(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111229
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/77 20060101AFI20170327BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B01D53/77ZAB
B01D53/18 150
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-241294(P2014-241294)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101554(P2016-101554A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】597073807
【氏名又は名称】株式会社日省エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】平久井 健三
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0169576(US,A1)
【文献】
特開2008−221042(JP,A)
【文献】
特開平07−260130(JP,A)
【文献】
特開昭48−012283(JP,A)
【文献】
特開平11−128644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
B01F 3/00−3/22
B01J 10/00−10/02
B01J 19/00−19/32
B04C 1/00−11/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室の内部で旋回される排ガスに同一方向から水を噴霧する排ガス浄化装置において、
該処理室の排ガスが導入される始端側に水を噴霧するノズルを設ける一方、処理室の排ガスが排出される終端側には排ガスと水との混合気体を終端側に引込むように旋回させて衝突する混合気体から水を分離する気液分離機能を有するスクリュを設け、
該ノズルとスクリュとが設けられた処理室は終端側に続く処理室の始端側が連結される多段構成となっていると共に該多段構成の最終段の処理室の終端側に混合気体を吸引排出するファンが配設され、
前記処理室の終端側に分離された水を排出する排出口が設けられると共に排出口から排出された水をノズルに再供給する水循環路が配設されている、
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の排ガス浄化装置において、スクリュを螺旋羽根ブラシとしたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスと水(処理液)とを接触させて排ガスの浄化(有害物質の除去等)を行う気液接触式の排ガス浄化装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
気液接触式の排ガス浄化装置としては、排ガスと水とを確実に接触させるために、排ガスと水とを逆方向から対向させて接触させる構造のものがある。然しながら、この構造のものでは、気液接触の時間が短くなってしまい、排ガスの充分な浄化を期待することができないことが明らかになっている。そこで、気液接触の時間を長く確保することのできる排ガス浄化装置の開発が要望されている。
【0003】
従来、気液接触の時間を長く確保することを指向した排ガス浄化装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、処理室の内部で旋回される排ガスに同一方向から水を噴霧する排ガス浄化装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る排ガス浄化装置は、処理室の内部に形成された流れの経路長が長くなる旋回流の中で排ガスと水とを接触させることで、気液接触の時間を長く確保しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3073972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る排ガス浄化装置では、処理室の内部に排ガスを積極的に旋回させる機構を備えていないため、処理室の終端側での旋回流が弱化崩壊して気液接触の時間を充分に確保することができないという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、気液接触の時間を充分に確保することのできる排ガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る排ガス浄化装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、本発明排ガス浄化装置は、処理室の内部で旋回される排ガスに同一方向から