、鋼板を絞り加工することで周壁20bに加工硬化が生じ、金属屋根材1の耐風圧性能を向上できるためである。また、周壁20bが表基材2の周方向に連続する壁面とすることができるためである。
【0014】
表基材2には、金属屋根材1の長手方向1Lに互いに離間して複数の緊結孔21が設けられている。緊結孔21は、金属屋根材1への緊結部材8(
図6参照)の打込み位置を示すものである。緊結部材8は、例えばビス又は釘等により構成されるものであり、金属屋根材1を屋根下地に緊結するためのものである。本実施の形態では緊結孔21が表基材2に設けられているように説明しているが、例えば印刷された記号や凹凸等の緊結部材の打込み位置を示す非開口状の印が緊結孔21の代わりに表基材2の表面に設けられてもよい。
【0015】
<裏基材について>
裏基材3は、本体部20の開口を塞ぐように表基材2の裏側に配置された部材である。本体部20の開口は、本体部20の周壁20bの反天板側端部の内縁によって縁取られている。裏基材3としては、アルミ箔、アルミ蒸着紙、水酸化アルミ紙、炭酸カルシウム紙、樹脂フィルム又はガラス繊維紙等の軽量な素材を用いることができる。これらの軽量な素材を裏基材3に用いることで、金属屋根材1の重量が増大することを回避することができる。
【0016】
<芯材について>
芯材4は、例えば発泡樹脂等により構成されるものであり、本体部20と裏基材3との間に充填されている。芯材4の素材としては、特に制限が無く、ウレタン、フェノール、ヌレート樹脂等を用いることができる。ただし、屋根材においては不燃認定材料を使用することが必須となる。不燃材料認定試験は、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験法に準拠した発熱性試験が実施される。芯材4となる発泡樹脂が発熱量の多いウレタンなどの場合は、芯材4の厚みを薄くしたり、発泡樹脂に無機発泡粒子を含有させたりすることができる。本体部20と裏基材3との間に発泡樹脂が充填されることで、樹脂シート等の裏打ち材を表基材2の裏側に張り付ける態様よりも、表基材2の裏面に芯材4を強固に密着させることができ、雨音性、断熱性及び耐踏み潰れ性等の屋根材に求められる性能を向上させることができる。
【0017】
<板状補強部材について>
板状補強部材5は、本体部20の天板20aよりも裏基材3に近い位置で芯材4に埋め込まれた板体である。金属屋根材1の裏側、すなわち本体部20の開口部分及び裏基材3部分は、本体部20の天板20a部分と比較して強度が低い。裏基材3に近い位置で芯材4に板状補強部材5が埋め込まれていることで、金属屋根材1の裏側が板状補強部材5によって補強され、金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。耐風圧性能とは、金属屋根材1の軒側端部1Eを浮き上げようとする荷重に対する抵抗性能である。このような荷重は、屋根下地に緊結されている金属屋根材1に吹き付けた風に起因して生じ得る。
【0018】
板状補強部材5は、
図4の(a)に示すように平板によって構成されてもよいし、
図4の(b)に示すように凹凸部5aを有する板体によって構成されてもよい。凹凸部5aを有する板体によって板状補強部材5を構成する場合、凹凸部5aの延在方向5bが軒棟方向6に沿うように板状補強部材5が配置される。凹凸部5aを有する板状補強部材5をこのような向きで配置することにより、より確実に耐風圧性能を向上できる。
【0019】
板状補強部材5の素材には、金属又は繊維強化プラスチックを用いることができる。金属素材としては、メッキ鋼板、ステンレス鋼板及び塗装鋼板を用いることができる。繊維強化プラスチックとしては、ガラス繊維又は炭素繊維が分散された樹脂を用いることができる。樹脂としては、樹脂の難燃性認証基準であるUL94規格のグレードV−0以上の樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、テフロン(登録商標)、架橋ポリエチレン等)を用いることが好ましい。樹脂素材を用いることで、金属屋根材1を切断して金属屋根材1の大きさを調整する際に、板状補強部材5が金属屋根材1の切断を阻害することを回避することができる。
