(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマグネトロンの構成を示す図である。
図2は、上記マグネトロンの陽極部と冷却ジャケットを上面側から見た斜視図である。
図3は、上記マグネトロンの陽極部を上面側から見た斜視図である。
図4は、上記マグネトロンの陽極部の要部断面図である。本実施形態のマグネトロンは、例えば工業用のマイクロ波発振装置に用いられるマグネトロンに適用した例である。
図1に示すように、マグネトロン100は、中心部に配設された真空管部1と、真空管部1を構成する陽極
筒体11の外周部に配設された冷却ジャケット40(冷媒供給部)と、真空管部1と同軸に配設された一対の環状磁石(マグネット)3と、環状磁石3を磁気的に継ぐ一対の磁極4と、環状磁石3が磁気回路を形成する枠状継鉄(ヨーク)5と、フィルタ回路部6と、アンテナ7と、アンテナカバー8と、を備える。フィルタ回路部6は、チョークコイル(図示省略)を含んでいる。なお、アンテナ7とアンテナカバー8は、図示しない絶縁体とともに出力部を構成する。
【0011】
真空管部1は、円筒状の陽極筒体11と、陽極筒体11と同軸上に配置され熱電子放出源となる陰極12と、一対のエンドハット13,14と、陽極筒体11の中心軸10の周りに放射状に配置された複数の板状ベイン21,22と、これらを一つ置きに電気的に接続させるための複数個の均圧環(ストラップリング)31,32と、一端がいずれか1枚の板状ベイン21,22に接続されたマイクロ波放出用のアンテナ7と、を備える。陽極筒体11は、中心軸10に沿って円筒状に延びている。アンテナ7は、銅からなる棒状であり、板状ベイン21,22のいずれか1つから導出されている。アンテナ7は、出力部内を中心軸上に延びている。
【0012】
図2〜
図4に示すように、陽極筒体11は、板状ベイン21,22に直接(直に)冷媒(冷却液例えば、冷却水)を当てる(接触させる)冷媒流路111を備える。具体的には、陽極筒体11は、板状ベイン21,22の固定部位に対応する位置およびその形状に合わせて、板状ベイン21,22に直接冷媒を供給するための冷媒流路111を備える。本実施形態では、冷媒流路111は、陽極筒体11の外周部の板状ベイン21,22の端面21b,22b(板状ベイン21,22の接合端面)の形状に合わせてスリット状に開口している。
冷媒流路111は、陽極筒体11の外周部から板状ベイン21,22が固定された内周部に向かって陽極筒体11内を穿設(掘削)して形成されている溝状の流路である。冷媒流路111は、板状ベイン21,22の端部を露出させた開口部であり、冷媒(冷却液)を板状ベイン21,22に直接接触させることができる。
ただし、冷媒流路111は、陽極筒体11内を外周部から穿設して板状ベイン21,22の端面に達するように設けられているものの、板状ベイン21,22の固定部位外の陽極筒体11の内部空間には連通していない。すなわち、冷媒流路111は、板状ベイン21,22の端面のうち、中央部分から上下および左右に所定の未露出部分(接合端面)を残すように形成されている。これにより、陽極筒体11は、冷媒流路111を備えていても陽極筒体11の内部の気密(真空状態)が保たれる。
【0013】
図1〜
図3に示すように、板状ベイン21,22は、陽極
筒体11の中心軸10に対して放射状かつ等間隔に偶数枚配置されており、陽極
筒体11の内周部と密着している。板状ベイン21,22は、中心軸10の近傍からほぼ放射状に延びて、陽極筒体11の内面に固定されている。
板状ベイン21,22は、それぞれ実質的に長方形の板状に形成されている。陽極筒体11の内面に固定されていない側の板状ベイン21,22の端面(遊端)21a,22aは、中心軸10に沿って延びる同一の円筒面上に配置されていて、この円筒面をベイン内接円筒と呼ぶ。複数の板状ベイン21,22は、円周方向の一つ置きに、ベインの出力側(
図1における上側)の端部にろう付けされた上下それぞれ対となった均圧環31,32によって連結されている。また、これらの板状ベイン21,22は、円周方向の一つ置きに、入力側(
図1における下側)の端部にろう付けされた上下それぞれ対となった均圧環31,32によっても連結されている。均圧環31,32は、これらの板状ベイン21,22を一つ置きに電気的に接続する。ちなみに、マグネトロンの共振周波数は、板状ベイン21,22のろう付けの状態によっても変わる。
【0014】
図1および
図2に示すように、陽極
