(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の棒状部材における一方に挟持部を、他方に操作部を、前記挟持部と前記操作部との間に運動伝達部をそれぞれ有し、前記操作部の開閉に応じて前記運動伝達部を介して前記挟持部が開閉し、前記操作部の開閉方向である幅方向が前記棒状部材の長手方向軸に直交する生体内導入器具であって、
前記運動伝達部は、前記操作部の開閉運動を前記挟持部の開閉運動として伝達する両てこ機構を形成し、
前記生体内導入器具は、前記操作部の開閉を前記運動伝達部に伝達する第一リンクと、前記運動伝達部から前記挟持部に前記操作部の開閉を伝達する第二リンクと、を有し、
一対の前記棒状部材は、一方が、前記第一リンク及び前記第二リンクの固定リンクとなる第一運動伝達部であり、他方が、前記操作部の開閉に伴う、前記第一リンク及び前記第二リンクの回動によって揺動する第二運動伝達部であり、
前記操作部は、前記第一運動伝達部と一体となって直線状に延在する第一操作部と、前記第一リンクと連結し、前記第一リンクともに回動する第二操作部とを有し、
前記挟持部は、前記第二リンクと連結し、前記第二リンクとともに回動する第一挟持部と、前記第二運動伝達部と一体となって直線状に延在する第二挟持部とを有し、
前記生体内導入器具は、前記第一リンクに係合する第一ピン及び第二ピンと、前記第二リンクに係合する第三ピン及び第四ピンとを有し、
前記第一ピンは、前記第一操作部及び前記第一運動伝達部を前記第一リンクに係合し、前記第一リンクの回転中心となり、
前記第二ピンは、前記第一リンク及び前記第二操作部を前記第二運動伝達部に係合し、
前記第三ピンは、前記第二運動伝達部及び前記第二挟持部を前記第二リンクに係合し、
前記第四ピンは、前記第二リンク及び前記第一挟持部を前記第一運動伝達部に係合し、前記第二リンクの回転中心となり、
前記運動伝達部の長手方向の寸法は170〜350mmであり、前記運動伝達部の幅方向の寸法は7〜13mmであり、
前記操作部におけるリング状のリング部は、長手方向軸に直交し、かつ幅方向軸に直交する高さ方向の寸法が、前記運動伝達部における、長手方向軸に直交し、かつ幅方向軸に直交する高さ方向の寸法の略半分であり、
前記操作部の開閉方向が前記挟持部の開閉方向に対して更に略直交し、
体表面における切開された入口から導入して皮下にトンネルを形成することのできる生体内導入器具。
【背景技術】
【0002】
下肢等の動脈が梗塞した場合には、動脈の梗塞部位の前後に人工血管を通してこれで置き換えるバイパス手術をすること、下肢等に静脈瘤が生じた場合には、静脈瘤を剥離除去後に人工血管を通してこれで置き換えるバイパス手術をすることが行われている。
【0003】
これらのバイパス手術では、例えば、長い棒状のゴアトンネラーと称される器具が用いられることがある。ゴアトンネラーは、例えば、操作者が把持するハンドル部とその先に延在するロッド部とロッド部を挿入するスリーブ部とスリーブ部の先端に螺合されるキャップ部とを有する。ゴアトンネラーは、例えば次のように使用される。まず、その先端にキャップ部が螺合されたスリーブ部にロッド部を挿入して組み付けられたゴアトンネラーを、体表面における切開された一方の入口から体内の皮下に沿って挿通して、体表面における切開された他方の出口に貫通させる。その長さは部位によっては20cmを超える。次いで、体表面から露出したゴアトンネラーの先端に設けられたキャップ部を外して、ロッド部の先端に紐で人工血管を固定した後に、ロッド部を挿入方向とは逆方向に牽引して、人工血管をスリーブ内に挿通させる。挿通させた人工血管とロッド部とを切り離した後にスリーブ部を引き抜くことにより、人工血管を生体内の所望の部位に配置する。
【0004】
