特許第6111323号(P6111323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111323血液中の検体濃度を測定する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111323
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】血液中の検体濃度を測定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20170327BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   G01N21/78 A
   G01N33/49 K
【請求項の数】23
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-506228(P2015-506228)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-514987(P2015-514987A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013057999
(87)【国際公開番号】WO2013156526
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】12164805.9
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルドゥス、ズザナ
(72)【発明者】
【氏名】シュラット、ヨーヘン
(72)【発明者】
【氏名】トリック、ゼバスチャーン
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−318928(JP,A)
【文献】 特開2007−101482(JP,A)
【文献】 特開2006−010706(JP,A)
【文献】 特表2010−522336(JP,A)
【文献】 特開昭54−082286(JP,A)
【文献】 特開2009−233253(JP,A)
【文献】 特開2004−125775(JP,A)
【文献】 特開昭62−206432(JP,A)
【文献】 特開平03−215746(JP,A)
【文献】 特開昭63−101757(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0281219(US,A1)
【文献】 特表平06−506062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75−21/83
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定するための方法であって、テストエレメント(114)が用いられ、前記テストエレメント(114)が少なくとも1つの試薬エレメント(124)を有し、前記試薬エレメント(124)が、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成され、血液が前記テストエレメント(114)に適用され、前記試薬エレメント(124)の少なくとも1つの光学測定変数の時間推移が検出され、前記光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔(158)から、血液中の少なくとも1つの阻害変数が判定され、前記検体の濃度が、前記時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔(164)から判定され、時間間隔(158、164)は、それぞれ少なくとも2つの測定時点を含、前記第1時間間隔(158)および前記第2時間間隔(164)における前記光学測定変数の検出のために、前記試薬エレメント(124)が、少なくとも1つの問合せ光源(130)からの少なくとも1つの問合せ光線(132)によってそれぞれ照射され、前記試薬エレメント(124)からの少なくとも1つの応答光線(136)が少なくとも1つの検出器によってそれぞれ検出され、前記光学測定変数が少なくとも1つの第1波長で判定され、血液が到着して前記試薬エレメント(124)を湿潤させる湿潤時点が、血液が前記テストエレメント(114)に適用された後の前記光学測定変数の主要な変化から判定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1時間間隔(158)が前記時間推移の最初の時間間隔であり、前記第2時間間隔(164)が前記第1時間間隔(158)に続く請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1時間間隔(158)における前記光学測定変数の時間推移が、前記光学測定変数における湿潤に起因する急激な変化(160)を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記問合せ光線(132)が、前記第1時間間隔(158)および前記第2時間間隔(164)において同じ波長および/または同じスペクトル特性を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記応答光線(136)が、前記第1時間間隔(158)および前記第2時間間隔(164)において同じ波長および同じスペクトル特性のうちの1つまたは両方を有する請求項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの補正が、阻害変数によって特定され、前記検体の補正された濃度が、前記補正を考慮に入れて前記第2時間間隔(164)から特定される請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2時間間隔(164)における前記光学測定変数の変化が検出され、前記光学測定変数の時間的変化が予め設定された閾値未満である時点で判定された前記光学測定変数が、前記検体の濃度の判定に用いられる請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血液が前記テストエレメント(114)上の少なくとも1つの適用部位(122)に適用され、前記血液または血液成分が前記適用部位(122)から前記試薬エレメント(124)へ移送される請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定するための装置(110)であって、前記装置(110)が少なくとも1つのテストエレメント(114)を備え、前記テストエレメント(114)が少なくとも1つの試薬エレメント(124)を有し、前記試薬エレメント(124)が、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成され、血液が前記テストエレメント(114)に適用可能であり、前記装置(110)が少なくとも1つの光学検出装置(128)を有し、前記光学検出装置(128)が前記試薬エレメント(124)の少なくとも1つの光学測定変数の時間推移を検出するように構成され、前記装置(110)はさらに少なくとも1つの評価装置(138)を有し、前記評価装置(138)は、前記光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔(158)から、血液中の少なくとも1つの阻害変数を判定するように構成され、前記評価装置(138)はさらに、前記時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔(164)から、検体の濃度を判定するように構成され、前記時間間隔(158、164)は、それぞれ少なくとも2つの測定時点を含、前記第1時間間隔(158)および前記第2時間間隔(164)における前記光学測定変数の検出のために、前記試薬エレメント(124)が、少なくとも1つの問合せ光源(130)からの少なくとも1つの問合せ光線(132)によってそれぞれ照射され、前記試薬エレメント(124)からの少なくとも1つの応答光線(136)が少なくとも1つの検出器によってそれぞれ検出され、前記光学測定変数が少なくとも1つの第1波長で判定され、血液が到着して前記試薬エレメント(124)を湿潤させる湿潤時点が、血液が前記テストエレメント(114)に適用された後の前記光学測定変数の主要な変化から判定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記テストエレメント(114)がテストストリップ(116)であり、前記装置(110)が少なくとも1つのテストストリップホルダ(118)を有し、前記テストストリップホルダ(118)内の少なくとも1つのテストストリップ(116)が適用場所に配置可能であり、前記適用場所において、前記テストストリップ(116)の少なくとも1つの適用部位(122)にユーザが血液を適用可能であり、前記テストストリップ(116)は、前記適用部位から前記試薬エレメント(124)へ血液または血液成分を移送するための少なくとも1つの毛管エレメント(166)を有する請求項記載の装置(110)。
【請求項11】
血液から少なくとも1つの血液成分を分離するための少なくとも1つの分離エレメント(176)が前記毛管エレメント(166)と前記試薬エレメント(124)との間に設けられる請求項10記載の装置(110)。
【請求項12】
前記光学検出装置(128)が、前記第1時間間隔(158)および第2時間間隔(164)における光学測定変数を同じ波長で検出するように構成される請求項11のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項13】
少なくとも1つのテストエレメント(114)および少なくとも1つの試薬エレメント(124)を備えた装置(110)において、血液中の阻害変数を判定するための光学測定変数の時間推移における湿潤に起因する急激な変化(160)の使用であって、前記湿潤に起因する急激な変化(160)の使用により判定された前記阻害変数が、さらに、血中の少なくとも1つの検体の濃度の判定を補正するために用いられ、前記阻害変数の判定のために、および検濃度の判定のために、同じ光学測定変数が用いられ、前記光学測定変数が少なくとも1つの第1波長で判定され、血液が到着して試薬エレメント(124)を湿潤させる湿潤時点が、血液がテストエレメント(114)に適用された後の前記光学測定変数の主要な変化から判定されることを特徴とする使用。
【請求項14】
前記方法が、血中グルコース濃度を判定するための方法である請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記阻害変数が、阻害成分の濃度を含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記阻害変数が、血中ヘマトクリット値を含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記阻害変数が、ヘマトクリット値を含む請求項記載の方法。
【請求項18】
前記装置(110)が、血中グルコース濃度を判定するためのものである請求項記載の装置(110)。
【請求項19】
前記少なくとも1つの阻害変数が、血中ヘマトクリット値を含む請求項記載の装置(110)。
【請求項20】
前記光学測定変数が反射率値である請求項13記載の使用。
【請求項21】
血中の前記阻害変数が、ヘマトクリット値である請求項13記載の使用。
【請求項22】
前記湿潤に起因する急激な変化(160)の使用により判定された前記阻害変数が、さらに、血中グルコース濃度の判定を補正するために用いられる請求項13記載の使用。
【請求項23】
同じ光学測定変数が、同じ波長での光学的反射率値である請求項13記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定する方法および装置に関する。さらに本発明は、血液中の阻害変数を判定するための、テストエレメントにおいて検出された光学測定変数の時間推移における湿潤に起因する急激な変化の使用に関する。かかる方法、装置または使用は、特に血中グルコース濃度を判定するために用いられる。しかしながら、原則的には、代替的または付加的には、1つまたは2つ以上の種類の検体の判定、特には1つまたは2つ以上の代謝物質の判定も可能である。
【背景技術】
【0002】
体液、例えば血液、尿、および唾液中の1つまたは2つ以上の検体を判定するための多数の異なる装置および方法が、先行技術から知られている。特に、以下の発明は、血液中の検体の測定について記載している。
【0003】
