(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111151
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
G01L19/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-130154(P2013-130154)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4591(P2015-4591A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 元桐
(72)【発明者】
【氏名】高月 修
(72)【発明者】
【氏名】青山 倫久
(72)【発明者】
【氏名】住吉 雄一朗
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−090846(JP,A)
【文献】
特開2005−181066(JP,A)
【文献】
特開平07−212139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00
G01L 19/00
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力を受圧するダイアフラムと、
アースパッドを含む複数のボンディングパッドを備えた半導体形圧力検出装置と、
前記ダイアフラムとの間で絶縁性媒質が封入された受圧空間が形成され前記受圧空間内に前記半導体形圧力検出装置が設けられるベースと、
前記ベースに植設され前記半導体形圧力検出装置と電気的に接続される複数の端子ピン及び電気回路のゼロ電位と接続される1つのアース端子ピンとを具備した圧力センサであって、
前記ベース上には、前記半導体形圧力検出装置の周囲位置に除電板が設けられており、
前記除電板は、前記ベースからの高さが前記半導体形圧力検出装置の前記ベースからの高さと面一、あるいはそれよりも低い位置に配置されており、
前記除電板は、前記半導体形圧力検出装置のアースパッド及び前記アース端子ピンと電気的に接続させてあり、
前記除電板は、平面視で、前記半導体形圧力検出装置と重ならないように、前記半導体形圧力検出装置の周囲に配置される
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記除電板は、前記アース端子ピンとハンダ付けにより電気的に接続されたことを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
流体の圧力を受圧するダイアフラムと、
アースパッドを含む複数のボンディングパッドを備えた半導体形圧力検出装置と、
前記ダイアフラムとの間で絶縁性媒質が封入された受圧空間が形成され前記受圧空間内に前記半導体形圧力検出装置が設けられるベースと、
前記ベースに植設され前記半導体形圧力検出装置と電気的に接続される複数の端子ピン及び電気回路のゼロ電位と接続される1つのアース端子ピンとを具備した圧力センサであって、
前記ベース上には、前記半導体形圧力検出装置の周囲位置の一部に除電板が設けられており、
前記除電板は、前記ベースからの高さが前記半導体形圧力検出装置の前記ベースからの高さと面一、あるいはそれよりも低い位置に配置されており、
前記除電板は、前記半導体形圧力検出装置のアースパッド及び前記アース端子ピンと電気的に接続させてあり、
前記除電板は、平面視で、前記半導体形圧力検出装置と重ならないように、前記半導体形圧力検出装置の周囲に配置される
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
前記除電板は、前記アース端子ピンとハンダ付けにより電気的に接続されたことを特徴とする請求項3記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体形圧力検出装置を備えた圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧力センサは、冷凍冷蔵装置や空調装置に装備されて冷媒圧力を検知したり、産業用機器に装備されて各種の流体圧力の検知に使用されている。
半導体形圧力検出装置は、ダイアフラムで区画されてオイルが封入された受圧室内に配置され、受圧空間内の圧力変化を電気信号に変換して外部に出力する機能を備える。
ダイアフラムは可撓性の金属板であって、半導体形圧力検出素子との間で電位差が発生したり、封入されたオイルが静電気を帯びたりすると、半導体形圧力検出素子に不具合が生ずる場合がある。
【0003】
そこで、半導体形圧力検出素子とダイアフラムとの間に導電性部材を配置して、この導電性部材を電気回路のゼロ電位に接続することで除電を図るものが、下記の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−302300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より簡素な構造の除電板を備え、受圧空間の高さ寸法を拡大する必要がない圧力検出センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の圧力センサは、流体の圧力を受圧するダイアフラ
