(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スプールは、前記流量制御状態では流量制御信号圧が高まるのに伴って傾転駆動圧を低くする方向に移動し、前記馬力制御状態ではポンプ吐出圧が高まるのに伴って傾転駆動圧を高める方向に移動することを特徴とする請求項2または3に記載のポンプ容積制御装置。
前記スプールは、前記流量制御状態では流量制御信号圧が高まるのに伴って傾転駆動圧を高める方向に移動し、前記馬力制御状態ではポンプ吐出圧が高まるのに伴って傾転駆動圧を高める方向に移動することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のポンプ容積制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すポンプ容積制御装置10は、油圧ショベルに搭載される油圧機器の圧力源に設けられ、可変容積ポンプ100(以下、単に「ポンプ100」と称する。)のポンプ容積(ポンプ押しのけ容積)を制御するものである。
【0017】
ポンプ100は、タンク101の作動油を吸込通路103を通じて吸込み、圧力Pに加圧した作動油を吐出通路104に吐出する。吐出通路104を通じて送られる作動油は、油圧ショベルのブームを駆動する油圧シリンダ(図示省略)に供給される。
【0018】
なお、作動油は、ブームに限らず、アームまたはバケット等を駆動する油圧シリンダや走行、旋回等を駆動する油圧モータに供給される構成としてもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、作動流体として作動油を用いるが、作動油の代わりに例えば水溶性代替液等を用いてもよい。
【0020】
ポンプ100は、エンジン109によって駆動される斜板式ピストンポンプが用いられる。ポンプ100は、斜板15の傾転角に応じてポンプ容積を変更可能に構成されている。
【0021】
ポンプ容積制御装置10は、斜板15の傾転角を変える傾転ピストン16と、この傾転ピストン16に導かれる傾転駆動圧Pcを調節するレギュレータ30と、を備える。
【0022】
油圧ショベルに搭載されるコントローラ(図示省略)は、オペレータのレバー操作量に基づく操作信号を受信し、この操作信号に応じて油圧回路に設けられる電磁比例制御弁(図示省略)等の作動を制御することで、パイロット油圧としての流量制御信号圧Piを調節するようになっている。この流量制御信号圧Piがポンプ容積制御信号通路108を通じてレギュレータ30に導かれる。なお、本実施形態では、電磁比例制御弁を用いて流量制御信号圧Piを調節するが、オペレータのレバー操作量をパイロットバルブ等で直接パイロット油圧として流量制御信号圧Piを調節するようにしてもよい。
【0023】
レギュレータ30には、他の信号圧としてポンプ100のポンプ吐出圧Pが導かれる。レギュレータ30は、ポンプ吐出圧Pに応じて流量制御状態と馬力制御状態とに切換わる。
【0024】
ポンプ吐出圧Pが設定値より低い流量制御状態では、レギュレータ30は流量制御信号圧Piに応じて傾転ピストン16に導かれる傾転駆動圧Pcを調節する。
【0025】
一方、ポンプ吐出圧Pが設定値以上に高まると、流量制御状態から馬力制御状態に切換わる。馬力制御状態では、レギュレータ30はポンプ吐出圧Pに応じて傾転ピストン16に導かれる傾転駆動圧Pcを調節する。
【0026】
さらに、油圧ショベルのコントローラは、高負荷モードと低負荷モードに切換えられる。高負荷モードでは後述するようにポンプ100の負荷を高めるために馬力制御信号圧Ppwが高く調節される一方、低負荷モードではポンプ100の負荷を低くするために馬力制御信号圧Ppwが低められる。レギュレータ30には、馬力制御信号通路107を通じて馬力制御信号圧Ppwが導かれる。コントローラは、運転モードに応じて油圧回路に設けられる電磁弁(図示省略)の作動を制御することで馬力制御信号圧Ppwを高負荷モード用信号圧と低負荷モード用信号圧に切換える。
【0027】
図2は、ポンプ100の断面図である。ポンプ100は、エンジン109によって回転駆動されるシリンダブロック12と、シリンダブロック12に設けられる複数のシリンダ14内を往復動するピストン13と、ピストン13が追従する斜板15と、を備える。
【0028】
