特許第6111136号(P6111136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111136自己粘着性を有するプラスチック気泡シート及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111136
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】自己粘着性を有するプラスチック気泡シート及びその用途
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/26 20060101AFI20170327BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170327BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170327BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170327BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20170327BHJP
   B65D 81/02 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B32B3/26 A
   B32B27/00 M
   B32B27/32 103
   C09J7/02 Z
   C09J153/00
   B65D81/02
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-95155(P2013-95155)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213587(P2014-213587A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(72)【発明者】
【氏名】松宮 吉房
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】新藤 史洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸夫
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−058565(JP,A)
【文献】 特開2009−269374(JP,A)
【文献】 特開2008−184227(JP,A)
【文献】 特開平09−323753(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/159648(WO,A1)
【文献】 特開2010−070748(JP,A)
【文献】 特開2005−059559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 57/00−59/08
B65D 81/00−81/17
C09J 7/00−7/04
C09J 153/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の突起を有するキャップフィルム(Cf)の底面に、平坦なバックフィルム(Bf)を貼り付けることにより、気体が封入された多数の密閉室を有し、さらに前記キャップフィルム(Cf)を挟んで前記バックフィルム(Bf)の反対側の面にライナーフィルム(Lf)を有するプラスチック気泡シート(Ps)であって、
前記バックフィルム(Bf)又はライナーフィルム(Lf)のいずれか一方が、オレフィンブロックコポリマーを含む自己粘着性層(Ff)であり、
前記自己粘着性層(Ff)同士を貼り合わせた後、前記自己粘着性層(Ff)同士を剥す際に粘着力により前記自己粘着性層自体が破壊される自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項2】
前記自己粘着性層(Ff)同士を貼り合わせたときの粘着力が、400〜2000N/25mmの範囲内である請求項1に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項3】
前記自己粘着性層(Ff)中のオレフィンブロックコポリマーの割合が、50〜100重量%の範囲内である請求項1又は2に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項4】
前記自己粘着性層(Ff)が、さらに希釈樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項5】
前記希釈樹脂が、ポリエチレンである請求項に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項6】
前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン(LDPE)である請求項に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項7】
前記ライナーフィルム(Lf)が、自己粘着性層(Ff)である請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項8】
前記バックフィルム(Bf)及び/又はライナーフィルム(Lf)(Ff)が、手切れ性を有する層と積層されている請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項9】
