(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111139
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】双方向非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170327BHJP
H02J 50/00 20160101ALI20170327BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-107189(P2013-107189)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-230364(P2014-230364A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591206887
【氏名又は名称】株式会社テクノバ
(74)【代理人】
【識別番号】100100918
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 公治
(72)【発明者】
【氏名】保田 富夫
(72)【発明者】
【氏名】乗越 勇美
(72)【発明者】
【氏名】砂金 富保
【審査官】
小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/127449(WO,A2)
【文献】
特開2011−176914(JP,A)
【文献】
望月大樹,双方向非接触給電の基礎検討,電気学会半導体電力変換研究会資料,日本,2011年12月 1日,Vol.SPC-11,No.176-184,p.23-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
B60L 1/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側の共振コンデンサが直列接続する一次側コイルと、二次側の共振コンデンサが直列接続する二次側コイルとを空隙を隔てて配置し、前記一次側コイルから前記二次側コイルに、及び、前記二次側コイルから前記一次側コイルに、電磁誘導作用で電力を供給する双方向非接触給電装置であって、
前記一次側コイルに前記一次側の共振コンデンサを介して接続する第1の電力変換器と、該第1の電力変換器に接続する第2の電力変換器と、前記二次側コイルに前記二次側の共振コンデンサを介して接続する第3の電力変換器と、前記第1の電力変換器、第2の電力変換器及び第3の電力変換器をそれぞれ制御する制御部と、を有し、
前記第1の電力変換器、第2の電力変換器及び第3の電力変換器は、前記制御部の制御の下に、直流を交流に変換する動作と交流を直流に変換する動作とを行い、
前記一次側コイルから前記二次側コイルに電力を供給するとき、前記第2の電力変換器が、商用電源から供給される交流を直流に変換し、前記第1の電力変換器が、前記第2の電力変換器から入力する直流を高周波交流に変換して前記一次側コイルに出力し、前記第3の電力変換器が、前記二次側コイルから入力する高周波交流を直流に変換して蓄電デバイスに供給し、
前記二次側コイルから前記一次側コイルに電力を供給するとき、前記第3の電力変換器が、前記蓄電デバイスから供給される直流を高周波交流に変換して前記二次側コイルに出力し、前記第1の電力変換器が、前記一次側コイルから入力する高周波交流を直流に変換し、前記第2の電力変換器が、前記第1の電力変換器から入力する直流を商用電源の周波数の交流に変換して出力し、
前記一次側コイルから前記二次側コイルに電力を供給する場合、前記第1の電力変換器が、前記制御部により定電圧駆動され、前記二次側コイルから前記一次側コイルに電力を供給する場合、前記第3の電力変換器が、前記制御部により定電流駆動される、
ことを特徴とする双方向非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向非接触給電装置であって、前記蓄電デバイスが、リチウム二次電池または電気二重層キャパシタであることを特徴とする双方向非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1に記載の双方向非接触給電装置であって、前記一次側コイル及び二次側コイルは、
並行する一対の磁極部と、該磁極部の中間位置で前記一対の磁極部を連結する連結部とを備えるH字形のコアと、
該H字形のコアの前記連結部に巻回された電線と、
を有することを特徴とする双方向非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などの移動体の二次電池に非接触で給電を行う非接触給電装置に関し、二次電池に蓄えられた電力を必要に応じて電力系統や家庭でも利用できる双方向の給電を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載された二次電池の充電方式として、