シリンダブロック12にはシャフト1が固定されている。シャフト1の先端部はポンプハウジング17に軸受2を介して回転自在に支持され、シャフト1の中央部はポンプカバー19に軸受3を介して回転自在に支持される。シャフト1の基端部1Aにエンジン109の動力が伝達される。
【0029】
斜板15はポンプハウジング17に傾転軸受9を介して揺動自在に支持される。斜板15の傾転角が変わることにより、ピストン13のシリンダ14に対するストロークが変わり、ポンプ容積が変わる。
【0030】
斜板15を傾転方向に付勢する傾転付勢手段として、斜板15の揺動中心軸Sがシリンダブロック12の回転軸Cに対してオフセットされる。斜板15は各ピストン13から受ける反力を合わせた力によって傾転角が大きくなる方向に付勢される。
【0031】
なお、上述した構成に限らず、傾転付勢手段として、斜板15とポンプハウジング17の間にスプリングやピストンを介装してもよい。
【0032】
傾転ピストン16は、ポンプハウジング17に形成される傾転シリンダ18に摺動自在に収容される。傾転ピストン16及び傾転シリンダ18は、シリンダブロック12の回転軸C及び後述するスプール軸Oと平行に延びるように配置される。
【0033】
傾転ピストン16の先端は、シュー8を介して斜板15の突出部16Aに摺接する。傾転ピストン16と傾転シリンダ18の間には傾転駆動圧室6が画成される。レギュレータ30から傾転駆動圧室6に導かれる傾転駆動圧Pcが高まるのに伴って傾転ピストン16が
図1にて右方向に移動し、シュー8を介して斜板15を傾転角が小さくなる方向に傾転させる。
【0034】
ポンプハウジング17には傾転シリンダ18内に突出するプラグ7が螺合して設けられる。傾転ピストン16の基端がプラグ7の先端面に当接することにより、斜板15の最大傾転角が規定される。
【0035】
図2、
図3に示すように、レギュレータ30は、ポンプハウジング17に取り付けられるレギュレータハウジング29を備える。
【0036】
レギュレータハウジング29の内部には、ポンプ容積切換弁40、流量制御スプリング49、馬力制御ピストン60、馬力制御スプリング31、32、及びロッド35等が、ポンプ容積切換弁40が有するスプール41のスプール軸O方向に並んで収容される。
【0037】
ポンプ容積切換弁40は、筒状のスリーブ50と、このスリーブ50に対してスプール軸O方向について摺動自在に収容されるスプール41と、を備える。
【0038】
スリーブ50の基端部にはプラグ56が螺合して取り付けられる。スプール41は、流量制御スプリング49によってプラグ56に向かう方向(
図3にて左方向)に付勢され、スプール41の基端面がプラグ56の先端面に当接することによってそのストロークが規制される。
【0039】
スプール41にはその基端に開口して軸方向に延びる軸孔43が形成される。この軸孔43にはピン58が摺動自在に収容される。スプール41の軸孔43とピン58の先端の間には信号圧室55が画成される。スプール41及びピン58は、その基端がプラグ56に当接することによって、
図2、
図3にて左方向に移動することが規制される。
【0040】
信号圧室55には、オペレータのレバー操作量に応じた流量制御信号圧Piがポンプ容積制御信号通路108(
図1参照)を通じて導かれる。
【0041】
ポンプ容積制御信号通路108は、レギュレータハウジング29のポート28と、スリーブ50の信号圧ポート53と、スプール41の背圧ポート44と、によって構成される。レギュレータハウジング29のポート28には、これに接続する配管(図示省略)を通じて流量制御信号圧Piが導かれる。
【0042】
スリーブ50とスプール41の基端部とプラグ56の間には背圧室57が画成される。この背圧室57は背圧ポート54を通じて
ポンプ100のレギュレータハウジング29内の中央室21に連通される。中央室21はドレン通路(図示省略)を通じてタンク101(
図1参照)と連通している。背圧室57がタンク101に連通することにより、スプール41が円滑に移動するようになっている。
【0043】
スリーブ50には、傾転ピストン16の傾転駆動圧室6(
図2参照)に連通する傾転駆動圧ポート52と、元圧通路105(
図1参照)に通じる元圧ポート51が形成される。元圧ポート51には元圧通路105(
図1参照)を通じてポンプ吐出圧Pが元圧として導かれる。
【0044】
スプール41には、レギュレータハウジング29内の中央室21を通じてタンク101に連通するタンクポート48が形成される。
