(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6110976
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】ハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー
(51)【国際特許分類】
B65D 90/48 20060101AFI20170327BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20170327BHJP
B60P 3/22 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B65D90/48 D
B60P3/00 S
B60P3/22 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-54014(P2016-54014)
(22)【出願日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】505417149
【氏名又は名称】成田空港給油施設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 文夫
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 公彦
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−136110(JP,A)
【文献】
特開2010−286320(JP,A)
【文献】
特開平05−052700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/48
B60P 3/00
B60P 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクローリー本体と、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置とを備え、
前記ハイドラントバルブのダイナミック試験装置は、
少なくとも、前記ハイドラントバルブの吐出口に接続可能なインテイクカプラと、
前記ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドルと、
エアー供給用カップリングと、
圧力調整バルブと、
燃料流量計と、
航空燃料を貯蔵するためのタンクと、
航空燃料を前記タンクの上部から導入するためのドロップ配管と、を備え、
前記インテイクカプラ、前記圧力調整バルブ、前記燃料流量計及び前記ドロップ配管は、前記ハイドラントバルブから吐出された航空燃料を所定の流量で前記タンク内に導入可能となるように接続され、
前記開閉制御用ハンドルにより前記ハイドラントバルブを開き、航空燃料を所定の流量で流した状態から、前記ハイドラントバルブを閉操作して、航空燃料の流れが停止するまでの時間を計測可能とすることを特徴とするハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー。
【請求項2】
前記ハイドラントバルブの閉鎖が、前記ハイドラントバルブに設けられたランヤード又は前記エアー供給用カップリングにより行われることを特徴とする請求項1に記載のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー。
【請求項3】
前記圧力調整バルブの閉鎖を前記ハイドラントバルブの閉鎖より遅れて閉鎖させることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー。
【請求項4】
前記ハイドラントバルブの開閉と、前記開閉制御用ハンドルの開閉制御と、前記圧力調整バルブの制御が圧縮空気により行われ、前記圧縮空気として、タンクローリーのブレーキ用エアータンクから供給される圧縮空気が用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー。
【請求項5】
ハイドラントシステムにおける空港敷地内の貯蔵タンクからハイドラントバルブを繋ぐ地中に埋設された燃料配管内の燃料の品質管理のために、燃料配管から燃料を抜き取るための装置を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主要な空港で行われている航空機への航空燃料の給油は、ハイドラントシステムと呼ばれる給油方式により行われている。このハイドラントシステムでは、
図7に示すように、航空燃料を一時的に空港敷地内の貯蔵タンク30に貯蔵し、この貯蔵タンク30から燃料供給ポンプ31により地中に埋設された燃料配管32を通じて航空機を駐機するエプロンに圧送する。そして、エプロンに埋設された燃料配管32の出口の航空燃料供給バルブであるハイドラントバルブ33と航空機の給油口を繋いで送油するための燃料給油車両(以下、サービサーと称する)により給油を行う。
【0003】
一方、燃料配管32の出口であるハイドラントバルブ33は、上記ハイドラントシステムにおいて特に重要な装置であり、動作不良等が発生した場合には大事故に繋がる可能性がある。そのため、ハイドラントバルブ33の性能が許容範囲内であることを確保するため、定期的に複数の項目に及ぶ点検を行うことが義務付けられている。
【0004】