筒体11の外周部には、冷却ジャケット40が配置されている。冷却ジャケット40は、枠状継鉄5で囲まれる空間の内部に設けられた発振部本体を冷却するための冷却部であり、循環する冷媒と陽極部を接触させる。冷却ジャケット40は、円環状のジャケット上板41、円環状のジャケット中板42、円環状のジャケット下板43、およびジャケット外筒44を備える。冷却ジャケット40の構成部品同士、および冷却ジャケット40と陽極
筒体11とは、各々接合されている。ジャケット外筒44には、冷媒(冷却液)を供給する送入口45と、循環した冷媒を排出する送出口46が、ジャケット中板42の上下2箇所に形成されている。なお、送入口45と送出口46は、上下どちらにしてもよい。送入口45と送出口46には、図示しない管路が接続される。管路(図示省略)の取付け・配置の容易性の観点から送入口45と送出口46の上下位置をずらしてもよい。
【0015】
図1に示すように、陰極12は、螺旋状であり、陽極筒体11の中心軸10に配置されている。また、陰極12の両端は、それぞれエンドハット13,14に固着されている。エンドハット13,14は、板状ベイン21,22に対して中心軸10の外側に配置されている。
また、環状磁石3と枠状継鉄5が、このような発振部本体を囲むように配設されて、磁気回路を形成している。また、陰極12には、図示しないサポートロッドを介して、コイルおよび貫通コンデンサ(図示省略)を有するフィルタ回路6が接続されている。
マグネトロン1の動作時には、陽極管内に生じた高周波電界がアンテナ7によって取り出され、これがマイクロ波として外部へ出力される。
【0016】
以下、上述のように構成されたマグネトロン100の冷却動作について説明する。
図示しない供給パイプに連結された管路(図示省略)に冷却液が供給されると、
図2に示すように、冷却ジャケット40のジャケット外筒44の送入口45に流入する。
冷却ジャケット40に流入した冷却液は、ジャケット上板41とジャケット中板42とジャケット外筒44と陽極
筒体11によって形成される円環状の水路に流れ込む。
上記円環状の水路に流れ込んだ冷却液は、陽極
筒体11に開けられた冷媒流路111にも流入し、陽極筒体11側に露出している板状ベイン21,22のスリット状の端面21b,22bに直接当たって、板状ベイン21,22のスリット状の端面21b,22bを冷却液によって直接冷却する(
図4参照)。板状ベイン21,22の端面21b,22bが直接冷却されることで、板状ベイン21,22全体を効率良く冷却することができる。
そして、冷却ジャケット40内を流通した冷却液は、ジャケット外筒44の送出口46から排出され、最後に図示しない排出用パイプを通して外部の熱変換機(図示省略)に循環され、再冷却されて上記供給用パイプ(図示省略)に供給される。
【0017】
以上説明したように、本実施形態に係るマグネトロン100は、中心軸10に沿って円筒状に延びる陽極筒体11と、陽極筒体11に少なくとも一端が固定され、陽極筒体11の内面から中心軸10に向かって延びる複数の板状ベイン21,22と、を備え、陽極筒体11は、板状ベイン21,22に冷媒を直接当てる冷媒流路111を有する。冷媒流路111は、板状ベイン21,22の端面21b,22b(板状ベイン21,22の接合端面)を露出させた開口部であり、冷媒(冷却液)を板状ベイン21,22に直接接触させることができる。
この構成により、板状ベイン21,22に直接冷媒を当てることで、最も発熱の大きい板状ベイン21,22を効果的に冷却することができる。特に、出力が10kWを超えるような高出力型のマグネトロンに適用して好適である。
また、本実施形態に係るマグネトロン100は、出力が10kW以下のマグネトロンにも適用できる。すなわち、どのような出力のマグネトロンであっても本構造を変えることなく適用できるので、将来的な出力変更や適用条件の変更、取り替え(置換)があっても対応することができ、汎用性を格段に向上させることができる。
【0018】
図5は、本実施形態のマグネトロンを高出力型(15kW)のマグネトロンに適用した場合の効果を説明する図である。
図5の縦軸に板状ベイン21,22の先端(中心軸10に面したベインの近傍付近)温度[℃]、横軸に発振時間[分]をとる。
図5に示すように、従来例(
図5の符号◇参照)に対して、本実施形態(
図5の符号□参照)では、同一条件において板状ベイン21,22の先端温度の上昇が抑制され、飽和温度は10%改善することを確認した。