【0045】
スプール41の外周には環状に突出するランド部47が形成される。このランド部47がスプール軸O方向に移動することにより、傾転駆動圧ポート52に対して元圧ポート51とタンクポート48が選択的に連通し、傾転駆動圧ポート52に生じる傾転駆動圧Pcが調節される。
【0046】
スプール41が流量制御スプリング49に付勢されることによって
図2、
図3に示すように左方向に移動した状態では、元圧ポート51と傾転駆動圧ポート52とが連通し、元圧通路105から導かれるポンプ吐出圧Pによって傾転駆動圧ポート52に導かれる傾転駆動圧Pcが上昇する。傾転駆動圧Pcが上昇するのに応じて傾転ピストン16が斜板15を傾転角が小さくなる方向に傾転させることにより、ポンプ容積が減少する。
【0047】
流量制御信号圧Piが高まるのに伴って、スプール41が
図2、
図3において右方向に移動することで、タンクポート48と傾転駆動圧ポート52とが連通し、タンク通路106を通じてタンクポート48に導かれるタンク圧Ptによって傾転駆動圧ポート52に導かれる傾転駆動圧Pcが低下する。傾転駆動圧Pcが低下するのに応じて傾転ピストン16が斜板15を傾転角が大きくなる方向に傾転させることにより、ポンプ容積が増大する。
【0048】
スリーブ50はレギュレータハウジング29内にスプール軸O方向に移動可能に挿入されており、スリーブ50の位置をスプール軸O方向について調整できるようになっている。
【0049】
ポンプ容積切換アジャスタ機構59は、スリーブ50の基端部の外周に形成されるネジ部64と、このネジ部64に螺合するカバー45及び緩み止め用のナット46と、を備える。カバー45は、レギュレータハウジング29の開口端に当接するように固定される。
【0050】
ポンプ容積切換アジャスタ機構59によってカバー45に対するスリーブ50の螺合位置が調整されることにより、スリーブ50がポンプハウジング17に対してスプール軸O方向に移動する。これにより、流量制御スプリング49のバネ荷重が変わり、流量制御信号圧Piに応じてスプール41がポジションa、b(
図1参照)に切換わるタイミングが調整される。
【0051】
なお、これに限らず、レギュレータハウジング29とスリーブ50は、一体形成してもよい。
【0052】
スプール41は、スリーブ50の開口端から突出する先端部を有し、この先端部にスプール側バネ受け42が取り付けられる。このスプール側バネ受け42にコイル状の流量制御スプリング49の一端が着座する。
【0053】
レギュレータハウジング29内には、ロッド35が設けられており、ロッド35の外周面に摺動可能に筒状のリテーナ25が取り付けられている。リテーナ25には軸孔26がスプール軸O上に延びるように形成されており、円柱状のロッド35はその外周面がリテーナ25の軸孔26に摺動自在に挿入される。
【0054】
リテーナ25にはリテーナ側バネ受け24が取り付けられ、このリテーナ側バネ受け24に流量制御スプリング49の一端が着座する。流量制御スプリング49は、スプール側バネ受け42とリテーナ側バネ受け24の間に圧縮して介装される。
【0055】
リテーナ25には、リンク71が固定されている。リンク71は、リテーナ25と傾転ピストン16を連結する部材であり、レギュレータハウジング29内とポンプハウジング17内にわたって設けられる。リンク71の一端は、リテーナ25の外周に嵌合して結合される。リンク71の他端は、傾転ピストン16の外周溝に嵌合して結合される。
【0056】
リンク71及び傾転ピストン16は、斜板15が傾転する動作に連動してスプール軸O方向にリテーナ25を移動させるリテーナ移動機構70を構成する。
【0057】
なお、リテーナ移動機構70は、上述した構成に限らず、リテーナ25を傾転ピストン16を介さずに斜板15に連動させる構成としてもよい。
【0058】
図2に示すように、ポンプハウジング17には、リンク71を摺動自在に支持するガイド72が設けられる。ロッド状のガイド72の基端部はポンプハウジング17に固定され、ガイド72の先端部はリンク71の孔に摺動自在に挿入される。ガイド72はスプール軸Oと平行に延びるように形成されている。
【0059】
リンク71がガイド72に摺動自在に支持されることにより、リテーナ25、流量制御スプリング49、及び馬力制御スプリング31、32がスプール軸Oに対して振れる動きを抑えられる。