【0020】
図1〜
図3に示す態様では、板状補強部材5は、金属屋根材1が屋根下地の上に配置された際に軒棟方向6及び軒方向7に関して本体部20の開口の全域にわたって延在するように構成されている。軒棟方向6及び軒方向7に関して本体部20の開口の全域にわたって板状補強部材5が延在するとは、軒棟方向6に関する板状補強部材5の延在幅が同方向に関する本体部20の開口の延在幅の90%以上であり、かつ軒方向7に関する板状補強部材5の延在幅が同方向に関する本体部20の開口の延在幅の90%以上であることを意味する。軒棟方向6及び軒方向7に関して本体部20の開口の全域にわたって板状補強部材5が延在されることで、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。
【0021】
板状補強部材5は、裏基材3から離れた位置で芯材4に埋め込まれてもよいが、
図3に示すように裏基材3に接した位置に芯材4に埋め込まれていることが好ましい。板状補強部材5が裏基材3に接して配置されることで、金属屋根材1が他の金属屋根材1に重ねられる際に他の金属屋根材1の角部が当たる位置において金属屋根材1の裏面の強度を向上できる。これにより、他の金属屋根材1の角部が当たることによって金属屋根材1の裏面に潰れが生じることを回避できる。金属屋根材1の裏面に潰れが生じると、例えば強風等により金属屋根材1に大きな力が加わった際に潰れを起点とする折れを金属屋根材1に生じさせる虞がある。このため、裏基材3に接した位置に板状補強部材5を配置して、その板状補強部材5によって金属屋根材1の裏面を補強することは、金属屋根材1の耐風圧性能の向上に寄与する。このような潰れの発生を回避するとの観点から、板状補強部材5は、芯材4を構成する発泡樹脂よりも固く構成されている。なお、板状補強部材5が芯材4に埋め込まれていることで、より確実に板状補強部材5が金属屋根材1と一体化されるとともに、板状補強部材5が外部に曝されることが回避されている。また、板状補強部材5によって金属屋根材1の裏面側に凹凸又は空隙が形成されることが回避され、金属屋根材1の耐風圧性能の低下が回避されている。
【0022】
<屋根葺き方法について>
次に、
図5は
図1の金属屋根材1を用いた屋根葺き方法を示す説明図であり、
図6は
図5において互いに重なる2つの金属屋根材1を示す側面図である。
図5に示すように、
図1の金属屋根材1を用いて屋根葺きを行う場合(屋根を作る場合)、建物の軒と平行な軒方向7に関して、互いの側端を突合わせながら複数の金属屋根材1を屋根下地の上に並べて配置する。このとき、各金属屋根材1は、軒方向7に長手方向1Lが沿い、屋根の軒棟方向6に短手方向1Sが沿うように屋根下地の上に配置される。金属屋根材1を屋根下地の上に配置した後に、例えばビス又は釘等の緊結部材8を金属屋根材1に打ち込み、緊結部材8を屋根下地に固定する。このとき、緊結部材8は、緊結孔21を通るとともに板状補強部材5を貫いて屋根下地に達する。
【0023】
また、軒棟方向6に関して、軒側(
図6中下側)の金属屋根材1(10)の棟側端部1Uの上に棟側(
図6中上側)の金属屋根材1(11)の軒側端部1Eを重ねながら各金属屋根材1を屋根下地の上に配置する。このとき、棟側の金属屋根材1は、裏基材3に接して配置された板状補強部材5が軒側の金属屋根材10の棟側角部10aに重なるように配置される。これにより、棟側の金属屋根材11の裏面に棟側角部10aが過剰に押し当てられても、棟側の金属屋根材11の裏面に潰れが生じにくくされている。
【0024】
<第1変形例について>
次に、
図7は、
図1の金属屋根材1の第1変形例を示す説明図である。