前記バックフィルム(Bf)、キャップフィルム(Cf)又はライナーフィルム(Lf)の少なくとも一層が可視光に対する隠蔽性を有する請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層同士を対向させ、該対向させた自己粘着性層の間に物品を配置し、該物品の周囲の互いに接触し得る該自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着することで物品を衝撃から保護する包装資材。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着して所望のブロック形状にすることができる緩衝用充填資材。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層を外側とし、開口部を残して袋状に加工した複数の袋の該自己粘着性層同士の少なくとも一部を圧着して繋げた連袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着性を有するプラスチック気泡シート及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン等のプラスチック材料を原材料とし、多数の突起を有するキャップフィルムの底面に、プラスチック製で、平坦なバックフィルムを貼り付けることにより、気体が封入された多数の密閉室を有する二層構造のプラスチック気泡シート、さらにキャップフィルムを介してバックフィルムの反対の面に設けられたライナーフィルムを有する三層構造のプラスチック気泡シート等が主として包装用の緩衝材として汎用されている。
【0003】
プラスチック気泡シートは、互いに滑りやすく、例えば、被包装物を気泡シートのみで固定することはできない。そこで、バックフィルムの上に粘着剤層を積層するか又は塗布することによって、一方の面に粘着性を持たせた気泡シートが提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の気泡シートは粘着性が強く、気泡シートを巻き取ると粘着性のバックフィルムがライナーシートに強く付着してしまい、巻き戻すことができなくなることがあるという問題点があった。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂、紙又は発泡体からなる基材層の片面に、水添ジエン系重合体のみからなる、又は水添ジエン系重合体70重量%及びポリエチレン30重量%のブレンド物からなる粘着剤層を有する粘着積層体が提案されている(特許文献2及び3)。これらの粘着積層体は、ステンレス板やガラス板に対して優れた粘着性を有し、かつ容易に被着体表面から剥離できるとういう適度な粘着性を有している。
【0005】
特許文献2及び3に開示されている水添ジエン系重合体として、水素化スチレン・ブタジエン系共重合体のみ、又は水素化スチレン・ブタジエン系共重合体の他にポリエチレン又はポリプロピレンを30重量%以下の割合で含有するブレンド物をライナーフィルムの原料として用いたプラスチック気泡シートが提案されている(特許文献4)。
【0006】
この気泡シートは、ライナーフィルム同士の粘着性(自己粘着性)は高いが、他の素材、例えば、ポリエチレンからなるバックフィルム等に対しては強い粘着性を発現せず、容易に剥離できるという性質を有している。従って、ライナーフィルムとバックフィルムとの巻き取り後の剥離性に優れており、気泡シートを巻き取ってもシートが付着することなく巻き戻すことができると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−207260号公報
【特許文献2】特許第3800688号公報
【特許文献3】特許第3812009号公報
【特許文献4】特許第4126000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記水素化スチレン・ブタジエン系共重合体は、非常に高価であるため、特許文献4に記載の自己粘着性を有するプラスチック気泡シートも非常に高価となってしまう。また、水素化スチレン・ブタジエン系共重合体の割合を70重量%程度でも自己粘着力は発現するが、経時的に粘着力が低下するという問題点がある。そこで、本発明者らは、より安価に、特許文献4の気泡シートと同等の自己粘着性を有し、経時的な粘着力の低下が少ないプラスチック気泡シートを提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは、プラスチック気泡シートのバックフィルム又はライナーフィルムの主成分として、オレフィンブロックコポリマーを用いることで、非常に安価に、かつ特許文献4の気泡シートと同等の自己粘着性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
また、本発明者らは、オレフィンブロックコポリマーを用いることにより、自己粘着性層の粘着性の経時変化が少なく、高温下、低温下、高湿度、低湿度等の条件下においても長期にわたり粘着性が増したり、失われたりすることがないことも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下の自己粘着性プラスチック気泡シート及びそれを利用した製品(用途)が提供される。
1.多数の突起を有するキャップフィルム(Cf)の底面に、平坦なバックフィルム(Bf)を貼り付けることにより、気体が封入された多数の密閉室を有し、さらに前記キャップフィルム(Cf)を挟んで前記バックフィルム(Bf)の反対側の面にライナーフィルム(Lf)を有するプラスチック気泡シート(Ps)であって、
前記バックフィルム(Bf)又はライナーフィルム(Lf)のいずれか一方が、オレフィンブロックコポリマーを含む自己粘着性層(Ff)である自己粘着性プラスチック気泡シート。