【0060】
レギュレータ30は、ポンプ100のポンプ吐出圧Pに応じてスプール41をスプール軸O方向に移動して傾転駆動圧Pcを調節することにより、ポンプ100の負荷を抑える馬力制御を行う機能も有している。
【0061】
この馬力制御に関して、
図2、
図3に示すように、レギュレータ30は、ポンプ吐出圧Pに応じてスプール軸O方向に移動する馬力制御ピストン60と、斜板15の傾転角に応じて馬力制御ピストン60をスプール軸O方向に付勢する馬力制御スプリング31、32と、馬力制御ピストン60とスプール41との間に設けられるロッド35と、を備える。
【0062】
ロッド35はその先端が間隙39を持ってスプール41の先端に対向するように配置される。
【0063】
ロッド35の基端部には、環状に突出する鍔部38が形成される。この鍔部38とリテーナ25の間に馬力制御スプリング31、32が介装される。
【0064】
馬力制御スプリング31、32は、互いに線材の巻径が異なるコイル状に形成される。巻径の大きい馬力制御スプリング31の内側に巻径の小さい馬力制御スプリング32が配置される。
図2に示すように斜板15の傾転角が最大になった状態で、巻径の大きい馬力制御スプリング31はリテーナ25とロッド35の間に圧縮される一方、巻径の小さい馬力制御スプリング32はその一端がリテーナ25から離れている。斜板15の傾転角が所定値より小さくなると、馬力制御スプリング32の両端がリテーナ25とロッド35に当接して圧縮される。これにより、馬力制御ピストン60に付与される馬力制御スプリング31、32のバネ力が段階的に高まる。
【0065】
なお、これに限らず、リテーナ25とロッド35の間に1本または3本以上の馬力制御スプリングを設けてもよい。
【0066】
図2に示すように、レギュレータハウジング29には、馬力制御スプリング31のバネ荷重を調整するアジャスタスプリング82及び馬力制御アジャスタ機構83が設けられる。
【0067】
コイル状のアジャスタスプリング82は、ロッド35に連結されるアジャスタリンク81と、このアジャスタリンク81に摺動自在に挿入されるアジャスタロッド84との間に圧縮して介装される。
【0068】
レギュレータハウジング29の一端を閉塞するカバー86にアジャスタスクリュ85が螺合して設けられ、このアジャスタスクリュ85はアジャスタロッド84の基端に当接する。アジャスタスクリュ85には緩み止め用ナット87が締結される。
【0069】
アジャスタスプリング82、アジャスタロッド84、及びアジャスタスクリュ85は、同一軸上に配置される。
【0070】
なお、アジャスタロッド84とアジャスタスクリュ85は、一体形成してもよい。
【0071】
カバー86に対するアジャスタスクリュ85の螺合位置を変えてアジャスタスプリング82のバネ荷重を調節することにより、ロッド35がスプール軸O方向に移動し、馬力制御スプリング31のバネ荷重が調節される。
【0072】
図2、
図3に示すように、レギュレータハウジング29内には筒状の馬力制御シリンダ76が設けられ、この馬力制御シリンダ76に馬力制御ピストン60が摺動自在に挿入される。
【0073】
なお、これに限らず、レギュレータハウジング29と馬力制御シリンダ76は、一体形成してもよい。
【0074】
馬力制御シリンダ76から突出する馬力制御ピストン60の先端面がロッド35の基端面に当接する。
【0075】
なお、これに限らず、ロッド35を馬力制御ピストン60と一体形成してもよい。
【0076】
馬力制御ピストン60には軸孔62が形成され、この軸孔62にピン61が挿入される。軸孔62内にはピン61の先端面によって第一圧力室63が画成される。この第一圧力室63は、馬力制御ピストン60の通孔67と、馬力制御シリンダ76の通孔77と、レギュレータハウジング29の通孔27(
図2参照)とを通じて吐出通路104(
図1参照)に連通する。第一圧力室63には、吐出通路104を通じてポンプ吐出圧Pが導かれる。
【0077】
ポンプ吐出圧Pが上昇するのに伴って、馬力制御ピストン60が
図2、
図3にて左方向に移動し、馬力制御スプリング31、32のバネ力が大きくなる。
【0078】
馬力制御ピストン60の外周には、環状の段付き部65が形成される。この段付き部65と馬力制御シリンダ76の間には第二圧力室66が画成される。
【0079】
