【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)、本格研究開発ステージ シーズ育成タイプ、「新しい微小プラズマ閉じ込め加熱技術を用いた高変換効率EUV光源の実証」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単一の軸線上に延びる棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を囲むように設けられた外部電極と、前記中心電極及び前記外部電極の間を絶縁する絶縁体とを有し、対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極と、
前記中心電極の側面に設けられ、前記プラズマのプラズマ媒体を保持する媒体保持部と、
各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加する電圧印加装置と、
前記媒体保持部においてアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させるためのレーザー光を照射するレーザー装置と、
光学素子によって、前記媒体保持部上の前記レーザー光の標的位置を自律的にシフトさせる位置調整装置と
を備えることを特徴とするプラズマ光源。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトリソグラフィでは露光時間の制御が極めて重要である。そのため、十分な強度及び輝度の光を確保するだけでなく、これらを安定に得る必要がある。つまり、DPP方式のプラズマ光源においては毎回の放電を確実に行い、パルス状のプラズマを連続的に生成することが肝要である。また、極端紫外光を得るにはプラズマの高温化が必須である。
【0006】
ところで、極端紫外光を放出するプラズマを生成する場合、その媒体(以下、プラズマ媒体と称する)としてLi等の低融点金属を用いることが考えられる。Liは約13.5nmの波長の極端紫外光を放出する。低融点金属をプラズマに供給するためには、当該低融点金属の中性ガス又はイオンを生成する必要がある。この方法の1つとして、レーザー光を用いたアブレーション(以下、レーザーアブレーションと称する)がある。レーザーアブレーションでは、プラズマ媒体を含む材料で形成した照射領域にレーザー光が照射される。レーザー光のエネルギーは非常に大きいため、プラズマ媒体は蒸発し、中性ガス又はイオンとなって空間に放出される。
【0007】
レーザーアブレーションの照射領域では、低融点金属が液体の状態で保持される。具体的には、照射領域にプラズマ媒体保持部(以下、単に媒体保持部と称する)としての凹凸面又は多孔質面を設け、液状の低融点金属の表面張力を利用して、当該低融点金属を保持する。一方、照射領域に付与されるエネルギーは非常に大きい。そのため、アブレーションの直後の照射領域では、低融点金属の量が一時的に減少し、その後の低融点金属の流動により、元の状態(量)に回復する。しかしながら、レーザー照射は1kHz程度の早い周期で繰り返されるため、充填が完了する前に、レーザー光が再び照射される可能性がある。この場合、高エネルギーのレーザー光が媒体保持部にも照射され、照射された媒体保持部はレーザー光のエネルギーによる損傷を被る。媒体保持部が損傷した場合、その後の低融点金属の保持が不十分になり、プラズマへのプラズマ媒体の供給が不足する可能性がある。プラズマ媒体の供給が不足すると、所望の高温プラズマが得られなくなり、得られる極端紫外光の強度が低下する。
【0008】
上記の事情を鑑み、本発明は、媒体保持部の熱的損傷を防止することで適切な量のプラズマ媒体を供給し、所望の極端紫外光を安定に得ることが可能なプラズマ光源の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様はプラズマ光源であって、単一の軸線上に延びる棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を囲むように設けられた外部電極と、前記中心電極及び前記外部電極の間を絶縁する絶縁体とを有し、対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極と、前記中心電極の側面に設けられ、前記プラズマのプラズマ媒体を保持する媒体保持部と、各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加する電圧印加装置と、前記媒体保持部においてアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させるためのレーザー光を照射するレーザー装置と、