具体的には、少なくとも1つの試薬エレメントの使用に基づく測定を素早く容易に行うためのテストエレメントが、先行技術から知られている。かかる試薬エレメントは、検出される少なくとも1つの検体の存在下に検出可能な少なくとも1つの検出反応、特には特定の検出反応、例えば光学的に検出可能な検出反応および/または電気化学的に検出可能な検出反応を行うように構成されてもよい。本発明の範囲内で使用されてもよい可能な試薬エレメントについては、例えば、非特許文献1が参照されてもよい。さらに、例えば特許文献1または特許文献2が参照されてもよい。試薬エレメントを含む多数の異なる種類のテストエレメントも先行技術から知られている。これらに関しては、特許文献3、特許文献4または特許文献5が参照されてもよい。他の種類のテストエレメントおよび/または試薬エレメントが用いられてもよい。
【0004】
特許文献6は、体液を分析する方法および装置を開示している。この出願の目的は、2つの異なる波長で測定することによって装置の光学透過システムの透過挙動を制御することである。この方法は、2つの異なる波長における拡散反射率曲線の検出を含む。これらの測定曲線はフィットされ、2つのフィットした曲線が生成される。オフセットは2つのフィットした曲線の交点から判定され(図5中のt1とt2との間のセクション)、例えば、段落[0030]に記載されているように、測定値のオフセット補正がなされる。例えば段落[0023]に記載されているように、このオフセット補正はまた、サンプルを適用する開始時間が不確かでおよび/または不正確なため、例えば段落[0005]および[0006]から分かるように、光伝送システムの伝送挙動が体液の適用時に変化するかもしれないので、必要である。サンプルによる試薬エレメントの湿潤の間の反射率挙動の変化は、例えば段落[0030]から明確にわかるように考慮されず、湿潤中の反射率挙動は一定に見える。
【0005】
特許文献7には、体液成分と反応する試薬エレメントの反射率を判定する装置および方法が記載されている。この方法では、試薬エレメントは照射源で照射され、試薬エレメントから反射された光が判定される。例えば18欄、18行以降から分かるように、閾値法が曲線を分析するために用いられる。
【0006】
特許文献8には、液体中の検体の存在を判定する方法が開示されている。この方法では、反射率測定が試薬マトリックス上で行われる。
【0007】
一般的に例えば電気化学的方法などの他の検出方法においても起きるが、特に光学検出法において、しばしば起こる実用上の問題は、以下の通りである。実際の検出反応は、高い特殊性を示す、すなわち検出される検体の存在下にのみ起こり、その他の種類の検体の存在下に起こるものではないというのが真実である。しかしながら、例えば試薬エレメントを含むテスト領域の反射率の変化に基づいて起こる検出反応の検出は、多くの場合1つまたは2つ以上の阻害変数、例えば具体的には血液サンプル中の赤血球の率すなわちヘマトクリット値に影響される。したがって、実際多くの場合、光学的検出反応において、特に光学的方法を用いる血中グルコースの測定において、測定値はヘマトクリット値に依存することが分かる。この依存性はまた、電気化学システムにおいても見られ、しかしながら、これは通常例えば伝導率測定、およびしたがってヘマトクリットの直接測定によって補正可能である。
【0008】
ヘマトクリットを考慮した検体検出の電気化学的方法および装置は、特許文献9から公知である。テストストリップの充填時間が血液の粘度を判定するために用いられ、これは続いてヘマトクリットの判定に用いられる。
【0009】
同様に、特許文献10には、またヘマトクリット補正を含む血液サンプル中の検体測定の方法が記載されている。この場合、さらに、充填チャネルの付いたテストエレメントが用いられ、充填チャネルへの充填率が決定される。この充填率は続いてヘマトクリットの決定に用いられる。
【0010】
特許文献11には、検体の濃度を測定するための装置が記載されている。さらに、検出器信号の変化の時間推移からヘマトクリット値を判定する方法が記載されている。したがって、グルコース濃度を計算するために、ヘマトクリット値に応じて、補正係数が選択される。
【0011】
特許文献12には、テスト前の血漿から赤血球を取り除く必要なく、全血液サンプルの血漿成分中の目標物質を判定する方法および装置が記載されている。この方法では、光学密度のオフセットが、サンプル中のヘモグロビン濃度を判定するために用いられる。
【0012】
特許文献13には、ヘマトクリット値を測定する方法および対応する装置が記載されている。この場合、第1の測定波長が、ヘモグロビンを判定するために用いられ、第2の測定波長が、検体依存呈色反応をモニターするために用いられる。
【0013】
特許文献14には、液体サンプル中の検体の存在を判定する方法が記載されている。この方法では、開始時間が湿潤によって開始された後、バックグラウンド測定が、第1の波長700nmの第1発光ダイオードによって、予め設定された第1測定時間にヘマトクリットの補正のために行われる。第2の測定時間に、第2の波長635nmの第2の発光ダイオードが、グルコース濃度を測定するために用いられる。この測定はヘマトクリットによって補正される。
【0014】
しかしながら、実際には、特許文献14に記載された方法は、比較的費用がかかり、装置にかなりの費用を要する。特に、実際の検出反応およびヘマトクリットによって光が異なる影響を受ける異なった波長で光学測定が行われなければならない。さらに、それにもかかわらず異なる波長での2つの光学測定はそれぞれ、ヘマトクリットおよびグルコース濃度の両方によって影響を受ける。バックグラウンド信号の簡略な測定でさえ、やはり比較的高い程度の測定の不確実さを示す。
【0015】
従来のシステムおよび方法、特に測光システムにおいて見られるヘマトクリット依存性の依然として継続する結果が示すのは、公知の補正方法の運用費用が高いにもかかわらず、公知の方法およびシステムが用い得るヘマトクリット範囲が比較的狭いということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2010/094426号
【特許文献2】国際公開第2010/094427号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0302287号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0547710号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1593434号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2325624号明細書
【特許文献7】米国特許第5246858号明細書
【特許文献8】米国特許第5049487号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2010/0159570号明細書
【特許文献10】特開2007−303968号公報
【特許文献11】国際公開第2006/138226号
【特許文献12】国際公開第2008/114060号
【特許文献13】欧州特許出願公開第2259058号明細書
【特許文献14】米国特許第4935346号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J. Hoenes et al、Diabetes Technology and Therapeutics、Vol. 10、Supplement 1、2008、10〜26頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、上に述べた種類の公知の方法および装置の欠点を少なくとも部分的に避ける方法および装置を提供することである。特に血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定する方法および装置であって、公知の装置および方法に比べて低減された装置の費用と高い精度で阻害変数の補正を達成することを可能にする方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、独立請求項に記載の方法、装置および使用によって達成される。個別にまたは任意の所望の組み合わせで実施されてもよい本発明の有利な改良は、請求項において提示される。
【0020】
以下に用いられる「示す」、「含む」、また「有する」などの用語は、網羅的な、および非網羅的な意味を有すると一般的には理解されてもよいことに留意すべきである。例えば、「AはBを示す」なる表現は、AはBのみからなり、他の構成要素を含まないというオプションと同様に、Aは、Bに加えて、少なくとも1つのさらなる構成要素および/または少なくとも1つのさらなる構成要素を示すというオプションの両者を明確に含む。
【0021】
本発明の第1の実施形態において、血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定する方法および装置が提案される。前記方法は、特に記載された1つまたは2つ以上の実施形態において本発明の装置を用いて行われてもよい。代替的または付加的には、装置は、例えば、対応する一部の装置および/または複数の装置の存在によって構成されてもよく、それによって、提示された1つまたは2つ以上の実施形態において本発明の方法が行われる。したがって、方法の実施可能な実施形態に関して、装置の記載が参照されてもよく、逆もまた同様である。しかしながら、原則的には方法の他の実施形態および/または装置の他の実施形態も可能である。
【0022】
提案された方法および提案された装置によって、血液中の少なくとも1つの検体の濃度が判定される。特に少なくとも1つの検体が少なくとも1つの代謝物質であってもよい。少なくとも1つの検体がグルコースであればとくに好ましく、それによって血中グルコースの検出を特に行ってもよい。概して濃度は、任意の所望の単位、例えばmg/dLの単位で与えられてもよい。原則として他の単位もまた考えられ得る。
【0023】
方法において、少なくとも1つのテストエレメントが使用され、テストエレメントは少なくとも1つの試薬エレメントを含む。試薬エレメントは、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成される。
【0024】
原則として、テストエレメントという用語は、単独でまたは例えばテストユニットと共に用いられるときのいずれかにおいて、少なくとも1つの検体の定性的および/または定量的な検出が可能な任意のエレメントをいうものと理解されるべきである。テストエレメントは少なくとも1つの試薬エレメントを含む。例えば、テストエレメントは、少なくとも1つの試薬エレメントが接続される少なくとも1つの担体エレメントを備えてもよい。特にこれはストリップ、バンドおよび/またはディスク形状の担体エレメントであってもよい。担体エレメントは、例えば紙材料および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料からその全体または部分が製作されてもよい。
【0025】
特にテストエレメントは、使い捨てのテストエレメント、および/または少なくとも1つの使い捨てのテストエレメント、すなわち検体のまさに1回の検出用として構成され、その後廃棄されるテストエレメントであってもよい。テストエレメントは、特にストリップ形状で、すなわちテストストリップとして構成されてもよい。しかしながら、原則として他の実施形態も可能である。
【0026】
テストエレメントは、以下に記載された方法または装置においても、例えば、テストエレメント、例えばテストストリップを装置のテストユニットに挿入することによってユーザにより個別に準備されてもよい。テストエレメントのテストユニットへの個別の手動挿入に代えてまたはそれに加えて、方法および/または装置はまた、例えば複数のテストエレメントを少なくとも1つのマガジンに収容し、および/またはそこから提供するように構成されてもよい。例えば、テストユニットは、個別のテストエレメントを、少なくとも1つのマガジンから適用場所へ、例えば適当なアクチュエータによって運ぶように構成されてもよい。
【0027】
適用場所において、テストエレメントは、例えば、血液、例えば血液の小滴がテストエレメント上に載せられる、テストエレメントの少なくとも1つのサンプル受取部位および/または適用部位がユーザにアクセス可能なように構成されてもよい。他の実施形態も可能である。さらに、上に述べたように、テストエレメントはまた、少なくとも1つの血液サンプルがテストエレメント上に載せられる、少なくとも1つのサンプル受取部位または適用部位を有していてもよい。例えば、これは、サンプルが適用される領域であってもよい。代替的または付加的には、サンプル受取部位がまた、少なくとも1つの毛管エレメントの開口を備えてもよい。様々な他の実施形態が可能である。
【0028】