図7に示す第1変形例は、裏基材3の外面に板状補強部材5が接して配置されている点で
図1の態様と異なっている。このような態様でも、金属屋根材1の裏側において板状補強部材5が金属屋根材1を補強できる。その他の構成は、
図1の態様と同じである。
【0025】
<第2変形例について>
次に、
図8は、
図1の金属屋根材1の第2変形例を示す説明図である。
図8に示す第2変形例は、軒棟方向6に関して本体部20の開口の全域にわたって板状補強部材5が延在されていない点で
図1の態様と異なっている。
図8に示すように、軒方向7に連続的に延在された板状補強部材5が、金属屋根材1に緊結部材が打ち込まれる位置から金属屋根材1の軒側端部1Eまで延在されていてもよい。金属屋根材1が屋根下地に緊結されているとき、金属屋根材1の軒側端部1Eを浮き上げようとする荷重は、金属屋根材1の緊結部分から軒側端部1Eまでの領域において金属屋根材1を反らせようとする。金属屋根材1に緊結部材が打ち込まれる位置から金属屋根材1の軒側端部1Eまで板状補強部材5が延在されていることで、金属屋根材1の重量増大を回避しつつ、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。
【0026】
ここで、板状補強部材5は、金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置に延在されている。換言すると、板状補強部材5は、平面で見た時に緊結孔21(緊結部材8が打ち込まれる位置)に重なるように配置されている。金属屋根材1の厚み方向に離間する硬質な2つの部材(表基材2及び板状補強部材5)の両方を緊結部材8が貫通することで、緊結部材8のブレが防止され、緊結部材8が金属屋根材1から抜けにくくされている。但し、板状補強部材5は、必ずしも緊結部材8の打ち込み位置に延在されていなくてもよく、緊結孔21からずれた位置に延在されていてもよい。その他の構成は、
図1の態様と同じである。
【0027】
<第3変形例について>
次に、
図9は
図1の金属屋根材1の第3変形例を示す説明図であり、
図10は
図9のバーリング孔50周辺における金属屋根材1の断面図である。
図9及び
図10に示す第3変形例は、軒棟方向6及び軒方向7の両方に関して本体部20の開口の全域にわたって板状補強部材5が延在されていない点で、
図1の態様と異なっている。換言すれば、第2変形例よりも軒棟方向6及び軒方向7に板状補強部材5がさらに小さくてもよい。
図9に示すように、金属屋根材1に緊結部材が打ち込まれる位置の周辺のみに板状補強部材5が延在されていてもよい。板状補強部材5が金属屋根材1の幅方向に連続的に延在されていることから、金属屋根材1の裏面の広い領域が1枚の板状補強部材5で補強されている。このため、幅方向に離間して複数の板状補強部材を配置する態様(後述の第4変形例)と比較して製造工程が簡略化される。このような態様でも、他の金属屋根材1の角部が当たることによって金属屋根材1の裏面に潰れが生じることを回避できる。
【0028】
また、
図9及び
図10に示す第3変形例は、板状補強部材5に複数のバーリング孔50が設けられている点で
図1の態様と異なっている。各バーリング孔50は、板状補強部材5にバーリング加工を施すことで形成され得るものであり、
図10に示すように孔開口50aとその孔開口50aの縁から立設された縦壁部50bとをそれぞれ有している。縦壁部50bは、孔開口50aの縁に沿う一続きの壁体によって構成されてもよいし、孔開口50aの縁に沿って互いに離間された複数の壁体によって構成されてもよい。このようなバーリング孔50が板状補強部材5に設けられることで、板状補強部材5及び金属屋根材1の曲げ剛性が増大されている。
【0029】