例えば、特許文献1には、「簡単な構造で取り扱い易くかつ安全な人工血管等の案内具を提供すること」(特許文献1の段落番号0004)を目的として、「人工血管等を挿脱し得る中空管の任意の箇所に、一定の曲げ角度をもった湾曲部が形成されており、一方の端部に実質的に円形または錐形の案内頭を着脱自在に備えていることを特徴とする人工血管等の案内具」(特許文献1の請求項1)が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には従来のトンネラーによって引き起こされる組織外傷よりも小さな組織外傷で移植され得るトンネラーを提供することを目的として、「・・・前記先端チップ(112、912)に近接した組織細胞に組織分離エネルギーを供給する手段と、を備えたことを特徴とするトンネル機器。」(特許文献2の請求項1)が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の所謂トンネラーは、これを体内に挿通させた後にその先端に着脱自在に設けられたキャップ部を外す、紐で人工血管を固定する、といった操作が必要であり、手間と時間がかかり、これが患者及び医療従事者の負担となっていた。
【0008】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、手術操作を簡略化して手術時間を短縮することにより、患者及び医療従事者の負担を軽減することのできる生体内導入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、
(1) 一対の棒状部材における一方に挟持部を、他方に操作部を、前記挟持部と前記操作部との間に運動伝達部をそれぞれ有し、前記操作部の開閉に応じて前記運動伝達部を介して前記挟持部が開閉する生体内導入器具であって、
前記運動伝達部は、前記操作部の開閉運動を前記挟持部の開閉運動として伝達する両てこ機構を形成し、
前記運動伝達部の長手方向に直交する幅方向の長さD1が7〜13mmであり、
体表面における切開された入口から導入して皮下にトンネルを形成することのできる生体内導入器具である。
【0010】
前記(1)の好適な態様としては、
(2) 前記操作部の開閉方向と前記挟持部の開閉方向とが、直交し、
(3) 運動伝達部は、緩やかに曲げられた湾曲部を有する前記(1)又は(2)に記載の生体内導入器具であり、
(4) 前記挟持部は、一対の挟持部が閉じた状態のときに、その外形が略四角錐台形状である前記(1)〜前記(3)のいずれか一つに記載の生体内導入器具であり、
(5) 前記運動伝達部の長手方向の長さL1が170〜350mm、前記挟持部の前記長手方向の長さL2が10〜20mm、前記挟持部の基端部における前記幅方向の長さD2が7〜13mm、一対の挟持部が閉じた状態のときの前記挟持部の先端から前記長さL2の20%の位置における合計厚さD3が4〜8mm、前記位置における前記合計厚さD3に直交する方向の長さD4が5〜11mmである前記(1)〜前記(4)のいずれか一つに記載の生体内導入器具である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る生体内導入器具は、一対の棒状部材の一方に挟持部を、他方に操作部を有し、操作部の開閉に応じて挟持部が開閉するので、生体内導入器具を生体内に導入してトンネル又は経路を形成した後に、従来の所謂トンネラーのように、その先端に設けられたキャップ部を外す、紐で人工血管を固定する、といった操作を行う必要がなく、挟持部で人工血管等の媒体を挟持して引き戻すだけで、人工血管等の媒体を体内に導入することができる。したがって、手術操作が簡略化され、手術時間を短縮することができ、それによって患者及び医療従事者の負担を軽減することができる。
また、従来の所謂トンネラーに比べて、構造が簡単であるので、洗浄及び滅菌が容易であり、管理し易い。したがって、この発明によると医療器具の管理を合理化することができ、それによって総コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の概略説明図である。
図1(a)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す生体内導入器具の寸法を示すための概略説明図である。
図2(a)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【
図3】
図3は、運動伝達部及び挟持部を拡大して示す要部概略図である。
図3(a)は、挟持部が閉じている状態のときの運動伝達部及び挟持部を拡大して示す要部概略図であり、
図3(b)は、挟持部が開いている状態のときの運動伝達部及び挟持部を拡大して示す要部概略図である。
【
図4】