光学素子によって、前記媒体保持部上の前記レーザー光の標的位置を
自律的にシフトさ
せる位置調整装置とを備えることを要旨とする。
【0010】
前記位置調整装置は、前記中心電極の中心軸の周方向および前記中心電極の前記中心軸に沿った方向のうちの少なくとも一方の方向に
前記標的位置をシフト
させる装置であってもよい。
【0012】
前記レーザー装置は、各前記同軸状電極の前記中心電極の中心軸に対して対称な位置に前記レーザー光を照射してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、単一の軸線上に延びる棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を囲むように設けられた外部電極と、前記中心電極及び前記外部電極の間を絶縁する絶縁体とを有し、対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極を用いた極端紫外光の発生方法である。この方法は、各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加し、前記中心電極の側面に設けられ、前記プラズマのプラズマ媒体を含む媒体保持部にレーザー光を照射して前記プラズマ媒体のアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させ、
光学素子によって前記レーザー光の前記媒体保持部上の標的位
置を自律的にシフトさ
せることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、媒体保持部の熱的損傷を防止することで適切な量のプラズマ媒体を供給し、所望の極端紫外光を安定に得ることが可能なプラズマ光源を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ光源の概略構成図(断面図)であり、
図2は当該プラズマ光源の電気系統を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態のプラズマ光源は、一対の同軸状電極10、10と、各同軸状電極10に対して個別に設けられるリザーバ20と、電圧印加装置30と、レーザー装置40と、位置調整装置としてのミラー46とを備える。なお、
図1において右側の同軸状電極10は、左側の同軸状電極10と同一の構成であるため、詳細な図示を省略する。
【0019】
一対の同軸状電極10、10は、図示しない真空槽内において対称面1を挟んで対称な位置関係で設置される。即ち、各同軸状電極10は対称面1を中心として、一定の間隔を隔てて互いに対向するよう設置される。一対の同軸状電極10、10は、極端紫外光を放射するプラズマ3を発生すると共に、両者の間に当該プラズマ3を閉じ込める。
【0020】
各同軸状電極10は、中心電極12と、複数の外部電極14と、絶縁体16とを備える。中心電極12と外部電極14の間には、後述の媒体保持部18から極端紫外光を放射するプラズマ媒体6が導入される。本実施形態のプラズマ媒体6は、液体の状態で中心電極12の側面に露出可能な低融点金属(低融点合金)であり、その組成は、必要な紫外線の波長に応じて選択される。例えば、13.5nmの紫外光が必要な場合はLiやSn等を含み、6.7nmの紫外光が必要な場合はBi等を含む。
【0021】
図1および
図3に示すように、中心電極12は、各同軸状電極10に共通する単一の軸線Z−Zを中心軸(以下、この軸を中心軸Zと称する)として、この中心軸Z上に延びる棒状の導電体である。中心電極12は、対称面1に面する先端部12aと、先端部12aの後方(即ち、中心軸Zに添って対称面1から離れる方向)に設けられる媒体保持部18と、媒体保持部18の後方に設けられる基部12bとから一体的に構成され、リザーバ20から対称面1に向けて突出している。基部12bの内部にはプラズマ媒体6の流路12cが形成されている。流路12cは、リザーバ20内の空間20aに連通し、媒体保持部18に接続している。
【0022】