第二圧力室66には、前述したようにコントローラの指令により運転モードを切換える馬力制御信号圧Ppwが馬力制御信号通路107(
図1参照)を通じて導かれる。馬力制御信号通路107は、レギュレータハウジング29の
通孔22と、馬力制御シリンダ76の通孔78と、によって構成される。
【0080】
馬力制御信号圧Ppwが上昇すると、馬力制御ピストン60が
図2、
図3にて右方向に移動し、馬力制御スプリング31、32のバネ力が小さくなる。
【0081】
スプール41とリテーナ25とロッド35と馬力制御ピストン60とは、スプール軸O上に並ぶように配置される。これにより、ロッド35の両端には、スプール41と馬力制御ピストン60とからの力が同一軸上に作用することとなる。
【0082】
なお、上述した構成に限らず、ロッド35をレギュレータハウジング29に対して案内する機構を設けてもよい。この場合には、ロッド35をスプール軸Oに対してオフセットすることができる。
【0083】
次に、ポンプ容積制御装置10の動作について説明する。
【0084】
図2〜
図5を参照して、スプール41とロッド35の間に間隙39が設けられ、流量制御信号圧Piと流量制御スプリング49のバネ力が釣り合うようにスプール41が移動し、傾転駆動圧室6に導かれる傾転駆動圧Pcが調節される流量制御状態の動作について説明する。
【0085】
図2、
図3には、油圧ショベルのエンジン109の運転が停止されたポンプ100の停止状態を示す。この停止状態では、流量制御信号圧Piが低いため、スプール41は流量制御スプリング49のバネ力によって左方向に移動し、元圧ポート51と傾転駆動圧ポート52とが連通している。ポンプ100の運転が停止さているので、ポンプ吐出圧Pが略ゼロになるため、傾転ピストン16がプラグ7に当接し、斜板15が最大傾転角位置に保持される。
【0086】
図4は、油圧ショベルのエンジン109が運転され、ポンプ100が作動し、ブームを駆動する油圧シリンダが停止したポンプ100のスタンバイ状態を示す。このスタンバイ状態では、信号圧室55に導かれる流量制御信号圧Piが低く調節されるようなっており、元圧ポート51と傾転駆動圧ポート52とが連通したまま、ポンプ100が運転されるのに伴って元圧通路105から導かれるポンプ吐出圧Pが高まることによって、傾転駆動圧ポート52から傾転駆動圧室6に導かれる傾転駆動圧Pcが上昇する。その結果、傾転駆動圧Pcを受ける傾転ピストン16は矢印Bで示すように右方向に移動し、斜板15が矢印Cで示す方向に傾転し、斜板15がストッパ5に当接する最小傾転角位置に保持される。
【0087】
図5は、ポンプ100から吐出される作動油によって油圧シリンダが伸縮作動するポンプ100の流量制御状態を示す。この流量制御状態では、オペレータのレバー操作に基づいて信号圧室55に導かれる流量制御信号圧Piが高められる。このように流量制御信号圧Piが高められると、スプール41は流量制御スプリング49のバネ力に抗して右方向に移動し、タンクポート48と傾転駆動圧ポート52とが連通する。これにより、タンクポート48から導かれるタンク圧Ptによって傾転駆動圧ポート52から傾転駆動圧室6に導かれる傾転駆動圧Pcが低くなる。その結果、傾転駆動圧Pcを受ける傾転ピストン16は
図5に矢印Dで示すように左方向に移動し、斜板15が矢印Eで示す方向に傾転し、傾転ピストン16がプラグ7に当接する最大傾転角位置に向かって移動する。このときに傾転ピストン16に連結されたリンク71は
図5において左方向に移動することにより、リテーナ25を介して流量制御スプリング49が圧縮される。流量制御スプリング49のバネ力とスプール41が受ける流量制御信号圧Piとが釣り合うようにリテーナ25及び傾転ピストン16が移動することで斜板15が傾転し、ポンプ容積が制御される。
【0088】
図7は、流量制御状態において流量制御信号圧Piとポンプ100から油圧シリンダ(図示省略)に供給される制御流量Qとの関係を示す特性図である。これに示すように、流量制御信号圧Piが高まるのに伴って制御流量Qが次第に高まる正流量制御が行われる。なお、上述した斜板15がストッパ5に当接するスタンバイ状態は、
図7の特性図において流量制御信号圧Piが最低設定値となる点Lにおける作動状態である。傾転ピストン16がプラグ7に当接する最大傾転角位置にある流量制御状態は、
図7の特性図において流量制御信号圧Piが最大設定値まで高められる点Hにおける作動状態である。