2.前記自己粘着性層(Ff)同士を貼り合わせたときの粘着力が、400〜2000N/25mmの範囲内である1に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
3.前記自己粘着性層(Ff)同士を貼り合わせた後、前記自己粘着性層(Ff)同士を剥す際に粘着力により前記自己粘着性層自体が破壊される1又は2に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
4.前記自己粘着性層(Ff)中のオレフィンブロックコポリマーの割合が、50〜100重量%の範囲内である1〜3のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
5.前記自己粘着性層(Ff)が、さらに希釈樹脂を含むことを特徴とする1〜4のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
6.前記希釈樹脂が、ポリエチレンである5に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
7.前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン(LDPE)である6に記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
8.前記ライナーフィルム(Lf)が、自己粘着性層(Ff)である1〜7のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
9.前記バックフィルム(Bf)及び/又はライナーフィルム(Lf)(Ff)が、手切れ性を有する層と積層されている1〜8のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
10.前記バックフィルム(Bf)、キャップフィルム(Cf)又はライナーフィルム(Lf)の少なくとも一層が可視光に対する隠蔽性を有する1〜9のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シート。
11.1〜10のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層同士を対向させ、該対向させた自己粘着性層の間に物品を配置し、該物品の周囲の互いに接触し得る該自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着することで物品を衝撃から保護する包装資材。
12.1〜10のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着して所望のブロック形状にすることができる緩衝用充填資材。
13.1〜10のいずれかに記載の自己粘着性プラスチック気泡シートの自己粘着性層を外側とし、開口部を残して袋状に加工した複数の袋の該自己粘着性層同士の少なくとも一部を圧着して繋げた連袋。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特許文献4の気泡シートのように高価な水素添加型熱可塑性エラストマーを使用しなくても同等の自己粘着性を発現させることができ、安価に自己粘着性を有するプラスチック気泡シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の気泡シートの層構成を示す断面模式図である。図1(a)はバックフィルム(Bf)が自己粘着性を有する場合を示し、図1(b)はライナーフィルム(Lf)が自己粘着性を有する場合を示す。
図2】一枚の本発明の気泡シートの自己粘着性層上に物品を置き(図2(a))、気泡シートを当該物品の上で折り返し、物品の周囲の気泡シートが互いに対向する部分を圧着(図2(b))することで物品を衝撃から保護する本発明の包装資材の一実施形態を示す模式図である。
図3】一枚の本発明の気泡シートの自己粘着性層上に物品を置き、自己粘着性層が物品に面するように別の一枚の本発明の気泡シートを重ね(図3(a))、物品の周囲で二枚の気泡シートの自己粘着性層同士を圧着(図3(b))することで物品を衝撃から保護する本発明の包装資材の一実施形態を示す模式図である。
図4】二枚の本発明の気泡シートの自己粘着性層同士を圧着して形成した、中仕切り等として利用可能な本発明の緩衝用充填資材の一実施形態を示す図である。
図5】本発明の気泡シートの自己粘着性層を内側にしてランダムに丸めて形成した、エアーブロックとして利用可能な本発明の緩衝用充填資材の一実施形態を示す模式図である。
図6】本発明の気泡シートの自己粘着性層を外側にして作製した二枚の袋を連結した連袋の一実施形態を示す模式図である。図6(a)は、2枚の袋を横方向に繋げた連袋の一例を示し、図6(b)は、2枚の袋を上下に重ねて繋げた連袋の一例を示す。
図7】実施例1で製造した自己粘着性層を有する気泡シートと、水素化スチレン・ブタジエン系共重合体を用いた自己粘着性層を有する気泡シート(比較例1)の自己粘着力の経時的変化を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の自己粘着性プラスチック気泡シート(以下、本発明の気泡シートという)は、多数の突起を有するキャップフィルム(Cf)の底面に、平坦なバックフィルム(Bf)を貼り付けることにより、気体が封入された多数の密閉室を有し、さらに前記キャップフィルム(Cf)を挟んで前記バックフィルム(Bf)の反対側の面にライナーフィルム(Lf)を有するプラスチック気泡シート(Ps)であって、