【0019】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係るマグネトロンの陽極部と冷却ジャケットを上面側から見た斜視図である。
図7は、上記マグネトロンの陽極部を上面側から見た斜視図である。
図8は、上記マグネトロンの陽極部の要部断面図である。
図1〜
図4と同一構成部分には、同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図6に示すように、マグネトロン200は、円筒状の陽極筒体211と、陽極筒体211の中心軸10の周りに放射状に配置された複数の板状ベイン221,222と、これらを一つ置きに電気的に接続させるための複数個の均圧環31,32と、陽極
筒体211の外周部に配設された冷却ジャケット40と、一端がいずれか1枚の板状ベイン221,222に接続されたマイクロ波放出用のアンテナ7と、を備える。
【0020】
図6〜
図8に示すように、陽極筒体211は、板状ベイン221,222に直接冷媒(冷却液)を当てる冷媒流路212,213を備える。具体的には、陽極筒体211は、板状ベイン221,222の固定部位に対応する位置およびその形状に合わせて、板状ベイン221,222に直接冷媒を供給するための冷媒流路212,213を備える。本実施形態では、冷媒流路212,213は、板状ベイン221,222の内部の空隙223(ベイン内流路)(後記)に連通する上下2箇所の孔である。
【0021】
図6および
図7に示すように、板状ベイン221,222は、陽極
筒体211の中心軸10に対して放射状かつ等間隔に偶数枚配置されており、陽極
筒体211の内周部と密着している。板状ベイン221,222は、中心軸10の近傍からほぼ放射状に延びて、陽極筒体211の内面(内周部)に固定されている。
板状ベイン221,222は、それぞれ実質的に長方形の板状に形成されている。陽極筒体211の内面に固定されていない側の板状ベイン221,222の端面(遊端)221a,222aは、中心軸10に沿って延びる同一の円筒面上に配置されている。
【0022】
特に、板状ベイン221,222は、内部に冷却液が通るための矩形形状の空隙223が画成されている。空隙223は、冷媒流路を形成する。なお、板状ベイン221,222の内部に設けられる空隙223は、どのような形状でもよい。空隙223は、下記のようにして作製可能である。例えば、板状ベイン221,222の接合に先立って、板状ベイン221,222の端面221b,222b(陽極筒体211の内周部固定側の接合端面)から内部を掘削して矩形形状の空隙223を形成する。そして、この空隙223が形成された板状ベイン221,222の該当端面を陽極
筒体211の内周部に接合する。
【0023】
図8に示すように、板状ベイン221,222には、内部に冷却液が通るための空隙223が陽極筒体211の内面(内周部)に向かって開口している。陽極
筒体211には、1枚の板状ベイン221,222との接触面内に、冷却水が通るための円形の孔(冷媒流路212,213)が2箇所開けられている。以上の構成がすべての板状ベイン221,222と陽極
筒体211との接触面全てに対して同様となっている。つまり、板状ベイン221,222の枚数が10枚の場合、陽極
筒体211には上下に各10個、計20個の円形の孔(冷媒流路212,213)が開口していることになる。
【0024】
図6に示すように、陽極
筒体211の外周部には、冷却ジャケット40が配置されている。冷却ジャケット40は、円環状のジャケット上板41、円環状のジャケット中板42、円環状のジャケット下板43、およびジャケット外筒44を備える。冷却ジャケット40の構成部品同士、および冷却ジャケット40と陽極
筒体211とは、各々接合されている。ジャケット外筒44には、冷媒(冷却液)を供給する送入口45と、循環した冷媒を排出する送出口46が、ジャケット中板42の上下2箇所に形成されている。
【0025】
以下、上述のように構成されたマグネトロン200の冷却動作について説明する。
図6に示すように、冷却ジャケット40のジャケット外筒44の送入口45に流入した冷却液は、ジャケット上板41とジャケット中板42とジャケット外筒44と陽極
筒体211によって形成される円環状の水路に流れ込む。
上記円環状の水路に流れ込んだ冷却液は、陽極
筒体211に開けられた円形の孔(冷媒流路212,213)のうち、上部側の円形の孔(冷媒流路212)すべてに並列に流れ込む。そして、冷却液はすべての板状ベイン221,222の内部の空隙223に並列に流れ込んだ後、陽極