図4は、この発明に係る生体内導入器具の他の実施態様を示す生体内導入器具の概略説明図である。
図4(a)は、この発明に係る生体内導入器具の他の実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【
図5】
図5は、この発明に係る生体内導入器具の別の実施態様を示す生体内導入器具の概略説明図である。
図5(a)は、この発明に係る生体内導入器具の別の実施態様を示す生体内導入器具の側面概略説明図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す生体内導入器具の上面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の生体内導入器具は、体表面における切開された入口から生体内に導入されて、生体内における特に皮下に所定の大きさのトンネル又は経路を形成し、生体内導入器具の先端部が体表面における切開された出口から導出された後に、形成したトンネル又は経路内に配置する媒体を挟持して引き戻すことにより、前記媒体をトンネル又は経路内に配置するのに使用される。
【0014】
前記媒体は、生体内に配置する必要のあるものである限り特に限定されず、例えば、生体の血管等の生体管、人工血管等の人工管を挙げることができる。トンネル又は経路の太さ及び長さは、前記媒体の太さ、長さ、及び配置される部位等に応じて適宜設定され、この発明の生体内導入器具の寸法等もまた、前記媒体の太さ、長さ、及び配置される部位等に応じて適宜設定される。
【0015】
以下において、図面を参照しつつこの発明に係る生体内導入器具の一実施態様として、下肢に人工血管を配置するときに使用する生体内導入器具の一例を説明する。
図1(a)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【0016】
図1に示すように、この実施態様の生体内導入器具1は、一対の棒状部材2における一方に挟持部3a、3bを、他方に操作部4a、4bを、前記挟持部3a、3bと前記操作部4a、4bとの間に運動伝達部5a、5bをそれぞれ有し、前記操作部4a、4bの開閉に応じて前記運動伝達部5a、5bを介して前記挟持部3a、3bが開閉する。
【0017】
前記棒状部材2は、医療用の鉗子、剪刃、所謂トンネラー等の材料として一般的に使用される材料で形成されることができ、例えば、チタン、Ti6Al4等のチタン合金、ステンレス鋼等によって形成される。
【0018】
前記操作部4a、4bは、医療従事者が挟持して、一対の操作部4a、4bを開閉することにより挟持部3a、3bの開閉を行う部位である。操作部4a、4bは、指を挿入するリング状のリング部6a、6bと、このリング部6a、6bから運動伝達部5a、5bに向かって延在する柄部7a、7bとを有する。
図2に示すように、操作部4a、4bの柄部7a、7bが延在する方向の長さL3は、この生体内導入器具1の使用部位に応じて、及び操作性等の観点から適宜設定することができ、例えば40〜150mmである。
【0019】
前記柄部7a、7bのうちの一方の柄部7aは、
図1(a)に示すように、一対の操作部4a、4bを上面から見たときに、一方の運動伝達部5aと一体となって直線状に延在している。他方の柄部7bは、他方の運動伝達部5bとは別体として所定の角度で連結している。したがって、挟持部3a、3b及び操作部4a、4bが閉じた状態のときに、一方の柄部7aと他方の柄部7bとは運動伝達部5a、5b側の端部において所定の角度θ例えば10〜20°で交差している。柄部7a、7bの長手方向の長さL4は特に限定されないが、この生体内導入器具の操作性等を考慮すると、例えば20〜130mmである。また、柄部7a、7bの断面形状は例えば角にRを付けた角形、円形、楕円形等を採用することができる。柄部7a、7bの長手方向の長さの中心において、長手方向に直交し、かつ操作部4a、4bが開閉する方向の長さD5は、3.5〜7.5mm、例えば5.5mmであり、操作部4a、4bが開閉する方向に直交する方向の長さD6は、3.5〜15mm、例えば10mmである。この実施態様では、柄部7a、7bは、リング部6a、6b側から運動伝達部5a、5bに向かって次第に太くなっているが、長手方向に太さが変化しない棒状であってもよい。なお、生体組織を傷つけないように、この生体内導入器具1の外表面の角には全てRが付けられているのがよい。