本発明の範囲内で、通常、試薬エレメントは、1つまたは2つ以上の構成要素を含んでいてもよく、検体の存在下で少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成された材料であると理解される。試薬エレメントの可能な実施形態については、上記の先行技術が参照されてもよい。特に、試薬エレメントは、具体的には検出される検体と反応し得る少なくとも1つの酵素を含んでいてもよい。例えば、この酵素は少なくとも1つのオキシダーゼおよび/または少なくとも1つの脱水素酵素、例えばグルコースオキシダーゼおよび/またはグルコース脱水素酵素を含んでいてもよい。さらに、試薬エレメントは、少なくとも1つの補酵素、例えばNAD、cNAD、PQQおよびFADよりなる群から選択される補酵素を含んでいてもよい。cNADについては、例えば、A. v. Ketteler et al.: Fluorescence properties of carba-nicotinamide adenine dinucleotide for glucose sensing, ChemPhysChem 2012, 13, pp. 1302-1306頁およびそこに引用された追加の文献が参照されてもよい。試薬エレメントはまた、少なくとも1つのメディエータを含んでいてもよい。さらに、試薬エレメントはまた、例えば反射率測定および/または蛍光測定によって酵素的検出反応の経過を示し得る少なくとも1つの色素を含んでいてもよい。
【0029】
特に、試薬エレメントは検出反応において、検体を変換する少なくとも1つの試薬を含んでいてもよい。例えば、検出試薬は、少なくとも1つの酵素検出試薬を含んでもよい。かかる検体を特定する酵素検出試薬の例としては、酸化還元酵素(例えば、GlucDor/PQQ)、脱水素酵素、オキシダーゼ酵素、または同様の酵素または上記のおよび/または他の酵素の組み合わせ、特にグルコースオキシダーゼ(GOD)またはグルコース脱水素酵素(例えば、FAD−、NAD+−またはPQQ−依存性)が挙げられる。特に、少なくとも1つの検出可能な反応は、光学的におよび/または電気化学的に検出可能な反応であってもよい。しかしながら、他の種類の反応が、原則的には可能である。特に、これは検出される少なくとも1つの物質が少なくとも1つの検体の存在下に形成される反応であってもよい。この場合、検出されるいくつかの物質がまた、形成されるかおよび/または使用されてもよく、それらは、グループでまたはすべて一緒に個別に検出されてもよい。特に、検出される物質は、少なくとも1つの検出反応の結果として形成され、および/または少なくとも1つの検出反応に関連しおよび直接または間接的に検出可能な物質である。検出後、検出される少なくとも1つの物質は、例えば少なくとも1つの検体を定性的および/または定量的に判定するために用いられてもよい。試薬エレメントおよび/または検出される物質の実施形態の例は、国際公開第2010/052307号が参照されてもよい。試薬エレメントのさらに好ましい実施形態は、以下に詳細に説明される。
【0030】
検出試薬を含む試薬エレメントは、特に少なくとも1つの試薬エレメント層または検出層に置かれてもよい。試薬エレメント層および検出層という用語は、以下において同義語として使用される。少なくとも1つの試薬エレメント層はまた、任意にさらなる物質、例えば1つまたは2つ以上のフィラーを含み、好ましくは1つまたは2つ以上の粒子、例えば無機粒子を含む。粒子は、好ましくは検出試薬と同一ではなく、または少なくとも検出試薬とまったく同一ではない。検出試薬はまた、原則としていくつかの検出試薬または物質の混合物を含み、それらは共に検出試薬を形成してもよい。試薬エレメント層は、例えば、欧州特許第0821234号明細書に記載された診断テストキャリアの第1フィルム層に類似して構成されてもよい。このように、検出層および/または試薬エレメント層は、例えば少なくとも1つの有機フィルム形成剤を含んでいてもよい。例えば、この少なくとも1つのフィルム形成剤は、ポリビニルプロピオネート分散液を含んでもよい。代替的または付加的には、さらに他のフィルム形成剤が用いられてもよい。しかしながら、他の構成もまた原則として可能である。
【0031】
特に、試薬エレメントは、試薬エレメント領域の一部材であってもよく、および/またはテストエレメントが、少なくとも1つの試薬エレメントを含んでもよい少なくとも1つの試薬エレメント領域を含んでもよい。ここで、試薬エレメント領域という用語は、粘着性ユニット、例えば、試薬エレメントを含むかまたは完全に試薬エレメントのみからなる粘着層として理解されるべきである。この層は、厚み、特に例えば0.5〜500μm、特には10〜100μmの乾燥層の厚みを有する。試薬エレメント領域は特に少なくとも1つの検出表面および/または外部から光学的にアクセス可能で、例えば少なくとも1つの光学検出工程によって観察し得る少なくとも1つのテストフィールドウインドウを有してもよく、それによって少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応がこの表面を介して検出できる。
【0032】
本発明との関係においては、光学的に検出可能な検出反応は、通常任意の反応を意味すると理解され、その反応の過程は検出される検体の存在に依存しまたは影響され、その反応は任意にいくつかの部分反応を含み、少なくとも1つの光学的測定方法によって検出可能である。特に、定量的な検出が行われる。例えば、光学的な検出可能性という用語は、変色による、および/または色変動による、および/または蛍光変化による、および/または反射率変化、すなわちより詳しくは試薬エレメントの、特には試薬エレメント領域の反射率値の変化による検出可能性を含んでもよい。
【0033】
本明細書において、反射率は散乱、すなわち紫外線および/または可視線および/または赤外線スペクトル領域の光線の方向性のない反射として一般的に理解される。特に反射率は例えば、散乱して反射された光線を受け取る発光ダイオードのリフレクタからの信号として任意の単位で示されてもよい。さらに、反射率はまた、百分率の相対反射率(以下に%rR)として示されてもよく、ここで、例えば任意の反射率の変化、例えば上記の検出器信号の変化は、例えば検出反応が完了する前の初期値に対する比率と解されてもよい。このように、色の変化および/または変性によって引き起こされる反射率の変化は、例えば%rRで示し得る。一般的には、反射率は、したがって、反射率という用語に一般的に含まれる、任意の単位、絶対単位、または相対単位で示し得る。
【0034】
しかしながら、代替的または付加的には、反射率に関して、他の光学測定変数、例えば、光学検出器のアナログまたはデジタル電気信号、蛍光測定値または同様の光学測定変数が用いられ得る。
【0035】
方法は、以下に記載された処理工程を含む。これらの処理工程は、好ましくは、示された順序で行うことができるが、必ずしもそれに限られるものではない。原則的には他の順序も考えられ得る。さらに、個別のまたは多数の処理工程が並行しておよび/または時間的に重なっておよび/または個別にまたは多数の繰り返しの工程で行われ得る。
【0036】
方法において、血液はテストエレメントに適用される。例えば、血液のサンプル、特に血液の小滴が、上記の実施形態にしたがって、少なくとも1つのサンプル受取部位でテストエレメントに適用される。とりわけ好ましい実施形態において、適用は、テストエレメント、特にテストストリップの毛管エレメントの開口として構成されるサンプル受取部位で行われる。しかしながら、原則として、他の実施形態、例えば、サンプル受取部位が試薬エレメント領域の検出表面に対向するテストエレメントの面に構成される実施形態もまた可能であり、それにより、例えば、適用面および検出面を有し、検出表面が適用面に対して対向するテストストリップが使用され得る。血液のテストエレメントへの適用は通常手動でまたは自動的に行われてもよい。
【0037】
この方法では、さらに、試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移が検出される。特に、これは、上記の記載によれば、試薬エレメント領域の少なくとも1つの光学測定変数であってもよい。本発明の範囲内において、光学測定変数は1つまたは2つ以上の光学的測定方法の使用に基づく定量的に判定可能な変数および/または定量的に判定可能な信号をいうものと一般的に理解される。光学測定変数は特に、検出反応によって影響を受け得る試薬エレメントの少なくとも1つの光学特性によって影響を受け得る。特に、光学測定変数は、1つまたは2つ以上の波長における試薬エレメントの、特に試薬エレメントを含む試薬エレメント領域の反射率値および試薬エレメントの少なくとも1つの蛍光の蛍光信号よりなる群から選ばれ得る。以下に、少なくとも1つの光学測定変数を、試薬エレメントを含む試薬エレメント領域の少なくとも1つの反射率値の形態で用いて本発明が説明される。
【0038】
少なくとも1つの光学的測定変数の時間推移は、異なる時点、すなわち、例えば2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の時点における少なくとも1つの光学測定変数の定量的検出および/または時間の関数としての光学測定変数の連続検出をいうものと理解されるべきである。例えば、判定された時間推移は、判定された試薬エレメントのそれぞれの光学測定変数が、これらの光学測定変数が判定された関連する測定時間に連続してまたは不連続に割り当てられる関数を含む。この割当ては、例えばテーブルおよび/またはマトリックスの形式でおよび/または連続関数の形式で行われてもよい。例えば、時間推移は、それぞれの光学測定変数がそれぞれの測定時間に割り当てられる曲線として判定されてもよい。時間推移は、特に揮発性および/または不揮発性データ記憶ユニットに記憶されてもよい。
【0039】
本発明の範囲内において、「時間」は通常、方法の進行を特徴づけることのできる任意の変数として理解される。例えば、この「時間」は、実際の時計に対応する実際の時間の単位、例えば秒で示し得る。代替的または付加的には、時間はまた、例えば方法に使用される測定ユニットの内部「時計」に対応する他の単位で示し得る。この「時計」は例えば時計周期の規則的シーケンスを備える。特にこの時間を特徴づけるために使用される少なくとも1つの変数は実際の時間および/または実際の時計の実時間の流れと直線的に相互に関連付けられてもよい。一般的には、時間は絶対時間として、例えば絶対時点として示し得る。代替的または付加的には、時間はまた相対的な基準として、例えば特定の出来事から始まる時間および/または開始時間として示し得る。
【0040】
少なくとも1つの光学測定変数の時間推移は、特にデータの量を含んでもよく、その中では前に提示されたように、光学測定変数が判定された少なくとも1つの光学測定変数の関連する測定時間に、それぞれの測定値が割り当てられる。
【0041】
この方法では、特に、少なくとも1つの光学測定変数の判定された時間推移が、光学測定変数の時間推移の少なくとも2つの時間間隔に区分されることが提案される。これらの少なくとも2つの時間間隔は特に全体としてまたは部分的に異なり、特に互いに独立しており、それによってこれらの少なくとも2つの時間間隔は、好ましくは重なり合わない。しかしながら、原則的には他の実施形態も可能である。本発明の範囲内において、時間間隔は測定時間の量をいうと一般的に理解され、その量は各々少なくとも1つの光学測定変数が判定される、それぞれ少なくとも2つの測定時間を含む。例えば時間間隔は、少なくとも2つの測定時間について無限の量を含む。代替的には、時間間隔はまた、別個の測定時間は含まれないが、光学測定変数が全体としてまたは部分的に連続して、時間間隔の間で判定され、最終的には測定時間の無限の量をもたらすような方法で割り付けられてもよい。様々な実施形態が可能である。特に測定時間の量は、閉鎖された、一端が閉鎖された、またはオープンである測定間隔を含む。
【0042】
さらに光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔が血液中の少なくとも1つの阻害変数を判定するために使用されることが提案される。さらに時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔が、検体の濃度を判定するために使用される。
【0043】
本発明の範囲内において、血液中の阻害変数は、検出される検体の濃度を除いて、血液の特性を構成する影響性変数をいうものと一般的に理解され、血液の特性は検体濃度の判定に影響を及ぼし得る。上に説明したように、阻害変数は、特に血液サンプルによって変わる影響性変数を構成する可能性があり、少なくとも1つの光学測定変数の検出および/または測定に影響する。代替的または付加的には、例えば、検出に関連する血液または血液成分中の1つまたは2つ以上の物質の拡散率が変数によって影響される場合、検出反応自身の過程に影響するのは影響性変数であり得る。特に少なくとも1つの阻害変数は血液中に含まれる少なくとも1つの阻害成分の濃度を含み得る。阻害成分は検出される検体の濃度を除いて、検体濃度の判定に影響する血液成分をいうものと一般的に理解される。しかしながら、好ましくは、この阻害成分は、検体を検出するための検出反応に関連しない少なくとも1つの成分であるべきである。
【0044】
