(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムであって、
前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付部と、
売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定部と、
前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理部とを備え、
前記注文約定部は、前記受付終了時点で前記売り注文の数量が前記買い注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して前記投資商品の調整売りを発注し、これに応じた前記流動性供給業者からの調整売り注文を前記業者指定売り値で受け付けて前記売り注文に加えた後、前記売り注文および前記買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定する
ことを特徴とする投資商品約定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、有価証券の資産価値に対する損失補償が表章されている投資商品を約定するにはそれぞれデメリットがあるため、顧客が安心して投資商品の売買注文を出すことができるとともに、顧客からの売買注文から損失補償の満期時の決済までの一連の処理を約定業者がリスクなく約定サービスを維持継続できるようなシステムを構成することは難しいという問題点があった。
【0007】
例えば、前述したオークション方式については、東京証券取引所でオークション方式により売買できる株券プットオプションが上場されているものの、ほとんど注文が発注されていないため、価格形成がされていない。このため、顧客が注文を出そうにも適正価格が不明であり、発注が適正価格から大きくかい離した売買価格が約定し不測の損害を被る恐れがあるため、顧客が安心して発注投資商品の売買注文を出すことができない。
また、前述したマーケットメイカー方式については、顧客からの売買注文を約定業者が引き受けて約定するため、売買約定数が異なった場合には約定業者側で損失が発生する場合もあり、場合によっては約定業者にとって過大なリスクとなり、約定サービスの維持継続が困難になる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、顧客が安心して売買注文を出すことができるとともに、約定業者がリスクなく約定サービスを維持継続できる投資商品約定技術技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる投資商品約定システムは、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムであって、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付部と、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定部と、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理部とを備えている。
【0010】
これに加えて、前記注文約定部が、前記受付終了時点で前記売り注文の数量が前記買い注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して前記投資商品の調整売りを発注し、これに応じた前記流動性供給業者からの調整売り注文を前記業者指定売り値で受け付けて前記売り注文に加えた後、前記売り注文および前記買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる他の投資商品約定システムは、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムであって、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付部と、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定部と、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理部とを備え、前記注文約定部が、前記受付終了時点で前記買い注文の数量が前記売り注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して前記投資商品の調整買いを発注し、これに応じた前記流動性供給業者からの調整買い注文を前記業者指定買い値で受け付けて前記買い注文に加えた後、前記売り注文および前記買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしたものである。
【0012】
また、本発明にかかる他の投資商品約定システムは、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムであって、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付部と、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定部と、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理部とを備え、前記注文受付部が、前記売り注文の受付時、前記売り注文の数量分の最大補償額からなる準備補償代金を前記売り方口座の預金から拘束し、前記損失補償処理部は、前記損失補償代金を決済する際、前記売り方口座で拘束されている前記準備補償代金により前記損失補償代金を決済し、前記準備補償代金から前記損失補償代金を差し引いた残額分に関する拘束を解放するようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる投資商品約定方法は、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムで用いられる投資商品約定方法であって、売り注文受付部が、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付ステップと、注文約定部が、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定ステップと、損失補償処理部が、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理ステップとを備え