図16に示すように、地上側に設置された一次コイル(送電コイル)31と、車両側に搭載された二次コイル(受電コイル)32との間の電磁誘導を利用して、非接触で電力を供給する非接触給電方式が知られている。送電コイル31に供給される高周波交流は、インバータ20により商用電源1の交流から生成される。受電コイル32で受電された高周波交流は、充電回路22で直流に変換されて二次電池21に蓄積される。蓄積された直流は、モータ24を駆動するためにインバータ23で交流に変換される。
近年、電気自動車(EV)の二次電池で蓄えた余剰電力を家庭や配電網で利用する“V2H”(Vehicle to Home:車両から家へ)や“V2G”(Vehicle to Grid:車両から配電網へ)に対する関心が高まっている。
【0003】
下記非特許文献1には、“G2V”(Grid to Vehicle:配電網から車両へ)用の非接触給電装置の変更を最小限に止めて、G2V時及びV2G時の双方向非接触給電を可能にした装置が開示されている。
この装置では、
図17に示すように、非接触給電トランスの一方の一次コイル31に直列コンデンサCs33が接続し、他方の二次コイル32に並列コンデンサCp34と直列リアクトルL35とが接続している(この非接触給電トランスを“SPL方式の非接触給電トランス”と呼ぶ。)。
SPL方式の非接触給電トランス30の系統側及び車両側には、それぞれインバータ20、40が接続し、系統側には、更に、G2V時に商用電源1の交流を直流に変換するブリッジ型インバータ10が、平滑コンデンサ2を介して接続している。また、車両側には、平滑コンデンサ3を介して電池4が接続している。
【0004】
G2V時に、インバータ20は、ブリッジ型インバータ10で変換された直流を高周波交流に変換する。一方、受電側のインバータ40は、IGBTが全てオフにされ、ダイオードのみによる全波整流器として機能し、二次コイル32で受電された高周波交流を整流する。
V2G時に、インバータ40は、電池4から出力された直流を高周波交流に変換する。一方、系統側のインバータ20は、IGBTが全てオフにされ、一次コイル31で受電された高周波交流を整流する全波整流器として機能する。ブリッジ型インバータ10は、インバータ20から出力された直流を商用電源1の周波数の交流に変換する。
この装置では、SP方式の非接触給電トランスに直列リアクトルLを追加するだけで、給電効率が高い双方向非接触給電が可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】保田富夫・井田和彦・阿部 茂・金子裕良・仲達 崇一郎「双方向非接触給電システム」自動車技術会秋季学術講演会85-20125755(2012年10月3日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非特許文献1の装置に比較して、システム構成を更に簡略化でき、G2V時の充電制御やV2G時の電力供給制御が容易である双方向非接触給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一次側の共振コンデンサが直列接続する一次側コイルと、二次側の共振コンデンサが直列接続する二次側コイルとを空隙を隔てて配置し、一次側コイルから二次側コイルに、及び、二次側コイルから一次側コイルに、電磁誘導作用で電力を供給する双方向非接触給電装置であって、一次側コイルに一次側の共振コンデンサを介して接続する第1の電力変換器と、第1の電力変換器に接続する第2の電力変換器と、二次側コイルに二次側の共振コンデンサを介して接続する第3の電力変換器と、第1の電力変換器、第2の電力変換器及び第3の電力変換器をそれぞれ制御する制御部と、を有し、第1の電力変換器、第2の電力変換器及び第3の電力変換器は、制御部の制御の下に、直流を交流に変換する動作と交流を直流に変換する動作とを行い、一次側コイルから二次側コイルに電力を供給するとき、第2の電力変換器が、商用電源から供給される交流を直流に変換し、第1の電力変換器が、第2の電力変換器から入力する直流を高周波交流に変換して一次側コイルに出力し、第3の電力変換器が、二次側コイルから入力する高周波交流を直流に変換して蓄電デバイスに供給し、二次側コイルから一次側コイルに電力を供給するとき、第3の電力変換器が、蓄電デバイスから供給される直流を高周波交流に変換して二次側コイルに出力し、第1の電力変換器が、一次側コイルから入力する高周波交流を直流に変換し、第2の電力変換器が、第1の電力変換器から入力する直流を商用電源の周波数の交流に変換して出力し、一次側コイルから二次側コイルに電力を供給する場合、第1の電力変換器が、制御部により定電圧駆動され、二次側コイルから一次側コイルに電力を供給する場合、第3の電力変換器が、制御部により定電流駆動される、ことを特徴とする。
一次側コイル及び二次側コイルのそれぞれに直列共振コンデンサが接続するSS方式の非接触給電トランスは、一次側を定電圧で駆動すれば二次側は定電流になり、一次側を定電流で駆動すれば二次側は定電圧になる、と言う“イミタンス変換特性”を有している。本発明の双方向非接触給電装置では、二次側の蓄電デバイスを充電するG2V時に、一次側を定電圧駆動して、蓄電デバイスを定電流で充電する。また、二次側の蓄電デバイスに蓄積された電力を外部で利用するV2G時に、二次側を定電流駆動して、外部に対し定電圧の電力を供給する。