ムと、アースパッドを含む複数のボンディングパッドを備えた半導体形圧力検出装置と、
前記ダイアフラムとの間で
絶縁性媒質が封入された受圧空間が形成され前記受
圧空間内に前記半導体形圧力検出装置が設けられるベースと、前記ベースに植設され前記
半導体形圧力検出装置と電気的に接続される複数の端子ピン及び電気回路のゼロ電位と接
続される1つのアース端子ピンとを具備した圧力センサであって、前記ベース上には、前
記半導体形圧力検出装置の周囲位置に除電板が設けられており、前記除電板は、前記ベー
スからの高さが前記半導体形圧力検出装置の前記ベースからの高さと面一、あるいはそれ
よりも低い位置に配置されており、前記除電板は、前記半導体形圧力検出装置のアースパ
ッド及び前記アース端子ピンと電気的に接続さ
せてあり、さらに、前記除電板は、平面視で、前記半導体形圧力検出装置と重ならないように、前記半導体形圧力検出装置の周囲に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、前記除電板は、前記圧力検出素子の周囲位置の一部に配置されることもできる。
さらに、前記除電板は、前記アース端子ピンとハンダ付けにより電気的に接続されることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成を採用することによって、静電気等の電磁気的ノイズに対する耐性に富んだ信頼性の高い圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の圧力センサの第1の実施例の縦断面図である。
【
図2】本発明の圧力センサの第1の実施例を示す要部の(a)は平面図、(b)は(a)のA−A´断面図である。
【
図3】本発明の圧力センサの第2の実施例を示す要部の(a)は平面図、(b)は(a)のB−B´断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2に示すように、圧力センサ1は段付の円筒形状のカバー10を有し、カバー10の大径の開口部には、後述する半導体形圧力検出装置60が搭載されたベース40、図示されない流体流入管が接続される接続ナット20を支持する取付部材30、ベース40及び取付部材30によりその外周部が挟持されたダイアフラム50等より成る圧力検知ユニットが取り付けられる。
皿状のベース40とダイアフラム50で区画される受圧空間52にはオイル等の絶縁性の液状媒質が充填される。ボール99は、ベース40に形成された孔99aを介して受圧空間52内に液状媒質を充填した後に該孔を封止する為のものであり、ベース40に溶接等の手段で固着される。
ベース40の受圧空間52側の中央部には半導体形圧力検出装置60が搭載される。圧力検出装置60は、ガラス製の台座62とそれに貼付された圧力検出素子(半導体チップ)64とからなる。圧力検出素子64は、この例においては8つのボンディングパッド(電極)を備え、そのうちの3つは出力信号用の電源入力パッド、アースパッド及び信号出力パッドであり、残る5つは信号調整用パッドである。
【0011】
半導体形圧力検出装置60の周囲にはベース40を貫通する複数本(この例においては8本)の端子ピン70、72が位置する。端子ピン70、72はベース40に対してハーメチックシール74により絶縁封止されて起立する。
【0012】
複数の端子ピンのうちの1つはアース端子ピン72である。これらの7本の端子ピン70と1本のアース端子ピン72は中継基板90に接続される。また、電源入力パッド、アースパッド及び信号出力パッドに接続された3本の端子ピン70、72は、コネクタ92を介してリード線94に連結される。リード線94は、当該圧力センサ1が設置された冷凍冷蔵装置や空調装置等の制御盤内に設けられた図示されない電気回路に接続される。
半導体形圧力検出装置60(圧力検出素子64)の、アースパッドを除く各ボンディングパッドと端子ピン70とはボンディングワイヤ80で接続(結線)される。また、アースパッドは後述する除電板100とボンディングワイヤ81で接続される。
上述の圧力検知ユニットがカバー10内に配置された後、カバー10の大径の開口部側及び小径の開口部側(リード線94が導出される側)からカバー10の内部に樹脂Pが充填、固化され、これによりカバー10内に圧力検知ユニットが固定される。
【0013】
接続ナット20に導入される流体は流体導入室32内に入り、その圧力でダイアフラム50が変形し、受圧空間52内の媒質を加圧する。
半導体形圧力検出素子64はこの圧力変動を検知して電気信号に変換し、端子ピン70を介して電気信号を外部に出力する。
【0014】
この第1の実施例にあっては、半導体形圧力検出装置60を囲むように(半導体形圧力検出装置60の周囲に)、除電板100がベース40上に接着剤等により貼り付けてある。
【0015】
除電板100は、外部形状が多角形状の平面形状を有し、内側に半導体形圧力検出装置60の外周を囲むための窓孔102と、アース端子ピン72を挿通する為の孔部102aを設けてある。
除電板100がベース40上に貼り付けられた状態においては、孔部102aに挿通されたアース端子ピン72の先端部は、除電板100の上面からやや突出している。そして、除電板100とアース端子ピン72との間はハンダ付け110により電気的に接続される。