、前記注文約定ステップは、前記受付終了時点で前記売り注文の数量が前記買い注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して前記投資商品の調整売りを発注し、これに応じた前記流動性供給業者からの調整売り注文を前記業者指定売り値で受け付けて前記売り注文に加えた後、前記売り注文および前記買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしたものである。
また、本発明にかかる他の投資商品約定方法は、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムで用いられる投資商品約定方法であって、売り注文受付部が、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付ステップと、注文約定部が、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定ステップと、損失補償処理部が、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理ステップとを備え、前記注文約定ステップは、前記受付終了時点で前記買い注文の数量が前記売り注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して前記投資商品の調整買いを発注し、これに応じた前記流動性供給業者からの調整買い注文を前記業者指定買い値で受け付けて前記買い注文に加えた後、前記売り注文および前記買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしたものである。
また、本発明にかかる他の投資商品約定方法は、有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品について、買い注文および売り注文を受け付けて約定するための投資商品約定システムで用いられる投資商品約定方法であって、売り注文受付部が、前記損失補償の内容および前記投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値と数量を含む売り注文と、買い方からの買い値と数量を含む買い注文とを受け付ける注文受付ステップと、注文約定部が、売買注文の受付終了時点において、前記売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と前記約定業者口座との間で決済する注文約定ステップと、損失補償処理部が、前記補償期間の満期時に前記有価証券の資産価値を確認し、前記損失補償が必要な場合には、前記投資商品の売買履歴に基づいて、前記損失補償のための損失補償代金を前記売り方口座と前記約定業者口座との間で決済するとともに、前記約定業者口座と前記買い方口座との間で決済する損失補償処理ステップとを備え、前記注文受付ステップは、前記売り注文の受付時、前記売り注文の数量分の最大補償額からなる準備補償代金を前記売り方口座の預金から拘束し、前記損失補償処理ステップは、前記損失補償代金を決済する際、前記売り方口座で拘束されている前記準備補償代金により前記損失補償代金を決済し、前記準備補償代金から前記損失補償代金を差し引いた残額分に関する拘束を解放するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、約定業者から投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件が顧客に提示されるとともに、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文が選択されて約定される。したがって、顧客が安心して売買注文を出すことができるとともに、約定業者がリスクなく約定サービスを維持継続することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[投資商品約定システム]
まず、
図1を参照して、本実施の形態にかかる投資商品約定システム1について説明する。
図1は、投資商品約定システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
この投資商品約定システム1は、約定業者が有価証券の資産価値に対する一定補償期間分の損失補償が表章されている投資商品に関する取引サービスを提供する際に用いられて、顧客からの投資商品に関する買い注文および売り注文を受け付けて約定するためのシステムである。
投資商品約定システム1には、主な機能部として、注文受付部11、注文約定部12、損失補償処理部13、口座管理部14、および供給業者端末20が設けられている。これら機能は、1つまたは複数のサーバ装置から構成してもよく、すべてを別個のサーバ装置から構成してもよい。
【0018】
注文受付部11は、顧客が利用する顧客端末30(30A,30B,…)と通信網NWを介して接続し、Webサービスにより各種データをやり取りする機能と、約定業者が決定した損失補償の内容および投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を売り方顧客端末30Aおよび買い方顧客端末30Bへ提示する機能と、これに応じた売り方となる顧客の指示に基づく売り方顧客端末30Aからの売り値および数量を含む売り注文、買い方となる顧客の指示に基づく買い方顧客端末30Bからの買い値および数量を含む買い注文をそれぞれ受け付ける機能とを有している。なお、売買注文としては、具体的な売り値および買い値が指定されたいわゆる指値注文だけではなく、価格指定のない成行注文であってもよい。
【0019】