特に、この阻害成分は、赤血球であってもよく、したがって、阻害変数は、特に血中のヘマトクリット濃度であってもよい。本発明の範囲内において、ヘマトクリットは、全血中の赤血球の画分であると一般的に理解される。特に、この画分は、全血中の赤血球の容積分率、例えば容積百分率であってもよい。しかしながら、代替的または付加的には、他の阻害成分および/または阻害変数が判定されてもよい。
【0045】
提案された方法では、光学測定変数の時間推移の第1時間間隔が、血中の少なくとも1つの阻害変数を判定するために使用されてもよい。特に、第1時間間隔の間に2つの異なる時点において判定された少なくとも2つの光学測定変数が、阻害変数のこの判定において使用されてもよい。以下にさらに詳細に説明されるように、湿潤に起因する急激な変化が、特に判定されてもよく、湿潤に起因する急激な変化は、例えば湿潤に起因する急激な変化の間の反射率の変化に基づいて阻害変数を判定するために使用されてもよい。
【0046】
第1時間間隔の間に光学測定変数の時間推移に基づいて阻害変数を判定するために、例えば第1時間間隔の間の光学測定変数の時間推移から、少なくとも1つの特性変数が判定されてもよい。前述のように、この特性変数は、例えば湿潤に起因する急激な変化の間の、または湿潤に起因する急激な変化のある部分の間の反射率の変化であってもよい。ここで、および以下において、反射率と反射率値の用語の間にさらなる区別はされない。代替的または付加的には、原則的にはまた他の特性変数が使用されてもよい。
【0047】
本発明の範囲内において、湿潤に起因する急激な変化は、試薬の血液への湿潤に起因する少なくとも1つの光学測定変数の変化をいうものと一般的に理解される。特に急激な変化は、少なくとも1つの光学測定変数が血液の試薬への湿潤によって少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、または少なくとも5%までも、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%までも変化するものであってもよい。湿潤に起因する急激な変化は、一般的に、血液による湿潤は、少なくとも1つの光学測定変数を、血液による試薬の湿潤前に記録された開始値から、血液による試薬の湿潤後の最終値に急激に変化させるものであってもよく、最終値に到達した後は、少なくとも1つの光学測定変数のさらなるゆるやかな変化が、例えば血液または血液成分の試薬エレメントとの反応によって起こってもよい。少なくとも1つの光学測定変数の急激な変化の発生は、湿潤に起因する急激な変化として特徴づけられ得る。最終値と開始値の間の差またはこの差の量はまた、それ自体本質的に湿潤に起因する急激な変化として特徴づけられてもよい。
【0048】
前述のように、少なくとも1つの光学測定変数の時間推移は、例えば第1時間間隔の間に判定される。第1時間間隔は、湿潤に起因する急激な変化が、全体としてまたは少なくとも部分的に第1時間間隔内にあるように選択されてもよい。
【0049】
湿潤に起因する急激な変化の開始は、また湿潤時点ともいわれるが、例えば光学測定変数またはその変化を少なくとも1つの閾値と比較することによって認識されてもよい。例えば光学測定変数は、少なくとも1つの第1波長で判定されてもよく、湿潤時点および/または湿潤に起因する急激な変化の開始は、血液がテストエレメントに適用され、テストエレメントの試薬エレメントに血液が到達し、血液によって試薬エレメントが湿潤された後の光学測定変数の主要な変化に基づいて判定されてもよい。例えば光学測定変数が、少なくとも1つの事前に設定された閾値に対応するかおよび/または事前に設定された閾値を超える時間的変化をする場合に湿潤に起因する急激な変化が始まったものとされてもよい。例えばかかる少なくとも1つの光学測定変数は、直ちにまたは処理された後に少なくとも1つの閾値と比較されてもよい。処理は、例えば、少なくとも1つの光学測定変数のフィルタリングおよび/または平滑化、例えば低減フィルタによるフィルタリングおよび/または事前に設定された時間間隔を通して平均をとるかおよび/またはデータを減らすことによる平滑化を含む。このように、例えば少なくとも1つの光学測定変数と少なくとも1つの事前に設定された閾値とを比較することにおいて、バックグラウンドノイズおよび/または短期間のアーチファクトを無視することができる。例えば試薬エレメントおよび/または試薬エレメントを含むテスト領域の反射率値が、光学測定変数として判定される場合、反射率が例えば1秒以内に1つの事前に設定された閾値を超えて、例えば0.1〜10%より大きく、特に1〜5%より大きく変化すると、湿潤時点が検出されてもよい。一般的に、湿潤時点を認識するための閾値は例えば0.1〜20%、特に1〜10%であり得る。より高い閾値などの他の閾値もまた、原則的には適当である。
【0050】
終了時点ともいわれる、湿潤に起因する急激な変化の終了が、例えば少なくとも1つの光学測定変数または時間的変化などの変化を少なくとも1つの閾値と比較することによって判定されてもよい。例えば、少なくとも1つの光学測定変数の時間的変化が、時間経過における、以前のより大きな変化の後に、さらなる事前設定された閾値に達するかまたはそれを超える場合に、湿潤に起因する急激な変化の終了に到達したとされてもよい。例えば、湿潤に起因する急激な変化の開始についての以前の認識後に、時間経過における反射率の変化が事前に設定された閾値未満に下がることが分かった場合、湿潤に起因する急激な変化の終了に到達したとされてもよい。例えば、1秒間に0.1〜10%、特に1〜5%の反射率の変化率が閾値として設定されてもよい。続いて起こるより緩やかな反射率の変化、すなわちより低い変化率で、依然として変化する可能性がある場合であっても、変化率が事前に設定された閾値未満に下がる時点が、終了時点として認識されてもよい。
【0051】
このような場合、例えば湿潤時点の反射率と終了時点の反射率との間の差は、湿潤に起因する急激な変化についての特徴的な変数として用いられてもよい。原則として湿潤に起因する急激な変化を示す他の特徴的な変数が、代替的または付加的に用いられてもよい。
【0052】
例えば、少なくとも1つの阻害変数を特徴的な変数から判定するために、特徴的な変数と阻害変数との間の事前に設定されたおよび/または判定可能な関係を用いてもよい。例えば、以下に例をあげて詳細に述べるように、湿潤に起因する急激な変化中の反射率の変化と、阻害変数、特に血中のヘマトクリットとの間の関係が、経験的に判定され、例えばデータ処理ユニットおよび/またはテストユニットのデータ記憶ユニットに保存されてもよい。このように、相互関係が簡略な測定によって決定されてもよく、ここで、阻害変数は、異なる方法、例えばヘマトクリットの標準的な検出によって判定され、それぞれに関連する特性変数が光学測定変数の時間推移の第1時間間隔から得られ、阻害変数のこの値に割り当てられる。このように、それぞれの特性変数が阻害変数に割り当てられる、例えばテーブル、特に電子的なテーブルが準備されてもよく、その逆も同様である。
【0053】
光学測定変数の時間推移の第1時間間隔からの1つまたは2つ以上の特徴的な変数に代えてまたは付加的に、光学測定変数の時間推移の第1時間間隔から特徴的な変数を判定する他の方法もまた可能である。例えば少なくとも1つのパターン認識方法を、時間推移の第1時間間隔を評価するために用いてもよい。このように、例えば光学測定変数の時間推移の第1時間間隔が、1つまたは2つ以上の比較パターンと比較されてもよく、この比較によって、例えば阻害変数が判定されてもよい。
【0054】
例えば、いくつかの比較パターンがテストユニットに保存され、ここで各比較パターンが、任意の阻害変数に、経験的測定に基づいて割り当てられる。これらの比較パターンは、例えば連続してまたは同時に、例えば1つまたは2つ以上の方法および/または当業者に一般的に公知のパターン比較方法によって、第1時間間隔における光学測定変数の時間推移と比較されてもよい。この比較の結果に従って、第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移に最も適した比較パターンが選択されてもよく、この比較パターンに対応する阻害変数が用いられてもよい。
【0055】
再度、第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移のパターン比較に代わってまたは付加的には、例えば第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移の分析評価が、この分析評価によって阻害変数を判定するために行われてもよい。例えば、適合される1つまたは2つ以上のパラメータを用いて、1つまたは2つ以上の適合関数(フィット関数)が事前設定されてもよく、この適合関数は、第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移に適合される。この目的のため、例えば最少二乗法が用いられてもよい。他の適合方法も考えられ得る。この方法によって決められた適合関数に従って、例えば、このように決められた1つまたは2つ以上の適合パラメータに基づいて、次に阻害が判定されてもよい。例えば1つまたは2つ以上の適合パラメータに対するそれぞれ関連する阻害変数が保存される1つまたは2つ以上のテーブルが事前設定されるかまたは判定可能であってもよい。例えば、湿潤に起因する急激な変化の間、第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移の適合が、オフセットを有してもよい指数関数を用いて行われてもよく、ヘマトクリット値および/または他の阻害変数が、指数関数の適合されたパラメータに基づいて決定されてもよい。他の種類の適合関数もまた用いてもよい。
【0056】
さらに、提案された方法では、上に述べたように、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔が、検出される検体の濃度を判定するために用いられる。この場合、第2時間間隔において、阻害変数を判定するために、第1時間間隔中に用いられた同じ光学測定変数の時間推移が観測される。特に第1時間間隔中に同じ波長で光学測定変数として判定される光学測定変数が用いられてもよい。しかしながら、通常は、第1時間間隔中および第2時間間隔中に、阻害変数を判定するためにおよび/または検体濃度を判定するために様々な方法もまた用いられる。第2時間間隔中に、光学測定変数の時間推移から検体濃度が判定される。この目的のため、第2時間間隔における光学測定変数の時間推移と検体濃度との事前に設定されたおよび/または公知のおよび/または判定可能な相関関係が用いられてもよい。この種の相関関係は、例えば分析的におよび/または経験的におよび/または半経験的に判定可能であってもよい。上に記載されたように、さらに、この相関関係は、例えば、第2時間間隔における光学測定変数の時間推移に基づいて、第2の特徴的な変数ともいわれる(阻害変数を判定するために用いられる上記の特徴的な変数に対比して)少なくとも1つの特徴的な変数が判定されるように存在していてもよい。この第2の特徴的な変数はまた、以下において「さらなる」特徴的な変数ともいわれる。用語「第2の」または「さらなる」特性変数は、この場合、第1の特徴的な変数が存在し、完全に明示して理解されるか否かにかかわらず用いられる。特にこの第2の特徴的な変数は、例えば第2時間間隔内の1つまたは2つ以上の事前設定された、事前に決定された、または少なくとも判定可能および/または所定の時点において判定された第2時間間隔中の少なくとも1つの光学測定変数であってもよい。代替的または付加的には、さらなる特徴的な変数はまた、光学測定変数の時間推移がもう変化していないかまたは本質的にもう変化していないときに、第2時間間隔内の少なくとも1つの測定時に判定された少なくとも1つの光学測定変数を含んでもよい。例えば第2時間間隔内の少なくとも1つの光学測定変数の時間推移がモニターされてもよく、光学測定変数の変化率が検出され得る。もし変化率、例えば光学測定変数の変化が事前に設定された閾値よりも低い事前設定された時間の範囲内に維持されていれば、光学測定変数の時間推移はもはや本質的に変化していないと決定されてもよい。例えばこれは、反射率の時間推移が仕様に応じて本質的にもはや変化しないように、相対的反射率が1秒間に0.1〜10%より大きく、特に1秒間に1〜5%より大きくは変化しない、例えば1秒間に2%以内であると予め決められてもよい。もしこの条件が満たされる場合、続いて検出された光学測定値が、例えば、さらなる特徴的な変数として用いられてもよい。このさらなる特徴的な変数は、次に例えばこの特徴的な変数、特に光学測定値を、対応する事前設定された、公知のまたは判定可能な相関関係によって、血中の検体濃度に変換することによって検体の濃度を判定するために用いてもよい。かかる変換方法は、原則的には例えば反射率値が既に従来の血中グルコースメータで対応するグルコース濃度に変換されているので、公知である。
【0057】