ハンダ付け110により除電板100とアース端子ピン72を結合するので、平坦面で結合することができる。
【0016】
アース端子ピン72は、リード線94を介して当該圧力センサ1が設置された冷凍冷蔵装置や空調装置等の制御盤内に設けられた電気回路のゼロ電位に接続されるものであり、半導体形圧力検出装置60の周囲に帯電する電位、あるいは受圧空間52内に充填された液状媒質に帯電する電位は除電板100を介して除電され、これにより半導体形圧力検出装置60の帯電に起因する作動不良が防止される。
【0017】
図3は、本発明の圧力センサの第2の実施例の要部を示す図であり、
図1及び2と同一の符号は、同一又は同等部分を示している。
図3に示す第2の実施例にあっては、半導体形圧力検出装置60の周囲の一部(側面)に除電板200がベース40上に接着剤等により貼り付けてある。
【0018】
除電板200は、外部形状が平面形状を有し、
図2に示された半導体形圧力検出装置60を囲う形状とは異なり、該検出装置60の側面に配置され、前述の除電板100に比較して小型となっている。
この除電板200も、半導体形圧力検出装置60のアースパッドとボンディングワイヤ81により接続され、また除電板200と該除電板200に設けられた孔部102aに挿通されたアース端子ピン72との間はハンダ付け210により電気的に接続される。
ハンダ付け210により除電板200とアース端子ピン72を結合するので、平坦面で結合することができる。
【0019】
アース端子ピン72は、リード線94を介して当該圧力センサ1が設置された冷凍冷蔵装置や空調装置等の制御盤内に設けられた電気回路のゼロ電位に接続されるものであり、半導体形圧力検出装置60の周囲に帯電する電位、あるいは受圧空間52内に充填された液状媒質に帯電する電位は除電板200を介して除電され、これにより半導体形圧力検出装置60の帯電に起因する作動不良が防止される。
【0020】
除電板100、200は、例えば、セラミックス、ガラス等の無機材料、又はポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PPS等の耐熱性に富んだ絶縁層を設け、その片側の面に導電層を形成した構造を有し、接着剤層を介してベース40上に固着される。導電層は、金属の板状で構成したり、あるいは印刷や焼成で形成してもよい。導電層の材料としては金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等が代表的であるが、高電圧耐久性を得るためにタングステンやモリブデン等が高融点材料を用いることもできる。
また、除電板は、絶縁層を設けることなく、金属板のみで構成されてもよい。
【0021】
本発明の各実施例に装備される板状の除電板100、200は、そのベース40からの高さが半導体形圧力検出装置60のベース40からの高さと同一かあるいは低い位置に設定されている。換言すれば、除電板100、200は、固着されるベース40の表面の基準高さ位置に対して、除電板の表面高さ位置が半導体形圧力検出装置60のガラス製台座部62の表面高さ位置に比べて低くなるように構成されている。
これにより、受圧空間52の高さ寸法を従来の圧力センサのものと同様としたままで、除電板100、200を配設することが可能となり、圧力センサのサイズの変更を必要とすることなくオイル等の封入媒質の除電を効果的に発揮させることができる。
また、上記の構成により、圧力検出素子64のボンディングパッドと端子ピン70とをワイヤボンディングする際に、除電板100、200が邪魔をすることがなく、その作業性が低下することがない。
【0022】
本発明は以上のように、受圧空間52内の帯電を効果的に除去して半導体形圧力検出装置60の作動不良をより確実に防止することができる。
【0023】
本発明の圧力センサにあっては、半導体形圧力検出装置の周囲に又はその側方位置に除電板を設けてあるので、受圧空間内の静電気等の電磁気的ノイズによる影響を防止して、センサとしての信頼性を向上することができる。
また、除電板は、使用環境のノイズレベルに応じて、受圧空間内への設置の有無を適宜に選択することが可能である。
また、除電板の高さ位置を半導体形圧力検出装置の高さ位置より低くすることにより、ワイヤボンディングの作業性を損なうことなく圧力センサの製造工程が簡素化され、サイズも従来のものと同様に保つことができる。
なお、除電板100、200の高さ位置は、ガラス台座62の高さ位置よりも低くしても良い。
また、除電板100、200とアース端子ピン72との間はハンダ付け110により電気的に接続されるものとしたが、本発明は特にこれのみに限定されることはなく、カシメ、圧着、圧入、溶接、あるいは導電性接着剤を用いた接着等の手法により、電気的に接続されても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 圧力センサ 10 カバー
20 接続ナット 30 取付部材
32 流体導入室 40 ベース
50 ダイアフラム 52 受圧空間
60 半導体形圧力検出装置 62 ガラス台座
64 検出素子 70 端子ピン
72 アース端子ピン 74 ハーメチックシール
80、81 ボンディングワイヤ 82 アース用ボンディングワイヤ
90 中継基板 92 コネクタ
94 リード線
100、200 除電板
110、210 ハンダ付け