(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に、所定元素と酸素との化学結合、水分および塩素を含む第1の不純物、炭化水素化合物を含む第2の不純物を含む薄膜を形成する際の前記基板の温度よりも高い第1の温度で、前記基板上に形成された前記薄膜を熱処理することにより、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する工程と、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記第1の温度で熱処理した後の前記薄膜中から、前記第2の不純物を除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
前記第1の温度を、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する際に、前記第1の不純物により前記薄膜が酸化されない温度とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
前記第1の温度を、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する際に、前記第1の不純物と、前記薄膜中に含まれる前記第1の不純物とは異なる不純物とが、反応しない温度とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
前記第1の不純物を除去する工程を行う前の前記薄膜はポーラス状であり、前記第1の不純物を除去する工程および前記第2の不純物を除去する工程を行うことで、前記薄膜を、さらにポーラス化させる請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(1)基板処理装置の全体構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0014】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等の金属で構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201内には、ノズル249a〜249cが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a〜249cには、ガス供給管232a〜232cがそれぞれ接続されている。ガス供給管232aには、ガス供給管232d〜232fが接続されている。ガス供給管232bには、ガス供給管232g,232hが接続されている。ガス供給管232cには、ガス供給管232iが接続されている。このように、処理容器には、3本のノズル249a〜249cと、複数本のガス供給管232a〜232iとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0016】
ガス供給管249a〜249iには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241i、および開閉弁であるバルブ243a〜243iがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232j〜232lがそれぞれ接続されている。ガス供給管232j〜232lには、上流方向から順に、MFC241j〜241lおよびバルブ243j〜243lがそれぞれ設けられている。
【0017】
ガス供給管232a,232cの先端部には、ノズル249a,249cがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249cは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249cはL字型のロングノズルとしてそれぞれ構成されており、それらの各水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、それらの各垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249a,249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250cは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0018】
ガス供給管232bの先端部には、ノズル249bが接続されている。ノズル249bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。バッファ室237は、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、また、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237は、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部には、ガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250dは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0019】
ノズル249bは、バッファ室237のガス供給孔250dが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは、バッファ室237の中心を向くように開口している。ガス供給孔250bは、ガス供給孔250dと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。バッファ室237内と処理室201内との差圧が小さい場合、複数のガス供給孔250bの開口面積および開口ピッチを、上流側(下部)から下流側(上部)にわたりそれぞれ同一にするとよい。また、バッファ室237内と処理室201内との差圧が大きい場合、ガス供給孔250bの開口面積を上流側から下流側に向かって徐々に大きくしたり、ガス供給孔250bの開口ピッチを上流側から下流側に向かって徐々に小さくしたりするとよい。
【0020】
ガス供給孔250bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、ガス供給孔250bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させることが可能となる。そして、これら複数のガス供給孔250bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内へ導入することで、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うことが可能となる。複数のガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内へ噴出したガスは、バッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、複数のガス供給孔250dより処理室201内へ噴出する。複数のガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内へ噴出したガスは、ガス供給孔250dのそれぞれより処理室201内へ噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0021】
このように、本実施形態では、反応管203の内壁と、積載された複数のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、つまり、円筒状の空間内に配置したノズル249a〜249cおよびバッファ室237を経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a〜249cおよびバッファ室237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a〜250dから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内へガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0022】
ガス供給管232aからは、所定元素、Cおよびハロゲン元素を含み、所定元素とCとの化学結合を有する原料ガスとして、例えば、所定元素としてのSi、アルキレン基およびハロゲン基を含み、SiとCとの化学結合(Si−C結合)を有するアルキレンハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。アルキレン基とは、一般式C
nH
2n+2で表される鎖状飽和炭化水素(アルカン)から水素(H)を2つ取り除いた官能基であり、一般式C
nH
2nで表される原子の集合体である。アルキレン基には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が含まれる。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)等のハロゲン元素が含まれる。
【0023】
アルキレンハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、アルキレン基としてのメチレン基(−CH
2−)およびハロゲン基としてのクロロ基(Cl)を含む原料ガス、すなわち、メチレン基を含むクロロシラン原料ガスや、Si、アルキレン基としてのエチレン基(−C
2H
4−)およびハロゲン基としてのクロロ基(Cl)を含む原料ガス、すなわち、エチレン基を含むクロロシラン原料ガスを用いることができる。メチレン基を含むクロロシラン原料ガスとしては、例えば、メチレンビス(トリクロロシラン)ガス、すなわち、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiCl
3)
2CH
2、略称:BTCSM)ガス等を用いることができる。エチレン基を含むクロロシラン原料ガスとしては、例えば、エチレンビス(トリクロロシラン)ガス、すなわち、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl
3)
2C
2H
4、略称:BTCSE)ガス等を用いることができる。
【0024】
図9(a)に示すように、BTCSMは、その化学構造式中(1分子中)にアルキレン基としてのメチレン基を1つ含んでいる。メチレン基が有する2つの結合手は、それぞれSiと結合しており、Si−C−Si結合を構成している。
【0025】
図9(b)に示すように、BTCSEは、1分子中にアルキレン基としてのエチレン基を1つ含んでいる。エチレン基が有する2つの結合手は、それぞれSiと結合しており、Si−C−C−Si結合を構成している。
【0026】
ガス供給管232dからは、所定元素、Cおよびハロゲン元素を含み、所定元素とCとの化学結合を有する原料ガスとして、例えば、所定元素としてのSi、アルキル基およびハロゲン基を含み、Si−C結合を有するアルキルハロシラン原料ガスが、MFC241d、バルブ243d、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。アルキル基とは、一般式C
nH
2n+2で表される鎖状飽和炭化水素からHを1つ取り除いた官能基であり、一般式C
nH
2n+1で表される原子の集合体である。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、すなわち、Cl、F、Br等のハロゲン元素が含まれる。
【0027】
アルキルハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、アルキル基としてのメチル基(−CH
3)およびハロゲン基としてのクロロ基(Cl)を含む原料ガス、すなわち、メチル基を含むクロロシラン原料ガスを用いることができる。メチル基を含むクロロシラン原料ガスとしては、例えば、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン((CH
3)
2Si
2Cl4、略称:TCDMDS)ガス、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン((CH
3)
4Si
2Cl
2、略称:DCTMDS)ガス、1−モノクロロ−1,1,2,2,2−ペンタメチルジシラン((CH
3)
5Si
2Cl、略称:MCPMDS)ガス等を用いることができる。TCDMDSガス、DCTMDSガス等のアルキルハロシラン原料ガスは、BTCSEガス、BTCSMガス等のアルキレンハロシランガス原料ガスとは異なり、Si−Si結合を有するガス、すなわち、所定元素およびハロゲン元素を含み、所定元素同士の化学結合を有する原料ガスでもある。
【0028】
図9(c)に示すように、TCDMDSは、1分子中にアルキル基としてのメチル基を2つ含んでいる。2つのメチル基が有する各結合手は、それぞれSiと結合しており、Si−C結合を構成している。TCDMDSはジシランの誘導体であり、Si−Si結合を有している。すなわち、TCDMDSは、Si同士が結合し、且つ、SiとCとが結合したSi−Si−C結合を有している。
【0029】
図9(d)に示すように、DCTMDSは、1分子中にアルキル基としてのメチル基を4つ含んでいる。4つのメチル基が有する各結合手は、それぞれSiと結合しており、Si−C結合を構成している。DCTMDSはジシランの誘導体であり、Si−Si結合を有している。すなわち、DCTMDSは、Si同士が結合し、且つ、SiとCとが結合したSi−Si−C結合を有している。
【0030】
ガス供給管232eからは、所定元素としてのSiおよびハロゲン元素を含む原料ガスとして、例えば、Siおよびハロゲン元素を含み、Si同士の化学結合(Si−Si結合)を有するハロシラン原料ガスが、MFC241e、バルブ243e、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0031】
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、ハロゲン元素としてのクロロ基(Cl)を含み、Si−Si結合を有する原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとは、クロロ基を含むシラン原料ガスのことであり、少なくともSiおよびハロゲン元素としてのClを含む原料ガスのことである。すなわち、ここでいうクロロシラン原料は、ハロゲン化物の一種とも言える。ガス供給管232eから供給されるクロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0032】
図9(e)に示すように、HCDSは、1分子中に2つのSiおよび6つのクロロ基を含む。Siおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、HCDSガスの他、テトラクロロシラン、すなわち、シリコンテトラクロライド(SiCl
4、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス等の無機原料ガスを用いることができる。
【0033】
ガス供給管232fからは、所定元素としてのSi、Cおよび窒素(N)を含み、SiとNとの化学結合(Si−N結合)を有する原料ガスとして、例えば、Siおよびアミノ基(アミン基)を含む原料ガスであるアミノシラン原料ガスが、MFC241f、バルブ243f、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0034】
アミノシラン原料ガスとは、アミノ基を含むシラン原料ガスのことであり、少なくともSiと、CおよびNを含んだアミノ基と、を含む原料ガスのことである。ガス供給管232fから供給されるアミノシラン原料ガスとしては、例えば、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C
2H
5)
2]
2H
2、略称:BDEAS)ガスを用いることができる。
【0035】
図9(f)に示すように、BDEASは、1分子中に1つのSiおよび2つのアミノ基を含む。Si、CおよびNを含みSi−N結合を有する原料ガスとしては、BDEASガスの他、トリス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C
2H
5)
2]
3、略称:3DEAS)ガス、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C
2H
5)
2]
4、略称:4DEAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH
3)
2]
3H、略称:3DMAS)ガス、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH
3)
2]
4、略称:4DMAS)ガス等の有機原料ガスを用いることができる。
【0036】
ここで、原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。BTCSM、BTCSE、TCDMDS、DCTMDS、HCDS、BDEASのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(BTCSMガス、BTCSEガス、TCDMDSガス、DCTMDSガス、HCDSガス、BDEASガス)として供給することとなる。
【0037】
ガス供給管232bからは、酸化ガスとして、例えば、酸素(O)を含むガス(酸素含有ガス)が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。ガス供給管232bから供給される酸化ガスとしては、例えば、水蒸気(H
2Oガス)を用いることができる。なお、H
2Oガスの供給に際しては、図示しない外部燃焼装置に、酸素(O
2)ガスと水素(H
2)ガスとを供給して燃焼させてH
2Oガスを生成し、供給する構成としてもよい。
【0038】
ガス供給管232gからは、酸化ガスとして、例えば、Oを含むガス(酸素含有ガス)が、MFC241g、バルブ243g、ノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。ガス供給管232gから供給される酸化ガスとしては、例えば、オゾン(O
3)ガスを用いることができる。
【0039】
ガス供給管232hからは、酸化ガスとして、例えば、Oを含むガス(酸素含有ガス)が、MFC241h、バルブ243h、ノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。ガス供給管232hから供給される酸化ガスとしては、例えば、酸素(O
2)ガスを用いることができる。
【0040】
ガス供給管232cからは、触媒作用によりウエハ200の表面、あるいは、H
2Oガスが有するO−H結合の結合力を弱め、原料ガスの分解を促進し、また、H
2Oガス等の酸化ガスによる酸化反応を促進する触媒ガスとして、例えば、C、NおよびHを含むアミン系ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0041】
アミン系ガスとは、アンモニア(NH
3)のHのうち少なくとも1つをアルキル基等の炭化水素基で置換したアミンを含むガスである。
図10に示すように、触媒ガスとして用いられる各種アミンは、例えば、孤立電子対を有するNを含み、酸解離定数(以下、pKaともいう)が5〜11程度である。酸解離定数(pKa)とは、酸の強さを定量的に表わす指標のひとつであり、酸からHイオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表わしたものである。アミン系ガスとしては、炭化水素基が環状となった環状アミン系ガスや、炭化水素基が鎖状となった鎖状アミン系ガスを用いることができる。ガス供給管232cから供給されるアミン系ガスとしては、例えば、環状アミン系ガスであるピリジン(C
5H
5N)ガスを用いることができる。
【0042】
環状アミン系ガスとしては、
図10(a)に示すように、例えばピリジン(C
5H
5N、pKa=5.67)ガス、アミノピリジン(C
5H
6N
2、pKa=6.89)ガス、ピコリン(C
6H
7N、pKa=6.07)ガス、ルチジン(C
7H
9N、pKa=6.96)ガス、ピペラジン(C
4H
10N
2、pKa=9.80)ガス、ピペリジン(C
5H
11N、pKa=11.12)ガス等を用いることができる。環状アミン系ガスは、CとNとの複数種類の元素からその環状構造が構成される複素環化合物、すなわち、窒素含有複素環化合物であるともいえる。
【0043】
ガス供給管232iからは、環状アミン系ガスと同様の触媒作用を持つ触媒ガスとして、例えば、C、NおよびHを含むアミン系ガスが、MFC241i、バルブ243i、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。ガス供給管232iから供給されるアミン系ガスとしては、例えば、鎖状アミン系ガスであるトリエチルアミン((C
2H
5)
3N、略称:TEA)ガスを用いることができる。
【0044】
鎖状アミン系ガスとしては、
図10(b)〜(f)にそれぞれ示すように、例えばトリエチルアミン((C
2H
5)
3N、略称:TEA、pKa=10.7)ガス、ジエチルアミン((C
2H
5)
2NH、略称:DEA、pKa=10.9)ガス、モノエチルアミン((C
2H
5)NH
2、略称:MEA、pKa=10.6)ガス、トリメチルアミン((CH
3)
3N、略称:TMA、pKa=9.8)ガス、モノメチルアミン((CH
3)NH
2、略称:MMA、pKa=10.6)ガス等を用いることができる。
【0045】
触媒ガスとして作用するアミン系ガスを、アミン系触媒ガスと称することもできる。触媒ガスとしては、上述のアミン系ガスの他、非アミン系ガス、例えば、アンモニア(NH
3、pKa=9.2)ガス等も用いることができる。
【0046】
ここで例示した触媒ガスは、後述する薄膜形成処理において、分子構造の一部が分解する場合もある。このような、化学反応の前後でその一部が変化するガスは、厳密には「触媒」ではない。しかしながら、本明細書では、化学反応の過程でその一部が分解する場合であっても、大部分は分解せず、また、反応の速度を変化させ、実質的に触媒として作用する物質を、「触媒」と称することとしている。
【0047】
ガス供給管232j〜232lからは、例えば、不活性ガスとして、例えば窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241j〜241l、バルブ243j〜243l、ガス供給管232a〜232c、ノズル249a〜249c、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。
【0048】
N
2ガスは、パージガスとしても作用し、また、後述する酸素非含有の雰囲気を生成するOを含まない酸素非含有ガスとしても作用する。N
2ガスが酸素非含有ガスとして用いられる際には、N
2ガスは、熱処理ガスやアニールガスとしても作用する場合がある。不活性ガス、パージガス、および酸素非含有ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0049】
各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、主に、ガス供給管232a,232d,232e,232f、MFC241a,241d,241e,241f、バルブ243a,243d,243e,243fにより、原料ガスを供給する原料ガス供給系が構成される。ノズル249aを原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。原料ガス供給系は、それぞれ異なる元素の元素源となる複数種類の原料ガスや、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の原料ガスをそれぞれ供給する複数の供給ライン(供給系)の集合体とみることもできる。すなわち、原料ガス供給系は、主にガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより構成されるBTCSMガス供給ラインと、主にガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより構成されるTCDMDSガス供給ラインと、主にガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより構成されるHCDSガス供給ラインと、主にガス供給管232f、MFC241f、バルブ243fにより構成されるBDEASガス供給ラインと、の集合体であるといえる。個々の供給ラインに、ノズル249aを含めて考えてもよい。