前記バックフィルム(Bf)又はライナーフィルム(Lf)の少なくとも一方が、オレフィンブロックコポリマーを含む自己粘着性層(Ff)であることを特徴とする。
【0014】
図1(a)及び(b)は、本発明の気泡シートの層構成の断面模式図をに示す。
【0015】
本発明において「自己粘着性」とは、同じ素材同士の間では粘着力を示すが、他の素材に対しては粘着力を示さないか、あるいは被着体が凝集破壊されることなく剥離できる程度の粘着力である特性をいう。例えば、本発明の気泡シートのライナーフィルム(Lf)が自己粘着性層(Ff)であり、バックフィルム(Bf)は自己粘着性層ではない場合、ライナーフィルム(Lf)同士を貼り合わせた場合には強い接着力を示すが、バックフィルム(Bf)とライナーフィルム(Lf)とを貼り合わせた場合や、他の被着体には一時的には弱い接着力を示しても、凝集破壊を起こすことなく小さな力で両者を剥離することができる。
【0016】
本発明の気泡シートにおける自己粘着性層同士を貼り合わせたときの粘着力は、400〜2000N/25mmの範囲内であることが好ましく、800〜1000N/25mmの範囲内であることがより好ましい。粘着力が400N/25mm未満であると、自己粘着性が発現しないおそれがあり、2000N/25mmを超えると自己粘着性のみでなく、他の素材に対しても強い粘着性を示し、剥離強度が大きくなり、被着体の凝集破壊が生じるおそれがある。
【0017】
尚、用途によっては、自己粘着性層(Ff)同士を貼り合わせた後、自己粘着性層(Ff)同士を剥す際に粘着力により自己粘着性層自体が破壊されるように構成することもできる。
【0018】
本発明で用いるオレフィンブロックコポリマーとしては、Dow Chemical社が開発したチェーンシャトリング反応触媒の技術を使用することによって合成される重合体(OBC樹脂)であることが好ましい。
オレフィンブロックコポリマーは、溶液法で製造され、狭い分子量分布を有している。
【0019】
オレフィンブロックコポリマーは、様々なコモノマーを用いて製造することができ、分子鎖中にソフトブロックとハードブロックが繋がった構造を有している。ソフトブロックは、樹脂に柔軟性と低温特性を与え、ハードブロックは高耐熱性を与える。
【0020】
オレフィンブロックコポリマーとしては、コモノマーとしてエチレン・オクテン−1(C8)を使用し、ソフト・ブロックにオレフィン系エラストマー、ハード・ブロックに高密度ポリエチレン(HDPE)が繋がった構造を有するものが好ましい。このような構成とすることで、密度が低いにもかかわらず融点が高い樹脂が得られ、この樹脂から製造されるフィルムは、ポリエチレンでありながら、エラスチックで粘着性を有し、耐熱性があるという特性を有する。
【0021】
オレフィンブロックコポリマーは、粘着力の経時変化が少ないという利点も有する。
【0022】
本発明において用いることができるオレフィンブロックコポリマーの市販品としては、ダウ・ケミカル(株)社製のINFUSE9507(コモノマーとしてエチレン・オクテン−1(C8)を使用し、ソフトブロックにオレフィン系エラストマー、ハードブロックに高密度ポリエチレンが繋がった構造を有する;MFR=5/密度=0.866/mp.123℃/アクリル板との粘着力4N/25mm)、INFUSE9507BC、INFUSE9500等が挙げられる。
【0023】
本発明においてオレフィンブロックコポリマーは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
自己粘着性層の粘着力は、オレフィンブロックコポリマー中のハードブロック及びソフトブロックの割合を変化させることによって調整することができるが、希釈樹脂を配合することによって、自己粘着性層中のオレフィンブロックコポリマーの割合を変化させることによっても調整することができる。例えば、オレフィンブロックコポリマー(ダウ・ケミカル(株)社製のINFUSE9507)100重量%の場合のアクリル板に対する粘着力は約4N/25mmであるが、希釈樹脂を20重量%配合した場合には粘着力を1N/25mm程度に下げることも容易にできる。
【0025】
オレフィンブロックコポリマーのアクリル板に対する粘着力は、2〜5N/25mmの範囲であることが好ましく、3〜4N/25mmの範囲であることがより好ましい。
【0026】
希釈樹脂としては、キャップフィルムの材料樹脂として通常用いられるものが好ましい。自己粘着性層が同じ樹脂成分を含有していることによってキャップフィルムと自己粘着性層との接着性がより良好となる。自己粘着性層に含まれるオレフィンブロックコポリマー以外の樹脂成分は、一種単独又は二種以上をオレフィンブロックコポリマーと混合して使用することができる。自己粘着性層に含まれるオレフィンブロックコポリマー以外の樹脂成分は、ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレンであることが特に好ましい。
希釈樹脂の含有量は、所望の自己粘着性を発現する範囲内で適宜選択すればよい。
【0027】
自己粘着性層は、オレフィンブロックコポリマー及び希釈樹脂以外に添加剤等を含んでいてもよい。
【0028】
添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、光安定剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、タルク、シリカ、シリカバルーン、ガラスバルーン、高分子微小球等のブロッキング防止剤、有機系抗菌剤、無機系抗菌剤、滑剤、防曇剤、粘着付与剤、無機フィラー(タルク、シリカ、炭酸カルシウム)、有機フィラー(炭素繊維、アミド遷移)等が挙げられる。
添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限定されない。