【0020】
前記運動伝達部5a、5bは、前記操作部4a、4bの開閉運動を前記挟持部3a、3bの開閉運動として伝達する両てこ機構を形成する。前記運動伝達部5a、5bは、両てこ機構を形成するので、開閉運動の際に前記運動伝達部5a、5bの形状がほとんど変化しない、換言すると、一対の運動伝達部5a、5bが互いにほとんど離隔しない状態で前記挟持部3a、3bを開閉させることができる。したがって、この生体内導入器具1を生体内に導入した後に、挟持部3a、3bで人工血管等の媒体を挟持する際に、生体内に配置されている運動伝達部5a、5bの外形をほとんど変化させることなく、挟持部3a、3bを開閉させることができる。
【0021】
図3は、運動伝達部を拡大して示す要部概略図であり、
図3(a)は、挟持部が閉じている状態のときの運動伝達部を示し、
図3(b)は、挟持部が開いている状態のときの運動伝達部を示す。
【0022】
図3(a)及び(b)に示すように、一方の運動伝達部5bと他方の運動伝達部5aとは、一方の操作部4bの先端にある第1リンク9と他方の挟持部3aの基端にある第2リンク10とにより第1ピン11から第4ピン14までの4つのピンを介して連結されている。この運動伝達部5a、5bにおいては、第1リンク11と第2リンク12とがてことして作用し、一方の運動伝達部5bが固定リンクとして作用して、両てこ機構を形成している。
図3(a)に示すように、一対の挟持部3a、3bが互いに接触して閉じている場合には、第1ピン11、第2ピン12、第3ピン13、第4ピン14、及び第1ピン11の順にそれぞれの間を結ぶ仮想線Lは平行四辺形を形成している。
図3(b)に示すように、一対の挟持部3a、3bが互いに離れて開いている場合には、前記仮想線Lは長方形に近似する形状となり、一対の運動伝達部5a、5bの間が僅かに0.1〜数mm程度離隔する。このように、挟持部3a、3bの開閉によって運動伝達部5a、5bの外形はほとんど変化することがない。
【0023】
運動伝達部5a、5bの断面形状及びその太さは、柄部7a、7bに近似する形状及び太さとすることができ、生体内導入器具1の使用部位に応じて、及び操作性等の観点から適宜設定することができ、
図2に示すように、その長手方向の長さL1は、170〜350mm、例えば260mmであり、その合計太さすなわち運動伝達部5a、5bの長手方向に直交する幅方向の2方向の長さD1は、7〜13mm、例えば10mmである。
【0024】
以下にこの実施態様の両てこ機構について、より詳細に説明する。
一方の運動伝達部5bは、一方の挟持部3bと直線状に一体に連結され、固定リンクとして作用する。この運動伝達部5bと一方の操作部4bの端部にある第1リンク9とは第1ピン11を介して連結され、一方の操作部4bは第1ピン11を中心にして回動する。第1リンク9の第1ピン11とは反対側の端部は、第2ピン12を介して他方の運動伝達部5aに連結され、一方の操作部4bの回動に応じて他方の運動伝達部5aが揺動する。他方の運動伝達部5aは他方の操作部4aと直線状に一体に連結され、他方の挟持部3aの基端にある第2リンク10とは第3ピン13を介して連結されている。第2リンク10の第3ピン13とは反対側の端部は、第4ピン14を介して一方の運動伝達部5bに連結されている。一方の操作部4bの回動に伴って第1リンク9に第2ピン12を介して連結した他方の運動伝達部5aが揺動すると、この揺動に伴って第2リンク10が揺動することにより、他方の挟持部3aが第4ピン14を中心にして回動する。
【0025】
第1リンク9は、柄部7bに対して所定の角度で傾斜して設けられ、第2リンク10は挟持部3aに対して所定の角度で傾斜して設けられている。第1リンク9と第2リンク10とは、
図3(a)に示すように、運動伝達部5a及び5bの幅を合計した長さよりも僅かに長い。したがって、挟持部3a、3bが閉じている状態のときには、一対の運動伝達部5a、5bは互いに接触し、第1リンク9と第2リンク10とは運動伝達部5a及び5bの長手方向に直交する方向から所定の角度で傾斜するように配置されて、第1リンク9と第2リンク10とは、運動伝達部5a及び5bの幅方向からはみ出さないように形成されている。また、