【0050】
このように、原料ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、それぞれ異なる元素の元素源となる複数種類の原料ガスや、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の原料ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、各原料ガスは、それぞれ異なる分子構造、すなわち、それぞれ異なる化学構造式を有している。各原料ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する原料ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、後述するように、所望の成膜処理に応じて、適宜、原料ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
【0051】
また、主に、ガス供給管232b,232g,232h、MFC241b,241g,241h、バルブ243b,243g,243hにより、酸化ガス供給系が構成される。ノズル249b、バッファ室237を酸化ガス供給系に含めて考えてもよい。酸化ガス供給系を酸化剤供給系と称することもできる。酸化ガス供給系は、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の酸化ガスをそれぞれ供給する複数の供給ライン(供給系)の集合体とみることもできる。すなわち、酸化ガス供給系は、主にガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより構成されるH
2Oガス供給ラインと、主にガス供給管232g、MFC241g、バルブ243gにより構成されるO
3ガス供給ラインと、主にガス供給管232h、MFC241h、バルブ243hにより構成されるO
2ガス供給ラインと、の集合体であるといえる。個々の供給ラインに、ノズル249bやバッファ室237を含めて考えてもよい。
【0052】
このように、酸化ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の酸化ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、各酸化ガスは、それぞれ異なる分子構造、すなわち、それぞれ異なる化学構造式を有している。各酸化ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する酸化ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、例えば、所望の成膜処理に応じて、適宜、酸化ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
【0053】
また、主に、ガス供給管232c,232i、MFC241c,241i、バルブ243c,243iにより、触媒ガス供給系が構成される。ノズル249cを触媒ガス供給系に含めて考えてもよい。触媒ガス供給系は、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の触媒ガスをそれぞれ供給する複数の供給ライン(供給系)の集合体とみることもできる。すなわち、触媒ガス供給系は、主にガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより構成されるピリジンガス供給ラインと、主にガス供給管232i、MFC241i、バルブ243iにより構成されるTEAガス供給ラインと、の集合体であるといえる。個々の供給ラインに、ノズル249cを含めて考えてもよい。また、ピリジンガスやTEAガスは、後述するように、触媒としてのアミン系ガス、すなわち、アミン系触媒ガスともいえる。以下、各種アミン系触媒ガスを供給する触媒ガス供給系を、アミン系触媒ガス供給系ともいう。
【0054】
このように、触媒ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の触媒ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、各触媒ガスは、それぞれ異なる分子構造、すなわち、それぞれ異なる化学構造式を有している。各触媒ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する触媒ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、後述するように、所望の成膜処理に応じて、適宜、触媒ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
【0055】
また、主に、ガス供給管232j〜232l、MFC241j〜241l、バルブ243j〜243lにより、不活性ガス供給系が構成される。ガス供給管232a〜232cにおけるガス供給管232j〜232lとの接続部より下流側、ノズル249a〜249c、バッファ室237を不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。不活性ガス供給系は、複数の供給ラインの集合体とみることもできる。すなわち、不活性ガス供給系は、主にガス供給管232j、MFC241j、バルブ243jにより構成される不活性ガス供給ラインと、主にガス供給管232k、MFC241k、バルブ243kにより構成される不活性ガス供給ラインと、主にガス供給管232l、MFC241l、バルブ243lにより構成される不活性ガス供給ラインと、の集合体であるといえる。不活性ガス供給系はパージガス供給系および酸素非含有ガス供給系としても機能する。なお、酸素非含有ガス供給系は、後述する酸素非含有の雰囲気を生成する雰囲気生成部の一部を構成することとなる。
【0056】
上述の原料ガス供給系、酸化ガス供給系、触媒ガス供給系、不活性ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系を、処理ガス供給系と称することもできる。
【0057】
バッファ室237内には、
図2に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する2本の棒状電極269,270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。棒状電極269,270のそれぞれは、ノズル249dと平行に設けられている。棒状電極269,270のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。棒状電極269,270のいずれか一方は、整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は、基準電位であるアースに接続されている。整合器272を介して高周波電源273から棒状電極269,270間に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、棒状電極269,270、電極保護管275によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。整合器272、高周波電源273をプラズマ源に含めて考えてもよい。プラズマ源は、ガスをプラズマ状態に活性化(励起)させる活性化機構(励起部)として機能する。
【0058】
電極保護管275は、棒状電極269,270のそれぞれをバッファ室237内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。電極保護管275の内部の酸素濃度が外気(大気)の酸素濃度と同程度であると、電極保護管275内にそれぞれ挿入された棒状電極269,270は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。電極保護管275の内部にN
2ガスなどの不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275の内部をN
2ガスなどの不活性ガスでパージすることで、電極保護管275の内部の酸素濃度を低減させ、棒状電極269,270の酸化を抑制することができるように構成されている。
【0059】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a〜249cと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0060】
主に、上述の排気系および上述の酸素非含有ガス供給系により、処理室201内に酸素非含有の雰囲気を生成する雰囲気生成部が構成される。排気系は、処理室201内を真空排気することで排気系単独で、或いは、処理室201内のウエハ200に対して酸素非含有ガスを供給する酸素非含有ガス供給系と協働して、処理室201内の雰囲気を酸素非含有の雰囲気とするよう構成されている。
【0061】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面にはマニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に支持されるウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成される。
【0062】
基板支持具としてのボート217は、複数、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、つまり、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0063】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a〜249cと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0064】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0065】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する薄膜形成等の基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する薄膜形成工程等の基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0066】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241l、バルブ243a〜243l、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、整合器272、高周波電源273、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0067】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241lによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243lの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、整合器272によるインピーダンス調整動作、高周波電源273の電力供給等を制御するように構成されている。
【0068】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態のコントローラ121を構成することができる。但し、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0069】
(2)薄膜形成工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成(成膜)するシーケンス例について、
図4(a)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0070】
図4(a)に示す成膜シーケンスでは、
基板としてのウエハ200に対してSi、CおよびClを含みSi−C結合を有する原料ガスとしてBTCSMガスを供給する工程と、
ウエハ200に対して酸化ガスとしてH
2Oガスを供給する工程と、
ウエハ200に対して触媒ガスとしてピリジンガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、Si、OおよびCを含む薄膜としてシリコン酸炭化膜(以下、SiOC膜ともいう)を形成する工程を行う。このSiOC膜を、Cを含むSiO膜や、Cがドープ(添加)されたSiO膜と称することもできる。
【0071】
このとき、
BTCSMガスを供給する工程を、ピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行い、
H
2Oガスを供給する工程を、ピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行う。
【0072】
また、SiOC膜を形成した後、
SiOC膜を形成する工程におけるウエハ200の温度よりも高い第1の温度でSiOC膜を熱処理することにより、SiOC膜中から第1の不純物を除去する工程と、
第1の温度以上の第2の温度でSiOC膜を熱処理することにより、第1の温度で熱処理した後のSiOC膜中から、第1の不純物とは異なる第2の不純物を除去する工程と、を更に行う。
これらの熱処理は、酸素非含有の雰囲気下、すなわち、ウエハ200に対して酸素非含有ガスとしてN
2ガスを供給することにより生成された酸素非含有の雰囲気下で行われる。
【0073】
また、本実施形態では、各工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
【0074】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0075】
本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0076】
本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0077】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示すように、複数のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0078】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内の圧力、すなわち、ウエハ200が存在する空間の圧力が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。ただし、後述するように、室温でウエハ200に対する処理を行う場合は、ヒータ207による処理室201内の加熱は行わなくてもよい。続いて、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0079】
(SiOC膜形成工程)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1a,2aを順次実行する。
【0080】
[ステップ1a]
(BTCSMガス+ピリジンガス供給)
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へBTCSMガスを流す。BTCSMガスは、MFC241aにより流量調整され、ガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してBTCSMガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243jを開き、ガス供給管232j内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241jにより流量調整され、BTCSMガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0081】
また、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へピリジンガスを流す。ピリジンガスは、MFC241cにより流量調整され、ガス供給孔250cから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してピリジンガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243lを開き、ガス供給管232l内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241lにより流量調整され、ピリジンガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0082】
また、バッファ室237内やノズル249b内へのBTCSMガスおよびピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243kを開き、ガス供給管232k内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b、ノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0083】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13330Pa、好ましくは133〜2666Paの範囲内の圧力とする。MFC241aで制御するBTCSMガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241cで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。BTCSMガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。
【0084】
このとき、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。BTCSMガス供給時に触媒ガスを供給しない場合、ウエハ200の温度が250℃未満となるとウエハ200上にBTCSMが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜レートが得られなくなることがある。本実施形態のように、触媒ガスとしてのピリジンガスを供給することで、ウエハ200の温度を250℃未満としても、これを解消することが可能となる。ピリジンガスの存在下において、ウエハ200の温度を150℃以下、さらには100℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減することができ、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。ピリジンガスの存在下では、ウエハ200の温度が室温以上の温度であれば、ウエハ200上にBTCSMを充分に吸着させることができ、充分な成膜レートが得られることとなる。よって、ウエハ200の温度は、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度とするのがよい。
【0085】
上述の条件下でウエハ200に対してBTCSMガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのCおよびClを含むSi含有層が形成される。CおよびClを含むSi含有層は、CおよびClを含むSi層であってもよいし、BTCSMガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0086】
CおよびClを含むSi層とは、Siにより構成されCおよびClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるCおよびClを含むSi薄膜をも含む総称である。Siにより構成されCおよびClを含む連続的な層を、CおよびClを含むSi薄膜という場合もある。CおよびClを含むSi層を構成するSiは、CやClとの結合が完全に切れていないものの他、CやClとの結合が完全に切れているものも含む。
【0087】
BTCSMガスの吸着層は、BTCSMガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、BTCSMガスの吸着層は、BTCSM分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。BTCSMガスの吸着層を構成するBTCSM分子は、
図9(a)に化学構造式を示すものだけでなく、SiとCとの結合が一部切れたものや、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、BTCSMガスの吸着層は、BTCSM分子の物理吸着層であってもよいし、BTCSM分子の化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0088】
ここで、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。CおよびClを含むSi含有層は、CおよびClを含むSi層とBTCSMガスの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、CおよびClを含むSi含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとする。
【0089】
ウエハ200上に形成される第1の層としてのCおよびClを含むSi含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2aでの酸化の作用が第1の層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能な第1の層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、第1の層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。第1の層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ2aでの酸化反応の作用を相対的に高めることができ、ステップ2aでの酸化反応に要する時間を短縮することもできる。ステップ1aでの第1の層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、第1の層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0090】
BTCSMガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、BTCSMの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでCおよびClを含むSi層が形成される。BTCSMガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、BTCSMの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にBTCSMガスが吸着することでBTCSMガスの吸着層が形成される。ウエハ200上にBTCSMガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にCおよびClを含むSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ、好ましい。但し、本実施形態では、ウエハ200の温度を例えば150℃以下の低温としているので、ウエハ200上にCおよびClを含むSi層が形成されるよりも、ウエハ200上にBTCSMガスの吸着層が形成される方が、優位となる可能性がある。さらに、触媒ガスを供給しない場合には、BTCSMガスの吸着層においては、ウエハ200表面等の下地に対する結合やBTCSM分子同士の結合が、化学吸着よりも弱い物理吸着の状態が優位となってしまう可能性がある。すなわち、触媒ガスを供給しない場合には、BTCSMガスの吸着層は、その殆どがBTCSMガスの物理吸着層から構成されてしまう可能性がある。
【0091】
ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、BTCSMガスの分解を促し、BTCSM分子の化学吸着による第1の層の形成を促進させる触媒ガスとして作用する。例えば、