先端部12a及び基部12bは、高温プラズマに対して耐熱性を有する材料を用いて形成される。このような材料は、例えばタングステンやモリブデン等の高融点金属である。対称面1に対向する先端部12aの端面は、半球状の曲面になっている。ただし、この形状は必須ではなく、端面に凹部(図示せず)を設けてもよく、或いは単なる平面でもよい。また、基部12bは、先端部12aほど高温に晒されないので、その材料は上述の高融点金属に限られず、熱伝導率の高い銅などでもよい。
【0023】
媒体保持部18は、プラズマ3のプラズマ媒体6を中心電極12の側面に保持及び露出させるプラズマ媒体領域である。即ち、媒体保持部18は、リザーバ20から流路12cを介して供給されるプラズマ媒体6を液体の状態で保持すると共に、このプラズマ媒体6を中心電極12の側面に露出させる。このような機能を持たせるため、媒体保持部18は穴径10〜100μm程度の多孔質部材で形成される。なお、この多孔質部材は高融点金属で形成されており、中心電極12と同一の材料で構成してもよい。媒体保持部18の表面には、レーザー装置40のレーザー光42が照射され、媒体保持部18に保持されたプラズマ媒体6はアブレーションされる(
図1参照)。なお、媒体保持部18は、中心軸Zの周方向に亘って全体的に形成してもよく、レーザー光42の照射位置のみに形成してもよい。
【0024】
媒体保持部18の表面は、レーザー光42によるアブレーションのために、短い周期(例えば1ms程度)で断続的に加熱される。また、このアブレーションを起点として、環状の面状放電2が発生し、その後、極端紫外光を放出する最終的なプラズマ3が対称面1上に生成される(
図1参照)。従って、先端部12a及び媒体保持部18は常に高温に晒される。特に、先端部12aは高温のプラズマ3に近接しているので加熱が著しい。その結果、媒体保持部18は、先端部12aからの膨大な熱を受けて温度が上昇する。なお、面状放電とは、2次元的に広がる面状の放電電流のことであり、電流シート又はプラズマシートとも呼ばれる。
【0025】
リザーバ20は、その内部にプラズマ媒体6を貯留するための空間20aを有する。空間20aは、中心電極12の流路12cと連通している。リザーバ20にはヒータ22が設けられている。ヒータ22は、プラズマ媒体6を溶解し、液体の状態で保持する。ヒータ22は、例えば、熱媒体(油)循環式のヒータや電熱式のヒータで構成される。ヒータ22によって空間20a内で溶解したプラズマ媒体6は、流路12cを介して媒体保持部18に流出する。
【0026】
図1に示すように、外部電極14は、中心電極12の中心軸Zと平行に延びる棒状の導電体である。また、
図3に示すように、中心電極12と一定の間隔を隔てながら、中心電極12の周方向に沿って角度θ毎に配置されている。換言すると、各外部電極14は中心電極12と平行に配置され、中心電極12の周囲を囲んでいる。
図3に示す例では、6本の外部電極14が中心電極12の周りで60°毎に配置されている。
【0027】
図3に示すように、各外部電極14はその軸方向に垂直な面において、中心電極12との距離が最短となる点Gを1点だけ含む断面を有する。このような形状の断面は、例えば円である。外部電極14の断面形状は、この円形に限られず、少なくとも中心電極12に対向する面が、中心電極12に向かって突出する曲面を有していればよい。また、何れの場合も、点Gが中心電極12の周りで角度θ毎に配置される。
【0028】
各外部電極14は中心電極12の周方向に沿って等間隔に配列することが望ましい。例えば、加工や組み立ての観点から、各外部電極14は中心電極12に対して回転対称な位置に設置することが望ましい。しかしながら、本発明はこのような配列に限定されるものではない。また、外部電極14の本数も6本に限定されず、中心電極12及び外部電極14の大きさや形状、両者の間隔などに応じて適宜設定される。
【0029】
なお、外部電極14は、中心電極12と同じく、高温プラズマに対して耐熱性をもつ材料を用いて形成される。また、対称面1に対向する外部電極14の端面は曲面、平面の何れでもよい。
【0030】
中心電極12の周りに複数の外部電極14をこのように配置することで、面状放電2の初期放電(例えば沿面放電)を、各外部電極14と中心電極12との間で発生させることができる。即ち、各点Gを放電経路に含む初期放電を優先的に発生させることで、当該初期放電を中心電極12の全周に亘って発生させることが可能になり、環状の面状放電2の形成が容易になる。
【0031】
絶縁体16は例えばセラミックを用いて形成され、中心電極12と外部電極14の各基部を支持して両者の間隔を規定すると共にその間を電気的に絶縁する。絶縁体16は例えば円盤状に形成され、中心電極12及び外部電極14が貫通する貫通孔を有する。