各バーリング孔50は、板状補強部材5の長手方向及び短手方向に互いに間隔を置いて配置されている。具体的には、バーリング孔50は、長手方向及び短手方向に沿う板状補強部材5の端部(四隅)、中央及び中央近傍に配置されている。中央近傍に配置された2つのバーリング孔50の孔開口50aは、金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置(緊結孔21)に重ねられている。このため、緊結部材8が板状補強部材5を容易に貫通でき、作業者の負担を低減できる。なお、金属屋根材1への緊結部材8の打込み態様が本実施の形態の態様と異なる場合、1つ又は3つ以上のバーリング孔50の孔開口50aが金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置に重ねられていてもよい。
【0030】
各バーリング孔50の縦壁部50bは、表基材2の裏面に当接されている。これにより、金属屋根材1の圧縮強度を増大でき、耐雪性を向上させることができるとともに、落氷時又は太陽光パネル搭載時の表基材2の変形を抑えることができる。その他の構成は、
図1の態様と同じである。
【0031】
<第4変形例について>
次に、
図11は、
図1の金属屋根材1の第4変形例を示す説明図である。
図11に示す第4変形例は、複数の板状補強部材5が金属屋根材1の長手方向1L(幅方向)に互いに離間して配置されている点で、
図1の態様と異なっている。板状補強部材5は、その長手方向が軒棟方向6(金属屋根材1の短手方向1S)に沿うように延在されている。このように、板状補強部材5が幅方向に互いに離間して配置されていることで、必要な耐力を確保しつつ、金属屋根材1の重量増を抑えることができる。
【0032】
また、
図11に示す第4変形例は、板状補強部材5に複数のバーリング孔50が設けられている点で
図1の態様と異なっている。各バーリング孔50は、板状補強部材5の長手方向に互いに間隔を置いて配置されている。具体的には、バーリング孔50は、板状補強部材5の両端及び中央に配置されている。中央に配置されたバーリング孔50の孔開口50aは、金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置(緊結孔21)に重ねられている。各バーリング孔50の具体的な態様は、第3変形例(
図10)と同じである。その他の構成は、
図1の態様と同じである。
【0033】
<第5変形例について>
図示はしないが、第5変形例として、板状補強部材5を用いずに、裏基材3の素材を表基材2と同様の金属板とすることもできる。
【0034】
例えば第2変形例にバーリング孔50を適用する等、第1〜第5変形例が
図1の態様と異なる点を組み合わせて実施できる。
【0035】
<強度試験設備について>
次に、
図12は
図1の金属屋根材1の強度試験を行うための強度試験設備9を示す斜視図であり、
図13は
図5の金属屋根材1の軒側端部1Eが浮き上がった状態を示す説明図である。
図12に示すように、強度試験設備9は、基台90、枠体91、荷重付与装置92、接続部材93、荷重計94及び変位計95を有している。
【0036】
基台90は、強度試験が行われる金属屋根材1が載置され緊結される部材である。この基台90は、金属屋根材1が実際に緊結される屋根下地を模した部材であり、例えば木材の板等によって構成することができる。基台90への金属屋根材1の緊結は、屋根下地への金属屋根材1の実際の緊結に即して行うことが好ましい。すなわち、前述の
図5及び
図6のように金属屋根材1を屋根下地に実際に緊結する態様に即して、所定位置において緊結部材8を金属屋根材1の本体部20に打ち込むことにより、金属屋根材1を基台90に緊結することが好ましい。
【0037】
枠体91は、金属屋根材1の軒側端部1Eに取り付けられた部材である。枠体91には、金属屋根材1の長手方向1Lに延在された長手状の基体910とカバー体911とが含まれている。図示はしないが、基体910及びカバー体911の少なくとも一方には金属屋根材1の軒側端部1Eの外形に適合した凹部が設けられており、この凹部に軒側端部1Eが嵌められた状態で基体910及びカバー体911が互いに連結される。すなわち、基体910とカバー体911とによって金属屋根材1の軒側端部1Eが挟持されることで、枠体91が金属屋根材1の軒側端部1Eに取り付けられている。