図5(a)に示すように、ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合に作用し、O−H間の結合力を弱める。結合力の弱まったHとBTCSMガスのClとが反応することで、HCl等のCl、Hを含むガス状物質が生成され、ウエハ200の表面からHが脱離すると共にBTCSM分子からClが脱離する。Clを失ったBTCSM分子(ハロゲン化物)は、ウエハ200等の表面に化学吸着する。これにより、ウエハ200等の表面に、BTCSMガスの化学吸着層が形成される。
【0092】
ピリジンガスがO−H間の結合力を弱めるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するNが、Hを引きつける作用を持つためである。N等を含む所定の化合物がHを引きつける作用の大きさは、例えば上述の酸解離定数(pKa)を指標の1つとすることができる。上述の通り、pKaは、酸からHイオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表した定数であり、pKaが大きい化合物はHを引き付ける力が強い。例えば、pKaが5以上の化合物を触媒ガスとして用いることで、BTCSMガスの分解を促して第1の層の形成を促進させることができる。一方で、触媒ガスのpKaが過度に大きいと、BTCSM分子から引き抜かれたClと触媒ガスとが結合し、これにより、塩化アンモニウム(NH
4Cl)等の塩(Salt:イオン化合物)が生じ、パーティクル源となる場合がある。これを抑制するには、触媒ガスのpKaを11程度以下、好ましくは7以下とすることが望ましい。ピリジンガスは、pKaが約5.67と比較的大きく、Hを引きつける力が強い。また、pKaが7以下であるので、パーティクルも発生し難い。
【0093】
(残留ガス除去)
第1の層が形成された後、バルブ243aを閉じ、BTCSMガスの供給を停止する。また、バルブ243cを閉じ、ピリジンガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のBTCSMガスおよびピリジンガスを処理室201内から排除する。また、バルブ243j〜243lは開いたままとして、処理室201内へのN
2ガスの供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のBTCSMガスおよびピリジンガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0094】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ2aにおいて悪影響が生じることはない。処理室201内へ供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ2aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。N
2ガスの消費を必要最小限に抑えることも可能となる。
【0095】
原料ガスとしては、BTCSMガスの他、例えば、BTCSEガス、TCDMDSガス、DCTMDSガス等を用いることができる。触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、例えば、アミノピリジンガス、ピコリンガス、ルチジンガス、ピペラジンガス、ピペリジンガス等の環状アミン系ガスや、TEAガス、DEAガス、MEAガス、TMAガス、MMAガス等の鎖状アミン系ガスや、NH
3ガス等の非アミン系ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0096】
[ステップ2a]
(H
2Oガス+ピリジンガス供給)
ステップ1aが終了した後、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へH
2Oガスを流す。H
2Oガスは、MFC241bにより流量調整され、ガス供給孔250bからバッファ室237内へ供給されてガス供給孔250dから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ノンプラズマの雰囲気下で、ウエハ200に対してH
2Oガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243kを開き、ガス供給管232k内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241kにより流量調整され、H
2Oガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0097】
また、ステップ1aにおけるピリジンガスの供給と同様にして、ウエハ200に対してピリジンガスを供給する。
【0098】
また、ノズル249a内へのH
2Oガスおよびピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243jを開き、ガス供給管232j内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0099】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13330Pa、好ましくは133〜2666Paの範囲内の圧力とする。MFC241bで制御するH
2Oガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241cで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。H
2Oガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、ステップ1aでのウエハ200の温度と同様な温度帯、例えば室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度となるように設定する。
【0100】
処理室201内へ供給されたH
2Oガスは熱で活性化され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、熱で活性化されたH
2Oガスが供給されることとなる。処理室201内へ流しているガスは熱的に活性化されたH
2Oガスであり、処理室201内へはBTCSMガスは流していない。したがって、H
2Oガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された状態でウエハ200に対して供給され、ステップ1aでウエハ200上に形成された第1の層(CおよびClを含むSi含有層)の少なくとも一部と反応する。これにより、第1の層は、ノンプラズマで熱的に酸化され、Si、OおよびCを含む第2の層、すなわち、SiOC層へと変化させられる。
【0101】
ピリジンガスは、H
2Oガスが有するO−H結合の結合力を弱め、H
2Oガスの分解を促し、H
2Oガスと第1の層との反応を促進させる触媒ガスとして作用する。例えば、
図5(b)に示すように、ピリジンガスは、H
2Oガスの有するO−H結合に作用し、O−H間の結合力を弱める。結合力の弱まったHと、ウエハ200上に形成された第1の層が有するClとが反応することで、HCl等のCl、Hを含むガス状物質が生成され、H
2O分子からHが脱離すると共に第1の層からClが脱離する。Hを失ったH
2OガスのOが、Clが脱離して少なくともCの一部が残った第1の層のSiと結合する。
【0102】
ピリジンガスの供給を実施した状態でH
2Oガスを供給する工程(H
2Oガスとピリジンガスとを供給する工程)では、所望の膜組成等に応じて、供給するピリジンガスの供給量を適宜調整することができる。ピリジンガスの供給量を増加させると、ピリジンガスの作用が高まってH
2Oガスの酸化力が向上し、Si−C結合が切断されてCが脱離し易くなり、結果としてSiOC層中のC濃度が低下する。ピリジンガスの供給量を低下させると、ピリジンガスの作用が弱まってH
2Oガスの酸化力が低下し、Si−C結合が維持され易くなり、結果としてSiOC層中のC濃度が増加する。従って、ピリジンガスの供給量を適宜調整することにより、SiOC層中の、すなわち、SiOC層が積層されてなるSiOC膜中のC濃度や、Si濃度や、O濃度等を相対的に変化させることができる。
【0103】
ピリジンガスの供給を実施した状態でH
2Oガスを供給する工程(H
2Oガスとピリジンガスとを供給する工程)において供給するピリジンガスの供給量は、上述のピリジンガスの供給を実施した状態でBTCSMガスを供給する工程(BTCSMガスとピリジンガスとを供給する工程)において供給するピリジンガスの供給量とは、独立別個に調整することができる。例えば、両工程におけるピリジンガスの供給量が同一となるように調整してもよく、異なるように調整してもよい。
【0104】
ピリジンガスの供給量や流量等を異なる数値に設定したプロセスレシピ(処理手順や処理条件が記載されたプログラム)を予め複数用意しておくことで、ピリジンガスの供給量の調整が容易となる。オペレータ(操作員)は、所望の膜組成等に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択し、成膜処理を実行すればよい。
【0105】
本実施形態のように例えば150℃以下の低温条件下でSiOC層を形成すると、SiOC層中に、水分(H
2O)やCl等の不純物(第1の不純物)や、炭化水素化合物等の炭化水素(C
xH
y)系の不純物(第2の不純物)が混入し易くなる。すなわち、このSiOC層が積層されてなるSiOC膜中にも、水分やCl等の不純物や、C
xH
y系の不純物が多く含まれる場合がある。水分等の不純物は、例えば、酸化ガスとして用いたH
2Oガスや、処理室201内へウエハ200を搬入する際に外部から持ち込まれた水分等に由来する。Cl等の不純物は、例えばBTCSM分子中のCl等に由来する。C
xH
y系の不純物は、例えばBTCSM分子中のC、Hや、ピリジン分子中のC、Hに由来する。
【0106】
(残留ガス除去)
その後、バルブ243bを閉じ、H
2Oガスの供給を停止する。また、バルブ243cを閉じ、ピリジンガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは反応に寄与した後のH
2Oガスやピリジンガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。また、バルブ243j〜243lは開いたままとして、処理室201内へのN
2ガスの供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のH
2Oガスやピリジンガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0107】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ1aにおいて悪影響が生じることはない。処理室201内へ供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ1aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。N
2ガスの消費を必要最小限に抑えることも可能となる。
【0108】
酸化ガスとしては、H
2Oガスの他、例えば、過酸化水素(H
2O
2)ガス、水素(H
2)ガス+酸素(O
2)ガス、H
2ガス+オゾン(O
3)ガス等を用いることができる。また、Hを含有しないガス、例えば、O
2ガス等を単独で用いることもできる。触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、例えば、上述の各種のアミン系ガスや、非アミン系ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0109】
本発明者等によれば、本実施形態のガス系および条件範囲内で総合的に判断すると、各工程を通じ、触媒ガスとしてより好ましいのはピリジンガスであると考えられる。次いで、TEAガスが好ましく、その次にピペリジンガスが好ましいと考えられる。
【0110】
(所定回数実施)
上述したステップ1a,2aを1サイクルとして、このサイクルを1回以上、すなわち、所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiOC膜を成膜することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するSiOC層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0111】
このとき、各ステップにおける処理室201内の圧力やガス供給時間等の処理条件を制御することで、SiOC層における各元素成分、すなわち、Si成分、O成分およびC成分の割合、すなわち、Si濃度、O濃度およびC濃度を微調整することができ、SiOC膜の組成比をより緻密に制御することができる。
【0112】
サイクルを複数回行う場合、少なくとも2サイクル目以降の各ステップにおいて、「ウエハ200に対して所定のガスを供給する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層に対して、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味し、「ウエハ200上に所定の層を形成する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層の上、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面の上に所定の層を形成する」ことを意味している。この点は、上述の通りである。この点は、後述する他の実施形態においても同様である。
【0113】
(SiOC膜改質工程)
上述のように、例えば150℃以下の低温条件下で形成されたSiOC膜中には、水分やCl等の不純物や、C
xH
y系の不純物が混入していることがある。SiOC膜中にこれらの不純物が混入すると、SiOC膜のエッチング耐性が低下し、また、誘電率が増加してしまうことがある。すなわち、膜中にCを添加した効果が損なわれてしまうことがある。
【0114】
そこで、本実施形態では、
SiOC膜を形成する工程におけるウエハ200の温度よりも高い第1の温度でSiOC膜を熱処理することにより、SiOC膜中から第1の不純物(水分やCl等の不純物)を除去する工程(第1の熱処理工程)と、
第1の温度以上の第2の温度でSiOC膜を熱処理することにより、第1の温度で熱処理した後のSiOC膜中から、第1の不純物とは異なる第2の不純物(C
xH
y系の不純物)を除去する工程(第2の熱処理工程)と、
を行い、SiOC膜中における複数種類の不純物を少なくとも2段階で除去する改質処理を行う。すなわち、SiOC膜を改質する処理、いわゆる、アニール処理を2段階で行う。以下、このSiOC膜改質工程のシーケンス例について説明する。
【0115】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内の圧力、すなわち、ウエハ200が存在する空間の圧力が所望の圧力(真空度)となるよう、APCバルブ244をフィードバック制御しながら、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度、すなわち、第1の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。この工程においても、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を継続しておく。
【0116】
またこのとき、処理室201内へ酸素非含有ガスとしてのN
2ガスを供給し、処理室201内を酸素非含有の雰囲気とする。このとき、ガス供給管232j〜232lのうち少なくともいずれか、或いは全てを使ってN
2ガスを供給することができる。ここでは、例えばガス供給管232j〜232lの全てからN
2ガスを供給することとする。すなわち、バルブ243j〜243lを開き、ガス供給管232j〜232l内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241j〜241lにより流量調整され、ガス供給孔250a,250c,250dから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。これにより、処理室201内がN
2ガス雰囲気、すなわち、酸素非含有の雰囲気となる。N
2ガスは、これ以降、熱処理ガスとしても作用することとなる。
【0117】
(第1の熱処理)
処理室201内が所望の圧力を有するN
2ガス雰囲気となり、また、ウエハ200の温度が所望の温度、すなわち、第1の温度となったら、この状態を所定時間保持し、ウエハ200上に形成されたSiOC膜に対して第1の熱処理を行う。
【0118】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば133〜101325Pa(1〜760Torr)、好ましくは10132〜101325Pa(76〜760Torr)の範囲内の圧力とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。ウエハ200上のSiOC膜に対する熱処理時間は、例えば1〜60分、好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜10分の範囲内の時間とする。
【0119】
このとき、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば上述のSiOC膜を形成する工程におけるウエハ200の温度よりも高い第1の温度となるような温度に設定する。具体的には、ウエハ200の温度が、室温〜150℃よりも高い温度であって、例えば、300℃以上450℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上350℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。このような温度範囲は、第1の不純物としての水分やCl等の不純物を、所望しない反応(SiOC膜の酸化等)を生じさせることなく、効率的にまた充分に、SiOC膜中から脱離させて除去することを考慮のうえ決定される。
【0120】
図12は、本実施形態の成膜シーケンスにより形成した熱処理前のSiOC膜のTDS
(昇温脱離ガス分光法)による脱離スペクトルを例示する図であり、(a)は水分(H
2O)の脱離スペクトルを、(b)はClの脱離スペクトルを、(c)はC
2H
2の脱離スペクトルをそれぞれ例示している。
図12(a)〜(c)の横軸は熱処理時のウエハ200の温度(℃)を、縦軸はイオン電流値(A)を示している。
【0121】
図12(a)、
図12(b)に例示するように、ウエハ200の温度が300℃を下回ると、SiOC膜中から水分やCl等の不純物、特に、水分を脱離させて除去することが難しくなり、SiOC膜の改質効果が低下してしまう。例えば、ウエハ200の温度を150℃以下とすると、SiOC膜中から水分やCl等の不純物は殆ど脱離しなくなる。ウエハ200の温度を300℃以上とすることで、SiOC膜中から水分やCl等の不純物を充分に脱離させて除去することが可能となる。
【0122】
ただし、ウエハ200の温度が450℃を上回ると、SiOC膜中から水分やCl等が脱離する際に、水分とClとが反応することで、SiOC膜が酸化されてしまうことがある。SiOC膜が酸化されることで、SiOC膜の膜収縮率が大きくなってしまう。
【0123】
また、この温度帯、すなわち450℃を上回る温度帯では、水分とClとが反応する際にHClが生成され、このHClにより、SiOC膜中に含まれるSi−Cl結合やSi−H結合等が切り離されることがある。これらの結合が切り離されると、SiOC膜中に不要な吸着サイトが生成され、SiOC膜中から脱離した物質(脱離物質)のこの吸着サイトへの再吸着を招いてしまう。すなわち、ClやHとの結合が切れてダングリングボンド(未結合手)を有することとなったSiに、SiOC膜中からの脱離物質が吸着することとなる。このようにして形成されたSiと脱離物質との結合は、不安定で弱い。それゆえ、この脱離物質は、SiOC膜を構成する成分とはならず、不純物としてSiOC膜中に残存することとなる。脱離物質としては、水分やClやC
xH
y系の不純物や、これらが分解した物質等が挙げられる。
【0124】
また、この温度帯、すなわち450℃を上回る温度帯では、
図12(c)に例示するように、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物も脱離することとなる。そして、この脱離したC
xH
y系の不純物がSiOC膜中を通過する際にClと反応することで、SiOC膜中における吸着サイトへのCの再吸着を引き起こしてしまうことがある。すなわち、C
xH
y系の不純物とClとの反応により、C
xH
y系の不純物に由来するCが、SiOC膜を構成するいずれかの元素(原子)、例えばSiのダングリングボンドに吸着することがある。このようにして形成されたCとSiとの結合は、不安定で弱い。それゆえ、C
xH
y系の不純物に由来するCは、SiOC膜を構成する成分とはならず、不純物としてSiOC膜中に残存することとなる。SiOC膜中の吸着サイトにCが再吸着する際は、CがC単独でこの吸着サイトに再吸着する場合もあるし、CがC
xH
yの形でこの吸着サイトに再吸着する場合もある。
【0125】
つまり、この温度帯、すなわち450℃を上回る温度帯では、上述の所望しない反応により、SiOC膜の膜収縮率が大きくなり、また、SiOC膜中から不純物を充分に脱離させて除去することができなくなる。結果として、SiOC膜の誘電率(k値)を充分に下げることができなくなる。
【0126】
ウエハ200の温度を300℃以上450℃以下とすることで、上述の所望しない反応を抑制しつつ、SiOC膜中から水分やCl等の不純物を充分に脱離させて除去することが可能となる。すなわち、SiOC膜中から水分やCl等が脱離する際における、水分とClとの反応によるSiOC膜の酸化を抑制し、SiOC膜の膜収縮率の増大を抑制することが可能となる。また、水分とClとの反応によるHClの生成を抑制し、HClによるSiOC膜中のSi−Cl結合やSi−H結合等の切り離しを抑制することが可能となる。結果として、SiOC膜中の不要な吸着サイトの生成を抑制し、この吸着サイトへの脱離物質の再吸着を抑制することが可能となる。また、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物が脱離する際における、C
xH
y系の不純物とClとの反応を抑制し、SiOC膜中の吸着サイトへのCの再吸着を抑制することが可能となる。また、
図12(c)に示すように、特に、ウエハ200の温度が400℃程度であるときに、C
xH
y系の不純物の脱離量がピークとなる。よって、ウエハ200の温度を400℃以下、好ましくは350℃以下とすることで、C
xH
y系の不純物の脱離を抑制することができるようになる。すなわち、C
xH
y系の不純物の脱離量を少なくすることができるようになる。これにより、SiOC膜から脱離するC
xH
y系の不純物の絶対量を低減することができ、C
xH
y系の不純物とClとの反応によるCの再吸着を更に抑制することができることとなる。
【0127】
ウエハ200の温度をこのような温度帯、すなわち、300℃以上450℃以下の温度帯とすることで、SiOC膜の膜収縮率を小さくすることができ、SiOC膜中から脱離したCやC
xH
yを含む脱離物質のSiOC膜中の吸着サイトへの再吸着を抑制することができ、SiOC膜中から不純物、特に、水分やCl等の不純物を充分に脱離させて除去することが可能となる。
【0128】
また、ウエハ200の温度をこのような温度帯、すなわち、300℃以上450℃以下の温度帯とすることで、上述のように、SiOC膜中から水分やCl等の不純物が脱離して除去されるだけでなく、C
xH
y系の不純物の少なくとも一部も脱離して除去されることとなる。また、その際、このような温度帯であれば、SiOC膜中から脱離したC
xH
y系の不純物とClとの反応を抑制し、SiOC膜中の吸着サイトへのCの再吸着を抑制することができる。すなわち、このような温度帯とすることで、SiOC膜中から一度脱離させたC
xH
y系の不純物におけるCが、SiOC膜中の吸着サイトへ再吸着することを抑制することが可能となる。
【0129】
以上のことから、ウエハ200の温度は300℃以上450℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上350℃以下の範囲内の温度とするのがよい。
【0130】
上述の条件下でSiOC膜に対して第1の熱処理を施すことにより、上述の所望しない反応を抑制しつつ、SiOC膜中の水分やCl等の不純物をSiOC膜中から充分に脱離させて除去することができる。また、上述の所望しない反応を抑制しつつ、SiOC膜中のC