代替的または付加的には、第1時間間隔と同様に、他の方法が第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移を評価するために1つまたは2つ以上の特徴的な変数を使用することにおいて、考慮されてもよい。例えば第1時間間隔の上記の記載と同様に、1つまたは2つ以上のパターン比較および/または1つまたは2つ以上の適合関数の時間推移への適合が、第2時間間隔中に行われてもよい。検体濃度はまた、例えば保管された複数のパターンと比較することによって決められてもよく、および/または1つまたは2つ以上の適合関数のために判定された適合パラメータ、例えばオフセットを伴うおよび/またはオフセットを伴わない指数関数が、検体の濃度を判定するために用いられてもよい。第1時間間隔を評価する間の場合がそうであるように、第2時間間隔の評価中に、この目的のために方法において使用されるテストユニットの構成要素、例えばテストユニットの分析装置であるマイクロコンピュータなどのデータ処理ユニットを使用してもよい。
【0058】
先行技術から知られた上述した静的測定方法とは対照的に、試薬エレメントの光学測定変数の時間推移が判定され、少なくとも2つの時間間隔に区画され、阻害変数および検体濃度の両方が、異なる時間間隔にもかかわらず判定される本発明の方法が提案される。提案された方法は、特に、異なる時間間隔における阻害変数および検体濃度が光学測定変数の時間推移に影響するというしばしば観察される事実を考慮にいれてもよい。このように、阻害成分の濃度、特に血中ヘマトクリット値などの阻害変数は、通常主に反射率値の時間推移の第1時間間隔の最初の時期に、具体的には最初の湿潤に起因する急激な変化の形態で現れる。しかしながら、この最初の時間間隔において、ヘマトクリットおよび/またはその他の種類の阻害変数が、光学測定変数の時間推移から可変的に得られるとき、検体の濃度に関して結論を引き出すことのできる検出反応は、普通は完了しないか、または小程度しか完了せず、例えば可能な全反応変換の20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下しか起こらない。後の時点では、第2時間間隔中に、検出反応は好ましくは完了しているか、または大部分が完了し、例えば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%まで完了し、例えば光学測定変数は、光学的に検出可能な試薬エレメントを検出するために用いることができ、よって検体の濃度を判定するために用いることができる。
【0059】
例えば、第1時間間隔において、少なくとも1つの光学測定変数の変化は本質的に、物理的処理、例えば溶媒和処理および/または拡散処理に起因してもよい。このような事情なので、第1時間間隔は、例えば、この第1時間間隔の間には、試薬エレメントの変換は起こらないかまたはごくわずかしか起こらないか、および/または検出反応の経過が観察されないかまたはごくわずかしか観察されず、例えば5%以下の変換、好ましくは酵素的変換がないような方法で選択されてもよい。他方、第2時間間隔中において、少なくとも1つの光学測定変数は、本質的にまたは付加的に試薬エレメントの分析的検出反応によって判定されてもよい。この場合、例えば、酵素変換などの検出反応の経過は、血中のグルコースなどの検出される検体の濃度によって判定されてもよい。この場合、試薬エレメントおよび/または試薬エレメントの変換、例えば酵素的変換は、好ましくは上記の百分率よりもかなり高く、例えば5%よりも高く、および好ましくは急激に高くなるようにしてもよい。
【0060】
光学測定変数の時間推移の阻害変数および検体濃度によって異なって影響されるいくつかの時間間隔への時間的区分のこの実行可能性は、例えば阻害変数および検体濃度を1つのおよび同じ光学測定変数から判定することを可能にする。しかしながら、上記の先行技術におけるような、従来の統計的測定とは対照的に、光学測定変数の時間推移の評価は、装置の費用の低減を可能にし、阻害変数および検体濃度の判定における好ましい精度を可能にする。阻害変数および検体濃度の上述したスペクトル分離に代わってまたはそれに加えて、阻害変数および検体濃度の判定における時間的区分は、時間推移を第1時間間隔および第2時間間隔に区分することによって起こり得る。
【0061】
この観点において、一般的に、この区分が全体的にまたは部分的に行ってもよいことに留意すべきである。特に、第1時間間隔および第2時間間隔のそれぞれは、光学測定変数のそれぞれの測定値が割り当てられる連続した測定時間の集結した量を構成してもよい。第1時間間隔は特に、全体的にまたは部分的に第2時間間隔より前に設定されてもよい。第1時間間隔と第2時間間隔との間に時間的なギャップが設けられてもよい。しかしながら、代替的には、第1時間間隔および第2時間間隔は、少なくとも部分的に重なってもよい。さらに、第1時間間隔および第2時間間隔は、交互に、例えば時間的に互いに隣り合って設けられてもよい。
【0062】
第1時間間隔は、例えば測定の開始時、例えば方法を行うために使用されるテストユニットのスタートアップ時に始めてもよい。代わりに、第1時間間隔はまた、例えば全時間に亘って光学測定変数の急な変化を観察することによって、この急な変化の前には光学測定変数は略一定であるが、この急な変化を観察することによって、光学測定変数の経過の湿潤に起因する急激な変化の始まりが認識されるときに開始してもよい。例えば、湿潤に起因する急激な変化のこの始まりはまた、光学測定変数を閾値と比較することによって検出されてもよい。全時間に亘る光学的測定の変化が最初にこの閾値を超えるときに、湿潤に起因する急激な変化が始まったとされてもよく、それぞれの時点は、例えば第1時間間隔の開始時間として選択されてもよい。
【0063】
例えば、湿潤に起因する急激な変化の終了は、第1時間間隔の終了時間として用いられてもよい。光学測定変数の時間推移、例えば反射率は、通常湿潤に起因する急激な変化の終了時に屈曲を示し、これは、例えば時間推移の一次導関数の非連続部において認められ得る。この屈曲は、湿潤に起因する急激な変化の間、血液または血液成分で試薬エレメントを湿潤させることによって、光学測定変数が主に影響されるという事実により説明され得る。続いて、光学測定変数は次に、検出反応の経過およびそれによって引き起こされる試薬の光学的に検出可能な少なくとも1つの特性の変化に影響される。上述した屈曲点は、通常は、2つの領域間の移行時に形成される。したがって、さらに例えば光学測定変数および/または光学測定変数の時間推移の導関数を比較することによって、屈曲の時点を判定し、および例えばそれを第1時間間隔の終了時点として選択することが可能である。同時にこの屈曲が起こる時点は、第2時間間隔の開始時間として選択されてもよい。第2時間間隔の終了時点として、次に例えば上記の閾値条件に従って、例えば光学測定変数の時間推移がもはや変化しないかまたは本質的にもはや変化しない時点を選択してもよく、この閾値条件に従って、事前設定された時間間隔内において、光学測定変数は最大の事前設定された閾値または事前設定された閾値未満だけ変化してもよい。
【0064】
したがって、特に第1時間間隔および第2時間間隔の選択は、特に少なくとも1つのデータ処理ユニットを使用して行われ得る光学測定変数の時間推移の評価中に引き続いて行われてもよい。上記の方法は特に、容易に自動化され得て、それによって、例えば光学測定変数の時間推移の評価中に、湿潤に起因する急激な変化の開始の時点としての第1時間間隔の開始時間、第1時間間隔の終了時点および第2時間間隔の開始としての湿潤に起因する急激な変化の終了、および第2時間間隔の終了時点としての、光学測定変数が本質的にもはや変化しない時点を設定してもよい。
【0065】
光学測定変数の時間推移のこの区分が行われた後、例えばデータ処理ユニットを使用して、阻害変数および検体濃度が、例えば1つまたは2つ以上の上記のアルゴリズムに従って、第1時間間隔および第2時間間隔中の時間推移に基づいて、判定されてもよい。第1時間間隔中の特徴的な変数として、例えば第1時間間隔の開始時の光学測定変数と第1時間間隔の終了時の光学測定変数との差、すなわち、例えば第1時間間隔中の光学測定変数の変化を選択してもよい。血中の阻害変数、特にヘマトクリットを判定するための特徴的な変数のこの判定は、容易に自動化することができ、それによって、データ処理ユニットによって容易に行われ得る。光学測定の時間推移の第2時間間隔から検体濃度を判定するための第2の特徴的な変数の例として、前述のように、第2時間間隔の開始時間からの事前設定された時間ギャップを示すかおよび/または光学測定変数の時間推移が本質的にもはや変化しない時点における光学測定変数を用いてもよい。
【0066】
提案された方法は、様々な方法で有利に展開されてもよい。上記のように、第1時間間隔が特に、光学測定変数の時間推移の最初の時間間隔であってもよい。この最初の時間間隔は、血液のテストエレメントへの適用からおよび/またはテストユニットをつけることからおよび/または時間推移中に湿潤に起因する急激な変化の開始を認識することから始まってもよい。その他の開始時間も可能である。第2時間間隔は特に、第1時間間隔に引き続いて起こってもよい。
【0067】
第1時間間隔における光学測定変数の時間推移は、具体的には、上に何度も述べたように、光学測定変数の湿潤に起因する急激な変化を含む。本発明の範囲内において、湿潤に起因する急激な変化は、試薬または試薬の複数の部分を血液または血液成分で湿潤させることによって引き起こされる光学測定の時間的変化をいうものと理解される。試薬エレメントの少なくとも1つの特性の光学的に検出可能な変化に至る検出反応が、原則的には、試薬エレメントを血液または血液成分で湿潤させた後にのみ起こり得るので、湿潤に起因する急激な変化中の光学測定変数の変化は通常は、検体濃度とは独立している。湿潤に起因する急激な変化は通常、概して乾燥試薬エレメントが血液または血液成分で湿潤された試薬エレメント、すなわち「湿潤」試薬エレメントとは異なる湿潤に起因する急激な変化の値を示すという事実にのみ依るものである。湿潤は通常、阻害変数、特にヘマトクリット値に強く影響されるので、上に述べたように、典型的には、湿潤に起因する急激な変化に基づいて阻害変数、および特にヘマトクリット値を少なくともおよび/または少なくともおおよそ判定することが可能である。上に述べたように、湿潤に起因する急激な変化は、特に、試薬エレメントが血液または血液成分で湿潤されることによって、特に光学的に検出可能な検出反応がかなりの程度にまで達成される前に引き起こされ得る。
【0068】
上に説明したように、第1時間間隔および第2時間間隔中の少なくとも1つの光学測定変数およびその時間推移は、特に同じ波長で判定されてもよい。一般的に光学測定変数は例えば少なくとも1つの第1の波長で判定されてもよく、湿潤時点および/または湿潤に起因する急激な変化の開始は、血液がテストエレメントに適用され、血液がテストエレメントの試薬エレメントに達し、試薬エレメントが湿潤した後に光学測定変数の主要な変化から判定されてもよい。光学測定変数の主要な変化は、例えば少なくとも1つの事前に設定された閾値に対応し、および/または1つの事前に設定された閾値を超える変化をいうものと理解されてもよい。少なくとも1つの光学測定変数は、例えば、直接にまたは少なくとも1つの事前に設定された閾値への処理工程の後に比較されてもよい。例えば処理工程は、少なくとも1つの光学測定変数のフィルタリングおよび/または平滑化、例えば低減フィルタによるフィルタリングおよび/または事前に設定された時間間隔を通して平均をとるかおよび/またはデータを減らすことによる平滑化を含む。このように、例えば少なくとも1つの光学測定変数と少なくとも1つの事前に設定された閾値とを比較することにおいて、バックグラウンドノイズおよび/または短期間のアーチファクトを無視することができる。例えば試薬エレメントおよび/または試薬エレメントを含むテスト領域の反射率値が、光学測定変数として判定される場合、7〜8%などの例えば0.1〜10%の反射率変化の閾値が事前設定されてもよい。したがって、例えば、第1の波長での反射率の変化がこの閾値を超える場合、本方法では、試薬エレメントが血液で湿潤されたということ、すなわち湿潤時点を判定するというようにしてもよいし、湿潤に起因する急激な変化が始まったというようにしてもよい。
【0069】
上記のように、湿潤時点、したがって湿潤に起因する変化の開始は、特にこのように判定されてもよい。具体的には、上に述べたように、この時点は第1時間間隔の開始時間として選択されてもよい。第1時間間隔および第2時間間隔は、少なくとも部分的に湿潤時点に引き続いて起こってもよい。特に好ましい実施形態において、第1時間間隔における光学測定変数は少なくとも1つの第2の波長で第2時間間隔と共に判定されてもよく、好ましくは第2の波長は第1の波長と同じであってもよい。
【0070】
特に、上に述べたように、光学測定変数は、試薬エレメント上の、特に試薬エレメントを含むテスト領域のテスト領域上の反射率測定および/または拡散反射によって検出される測定変数であってもよい。したがって、光学測定変数は、特に1つまたは2つ以上の波長で判定され得る試薬エレメントの少なくとも1つの反射率値を含んでもよい。