【0008】
また、本発明の双方向非接触給電装置では、前記蓄電デバイスが、リチウム二次電池または電気二重層キャパシタであることが望ましい。
SS方式の非接触給電トランスでは、抵抗負荷の値を下げないと(受電電圧を低くしないと)給電効率が上がらないとされているが、リチウム二次電池や電気二重層キャパシタは内部抵抗が小さいため、それらの定電流充電を、SS方式の非接触給電トランスにより高い給電効率で行うことができる。
【0009】
また、本発明の双方向非接触給電装置では、一次側コイル及び二次側コイルを、並行する一対の磁極部と、この磁極部の中間位置で一対の磁極部を連結する連結部とを備えるH字形のコアの連結部に電線を巻回して構成することが望ましい。
SS方式の弱点とされた給電効率や抵抗負荷は、非接触給電トランスの巻数を上げることで改善することができ、H字形コアを用いれば、コイルの巻数を上げることが容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の双方向非接触給電装置は、システム構成を簡略化できる。また、G2V時に、高周波電源を定電圧駆動することにより、蓄電デバイスへの定電流充電が可能であり、V2G時に、高周波電源を定電流駆動することにより、系統側への定電圧給電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の双方向非接触給電装置を示すブロック図
【
図2】本発明の実施形態に係る双方向非接触給電装置のG2V時の形態を示す図
【
図3】本発明の実施形態に係る双方向非接触給電装置のV2G時の形態を示す図
【
図4】SS方式の非接触給電トランスのT型等価回路を示す図
【
図8】コイルを収納したケースが対向する状態を示す図
【
図14】ギャップ長を変化させたときの給電効率を示す図
【
図15】負荷抵抗と充電電流との関係をギャップ長及び前後左右の位置ずれを変えて測定した結果を示す図
【
図16】車両の二次電池に非接触給電を行うシステムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の双方向非接触給電装置の構成をブロック図で示している。
この装置の非接触給電トランスの一次側コイル51には共振コンデンサ53が直列接続し、二次側コイル52には共振コンデンサ54が直列接続している。この共振コンデンサ53、54が直列接続した一次側コイル51及び二次側コイル52から成る非接触給電トランスを“SS方式の非接触給電トランス”と呼ぶことにする。
【0013】
SS方式の非接触給電トランスの一次側には、第1の電力変換器61が接続し、第1の電力変換器61に第2の電力変換器62が接続している。また、二次側には、第3の電力変換器63が接続している。第1の電力変換器61及び第2の電力変換器62は制御部71で制御され、第3の電力変換器63は制御部72で制御される。第1の電力変換器61、第2の電力変換器62及び第3の電力変換器63は、各制御部71、72の制御の下に、直流を交流に変換する動作、及び、交流を直流に変換する動作を行う。
【0014】
この双方向非接触給電装置では、G2V時に、第2の電力変換器62が、商用電源から供給される交流を直流に変換し、第1の電力変換器61が、第2の電力変換器62から入力する直流を高周波交流に変換する。変換された高周波交流は、SS方式の非接触給電トランスの一次側コイル51に入力し、空隙を隔てて一次側コイル51に対向する二次側コイル52に、電磁誘導作用で高周波交流が誘起される。第3の電力変換器63は、二次側コイル52から入力する高周波交流を直流に変換する。変換された直流は、車両の蓄電デバイスに供給され、蓄えられる。
【0015】
一方、V2G時に、第3の電力変換器63が、蓄電デバイスから供給される直流を高周波交流に変換する。変換された高周波交流は、SS方式の非接触給電トランスの二次側コイル52に入力し、一次側コイル51に、高周波交流が誘起される。第1の電力変換器62は、一次側コイル51から入力する高周波交流を直流に変換し、第2の電力変換器62は、第1の電力変換器61から入力する直流を商用電源の周波数の交流に変換する。第2の電力変換器62で変換された商用周波数の交流は、配電網に供給され、あるいは、家電製品等に供給される。
【0016】
図2、
図3は、本発明の実施形態に係る双方向非接触給電装置を示している。
図2は、G2V時の構成を示し、
図3はV2G時の構成を示している。
この装置の第2の電力変換器62は、G2V時にPWM整流器として動作し、V2G時にフルブリッジインバータとして動作する変換器であり、IGBTから成るスイッチング素子と、スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとで構成されたスイッチングユニットを4個有している。
【0017】
第1の電力変換器61は、G2V時にフルブリッジインバータとして動作し、V2G時にフルブリッジ整流器として動作する変換器であり、IGBTと帰還ダイオードとで構成されたスイッチングユニットを4個有している。