xH
y系の不純物の少なくとも一部をSiOC膜中から脱離させて除去することができる。SiOC膜中におけるこれらの不純物がSiOC膜中から除去されることでSiOC膜が改質されて、第1の熱処理を行う前のSiOC膜よりも、SiOC膜のエッチング耐性が高まり、また、誘電率が低下して、SiOC膜の膜質(膜特性)を向上させることができる。
【0131】
ただし、第1の熱処理工程が終了した段階、すなわち、SiOC膜中から水分やCl等の不純物を充分に除去させた段階では、SiOC膜中にC
xH
y系の不純物が残留している場合がある。つまり、このような温度帯では、SiOC膜中から水分やCl等の不純物やC
xH
y系の不純物が脱離して除去されるが、水分やCl等の不純物の方が、C
xH
y系の不純物よりも先に除去されるため、水分やCl等の不純物の大部分が除去された段階では、SiOC膜中にC
xH
y系の不純物が未だ残留している場合がある。そして、この段階では、SiOC膜中に残留しているC
xH
y系の不純物が原因で、SiOC膜のk値を充分に下げることができない場合がある。そこで、後述する第2の熱処理工程において、第1の温度以上の第2の温度でSiOC膜を熱処理することにより、第1の温度で熱処理した後のSiOC膜中から、SiOC膜中に残留しているC
xH
y系の不純物を除去することとなる。結果として、SiOC膜のk値を充分に下げることができることとなる。
【0132】
(第2の熱処理)
第1の熱処理終了後、すなわち、SiOC膜中から水分やCl等の不純物を充分に脱離させて除去させた後、ウエハ200の温度を第1の温度から第2の温度へ変更する。第2の温度は第1の温度以上の温度とする。すなわち、第2の温度は、第1の温度よりも高い温度とするか、第1の温度と同等な温度とする。処理室201内の雰囲気は、第1の熱処理工程と同様の所望の圧力を有するN
2ガス雰囲気に維持する。
【0133】
ウエハ200の温度が所望の温度、すなわち、第2の温度となったら、この状態を所定時間保持し、第1の熱処理が行われたSiOC膜に対して第2の熱処理を行う。すなわち、第1の温度で第1の熱処理を行った後のSiOC膜に対して、第2の温度で第2の熱処理を行う。
【0134】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば133〜101325Pa(1〜760Torr)、好ましくは10132〜101325Pa(76〜760Torr)の範囲内の圧力とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。ウエハ200上のSiOC膜に対する熱処理時間は、例えば1〜120分、好ましくは1〜60分、より好ましくは1〜30分の範囲内の時間とする。
【0135】
このとき、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば上述の第1の熱処理工程における第1の温度以上の第2の温度となるような温度に設定する。具体的には、ウエハ200の温度が、第1の温度以上の温度であって、例えば、300℃以上900℃以下、好ましくは350℃以上700℃以下、より好ましくは400℃以上700℃以下、さらに好ましくは450℃以上600℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。このような温度範囲は、第2の不純物としてのC
xH
y系の不純物を、効率的にまた充分にSiOC膜中から脱離させて除去することや、ウエハ200が受ける熱負荷や熱履歴等を考慮のうえ決定される。
【0136】
図12(c)に例示するように、ウエハ200の温度が300℃を下回ると、SiOC膜中からC
2H
2等のC
xH
y系の不純物を脱離させて除去することが難しくなり、SiOC膜の改質効果が低下してしまう。例えば、ウエハ200の温度を200℃以下とすると、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物は殆ど脱離しなくなる。ウエハ200の温度を300℃以上とすることで、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物を充分に脱離させて除去することが可能となる。ただし、ウエハ200の温度を300℃とした場合は、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物を充分に脱離させるまでに時間がかかることがある。ウエハ200の温度を350℃以上とすることで、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物を充分に脱離させるまでの時間を短縮することが可能となる。また、特に、ウエハ200の温度が400℃程度であるときに、C
xH
y系の不純物の脱離量がピークとなる。よって、ウエハ200の温度を400℃以上とすることで、C
xH
y系の不純物の脱離を促進させることが可能となる。すなわち、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物を効率的に脱離させることができるようになる。また、SiOC膜中からC
xH
y系の不純物を充分に脱離させるまでの時間を更に短縮することも可能となる。
【0137】
第2の熱処理工程を行う段階では、SiOC膜中における水分やCl等の不純物は既に除去されており、上述のような所望しない反応は生じない。すなわち、水分とClとの反応によるSiOC膜の酸化、それによるSiOC膜の膜収縮率の増大、水分とClとの反応によるHClの生成、HClによるSiOC膜中のSi−Cl結合やSi−H結合等の切り離し、それによる不要な吸着サイトの生成、この吸着サイトへの脱離物質の再吸着、C
xH
y系の不純物とClとの反応による吸着サイトへのCの再吸着等の所望しない反応は生じることはない。これは、第2の温度は、所望しない反応が生じ得る温度帯(450℃を上回る温度帯)を含むものの、第2の熱処理工程を行う段階では、所望しない反応を生じさせる物質(水分やCl等)が発生しないからである。なお、ウエハ200の温度を450℃以上とすることでも、SiOC膜中からのC
xH
y系の不純物の脱離を促進させることができ好ましい。ウエハ200の温度を450℃以上とすることで、ウエハ200の温度を300〜350℃とする場合よりも、SiOC膜中からのC
xH
y系の不純物の脱離を促進させることができる。
【0138】
ウエハ200の温度が900℃を超えると、熱負荷が大きくなりすぎ、ウエハ200上に形成される半導体デバイスの電気特性等に影響を及ぼすことがある。ウエハ200の温度を少なくとも900℃以下とすることで、この熱負荷による電気特性等への影響を抑制することが可能となる。熱処理対象のSiOC膜が形成されたウエハ200がメモリデバイス向けであるような場合には、900℃程度の熱にまで耐えることができる。また、このウエハ200がロジックデバイス向けであっても、700℃程度の熱にまで耐えることができる。ウエハ200の温度を600℃以下とすれば、デバイス構造等の熱損傷をより確実に回避することが容易となる。
【0139】
以上のことから、ウエハ200の温度は300℃以上900℃以下、好ましくは350℃以上700℃以下、より好ましくは400℃以上700℃以下、さらに好ましくは450℃以上600℃以下の範囲内の温度とするのがよい。第2の温度は第1の温度以上の温度とすればよい。すなわち、第2の温度は第1の温度よりも高い温度としてもよいし、第1の温度と同等な温度としてもよい。
【0140】
例えば、第1の温度を300〜400℃とし、第2の温度を450〜600℃とした場合、第1の熱処理工程および第2の熱処理工程のそれぞれにおいて、上述の所望しない反応を確実に防止することが可能となる。特に、第1の温度を300〜400℃の温度とすることで、第1の熱処理工程において、所望しない反応をより確実に防止することが可能となる。また、第2の温度を450〜600℃、すなわち、所望しない反応が生じ得る温度帯としても、第2の熱処理工程を行う段階では、所望しない反応を生じさせる物質(水分やCl等)が発生しないことから、所望しない反応を確実に抑制することが可能となる。また、第2の温度を450〜600℃、すなわち、第1の温度を超える温度とすることで、第2の熱処理工程におけるSiOC膜中からのC
xH
y系の不純物の脱離を、より迅速に行うことが可能となる。
【0141】
また、例えば、第1の温度および第2の温度を同一の温度、例えば400〜450℃の範囲内の同一の温度としてもよい。第1の温度および第2の温度をそれぞれ400〜450℃の範囲内の同一の温度とすれば、第1の熱処理工程および第2の熱処理工程において、上述の所望しない反応を確実に抑制することが可能となる。また、第1の温度および第2の温度を同一の温度とすれば、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程との間で、ウエハ200の温度、すなわち、処理室201内の温度(ヒータ207の温度)を変更(調整)する必要がない。すなわち、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程との間で、処理室201内の温度が安定するまで待機する必要がない。従って、これらの工程を連続的に行うことが可能となり、また、熱処理の温度制御を簡素化させることが可能となる。
【0142】
上述の条件下でSiOC膜に対して第2の熱処理を施すことにより、上述の所望しない反応を抑制しつつ、SiOC膜中のC
xH
y系の不純物をSiOC膜中から充分に脱離させて除去することができる。SiOC膜中におけるこの不純物がSiOC膜中から除去されることでSiOC膜が更に改質され、第1の熱処理を行った後であって第2の熱処理を行う前のSiOC膜よりも、SiOC膜のエッチング耐性を更に高めることができ、また、誘電率を更に低下させることができる。すなわち、SiOC膜の膜質(膜特性)を更に向上させることができる。本実施形態の手法によれば、SiOC膜の誘電率(k値)を、例えば2.7程度まで低下させることができる。
【0143】
このように、本実施形態では、まず、所望しない反応が生じない温度帯(第1の温度)で、SiOC膜を熱処理する。これにより、所望しない反応を生じさせることなく、所望しない反応を生じさせる物質である水分やCl等の不純物(第1の不純物)を、SiOC膜中から除去するようにしている。そして、SiOC膜中から所望しない反応を生じさせる物質である水分やCl等の不純物(第1の不純物)を除去した後に、所望しない反応が生じ得る温度帯を含む温度帯(第2の温度)で、所望しない反応を生じさせる物質である水分やCl等の不純物(第1の不純物)が存在(発生)しない雰囲気下において、SiOC膜を熱処理する。これにより、所望しない反応を生じさせることなく、所望しない反応が生じない温度帯(第1の温度)で熱処理した後のSiOC膜中からC
xH
y系の不純物(第2の不純物)を除去するようにしている。
【0144】
本実施形態におけるこのような熱処理を、2段階熱処理(多段階熱処理)と称することもできる。また、2段階アニール(多段階アニール)、2段階改質処理(多段階改質処理)、2段階不純物除去処理(多段階不純物除去処理)等と称することもできる。
【0145】
第1の熱処理工程および第2の熱処理工程では、処理室201内を、酸素非含有ガスとしてのN
2ガスにより酸素非含有の雰囲気としている。ここでいう酸素非含有の雰囲気とは、処理室201内の雰囲気中に酸化ガス(O成分)が存在しない状態だけでなく、処理室201内の雰囲気中における酸化ガスの濃度(O濃度)が、処理対象のSiOC膜に影響を与えない程度に低下した状態を含む。これにより、上述のような成膜温度よりも高い温度で熱処理を行っても、SiOC膜中のO濃度が所望の濃度を超えて高まってしまうこと、すなわち、SiOC膜の酸化が過度に進行してしまうことを抑制することができる。また、処理室201内を酸素非含有の雰囲気としているので、酸化の進行等に伴ってSiOC膜中のC濃度が所望の濃度未満に低下してしまうこと、すなわち、SiOC膜中からCが脱離してしまうことを抑制することができる。このとき、N
2ガス等の酸素非含有ガスは、熱処理ガスとして作用しているともいえる。また、N
2ガス等は、SiOC膜中から脱離した不純物を運ぶキャリアガスとして作用しているともいえる。すなわち、酸素非含有ガスは、これら不純物のSiOC膜中や処理室201内からの排出を促し、これにより、SiOC膜の改質を促進させるアニールガスとして作用しているともいえる。
【0146】
処理室201内を酸素非含有の雰囲気とするには、例えば、N
2ガス等の酸素非含有ガスをウエハ200に対して供給することなく、酸素非含有の雰囲気を生成する雰囲気生成部としての排気系により、処理室201内を真空排気してもよい。これにより、O成分を含めた殆どの成分を、処理室201内の雰囲気から排気、除去することができる。但し、上述のように、処理室201内を排気しつつ、更にN
2ガス等の酸素非含有ガスをウエハ200に対して供給する方が、処理室201内に残留するO成分の排気を促進させ、処理室201内を酸素非含有の雰囲気とすることが容易となる。また、この方が、処理室201を構成する処理容器の内壁や、外部から持ち込まれたウエハ200等から、O成分を含むアウトガスが発生したとしても、N
2ガスによる希釈効果により、処理室201内の酸素非含有の雰囲気を保つことが容易となる。
【0147】
SiOC膜の改質処理(アニール処理)は、主に、ウエハ200の温度が所望の温度で安定的に維持される熱処理の期間中に行われる。但し、上述のウエハ200の温度を調整する工程(成膜温度から第1の温度へ変更する工程、第1の温度から第2の温度へ変更する工程等)にてウエハ200を昇温させるとき、或いは、後述する処理室201内をパージする工程にてウエハ200を降温させるときであっても、SiOC膜中の不純物の除去が進行し得る温度にウエハ200の温度が保たれている間は、SiOC膜の改質処理は進行し得る。よって、SiOC膜を改質する工程とは、主に、SiOC膜を熱処理する工程のことを指すが、ウエハ200の温度を調整する工程および処理室201内をパージする工程のうち少なくとも一部の期間を、SiOC膜を改質する工程に含めて考えてもよい。換言すれば、SiOC膜を改質する工程とは、ウエハ200の温度が、改質処理に必要な温度に到達してから、改質処理に必要な温度未満に到達する直前までの期間を指すともいえる。また、SiOC膜を改質する工程とは、ウエハ200の温度が、改質処理に必要な温度に到達してから、すなわち、SiOC膜の改質が開始されてから、SiOC膜の改質が完了するまでの期間を指すともいえる。
【0148】
酸素非含有ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0149】
(パージおよび大気圧復帰)
SiOC膜を改質する処理が終了したら、バルブ243j〜243lを開いたままとして、ガス供給管232j〜232lのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスやSiOC膜から脱離した不純物等の物質を含むガス等が処理室201内から除去される。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0150】
また、ヒータ207への通電具合を調整し、或いは、ヒータ207への通電を停止して、ウエハ200の温度が例えば200℃未満、好ましくは室温程度の温度となるように、ウエハ200の温度を降温させる。ウエハ200の降温を、上述のパージおよび大気圧復帰と平行して行うことで、パージガスの冷却効果によって、ウエハ200の温度を所定温度にまで短時間に低下させることができる。
【0151】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口され、処理済のウエハ200がボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0152】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0153】
(a)BTCSMガスのようなSi、Cおよびハロゲン元素を含みSi−C結合を有する原料と共にピリジンガスのような触媒を供給することで、BTCSMガスのような原料の分解を促すことが可能となる。これにより、例えば150℃以下の低温条件下であっても、第1の層を形成することが可能となる。また、第1の層を形成する際、BTCSMガスのような原料の物理吸着層ではなく、化学吸着層の形成を優勢とすることが可能となり、第1の層の形成レートを高めることが可能となる。
【0154】
また、H
2Oガスのような酸化剤と共にピリジンガスのような触媒を供給することで、H
2Oガスのような酸化剤の分解を促し、H
2Oガスのような酸化剤の酸化力を向上させることが可能となる。これにより、例えば150℃以下の低温条件下であっても、第1の層とH
2Oガスのような酸化剤とを効率よく反応させ、第1の層を第2の層に改質することが可能となる。また、第1の層の改質レートを高めることが可能となる。
【0155】
つまり、ピリジンガスのような触媒の触媒作用により、SiOC膜の成膜温度を低温化させ、また、SiOC膜の成膜レートを高めることが可能となる。
【0156】
(b)BTCSMガスのような、Si、Cおよびハロゲン元素を含みSi−C結合を有する原料ガス、すなわち、Siソースとして作用し、また、Cソースとして作用するガスを用いることで、第1の層中にCを添加することが可能となる。結果として、高濃度にCが添加された膜、すなわち、高いC濃度を有するSiOC膜を形成することが可能となる。
【0157】
特に、BTCSMガスのような、Si−Si結合を有さず、それらの間にCが介在したSi−C−Si結合を有する原料ガスを用いることで、SiOC膜中のC濃度を高めることが可能となる。というのも、原料ガスに含まれるCは、2つの結合手でSiとそれぞれ結合している。このため、第1の層を形成する際、BTCSMガスに含まれるCとSiとの結合が全て切れてしまい、Cが第1の層中に取り込まれなくなることを抑制できるようになる。また、第1の層を第2の層へと改質する際、第1の層中に含まれるCとSiとの結合が全て切れてしまい、第1の層からCが脱離してしまうことを抑制できるようになる。すなわち、BTCSMガスのようなSi−C−Si結合を有する原料ガスを用いることで、TCDMDSガスのようなSi−Siの間にCが介在した結合を有さない原料ガス等を用いる場合よりも、膜中のC濃度を高めることが可能となる。
【0158】
また、膜中にCを添加することで、SiOC膜のフッ酸(HF)に対する耐性(エッチング耐性)を向上させることも可能となる。
【0159】
参考までに、1%濃度のフッ酸(1%HF水溶液)に対するウエットエッチングレート(以降、WERともいう)は、低温条件下で触媒ガスを用いて得られるSiO膜で約600Å/min、低温条件下でプラズマを用いて得られるSiO膜で約200Å/min、酸化炉内でシリコンウエハを熱酸化して得られる熱酸化膜で約60Å/minである。つまり、低温条件下で触媒ガスやプラズマを用いて形成されるSiO膜は、熱酸化膜よりもエッチング耐性が低くなる傾向がある。エッチング耐性を向上させるには、膜中にCを添加すること、すなわち、SiOC膜を形成することが有効である。成膜温度が600〜800℃であれば、例えば、HCDSガス等の原料ガス(Siソース)、O
2ガス等の酸化ガス(Oソース)、プロピレン(C
3H
6)ガス等の炭素含有ガス(Cソース)をウエハに対して交互或いは同時に供給することで、SiOC膜を形成することが可能である。しかしながら、成膜温度を例えば150℃以下とした場合、上述のガスや、上述の成膜手法を用いてSiOC膜を形成することは困難である。
【0160】
これに対し、本実施形態では、例えば150℃以下の低温条件下であっても、高濃度にCが添加されたSiOC膜、すなわち、エッチング耐性の高い膜を形成することが可能となる。例えば、本実施形態では、熱酸化膜よりもエッチング耐性が高い膜を形成することが可能となる。また、ピリジンガスの供給量を適宜調整すること等により、SiOC膜中のC濃度、すなわち、エッチング耐性を、精度よく制御することが可能となる。
【0161】
(c)BTCSMガスのような、1分子中に含まれるアルキレン基の分子量(分子サイズ)が小さなアルキレンハロシラン原料ガスを用いることで、成膜レートを高め、強固な膜を形成することが可能となる。というのも、例えばヘキシレン基やヘプチレン基等の分子量の大きなアルキレン基を1分子中に含むアルキレンハロシラン原料ガスを用いた場合、この分子量の大きなアルキレン基が、原料ガスに含まれるSiの反応を阻害する立体障害を引き起こし、第1の層の形成を阻害してしまうことがある。また、第1の層中に、上述のアルキレン基が未分解、或いは一部しか分解していない状態で残っていた場合、この分子量の大きなアルキレン基が、第1の層に含まれるSiとH
2Oガスとの反応を阻害する立体障害を引き起こし、第2の層の形成を阻害してしまうことがある。これに対し、BTCSMガスのような、1分子中に含まれるアルキレン基の分子量が小さなアルキレンハロシラン原料ガスを用いることで、上述の立体障害の発生を抑制することができ、第1の層および第2の層の形成をそれぞれ促進させることができる。結果として、成膜レートを高め、強固な膜を形成することが可能となる。また、TCDMDSガスのような、1分子中に含まれるアルキル基の分子量が小さなアルキルハロシラン原料ガスを用いた場合にも、同様の効果が得られる。
【0162】
(d)BTCSMガスのような、1分子中に2つのSiを含む原料ガスを用いることで、SiOC膜を、膜中に含まれるSi同士が互いに近接した膜とすることが可能となる。というのも、BTCSMガスが自己分解しない条件下で第1の層を形成する際、BTCSMガス分子に含まれる2つのSiは、互いに近接した状態を保ったままウエハ200(表面の下地膜)上に吸着することとなる。また、BTCSMガスが自己分解する条件下で第1の層を形成する際、BTCSMガス分子に含まれる2つのSiは、互いに近接した状態を保ったままウエハ200上に堆積する傾向が強くなる。つまり、BTCSMガスのような1分子中に2つのSiを含むガスを用いることで、トリスジメチルアミノシラン(Si(N(CH
3)
2))
3H、略称:3DMAS)ガスのような1分子中に1つのSiしか有さないガスを用いる場合と比べ、第1の層中に含まれるSi同士を互いに近接した状態とすることが可能となる。結果として、SiOC膜を、膜中のSi同士が互いに近接した膜とすることが可能となる。これにより、膜のエッチング耐性を向上させることも可能となる。
【0163】
(e)BTCSMガスのような原料およびピリジンガスのような触媒の供給と、H
2Oガスのような酸化剤およびピリジンガスのような触媒の供給と、を交互に行うことで、これらのガスを、表面反応が支配的な条件下で適正に反応させることができる。結果として、SiOC膜の段差被覆性、膜厚制御の制御性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、処理室201内における過剰な気相反応を回避することができ、パーティクルの発生を抑制することも可能となる。
【0164】
(f)SiOC膜の成膜温度よりも高い第1の温度でSiOC膜を熱処理することにより、SiOC膜中から第1の不純物(水分やCl等の不純物)を除去することができる。その後、第1の温度以上の第2の温度でSiOC膜を熱処理することにより、第1の温度で熱処理した後のSiOC膜中から、第1の不純物とは異なる第2の不純物(C
xH
y系の不純物)を除去することができる。結果として、SiOC膜を、SiOC膜改質工程を行う前のアズデポ(as depo)状態のSiOC膜よりも、不純物の少ない膜とすることができる。これにより、SiOC膜のエッチング耐性を向上させ、膜の誘電率を低下させることができる。つまり、SiOC膜の膜質を向上させることができる。
【0165】
(g)SiOC膜形成工程およびSiOC膜改質工程の一連の処理を行うことで、ポーラス状の膜を形成することが可能となる。すなわち、SiOC膜をポーラス化することができる。
【0166】
というのも、SiOC膜形成工程で形成された膜中には、少なくともSi−C結合とSi−O結合とが存在する。SiとCとの結合距離は、SiとOとの結合距離よりも大きい。よって、SiO
2膜に比べると、SiOC膜は、膜中へのSi−C結合の導入により原子間距離が大きくなり、膜密度が疎となる。また、SiOC膜中には、Si−C−Si結合が存在する場合もあり、この場合、さらに膜密度が疎となる。特に、原料ガスとして、BTCSMガスのようなSi−C−Si結合を有するガスを用いた場合、SiOC膜中にSi−C−Si結合が含まれやすくなり、膜密度が疎となる傾向が強くなる。この膜密度が疎となる部分には、微小な孔(ポア)、すなわち、微小な空間が生じているともいえる。つまり、SiOC膜形成工程で形成されたSiOC膜は、アズデポ状態でポーラス状の膜、すなわち、膜中の原子密度の低い膜となる。
【0167】