筒体211に開けられた円形の(冷媒流路212,213)のうち、下部側の円形の孔(冷媒流路213)すべてに並列に通った後、ジャケット中板42とジャケット下板43とジャケット外筒44と陽極
筒体211によって形成される円環状の水路に流れ込み、最後にジャケット外筒44の送出口46から排出される。
【0026】
本実施形態では、板状ベイン221,222内に冷媒流路となる空隙223を設けることで、板状ベイン221,222の内部まで直接冷媒を供給することができ、最も発熱の大きい板状ベイン221,222をより一層効果的に冷却することができる。
前記
図5に示すように、第1の実施形態(
図5の符号□参照)では、従来例(
図5の符号◇参照)に対して、飽和温度を10%改善することを確認したが、第2の実施形態(
図5の符号△参照)では、更に30%改善することを確認できた。特に、出力が10kWを超えるような高出力型のマグネトロンに適用して好適である。
また、本実施形態に係るマグネトロン200は、第1の実施形態と同様に、どのような出力のマグネトロンであっても本構造を変えることなく適用できるので、将来的な出力変更や適用条件の変更、取り替え(置換)があっても対応することができ、汎用性を格段に向上させることができる。
【0027】
ここで、マグネトロン動作時には、陽極管内に生じた高周波電界がアンテナ7によって取り出され、これがマイクロ波として外部へ出力される。本実施形態では、板状ベイン221,222内に流路となる空隙223を設ける構成であるので、板状ベイン221,222の外観形状は、板状ベイン21,22(
図4参照)と同一である。特に、板状ベイン221,222の表面は、空隙223を設けていても凹凸等がなく、平坦に整えられているので、陽極管内で生じたマイクロ波が入力側へ漏洩してしまうことはない。
【0028】
[変形例]
図9および
図10は、第2の実施形態に係るマグネトロンの変形例を示す図である。
<変形例1>
図9に示すように、変形例1のマグネトロン200Aは、円筒状の陽極筒体211と、陽極筒体211の中心軸10の周りに放射状に配置された複数の板状ベイン221A,222Aと、を備える。
板状ベイン221A,222Aは、内部に冷却液が通る冷媒流路223A(連通路,ベイン内流路)が形成されている。冷媒流路223Aは、断面視でコの字形であり、開口部が陽極筒体211の冷媒流路212,213に連通する。
図9に示すように、冷媒流路223Aは、板状ベイン221A,222Aの3辺に沿って隅近傍まで配置される。
冷媒流路223Aは、下記のようにして作製可能である。例えば、板状ベイン221A,222Aの端面(陽極筒体211の内周部固定側の接合端面)の上下2箇所から内部に平行に横連通穴223A
1,223A
2を穿設(掘削)し、さらにこの2つの横連通穴223A
1,223A
2の端部を上下に連通するように、板状ベイン221A,222Aの底面から内部に縦連通穴223A
3を穿設する。なお、縦連通穴223A
3が開口した板状ベイン221A,222Aの底面は、ベインプラグ(図示省略)により塞ぐ。また、ベインプラグの表面は、板状ベイン221A,222Aの底面の面一となるように埋め込まれる。なお、掘削は、加工コストがかかるので、金型を用いて冷媒流路223Aを有する板状ベイン221A,222Aを作製してもよい。
【0029】
図9に示すように、板状ベイン221A,222Aには、内部に冷却液が通るための冷媒流路223Aが陽極筒体211の内面(内周部)に向かって開口している。陽極
筒体211には、1枚の板状ベイン221A,222Aとの接触面内に、冷却水が通るための円形の孔(冷媒流路212,213)が2箇所開けられている。板状ベイン221A,222Aの冷媒流路223Aの上下2箇所の開口部は、陽極
筒体211の冷媒流路212,213に連通している。以上の構成がすべての板状ベイン221A,222Aと陽極
筒体211との接触面全てに対して同様となっている。
【0030】
以上の構成において、前記
図6に示すように、冷却ジャケット40のジャケット外筒44の送入口45に流入した冷却液は、ジャケット上板41とジャケット中板42とジャケット外筒44と陽極
筒体211によって形成される円環状の水路に流れ込む。
上記円環状の水路に流れ込んだ冷却液は、陽極
筒体211に開けられた円形の孔(冷媒流路212,213)のうち、上部側の円形の孔(冷媒流路212)すべてに並列に流れ込む。そして、
図9に示すように、冷却液はすべての板状ベイン221A,222Aの内部の冷媒流路223Aに並列に流れ込んだ後、陽極