【0029】
自己粘着性層中のオレフィンブロックコポリマーの割合は気泡シートの用途に応じて所望の粘着力に応じて調整すればよく、50〜100重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70〜100重量%の範囲内であり、さらに好ましくは80〜100重量%の範囲内である。
【0030】
尚、バックフィルム(Bf)が自己粘着性層である場合の方が、ライナーフィルム(Lf)が自己粘着性層である場合に比べて高い粘着力を示すことが明らかとなった。バックフィルム面はライナーフィルム面に比べて凹凸が少なく、被着体との接触面積が大きいためと考えられる。従って、バックフィルムを自己粘着性層とする場合には、オレフィンブロックコポリマーの配合量は、ライナーフィルムを自己粘着性層とする場合に比べて少なくてよい。
【0031】
オレフィンブロックコポリマーのみ、又はオレフィンブロックコポリマーを含む混合物から自己粘着性層を構成すれば、特許文献4に開示されている、水添ジエン系重合体70〜100重量%で構成された自己粘着性層と同等の自己粘着性能及び他の素材からの優れた剥離性能を達成できる
【0032】
自己粘着性層の厚さは、特に限定されず、使用目的、要求される特性等によって適宜選択すればよく、通常の気泡シートにおけるバックフィルム又はライナーフィルムの厚さの範囲でよい。好ましくは5〜20μmの範囲、より好ましくは7〜18μm、さらに好ましくは10〜15μmの範囲である。
【0033】
本発明の気泡シートを構成するキャップフィルム、並びに、自己粘着性層ではないバックフィルム及びライナーフィルムを形成する材料は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、プラスチック気泡シートを製造するために通常用いられる材料を、特に制限無く用いることができる。
【0034】
一般に、各フィルムの原料としてポリオレフィン系樹脂が用いられ、ポリオレフィン系樹脂であれば特に制限されず、オレフィン成分を50重量%以上含有する樹脂が用いられる。より具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリブテン、ポリペンテン及びプロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体等が挙げられ、好ましくは分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂である。これらのポリオレフィン系樹脂は、一種単独又は二種以上を混合して使用することができる。
【0035】
しかしながら、原料コストを考慮すると、キャップフィルム、並びに、機能付与層ではないバックフィルム及びライナーフィルムを形成する材料はポリエチレンが好ましい。
【0036】
本発明の気泡シートを構成するキャップフィルム、並びに自己粘着性層ではないバックフィルム及びライナーフィルムの膜厚は特に限定されず、使用目的、要求される特性等によって適宜選択すればよい。
【0037】
尚、本発明の気泡シートは、自己粘着性層又は自己粘着性層ではない側のフィルムに、必要に応じて、他の機能を有する層が設けられていてもよいし、自己粘着性層又は自己粘着性層ではない側のフィルム自体に他の機能を有する構成が付加されていてもよい。このような層としては、例えば、手切れ性を有する層、帯電防止性を有する層、導電性を有する層、難燃性を有する層、ガスバリア性を有する層、着色されている層、滅菌層等が挙げられる。
【0038】
例えば、縦横手切れ性を付与する層としては、手切れ性のあるフラットヤーン(FY)クロス、マルチパフォーマンス(MP)フィルム(DIC株式会社製)等が挙げられる。手切れ性を有する層は、通常、自己粘着性層(Ff)の反対側に設ける。つまり、バックフィルム(Bf)が自己粘着性層(Ff)である場合には、ライナーフィルム(Lf)側に手切れ性を有する層を設け、ライナーフィルム(Lf)が自己粘着性層(Ff)である場合には、バックフィルム(Bf)側に手切れ性を有する層を設ける。
【0039】
また、用途に応じて、バックフィルム(Bf)、キャップフィルム(Cf)又はライナーフィルム(Lf)の少なくとも一層に可視光に対する隠蔽性を持たせることもできる。可視光に対する隠蔽性を持たせる手段としては、公知の各種の方法を用いることができる。例えば、フィルム自体を着色する、アルミ蒸着する、印刷、不透明フイルムラミ、紙ラミ、金属箔ラミ等が挙げられる。
【0040】
次に、本発明の気泡シートの製造方法について説明する。
本発明の気泡シートの製造方法は特に限定されず、従来の三層構造のプラスチック気泡シートの製造において、自己粘着性層となるバックフィルム又はライナーフィルムの原料を、所定のものに変更すればよい。
【0041】
キャップフィルム、及び自己粘着性層ではないバックフィルム及びライナーフィルム用の原料プラスチックの溶融及び押出し方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0042】
自己粘着性層となるバックフィルム又はライナーフィルム用の原料は、オレフィンブロックコポリマーに、必要に応じて希釈樹脂や添加剤を加えて、バンバリーミキサー、ロールミル、押出成型機等の混合機を用いて混合することによって得られる。自己粘着性層用原料の溶融混練は押出成型機中で行うことが好ましい。溶融混練時の温度等は、原料に合わせて適宜選択すればよい。
【0043】