【0089】
ポンプ容積制御装置10は、スプール41とロッド35の間に間隙39が設けられる流量制御状態では、
図7に示すように、流量制御信号圧Piが高くなるほど制御流量Qが増えるように、ポンプ100から油圧シリンダに供給される作動油の制御流量Qを調整する。
【0090】
ところで、ポンプ100のポンプ吐出圧P(負荷)が設定値より高まると、
図6に示すように第一圧力室63でポンプ吐出圧Pを受ける馬力制御ピストン60がスプール41に近づく方向に移動する。
図6は、馬力制御ピストン60が移動してロッド35の先端がスプール41に当接した馬力制御状態を示す。
【0091】
この馬力制御状態では、流量制御信号圧Piと、ポンプ吐出圧Pに基づく信号圧と、流量制御スプリング49のバネ力と、馬力制御スプリング31、32のバネ力等とが釣り合うように、馬力制御ピストン60とロッド35とスプール41が一緒に移動する。
【0092】
図6に示す状態からさらにポンプ吐出圧Pが高まると、馬力制御ピストン60がロッド35を介してスプール41を押すことにより、スプール41が左方向に移動し、タンクポート48と傾転駆動圧ポート52とが連通した状態から元圧ポート51と傾転駆動圧ポート52が連通した状態に切換わる。これにより、傾転駆動圧Pcが高められ、傾転ピストン16がプラグ7から離れて傾転角を小さくする矢印Fで示す右方向に移動する。このときに傾転ピストン16に連結されたリンク71は
図6において右方向に移動することにより、リテーナ25を介して流量制御スプリング49が伸長されるとともに、馬力制御スプリング31、32が圧縮される。強制的にスプール41を移動させることによって、傾転ピストン16を矢印F方向へ移動させ、斜板15を矢印G方向へ移動させることとなり、ポンプ容積が減少する。
【0093】
図8は、馬力制御状態においてポンプ吐出圧Pとポンプ100から油圧シリンダに供給される制御流量Qとの関係を示す特性図である。これに示すように、ポンプ吐出圧Pが高まるのに伴って制御流量Qが減少する等馬力特性(ポンプ吐出圧Pと制御流量Qの積が略一定である特性)が得られる。なお、前述した
図6に示す状態は、
図8の特性図において制御流量Qが最大値となる点Jにおける作動状態である。
【0094】
なお、前述したように、コントローラの指令に基づいて馬力制御ピストン60に導かれる馬力制御信号圧Ppwは、高負荷モードで
高く調節される一方、低負荷モードで
低められる。低負荷モードで第二圧力室66に導かれる馬力制御信号圧Ppwが
低められると、これを受ける馬力制御ピストン60がロッド35及びスプール41と一緒に
図6にて
左方向に移動し、傾転駆動圧Pcが高められる。これにより、ポンプ容積が減少し、ポンプ100の負荷が低くなる。
【0095】
図8において、実線は高負荷モードの特性であり、破線は低負荷モードの特性である。低負荷モードでは、高負荷モードに比べてポンプ吐出圧Pが低くなるとともに、制御流量Qが減少し、ポンプ100の負荷(仕事率)が低くなる。
【0096】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0097】
〔1〕ポンプ容積制御装置10のレギュレータ30は、スプール41がスプール軸O方向に移動することで傾転駆動圧Pcを調節するポンプ容積切換弁40と、斜板15の傾転角に応じてスプール41をスプール軸O方向に付勢する流量制御スプリング49と、ポンプ吐出圧Pに応じてスプール軸O方向に移動する馬力制御ピストン60と、斜板15の傾転角に応じて馬力制御ピストン60をスプール軸O方向に付勢する馬力制御スプリング31、32と、馬力制御ピストン60とスプール41との間に設けられる間隙39と、を備える。
【0098】
馬力制御ピストン60とスプール41との間に間隙39を持つ流量制御状態では、流量制御信号圧Piによりスプール41に作用する力に応じてスプール41が移動することで傾転駆動圧Pcが調節される。これにより、オペレータのレバー操作量に応じて油圧シリンダに供給される作動油の制御流量Qが制御できる。
【0099】
一方、馬力制御ピストン60とスプール41との間に間隙39を持たず、スプール41が馬力制御ピストン60に押される馬力制御状態では、ポンプ吐出圧Pにより馬力制御ピストン60に作用する力に応じてスプール41が移動することで傾転駆動圧Pcが調節される。その結果、ポンプ100の負荷が過大になってエンジン109の運転が停止するエンスト等を起こすことを防止できる。