この点検の一項目として、緊急停止装置であるランヤードを備えたハイドラントバルブ33又は、エアー制御及びランヤードによるデュアル式の緊急停止装置を備えたハイドラントバルブ33の閉鎖時間に関する検査項目がある。この検査で実施するハイドラントバルブ33の閉鎖試験をダイナミック試験といい、このダイナミック試験については少なくとも1年毎の実施をすることとされている。
【0005】
ダイナミック試験による具体的な検査内容は、エプロンに設置されているハイドラントバルブ33を開いて航空燃料が供給されている運用状態から、ハイドラントバルブ33のランヤードを作動させるか、エアー供給用カップリング220を取り外すことでハイドラントバルブ33の閉操作を行ってから、航空燃料のフローが完全に停止するまでの時間を測定するものである。そして、このフロー停止までの時間を2〜5秒の間と定めており、測定結果がこの範囲内でない場合にはハイドラントバルブ33の調整又は交換が必要であると判断される。
【0006】
このダイナミック試験の実施において、サービサーと試験時の最大流量を許容できるベントシステム及び試験時の燃料を受け入れる容量のある燃料受入車両(以下、燃料受入車両と称する)により測定する方法と、サービサーと航空機を用いて給油中に測定する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サービサーと燃料受入車両によるダイナミック試験では、サービサー及び燃料受入車両の手配が必要となり、また、サービサーと航空機を用いる実際の給油中に行うダイナミック試験においても、航空会社等と運行している航空機やサービサーについて調整が必要であり、空港内に数多く設置してあるハイドラントバルブ33の全てについて航空機やサービサーを用いて行うためには非常に煩雑で時間のかかる準備が必要であった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、サービサーと燃料受入車両、又は、サービサーと航空機を用いることなくハイドラントバルブのダイナミック試験を行うことが可能な、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーは、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
即ち、本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーは、タンクローリー本体と、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置とを備え、前記ハイドラントバルブのダイナミック試験装置は、少なくとも、前記ハイドラントバルブの吐出口に接続可能なインテイクカプラと、前記ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドルと、エアー供給用カップリングと、圧力調整バルブと、燃料流量計と、航空燃料を貯蔵するためのタンクと、航空燃料を前記タンクの上部から導入するためのドロップ配管と、を備え、前記インテイクカプラ、前記圧力調整バルブ、前記燃料流量計及び前記ドロップ配管は、前記ハイドラントバルブから吐出された航空燃料を所定の流量で前記タンク内に導入可能に接続され、前記開閉制御用ハンドルにより前記ハイドラントバルブを開き、航空燃料を所定の流量で流した状態から、エアー供給用カップリングを取り外すことにより、前記ハイドラントバルブの閉操作を行ってから、航空燃料の流れが停止するまでの時間を計測可能とすることを特徴としている。
【0011】
また、このハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーにおいては、前記ハイドラントバルブの閉鎖が、前記エアー供給用カップリング又は前記ハイドラントバルブに設けられたランヤードにより行われることが好ましい。
【0012】
また、このハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーにおいては、前記圧力調整バルブの閉鎖を前記ハイドラントバルブの閉鎖より遅れて閉鎖させることが好ましい。
【0013】
また、このハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーにおいては、前記ハイドラントバルブの開閉と、前記開閉制御用ハンドルの開閉制御と、前記圧力調整バルブの制御が圧縮空気により行われ、前記圧縮空気として、タンクローリーのブレーキ用エアータンクから供給される圧縮空気が用いられることが好ましい。
【0014】
また、ハイドラントシステムにおける空港敷地内の貯蔵タンクからハイドラントバルブを繋ぐ地中に埋設された燃料配管内の燃料の品質管理のために、燃料配管から燃料を抜き取るための装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーによれば、サービサーと燃料受入車両、又は、サービサーと航空機を用いることなくハイドラントバルブのダイナミック試験を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーの一実施形態の概略側面図である。
【
図2】本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーの一実施形態の概略後面図である。
【
図3】本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーの一実施形態の概略上面図である。
【
図5】ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドル、ハイドラントバルブ及び圧力調整バルブへのエアー供給の概略説明図である。