図3(b)に示すように、挟持部3a、3bが開いた状態のときには、第1リンク9と第2リンク10とは運動伝達部5a、5bに対して略直交する方向に配置され、第1リンク9と第2リンク10とが運動伝達部5a及び5bの幅方向からはみ出さずに、運動伝達部5a、5bが互いに僅かに離隔するように形成されている。
【0026】
前記挟持部3a、3bは、生体内に配置される人工血管等の媒体を挟持する。前記挟持部3a、3bは、前述したように、操作部4a、4bの開閉運動が運動伝達部5a、5bを介して伝達されて開閉する。換言すると、一方の操作部4bの回動運動が両てこ機構により他方の挟持部3aの回動運動として伝達されて、挟持部3a、3bが開閉する。
【0027】
前記挟持部3a、3bは、一対の挟持部3a、3bが閉じた状態のとき、すなわち挟持部3a、3bにおける相対向する対向面8a、8bが接触しているとき、その先端が丸みのある形状を有し、生体内導入器具1を体内に導入してトンネル又は経路を形成する際に、生体組織の損傷が最小限となるように形成されている。一対の挟持部3a、3bが閉じた状態のときの形状は、生体内導入器具1を体内に導入するときに、生体組織を損傷し難い形状である限り特に限定されない。一対の挟持部3a、3bが閉じた状態のときの形状は、一対の運動伝達部5a、5bから一対の挟持部3a、3bの先端に向かって次第に細くなるように形成されてもよいし、一対の運動伝達部5a、5bから一対の挟持部3a、3bの先端に向かって所定の位置まで太さが変わらず、又は次第に太くなった後に先端に向かって細くなるように形成されていてもよい。一対の挟持部3a、3bの先端に向かって細く又は太くなるときのその外表面は、テーパ状、外側に湾曲する形状、又は内側に湾曲する形状のいずれであってもよく、具体的には、例えば、一対の挟持部3a、3bの基端面すなわち長手方向に直交する面を底面とする円錐台形状及び角錐台形状等の錐台形状、回転楕円体及び球体等を半分割した形状、及びそれらを組み合わせた形状、アヒルの嘴に似たダックビル形状等を挙げることができる。いずれの形状であってもその外表面には鋭利な角がなく、Rが付けられているのがよい。
【0028】
前記挟持部3a、3bの大きさは、この生体内導入器具1の使用部位等に応じて適宜設定され、その太さは運動伝達部5a、5bと同じであってもよいし、運動伝達部5a、5bよりも太い部位を有していてもよい。挟持部3a、3bにおける相対向する対向面8a、8bの大きさは、人工血管等の媒体を挟持することができればよく、
図2に示すように、例えば、生体内導入器具1の長手方向の長さL2は10〜20mm、例えば15mm、挟持部3a、3bの基端部における前記長手方向に直交する幅方向の2方向の長さD2は7〜13mm、例えば10mmである。また、一対の挟持部3a、3bが閉じた状態のときの、挟持部3a、3bの先端から前記基端側に長さL2の20%の位置における一対の挟持部3a、3bの合計厚さD3が4〜8mm、例えば6mm、前記位置における前記合計厚さD3に直交する方向の長さD4が5〜11mm、例えば8mmであるのがよい。
【0029】
前記対向面8a、8bは、平面であってもよいし、人工血管等の媒体を挟持したときに媒体を傷つけずに適度な摩擦力で確実に媒体を挟むことができる程度の凹凸が形成されていてもよい。
【0030】
次に、この実施態様の生体内導入器具1の使用方法の一例として、この生体内導入器具1を用いて下肢にトンネルを形成し、このトンネルに人工血管を配置する方法について説明する。
【0031】
まず、下肢において生体内導入器具1を導入するための入口と出口とに対応する部位を切開する。操作者はリング部6a、6bに指を挿入して生体内導入器具1を把持し、挟持部3a、3bを閉じた状態で挟持部3a、3bを前記入口から導入し、前記出口まで挿通させて、下肢の皮下に人工血管を配置するためのトンネル又は経路を作成する。
【0032】
次いで、生体内導入器具1を下肢に挿通させたままの状態で、一対の操作部4a、4bが離隔する方向に力をかけて、一方の操作部4bが第1ピン11を中心にして他方の操作部4aから離れる方向に回動させ、運動伝達部5a、5bが形成する両てこ機構を介して挟持部3a、3bを開いた状態にする。
【0033】
両てこ機構では、