筒体211に開けられた円形の(冷媒流路212,213)のうち、下部側の円形の孔(冷媒流路213)すべてに並列に通る。その後、前記
図6に示すように、ジャケット中板42とジャケット下板43とジャケット外筒44と陽極
筒体211によって形成される円環状の水路に流れ込み、最後にジャケット外筒44の送出口46から排出される。
【0031】
変形例1では、板状ベイン221,222内に冷媒流路223Aを設けることで、第2の実施形態と同様に、板状ベイン221A,222Aの内部まで直接冷媒を供給することができ、最も発熱の大きい板状ベイン221A,222Aをより一層効果的に冷却することができる。
なお、上述したように、縦連通穴223A
3が開口した板状ベイン221A,222Aの底面は、平坦に整えられているので、陽極管内で生じたマイクロ波が入力側へ漏洩してしまうことはない。
また、後記する変形例2と比較して、変形例2より冷媒流路223Aを広くすることができる。より詳細には、長方形の板状ベイン221,222の形状にあわせて、四隅に近いところまで冷媒流路223Aを形成することができるので、板状ベイン221A,222Aをより一層効果的に冷却することができる。
【0032】
<変形例2>
図10に示すように、変形例2のマグネトロン200Bは、円筒状の陽極筒体211と、陽極筒体211の中心軸10の周りに放射状に配置された複数の板状ベイン221B,222Bと、を備える。
板状ベイン221B,222Bは、内部に冷却液が通る冷媒流路223B(連通路,ベイン内流路)が形成されている。冷媒流路223Bは、断面視でVの字形であり、開口部が陽極筒体211の冷媒流路222,223に連通する。冷媒流路223Bは、板状ベイン221B,222Bの向かい合う上下2辺から離れる方向にそれぞれ傾いて、内部で交差する。
冷媒流路223Bは、下記のようにして作製可能である。例えば、板状ベイン221B,222Bの端面(陽極筒体211の内周部固定側の端面)の上下2箇所から内部に下降/上昇するように傾斜する横連通穴223B
1,223B
2を穿設(掘削)する。または、低コストな金型を用いて冷媒流路223Bを有する板状ベイン221B,222Bを作製してもよい。この2つの横連通穴223B
1,223B
2の端部は、板状ベイン221B,222Bの内部で交差することでVの字形の冷媒流路223Bを形成する。
【0033】
変形例2では、板状ベイン221B,222B内に冷媒流路223Bを設けることで、第2の実施形態と同様に、板状ベイン221B,222Bの内部まで直接冷媒を供給することができ、最も発熱の大きい板状ベイン221B,222Bをより一層効果的に冷却することができる。
また、変形例2では、板状ベイン221B,222Bの端面のみを穿設(掘削)して冷媒流路223Bを形成しているので、板状ベイン221B,222Bの外観形状は、板状ベイン21,22(
図4参照)と同一である。前記変形例1では、縦連通穴223A
3(
図9参照)が開口した板状ベイン221A,222Aの底面を平坦に整える必要があるが、変形例2では、板状ベイン221B,222Bの内部にVの字形の冷媒流路223Bを形成するので、板状ベイン221B,222Bの底面はそもそも平坦に保たれている。冷媒流路223Bを設けることによる凹凸等がなく、平坦に整えられているので、陽極管内で生じたマイクロ波が入力側へ漏洩してしまうことはない。
【0034】
なお、本発明は、上記各実施形態および変形例に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜その構成を変更することができる。
【0035】
例えば、板状ベインや均圧環の材質、形状、構造など、さらに冷媒流路、ベイン内流路の形状、配置個数などは一例であってどのようなものを適用してもよい。
【0036】
上記した各実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【解決手段】マグネトロン100は、中心軸10に沿って円筒状に延びる陽極筒体11と、陽極筒体11に少なくとも一端が固定され、陽極筒体11の内面から中心軸10に向かって延びる複数の板状ベイン21,22と、を備え、陽極筒体11は、板状ベイン21,22に冷媒を直接当てる冷媒流路111を有する。冷媒流路111は、板状ベイン21,22の端面21b,22b(板状ベイン21,22の接合端面)を露出させた開口部であり、冷媒を板状ベイン21,22に直接接触させることができる。