【
図6】本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置の一実施形態の概略構成図である。
【
図7】ハイドラントシステムについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーについて、図面に基づいて以下に詳述する。
図1は、本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーの一実施形態を示した概略側面図であり、
図2はその概略後面図、
図3は概略上面図である。
【0018】
図1、
図2、
図3に示すように、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー1(以下、単にタンクローリー1とも称する)は、タンクローリー本体10と、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置2(以下、単にダイナミック試験装置2と称する)とを備えている。
【0019】
そしてダイナミック試験装置2は、少なくとも、ハイドラントバルブ33の吐出口に接続可能なインテイクカプラ20と、ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドル22と、エアー供給用カップリング220と、圧力調整バルブ23と、燃料流量計24と、航空燃料(以下、単に燃料と略称する)を貯蔵するためのタンク25と、燃料をタンク25の上部から導入するためのドロップ配管26を備えている。そして、インテイクカプラ20、圧力調整バルブ23、燃料流量計24及び前記ドロップ配管26は、ハイドラントバルブ33から吐出された燃料を所定の流量で、タンク25内に導入可能となるように接続されている。
【0020】
図7に示すように、ハイドラントバルブ33は、空港のハイドラントシステムにおいて、航空機を駐機するエプロンに埋設された燃料配管32を通じて燃料供給ポンプ31によって圧送された燃料の出口となる装置である。そして、ハイドラントバルブ33はエアーの供給及び遮断によりバルブの開閉が可能な構造となっている。即ち、圧送された燃料は、ハイドラントバルブ33にエアーを供給することにより開いて供給が開始され、エアーを遮断することにより閉まって供給が停止する。このハイドラントバルブ33へのエアーの供給及び遮断は、後述するハイドラントバルブの開閉制御用ハンドル22の操作により行われる。
【0021】
タンクローリー本体10は、一般に石油や薬品類等の液体を運搬するために用いられる貯蔵用タンクを備えたタンクローリーであれば特に限定することなく用いることができる。そして、本実施形態のタンクローリー1には、タンクローリー本体10にダイナミック試験装置2が取り付けられた構成となっている。なお、タンクローリー本体10は、通常のタンクローリーとしての機能をそのまま残しており、本発明のダイナミック試験装置2を使用しないときには、通常のタンクローリーとして使用することができる。
【0022】
以下に、タンクローリー本体10に取付けられたダイナミック試験装置2の各構成部材について説明する。
【0023】
インテイクカプラ20は、ハイドラントバルブ33の吐出口に接続し、インテイクホース21を通して燃料を供給するための部材である。インテイクカプラ20は、通常、ハイドラントバルブ33から航空機の燃料タンクに燃料を供給するために用いられるサービサーに取付けられている公知のインテイクカプラと同様のものを用いることができる。
【0024】
なお、本実施形態のタンクローリー1では、インテイクカプラ20及びインテイクホース21は、タンクローリー本体10の側面に車幅からはみ出す形で搭載されているため、そのままでは道路交通法の規定により一般公道を走行することができない。そのため、タンクローリー1では、インテイクカプラ20及びインテイクホース21を取り外し可能とし、さらに車幅からはみ出さないようになっている。これにより、取り外した状態で一般公道を走行することができる。
【0025】
ハイドラントバルブ33の開閉制御用ハンドル22は、通常、デットマンハンドルと呼ばれ、ハイドラントバルブ33の開閉を作業者が手元で行うことができる装置である。ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドル22(以下、デットマンハンドルと略称する)には、ハイドラントバルブ33を開閉させるためのエアーが供給されており、デットマンハンドル22を握ることによりエアー供給用カップリング220を介してハイドラントバルブ33にエアーが供給され、ハイドラントバルブ33が開いて燃料の供給を開始させることができ、放すことによりハイドラントバルブ33へのエアーの供給が遮断され、ハイドラントバルブ33が閉鎖して燃料の供給を停止させることができる。デットマンハンドル22は、サービサーに取付けられている公知のデットマンハンドル22と同様のものを用いることができる。
【0026】
圧力調整バルブ23は、インテイクカプラ20を介して供給される燃料の流量を調整するために設けられており、航空機に燃料を供給するときの実際の燃料供給流量を再現するための調整用バルブである。圧力調整バルブ23は、デットマンハンドル22を離してエアーを遮断することにより自動的に閉止するバルブである。
【0027】