【0038】
金属屋根材1の長手方向1L(幅方向)に関する枠体91の延在幅は金属屋根材1の長手方向1Lに関する金属屋根材1の軒側端部1Eの延在幅よりも広くされており、幅方向に関して金属屋根材1の軒側端部1Eの全体に枠体91が一体化されている。これにより、枠体91を介して金属屋根材1の軒側端部1Eに荷重が付与されるとき、その荷重が金属屋根材1の軒側端部1E全体に均等に作用される。
【0039】
荷重付与装置92は、枠体91を介して金属屋根材1の軒側端部1Eに接続されており、金属屋根材1の軒側端部1Eを浮き上げようとする荷重92Lをその軒側端部1Eに付与するための装置である。荷重付与装置92としては、例えばプレス機等のアクチュエータを用いることができる。本実施の形態の強度試験設備9では、荷重付与装置92は、枠体91の上方に配置され、ワイヤ等の接続部材93を介して枠体91に接続され、接続部材93及び枠体91を介して軒側端部1Eを引き上げるように構成されている。しかしながら、荷重付与装置92は、枠体91の下方に配置され、枠体91を介して軒側端部1Eを押し上げるように構成されてもよい。
【0040】
荷重計94は、枠体91と荷重付与装置92との間に介在されて、荷重付与装置92から金属屋根材1の軒側端部1Eに加えられる荷重92Lを測定するセンサである。本実施の形態では、荷重計94は、荷重付与装置92の下部に固定されている。接続部材93は、荷重計94に接続されている。
【0041】
変位計95は、荷重付与装置92から金属屋根材1の軒側端部1Eに荷重92Lが加えられるときにその軒側端部1Eの浮き上がり量1Rを測定するためのセンサである。本実施の形態では、変位計95は、枠体91の上方に位置するように図示しない支持体によって支持されたレーザ変位計によって構成されている。しかしながら、変位計95としては、例えば枠体91又は端部1Eに接触して配置されて機械的に端部1Eの浮き上がり量を測定するセンサ等の他の態様のセンサを用いてもよい。
【0042】
ここで、金属屋根材1が屋根下地に緊結されているとき、風が金属屋根材1に吹き付けると、金属屋根材1の軒側端部1Eを浮き上げようとする荷重が金属屋根材1に作用する。荷重付与装置92の荷重92Lは、このような風の荷重を模したものである。
【0043】
また、過度の強風により金属屋根材1の軒側端部1Eが一定量浮き上がると、金属屋根材1の軒側端部1Eと屋根下地との間の隙間に風が入り込む。このように隙間に入り込んだ風は、金属屋根材1の裏面の広い領域に作用して、金属屋根材1を急激に破壊してしまう。すなわち、金属屋根材1の強度は、金属屋根材1の軒側端部1Eの浮き上がりにくさとの間に大きな相関を有する。荷重計94及び変位計95により荷重92L及び浮き上がり量1Rを測定することで、金属屋根材1の軒側端部1Eの浮き上がりにくさ、すなわち金属屋根材1の強度を評価することができる。
【0044】
<浮き上がり係数について>
次に、
図14は、
図13の強度試験設備9によって測定された荷重92Lに対する端部1Eの浮き上がり量1Rの一例を示すグラフである。金属屋根材1の軒側端部1Eにその軒側端部1Eを浮き上げようとする荷重92Lを加えた場合、荷重92Lが所定値に達するまで金属屋根材1は弾性変形する。
図14に示すように、金属屋根材1が弾性変形しているとき、荷重92Lの増大に合わせて浮き上がり量1Rがほぼ線形に増大する。
【0045】
この浮き上がり量1Rの線形増大領域の傾き、すなわち測定された浮き上がり量1Rの変化量に対する荷重92Lの変化量は、金属屋根材1の端部1Eの浮き上がりにくさを表す指標となる。以下、浮き上がり量1Rの変化量に対する荷重92Lの変化量を、浮き上がり係数[N/mm]と呼ぶ。このような浮き上がり係数を求めることで、金属屋根材1の強度をより確実に評価することができる。なお、