また、SiOC膜改質工程において、SiOC膜中から水分やCl等の不純物やC
xH
y系の不純物が脱離する際、これらの不純物の抜けた部分には、微小な孔(ポア)、すなわち、微小な空間が生じる。つまり、SiOC膜改質工程により改質されたSiOC膜は、アズデポ状態のSiOC膜よりも、更にポーラス化が進んだポーラス状の膜、すなわち、膜中の原子密度の更に低い膜となる。但し、SiOC膜改質工程において、上述の所望しない反応が生じると、SiOC膜の膜収縮率が大きくなり、SiOC膜のポーラス状態を維持することが難しくなる。SiOC膜改質工程を上述の処理条件にて行うことで、アズデポ状態でのポーラス状態を維持しつつ、更にポーラス化が進んだ状態に改質(変化)させることが可能となる。すなわち、SiOC膜の膜質を向上させることができる。
【0168】
(h)SiOC膜形成工程およびSiOC膜改質工程の一連の処理を行うことで、SiOC膜の誘電率(k値)を、SiO
2膜の誘電率よりも低下させることが可能となる。というのも、SiOC膜形成工程およびSiOC膜改質工程の一連の処理を行うことで、上述したように、SiOC膜をポーラス化させることができる。また、SiOC膜改質工程を行うことにより、SiOC膜中から水分やCl等の不純物やC
xH
y系の不純物を除去することができる。水分等の不純物は、永久双極子モーメントを持つため、電場に従って向きを変え、誘電率を高くする物質である。SiOC膜のポーラス化と、誘電率を高くする物質の除去とにより、SiOC膜の誘電率を、SiO
2膜の誘電率よりも低下させることができる。本実施形態の成膜シーケンスによれば、SiOC膜の誘電率を例えば3.0以下、具体的には、2.68まで低下させることができることを確認した。
【0169】
(i)ところで、トランジスタや、次世代メモリとして開発されているReRAMやMRAMには、低温成膜、低WER(高エッチング耐性)、低誘電率等を満たす薄膜として、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)にCを添加したシリコン炭窒化膜(SiCN膜)や、SiCN膜中に更にOを添加したシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)等の薄膜を用いることが考えられる。一方で、これらの薄膜のエッチング耐性を更に向上させ、誘電率を更に低下させようとすると、膜中のC濃度やO濃度を増加させ、N濃度を低下させる必要がある。しかしながら、例えば各種ガスを交互に供給して成膜する上述のような方法で、かつ低温領域にて、N濃度を例えば不純物レベルに抑えつつ、C濃度等を高めることは困難である。
【0170】
これに対し、本実施形態では、例えば150℃以下の低温の条件下であっても、Si,CおよびClを含みSi−C結合を有する原料ガスを用いることで、薄膜中のC濃度を高めたり、精度よく制御したりすることが可能となる。
【0171】
(4)本実施形態の変形例
本実施形態の成膜シーケンスは、
図4(a)に示す態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0172】
(変形例1)
原料ガスを供給するステップ1aでは、原料ガスとして、例えば、BTCSEガスのような、BTCSMガスとは種類の異なるアルキレンハロシラン原料ガスを供給するようにしてもよい。また例えば、TCDMDSガスのような、アルキルハロシラン原料ガスを供給するようにしてもよい。
図4(b)は、原料ガスとして、BTCSMガスの代わりにTCDMDSガスを用いる例を示している。この場合、ステップ1aでは、バルブ243dの開閉制御を、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1aにおけるバルブ243aの開閉制御と同様の手順で行う。その他の処理条件や処理手順は、例えば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様とする。
【0173】
本変形例によれば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果を奏する。
【0174】
また、本変形例のように原料ガスの種類を適宜選択することで、SiOC膜中のC濃度等を制御することが可能となる。また、SiOC膜中のC濃度を制御することで、C濃度に対する相対的なSi濃度およびO濃度を変化させることも可能となる。
【0175】
この1要因としては、例えば、各原料ガスの分子構造中におけるCの配置の違いが考えられる。というのも、BTCSMガスやBTCSEガス等はSi−C−Si結合やSi−C−C−Si結合を有する原料ガスであり、CがSiに挟み込まれた分子構造を有している。BTCSMガスやBTCSEガス等に含まれるSiの4つの結合手のうち、Cと結合していない余った結合手には、多くのClが結合している。例えば、BTCSMガスやBTCSEガスはいずれも、Siの4つの結合手のうち3つの結合手にClが結合している。このように、BTCSMガスやBTCSEガス等は、1分子中に多く(例えば6つ)のClを含むことから、TCDMDSガス等のような1分子中に含まれるClの数が少ない(例えば4つ以下)原料ガスよりも、高い反応性を有するものと考えられる。反応性の高いBTCSMガスやBTCSEガス等を原料ガスとして用いることで、第1の層を形成する際の反応を効率的に行うことができ、SiOC膜の成膜レートを高めることが可能となる。また、反応性の高い原料ガスを用いることで、成膜処理を進行させることが可能な処理条件の範囲、すなわち、プロセスウインドウを拡張することが可能となる。広範なプロセスウインドウ内から、所望のC濃度が得られる成膜条件を選択することができるので、結果として、SiOC膜中のC濃度を高めることが容易となる。また、SiOC膜中のC濃度の制御性を向上させることも可能となる。ここで、BTCSMガス中に含まれるCの数は、例えばTCDMDSガス等と比較して少ない。但し、この点は、SiOC膜中のC濃度の向上に不利には働かないと考えられる。本発明者等によれば、BTCSMガスを用いる方が、TCDMDSガスを用いる場合よりも、C濃度を向上させることが容易であることを確認している。
【0176】
また、TCDMDSガスやDCTMDSガス等はSi−C−Si結合やSi−C−C−Si結合を有さない原料ガスであり、メチル基等のアルキル基がSiに結合した分子構造、すなわち、クロロシラン原料ガスの一部のクロロ基がメチル基に置き換わった分子構造を有している。TCDMDSガスやDCTMDSガス等は、1分子中に含むClの数が少ない(例えば4つ以下)ことから、BTCSMガスやBTCSEガス等の原料ガスよりも、反応性が低くなると考えられる。そのため、TCDMDSガスやDCTMDSガス等を原料ガスとして用いることで、第1の層を形成する際の反応を、比較的ゆっくりと進行させることができ、SiOC膜を、より緻密な膜とすることが可能となる。結果として、SiOC膜中のC濃度を適正に抑えたとしても、高いエッチング耐性を維持することが可能となる。TCDMDSガスを原料ガスとして用いる場合と、DCTMDSガスを原料ガスとして用いる場合と、の比較では、1分子中にメチル基、すなわち、Cを多数含むDCTMDSガスの方が、膜中へのCの取り込み量に有利に働くことを確認している。
【0177】
このように、原料ガスとして例えばBTCSMガスやBTCSEガス等を選択して供給
することで、SiOC膜中のC濃度を高めることが容易となる。また、原料ガスとして例えばTCDMDSガスやDCTMDSガス等を選択して供給することで、エッチング耐性を維持しつつ、SiOC膜中のC濃度を適正に抑えることが可能となる。このように、複数種類の原料ガスの中から特定の原料ガスを選択して供給することで、SiOC膜中のC濃度等を精度よく制御することが可能となる。
【0178】
(変形例2)
O
2ガスを供給するステップ2aでは、触媒ガスとして、ピリジンガスとは異なる分子構造を有する触媒ガス、すなわち、ピリジンガスとは異なる種類のアミン系触媒ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、原料ガスと共に供給する触媒ガスの種類と、酸化ガスと共に供給する触媒ガスの種類と、を異ならせてもよい。この場合、ステップ2aでは、ガス供給管232cから、ピリジンガスとは異なる種類のアミン系触媒ガスを供給すればよい。その他の処理条件や処理手順は、例えば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様とする。
【0179】
本変形例によれば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果を奏する。
【0180】
また、本変形例のように触媒ガスの種類を適宜選択することで、SiOC膜中のC濃度等を制御することが可能となる。また、SiOC膜中のC濃度を制御することで、膜中のSi濃度およびO濃度を相対的に変化させることも可能となる。
【0181】
この1要因としては、例えば、触媒ガスの分子構造に応じた触媒作用の強さの相違が考えられる。例えば、pKa値の大きい触媒ガスを選択することで、酸化ガスの分解が促進され、その酸化力が増加することがある。その結果、ステップ2aにおいて第1の層に含まれるSi−C結合が切断され、最終的に形成されるSiOC膜中のC濃度が低下することがある。また、例えば、pKaの小さい触媒ガスを選択することで、酸化ガスの分解が適正に抑制され、その酸化力が低下することがある。その結果、ステップ2aにおいて第1の層に含まれるSi−C結合が維持され易くなり、最終的に形成されるSiOC膜中のC濃度が高まることがある。また、他の要因としては、触媒ガスや生成される塩等の触媒反応に関わる各種物質の蒸気圧の違いが考えられる。また、これらの要因が合わさった複合要因等が考えられる。
【0182】
(変形例3)
上述のステップ1a,2aのサイクルを複数回行う際、その途中で、原料ガスの種類や触媒ガスの種類を変更してもよい。また、ステップ1a,2aのサイクルを複数回行う際、その途中で、触媒ガスの供給量を変更してもよい。
【0183】
この場合、原料ガスの種類の変更を、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。また、用いる原料ガスは2種類であっても3種類以上であってもよい。原料ガスの組み合わせは、Si、Cおよびハロゲン元素を含みSi−C結合を有する原料ガスの中から任意に選択することができる。原料ガスの使用順序は任意に選択することができる。また、触媒ガスの種類の変更を、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。また、用いる触媒ガスは2種類であっても3種類以上であってもよい。触媒ガスの組み合わせや順序は任意に選択することができる。また、触媒ガスの供給量を変更する場合は、その供給量を小流量から大流量へと変更してもよく、大流量から小流量へと変更してもよい。また、触媒ガスの供給量の変更を、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。このとき、触媒ガスの供給量を、小流量から大流量へ、又は大流量から小流量へと段階的に増加または低下させてもよく、或いは、適宜任意の組み合わせで上下に変化させてもよい。
【0184】
本変形例によれば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果を奏する。また、本変形例によれば、SiOC膜中のC濃度を膜厚方向で変化させることができる。SiOC膜中のC濃度を膜厚方向で変化させることにより、膜中の相対的なSi濃度およびO濃度を膜厚方向で変化させることもできる。結果として、例えば、SiOC膜のエッチング耐性や誘電率等を膜厚方向で変化させることができる。
【0185】
(変形例4)
図1に示すような原料ガス供給ライン、触媒ガス供給ラインをそれぞれ複数備えた基板処理装置を用いる場合に限らず、
図1に示す複数のガス供給ラインのうち特定のガス供給ラインのみを備えた基板処理装置を用いることも可能である。但し、複数のガス供給ラインを備えた基板処理装置を用いる場合、使用するガス供給ラインを適宜選択することで、所望の膜組成等に応じて、複数種のガスの中から特定のガスを選択して供給することが容易となる。また、1台の基板処理装置で、様々な組成比、膜質を有する膜を、汎用的かつ再現性よく形成できるようになる。また、ガス種の追加や入替等に際して、装置運用の自由度を確保することが可能となる。
【0186】
(変形例5)
SiOC膜形成工程とSiOC膜改質工程とを、異なる処理室内にて行うようにしてもよい。
【0187】
例えば、SiOC膜形成工程を、
図1に示す基板処理装置(以下、第1基板処理部ともいう)が備える処理室201(以下、第1処理室ともいう)内で行う。第1基板処理部を構成する各部の動作は、第1制御部により制御される。第1基板処理部を用い、上述のステップ1a,2aと同様のステップ1b,2bを含むサイクルを所定回数実施する。その後、処理室201内のパージおよび大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハディスチャージを順次実行する。続いて、ボート217より取り出されたウエハ200上に形成されたSiOC膜を熱処理する工程、すなわち、SiOC膜改質工程を、処理室201とは異なる処理室内で行う。このとき、例えば、
図1に示す基板処理装置と同様に構成された基板処理装置であって、SiOC膜形成工程を行った装置とは別の基板処理装置(以下、第2基板処理部ともいう)が備える処理室(以下、第2処理室ともいう)を用いることができる。第2基板処理部を構成する各部の動作は、第2制御部により制御される。第2基板処理部を用い、第1基板処理部においてSiOC膜形成工程を行うときと同様に、ウエハチャージ、ボートロードを順次実行する。また、上述の実施形態のSiOC膜改質工程を行うときと同様に、圧力調整、温度調整を行う。その後、上述の実施形態と同様に、第1の熱処理、第2の熱処理、パージ、大気圧復帰、ボートアンロードおよびウエハディスチャージを順次実行する。本変形例における処理条件や処理手順は、例えば、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様とする。
【0188】
以上のように、SiOC膜形成工程とSiOC膜改質工程とを、同一の処理室201内にて(In−Situで)行うだけでなく、異なる処理室(第1処理室および第2処理室)内にて(Ex−Situで)行うこともできる。In−Situで両工程を行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることなく、ウエハ200を真空下に置いたまま、一貫して処理を行うことができ、安定した成膜処理を行うことができる。Ex−Situで両工程を行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各工程での処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0189】
本変形例では、主に、SiOC膜を形成する第1基板処理部と、SiOC膜を熱処理する第2基板処理部とにより、基板処理システムが構成されることとなる。但し、基板処理システムは、第1基板処理部と第2基板処理部とが上述のようにそれぞれ独立した装置(スタンドアローン型装置)群として構成されている場合に限らず、第1基板処理部と第2基板処理部とが同一のプラットフォームに搭載された1つの装置(クラスタ型装置)として構成されていてもよい。また、SiOC膜改質工程を行う装置は、
図1に示す基板処理装置とは異なる構成の装置、例えば、アニール処理専用機(熱処理炉)等として構成されていてもよい。
【0190】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、
図6(a)を用いて説明する。本実施形態においても、上述の実施形態と同様、
図1、
図2に示す基板処理装置を用いる。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0191】
本実施形態の成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対してSi、CおよびClを含みSi−C結合を有する原料ガスとしてBTCSMガスを供給する工程と、
ウエハ200に対して酸化ガスとしてO
3ガスを供給する工程と、
ウエハ200に対して触媒ガスとしてTEAガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、Si、OおよびCを含む薄膜としてSiOC膜を形成する工程を行う。
【0192】
このとき、BTCSMガスを供給する工程を、TEAガスを供給する工程を不実施とした状態で行い、O
3ガスを供給する工程を、TEAガスを供給する工程を実施した状態で行う。
【0193】
また、SiOC膜形成工程を実施した後、上述の実施形態と同様にSiOC膜改質工程を行う。
【0194】
以下、本実施形態のSiOC膜形成工程のうち、上述の実施形態とは異なる点について詳しく説明する。
【0195】
(SiOC膜形成工程)
ウエハチャージ、ボートロード、圧力調整および温度調整後、次の2つのステップ1c,2cを順次実行する。
【0196】
[ステップ1c]
(BTCSMガス供給)
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1aと同様の手順にて、ウエハ200に対してBTCSMガスを供給する。このとき、バルブ243c,243iを閉じた状態とし、ウエハ200に対するBTCSMガスの供給を、ピリジンガスやTEAガス等のアミン系触媒ガスの供給を停止した状態、すなわち、アミン系触媒ガスを非供給とした状態で行う。すなわち、ウエハ200に対するBTCSMガスの供給を行うときは、触媒ガスの供給を行わないこととする。
【0197】
また、バッファ室237内、ノズル249b,249c内へのBTCSMガスの侵入を防止するため、バルブ243k,243lを開き、ガス供給管232k,232l内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b,232c、ノズル249b,249c、およびバッファ室237を介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0198】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13330Pa、好ましくは133〜2666Paの範囲内の圧力とする。MFC241aで制御するBTCSMガスの供給流量は、例えば1〜2000sccmの範囲内の流量とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。BTCSMガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。
【0199】
このとき、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。BTCSMガス供給時に触媒ガスを供給しない場合、ウエハ200の温度が250℃未満となるとウエハ200上にBTCSMが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜レートが得られなくなることがある。本実施形態では、次に行うステップ2aにおいてO
3ガスとTEAガスとを組み合わせて用いることで、ウエハ200の温度を250℃未満としても、これを解消することが可能となる。ステップ2aを次に行うことを前提としたうえで、ウエハ200の温度を150℃以下、さらには100℃以下とすると、ウエハ200に加わる熱量を低減することができ、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。このとき、室温以上の温度であれば充分な成膜レートが得られる。よって、ウエハ200の温度は、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度とするのがよい。
【0200】
上述の条件下でウエハ200に対してBTCSMガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのCおよびClを含むSi含有層が形成される。上述のように、例えば150℃以下の低温条件下では、第1の層として、熱分解が不充分な物理吸着によるBTCSMガスの吸着層、すなわち、BTCSMガスの物理吸着層が主に形成されていると考えられる。
【0201】
このように、第1の層が主にBTCSMガスの物理吸着層により構成されていると、第1の層がウエハ200上などに定着し難くなる。また、この後に酸化処理を行っても、第1の層は強固な結合を有するSiOC層に変化し難くなる。つまり、BTCSMガスの供給時に触媒ガスを供給しない場合、たとえその後の酸化処理にて触媒ガスを供給したとしても、第1の層の酸化反応が進行し難くなることがある。その結果、SiOC膜の成膜レートが低下したり、SiOC膜を形成することが不可能となったりすることがある。
【0202】
このような課題に対し、上述の実施形態では、原料ガスを供給する工程と酸化ガスを供給する工程との両方で触媒ガスを供給することで、第1の層のウエハ200上への定着を促すようにしている。上述したように、触媒ガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、BTCSMガスの熱分解反応を促進させることから、BTCSMガス分子の化学吸着による第1の層の形成を促進させることができ、第1の層をウエハ200上へ強固に定着させることが可能となる。
【0203】
これに対し、本実施形態では、次に行うステップ2cにおいてのみ触媒ガスを使用するようにしている。但し、本実施形態では、ステップ2cにおいて、酸化力の強い酸化ガス(例えばO
3ガス)と、触媒作用の強い触媒ガス(例えばTEAガス等のアミン系触媒ガス)と、を組み合わせることで、上述の課題を解決するようにしている。これらのガスを組み合わせて用いることにより、ステップ2cにおける酸化ガスの酸化力を著しく高めることができる。結果として、第1の層が主にBTCSMガスの物理吸着層により構成されていたとしても、第1の層の酸化反応を確実に進行させ、強固な結合を有するSiOC層へ変化させることが可能となる。すなわち、下地との結合や、層中の隣り合う分子や原子間の結合が強固なSiOC層を形成することが可能となる。
【0204】
また、本実施形態では、少なくともBTCSMガス供給時において、触媒ガスを用いた複雑な反応系を経る必要がないことから、成膜プロセスの構築が容易となる。また、BTCSMガス供給時に触媒ガスを供給しないことから、触媒反応により生じる塩がパーティクル源となってしまうことを回避でき、成膜処理の品質を向上させることが可能となる。また、BTCSMガス供給時に触媒ガスを供給しないことから、成膜処理全体で見たときの触媒ガスの使用量を低減させることができ、成膜処理のコストを削減することが可能となる。
【0205】
(残留ガス除去)
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、BTCSMガスの供給を停止し、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
【0206】
[ステップ2c]
(O
3ガス+TEAガス供給)
ステップ1cが終了した後、処理室201内へO
3ガスおよびTEAガスを流す。ステップ2cでは、バルブ243g,243iの開閉制御を、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ2aにおけるバルブ243a,243cの開閉制御と同様の手順で行う。
【0207】
このとき、MFC241gで制御するO
3ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmの範囲内の流量とする。MFC241iで制御するTEAガスの供給流量は、例えばO
3ガスの供給流量(sccm)/TEAガスの供給流量(sccm)の比にして0.01〜100、より好ましくは0.05〜10の範囲内となる流量とする。MFC241j〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。O
3ガスおよびTEAガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、ステップ1cでのBTCSMガスの供給時と同様な温度帯、例えば、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下の範囲内の温度となるように設定する。その他の処理条件は、例えば、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ2aと同様な処理条件とする。
【0208】
処理室201内へ供給されたO