燃料流量計24は、圧力調整バルブ23によって調整された燃料の流量を計測して表示するための装置であり、流量計測部240と流量表示部241から構成されている。燃料流量計24は、燃料の流量を正確に計測、表示できるものであれば特に限定されるものではなく、流量計測部240としては、例えば、パルス発信式のものを用いることができ、流量表示部241としては、従来のサービサーで用いられているアナログ表示式カウンター方式のものや、デジタル表示式カウンター方式のものを用いることができる。
【0028】
なお、本実施形態のダイナミック試験装置2においては、燃料のフローの停止を正確に把握する必要があるため、流量計測部240がパルス発信式で、流量表示部241がデジタル表示式カウンター方式の燃料流量計24を好適に用いることができる。なお、これら燃料流量計24を動作させるための電源は、タンクローリー本体10が予め備えている車両用12Vバッテリーから供給することができる。
【0029】
また、燃料流量計24の流量表示部241は、流量を表示するカウンターの他、燃料の総供給量を表示するカウンターが設けられているものが好ましい。これにより、後述するタンク25の総貯蔵量に対する燃料の供給量を容易に把握することができる。
【0030】
タンク25は、燃料流量計24の下流側に設けられ、供給された燃料を貯蔵するためのものであり、航空機の燃料タンクに相当するものである。本実施形態のダイナミック試験装置2において、タンク25はタンクローリー本体10に設けられている運搬用の貯蔵タンクをそのまま用いる。
図4にタンクローリー1のタンク25の概略断面図を示す。本実施形態のタンクローリー1のタンク25内は3室に区切られており、3室はタンク25下部で繋がっている。また、本実施形態のダイナミック試験装置2においては、タンク25内への燃料の供給をタンク25の上部から供給することを特徴としており、タンク25上部にはドロップ配管26を備えている。ドロップ配管26は、タンク25上部からタンク25内の底部付近まで縦方向に配管されており、タンク25内の下部で吐出された燃料は、最終的にタンク25の3室に均等に貯蔵されるようになっている。
【0031】
通常のタンクローリーでは、貯蔵する液体(燃料)はタンク下部からタンク内に供給し、排出もタンク下部の荷卸し配管から行うようになっている。しかしながら、タンク25下部からの燃料供給とした場合、ダイナミック試験における所定の流量及び圧力では、タンク25上部のマンホールより飛散することが懸念される。これに対し、本実施形態のダイナミック試験装置2では、燃料をタンク25上部のドロップ配管26から供給することにより、高圧力及び大流量での安定した燃料供給を実現することができる。
【0032】
上記本実施形態のダイナミック試験装置2の構成のうち、ハイドラントバルブ33、デットマンハンドル22及び圧力調整バルブ23の制御はエアーの供給により行うが、供給するエアーには、タンクローリー本体10に設けられているブレーキ用のエアータンク4のエアーが用いられる。
図5にデットマンハンドル22、ハイドラントバルブ33及び圧力調整バルブ23へのエアー供給の概略説明図を示す。
【0033】
エアータンク4の空気は、エアー供給の信頼性を高めるために、逆止弁等を備えたプロテクションバルブ40及びエアー中の水分等を除去し圧力を調整するためのフィルターレギュレータ41を介してデットマンハンドル22に供給される。この際のプロテクションバルブ40及びフィルターレギュレータ41の設定圧力は、プロテクションバルブ40の開圧力が0.55MPa以上、閉圧力が0.49MPa以下、フィルターレギュレータ41が0.6〜0.8MPaの範囲が考慮される。
【0034】
このように規定の圧力に調整され、デットマンハンドル22に供給されたエアーは、デットマンハンドル22の操作によってハイドラントバルブ33及び圧力調整バルブ23に供給される。デットマンハンドル22とハイドラントバルブ33の間にはエアーレギュレータ42が設けられており、デットマンハンドル22の操作により、ハイドラントバルブ33に適正な圧力でエアーが供給されるようになっている。デットマンハンドル22とハイドラントバルブ33の間のエアーレギュレータ42の設定圧力は、通常、0.5〜0.8MPa程度が考慮される。
【0035】
さらに、デットマンハンドル22は圧力調整バルブ23と接続されている。ここで、本実施形態のエアー供給の構成では、デットマンハンドル22にハイドラントバルブ33及び圧力調整バルブ23が分岐して並列に接続されているため、特に調整をしない場合には、エアーの供給状態からデットマンハンドル22を操作してエアー供給をストップさせるとハイドラントバルブ33と圧力調整バルブ23が同時に閉まる。
【0036】
ここで、本実施形態におけるハイドラントバルブ33のダイナミック試験では、ハイドラントバルブ33の閉操作から燃料流量計24に表示される流量が停止するまでの時間を正確に計測する必要があるが、上記のように、ハイドラントバルブ33と圧力調整バルブ23が同時に閉まると、流量停止までの時間が正確に測定できない場合がある。
【0037】
そのため、本実施形態では、デットマンハンドル22と圧力調整バルブ23に間にエアーレギュレータ43、エアー速度調整器44、逆止弁45及び排気弁46を設けて、圧力調整バルブ23の動作がハイドラントバルブ33の閉鎖より遅れて動作するように調整可能としている。具体的なエアーレギュレータ43の設定圧力としては、デットマンハンドル22とハイドラントバルブ33の間の設定圧力より低い0.1〜0.5MPa程度が考慮される。
【0038】