【0100】
馬力制御状態では、馬力制御ピストン60にスプール41が押されることで移動する。馬力制御ピストン60とスプール41とは、回転結合部等を持たないため、ガタや摩擦に起因する伝達遅れが生じることがない。その結果、ポンプ容積切換弁40の作動応答性を高められ、ポンプ容積の制御誤差を減らすことできる。
【0101】
〔2〕レギュレータ30では、スプール41と馬力制御ピストン60との間にロッド35が設けられる。
【0102】
馬力制御状態では、馬力制御ピストン60にロッド35を介してスプール41が押されることで移動する。
【0103】
〔3〕レギュレータ30では、スプール41とロッド35と馬力制御ピストン60とが同一軸上に配置される。
【0104】
スプール41とロッド35と馬力制御ピストン60とが同一軸上で並んで移動することにより、スプール41、ロッド35、及び馬力制御ピストン60が円滑に移動し、ポンプ容積切換弁40の作動応答性を高められる。
【0105】
〔4〕スプール41は、流量制御状態では流量制御信号圧Piが高まるのに伴って傾転駆動圧Pcを低くする方向に移動し、馬力制御状態ではポンプ吐出圧Pが高まるのに伴って傾転駆動圧Pcを高める方向に移動する。
【0106】
これにより、流量制御状態では流量制御信号圧Piが高まるのに伴ってポンプ容積を増大させる正流量制御が行われる。一方、馬力制御状態ではポンプ吐出圧Pが高まるのに伴ってポンプ容積を減少させる馬力制御が行われる。
【0107】
〔5〕レギュレータ30は、ロッド35に対してその軸方向に移動可能に設けられるリテーナ25と、斜板15が傾転する動作によってリテーナ25を移動させるリテーナ移動機構70と、を備え、馬力制御スプリング31、32はリテーナ25とロッド35との間に介装され、流量制御スプリング49はスプール41とリテーナ25の間に介装される。
【0108】
これにより、斜板15が傾転する動作に連動してリテーナ25が移動し、リテーナ25を介して馬力制御スプリング31、32が伸縮するとともに、流量制御スプリング49が伸縮する。これにより、流量制御状態では、ロッド35がスプール41に間隙39を持ち、流量制御スプリング49のバネ力と流量制御信号圧Piが釣り合うように傾転駆動圧Pcを調節し、流量制御信号圧Piが高まるのに伴ってポンプ容積を増大させる正流量制御が行われる。一方、馬力制御状態では、ロッド35がスプール41に当接し、強制的にスプール41を押すことにより傾転駆動圧Pcを調節する。
【0109】
〔6〕リテーナ移動機構70は、傾転ピストン16とリテーナ25とを連結するリンク71を備える。
【0110】
傾転ピストン16の動きがリンク71を介してリテーナ25に伝達されることにより、リテーナ移動機構70の構造を簡素化することができる。
【0111】
さらに、リンク71は、傾転ピストン16とリテーナ25の位置関係を固定し、回転結合部等を持たないため、ガタや摩擦に起因する伝達遅れが生じることがない。その結果、ポンプ容積切換弁40の作動応答性を高められ、ポンプ容積の制御誤差を減らすことができる。
【0112】
〔7〕リテーナ移動機構70は、リンク71を摺動自在に支持するガイド72を備える。
【0113】
リンク71がガイド72に摺動自在に支持されることにより、リンク71及びリテーナ25がガイド72に沿って移動し、リテーナ25及びロッド35がスプール軸Oに対して振れる動きを抑えられる。
【0114】
〔8〕レギュレータ30は、馬力制御スプリング31、32を圧縮する方向にロッド35を付勢するアジャスタスプリング82と、このアジャスタスプリング82のバネ力を調整する馬力制御アジャスタ機構83と、を備える。
【0115】
馬力制御アジャスタ機構83によってアジャスタスプリング82のバネ力が調節されることにより、ロッド35を介して馬力制御スプリング31、32のバネ力が調節され、可変容積ポンプ100の負荷が調整される。
【0116】
〔9〕レギュレータ30は、馬力制御ピストン60によって画成されポンプ吐出圧Pが導かれる第一圧力室63と、馬力制御ピストン60によって画成され馬力制御信号圧Ppwが導かれる第二圧力室66と、を備える。馬力制御状態では、馬力制御信号圧Ppwが高まるのに伴って馬力制御ピストン60がスプール41を傾転駆動圧Pcを低くする方向に移動させる。
【0117】