図14の例では、浮き上がり係数は2.7[N/mm]である。
【0046】
<浮き上がり係数と金属屋根材の強度との関係について>
次に、
図15は
図14の浮き上がり係数と金属屋根材1に吹き付ける風の風速との関係を示すグラフであり、
図16は
図15の関係を調査する際に試作した金属屋根材1の緊結位置を示す説明図であり、
図17は
図15の関係を調査する際に試作した金属屋根材1の板状補強部材5の態様を示す説明図である。本発明者らは、下記の表1に示すNo.1−No.35の金属屋根材1を試作して、それらを供試材として送風試験を行い、浮き上がり係数と破壊風速との関係を調査した。
【0047】
送風試験では、5寸(約26.6°)の勾配で設けられた幅2000mm×奥行1184mmの下地材の上に幅908mm×奥行414mmの15枚の供試材(金属屋根材1)を配置して模擬屋根を作成した。模擬屋根における供試材の配置は、
図5のように行った。具体的には、軒方向7に2枚又は3枚の供試材を配置して供試材列を形成するとともに、その供試材列を軒棟方向6に重ねながら6列配置した。軒棟方向6に関して、棟側の供試材から軒側の供試材が154mm突出するように軒側の供試材の上に棟側の供試材を重ねた。軒方向7に関して、供試材の下地材からはみ出る部分は切り落とした。そして、模擬屋根の前方に送風ノズルを設置し、送風ノズルから模擬屋根に風を吹き付けた。送風ノズルは模擬屋根の中心から1m前方の位置に配置し、送風ノズルの中心の高さは模擬屋根の中心の高さに一致させた。なお、供試材の表基材2の材質は0.30mmの塗装溶融Zn−Al合金めっき鋼板であり、芯材4の材質は発泡ウレタンである。破壊風速とは、上記の送風ノズルから金属屋根材1に風を吹き付けたときに、金属屋根材1が破壊されたときの風速である。
図15では、金属屋根材1が破壊されたことを「×」で表し、金属屋根材1が破壊されなかったことを「○」で表している。
【0049】
図15に示すように、浮き上がり係数が6N/mm未満の金属屋根材1は、50m/s以下の風に耐えることができず破壊されてしまった。一方で、浮き上がり係数が6N/mm以上の金属屋根材1は、50m/sの風を吹き付けても破壊されなかった。このため、金属屋根材1の浮き上がり係数が6N/mm以上であるか否かを判定することで、その金属屋根材1が50m/sの風に耐えることができるか否かを判定できることが分かった。
【0050】
表基材2の板厚を増加させること、芯材4の密度を増加させること、芯材4の素材をより強度が強いものに変更すること、裏基材3の強度を増加させること(裏基材の金属化及び板厚増加)板状補強部材5を使用すること及び板状補強部材5にバーリング孔50を設けることの少なくとも1つを実施することで、浮き上がり係数を増加させることができる。
【0051】
図1の態様並びに第1〜第4変形例のように板状補強部材5の使用する場合、表基材2の板厚制限等の条件を勘案しつつ、浮き上がり係数が6N/mm以上となるように板状補強部材5を設けることで、50m/sの風に耐えることができるように金属屋根材1を構成することができる。また、第5変形例のように裏基材3を金属板とする場合、裏基材3を含めた金属屋根材1の全体の条件を勘案して、浮き上がり係数が6N/mm以上となるように金属屋根材1を構成することで、50m/sの風に耐えることができるように金属屋根材1を構成することができる。
【0052】
このような金属屋根材1では、少なくとも1つの板状補強部材5が本体部20の天板20aよりも裏基材3に近い位置で芯材4に埋め込まれるか若しくは裏基材3の外面に接して配置されるか、又は裏基材3が金属板を素材とされているので、耐風圧性能を向上できる。特に、浮き上がり係数が6N/mm以上とされることで、50m/sの風に耐えることができるように金属屋根材1を構成することができる。