また、エアータンク4からのハイドラントバルブ33、デットマンハンドル22及び圧力調整バルブ23のエアー供給圧力は、それぞれの間に設けられた圧力計47により逐次確認することができるようになっている。これにより、確実で正確な燃料の流量停止までの時間を測定することが可能となる。
【0039】
以下に、本発明の一実施形態のタンクローリー1を用いたハイドラントバルブ33のダイナミック試験の手順について説明する。
図6に、本発明のダイナミック試験装置2の概略構成図を示す。
【0040】
まず、エプロン内に設けられた、エアー制御及びランヤードによるデュアル式のハイドラントバルブ33付近にタンクローリー1を停車させ、ハイドラントバルブ33の吐出口とインテイクカプラ20を接続する。また、ハイドラントバルブ33にデットマンハンドル22からのエアーホース末端のエアー供給用カップリング220を接続する。
【0041】
次に、タンクローリー1のブレーキ用エアータンク4からデットマンハンドル22にエアーを供給する。そして、動作テスト及び流量調整のため、ハイドラントバルブ33からの燃料吐出及びインテイクカプラ20から燃料がタンク25内に供給可能であることを確認した上で、デットマンハンドル22を握ってハイドラントバルブ33を開き、燃料を圧力調整バルブ23、燃料流量計24を通過させて、タンク25内に導入させる。この段階で、デットマンハンドル22、ハイドラントバルブ33、圧力調整バルブ23のエアー供給状態を確認し、燃料流量計24により燃料の流量状態を確認する。
【0042】
上記動作テストが終了した後、本番の検査としてストップウォッチを準備し、デットマンハンドル22を握りハイドラントバルブ33を開いて燃料をタンク25内に導入する。そして、燃料流量計24を見て所定の燃料流量となったことを確認する。次に、エアー供給用カップリング220を取り外し、ハイドラントバルブ33を閉操作させると同時にストップウォッチを作動させて、燃料流量計24の流量値が0またはマイナス表示になるまでの時間を計測する。これによりハイドラントバルブのダイナミック試験を完了させることができる。そして、この測定結果が2〜5秒の範囲内でない場合にはハイドラントバルブ33の調整又は交換を行う。
【0043】
なお、ダイナミック試験を実施するハイドラントバルブ33には、エアー供給用カップリング220を取り外す操作によりハイドラントバルブ33を閉鎖させるタイプの他、ランヤードと呼ばれる緊急停止用の部材を引くことにより、ハイドラントバルブ33を閉鎖させることができるタイプがある。
【0044】
本発明のタンクローリー1を用いたハイドラントバルブのダイナミック試験では、エアー制御及びランヤードによるデュアル式のハイドラントバルブ33の他、ランヤードのみを備えたタイプのハイドラントバルブ33についても検査を行うことができる。この場合には、上記本番の検査として、デットマンハンドル22を握りハイドラントバルブ33を開いて燃料をタンク25内に導入した状態で、ランヤードを引いてピットバルブ33を閉鎖させる。そして、ランヤードを引いてから燃料流量計24の流量値が0またはマイナス表示になるまでの時間を計測する。これにより、ランヤードを備えたハイドラントバルブ33のダイナミック試験を行うことができる。
【0045】
なお、検査を終えたタンク25内の燃料は、タンクローリー本体10が装備しているタンク25下部に設けられた荷卸し配管及び吸排出用ポンプを通して、所定の貯蔵タンクに容易に移送することができる。
【0046】
本発明のタンクローリー1を用いたハイドラントバルブのダイナミック試験は上記の手順により、サービサーと燃料受入車両、又は、サービサーと航空機を用いることなく、ダイナミック試験を行うことができる。
【0047】
また、本発明によれば、本発明のハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリーを通常のタンクローリーとしての燃料輸送に使用することは勿論、ハイドラントシステムにおける空港敷地内の貯蔵タンク30からハイドラントバルブ33を繋ぐ地中に埋設された燃料配管32内の燃料の品質管理のために、燃料配管32から燃料を抜き取るための装置としても用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ハイドラントバルブのダイナミック試験装置を備えたタンクローリー
10 タンクローリー本体
2 ハイドラントバルブのダイナミック試験装置
20 インテイクカプラ
22 開閉制御用ハンドル(デットマンハンドル)
220 エアー供給用カップリング
23 圧力調整バルブ
24 燃料流量計
25 タンク
26 ドロップ配管
33 航空燃料供給用バルブ(ハイドラントバルブ)
4 エアータンク
【要約】 (修正有)
【課題】ハイドラントシステムにおけるハイドラントバルブのダイナミック試験を行タンクローリーを提供する。
【解決手段】タンクローリー本体10と、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置2とを備え、ハイドラントバルブのダイナミック試験装置は、少なくとも、ハイドラントバルブの吐出口に接続可能なインテイクカプラ20と、ハイドラントバルブの開閉制御用ハンドル22と、それらを接続するエアー供給用カップリングと、圧力調整バルブ23と、燃料流量計24と、航空燃料を貯蔵するためのタンク25と、航空燃料をタンクの上部から導入するためのドロップ配管と、を備え、航空燃料を所定の流量でタンク内に導入可能に接続され、開閉制御用ハンドルによりハイドラントバルブを開き、航空燃料を所定の流量で流した状態から、ハイドラントバルブを閉操作し、航空燃料の流れが停止するまでの時間を計測可能とする。
【選択図】
図2