【0071】
特に第1時間間隔および第2時間間隔における光学測定変数を検出するために、試薬エレメントには、少なくとも1つの問合せ光源を用いて少なくとも1つの問合せ光線がそれぞれ照射されてもよい。さらに、試薬エレメントによって放射された少なくとも1つの応答光線が、少なくとも1つの検出器によってそれぞれ判定されてもよい。具体的には、第1時間間隔において、例えば試薬エレメントは、少なくとも1つの第1問合せ光源によって放射された少なくとも1つの第1問合せ光線を照射されてもよく、試薬エレメントによって放射された少なくとも1つの第1応答光線が、少なくとも1つの第1の検出器によって判定されてもよい。同様に、第2の時間間隔中に、試薬エレメントは、少なくとも1つの第2問合せ光源によって放射された少なくとも1つの第2問合せ光線を照射されてもよく、試薬エレメントからの少なくとも1つの第2の応答光線が、少なくとも1つの第2の検出器によって判定されてもよい。この場合、第1問合せ光源は、第2問合せ光源と同じかまたは異なっていてもよい。問合せ光線および応答光線は、第1時間間隔および第2時間間隔のそれぞれにおいて、同じ波長および/または異なる波長を示す。具体的には、第1時間間隔中の第1問合せ光線は、第1時間間隔中の第1の応答光線と同じ波長を示してもよい。さらに、第2時間間隔中に、第2問合せ光線は、第2の応答光線と同じ波長を有していてもよい。さらに、第1問合せ光線および第2問合せ光線は、同じ波長または異なる波長を有していてもよい。さらに、第1の応答光線および第2の応答光線はまた、同じ波長または異なる波長を有していてもよい。
【0072】
特に好ましい実施形態において、第1時間間隔および第2時間間隔における問合せ光線は、同じ波長および/または同じスペクトル特性を示す。これは特に、第1時間間隔および第2時間間隔中の光学測定値が同じ波長または同じ複数の波長で判定されることを意味する。例えば、第1時間間隔および第2時間間隔中の問合せ光線が、同じ光源、例えば1つまたは2つ以上の発光ダイオードによって生成されてもよい。さらに、応答光線は、第1時間間隔および第2時間間隔において同じ波長および/または同じスペクトル特性を示す。スペクトル特性という用語は、特に、スペクトル成分および/または応答光線の強度に応じた強度の経過をいい、これは標準化されてもよく、または相対強度経過として判定され得る。具体的には、第1時間間隔および第2時間間隔における応答光線は、原則としてそれらの強度および/または振幅において異なってもよいが、第1時間間隔および第2時間間隔における応答光線のスペクトル成分および/または標準化された応答光線のスペクトルは、好ましくは同じであるか、または例えば(例えば、相関関数によって確かめられた)20%以下、および特に10%以下のずれを示す。特には、第1時間間隔および第2時間間隔における少なくとも1つの光学特性の検出はまた、同じ波長でおよび/または同じ波長範囲内で行われてもよい。特には、第1時間間隔および第2時間間隔における応答光線の検出は、同じ検出器によって行われてもよい。
【0073】
上に説明したように、第1時間間隔および/または第2時間間隔における応答光線はそれぞれ、試薬エレメント上の問合せ光線の反射および/または拡散によって形成される。しかしながら、その他の検出方法、例えば蛍光測定も、上に述べたように原則的には可能である。
【0074】
第1時間間隔および/または第2時間間隔における問合せ光線は、635nm、660nm、770nm、815nmおよび880nmよりなる群から選択された波長を有する。しかしながら、その他の波長も原則的には使用することができる。特には、上記の波長は、中心波長および/またはピーク波長などの、問合せ光線のスペクトルにおけるものであってもよい。さらに、狭帯域光線、例えば50nm以下、好ましくは40nm以下、特に好ましくは30nm以下、さらに20nm以下、または10nm以下のスペクトル半値全幅(FWHM)を有するものが問合せ光線として用いられてもよい。これらの問合せ光線に関しては、例えば5〜60nm、特には10〜20nmのFWHMの光源からの光線、特には上記のスペクトル特性を有する発光ダイオードを用いてもよい。
【0075】
提案された方法のさらなる実施形態では、特に、阻害変数を判定することが可能であるだけではなく、阻害変数を考慮することによって、検体濃度を判定することも可能であることを考慮に入れる。例えば阻害変数、具体的にはヘマトクリットによって、少なくとも1つの補正が、例えば補正関数および/または補正係数および/または補正オフセットが判定され得て、補正された検体濃度は、補正を考慮に入れて第2時間間隔から判定される。この場合補正された検体濃度は、実際の検体濃度の判定に引き続いてまたはそれと同時に判定され得る。具体的には、例えば、検体の未処理の濃度が、第2時間間隔中に光学測定変数の時間推移から判定されてもよく、次に阻害について判定された補正を用いて補正される。しかしながら、代替的または付加的には、補正は、第2時間間隔の評価中に既に考慮に入れられてもよい。したがって、特には、補正を考慮に入れることによって、補正された検体濃度は、第2時間間隔中に光学測定変数の時間推移から直接的に得られ得る。これは、例えば、第2時間間隔中に光学測定変数の時間推移から「第2の」特徴的な変数を得ることによって行われてもよく、次に既知のまたは判定可能な補正を用いて補正された検体濃度に変換され、ここで、前もって判定された阻害変数は補正に組み込まれる。その他の実施形態および/または補正された検体濃度の判定において阻害変数を考慮に入れた上記の実施形態の組み合わせが考えられ得る。
【0076】
これに関連して、一般的には、「補正」という用語は、特に、阻害変数による干渉の程度が異なるにもかかわらず、本発明によって判定される検体濃度がそれでも比較可能となるような方法で、第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移から検体濃度を判定する際に、少なくとも1つの阻害変数の影響を減らし、最小化し、または完全に除去する任意の操作、特には数学的操作をいうものと理解されるべきである。特に、補正は、阻害変数の値が急激に異なる場合でさえ、実際の検体濃度が同じならば、第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移から本質的に同じ検体濃度を得ることを可能にする。「本質的に同じ」という用語は、例えば、このように判定された検体濃度のずれが10%以下、特には5%以下を示すものと理解されてもよい。例えば、補正は、1つのおよび同じ実際の検体濃度で、特に1つのおよび同じ実際のグルコース濃度で、ヘマトクリットの差が10%あるが、補正された検体濃度、特には補正されたグルコース濃度が相互に10%以下、特には5%以下だけずれるような方法で行われてもよい。
【0077】
特に、補正は、補正された検体濃度が、阻害変数が測定時点で事前に設定された値であったならば測定されていたであろう理論検体濃度に対応するように行うことができる。例えば、補正は、検体濃度が阻害変数の基準値における検体濃度に変換されるように、阻害変数の所定の基準値が事前に設定されてもよい。例えば、補正された検体濃度は、43%ヘマトクリットの基準値での検体濃度となってもよい。
【0078】
さらに、補正は、一般的に、例えば、相関関係および/またはテーブルおよび/またはその他の形態で、例えばテストユニットに、好ましくはテストユニットの分析装置に、特に好ましくはデータ記憶ユニットに、および/またはテストユニットの分析装置のデータ処理ユニットに保存されてもよい。例えば、補正は、以前に判定された阻害変数の連続関数であってもよく、および/または判定された阻害変数に対応する例えばテーブル、特に電子テーブル内の、点別の割り当てによって判定されてもよい、1つまたは2つ以上の補正関数および/または1つまたは2つ以上の補正係数および/または1つまたは2つ以上の補正オフセットの形態で保存されてもよい。例えば、補正オフセットは、阻害変数の検体濃度へのおよび/または光学測定変数へのエラー要因、例えば加算または減算要因として理解されてもよい。
【0079】
最初に少なくとも1つの阻害変数の判定が、例えば第1時間間隔中の光学測定変数の時間推移に基づいて行われてもよい。この後、阻害変数、例えばヘマトクリット値に応じて、行われる補正の種類を、具体的には、補正係数および/または補正オフセットおよび/または補正関数を用いて、例えば関連する阻害変数に割り当てられた補正係数および/または補正オフセットをテーブルおよび/またはリストから選択することによって選んでもよい。さらに、上記の方法に従って、第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移から、未処理の検体濃度を判定してもよい。未処理の検体濃度は、次に補正係数を用いて処理されてもよい。可能な方法としては、未処理の検体濃度に補正係数を掛けることおよび/または補正された検体濃度が判定され得るように、未処理の検体濃度をオフセットの量だけ増やしたりまたは減らしたりすることを含む。代替的または付加的には、上記のように、補正は、第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移の評価時に直ちに行われてもよい。例えば最初に阻害変数から第1時間間隔を確定してもよい。次に、例えばリストから選択することによって、補正が選択されてもよく、それによって第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移から検体濃度が判定されてもよく、ここで、相互関係は既に阻害変数を考慮に入れており、したがって、この方法によって得られた検体濃度は既に補正された検体濃度である。第2時間間隔中に、上記のように、1つまたは2つ以上の反射率値が、例えば検出反応の終了時点で判定されてもよい。この少なくとも1つの反射率値は、ヘマトクリット値を考慮に入れながら、補正された検体濃度に直接変換されてもよい。
【0080】
上記のように、補正は事前に判定されてもよく、および/または判定可能であってもよく、例えばテストユニットに保存されてもよい。特に、経験的または半経験的な方法が補正の判定のために用いられてもよい。具体的には、例えば、対応する補正係数および/または補正オフセットおよび/またはその他の種類の補正関数が判定されることにより、一連の測定が行われてもよい。これらの一連の実験は、例えば、同じ実際の検体濃度、例えば、同じ実際のグルコース濃度を有するが、異なるヘマトクリット値を示す血液サンプルが生成されるように構成されてもよい。個別のサンプルのそれぞれのヘマトクリット値は、例えば、公知の遠心分離方法によって独立して判定されてもよい。他の種類の阻害変数の判定が望まれる場合は、これらの阻害変数は、概して独立した検出方法によってそれぞれ判定してもよい。それぞれのテストストリップは、次に検体濃度の未処理の値を判定するために用いられてもよく、補正係数および/または補正オフセットは、未処理の検体濃度を実際の検体濃度に変換するために、一連の測定の各阻害変数、例えば各ヘマトクリット値について判定してもよい。この校正またはゲージングは、経験的または半経験的な方法で対応する補正を判定するための多数の経験的可能性のうちの一つを構成する。阻害変数に影響を与える理論的方法がまた、原則的には補正を判定するために用いられてもよい。この方法によって至った経験的または半経験的に判定された補正は、テーブルおよび/またはマトリックスおよび/またはリストに、例えばデータ記憶ユニットおよび/またはテストユニットの分析装置のデータ処理ユニットに保存されてもよい。例えば、データ記憶ユニットは、揮発性および/または不揮発性データ記憶ユニットを含んでもよい。具体的には、データ記憶ユニットはEEPROMを含んでもよい。代替的または付加的には、データ記憶ユニットおよび/またはテストユニットの分析装置のデータ処理ユニットに補正を保存するために、1つまたは2つ以上の上記の補正もまた、例えば少なくとも1つのインターフェース、例えば固定配線形および/または無線インターフェースを用いてテストユニットを介して読み込まれてもよい。1つまたは2つ以上の補正もまた、外部ユニットおよび/または外部データ記憶ユニットに記憶され、テストユニットに移送されてもよい。例えば、少なくとも1つのいわゆるROMキーが、1つまたは2つ以上の補正を記憶された形態で含み、データ搬送のためのテストユニットのインターフェースに接続可能な外部データ記憶ユニットとして用いられてもよい。代替的または付加的には、1つまたは2つ以上の補正はまた、例えば外部データ記憶ユニットとしてのRFIDチップに記憶されてもよく、それによって例えば少なくとも1つの補正が無線によってテストユニットに搬送され得る。さらに、代替的または付加的には、少なくとも1つのデータ搬送ネットワークが、少なくとも1つの補正をテストユニット、例えばインターネットおよび/または無線電気通信ネットワークなどの固定配線形および/または無線搬送ネットワークに搬送するために用いられてもよい。