3ガスは熱で活性化され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、熱で活性化されたO
3ガスが供給されることとなる。処理室201内へ流しているガスは熱的に活性化されたO
3ガスであり、処理室201内へはBTCSMガスは流していない。したがって、O
3ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された状態でウエハ200に対して供給され、ステップ1cでウエハ200上に形成された第1の層(CおよびClを含むSi含有層)の少なくとも一部と反応する。これにより、第1の層は、ノンプラズマで熱的に酸化され、Si、OおよびCを含む第2の層、すなわち、SiOC層へと変化させられる。
【0209】
TEAガスは、O
3ガスの分解を促し、O
3ガスの酸化力を向上させ、O
3ガスと第1の層との反応を促進させる触媒ガスとして作用する。特に、O
3ガスとTEAガスとを組み合わせることにより、O
3ガスの酸化力を、通常の触媒反応で予測される範囲を超えて大幅に向上させることができる。上述のように、BTCSMガスの供給時に触媒ガスを供給せず、BTCSMガスの熱分解が不充分であると、その後の酸化ガスの供給工程において触媒ガスを供給しても、充分な反応性が得られ難くなることがある。しかしながら、O
3ガスとTEAガスとを一緒に供給することで、例えばステップ1cにおいて、第1の層として熱分解が不充分な物理吸着によるBTCSMガスの吸着層、すなわち、BTCSMガスの物理吸着層が主に形成されていたとしても、O
3ガスと第1の層との酸化反応を適正に進行させることが可能となる。すなわち、TEAガスの作用によりO
3ガスの酸化力を著しく高めることができ、これにより、BTCSMガスの物理吸着層に対しても酸化処理を確実に行うことができる。結果として、下地との結合や、隣り合う分子や原子間の結合が強固なSiOC層を形成することが可能となる。
【0210】
(残留ガス除去)
その後、バルブ243gを閉じ、O
3ガスの供給を停止する。また、バルブ243iを閉じ、TEAガスの供給を停止する。そして、上述の実施形態と同様の手順にて、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
【0211】
(所定回数実施)
上述したステップ1c,2cを1サイクルとして、このサイクルを1回以上、すなわち、所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiOC膜を成膜することができる。このサイクルを複数回繰り返すのが好ましい点は、上述の実施形態と同様である。
【0212】
(SiOC膜改質工程)
本実施形態においても、低温条件下で形成されたSiOC膜中には、水分やCl等の不純物や、C
xH
y系の不純物が多く含まれる場合がある。よって、上述の実施形態と同様の手順および処理条件にて、圧力調整、温度調整、第1の熱処理、第2の熱処理、パージおよび大気圧復帰を行って、SiOC膜中の不純物を除去し、SiOC膜を改質する。これにより、SiOC膜改質工程を行う前のSiOC膜よりも、高エッチング耐性で、低誘電率のSiOC膜が得られることとなる。
【0213】
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、ボートアンロードおよびウエハディスチャージを行って、本実施形態の成膜処理を終了する。
【0214】
(2)本実施形態による効果
本実施形態によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏する他、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0215】
(a)ウエハ200に対するBTCSMガスの供給を、ウエハ200に対する触媒ガスの供給を停止した状態で行う。これにより、成膜プロセスを簡素化することができる。また、BTCSMガス供給時に触媒ガスを供給した場合に生じる塩が発生せず、パーティクルの発生を抑制することができる。また、成膜処理全体で見たときの触媒ガスの使用量を抑え、製造コストを低減することができる。
【0216】
(b)ウエハ200に対するO
3ガスの供給を、ウエハ200に対するTEAガスの供給を実施した状態で行う。これにより、O
3ガスの酸化力を顕著に高めることができる。O
3ガスとアミン系触媒ガスとを組み合わせることで、O
3ガスの酸化力を、通常の触媒反応で予測可能な範囲を超えて大幅に高めることができる。よって、BTCSMガスの供給時に触媒ガスを供給しなくとも、第1の層に対して充分な反応性が得られ、O
3ガスと第1の層との酸化反応を適正に進行させることが可能となる。また、酸化反応のレートを向上させ、SiOC膜の成膜レートを維持することが可能となる。
【0217】
O
3ガスと組み合わせるアミン系触媒ガスとしては、TEAガスが優れており、次いでピリジンガス、次にピペリジンガスが適していると考えられる。これは、SiOC膜を形成可能な温度範囲が、触媒ガスとしてTEAガスを用いた場合が最も広く、次いでピリジンガスを用いた場合が広く、次にピペリジンガスを用いた場合が広いこと等に基づく。
【0218】
(c)本実施形態によれば、
図4(a)等を用いて説明した上述の実施形態と同様の効果を奏する。但し、上述の実施形態で示した各種効果は、本実施形態よりも、上述の実施形態の方が顕著となることがある。例えば、SiOC膜の誘電率低下の効果は、O
3ガスとTEAガスとを用いる本実施形態よりも、H
2Oガスとピリジンガスとを用いる上述の実施形態の方が、顕著となることがある。この要因としては、例えば、酸化ガスとしてH
2Oガスを用いることで、酸化ガスとしてO
3ガスを用いる場合よりも、SiOC膜のポーラス化の度合いが増加すること等が挙げられる。酸化ガスとしてH
2Oガスを用いることで、酸化ガスとしてO
3ガスを用いる場合よりも、水分を多く含むSiOC膜が形成される。そして、水分を多く含むSiOC膜に対して第1の熱処理および第2の熱処理を施すことで、膜中に微小な孔(ポア)、すなわち、微小な空間がより多く生じ、SiOC膜のポーラス化がさらに進むことがあると考えられる。
【0219】
(3)本実施形態の変形例
本実施形態の成膜シーケンスは、
図6(a)に示す態様に限定されず、例えば
図6(b)や
図6(c)に示す変形例のように変更し、ウエハ200上にSiO膜を形成することができる。
【0220】
この場合、原料ガスとしては、BTCSMガスではなく、HCDSガスやBDEASガス等を用いる。HCDSガスやBDEASガス等を供給するステップ1cでは、バルブ243eやバルブ243fの開閉制御を、
図6(a)に示す成膜シーケンスのステップ1cにおけるバルブ243aの開閉制御と同様の手順で行う。HCDSガスやBDEASガスの供給流量も、例えば、
図6(a)に示す成膜シーケンスのステップ1cにおけるBTCSMガスの供給流量と同様とする。その他の処理条件は、例えば、
図6(a)に示す成膜シーケンスのステップ1cと同様な処理条件とする。
【0221】
このように、低温条件下で形成されたSiO膜中には、水分等の不純物が含まれる可能性がある。原料ガスとしてHCDSガスを用いた場合には、SiO膜中にCl等の不純物が含まれる可能性もある。原料ガスとしてBDEASガスを用いた場合には、SiO膜中
にC、H、N等の不純物が含まれる可能性もある。上述の実施形態と同様の手順および処理条件にて、SiO膜に対する第1の熱処理および第2の熱処理を行って、SiO膜中の不純物を除去し、SiO膜を改質することにより、SiO膜改質工程を行う前のSiO膜よりも、高エッチング耐性で、低誘電率のSiO膜が得られる。
【0222】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について、
図7(a)、
図7(b)を用いて説明する。本実施形態においても、上述の実施形態と同様、
図1、
図2に示す基板処理装置を用いる。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0223】
本実施形態の成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対してSiおよびClを含む原料ガスとしてHCDSガスを供給する工程を、ウエハ200に対して触媒ガスとしてピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行い(ステップ1d)、ウエハ200に対して酸化ガスとしてH
2Oガスを供給する工程を、ウエハ200に対して触媒ガスとしてピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行い(ステップ2d)、これらの工程を含むセットを所定回数(m
1回)行うことにより、SiおよびOを含む第1の薄膜としてSiO膜を形成する工程と、
ウエハ200に対してSi、CおよびClを含みSi−C結合を有する原料ガスとしてBTCSMガスを供給する工程を、ウエハ200に対して触媒ガスとしてピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行い(ステップ1e)、ウエハ200に対して酸化ガスとしてH
2Oガスを供給する工程を、ウエハ200に対して触媒ガスとしてピリジンガスを供給する工程を実施した状態で行い(ステップ2e)、これらの工程を含むセットを所定回数(m
2回)行うことにより、Si,OおよびCを含む第2の薄膜としてSiOC膜を形成する工程と、
を含むサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、SiO膜とSiOC膜との積層膜を形成する工程を行う。
【0224】
また、SiO膜とSiOC膜との積層膜を形成した後、上述の実施形態と同様にこの積層膜の改質工程を行う。
【0225】
以下、本実施形態のSiO膜およびSiOC膜形成工程のうち、上述の実施形態とは異なる点について詳しく説明する。
【0226】
(SiO膜形成工程)
ウエハチャージ、ボートロード、圧力調整および温度調整後、次の2つのステップ1d,2dを順次実行する。
【0227】
[ステップ1d]
(HCDSガス+ピリジンガス供給)
図6(b)に示す成膜シーケンスのステップ1cと同様の手順にて、ウエハ200に対してHCDSガスを供給する。また、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1aと同様の手順にて、ウエハ200に対してピリジンガスを供給する。このときの処理条件は、例えば、
図6(b)に示す成膜シーケンスのステップ1cおよび
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1aと同様な処理条件とする。ピリジンガスは、HCDSガスに対しても、BTCSMガスに対する触媒作用と同様の触媒作用を示す。
【0228】
これにより、ウエハ200上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。HCDSガスをピリジンガスと同時に流すことで、例えば150℃以下の比較的低温の条件下であっても、ウエハ200上にClを含むSi含有層を形成することができる。
【0229】
(残留ガス除去)
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、HCDSガスとピリジンガスとの供給を停止し、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
【0230】
[ステップ2d]
(H
2Oガス+ピリジンガス供給)
ステップ1dが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ2aと同様の供給手順にて、ウエハ200に対してH
2Oガスとピリジンガスとを供給する。このときの処理条件は、例えば、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ2aと同様な処理条件とする。これにより、第1の層は、ノンプラズマで熱的に酸化され、SiおよびOを含む第2の層、すなわち、シリコン酸化層(SiO層)へと変化させられる。
【0231】
(残留ガス除去)
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、H
2Oガスとピリジンガスとの供給を停止し、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
【0232】
(所定回数実施)
上述したステップ1d,2dを1セットとして、このセットを1回以上、すなわち、所定回数(m
1回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiO膜を成膜することができる。このセットを複数回繰り返すのが好ましい点は、上述の実施形態と同様である。
【0233】
(SiOC膜形成工程)
次に、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1a,2aと同様の手順および処理条件で、ステップ1e,2eを順次実行する。ステップ1e,2eを1セットとして、このセットを1回以上、すなわち、所定回数(m
2回)行うことにより、SiO膜上に、所定組成および所定膜厚のSiOC膜を成膜することができる。このセットを複数回繰り返すのが好ましい点は、上述の実施形態と同様である。
【0234】
(所定回数実施)
上述のSiO膜形成工程とSiOC膜形成工程とを1サイクルとして、このサイクルを1回以上、すなわち、所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、SiO膜とSiOC膜との積層膜が形成される。なお、SiO膜形成工程とSiOC膜形成工程とは、どちらから開始してもよい。
【0235】
図7(a)に示すように、SiO膜形成工程とSiOC膜形成工程とを含むサイクルを1回行うことで、SiO膜とSiOC膜とがそれぞれ1層ずつ積層されてなる積層膜(スタック膜)を形成することができる。
【0236】
また、
図7(b)に示すように、SiO膜形成工程とSiOC膜形成工程とを含むサイクルを複数回行うことで、SiO膜とSiOC膜とがそれぞれ複数積層されてなる積層膜(ラミネート膜)を形成することができる。
図7(b)は、SiO膜形成工程とSiOC膜形成工程とを含むサイクルを2回繰り返す例を示している。
【0237】
(積層膜改質工程)
本実施形態においても、低温条件下で形成されたSiO膜とSiOC膜との積層膜中には、水分やCl等の不純物や、C
xH
y系の不純物が多く含まれる場合がある。よって、上述の実施形態と同様の手順および処理条件にて、圧力調整、温度調整、第1の熱処理、第2の熱処理、パージおよび大気圧復帰を行って、積層膜中の不純物を除去し、積層膜を改質する。これにより、積層膜改質工程を行う前の積層膜よりも、高エッチング耐性で、低誘電率の積層膜が得られることとなる。
【0238】
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、ボートアンロードおよびウエハディスチャージを行って、本実施形態の成膜処理を終了する。
【0239】
本実施形態によっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0240】
また、SiO膜の膜厚とSiOC膜の膜厚との比率を制御することで、例えば、上述の各セットの回数(m
1,m
2)の比率を制御することで、最終的に形成される積層膜の組成比を緻密に制御することが可能となる。また、
図7(b)に示す成膜シーケンスでは、SiO膜およびSiOC膜の膜厚をそれぞれ5nm以下、好ましくは1nm以下とすることで、最終的に形成する積層膜を、積層方向において統一された特性を有する膜、すなわち、膜全体として一体不可分の特性を有するナノラミネート膜とすることができる。なお、上述のセットの実施回数(m
1回、m
2回)をそれぞれ1〜10回程度とすることで、SiO膜およびSiOC膜の膜厚をそれぞれ5nm以下、好ましくは1nm以下とすることができる。
【0241】
(2)本実施形態の変形例
本実施形態の成膜シーケンスは、
図7(a)、
図7(b)に示す態様に限定されず、
図8(a)や
図8(b)に示す変形例のように変更することもできる。すなわち、SiO膜形成工程では、触媒ガスの供給を行わなくてもよい。また、SiO膜形成工程では、原料ガスとして、HCDSガスを用いず、例えば、Si、CおよびNを含みSi−N結合を有するBDEASガスを用いてもよい。また、SiO膜形成工程では、酸化ガスとして、プラズマで活性化させたO
2ガス、すなわち、プラズマ状態に励起したO
2ガスを用いてもよい。
【0242】
BDEASガスを供給するステップ1fでは、バルブ243fの開閉制御を、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスのステップ1dにおけるバルブ243eの開閉制御と同様の手順で行う。このとき、バルブ243c,243iを閉じた状態とし、ウエハ200に対するBDEASガスの供給を、ピリジンガスやTEAガス等のアミン系触媒ガスの供給を停止した状態で行う。BDEASガスの供給流量は、例えば、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスのステップ1dにおけるHCDSガスの供給流量と同様とする。その他の処理条件は、例えば、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスのステップ1dと同様な処理条件とする。
【0243】
ウエハ200に対してBDEASガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのNおよびCを含むSi含有層が形成される。BDEASガスは、ウエハ200等に吸着し易く分解性や反応性の高いガスである。よって、例えば150℃以下の比較的低温の条件下であっても、ウエハ200上に第1の層を形成することができる。
【0244】
プラズマで活性化させたO
2ガスを供給するステップ2fでは、バルブ243hの開閉制御を、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスのステップ2dにおけるバルブ243bの開閉制御と同様の手順で行う。このとき、バルブ243c,243iを閉じた状態とし、ウエハ200に対するO
2ガスの供給を、ピリジンガスやTEAガス等のアミン系触媒ガスの供給を停止した状態で行う。MFC241hで制御するO
2ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。棒状電極269,270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力とする。処理室201内の圧力は、例えば1〜100Paの範囲内の圧力とする。プラズマを用いることで、処理室201内の圧力をこのような比較的低い圧力帯としても、O
2ガスを活性化させることが可能となる。O
2ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種をウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。その他の処理条件は、例えば、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスのステップ2eと同様な処理条件とする。
【0245】
ウエハ200に対してプラズマで活性化させたO
2ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成された第1の層(NおよびCを含むSi含有層)に対し、酸化処理が行われる。第1の層は、SiおよびOを含む第2の層、すなわち、SiO層へと変化させられる。
【0246】
本変形例によっても、
図7(a)、
図7(b)に示す成膜シーケンスと同様の効果を奏する。
【0247】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。但し、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0248】
本発明の熱処理工程の温度制御シーケンス、すなわち、アニールシーケンスは、上述の実施形態に限定されず、例えば、
図14、
図15に示すように種々変更が可能である。
図14(a)は、上述の実施形態と同様に、第2の温度を第1の温度よりも高い温度とした場合のアニールシーケンスを示している。
図14(b)〜14(d)は、その変形例をそれぞれ示している。
図15は、第2の温度を第1の温度と同等な温度とした場合のアニールシーケンスを示している。これらの図の横軸は経過時間(分)を、縦軸はウエハ温度(℃)を示している。
【0249】
図14(a)に示すアニールシーケンスでは、成膜後のウエハ200の温度を第1の温度まで上昇させ、さらにその温度を第1の温度に所定時間一定に維持することで、第1の熱処理工程を行うようにしている。その後、ウエハ200の温度を第1の温度よりも高い第2の温度まで上昇させ、さらにその温度を第2の温度に所定時間一定に維持することで、第2の熱処理工程を行うようにしている。その後、ウエハ200の温度を搬出可能な温度まで降下させるようにしている。
【0250】
このアニールシーケンスによれば、第1の熱処理工程において、ウエハ200の温度を第2の温度よりも低い第1の温度に所定時間一定に維持することで、上述したように、所望しない反応を確実に防止することが可能となる。また、ウエハ200の温度を第1の温度に維持する時間を充分に確保することで、SiOC膜からの第1の不純物(水分やCl等)の脱離を確実に行うことが可能となる。
【0251】
その後、第2の熱処理工程において、ウエハ200の温度を第1の温度よりも高い第2の温度に所定時間一定に維持することで、上述したように、第2の熱処理工程における第2の不純物(C
xH
y系の不純物)の脱離を迅速に行うことが可能となる。また、このとき、所望しない反応を生じさせる物質(水分やCl等)が発生しないため、上述の所望しない反応を確実に抑制することが可能となる。また、ウエハ200の温度を第2の温度に維持する時間を充分に確保することで、SiOC膜からの第2の不純物の脱離を確実に行うことが可能となる。
【0252】
図14(b)に示すアニールシーケンスでは、成膜後のウエハ200の温度を第1の温度まで上昇させた後、その温度を一定に維持することなく、第2の温度まで上昇させるようにしている。そして、ウエハ200の温度が第2の温度に到達したら、その温度を一定に維持することなく、降下させるようにしている。このアニールシーケンスでは、ウエハ200の温度がSiOC膜中からの第1の不純物の脱離が開始される温度(第1の温度付近の温度)に到達してから、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が完了するまでの間に、第1の熱処理工程が行われる。また、ウエハ200の温度がSiOC膜中からの第2の不純物の脱離が活発となる温度(第2の温度付近の温度)に到達してから、膜中からの第2の不純物の脱離が完了するまでの間に、第2の熱処理工程が行われる。なお、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が概ね完了してから、すなわち、膜中から脱離する不純物のうち第2の不純物の占める割合が支配的となってから、膜中からの第2の不純物の脱離が活発となるまでの期間を、第2の熱処理工程に含めて考えてもよい。
【0253】
このアニールシーケンスによれば、ウエハ200の昇温レートや降温レートの大きさを適正に調整することで、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを、この順に、それぞれ適正に行うことが可能となる。
【0254】
例えば、ウエハ200の温度が第1の温度に到達するまでの昇温レート、および、ウエハ200の温度が第1の温度を超過してから第2の温度に到達するまでの昇温レートのうち少なくともいずれかの大きさを低く抑えることで、第1の熱処理工程において、上述の所望しない反応を確実に防止しつつ、その実施時間を充分に確保することが可能となる。これにより、SiOC膜からの第1の不純物の脱離を確実に行うことが可能となる。例えば、ウエハ200の温度が第1の温度に到達するまでの昇温レート、および、ウエハ200の温度が第1の温度を超過してから第2の温度に到達するまでの昇温レートのうちの一方を他方より小さくすることで、第1の熱処理工程の実施時間を充分に確保することができ、SiOC膜からの第1の不純物の脱離を確実に行うことが可能となる。さらに、トータルでの所要時間を短縮することも可能となる。
【0255】