第3の電力変換器63は、G2V時にフルブリッジ整流器として動作し、V2G時にフルブリッジインバータとして動作する変換器であり、IGBTと帰還ダイオードとで構成されたスイッチングユニットを4個有している。
【0018】
第2の電力変換器62は、平滑コンデンサ64を介して第1の電力変換器61に接続し、また、ノイズの系統側への侵入を抑えるために、リアクトル65及びフィルタ66を介して商用電源67や交流負荷73に接続する。
また、第3の電力変換器63は、平滑コンデンサ68を介して蓄電デバイス69、或いは負荷70に接続する。
なお、
図2、
図3では、制御部の表示を省略している。
【0019】
G2V時に、第2の電力変換器62は、制御部71のPWM制御の下で、商用電源67の交流から直流を生成する。生成された直流は平滑コンデンサ64で平滑化されて第1の電力変換器61に入力する。第1の電力変換器61は、制御部71のPWM制御の下に、入力する直流から周波数f
0の高周波交流を生成する。
このとき、制御部71は、第1の電力変換器61に入力する直流の電圧を監視して、一次側コイル51が定電圧駆動するように、第1の電力変換器61及び第2の電力変換器62を制御する。
【0020】
第1の電力変換器61で生成された周波数f
0の交流は一次側コイル51に入力し、二次側コイル52に周波数f
0の交流が誘起される。
二次側の第3の電力変換器63は、二次側コイル52から入力する高周波交流を、制御部72の制御の下に直流に変換する。このとき、制御部72は、第3の電力変換器63のIGBTを全てオフにし、ダイオードのみによる全波整流器として第3の電力変換器63を動作させる。
第3の電力変換器63で生成された直流は、平滑コンデンサ68で平滑化されて蓄電デバイス69に蓄積される。
【0021】
一方、V2G時に、第3の電力変換器63は、制御部72のPWM制御の下に、蓄電デバイス69から入力する直流を周波数f
0の高周波交流に変換する。このとき、制御部72は、二次側コイル52が定電流駆動するように、第3の電力変換器63を制御する。
二次側の第3の電力変換器63で生成された周波数f
0の交流は、二次側コイル52に入力し、一次側コイル51に周波数f
0の交流が誘起される。
【0022】
また、一次側の第1の電力変換器61は、一次側コイル51から入力する高周波交流を、制御部71の制御の下で直流に変換する。このとき、制御部71は、第1の電力変換器61のIGBTを全てオフにし、ダイオードのみによる全波整流器として第1の電力変換器61を動作させる。
第1の電力変換器61で生成された直流は、平滑コンデンサ64で平滑化されて第2の電力変換器62に入力する。
第2の電力変換器62は、入力した直流を商用電源の周波数の交流に変換する。第2の電力変換器62で変換された商用周波数の交流は、配電網や家電製品等に供給される。
【0023】
図4は、SS方式の非接触給電トランスの二次側換算したT型等価回路を示している。一次側定数の換算後の記号は「’」を付けて表示している。
図4において、V
11、I
1は、一次側(G側)の電圧、電流を表し、V
22、I
2は、二次側(V側)の電圧、電流を表している。また、V
00、I
0は、二つのコイルの基準となる電位、電流を表している。
【0024】
ここで、
C
1:G側共振キャパシタ
C
2:V側共振キャパシタ
L
1:G側トランスの自己インダクタンス
l
1:G側トランスのリーケージインダクタンス
l
01:G側トランスの励磁インダクタンス
r
0:G側トランス励磁コイルの等価直列抵抗
r
1:G側トランスの等価直列抵抗
L
2:V側トランスの自己インダクタンス
l
2:V側トランスのリーケージインダクタンス
l
02:V側トランスの励磁インダクタンス
r
2:V側トランスの等価直列抵抗
R
L: 負荷の等価直列抵抗
L
1=l
1+l
01
L
2=l
2+l
02
a=n
1/n
2:トランスコイルの巻数比
とすると、
図4に示す各値は、以下の式で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0025】
C'
1とC
2の値は,電源周波数f
0でG側トランスコイル及びV側トランスコイルの自己インダクタンスとそれぞれ共振するように(数8)(数9)の式によって決める。
【数8】
【数9】
【0026】
このとき,r
0、r
1、r
2の値は各インダクタンス値と比較して小さいため、無視すると、入出力の電圧電流間に(数10)(数11)の関係が成り立つ。
【数10】
【数11】
また、トランス効率は、
図4の各部電流より(数12)のようになる。
【数12】
ここで、巻線のQを(数13)(数14)で定義し、結合係数kを(数15)で定義する。
【数13】
【数14】
【数15】
【0027】
このとき、(数16)が成立すれば、
【数16】
トランス最大給電効率η
maxG2V、η
maxV2Gは(数17)で近似できる。
【数17】
また、そのときの負荷抵抗R
LmaxG2V、R
LmaxV2Gは(数18)で近似できる。
【数18】
【0028】