注文約定部12は、注文受付部11での売買注文の受付終了時点において、受け付けた売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定する機能と、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者の約定業者口座との間で決済する機能と、約定した買い注文の代金を買い方口座と約定業者口座との間で決済する機能と、売り注文の受付時、売り注文の数量分の最大補償額からなる準備補償代金を売り方口座の預金から拘束する機能とを有している。
【0020】
また、注文約定部12は、売買注文の受付終了時点で売り注文の数量が買い注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者の供給業者端末20に対して投資商品の調整売りを発注する機能と、これに応じた流動性供給業者の指示に基づく供給業者端末20からの調整売り注文を業者指定売り値で受け付けて売り注文に加えた後、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定する機能とを有している。
【0021】
また、注文約定部12は、売買注文の受付終了時点で買い注文の数量が売り注文の数量より少ない場合、供給業者端末20に対して投資商品の調整買いを発注する機能と、これに応じた流動性供給業者の指示に基づく供給業者端末20からの調整買い注文を業者指定買い値で受け付けて買い注文に加えた後、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定する機能とを有している。
【0022】
損失補償処理部13は、補償期間の満期時に有価証券の資産価値を確認する機能と、損失補償が必要な場合には、口座管理部14で管理されている投資商品の売買履歴に基づいて、損失補償のための損失補償代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定業者口座と買い方口座との間で決済する機能とを有している。
【0023】
口座管理部14は、データベースを利用して、売り方口座、買い方口座、供給業者口座、および約定業者口座に預け入れされている預金、投資商品、および売買履歴を管理する機能と、注文約定部12および損失補償処理部13での決済に応じて対応する口座での入出金(付け替え)を実行して預金残高を更新する機能と、注文約定部12および損失補償処理部13での拘束および解放に応じて対応する口座の預金の一部を拘束および解放して預金残高を更新する機能と、注文約定部12での約定および損失補償処理部13での損失補償代金決済に応じて対応する口座で管理する投資商品の数量を更新する機能とを有している。
【0024】
供給業者端末20は、特定の流動性供給業者が利用する端末装置であり、注文約定部12から発注された投資商品の調整売りおよび調整買いを受け付ける機能と、これに応じた流動性供給業者の指示に基づく調整売り注文および調整買い注文を注文約定部12へ通知する機能とを有している。
【0025】
顧客端末30は、投資商品の売り方や買い方となる顧客が利用する端末装置であり、注文受付部11からの通知された、損失補償の内容および投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を画面表示して顧客に提示する機能と、これに応じた顧客の指示に基づく売り注文および買い注文を注文受付部11へ通知する機能とを有している。
【0026】
[本実施の形態の動作]
次に、
図2を参照して、本実施の形態にかかる投資商品約定システム1の動作について説明する。
図2は、投資商品約定動作を示すシーケンス図である。
投資商品約定システム1は、注文受付開始から一定期間にわたり顧客からの投資商品の売買注文を受け付け、注文受付終了に応じて、受け付けた注文の約定を行う。これら処理は、例えば1日周期で実行される。
【0027】
まず、注文受付部11は、注文受付開始時刻の到来に応じて注文受付を開始し(ステップ100)、売り方顧客端末30Aに対して約定業者が予め決定した売り条件を通知する(ステップ101)。これに応じて、売り方顧客端末30Aは、売り条件を画面表示して売り方となる顧客に提示し、顧客の売り指示に応じて(ステップ102)、顧客が指定した売り値と数量を含む売り注文を注文受付部11へ通知する(ステップ103)。
【0028】
これにより、売り方は、約定業者から指定された投資商品の業者指定売り値を参考にすることができ、顧客が安心して売り注文を出すことができる。なお、注文受付部11は、売り注文の受付時、売り方口座の預金のうちから、売り条件で提示した最大補償額を売り注文の数量分だけ、準備補償代金として拘束して使用禁止とすることにより、買い方に対する損失補償代金を確保しておく。
【0029】
また、注文受付部11は、売り条件の通知と並列して、買い方顧客端末30Bに対して約定業者が予め決定した買い条件を通知する(ステップ104)。これに応じて、買い方顧客端末30Bは、買い条件を画面表示して買い方となる顧客に提示し、顧客の買い指示に応じて(ステップ105)、顧客が指定した買い値と数量を含む買い注文を注文受付部11へ通知する(ステップ106)。
【0030】
これにより、買い方は、約定業者から指定された投資商品の業者指定買い値を参考にすることができ、顧客が安心して買い注文を出すことができる。なお、注文受付部11は、買い注文の受付時、買い方口座の預金のうちから業者指定買い値額を購入数量分だけ、支払い代金として拘束して使用禁止とすることにより、買い方の支払い代金を確保しておく。
【0031】
また、注文受付部11は、注文終了時刻の到来に応じて注文受付を終了する(ステップ107)。注文約定部12は、売買注文の受付終了時点において、注文受付部11で受け付けた売買注文を取得して数量を確認し(ステップ110)、例えば売買注文数の差が予め設定されているしきい値以下であり、売買注文の不均衡を是正する必要がない場合(ステップ110:NO)、後述するステップ114へ移行する。
【0032】