【0053】
また、板状補強部材5が軒棟方向6及び軒方向7に関して本体部20の開口の全域にわたって延在されているので、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。
【0054】
さらに、板状補強部材5が裏基材3に接した状態で軒棟方向6に直交する軒方向7に連続的に延在されているので、裏面に潰れが生じて耐風圧性能が低下する可能性を低くすることができる。特に、幅方向に離間して複数の板状補強部材5を配置する態様と比較して製造工程を簡略化できる。
【0055】
さらにまた、複数の板状補強部材5が裏基材3に接した状態で軒方向7に互いに離間して配置されているので、裏面に潰れが生じて耐風圧性能が低下する可能性を低くすることができる。特に、板状補強部材5が幅方向に互いに離間して配置されていることで、必要な耐力を確保しつつ、金属屋根材1の重量増を抑えられている。
【0056】
また、板状補強部材5が、軒棟方向6に関して、金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置から金属屋根材1の軒側端部1Eまで延在されているので、金属屋根材1の重量増大を回避しつつ、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。また、緊結部材8のブレを防止でき、緊結部材8が金属屋根材1から抜けにくくすることができる。
【0057】
さらに、板状補強部材5が芯材4に埋め込まれているので、より確実に板状補強部材5を裏基材3に一体化できるとともに、板状補強部材5が外部に曝されることを回避できる。また、板状補強部材5によって金属屋根材1の裏面側に凹凸又は空隙が形成されることを回避でき、金属屋根材1の耐風圧性能の低下を回避できる。
【0058】
さらにまた、板状補強部材5には、孔開口50aと孔開口50aの縁から立設された縦壁部50bとをそれぞれ有する複数のバーリング孔50が設けられているので、板状補強部材5の曲げ剛性を増大できる。板状補強部材5の曲げ剛性を増大することにより、金属屋根材1全体の曲げ剛性も向上される。
【0059】
また、少なくとも1つのバーリング孔50の孔開口50aは金属屋根材1に緊結部材8が打ち込まれる位置に重ねられているので、緊結部材8が板状補強部材5を容易に貫通でき、作業者の負担を低減できる。
【0060】
さらに、縦壁部50bは表基材2の裏面に当接されているので、金属屋根材1の圧縮強度を増大でき、耐雪性を向上させることができるとともに、落氷時又は太陽光パネル搭載時の表基材2の変形を抑えることができる。
【0061】
さらにまた、板状補強部材5の素材が金属又は繊維強化プラスチックであるので、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。
【0062】
また、板状補強部材5は平板又は凹凸部5aを有する板体であるので、コスト増大を抑えつつ、より確実に金属屋根材1の耐風圧性能を向上できる。特に、凹凸部5aを有する板体を用いることで、金属屋根材1の耐風圧性能をさらに向上できる。
【0063】
さらにまた、裏基材3に接して板状補強部材5が軒側の金属屋根材1(10)の角部10aに重なるように棟側の金属屋根材1(11)を配置するので、棟側の金属屋根材11の裏面に棟側角部10aが過剰に押し当てられても、棟側の金属屋根材11の裏面に潰れが生じにくくすることができる。
【解決手段】本発明による金属屋根材は、屋根の軒棟方向6に関して軒側の金属屋根材1に重ねて配置される金属屋根材であって、金属板を素材とし箱形に形成された本体部20を有する表基材2と、本体部20の開口を塞ぐように表基材2の裏側に配置された裏基材3と、本体部20と裏基材3との間に充填された芯材4と、本体部20の天板よりも裏基材3に近い位置で芯材4に埋め込まれるか又は裏基材3の外面に接して配置された少なくとも1つの板状補強部材5とを備える。