(数10)(数11)は、SS方式の非接触給電トランスが、イミタンス変換特性、即ち、一次側を定電圧で駆動すれば二次側は定電流になり、一次側を定電流で駆動すれば二次側は定電圧になると言う特性、を有していることを示している。
本発明では、この特性を利用して、G2V時に、一次側の第1の電力変換器61を定電圧駆動しているため、第3の電力変換器63から定電流が出力され、特別の充電回路を設けなくても、蓄電デバイス69の定電流充電が可能になる。この定電流充電は、内部抵抗が小さいリチウム二次電池や電気二重層キャパシタの充電に適している。
また、V2G時に、第3の電力変換器63を定電流駆動しているため、第2の電力変換器62から定電圧の電力を系統側に提供することができる。
【0029】
また、SS方式の非接触給電トランスは、抵抗負荷の値を下げないと(即ち、受電電圧を低くしないと)給電効率が上がらないと言われている(特開2012−244635号公報参照)が、(数17)(数18)は、一次側コイル51及び二次側コイル52の巻数を上げて励磁インダクタンスl
01、l
02を大きくすることにより、給電効率及び抵抗負荷を大きくできることを示している。
【0030】
その点を確かめるために行った実験の結果について説明する。
図5は、実験に用いた非接触給電トランスの仕様を示している。このトランスの一次側コイル及び二次側コイルは、
図6に示すように、並行する一対の磁極部と、この磁極部の中間位置で一対の磁極部を連結する連結部とを備えるH字形コアを使用し、この連結部に0.1mm径の電線(リッツ線)を巻いて構成している。H字形コアの外形は、240mm×300mm×20mmであり、連結部は、幅及び長さが150mmである。電線は、
図7に示すように、連結部の二箇所に20ターンずつ巻回し、それらの巻線を並列に電気接続している。
【0031】
これらのコイルは、
図8に示すケースに収容し、70mmのギャップを空けて対向させた。また、実験では、ギャップ長を±30mm変化させた場合や、前後方向(H字形コアの横方向)の対向位置を±40mm、左右方向(H字形コアの縦方向)の対向位置を±150mmずらした場合の特性も測定している。
周波数f
0は50kHz、出力は3kWに設定している。また、負荷抵抗R
LにはG2V、V2G共に25Ωを用いた。
一次側コイル、二次側コイルのトランス定数を
図9に示している。
【0032】
図10は、ギャップを70mmに設定し、前後・左右方向の位置ずれが無い状態で測定した実験結果を示している。給電効率ηは、実験値・計算値とも高い値を示している。
また、
図11は、抵抗負荷変動時の給電効率(実験値)を示し、
図12は、G2V時の入出力電圧電流波形を示し、
図13は、V2G時の入出力電圧電流波形を示している。
また、
図14は、ギャップ長を±30mm変化させたときの給電効率を示し、
図15は、負荷抵抗と充電電流との関係を、ギャップ長及び前後左右の位置ずれを変えて測定した結果を示している。
【0033】
G2V時には、ギャップを40〜100mm変化させた場合のインバータを含む総合効率が最大で94.7%であり、≡方向±40mm、y方向±150mmの範囲で変化させた時の最大総合効率が94.3%であった。また、V2G時にも同等の給電効率の結果が得られた。
この実験から、SS方式の非接触給電トランスでは、トランスの巻数を上げ、励磁インダクタンスを上げることで高い給電効率が得られることを確認できた。
H字形コアを用いるコイルは、狭い幅の連結部に電線を巻回しているため、電線の巻回数を増やす上で有利である。
また、この実験を通じて、一次側の電圧変換器の定電圧駆動により二次側の定電流充電が行われることを確かめた。
【0034】
なお、ここでは、第1の電力変換器61、第2の電力変換器62及び第3の電力変換器63がスイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用しているが、GOT(Gate Turn Off Thyristor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)など、その他のスイッチング素子を使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の双方向非接触給電装置は、電気自動車や、電動フォークリフト、無人電動搬送車など、二次電池を搭載する移動体に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 商用電源
2 平滑コンデンサ
3 平滑コンデンサ
4 電池
10 ブリッジ型インバータ
20 インバータ
23 インバータ
24 モータ
30 非接触給電トランス
31 一次コイル
32 二次コイル
33 直列コンデンサCs
34 並列コンデンサCp
35 直列リアクトルL
40 インバータ
51 一次側コイル
53 共振コンデンサ
54 共振コンデンサ
61 第1の電力変換器
62 第2の電力変換器
63 第3の電力変換器
64 平滑コンデンサ
65 リアクトル
66 フィルタ
67 商用電源
68 平滑コンデンサ
69 蓄電デバイス
70 負荷
71 制御部
72 制御部
73 交流負荷