【0081】
上に説明されたように、補正は、具体的には阻害変数に関する光学測定変数の依存性、特には試薬エレメントの反射率値とヘマトクリット値との相関関係を含んでもよい。その他の実施形態も可能である。
【0082】
さらなる可能な実施形態は、特に第2時間間隔中の光学測定変数の時間推移から検体の濃度を判定することに関する。上記のように、少なくとも1つの「第2の」特徴的な変数、特にはそれから検体濃度が判定され得る特徴的な変数は、この目的のために時間推移から導き出されてもよい。具体的には、上に述べたように、第2時間間隔における光学測定変数の変化が判定されてもよく、検体濃度の判定のために、最終時点ともいわれ得る、検出反応が実質的に完了する時点の光学測定変数を用いる。特に光学測定変数が判定され、検体の濃度を判定するために用いられる時点は、その時点において、光学測定変数の時間的変化が事前に設定された閾値未満であるように選択されてもよい。
【0083】
本発明の方法のさらなる可能な実施形態は、好ましいテストエレメントの使用に関する。特に方法は、血液がテストエレメントの少なくとも1つのサンプル受取位置に適用されるように行われてもよい。この受取位置は試薬エレメントに直接設けられてもよく、または試薬エレメントから、例えば少なくとも1mm、特には少なくとも2mmおよび例えば3〜10mmの距離に設けられてもよい。特に、サンプル受取位置が試薬エレメントから距離をおいて設けられる場合、血液または血液成分はサンプル受取位置から試薬エレメントまで移送されてもよい。テストエレメントの構成要素またはテストエレメントと共に操作されるテストユニットの構成要素であってもよい少なくとも1つの移送エレメントが、この目的のために使用し得る。移送エレメントは、テストエレメントの構成要素であってもよく、毛管力によって血液または血液成分を少なくとも1つのサンプル受取位置から試薬エレメント、例えば試薬エレメントを含む試薬エレメント領域へ移送するように構成された少なくとも1つの毛管エレメントを有することが特に好ましい。
【0084】
さらに、方法は、血液または血液成分がサンプル受取位置と試薬エレメントとの間の通路上を少なくとも1つの分離エレメントを経由して通るように行われてもよく、少なくとも1つの血液成分が分離エレメント内において分離されてもよい。この少なくとも1つの分離エレメントは、例えば、少なくとも1つの分離層および/または少なくとも1つのシーブおよび/または少なくとも1つのファブリックおよび/または少なくとも1つの不織布を備えていてもよい。少なくとも1つの分離エレメントはまた、特に試薬エレメントを備えていてもよい層構造の要素であってもよい。例えば、テストエレメントは、少なくとも1つの分離エレメントおよび少なくとも1つの試薬エレメント層を備える層構造を有する試薬エレメント領域を含んでもよい。例えば、少なくとも1つの分離エレメントは、分離層として構成されてもよく、サンプル受取位置から試薬エレメント層への通路上の血液および/または血液成分は、最初に少なくとも1つの分離エレメント層を通過しなければならない。かかる分離エレメントは通常テストエレメントに関する先行技術、例えば上記の先行技術から公知である。特に分離エレメントは、試薬エレメントに接触している少なくとも1つの分離層を備えていてもよい。
【0085】
特に、上に述べたように、少なくとも1つの毛管エレメントが、サンプル受取位置と試薬エレメントとの間に設けられてもよい。特に、この毛管エレメントは、毛管ギャップを備えていてもよい。毛管エレメントは、特に、少なくとも0.5mm、特に好ましくは少なくとも5mm、例えば5〜50mm、特に10〜20mmの長さを有していてもよい。その他の実施形態も可能である。
【0086】
特に、上記の実施形態または以下にさらに詳細に説明する実施形態の1つまたは2つ以上において、本発明の方法は、全体としてまたは部分的にコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/またはコンピュータプログラムを用いて行われてもよい。具体的には、本発明のさらなる実施形態は、コンピュータまたはプロセッサまたはコンピュータネットワークの動作メモリに搭載された後に全体としてまたは部分的に本発明の方法を行うように構成されたコンピュータプログラムを提案する。特に試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移の検出は、コンピュータによる実施またはコンピュータによるサポートに基づいて全体としてまたは部分的に行われてもよい。代替的または付加的には、血液中の少なくとも1つの阻害変数が光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔から判定される処理ステップは、全体としてまたは部分的にコンピュータによる実施またはコンピュータによるサポートに基づいて行われてもよい。さらに、代替的または付加的には、検体の濃度が時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔から判定される処理ステップは、全体としてまたは部分的にコンピュータによる実施またはコンピュータによるサポートに基づいて行われてもよい。代替的または付加的には、また上記の処理ステップおよび/またはその他の処理ステップの組み合わせが、コンピュータプログラムによって行われてもよい。
【0087】
特に、提案されたコンピュータプログラムは、以下により詳細に述べられた装置の分析装置で動作されてもよい。それに応じて、評価装置が、提案されたコンピュータプログラムを動作するようにプログラム可能に構成されてもよい。例えば、評価装置は、コンピュータプログラムが評価装置またはデータ処理ユニットに搭載されている場合、コンピュータプログラムを動作させるための少なくとも1つのデータ処理ユニットを備えていてもよい。データ処理ユニットは、例えば、マイクロプロセッサを備えていてもよい。評価装置で動作させることに代わってまたは付加的には、コンピュータプログラムはまた、その他の種類のコンピュータまたはコンピュータネットワークで全体としてまたは部分的に動作するようにしてもよい。例えば、これは、医師のコンピュータおよび/または患者のコンピュータであってもよい。評価はまた、全体としてまたは部分的に測定と分離されるような方法で行われてもよい。具体的には、例えば、測定データ、すなわち特に少なくとも1つの光学測定変数の時間推移が、コンピュータ、例えばコンピュータの揮発性または不揮発性記憶装置にロードされてもよい。評価は、続いてまたは同時に提案されたコンピュータプログラムを動作させることにより行われてもよい。
【0088】
さらなる実施形態において、データ記憶手段が提案される。例えば、プログラム構造が記憶された揮発性または不揮発性データ記憶手段であって、それによって、プログラム構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークの動作メモリにロードされた後に本発明の方法またはその一部がコンピュータまたはコンピュータネットワークによって行われてもよい揮発性または不揮発性データ記憶手段が提案される。
【0089】
さらなる実施形態において、コンピュータまたはコンピュータネットワークが提案される。これは、上記の実施形態または以下にさらに詳細に説明する実施形態の1つまたは2つ以上において、提案された方法、例えば上記の処理ステップを全体としてまたは部分的に行うように構成されている。例えば、コンピュータまたはコンピュータネットワークは、方法またはその一部を行うための少なくとも1つのマイクロプロセッサを備えていてもよい。
【0090】
本発明のさらなる実施形態において、上に述べたように、血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定するための装置が提案される。具体的には、上に述べたように、装置は、示された変形例または以下に詳細に提供される変形例の1つまたは2つ以上において、本発明の方法を行うように構成される。この場合、処理ステップはまた、個々に行われてもよい。したがって、装置は、上記の処理ステップのすべてまたはいくつかを行うためのまたはそれらを個々に行うための対応する装置を備えていてもよい。
【0091】
装置は、少なくとも1つのテストエレメントを備え、テストエレメントは、少なくとも1つの試薬エレメントを備える。試薬エレメントは、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成される。テストエレメント、試薬エレメント、および血液の適用の可能な実施形態に関して、上記の記載が参照される。
【0092】
装置はまた、少なくとも1つの光学検出装置を備える。光学検出装置は、試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移を判定するように構成される。光学検出装置は、通常、いくつかの時点において、連続してまたは断続的に少なくとも1つの光学測定変数、例えば、上記記載の少なくとも1つの光学測定変数を判定し、好ましくはこれらの変数を例えばデータ記憶ユニットに記憶する装置をいうものと理解される。この目的のために、以下にさらに詳細に説明されるように、光学検出装置は、例えば、試薬エレメントへの照射および/または照明のための1つまたは2つ以上の光源を備えていてもよい。例えば1つまたは2つ以上の光源は、少なくとも1つの半導体光源、例えば少なくとも1つの発光ダイオードおよび/または少なくとも1つのレーザーダイオードを備えていてもよい。さらに光学検出装置は、代替的または付加的には、試薬エレメントによって照射される少なくとも1つの光の検出のための少なくとも1つの検出器、および好ましくは少なくとも1つの半導体検出器、例えば少なくとも1つのフォトダイオードを備えていてもよい。検出装置はまた、さらなるエレメント、例えば少なくとも1つの光学エレメント、例えば少なくとも1つのレンズおよび/または少なくとも1つのミラーなどの少なくとも1つの検出エレメントおよび/または少なくとも1つのプリズムを備えていてもよい。さらに、検出装置は、1つまたは2つ以上の電子要素、例えば少なくとも1つの任意の光源および/または少なくとも1つの任意の検出器の作動および/または評価のためのおよび/または少なくとも1つの任意の検出器の信号の記憶および/または処理のための電子要素を備えていてもよい。
【0093】
装置はさらに、少なくとも1つの評価装置を備える。評価装置は、血液中の少なくとも1つの阻害変数、特に血中ヘマトクリットを、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔から判定するように構成される。評価装置はまた、時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔から検体の濃度を判定するように構成される。第1時間間隔からの阻害変数および第2時間間隔からの検体の濃度を判定するために用いられてもよい方法に関しては、例えば上記の記載または好ましい例示的な実施形態の以下の記載が参照されてもよい。評価装置は、特に1つまたは2つ以上の電子要素、例えばマイクロコンピュータなどの少なくとも1つのデータ処理ユニットを含んでいてもよい。データ処理ユニットは、特に、例えば方法の上記の工程の1つまたは2つ以上を行うようにプログラム可能に構成されていてもよい。このように、データ処理ユニットは、上記実施形態の1つまたは2つ以上において方法を実施するためのプログラムコードを用いて、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔から血中の少なくとも1つの阻害変数を判定するように構成されてもよい。さらに、データ処理ユニットは、プログラムコードによって、例えば同じプログラムコードによって、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔から検体の濃度を判定するようにプログラム可能に構成されてもよい。データ処理ユニットはさらに、少なくとも1つの揮発性および/または不揮発性データ記憶ユニットを含んでいてもよい。このデータ記憶ユニットでは、例えば検体の濃度が記憶されてもよく、および/またはデータベースがデータ記憶ユニットに保存されてもよい。さらに、例えば、第1時間間隔および/または第2時間間隔における光学測定変数の時間推移を評価するための比較パターンおよび/または比較曲線が、例えば上記のパターン比較ステップまたは評価ステップの1つまたは2つ以上を行うために、データ記憶ユニットに保存されてもよい。さらに、補正テーブルなどの1つまたは2つ以上補正が、例えば上記の記載に従って、血中の特定された阻害変数に従って任意に検体濃度の補正を行うためにデータ記憶ユニットに保存されてもよい。
【0094】