【0032】
次に、本実施形態のプラズマ光源における電気系統について説明する。
図2に示すように、プラズマ光源は各同軸状電極10に接続する電圧印加装置30を備える。電圧印加装置30は、各同軸状電極10に同極性の放電電圧を印加する。
【0033】
電圧印加装置30は、高圧電源32を備える。高圧電源32の出力側は、同軸状電極10の中心電極12に接続し、この中心電極12に対応する外部電極14よりも高い正の放電電圧を印加する。従って、外部電極14が接地されている場合は、中心電極12の電位は正になる。
【0034】
上述の通り、各中心電極12の周囲には複数の外部電極14が設けられている。理想的な面状放電2を得るには、全ての外部電極14と中心電極12との間で、放電が発生する必要がある。しかも、これらの放電が、中心電極12の周りで空間的に等間隔に分布していることが望ましい。このため本実施形態の各外部電極14は、中心電極12に対向する面を曲面にして、優先的に放電する箇所を規定している。しかしながら、放電箇所を固定し、後述するレーザー光42を各中心電極12の媒体保持部18に同時に照射したとしても、各外部電極14と中心電極12との間の放電を厳密に同時に発生させることは困難であり、実際には各放電の発生タイミングに多少のずれが生じる。高圧電源32から供給される放電エネルギーは最初に発生した放電に対して優先的に費やされる傾向があり、この場合は複数の放電を略同時に発生させることが困難になる。
【0035】
そこで、本実施形態の電圧印加装置30は、放電電圧の放電エネルギーを外部電極14毎に蓄積するエネルギー蓄積回路34を備えている。エネルギー蓄積回路34は、例えば
図2に示すように中心電極12と各外部電極14との間を個別に接続する複数のコンデンサCで構成される。各コンデンサCは、高圧電源32の各出力側及び各コモン側に接続される。
【0036】
このように、放電エネルギーを蓄積するコンデンサCを外部電極14毎に設けることで、全ての外部電極14において放電を発生させることができる。即ち、最初に発生した放電によって多くの放電エネルギーが消費されることを防止でき、中心電極12の全周に亘って発生する理想的な面状放電2を得ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の電圧印加装置30は、放電電流が帰還することを阻止する放電電流阻止回路36を備えてもよい。放電電流阻止回路36は、例えば
図2に示すように各外部電極14と電圧印加装置30(具体的には高圧電源32のコモン側)との間を接続するインダクタLで構成される。インダクタLは、放電電流に対して十分に高いインピーダンスを有するため、中心電極12及び外部電極14を経由した放電電流を、その発生源であるエネルギー蓄積回路34に戻すことができる。つまり、各コンデンサCに蓄積された放電エネルギーが、当該コンデンサCに直結した外部電極14以外の外部電極14に供給されることを防止するため、中心電極12の周方向における放電の発生分布に偏りが生じることを防止できる。
【0038】
上述したように、本実施形態のプラズマ光源は、各同軸状電極10の中心電極12の表面にレーザー光を照射することで、プラズマ3の媒体を放出させると共にプラズマ3の初期放電(即ち、面状放電2)を発生させるレーザー装置40を備える。レーザー装置40は例えばYAGレーザーであり、アブレーションを行うために基本波の二倍波を短パルスのレーザー光42として出力する。
【0039】
図1に示すように、レーザー光42は、ビームスプリッタ(ハーフミラー)44によって分岐し、各中心電極12の媒体保持部(プラズマ媒体領域)18に照射される。レーザー光42が照射された媒体保持部18の表面では、アブレーションによってプラズマ媒体6が中性ガス又はイオンとなって放出される。
【0040】
本発明の位置調整装置について説明する。本発明の位置調整装置は、媒体保持部18上のレーザー光42の標的位置42aと標的位置42aに基づいてレーザー光42が照射された媒体保持部18の照射位置18aとを相対的に且つ自動的にシフトさせる。ここで、標的位置42aとは、レーザー光42の光路によって定まる媒体保持部18上の位置であり、照射位置18aとは、標的位置42aにレーザー光42を照射した後の位置を言う。仮に、レーザー光42の標的位置42aを変更させない場合は、標的位置42aと照射位置18aは常に同一の位置を指すことになる。
【0041】