上記のようにして製造された本発明の気泡シートは、自己粘着性層同士を対向させ、対向させた自己粘着性層の間に物品を配置し、物品の周囲の互いに接触し得る自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着することで物品を衝撃から保護する包装資材として使用することができる。このような包装資材の使用の形態を図2及び3に示す。図2は、1枚の本発明の気泡シートを用いて箱状の物品を包装する場合の一例を示すものである。図3は、2枚の本発明の気泡シートを用いて箱状の物品を包装する場合の一例を示すものである。
自己粘着性層同士を圧着することで固定可能なので、テープ等の補助を必要とせずに物品を包装し、衝撃から物品を保護することができる。
【0044】
また、本発明の気泡シートは、自己粘着性層の少なくとも一部を互いに圧着して所望の形状を有するブロック状にすることができる緩衝用充填資材として使用することができる。このような緩衝用充填資材の使用の形態を図4及び5に示す。図4は、二枚の本発明の気泡シートの自己粘着性層同士を圧着して形成した、平面状の中仕切りや保護マット等として利用可能な本発明の緩衝用充填資材の一例を示すものである。図5は、本発明の気泡シートの自己粘着性層を内側にしてランダムに丸めて形成した、エアーブロック等として利用可能な本発明の緩衝用充填資材の一例を示すものである。
【0045】
さらに、本発明の気泡シートは、自己粘着性層を外側とし、開口部を残して袋状に接着加工して形成した複数の袋の該自己粘着性層同士を圧着して繋げた連袋とすることができる。図6(a)に2枚の袋の外面同士を重ねて繋げた連袋の一例を示し、図6(b)に2枚の袋の端を重ねて横方向に繋げた連袋の一例を示す。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
実施例1
キャップフィルム、バックフィルム及び自己粘着性層であるライナーフィルムからなる3層構造の気泡シートを製造し、自己粘着性を評価した。
【0048】
(1)材料
キャップフィルム及びバックフィルム用の原料:
低密度ポリエチレン:日本ポリエチレン社製、LF441MD(MFR=2.0/d=0.924)
自己粘着性層用原料:
オレフィンブロックコポリマー:ダウ・ケミカル社製、INFUSE9507(MFR=5.0/d=0.866/mp.123℃、アクリル板に対する粘着力:4N/25mm)
【0049】
(2)自己粘着力試験
JIS Z0237で規定されている粘着テープ・シート試験方法に準拠して評価を行った。
図3(b)に示すように、製造した気泡シートの自己粘着性層同士を対向させ、室温下、自己粘着性層の間に重さ1.3kgの本(260×185×t=35)を挟み、本の周囲の気泡シートに手で圧力を掛けて自己粘着性層同士を圧着し、圧着した部分の端を持って5分間振り続けたが、剥離しなかった。
【0050】
(3)自己粘着力の経時変化評価
実施例1で製造した自己粘着性層を有する気泡シートと、水素化スチレン・ブタジエン系共重合体(DYNARON4600P;JSR社製水素添加型熱可塑性エラストマー)70重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)30重量%からなる自己粘着性層を有する気泡シート(比較例1)の、自己粘着力の経時的な変化を比較したグラフを図7に示す。
【0051】
実験条件は次の通りである。
温度23℃、湿度25%の条件下で、気泡シートの自己粘着性層同士を貼り合わせ、0、7、14、20及び28日後に、(機器名)オートグラフAG−20kNXD(製造元会社名:株式会社島津製作所)を用い、180°剥離により、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0052】
比較例1の気泡シートでは、時間と共に粘着強度が低下しているのに対し、実施例1の気泡シートでは、粘着強度の低下が少ないことがわかる。
【0053】
(4)糊残り評価
実施例1で製造した気泡シートの自己粘着性層を金属メッキ面、ポリカーボネート樹脂面及びポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂面に粘着させ、3日間経過後に剥がしたときに糊残りが生じるか否かを確認した。
【0054】
下記評価基準に従って糊残りの状態を目視によって判定した。結果を表1に示す。
○:糊残り無し
×:糊残り有り
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2
自己粘着性層を、INFUSE9507 80重量%及び低密度ポリエチレン(希釈樹脂):日本ポリエチレン社製、LF441MD(MFR=2.0/d=0.924)20重量%で製造した以外は、実施例1と同様に気泡シートを製造し、JIS Z0237の自己粘着力試験を行ったところ剥離しなかった。
【0057】
実施例の組成で構成した自己粘着性層は、良好な自己粘着性を有する一方、自己粘着性層以外の材質からは容易に剥離でき、経時的な粘着力の低下が少なく、また、長期間物品に接触させておいても糊残りし難いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、良好な自己粘着性を示す一方、自己粘着性層以外の材質には粘着性を示さず、経時的な粘着力の低下が少なく、また、長期間物品に接触させておいても糊残りし難いプラスチック気泡シートを従来よりも安価に提供できる。
本発明の気泡シートは、テープ等の補助が無くとも接着が可能な緩衝材、包装材、緩衝機能を有する封筒、開封防止用包装材、養生又は運搬用の表面保護材、断熱材等の緩衝、断熱機能を必要とする用途に好適である。
【符号の説明】
【0059】
Ps 気泡シート
Cf キャップフィルム
Bf バックフィルム
Lf ライナーフィルム
Ff 自己粘着性層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7