馬力制御ピストン60はポンプ吐出圧Pと馬力制御信号圧Ppwと馬力制御スプリング31、32のバネ力が釣り合う位置に移動する。これにより、馬力制御信号圧Ppwに応じて可変容積ポンプ100の負荷が調整される。
【0118】
〔10〕ポンプ容積切換弁40は、スプール41が摺動自在に挿入されるスリーブ50と、スリーブ50の位置をスプール軸O方向について調整するポンプ容積切換アジャスタ機構59と、を備える。
【0119】
ポンプ容積切換アジャスタ機構59によってスリーブ50の位置が調整されることにより、流量制御スプリング49のバネ荷重が変わり、流量制御信号圧Piに応じて傾転駆動圧Pcが増減するタイミングが調整される。
【0120】
(第2実施形態)
次に、
図9を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のポンプ容積制御装置10と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0121】
上記第1実施形態に係るポンプ容積制御装置10は、流量制御状態において、流量制御信号圧Piが高まるのに比例して制御流量Qが高まる正流量制御を行うように構成されている。これに対して、第2実施形態に係るポンプ容積制御装置10は、流量制御状態において、流量制御信号圧Piが高まるのに比例して制御流量Qが減少する負流量制御を行うように構成される。
【0122】
レギュレータ30には、スプール41に連結されるスプール側バネ受け90と、リテーナ25に連結されるリテーナ側バネ受け91と、が設けられる。リテーナ側バネ受け91は延長部材92を介してスプール側バネ受け90よりスリーブ50(
図3参照)に近接する側に配置される。流量制御スプリング49は、リテーナ側バネ受け91とスプール側バネ受け90の間に圧縮して介装され、スプール41を傾転駆動圧Pcを低くする方向に付勢する。
【0123】
スプール41に導かれる流量制御信号圧Piは、流量制御スプリング49に抗してスプール41を傾転駆動圧Pcを高める方向に作用する。
【0124】
流量制御信号圧Piが低い状態では、スプール41は流量制御スプリング49のバネ力によって傾転駆動圧Pcを低くする方向に移動する。この傾転駆動圧Pcを受ける傾転ピストン16は斜板15を最大傾転角に保持し、ポンプ容積が最大になる。
【0125】
流量制御信号圧Piが高まると、スプール41は流量制御スプリング49に抗して傾転駆動圧Pcを高める方向に移動する。この傾転駆動圧Pcを受ける傾転ピストン16は斜板15を傾転角が小さくなる方向に傾転させ、ポンプ容積が減少する。
【0126】
図10は、スプール41がロッド35の間に間隙39を持って移動する流量制御状態において、流量制御信号圧Piとポンプ100から油圧シリンダに供給される制御流量Qとの関係を示す特性図である。これに示すように、流量制御信号圧Piが低い値から高まるのに伴って制御流量Qが次第に減少する負流量制御が行われる。
【0127】
一方、ポンプ100の駆動負荷(ポンプ吐出圧P)が設定値より高まると、第一圧力室63でポンプ吐出圧Pを受ける馬力制御ピストン60が移動する。そして、ロッド35がスプール41に当接することで、流量制御状態から馬力制御状態に切換わる。馬力制御状態では、第1実施形態と同様に、ポンプ吐出圧Pが高まるのに伴ってポンプ容積を減少させる馬力制御が行われる。
【0128】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に前記〔1〕、〔2〕の作用効果を奏するとともに、以下に示す作用効果を奏する。
【0129】
〔11〕スプール41は、流量制御状態では流量制御信号圧Piが高まるのに伴って傾転駆動圧Pcを高める方向に移動し、馬力制御状態ではポンプ吐出圧Pが高まるのに伴って傾転駆動圧Pcを高める方向に移動する。
【0130】
これにより、流量制御状態では流量制御信号圧Piが高まるのに伴ってポンプ容積を減少させる負流量制御が行われる。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0132】
例えば、上記実施形態では、ポンプ100が斜板式ピストンポンプであるが、これに限らず、他の可変容積ポンプであってもよい。
【0133】
さらに、上記実施形態では、ポンプ容積制御装置が油圧ショベルの圧力源に設けられるが、これに限らず、他の機械、設備に設けられるものであってもよい。