図3(a)及び(b)に示すように、一方の操作部4bの回動に伴って、傾斜して配置されていた第1リンク9が第1ピン11を中心にして運動伝達部5a及び5bの長手方向に直交する方向に近づくように回動し、この第1リンク9の回動に伴って、第1リンク9に第2ピン12を介して連結した他方の運動伝達部5aが揺動し、この揺動に伴って第2リンク10が第4ピン14を中心にして運動伝達部5a及び5bの長手方向に直交する方向に近づくように回動することにより、この第2リンク10に一体に連結している他方の挟持部3aが第4ピン14を中心にして一方の挟持部3bから離れる方向に回動する。挟持部3a、3bを開いた状態にすると、一対の運動伝達部5a、5bは互いに僅かに離れるが、その距離は0.1〜数mm程度であり、ほとんどその外形は変化しない。
【0034】
次いで、人工血管の端部を一対の挟持部3a、3bの間に配置し、操作者が一対の操作部4a、4bが互いに近接する方向に力をかけることで、運動伝達部5a、5bが形成する両てこ機構を介して挟持部3a、3bが閉じて、適度な圧力で人工血管を挟持部3a、3bで挟持する。
【0035】
次いで、挟持部3a、3bで人工血管を挟持した状態で、生体内導入器具1を引き戻し、形成したトンネル又は経路に人工血管を挿通させる。人工血管が体表面に形成した入口に到達したら、操作部4a、4bを操作して挟持部3a、3bを開き、人工血管を離す。こうして、人工血管は形成したトンネル又は経路内に配置される。続いて、一般的に行われる方法で、人工血管と生体血管とを縫合し、体表面に形成された入口と出口とを縫合する。
【0036】
これら一連の操作では、生体内導入器具1を生体内に導入してトンネルを形成した後に、従来の所謂トンネラーのように、その先端に設けられたキャップを外す、紐で人工血管を固定する、といった操作を行う必要がなく、挟持部で人工血管を挟持して引き戻すだけで、人工血管を体内に挿通させることができる。したがって、手術操作が簡略化され、手術時間を短縮することができ、それによって患者及び医療従事者の負担を軽減することができる。
【0037】
また、従来の所謂トンネラーは、本体、キャップ、及び紐等といった複数の部品により形成され、それぞれの部品が着脱自在に形成されているので、部品の管理が煩雑であった。しかし、この生体内導入器具1は、使用時に複数の部品を着脱する必要がなく、また、構造が簡単であるので、洗浄及び滅菌が容易であり、管理し易い。したがって、この発明によると医療器具の管理を合理化することができ、それによって総コストを低減することができる。
【0038】
次に、この発明の生体内導入器具の第2の実施態様について説明する。
図4(a)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図4(b)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【0039】
図4に示す実施態様の生体内導入器具20は、操作部41a、41bの開閉方向と挟持部31a、31bの開閉方向とが直交すること以外は
図1に示す生体内導入器具1と同様である。
【0040】
この実施態様の生体内導入器具20は、操作部41a、41bの開閉方向と挟持部31a、31bの開閉方向とが直交している。
図4(a)及び(b)に示すように、操作部41a及び41bが紙面に沿って開閉運動する場合、すなわち操作部41bが第1ピン111を中心にして紙面に沿って回動する場合、挟持部31a、31bは紙面に直交する方向に開閉する、すなわち挟持部31aが第4ピン141を中心にして紙面に直交する面に沿って回動する。
【0041】
この実施態様の生体内導入器具20は、運動伝達部51a、51bの太さが途中で変化している。生体内導入器具20を上面から見ると、
図4(a)に示すように、操作部41a、41b側における運動伝達部51a、51bは、柄部71a、71bと同程度の幅を有しており、挟持部31a、31bに向かって次第に幅が大きくなり、挟持部31a、31b側では挟持部31a、31bと同程度の幅となっている。生体内導入器具20を側面から見ると、
図4(b)に示すように、操作部41a、41b側における運動伝達部51a、51bは、柄部71a、71bと同程度の高さを有しており、途中でその高さが半分になり、挟持部31a、31b側では挟持部と同程度の高さとなっている。また、