一方、例えば売買注文数の差が予め設定されているしきい値より多いなど、売買注文の不均衡を是正する必要がある場合(ステップ110:YES)、供給業者端末20に対して売買条件を含む投資商品の調整売りまたは調整買いを発注する(ステップ111)。この際、売り注文の数量が買い注文の数量より少ない場合、供給業者端末20に対して調整売りを発注し、買い注文の数量が売り注文の数量より少ない場合、供給業者端末20に対して調整買いを発注する。
【0033】
供給業者端末20は、注文約定部12から発注された投資商品の調整売りまたは調整買いに応じて、その売買条件を画面表示して流動性供給業者に提示し、流動性供給業者の指示に応じて(ステップ112)、調整売り注文または調整買い注文を注文約定部12へ通知する(ステップ113)。この際、調整売り注文を受け付けた場合には、売り方顧客の場合と同様にして供給業者口座の一部を拘束して準備補償代金を確保し、調整買い注文を受け付けた場合には、買い方顧客の場合と同様にして供給業者口座の一部を拘束して買い方の支払い代金を確保しておく。
【0034】
この後、注文約定部12は、供給業者端末20からの調整売り注文については業者指定売り値で受け付けて売り注文に加えるとともに、供給業者端末20からの調整買い注文については業者指定買い値で受け付けて買い注文に加えた後、これら売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定する(ステップ114)。
【0035】
この際、注文約定部12は、前述したオークション方式に基づいて、売り注文と買い注文を相対させて同一数量分だけ約定するとともに、価格指定のない成行注文を価格指定のある指値注文より優先して約定させ、指値注文の中では、買い指値なら一番高い価格の注文、売り指値なら一番低い価格の注文を優先して約定させる。これにより、注文約定部12は、売り注文および買い注文のうち注文数の少ない注文数に合わせた数量を売買約定数として、同一数量分ずつ売り注文および買い注文を約定することになり、売買約定数が異なった場合に発生しうる約定業者側での損失を回避でき、約定業者のリスクを抑止できる。
【0036】
この後、注文約定部12は、約定した売り注文の代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、売り方で売却した投資商品の数量を売り方口座に関連付けて登録し、約定した買い注文の代金を買い方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、買い方で購入した投資商品の数量を買い方口座に関連付けて登録する(ステップ115)。この際、買い方口座については、買い注文受付時に拘束しておいた支払い代金を解放するとともに、この支払い代金から先に買い注文の代金を差し引きし、不足金が出た場合には買い方口座から差し引くことになる。
【0037】
このようにして約定が完了した後、補償期間の満期に応じて(ステップ120)、損失補償処理部13は、補償期間における有価証券の資産価値の損失を確認し(ステップ121)、補償期間の開始時に比較して終了時における資産価値が低減していて損失補償が必要な場合には、口座管理部14で管理されている投資商品の売買履歴に基づいて、損失補償のための損失補償代金を売り方口座(または供給業者口座)と約定業者口座との間で決済するとともに、約定業者口座と買い方口座(または供給業者口座)との間で決済し(ステップ122)、一連の投資商品約定動作を終了する。この際、売り方口座について、売り注文受付時に拘束しておいた準備補償代金を解放し、この準備補償代金から損失補償代金を差し引き、余剰金が出た場合には売り方口座に戻ることになる。
【0038】
[動作例]
次に、
図3および
図4を参照して、本実施の形態にかかる投資商品約定システム1の動作例について説明する。
図3は、投資商品約定システムの動作例を示す説明図である。
図4は、投資商品約定システムの動作例(続き)を示す説明図である。
【0039】
図3に示すように、注文受付の開始に応じて、注文受付部11から売り方顧客端末30Aに対して売り条件が提示されるとともに、買い方顧客端末30Bに対して買い条件が提示される。この例では、約定業者が決定した業者指定売り値が9円で業者指定買い値が10円であるとし、最大補償額が100円で補償期間が約定完了から30日とする。これにより、約定業者は投資商品が1枚約定されるごとに1円=10円−9円の売り上げとなる。
【0040】
ここで、売り方顧客端末30Aから売り値8円で5枚分の売り注文を受け付けた場合、注文受付部11は売り方口座の預金のうちから、準備補償代金500円=100円×5枚分だけ拘束される。
また、買い方顧客端末30Bから買い値12円で10枚分の買い注文を受け付けた場合、注文受付部11は買い方口座の預金のうちから、業者指定買い値が10円に基づき支払い代金100円=10円×10枚分だけ拘束される。
【0041】
こうして注文受付が終了した後、注文約定部12で注文が集計され、10円以上の買いが10枚で、9円以下の売りが5枚であることから、約定可能数が5枚であり売買注文数の差が5枚であると確認される。ここで、売買注文数の差がしきい値4枚より多く売買不均衡であると判定された場合、売り注文数が買い注文数より少ないため、供給業者端末20に対して調整売りが発注される。
【0042】
ここで、供給業者端末20から業者指定売り値9円での2枚分の調整買い注文を受け付けた場合、供給業者口座の預金のうちから、準備補償代金200円=100円×2枚分だけ拘束される。
この後、注文約定部12で注文が再集計され、10円以上の買いが10枚で、9円以下の売りが7枚となり、約定可能数が7枚に増えたことになる。
【0043】
続いて、注文約定部12により、売り方、買い方、供給業者の注文主ごとに、約定業者との間で売買注文が約定されることになる。例えば、オークション方式で注文を受け付けた結果、売り値が9円となり、買い値が10円となった場合、まず、売り注文9円×5枚について売り方と約定業者との間で決済され、約定業者口座で支払い代金45円=9円×5枚が出金され、売り方口座にその45円が入金される。
【0044】
次に、買い注文10円×7枚について買い方と約定業者との間で決済され、買い方口座の支払い代金が解放されて70円=10円×7枚が出金され、約定業者口座にその70円が入金される。次に、また、調整買い注文9円×2枚について供給業者と約定業者との間で決済され、約定業者口座で支払い代金18円=9円×2枚が出金され、供給業者口座にその18円が入金される。