水を噴霧する排ガス浄化装置において、該処理室の排ガスが導入される始端側に水を噴霧するノズルを設ける一方、処理室の排ガスが排出される終端側には排ガスと水との混合気体を終端側に引込むように旋回させて衝突する混合気体から水を分離する気液分離機能を有するスクリュを設け、該ノズルとスクリュとが設けられた処理室は終端側に続く処理室の始端側が連結される多段構成となっていると共に該多段構成の最終段の処理室の終端側に混合気体を吸引排出するファンが配設され、前記処理室の終端側に分離された水を排出する排出口が設けられると共に排出口から排出された水をノズルに再供給する水循環路が配設されていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、処理室の始端部でノズルにより「押」の力を作用させ、処理室の終端部でスクリュにより「引」の力を作用させることで、処理室の内部の全体に均等に旋回流を形成することができ、処理室が多段構成に連結されることで、旋回流の流れの経路長が長く確保される。
また、多段構成の最終段の処理室の終端側にファンが設けられることで、混合気体が吸引排出され多段構成による流動抵抗の増大で旋回流が滞留するのを防止することができる。
また、気液分離機能を有するスクリュによって混合気体から水が分離されることで、処理室の終端側からの水の排出を低減することができる。
さらに、処理室の排出口から排出された水が水循環路によってノズルに再供給されることで、稼働に伴う水の消費を低減することができる。
【0012】
また、請求項2では、スクリュを螺旋羽根ブラシとしたことを特徴とする。
【0013】
この手段では、混合気体から水を分離する気液分離機能が高められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る排ガス浄化装置は、処理室の始端部でノズルにより「押」の力を作用させ、処理室の終端部でスクリュにより「引」の力を作用させることで、処理室の内部の全体に均等に旋回流を形成することができ、処理室が多段構成に連結されることで、旋回流の流れの経路長が長く確保されるため、気液接触の時間を充分に確保することができる効果がある。
また、多段構成の最終段の処理室の終端側にファンが設けられることで、混合気体が吸引排出され多段構成による流動抵抗の増大で旋回流が滞留するのを防止することができるため、気液接触の時間をより充分に確保することができる効果がある。
また、気液分離機能を有するスクリュによって混合気体から水が分離されることで、処理室の終端側からの水の排出を低減することができるため、排ガスから水に捕捉された有害物質等が処理室から排出されるのを低減することができる。
さらに、処理室の排出口から排出された水が水循環路によってノズルに再供給されることで、稼働に伴う水の消費を低減することができるため、低コストの稼働が可能になる効果がある。
【0015】
また、請求項2として、スクリュを螺旋羽根ブラシとしたことから、混合気体から水を分離する機能が高められ、水に捕捉された有害物質等が処理室から排出されるのを低減する効果を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る排ガス浄化装置を実施するための形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る排ガス浄化装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
この形態では、縦型多段(5段)構成からなるものが示されている。
【0019】
この形態は、
図1に示すように、処理室1,ノズル2, スクリュ3を主要部として構成されている。
【0020】
処理室1は、円筒形に形成され、一方(始端側)の端口が排ガスGの導入口1aとして開口され、他方(終端側)の端部付近の底部に水Wの排出口1bが開口されている。
【0021】
この処理室1は、ケーシング4に水平に支持されている。
【0022】
ケーシング4は、長方形の箱形に形成され、上下の端縁に多段積層のためのフランジ4a,4bが設けられ、処理室1の始端側となる側端面に排ガスGの導入管が接続される接続口4cが開口され、処理室1の始端側となる上部にフランジ4aを延長したような格好で部分的に閉塞し下部へ向けてL字形に屈曲され内部を区画する整流板4dが設けられている。なお、接続口4cは、最下段となるものを除いて閉塞版4eによって閉塞されている。
【0023】
ケーシング4の下部には、水受皿5が取付けられている。
【0024】
この水受皿5は、ケーシング4の下部(底部)の大部分を閉塞して処理室1の排出口1bから排出された水Wを一定深さに貯留するもので、オーバフロー口5aがケーシング4の整流板4dよりも処理室1の始端側となる位置に設けられている。なお、最下段となるケーシング4に取付けられた水受皿5の底部には、水Wを落下させる水抜孔5bが設けられている(
図4参照)。
【0025】
積層されたケーシング4は、
図1に示すように、処理室1の始端側と終端側とが交互に逆向きになるように設定される。