また例えば、ウエハ200の温度が第1の温度を超過してから第2の温度に到達するまでの昇温レート、および、ウエハ200の温度が第2の温度に到達した後の降温レートのうち少なくともいずれかの大きさを低く抑えることで、第2の熱処理工程の実施時間を充分に確保することが可能となる。これにより、SiOC膜中からの第2の不純物の脱離を確実に行うことが可能となる。また、このとき、所望しない反応を生じさせる物質が発生しないため、上述の所望しない反応を確実に抑制することが可能となる。例えば、ウエハ200の温度が第1の温度を超過してから第2の温度に到達するまでの昇温レート、および、ウエハ200の温度が第2の温度に到達した後の降温レートのうちの一方を他方より小さくすることで、第2の熱処理工程の実施時間を充分に確保することができ、SiOC膜からの第2の不純物の脱離を確実に行うことが可能となる。さらに、トータルでの所要時間を短縮することも可能となる。
【0256】
このアニールシーケンスによれば、ウエハ200の温度を一定に維持する制御を行わないことから、温度制御を簡素化させることが可能となる。例えば、成膜直後のウエハ200の温度を第2の温度まで上昇させる際に、その昇温レートを充分に低く抑えることに留意すれば、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを、この順に、それぞれ適正に行うことが可能となる。
【0257】
図14(c)、
図14(d)に示すアニールシーケンスは、
図14(a)、
図14(b)に示すアニールシーケンスを組み合わせたものである。
図14(c)に示すアニールシーケンスでは、ウエハ200の温度を第2の温度に到達するまで連続して上昇させ、ウエハ200の温度が第2の温度に達したらその温度を所定時間一定に維持し、その後、降下させるようにしている。また、
図14(d)に示すアニールシーケンスでは、ウエハ200の温度が第1の温度に到達したらその温度を所定時間一定に維持し、その後、ウエハ200の温度を第2の温度まで上昇させ、ウエハ200の温度が第2の温度に到達したら、その温度を一定に維持することなく、降下させるようにしている。これらのアニールシーケンスにおいても、
図14(a)、
図14(b)に示すアニールシーケンスと同様の効果を奏する。なお、
図14(a)、
図14(b)、
図14(c)、
図14(d)に示すアニールシーケンスを適宜組み合わせて用いることもできる。
【0258】
図15に示すアニールシーケンスは、第2の温度を第1の温度と同等な温度とする例を示している。このアニールシーケンスでは、成膜後のウエハ200の温度を第1の温度まで上昇させた後、その温度を所定時間一定に維持し、その後、降下させるようにしている。
【0259】
上述したように、ウエハ200の温度を第1の温度まで上昇させると、SiOC膜中か
らの第1の不純物および第2の不純物の脱離が開始される。その際、第1の純物の脱離が、第2の不純物の脱離よりも先に完了する。このアニールシーケンスでは、ウエハ200の温度が、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が開始される温度(第1の温度付近の温度)に到達してから、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が完了するまでの間に、第1の熱処理工程が行われる。また、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が概ね完了してから、すなわち、膜中から脱離する不純物のうち第2の不純物の占める割合が支配的となってから、膜中からの第2の不純物の脱離が完了するまでの間に、第2の熱処理工程が行われる。なお、SiOC膜中からの第2の不純物の脱離が開始されてから、SiOC膜中からの第1の不純物の脱離が完了するまでの期間を、第2の熱処理工程に含めて考えてもよい。すなわち、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とが同時に開始され、先に第1の熱処理工程が完了し、その後、第2の熱処理工程が完了するものと考えてもよい。なお、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とが同時に開始されても、第1の温度は上述の所望しない反応が生じる温度帯を含まないことから、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とが同時に行われる際に、上述の所望しない反応が生じることはない。
【0260】
このアニールシーケンスによれば、ウエハ200の温度を第1の温度に維持する時間を充分に確保することで、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを、それぞれ適正に行うことが可能となる。すなわち、第1の熱処理工程が完了した後、ウエハ200の温度を第1の温度に維持する時間を充分に確保することで、ウエハ200の温度をさらに上昇させることなく、第2の熱処理工程を確実に実施することが可能となる。
【0261】
また、このアニールシーケンスによれば、第2の温度を第1の温度と同等な温度としていることから、すなわち、ウエハ200の温度を第1の温度を超える温度まで上昇させないことから、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。また、このアニールシーケンスによれば、ウエハ200の温度を第1の温度を超える温度まで上昇させる必要がないことから、比較的出力の小さなヒータ207を用いることができ、基板処理装置の製造コストを低減させることができる。
【0262】
また、このアニールシーケンスによれば、ウエハ200の温度を2段階に上昇させる制御を行わないことから、温度制御を簡素化させることが可能となる。例えば、成膜直後のウエハ200の温度を第1の温度まで上昇させた後、その温度を一定に保つ時間を維持する時間を充分に確保することに留意すれば、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを、それぞれ適正に行うことが可能となる。
【0263】
上述の実施形態等では、不活性ガス、パージガスおよび酸素非含有ガスを、全て同一のガス供給系から供給する例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、不活性ガス供給系、パージガス供給系および酸素非含有ガス供給系の全て或いは一部を、別系統のガス供給系として設けてもよい。但し、排気系のみにより処理室201内に酸素非含有の雰囲気を生成する場合には、酸素非含有ガス供給系を設ける必要はない。
【0264】
また、上述の実施形態等では、Si含有層をSiOC層やSiO層へと変化させる際、触媒ガスと共に熱で活性化した酸化ガスを用いる例、すなわち、触媒ガスと酸化ガスとをノンプラズマの雰囲気下(条件下)で供給する例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、触媒ガスと共にプラズマで励起した酸化ガスを用いてもよい。すなわち、触媒ガスと酸化ガスとをプラズマの雰囲気下(条件下)で供給するようにしてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態や変形例と同様な処理条件とすることができる。
【0265】
また、上述の実施形態等では、H
2Oガス等の酸化ガスを用いてSiOC膜やSiO膜等のSi系薄膜を形成する例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、例えば酸化ガスの代わりに窒化ガスを用い、CおよびClを含むSi含有層を窒化させ、SiCN膜等のSi系薄膜を形成してもよい。あるいは、酸化ガスや窒化ガス等を適宜組み合わせ、SiON膜やSiOCN膜等のSi系薄膜を形成してもよい。窒化ガスとしては、例えばアンモニア(NH
3)ガス、ジアゼン(N
2H
2)ガス、ヒドラジン(N
2H
4)ガス、N
3H
8ガス、これらの化合物を含むガス等を用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0266】
また、上述の実施形態等では、SiOC膜やSiO膜の成膜に用いる原料ガスとして、クロロシラン原料ガスを用いる例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、クロロシラン原料ガス以外のハロシラン原料ガス、例えば、フルオロシラン原料ガスやブロモシラン原料ガス等を用いてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0267】
トランジスタの微細化と共に、ゲート電極のサイドウオールスペーサ(SWS)等を構成する薄膜に対し、成膜温度の低温化、フッ化水素(HF)に対する耐性の向上、誘電率の低下が求められている。また、次世代メモリとして開発されているReRAM用の保護膜には350℃以下の低温成膜が求められ、MRAM用の保護膜に至っては250℃以下の低温成膜が求められている。このような要求に対し、本発明は、Si、Cおよびハロゲン元素を含みSi−C結合を有する原料ガスと酸化ガス等とを用いてSi系薄膜(SiOC膜、SiOCN膜、SiCN膜)等の薄膜を形成する場合に、好適に適用することができる。
【0268】
上述の各実施形態や各変形例の手法により形成したSi系薄膜を、SWSとして使用することにより、リーク電流が少なく、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、上述の各実施形態や各変形例の手法により形成したSi系薄膜を、エッチストッパとして使用することにより、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、上述の各実施形態や一部の変形例によれば、低温領域においてもプラズマを用いず、理想的量論比のSi系薄膜を形成することができる。プラズマを用いずSi系薄膜を形成できることから、例えばDPTのSADP膜等、プラズマダメージを懸念する工程への適応も可能となる。
【0269】
上述の実施形態等では、半導体元素であるSiを含むシリコン系薄膜(SiO膜、SiOC膜、SiCN膜、SiON膜、SiOCN膜)を形成する例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも、本発明を適用することができる。
【0270】
例えば、本発明は、チタン酸化膜(TiO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、モリブデン酸化膜(MoO膜)等の金属酸化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0271】
また例えば、本発明は、チタン酸炭化膜(TiOC膜)、ジルコニウム酸炭化膜(ZrOC膜)、ハフニウム酸炭化膜(HfOC膜)、タンタル酸炭化膜(TaOC膜)、アルミニウム酸炭化膜(AlOC膜)、モリブデン酸炭化膜(MoOC膜)等の金属酸炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0272】
また例えば、本発明は、チタン炭窒化膜(TiCN膜)、ジルコニウム炭窒化膜(ZrCN膜)、ハフニウム炭窒化膜(HfCN膜)、タンタル炭窒化膜(TaCN膜)、アルミニウム炭窒化膜(AlCN膜)、モリブデン炭窒化膜(MoCN膜)等の金属炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0273】
また例えば、本発明は、チタン酸窒化膜(TiON膜)、ジルコニウム酸窒化膜(ZrON膜)、ハフニウム酸窒化膜(HfON膜)、タンタル酸窒化膜(TaON膜)、アルミニウム酸窒化膜(AlON膜)、モリブデン酸窒化膜(MoON膜)等の金属酸窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0274】
また例えば、本発明は、チタン酸炭窒化膜(TiOCN膜)、ジルコニウム酸炭窒化膜(ZrOCN膜)、ハフニウム酸炭窒化膜(HfOCN膜)、タンタル酸炭窒化膜(TaOCN膜)、アルミニウム酸炭窒化膜(AlOCN膜)、モリブデン酸炭窒化膜(MoOCN膜)等の金属酸炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0275】
この場合、原料ガスとして、上述の実施形態におけるSiを含む原料ガスの代わりに、金属元素を含む原料ガスを用い、上述の実施形態と同様なシーケンスにより成膜を行うことができる。
【0276】
例えば、Tiを含む金属系薄膜(TiO膜、TiOC膜、TiCN膜、TiON膜、TiOCN膜)を形成する場合は、Tiを含む原料ガスとして、Ti、Cおよびハロゲン元素を含み、Ti−C結合を有する原料ガスや、Tiおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Tiおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばチタニウムテトラクロライド(TiCl
4)等のTiおよびクロロ基を含む原料ガスや、チタニウムテトラフルオライド(TiF
4)等のTiおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0277】
また例えば、Zrを含む金属系薄膜(ZrO膜、ZrOC膜、ZrCN膜、ZrON膜、ZrOCN膜)を形成する場合は、Zrを含む原料ガスとして、Zr、Cおよびハロゲン元素を含み、Zr−C結合を有する原料ガスや、Zrおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Zrおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばジルコニウムテトラクロライド(ZrCl
4)等のZrおよびクロロ基を含む原料ガスや、ジルコニウムテトラフルオライド(ZrF
4)等のZrおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0278】
また例えば、Hfを含む金属系薄膜(HfO膜、HfOC膜、HfCN膜、HfON膜、HfOCN膜)を形成する場合は、Hfを含む原料ガスとして、Hf、Cおよびハロゲン元素を含み、Hf−C結合を有する原料ガスや、Hfおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Hfおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばハフニウムテトラクロライド(HfCl
4)等のHfおよびクロロ基を含む原料ガスや、ハフニウムテトラフルオライド(HfF
4)等のHfおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0279】
また例えば、Taを含む金属系薄膜(TaO膜、TaOC膜、TaCN膜、TaON膜、TaOCN膜)を形成する場合は、Taを含む原料ガスとして、Ta、Cおよびハロゲン元素を含み、Ta−C結合を有する原料ガスや、Taおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Taおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばタンタルペンタクロライド(TaCl
5)等のTaおよびクロロ基を含む原料ガスや、タンタルペンタフルオライド(TaF
5)等のTaおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0280】
また例えば、Alを含む金属系薄膜(AlO膜、AlOC膜、AlCN膜、AlON膜、AlOCN膜)を形成する場合は、Alを含む原料ガスとして、Al、Cおよびハロゲン元素を含み、Al−C結合を有する原料ガスや、Alおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Alおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばアルミニウムトリクロライド(AlCl
3)等のAlおよびクロロ基を含む原料ガスや、アルミニウムトリフルオライド(AlF
3)等のAlおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0281】
また例えば、Moを含む金属系薄膜(MoO膜、MoOC膜、MoON膜、MoOCN膜)を形成する場合は、Moを含む原料ガスとして、Mo、Cおよびハロゲン元素を含み、Mo−C結合を有する原料ガスや、Moおよびハロゲン元素を含む原料ガスを用いることができる。Moおよびハロゲン元素を含む原料ガスとしては、例えばモリブデンペンタクロライド(MoCl
5)等のMoおよびクロロ基を含む原料ガスや、モリブデンペンタフルオライド(MoF
5)等のMoおよびフルオロ基を含む原料ガスを用いることができる。酸化ガスや窒化ガスやアミン系触媒ガスや酸素非含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0282】
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む薄膜を形成する場合に好適に適用することができる。また、本発明の改質工程は、第1の不純物として水分(H
2O)および塩素(Cl)を含み、第2の不純物として炭化水素化合物(C
xH
y系の不純物)を含む薄膜であれば、上述の成膜手法や膜種に限らず、幅広く適用することができる。
【0283】
これらの各種薄膜の成膜に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、原料ガス、酸化ガス、触媒ガス、酸素非含有ガスの種類等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0284】
上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを変更することで用意してもよい。プロセスレシピを変更する場合は、変更後のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0285】
また、上述の実施形態等の成膜シーケンスにおいては、SiOC膜、SiO膜、積層膜等の形成を室温にて行う例についても説明した。この場合、ヒータ207による処理室201内の加熱を行う必要はなく、基板処理装置にヒータ207を設けなくともよい。これにより、基板処理装置の加熱系の構成を簡素化することができ、基板処理装置をより安価で単純な構造とすることができる。この場合、SiOC膜、SiO膜、積層膜等の改質工程は、SiOC膜、SiO膜、積層膜等の形成工程を行う処理室とは異なる処理室で、Ex−Situにて行うこととなる。
【0286】
上述の実施形態等では、SiOC膜、SiO膜、積層膜等の改質処理(アニール処理)を、抵抗加熱式のヒータ207による加熱で行う例について説明した。本発明はこの形態に限定されない。例えば、上述の改質処理を、プラズマ、紫外線、マイクロ波等の照射により行うようにしてもよい。すなわち、上述の改質処理は、ヒータ207からの伝熱を用いて行うだけでなく、プラズマや電磁波等の熱以外の活性化手段を用いて行うようにしてもよい。これらの場合においても、上述の実施形態等と同様な効果が得られる。
【0287】
プラズマを照射することで上述の改質処理を行う場合、例えば、容量結合プラズマ発生器、誘導結合プラズマ発生器、電子サイクロトロン共振器、表面波プラズマ発生器、ヘリコン波プラズマ発生器等を、ヒータ207に代わる活性化手段として用いることができる。また、これらの機器を、ヒータ207と組み合わせて用いることもできる。これらの機器を用い、処理室201内あるいは処理室201外部に設けられたバッファ室内において例えばHe、Ar、N
2等のガスをプラズマ化させ、得られたプラズマ、すなわち、荷電粒子と中性粒子とからなり、集団的振る舞いをする準中性気体を処理室201内のウエハ200に対して照射することで、上述の改質処理を行うことができる。
【0288】
紫外線を照射することで上述の改質処理を行う場合、例えば、重水素ランプ、ヘリウムランプ、カーボンアークランプ、BRV光源、エキシマランプ、水銀ランプ等を、ヒータ207に代わる活性化手段として用いることができる。また、これらの機器を、ヒータ207と組み合わせて用いることもできる。これらの光源から例えば10nm〜200nmの波長の真空紫外線を処理室201内のウエハ200に対して照射することで、上述の改質処理を行うことができる。
【0289】
マイクロ波を照射することで上述の改質処理を行う場合、例えば、波長100μm〜1m、周波数3THz〜300MHzの電磁波を発生させるマイクロ波発生器を、ヒータ207に代わる活性化手段として用いることができる。また、これらの機器を、ヒータ207と組み合わせて用いることもできる。上述の波長のマイクロ波を処理室201内のウエハ200に対して照射し、SiOC膜、SiO膜、積層膜等の膜中、すなわち、誘電体中の電子分極やイオン分極などに作用させて誘導加熱を生じさせることで、上述の改質処理を行うことができる。
【0290】
これらの場合においても、処理条件は、例えば上述の実施形態や変形例と同様な処理条件とすることができる。
【0291】
上述の実施形態等では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明した。本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて薄膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を形成する例について説明した。本発明はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの場合の処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0292】
上述の各実施形態および各変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【実施例】
【0293】
(第1実施例)
本発明の実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、上述の実施形態における
図4(a)の成膜シーケンスによりウエハ上にSiOC膜を形成し、その後、SiOC膜の改質処理を行って、それぞれのSiOC膜の各種特性を評価した。成膜処理と改質処理とは、それぞれ異なる処理室内で、すなわち、Ex−situで行った。改質処理としては、第1の熱処理を行わず、第2の熱処理のみ行った。原料ガスとしてはBTCSMガスを、酸化ガスとしてはH
2Oガスを、触媒ガスとしてはピリジンガスを、改質処理時の熱処理ガスとしてはN
2ガスを用いた。処理条件は上述の実施形態と同様な処理条件とした。
【0294】
図11は、本実施例の評価結果を示すグラフであり、(a)は熱処理前後でのSiOC膜の比誘電率を、(b)は熱処理前後でのSiOC膜のウエットエッチングレート(WER)を、(c)はSiOC膜のWERの熱処理の温度依存性を示している。
【0295】
図11(a)のグラフの横軸はSiOC膜の処理状態を示しており、左から順に、ウエハの温度を60℃として成膜されたまま熱処理を受けていないSiOC膜の例(60℃ as depo)、ウエハの温度を60℃として成膜された後N
2ガスの雰囲気下でウエハの温度を600℃として30分間熱処理されたSiOC膜の例(600℃ 30min N
2 anneal)を示している。また、グラフの縦軸は、SiOC膜の比誘電率(k value)を示している。SiOC膜の比誘電率とは、真空の誘電率ε
0に対するSiOC膜の誘電率εの比ε
r=ε/ε
0のことである。
【0296】
図11(a)によれば、本実施例における熱処理前のSiOC膜の比誘電率は7.76であることがわかる。また、本発明者等が行った他の評価によれば、比較的高温で成膜されたSiOC膜の比誘電率は4.5程度であった。本実施例におけるSiOC膜の比誘電率は、熱処理前においてはこれよりも高いことがわかる。これに対し、本実施例における熱処理後のSiOC膜の比誘電率は3.58であり、上述の比較的高温で成膜されたSiOC膜の比誘電率(4.5程度)や、一般的な熱酸化膜の比誘電率(3.9程度)を大幅に下回ることがわかる。これは、SiOC膜の熱処理により、低温条件下で形成されたSiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物等の誘電率を高くする物質がSiOC膜中から除去されたことと、SiOC膜がポーラス化されたことが主な要因と考えられる。
【0297】
図11(b)のグラフの横軸は、
図11(a)と同様であり、左から順に、それぞれ、「60℃ as depo」および「600℃ 30min N
2 anneal」を示している。また、グラフの縦軸は、SiOC膜の1%濃度のフッ化水素含有液(1%HF水溶液)によるWER[a.u.]を示している。ここで、WERは、単位時間当たりのエッチング深さであり、その値が小さいほど、HFに対する耐性(エッチング耐性)が高いことを示している。
【0298】