【0045】
このようにして売買注文が約定された後、約定完了から30日後の補償期間の満期に応じて、金融商品の資産価値に対する損失補償が行われることになる。この例では、まず、損失補償処理部13により、30日分の補償期間における金融商品の値動きが確認され、1枚当たり30円の損失が発生したものとする。金融商品の値動きについては、例えば通信網NWを介して一般的な市況提供サーバ(図示せず)から取得すればよい。
【0046】
ここで、損失補償処理部13により、口座管理部14で管理されている投資商品の売買履歴が参照されて、この例では、今回満期が来た投資商品が買い方口座に預け入れされており、その数量が7枚であること、そのうち5枚が売り方から売却され、残りの2枚が供給業者から売却されたことが確認され、これら投資商品の売買履歴に基づき損失補償が実施される。
これにより、買い方の損失額は210円=30円×7枚となり、この損失補償代金が、売り方口座および供給業者口座から約定業者口座に入金されるとともに、約定業者口座から買い方口座へ入金されることになる。
【0047】
したがって、まず売り方口座の準備補償代金1000円が解放され、売り方での売却枚数5枚分の損失補償代金150円=30円×5枚が出金され、残りの850円が売り方口座で使用可能となる。また供給業者口座の準備補償代金200円が解放され、供給業者での売却枚数2枚分の損失補償代金60円=30円×2枚が出金される。そして、これら損失補償代金150円および60円がそれぞれ約定業者口座に入金されるとともに、これらを合わせた損失補償代金210円=150円+60円が約定業者口座から買い方口座に入金されることになる。
【0048】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、注文受付部11が、損失補償の内容および投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件を提示し、これに応じた売り方からの売り値を指定した売り注文と、買い方からの買い値を指定した買い注文とを受け付け、注文約定部12が、売り注文および買い注文の受付を終了した受付終了時点において、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と業者の業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と業者口座との間で決済し、損失補償処理部13が、補償期間の満期時に有価証券の資産価値を確認し、損失補償が必要な場合には、損失補償のための損失補償代金を売り方口座と約定業者口座との間で決済するとともに、約定業者口座と買い方口座との間で決済するようにしたものである。
【0049】
これにより、約定業者から投資商品の業者指定売り値と業者指定買い値を含む売買条件が顧客に提示されるとともに、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文が選択されて約定される。したがって、顧客が安心して売買注文を出すことができるとともに、約定業者がリスクなく約定サービスを維持継続することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態において、注文約定部12が、受付終了時点で売り注文の数量が買い注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して投資商品の調整売りを発注し、これに応じた流動性供給業者からの調整売り注文を最高売り値で受け付けて売り注文に加えた後、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしてもよい。
【0051】
あるいは、注文約定部12が、受付終了時点で買い注文の数量が売り注文の数量より少ない場合、特定の流動性供給業者に対して投資商品の調整買いを発注し、これに応じた流動性供給業者からの調整買い注文を最低買い値で受け付けて買い注文に加えた後、売り注文および買い注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定するようにしてもよい。
【0052】
これにより、売買注文数の不均衡が大きい場合には、流動性供給業者からの調整売り注文あるいは調整買い注文により不均衡が緩和されて、ある程度の売買約定数が確保されるため、投資商品に流動性を供給することができ、取引市場の活性化に繋がる。また、流動性供給業者は、約定業者からの業者指定買い値あるいは業者指定売り値での売買が確約されるため、一般の顧客と比較して有利な投資ができ、流動性供給業者に対して注文の動機づけを効果的に行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態において、注文受付部11が、売り注文の受付時、売り注文の数量分の損失補償に関する最大補償額からなる拘束額を売り方口座の預金から拘束し、損失補償処理部13が、損失補償代金を決済する際、売り方口座で拘束されている拘束額で損失補償代金を決済し、拘束額から損失補償代金を差し引いた残額分に関する拘束を解放するようにしてもよい。
これにより、売り方の預金から買い方に対して損失補償代金を確実に支払うことができ、約定業者のリスクを回避することが可能となる。
【0054】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【解決手段】注文受付部11が、損失補償の内容および投資商品の指定売買価格を含む売買条件を提示し、売り値と数量を含む売り注文と買い値と数量を含む買い注文とを受け付け、注文約定部12が、受付終了時点に、売買注文のうちから売り買いの値段に基づいて同一数量分ずつ売り注文および買い注文を選択して約定し、約定した売り注文の代金を売り方口座と業者の業者口座との間で決済するとともに、約定した買い注文の代金を買い方口座と業者口座との間で決済し、損失補償処理部13が、補償期間の満期時に有価証券の資産価値を確認し、損失補償が必要な場合には、損失補償のための損失補償代金を売り方口座と約定業者口座との間および約定業者口座と買い方口座との間で決済する。