【0026】
最下段のケーシング4の下部には、貯水槽6が設けられる。
【0027】
この貯水槽6は、ボールタップ等によって一定量の水Wを自動的に貯留することができるとともに、水受皿5の水抜孔5bから落下した水Wをも貯留する。
【0028】
貯水槽6からノズル2には、ポンプ,弁,配管等からなる給水路7が配設されている。
【0029】
この給水路7は、貯水槽6が水受皿5の水抜孔5bから落下した水Wをも貯留していることから、水Wをノズル2に再供給する水循環路ともなる。
【0030】
最上段のケーシング4には、カバー8を介して排ガスGと水Wとの混合気体GWを吸引排出するファン9が設けられている。
【0031】
ノズル2は、ケーシング4に支持されて処理室1の軸中心線上で導入口1aに向けて水Wを噴霧するものである。従って、ノズル2と処理室1の導入口1aとの間には、少しのクリアランスが確保される。噴霧される水Wの粒子については、排ガスWの性状や含まれている有害物質の種類に対応して適宜設定されることになる。なお、噴霧される水Wについては、適宜吸着剤等の処理剤の混入が可能である。また、噴霧される水Wの方向については、処理室1の軸中心線に対して45度以内の拡散に抑えるのが好ましい。
【0032】
スクリュ3は、ケーシング4に支持されて処理室1の終端側の内部に収容され、排ガスGと水Wとの混合気体GWを処理室1の終端側に引込むように旋回させる螺旋羽根ブラシからなる。
【0033】
このスクリュ3は、ケーシング4の外部に設けられたモータ10によって駆動される。
【0034】
この形態によると、多段構成の最下段において、給水路7から給水されたノズル2からの水Wの噴霧によって、ケーシング4の接続口4cから流入した排ガスGが処理室1の内部に導入口1aから導入される。そして、処理室2の内部で排ガスGと水Wとの混合気体GWがスクリュ3によって旋回される。従って、処理室1の始端部でノズル2により「押」の力を作用させ、処理室1の終端部でスクリュ3により「引」の力を作用させることになり、処理室1の内部の全体に均等に旋回流を形成することができる。この結果、気液接触の時間を充分に確保することができ、排ガスGの充分な浄化を期待することができることになる。
【0035】
そして、排ガスGと水Wとの混合気体GWが螺旋羽根ブラシからなるスクリュ3に衝突することによって、混合気体GWから有害物質等を含んだ水Wがある程度分離される。
【0036】
混合気体GWから分離された水Wは、処理室1の排出口1bから水受皿5に排出され貯留される。従って、水受皿5の内部で水Wに捕捉された有害物質等をある程度沈殿させることができる。水受皿5の内部で一定の貯留量を超えた水Wは、オーバフロー口5a,水抜孔5bから貯水槽6に落下する。貯水槽6に落下した水Wは、水循環路となる給水路7からノズル2に再供給される。従って、稼働に伴う水Wの消費を低減することができるため、低コストの稼働が可能になる。
【0037】
有害物質等を捕捉した水Wがある程度除去された混合気体GWは、水Wとともに水受皿5に排出されてから処理室1の外周を上昇する。このとき、上段のケーシング4に取付けられている水受皿5によって上方部分がほとんど閉塞されているため、上昇した混合気体GWが上段のケーシング4に支持され整流板4dによって囲まれているノズル2付近に集中される。
【0038】
そして、上段の処理室1において、前述の最下段の処理室1で行われた浄化処理が再度行われ、排ガスGの浄化度が高められることになる。即ち、5回浄化処理が繰返される。
【0039】
多段(5段)の処理室による浄化処理は、混合気体GWの旋回流の流れの経路長が長く確保されることになる。従って、気液接触の時間を充分に確保することができ、排ガスGの充分な浄化を期待することができることになる。
【0040】
なお、多段構成の最終段の処理室1の終端側にファン9が設けられることで、混合気体GWが吸引排出され、多段構成による流動抵抗の増大で旋回流が滞留するのを防止することができる。
以上、図示した形態の外に、横型の多段構成とすることも可能である。
【0041】
さらに、格段の処理室1の大きさを異ならせることも可能である。
【実施例】
【0042】
図示した本発明に係る排ガス浄化装置を実施するための形態について、小規模のものとして、処理室1の直径が160mmの場合に長さ(軸長)を800mmとし、処理室1の直径が200mmの場合に長さ(軸長)を1000mmとするのが好ましいことを確認している。また、この程度の処理室1の規模で、水Wに処理剤を混入しない単純な無煙浄化の場合、圧力を0.2MPaとし噴霧量を毎分1Lとするのが好ましいことを確認している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る排ガス浄化装置は、研究室等に設備される小型のものから工場に設備される大型のものまで適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 処理室
2 ノズル
3 スクリュ
7 給水路(水循環路)
G 排ガス
W 水
GW 混合気体