図4(a)に示すように、操作部41a、41b側では、運動伝達部51aと運動伝達部51bとが紙面に沿って並列して配置されている。一方、挟持部31a、31b側では、運動伝達部51aと運動伝達部51bとが紙面に直交する方向に重なるように配置されている。
【0042】
この実施態様の生体内導入器具20は、操作部41bを操作部41aから離れる方向に回動すると、運動伝達部51aが運動伝達部51bに対して操作部41a側に移動すると共に、運動伝達部51aが運動伝達部51bから僅かに離隔する方向に移動する。すなわち、操作部41aと操作部41bとの間の角度が大きくなるようにして操作部41a、41bが開いた状態にすると、挟持部31a、31b側では、運動伝達部51aと運動伝達部51bとが僅かに隔離し、かつ、運動伝達部51aが操作部41a側に移動することで、挟持部31aが第4ピン141を中心にて回動し、挟持部31a、31bが開いた状態となる。
【0043】
生体内導入器具20が、操作部41a、41bの開閉方向と挟持部31a、31bの開閉方向とが直交するように形成されていると、体表面に沿って操作部41a、41bを開閉させることのできる姿勢で生体内導入器具20を体表面に形成した入口から導入することができるので、皮下近傍を縫うように生体内導入器具20を導入して、トンネル又は経路を形成することができる。体表面に形成した出口から挟持部31a、31bを導出した後に、操作部41a、41bを操作して開いた状態にすると、体表面から立ち上がる方向に挟持部3aが回動して、挟持部3a、3bが開いた状態となる。挟持部3a、3bでトンネル又は経路に挿通させる人工血管等の媒体を挟持して、生体内導入器具20を引き戻すことにより、形成したトンネル又は経路に人工血管等の媒体を配置することができる。
【0044】
次に、この発明の生体内導入器具の第3の実施態様について説明する。
図5(a)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の上面概略説明図であり、
図5(b)は、この発明に係る生体内導入器具の一実施態様を示す生体内導入器具の側面概略説明図である。
【0045】
図5に示す実施態様の生体内導入器具30は、運動伝達部52a、52bが緩やかに曲げられた湾曲部15を有すること以外は
図1に示す生体内導入器具1と同様である。
図5においては、
図1に示した部材と同様の形状を有する部材については、
図1に示した符号と同じ符号を用いて示す。
【0046】
図5(a)に示すように、この実施態様の生体内導入器具30における運動伝達部52a、52bは、操作部4a、4bの開閉方向に直交する方向に緩やかに曲げられた湾曲部15を有している。運動伝達部52a、52bがこのような湾曲部15を有していると、体表面に形成した入口から生体内導入器具30を導入した後に、皮下近傍を挿通させて体表面に形成した出口から挟持部32a、32bを露出させ易い。したがって、無理な力をかけることなく皮下近傍に生体内導入器具30を導入することができるので、生体組織の損傷を最小限に抑えることができる。
【0047】
湾曲部15の曲げ角度は、生体内に形成するトンネルの深さ及び長さ等によって適宜設定され、例えば、100〜175°の範囲内で適宜設定され、また、曲率半径は、500〜1500mmの範囲内で適宜設定されるのがよい。
【0048】
なお、この発明の生体内導入器具は、前述した実施態様に限定されず、この発明の課題を達成することができる限り、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、前述した実施態様において、生体内導入器具1の各部分の寸法を例示したが、この発明の生体内導入器具の寸法は、その使用部位等に応じて適宜設定することができ、例えば、腕に導入してトンネルを形成し、人工血管等の媒体を挿通させるのに用いる場合には、生体内導入器具1で示した寸法の約半分の寸法の生体内導入器具とすることができる。
【0050】
この発明の生体内導入器具は、生体内に導入されて、トンネル又は経路を形成し、人工血管等の媒体を挟持して引き戻すことにより、形成したトンネル又は経路に人工血管等の媒体を配置するのに使用され、特に下肢に発生した静脈瘤の治療に好適に使用される。