図11(b)における熱処理前のSiOC膜は、そのWERから比較的良好なエッチング耐性を備えることがわかる。このSiOC膜のWERは、他の評価において本発明者等が低温条件下で成膜したSiO膜のWERよりも低いことが確認されている。また、
図11(b)によれば、熱処理後のSiOC膜のWERは、熱処理前のSiOC膜のWERの1/8以下の値であることがわかる。これは、通常の熱酸化膜のWERよりも低い値に相当する。つまり、SiOC膜を熱処理することにより、SiOC膜中の不純物を低減させ、エッチング耐性を向上させることが可能であることがわかる。
【0299】
図11(c)のグラフの横軸は、ウエハの温度を60℃として成膜された後N
2ガスの雰囲気下で30分間熱処理されたSiOC膜の熱処理時の温度条件を示しており、左から順に、200℃,300℃,500℃,600℃,630℃の例を示している。また、グラフの縦軸は、
図11(b)と同様、SiOC膜の1%HF水溶液によるWER[a.u.]を示している。
【0300】
図11(c)によれば、熱処理時の温度が200℃の場合、そのWERから改質処理による効果が充分に得られることがわかる。また、
図11(c)によれば、熱処理時の温度が300℃のときのWERは、熱処理時の温度が200℃のときのWERの約半分となり、更に良好な結果が得られることがわかる。また、熱処理時の温度が500℃のとき、WERの低下がより顕著となり、これよりも高い温度、すなわち、600℃,630℃の結果と比べて遜色のない結果が得られることがわかる。熱処理時の温度が500℃,600℃,630℃のときのWERは、いずれも熱処理時の温度が200℃のときのWERの約10分の1以下となることがわかる。このことから、熱処理時の温度を少なくとも500℃以上とすることで、エッチング耐性を向上させる顕著な効果が得られることがわかる。また、500℃以上の温度では、WERの低下度合いが鈍るものの、630℃においてはWERが更に低下することがわかる。630℃におけるWERは、500℃におけるWERの7割程度である。よって、熱処理時の温度を630℃としたり、或いはそれ以上の温度とすることで、いっそう優れたエッチング耐性が得られることが予測できる。このように、熱処理時の温度を高めることで、SiOC膜のWERを低下させる効果がいっそう高まることがわかる。
【0301】
(第2実施例)
本発明の実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、上述の実施形態における
図4(a)の成膜シーケンスによりウエハ上にSiOC膜を形成し、その後、SiOC膜の改質処理を行った。成膜処理と改質処理とは、それぞれ異なる処理室内で、すなわち、Ex−situで行った。
【0302】
ここでは、改質処理として、第1の熱処理および第2の熱処理の両方を
図14(a)に示すアニールシーケンスで行ったサンプル(サンプル1)と、第1の熱処理を行わず、第2の熱処理のみ行ったサンプル(サンプル2)とを準備した。そして、各サンプルのSiOC膜の各種特性を評価した。
【0303】
各サンプルを作成する際、原料ガスとしてはBTCSMガスを、酸化ガスとしてはH
2Oガスを、触媒ガスとしてはピリジンガスを用い、改質処理時の熱処理ガスとしてはN
2ガスを用いた。サンプル1の第1の熱処理におけるウエハの温度(第1の温度)を450℃とし、第2の熱処理におけるウエハの温度(第2の温度)を600℃とした。それ以外の処理条件は上述の実施形態と同様な処理条件とした。
【0304】
図13は、本実施例の評価結果を示す図であり、サンプル1のSiOC膜とサンプル2のSiOC膜との各種特性(WER、シュリンク率(収縮率)、k value(比誘電率))を比較して表にまとめたものである。
【0305】
図13によれば、サンプル1のSiOC膜のWERは、サンプル2のSiOC膜のWERの1/17以下であり、サンプル1のSiOC膜のWERは、サンプル2のSiOC膜のWERよりも遥かに小さいことがわかる。また、サンプル2のSiOC膜のWERも比較的小さく、サンプル2のSiOC膜も比較的良好なエッチング耐性を有することがわかる。すなわち、サンプル1のSiOC膜のWERは、その小さいWER(サンプル2のSiOC膜のWER)よりも更に小さく、サンプル1のSiOC膜は、その良好なエッチング耐性(サンプル2のSiOC膜のエッチング耐性)をさらに上回るエッチング耐性を有することがわかる。これは、サンプル2のSiOC膜の場合、第2の熱処理により、SiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物がSiOC膜中から除去されたのに対し、サンプル1のSiOC膜の場合、第1の熱処理および第2の熱処理が段階的に行われたことにより、SiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物の他、C
xH
y系の不純物がSiOC膜中から充分に除去された結果であると考えられる。
【0306】
また、
図13によれば、サンプル1のSiOC膜のシュリンク率は、サンプル2のSiOC膜のシュリンク率の9/10程度であり、サンプル1のSiOC膜のシュリンク率は、サンプル2のSiOC膜のシュリンク率よりも小さいことがわかる。ここで、シュリンク率とは、改質処理前のSiOC膜に対する改質処理後のSiOC膜の収縮率、すなわち、改質処理によりSiOC膜が収縮する割合を示している。すなわち、サンプル1のSiOC膜は、サンプル2のSiOC膜よりも、改質処理により収縮していないことが分かる。逆にいうと、サンプル2のSiOC膜は、サンプル1のSiOC膜よりも、改質処理により収縮していることが分かる。
【0307】
サンプル1のSiOC膜のシュリンク率が小さいのは、サンプル1のSiOC膜は、第1の熱処理および第2の熱処理が段階的に施されることで、すなわち、2段階で温度の異なる熱処理が行われることで、SiOC膜中から脱離した水分やCl等によるSiOC膜の酸化を抑制でき、膜収縮率を抑制できたからと考えられる。また、サンプル2のSiOC膜のシュリンク率が大きいのは、サンプル2のSiOC膜は、第1の熱処理が施されることなく第2の熱処理のみが施されることで、すなわち、1段階で比較的高い温度で熱処理が行われることで、SiOC膜中から脱離した水分やCl等によりSiOC膜が酸化され、SiOC膜が収縮し易くなったからと考えられる。
【0308】
また、
図13によれば、サンプル1のSiOC膜の比誘電率(2.68)は、サンプル2のSiOC膜の比誘電率(3.58)よりも小さいことがわかる。また、サンプル2のSiOC膜の比誘電率(3.58)は、一般的な熱酸化膜の比誘電率(3.9程度)を大幅に下回る比誘電率であるが、サンプル1のSiOC膜の比誘電率(2.68)は、それをもさらに下回る比誘電率であることがわかる。
【0309】
サンプル2のSiOC膜の比誘電率が一般的な熱酸化膜の比誘電率を大幅に下回ることとなったのは、SiOC膜に対する第2の熱処理により、SiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物等の誘電率を高くする物質がSiOC膜中から除去されたことと、SiOC膜がポーラス化されたことが主な要因と考えられる。サンプル1のSiOC膜の比誘電率が一般的な熱酸化膜の比誘電率やサンプル2のSiOC膜の比誘電率を大幅に下回ることとなったのは、SiOC膜に対する第1の熱処理および第2の熱処理、すなわち、温度を変えて段階的に行われる熱処理により、SiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物等の誘電率を高くする物質の他、C
xH
y系の不純物等の誘電率を高くする物質がSiOC膜中から充分に除去されたことと、SiOC膜のポーラス化が更に進んだことが主な要因と考えられる。
【0310】
(第3実施例)
本発明の実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、上述の実施形態における
図4(a)の成膜シーケンスによりウエハ上にSiOC膜を形成し、その後、SiOC膜の改質処理を行った。成膜処理と改質処理とは、それぞれ異なる処理室内で、すなわち、Ex−situで行った。
【0311】
ここでは、ウエハの温度を60℃として成膜した後、N
2ガスの雰囲気下でウエハの温度を100℃として熱処理を行ったサンプル(サンプル1)と、ウエハの温度を60℃として成膜した後、改質処理として、N
2ガスの雰囲気下でウエハの温度を200℃として熱処理を行ったサンプル2と、ウエハの温度を60℃として成膜した後、改質処理として、第1の熱処理および第2の熱処理を
図15のアニールシーケンスで行ったサンプル3と、ウエハの温度を60℃として成膜した後、改質処理として、第1の熱処理および第2の熱処理を
図14(a)のアニールシーケンスで行ったサンプル(サンプル4〜6)と、を準備した。そして、各サンプルのSiOC膜のWERを評価した。
【0312】
各サンプルを作成する際、原料ガスとしてはBTCSMガスを、酸化ガスとしてはH
2Oガスを、触媒ガスとしてはピリジンガスを、SiOC膜改質処理時の熱処理ガスとしてはN
2ガスを用いた。サンプル3の第1の熱処理および第2の熱処理におけるウエハの温度(第1の温度、第2の温度)を300℃とした。サンプル4〜6の第1の熱処理におけるウエハの温度(第1の温度)をそれぞれ450℃とした。サンプル4〜6の第2の熱処理におけるウエハの温度(第2の温度)をそれぞれ500℃、600℃、630℃とした。その他の条件、すなわち、第1の温度や第2の温度に維持する時間、昇温や降温に要する時間等については、
図16(b)の表に示す通りとした。それ以外の処理条件は上述の実施形態と同様な処理条件とした。
【0313】
図16(a)はサンプル1〜6のWERを示すグラフであり、
図16(b)はサンプル1〜6のアニールシーケンスの熱処理条件を比較して表にまとめたものである。
図16(a)の横軸は各サンプルを、縦軸は1%HF水溶液によるSiOC膜のWER[Å/min]を示している。
【0314】
図16(a)によれば、サンプル2〜6のSiOC膜は、サンプル1のSiOC膜よりもWERが遙かに小さいこと、すなわち、エッチング耐性が極めて良好であることがわかる。特に、第1の温度、第2の温度を上述の実施形態で例示した範囲内の温度にそれぞれ設定したサンプル3〜6では、WERがさらに小さく、エッチング耐性がさらに良好であることがわかる。なお、第2の温度を第1の温度よりも高い温度に設定したサンプル4〜6の方が、第2の温度を第1の温度と同じ温度に設定したサンプル3よりも、WERは小さく、エッチング耐性がより良好となることがわかる。これは、第1の熱処理および第2の熱処理を上述の実施形態に記載の条件範囲内で行ったことで、SiOC膜中に含まれていた水分やCl等の第1の不純物の他、C
xH
y系の第2の不純物がSiOC膜中から充分に除去されたことが主な要因と考えられる。
【0315】
(第4実施例)
本発明の実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、上述の実施形態における
図4(a)の成膜シーケンスによりウエハ上にSiOC膜を形成し、その後、SiOC膜の改質処理を行った。成膜処理と改質処理とは、それぞれ異なる処理室内で、すなわち、Ex−situで行った。
【0316】
ここでは、ウエハの温度を60℃としてSiOC膜を形成したアズデポ状態のサンプル(サンプル1)と、ウエハの温度を60℃としてSiOC膜を形成した後、第1の熱処理および第2の熱処理を
図15のアニールシーケンスで行ったサンプル(サンプル2〜4)と、ウエハの温度を60℃としてSiOC膜を形成した後、第1の熱処理および第2の熱処理を
図14(a)のアニールシーケンスで行ったサンプル(サンプル5〜8)と、を準備した。そして、各サンプルのSiOC膜の比誘電率を評価した。
【0317】
サンプル1〜8を作成する際、原料ガスとしてはBTCSMガスを、酸化ガスとしてはH
2Oガスを、触媒ガスとしてはピリジンガスを、SiOC膜改質処理時の熱処理ガスとしてはN
2ガスを用いた。サンプル2〜4の第1の熱処理および第2の熱処理におけるウエハの温度(=第1の温度=第2の温度)をそれぞれ300℃、400℃、600℃とした。サンプル5の第1の熱処理におけるウエハの温度(第1の温度)は60℃とし、第2の熱処理におけるウエハの温度(第2の温度)を200℃とした。サンプル6〜8の第1の熱処理におけるウエハの温度(第1の温度)をそれぞれ450℃とし、第2の熱処理におけるウエハの温度(第2の温度)をそれぞれ500℃、630℃、700℃とした。それ以外の処理条件は上述の実施形態と同様な処理条件とした。
【0318】
また、参考例として、原料ガスおよび触媒ガスの供給と、酸化ガスおよび触媒ガスの供給と、を交互に所定回数行う成膜シーケンスによりウエハ上にSiO膜を形成し、その後、SiO膜の改質処理を行った。成膜処理と改質処理とは、異なる処理室内で、すなわち、Ex−situで行った。
【0319】
ここでは、ウエハの温度を60℃としてSiO膜を形成したアズデポ状態のサンプル(サンプル9)と、ウエハの温度を60℃としてSiO膜を形成した後、改質処理として、第1の熱処理を行わず、第2の熱処理のみ行ったサンプル(サンプル10)と、を準備した。そして、各サンプルのSiO膜の比誘電率を評価した。
【0320】
サンプル9,10を作成する際、原料ガスとしてはHCDSガスを、酸化ガスとしてはH
2Oガスを、触媒ガスとしてはピリジンガスを、改質処理時の熱処理ガスとしてはN
2ガスを用いた。サンプル10の第2の熱処理におけるウエハの温度(第2の温度)を600℃とした。それ以外の処理条件は上述の実施形態と同様な処理条件とした。
【0321】
図17は、サンプル1〜10の比誘電率(k value)を示すグラフであり、横軸は第2の熱処理におけるウエハの温度(℃)を、縦軸は比誘電率を示している。この図では、便宜上、サンプル1〜10をそれぞれS1〜S10と表記している。
【0322】
図17によれば、サンプル2〜8のSiOC膜は、サンプル1のSiOC膜や、サンプル9のSiO膜よりも、比誘電率が小さくなることがわかる。特に、第1の温度、第2の温度を上述の実施形態で例示した範囲内の温度にそれぞれ設定したサンプル3〜4,6〜8では、比誘電率がさらに小さくなることがわかる。また、サンプル3〜4,6〜8のSiOC膜は、サンプル10のSiO膜よりも、比誘電率が小さくなることがわかる。また、サンプル6〜8のSiOC膜は、比誘電率が3よりも小さくなることがわかる。これらは、第1の熱処理および第2の熱処理を上述の実施形態に記載の条件範囲内で行ったことで、低温条件下で形成されたSiOC膜中に含まれていた水分やCl等の不純物やC
xH
y系の不純物等の誘電率を高くする物質がSiOC膜中から除去されたことと、SiOC膜がポーラス化されたことが主な要因と考えられる。
【0323】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0324】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板上に薄膜を形成する工程と、
前記薄膜を形成する工程における前記基板の温度よりも高い第1の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記薄膜中から水分(H
2O)および塩素(Cl)を含む第1の不純物を除去する工程と、
前記第1の温度以上の第2の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記第1の温度で熱処理した後の前記薄膜中から、炭化水素化合物(C
xH
y系の不純物)を含む第2の不純物を除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、および、基板処理方法が提供される。
【0325】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第1の温度に上昇させる期間のうち少なくとも一部を含む。
【0326】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第1の温度に一定に維持する期間を含む。
【0327】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い温度である。また、前記第2の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第2の温度に上昇させる期間のうち少なくとも一部を含む。
【0328】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第2の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第2の温度に一定に維持する期間を含む。
【0329】
(付記6)
付記1乃至5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第2の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第2の温度から下降させる期間のうち少なくとも一部を含む。
【0330】
(付記7)
付記1乃至3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第2の温度は、前記第1の温度と同等の温度(同一の温度)である。また、前記第2の不純物を除去する工程は、前記基板の温度を前記第1の温度に維持する期間を含む。
【0331】
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の温度を、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する際に、前記第1の不純物により前記薄膜が酸化されない温度とする。また好ましくは、前記第1の温度を、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する際に、前記第1の不純物と、前記薄膜中に含まれる前記第1の不純物とは異なる不純物とが、反応しない温度とする。また好ましくは、前記第1の温度を、前記薄膜中から前記第1の不純物を除去する際に、前記第1の不純物と、前記薄膜中に含まれる前記第2の不純物とが、反応しない温度とする。
【0332】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の温度を、300℃以上450℃以下の範囲内の温度とする。より好ましくは、前記第1の温度を、300℃以上400℃以下の範囲内の温度、さらに好ましくは、300℃以上350℃以下の範囲内の温度とする。
【0333】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第2の温度を、300℃以上900℃以下の範囲内の温度とする。より好ましくは、前記第2の温度を、350℃以上700℃以下の範囲内の温度、さらに好ましくは、400℃以上700℃以下の範囲内の温度、さらに好ましくは、450℃以上600℃以下の範囲内の温度とする。
【0334】
(付記11)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記薄膜は、所定元素、酸素および炭素を含む。
【0335】
(付記12)
付記11に記載の方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、
前記基板に対して前記所定元素、炭素およびハロゲン元素を含み、前記所定元素と炭素との化学結合を有する原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対して酸化ガスを供給する工程と、
前記基板に対して触媒ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う。
【0336】
(付記13)
付記12に記載の方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、前記基板の温度を、室温以上150℃以下の温度とする。また好ましくは、前記基板の温度を、室温以上100℃以下の温度、さらに好ましくは、50℃以上100℃以下の温度とする。
【0337】
(付記14)
付記12または13に記載の方法であって、好ましくは、
前記所定元素はシリコン(Si)を含み、前記原料ガスは、Si−C結合、Si−C−Si結合およびSi−C−C−Si結合からなる群より選択される少なくとも1つを有する。
【0338】
(付記15)
付記1乃至14のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の不純物を除去する工程および前記第2の不純物を除去する工程では、前記基板に対して酸素非含有ガスを供給することにより、酸素非含有の雰囲気下で、前記熱処理を行う。また、前記第1の不純物を除去する工程および前記第2の不純物を除去する工程では、前記基板に対して不活性ガスを供給することにより、不活性ガス雰囲気下で、前記熱処理を行う。
【0339】
(付記16)
付記1乃至15のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程および前記薄膜を熱処理する工程(第1の不純物を除去する工程、第2の不純物を除去する工程)は、同一の処理室内で、または、それぞれ異なる処理室内で行われる。
【0340】
(付記17)
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
薄膜を形成するための処理ガスを前記処理室内へ供給する処理ガス供給系と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の基板に対して前記処理ガスを供給して前記基板上に薄膜を形成する処理と、前記薄膜を形成する処理における前記基板の温度よりも高い第1の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記薄膜中から水分(H
2O)および塩素(Cl)を含む第1の不純物を除去する処理と、前記第1の温度以上の第2の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記第1の温度で熱処理した後の前記薄膜中から、炭化水素化合物(C
xH
y系の不純物)を含む第2の不純物を除去する処理と、を行うように、前記処理ガス供給系および前記ヒータを制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0341】
(付記18)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板上に薄膜を形成する第1基板処理部と、前記薄膜を熱処理する第2基板処理部と、を有する基板処理システムであって、
前記第1基板処理部は、
基板を収容する第1処理室と、
薄膜を形成するための処理ガスを前記第1処理室内へ供給する処理ガス供給系と、
前記第1処理室内の基板に対して前記処理ガスを供給して前記基板上に薄膜を形成する処理を行うように、前記処理ガス供給系を制御するよう構成される第1制御部と、を有し、
前記第2基板処理部は、
基板を収容する第2処理室と、
前記第2処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記第2処理室内に前記薄膜が形成された前記基板を収容した状態で、前記薄膜を形成する処理における前記基板の温度よりも高い第1の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記薄膜中から水分(H
2O)および塩素(Cl)を含む第1の不純物を除去する処理と、前記第1の温度以上の第2の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記第1の温度で熱処理した後の前記薄膜中から、炭化水素化合物(C
xH
y系の不純物)を含む第2の不純物を除去する処理と、を行うように、前記ヒータを制御するよう構成される第2制御部と、を有する基板処理システムが提供される。
【0342】
(付記19)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内の基板上に薄膜を形成する手順と、
前記薄膜を形成する手順における前記基板の温度よりも高い第1の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記薄膜中から水分(H
2O)および塩素(Cl)を含む第1の不純物を除去する手順と、
前記第1の温度以上の第2の温度で前記薄膜を熱処理することにより、前記第1の温度で熱処理した後の前記薄膜中から、炭化水素化合物(C
xH
y系の不純物)を含む第2の不純物を除去する手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム、および、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。