本実施形態の位置調整装置は、上記のシフトを行う光学素子を備える。具体的には
図1に示すように、この光学素子として可動式の(即ち、角度調整可能な)ミラー46がレーザー光42の光路上に設けられる。なお、ミラー46と媒体保持部18の間には、レーザー光42を媒体保持部18上に集束させるレンズ(図示せず)を設置してもよい。
【0042】
図4は、本実施形態における標的位置42aと照射位置18aのシフト操作を示す図であり、(a)は中心電極12の中心軸Zに沿ってレーザー光42を移動させたときの図であり、(b)は中心電極12の中心軸Zの周方向にレーザー光42を移動させたときの図である。ミラー46は、レーザー光42を媒体保持部18に向けて反射する照射位置18aを規定する。ミラー46の反射角は、周知の角度調整機構を有する制御部(図示せず)を用いて設定される。また、全てのミラー46の反射角は同期して設定される。なお、標的位置42aの移動速度は、レーザー光42のスポットが一部重なる程度の速度でもよい。
【0043】
ミラー46の反射角は、媒体保持部18上のレーザー光42の標的位置42aが、中心電極12の中心軸Zの周方向および中心電極12の中心軸Zに沿った方向のうちの少なくとも一方の方向にシフトするように自動制御される。即ち、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、レーザー光42は、媒体保持部18上で、中心軸Zの周方向および中心電極12の中心軸Zに沿った方向のうちの少なくとも一方の方向に掃引(スキャン)される。なお、標的位置42aは所定の経路を循環してもよく、また、往復してもよい。何れの場合も、照射位置18aは徐々に移動し、一定の位置に留まることはない。
【0044】
上述の通り、プラズマ光源が稼働している間は、レーザー光42による照射位置18aが徐々に移動する。従って、照射位置18aが一定の場合における当該照射位置18aの過度の温度上昇が抑制される。さらに、プラズマ媒体が既に充填されている領域へのレーザー光照射になるため、プラズマ媒体の供給不足も解消される。
【0045】
レーザー光42の照射時には、既に電圧印加装置30による放電電圧が各同軸状電極10の中心電極12と外部電極14の間に印加されている。従って、上述のアブレーションが発生すると、中心電極12と各外部電極14間の放電が誘発され、この放電によって面状放電2(
図1参照)が形成される。
【0046】
なお、上記放電の発生箇所は、レーザー光42の照射領域及びその近傍に制限される可能性がある。従って、レーザー装置40は、各中心電極12の中心軸Zに対して対称な位置にレーザー光42を照射することが好ましい。この対称性は、標的位置42aをシフトさせている間も維持する。
【0047】
これは、誘発された放電の領域が、中心電極12の軸を基点に180度以上の開き角があった実験結果に基づいている。なお、複数のレーザー光の同時照射は、光路長の調整により容易に達成できる。
【0048】
上述の通り、本実施形態のプラズマ光源では、真空槽(図示せず)内に一対の同軸状電極10が設けられる。一対の同軸状電極10は、対称面1を挟んで互いに対向配置される。一方、真空槽内は、プラズマ3の発生に適した温度及び圧力に保持される。また、放電前の各同軸状電極10には、電圧印加装置30により同極性の放電電圧が印加される。
【0049】
図1に示すように、放電電圧が印加された状態で、各同軸状電極10の媒体保持部18には、レーザー光42が同時に照射される。その直後、中心電極12と各外部電極14の間で初期放電が発生する。その後、中心電極12の全周に亘って放電が分布する面状放電2が得られる。面状放電2の形成により、各同軸状電極10において、媒体保持部18からLiを含むガス又はイオンが放出される。
【0050】
図1に示すように、面状放電2は、自己磁場によって電極から排出される方向(対称面1に向かう方向)に移動する。このときの面状放電2は、軸線Z−Zから見て略環状に分布する。
【0051】
面状放電2は同軸状電極10の先端に達すると、面状放電2の放電電流の出発点は強制的に中心電極12の円周側面から先端部12aに移行する。換言すれば、放電電流は先端部12aから集中的に流れ出す。この電流集中によるピンチ効果によって先端部12a周辺の電流密度は急激に上昇し、一対の面状放電2の間に挟まれていた先端部12a周辺のLiを含むプラズマ媒体6は高密度、高温になる。
【0052】
さらに、この現象は対称面1を挟んだ各同軸状電極10で進行するため、プラズマ媒体6は、一方の同軸状電極10から他方の同軸状電極10に向かって押し出される。その結果、プラズマ媒体6は、軸線Z−Z(中心軸Z)沿う両方向からの電磁的圧力を受けて各同軸状電極10が対向する中間位置(即ち、中心電極12の対称面1)に移動し、プラズマ媒体6を成分とする単一のプラズマ3が形成される。
【0053】
上述の通り、面状放電2が発生している間は各中心電極12の先端部12aに各面状放電2の電流が集中する。従って、先端部12a周辺には、プラズマ3に対して軸線Z−Zに向かうピンチ効果が働き、プラズマ3の高密度化及び高温化が進行する。即ち、プラズマ媒体6の電離が進行する。その結果、プラズマ3からは極端紫外光を含むプラズマ光8が放射される。この状態において、電圧印加装置30は、プラズマ3の発光エネルギーに相当するエネルギーを供給し続ける。このエネルギー供給により、高いエネルギー変換効率でプラズマ光8を長時間に亘って発生させることができる。
【0054】
本実施形態のプラズマ光源では、媒体保持部18の照射位置に対して、標的位置42aを徐々にシフトさせている。従って、照射位置18aも徐々にシフトするので、照射位置18aが一定の場合における照射位置18aの過度の温度上昇が抑制され、プラズマ媒体が既に充填されている領域へのレーザー光照射になるためプラズマ媒体の供給不足も解消される。即ち、媒体保持部18が露出した状態でレーザー光42の照射を受けることが回避されるので、レーザー光42による媒体保持部18の熱的損傷を防止できる。媒体保持部18の熱的損傷を防止できるので、媒体保持部18の寿命が長くなり、プラズマ媒体の安定な保持と、適切な量の蒸発が長期に可能になる。その結果、一定の強度の極端紫外光を所望の露光時間に亘って安定に得ることができる。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係るプラズマ光源の概略構成図(断面図)、
図6は本実施形態における標的位置42aと照射位置18aのシフト操作を示す図であり、(a)は中心電極12を中心軸Zに沿って並進操作したときの図、(b)は中心電極12を中心軸Zの周りで回転させたときの図である。本実施形態のプラズマ光源は、上述のシフトを行う位置調整装置として、支持機構24と周知の駆動機構を有する制御部(図示せず)とを備える。支持機構24は、例えば周知の回転導入器や直線回転導入器によって構成され、中心電極12をその中心軸Z周りで回転可能に支持する。この回転は、制御部(図示せず)によって自動制御される。なお、支持機構24は、中心電極12を中心軸Zに沿って移動可能に支持してもよく、これらの組み合わせで中心電極12を支持してもよい。前者の場合、支持機構24は周知の直線導入器によって構成され、後者の場合、支持機構24は周知の直線回転導入器によって構成される。また、プラズマ光源が稼働しているとき、ミラー46の角度は固定されている。その他の構成は第1実施形態と同一であるので、その説明については省略する。
【0056】
図5に示すように、本実施形態の支持機構24は、リザーバ20を支持することで間接的に中心電極12を支持する。リザーバ20の位置は、プラズマ媒体6の媒体保持部18への適切な流動が確保できる限り任意である。従って、中心電極12を直接支持するように支持機構24を構成、配置してもよい。
【0057】
本実施形態において、レーザー光42の標的位置42aは固定されている。なお、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、標的位置42aは、各中心電極12の中心軸Zに対して対称な位置に設定されることが好ましい。一方、支持機構24は、中心電極12を中心軸Zに沿って移動させる(
図6(a)参照)。或いは、支持機構24は、中心電極12をその中心軸Z周りで回転させる(
図6(b)参照)。更に、支持機構24は、これらの回転及び並進移動を同時に行ってもよい。従って、媒体保持部18上の照射位置18aは、中心電極12の中心軸Zの周方向および中心電極12の中心軸Zに沿った方向のうちの少なくとも一方の方向にシフトする。その結果、第1実施形態と同じく、標的位置42aと照射位置18aとの相対的なシフトが達成され、第2実施形態でも第1実施形態と同一の効果が得られる。なお、本実施形態と上述の第1実施形態を組み合わせることも可能である。この場合も第1実施形態と同一の効果が得られる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。