検出装置および/または評価装置は、特に装置のテストユニットの構成要素であってもよい。具体的には、装置は、少なくとも1つのテストエレメントと共に操作されてもよいテストユニットを備えてもよく、好ましくは検出装置および評価化装置を備える。テストエレメントと共に操作するために、テストユニットは、例えば、血液がテストエレメントに適用され得る適用位置にテストエレメントを運ぶように構成されるテストエレメントホルダおよび/またはテストエレメントアプリケータを有していてもよい。代替的または付加的には、血液の適用はまた、テストユニットから分離されたテストエレメントで行われてもよい。混合型の構成も考えられ得る。例えば、テストエレメントが、例えばテストユニットを作動し、1つまたは2つ以上のブランク値測定および/または校正測定を任意に行うために、最初にテストユニットに接続され、テストエレメントが、血液サンプルを適用するために再度テストユニットから分離され、次に適用された血液を有するテストエレメントが、テストユニットに再接続される。
【0095】
テストユニットは、単一テストエレメントのテストユニットとして構成されてもよく、例えば、テストエレメントは個々に連続して接続され、および例えば、外部からテストユニットのテストストリップホルダにテストエレメントを連続して挿入することによってテストユニットに手動で接続されてもよい。代替的には、テストユニットはまた、多数のテストエレメントのテストユニットとして構成されてもよく、例えば、テストユニットは、テストエレメントマガジンを有し、そこから複数のテストエレメントが連続して、ひとつずつ準備されてもよい。1つまたは2つ以上の試薬エレメント領域のそれぞれが任意に各テストユニットに設けられている、テストストリップ、テストバンド、テストスワブ、テストディスクまたはその他の形態としてのテストエレメントの可能な実施形態にしたがって、マガジンはまた、例えば、テストストリップマガジン(段積みマガジンなど)として、テープカセットとして、プレートマガジンとして、またはその他のいくつかの形態で構成されてもよい。マガジンとテストエレメントおよび同様にテストユニットのかかる実施形態は、通常当業者には公知である。したがって、光学測定変数の時間推移の提案された検出、および少なくとも1つの阻害変数を判定するための時間推移の第1時間間隔と検体の濃度を判定するための時間推移の第2時間間隔の評価はまた、例えば、分析装置のプログラム変更によって既存のテストユニットに統合されてもよい。
【0096】
上に示されたように、装置は、特に本発明の提案された実施形態の1つまたは2つ以上の方法にしたがって行われるために構成されてもよい。示されるように、これは、具体的には、少なくとも1つの評価装置の少なくとも1つのデータ処理ユニットのプログラム変更によって実施されてもよい。
【0097】
また上記のように、検出装置は、少なくとも1つの検出器および/または少なくとも1つの光源を備えてもよい。例えば、検出装置は、少なくとも1つの問合せ光線を試薬エレメントに照射するための少なくとも1つの問合せ光源を備えてもよい。問合せ光線は、通常それによって試薬エレメントが照射されてもよく、試薬エレメントから任意の応答を引き出すのに最適の光線をいうものと理解される。この応答は、例えば、問合せ光線の反射および/または問合せ光線の散乱および/またはその他の光線の再放射および/または放射が続いておこる問合せ光線の完全なまたは部分的な吸収からなってもよい。問合せ光源は、特に半導体光源、例えば少なくとも1つの発光ダイオード、好ましくは紫外および/または可視および/または赤外スペクトル領域の光の照射のための発光ダイオードを含んでもよい。上に説明したように、問合せ光線の波長は、635nm、660nm、770nm、815nmおよび880nmよりなる群から選択されてもよい。しかしながら、原則的には、多数の波長が可能である。
【0098】
さらに、検出装置は、好ましくは試薬エレメントから照射される少なくとも1つの応答光線を検出するための少なくとも1つの検出器を備えてもよい。応答光線は、通常問合せ光線に応答して、試薬エレメントの1つから、例えば試薬エレメントを含む試薬エレメント領域から照射される光線をいうものと理解される。この照射は、例えば蛍光および/または燐光の処理において、例えば試薬エレメントの1つまたは2つ以上の分子による応答光線の光子の直接の照射によって試薬エレメントから直接由来し得る。代替的または付加的には、応答光線はまた、反射または散乱問合せ光線のみを含むように試薬エレメントからも由来し得る。この種の照射もまた、「由来」という用語に含められるものである。特に応答光線はこのように、試薬エレメントによって反射されたまたは広く散乱した問合せ光線からの光線を含み得る。
【0099】
さらなる可能な実施形態は、テストエレメントの実施形態に関する。特に上述のように、テストエレメントは、テストストリップであってもよい。この場合、例えば、個々のテストストリップを有する装置および数個のテストストリップを有する装置の両方が使用され得る。装置は、特に少なくとも1つのテストストリップホルダ、具体的にはテストストリップを保持するように構成された機械的装置を有する。この場合、テストストリップホルダ内の少なくとも1つのテストストリップが適用位置まで移動させられてもよく、適用位置では、血液を適用するユーザはテストストリップの少なくとも1つの適用部にアクセス可能である。少なくとも1つのテストストリップは、テストストリップホルダ内に置かれ、例えばテストユニットの外側から、例えばユーザが手動で、具体的にはテストストリップをホルダのテストストリップスロットにスライドさせることによって外部から適用位置に移動させられてもよい。代替的または付加的には、テストストリップはまた、テストストリップホルダ内に置かれ、装置のテストユニット内のスペースからおよび/または例えばテストユニットの構成要素であってもよいマガジンから適用位置に移動させられてもよい。
【0100】
テストストリップは、好ましくは血液または血液成分を適用部から試薬エレメントに搬送するための少なくとも1つの毛管エレメントを有する。例えば、毛管エレメントは、1mm未満の横断面、特に50〜1000μmの横断面を有していてもよい。毛管エレメントはまた、例えば1mm未満、特に200μm未満の直径または相当直径の正方形、多角形または円形断面を有する毛管チャネルを有していてもよい。正方形の断面を有する毛管は、例えば1.5mm×75μmの辺寸法または0.5mm×50μmなどのより小さい寸法で用いられてもよい。
【0101】
特に血液から少なくとも1つの血液成分を分離するための少なくとも1つの分離エレメントが、毛管エレメントと試薬エレメントとの間に配置されてもよい。分離エレメントの可能な実施形態に関しては、特に上記の記載が参照されてもよい。特に分離エレメントは、少なくとも1つの分離層を備えていてもよい。例えば毛管チャネルは、エッジおよび/または分離層の面に対して開口され、血液または血液成分を該当部位に搬送するように構成されていてもよい。この部位から、次に血液または血液成分が分離層に浸透してもよい。分離層への浸透後、血液または血液成分は、任意に1つまたは2つ以上の成分を分離後に、試薬エレメントを含む試薬エレメント層に直接または間接的に移送され得る。具体的には、例えば、層構造が選択され、毛管から外部に移動させるために、少なくとも1つの分離層が最初に用いられ、続いて少なくとも1つの試薬エレメント層が用いられる。分離エレメントおよび/または分離層は、例えば試薬エレメントを含まなくてもよく、この場合好ましくは上記の検出反応に関連付けられるべきではない。分離エレメントおよび/または分離層に関しては、特に上記の先行技術の従来のテストストリップを参照してもよい。
【0102】
テストストリップは、具体的には、試薬エレメント内の問合せ光線がテストストリップを射るように構成されてもよい。この目的のために、例えば試薬エレメント領域は、検出装置に、特には問合せ光源に割り当てられた面を有してもよい。具体的には、テストストリップは、試薬エレメントに入ってくる入射問合せ光線が最初に試薬エレメント、例えば少なくとも1つの試薬エレメント層を通過し、次に分離エレメント、例えば少なくとも1つの分離層を通過し、次に少なくとも1つの反射面によって反射され、再度分離エレメントを通過し、もう一度試薬エレメント層を通過し、最終的に、例えば応答光線の形態でテストストリップから出るように構成されてもよい。反射面によるこの反射は、例えばテストストリップの担体エレメントの反射面からの反射であってもよい。この担体エレメントは、例えば、プラスチック、セラミックまたは紙などの材料の1つまたは2つ以上から全体としてまたは部分的に製造されてもよい。原則的には積層体も可能である。表面の反射率を大きくするために、担体エレメントは、例えば二酸化チタンなどの1つまたは2つ以上の顔料を含んでいてもよい。
【0103】
上記の反射構造によって、光は、単一のまたは多数の反射も可能であるので、その通路上で少なくとも2回テストエレメントを介して試薬エレメントを通過する。したがって、光は、少なくとも2回試薬エレメントによる影響を受け、光学的測定の感度を増加させることができる。しかしながら、光はまた、分離エレメントを多数回通過し、それによって、例えば分離エレメント上にまたは分離エレメント内に蓄積し得る、分離された血液成分はまた、光に多数回影響を与え得る。したがって、光はまた、例えば、赤血球などの分離エレメント上にまたは分離エレメント内に蓄積された阻害成分によりおおいに影響され得る。次にこのことは、第1時間間隔中の阻害成分の光学的検出の感度も増加し得ることを意味する。
【0104】
反射表面は、例えば分離エレメントに直接設けられてもよい。代替的には、反射表面はまた、分離エレメントから距離をおいて設けられてもよい。例えば毛管エレメントの区画が分離エレメント、例えば分離層と反射表面との間に位置してもよく、それによって、例えば光は、分離エレメントと反射表面との間の毛管エレメントの毛管チャネルを通過してもよい。
【0105】
さらなる可能な実施形態は、テストエレメントに関する。例えば、テストエレメント、特には、テストストリップは、好ましくは、テストエレメントの外部から見える試薬エレメントの少なくとも1つの領域を有するべきである。特に光学検出装置は、試薬エレメント領域の試薬エレメントの少なくとも1つの光学特性を検出するように構成されてもよい。このように、試薬エレメント領域は、試薬エレメントが問合せ光線で照射されることを可能にし、応答光線が試薬エレメントから照射されることを可能にする上記の表面を提供し得る。
【0106】
さらなる可能な実施形態は、試薬エレメントに関する。試薬エレメントは、特に、少なくとも短期間、湿度および熱負荷、特に少なくとも60℃、少なくとも80℃、または少なくとも100℃もの温度に耐えるほど十分に安定しているように選択されてもよい。
【0107】
一般的には、考えられ得る試薬エレメントに関しては、先行技術、例えば、国際公開第2007/118647号、欧州特許第0354441号明細書、特許文献1、特許文献2、非特許文献1またはA. v. Ketteler et al.: Fluorescence properties of carba-nicotinamide adenine dinucleotide for glucose sensing, ChemPhysChem 2012, 13, 1302-1306が参照されてもよい。
【0108】
試薬エレメントは、特に少なくとも1つの酵素を含んでいてもよく、好ましくは少なくとも1つの補酵素を含んでいてもよく、これらは好ましくは一緒に保管される。試薬エレメントは、例えば酵素のグルコース脱水素酵素(GDH)および/またはこの酵素の突然変異体を含んでいてもよい。例えば国際公開第2007/118647号には、補酵素としてPQQ依存性GDH突然変異体(EC 1.1.5.2)の使用に基づく試薬エレメントが記載されている。以下に記載の測定は、主としてこの試薬エレメントを用いて行われた。本発明の範囲内で使用されてもよいPQQ依存性試薬エレメントのさらなる例は、欧州特許第0354441号明細書に記載されている。
【0109】
上述のように、熱安定性の試薬エレメント、すなわち100℃、特には110℃、特には120℃の温度で少なくとも一時的に安定な試薬エレメントが、特に好ましい。上記の温度で少なくとも一時的に安定であるように構成された試薬エレメントは、少なくとも1分、好ましくは少なくとも5分の熱応力継続時間で、上記の温度において、好ましくは50%未満、特には30%未満、特に好ましくは20%未満の活性の低下を示す試薬エレメントをいうものと理解される。例えば、試薬エレメントは、これらの特性を検査するために、上記の継続時間、例えば1分または5分間、担体エレメント上の乾燥試薬エレメントの形態で上記の温度に曝されていてもよい。活性は、この熱応力の前または後で決定される。原則的には、活性は、この定義の範囲内において、熱応力中の活性の減少の比のみが適切であるように、先行技術から公知の任意の方法によって決定されてもよい。活性は、具体的には、試薬エレメント、特にはテストストリップにおける特に乾燥試薬エレメントの酵素活性に関してもよい。例えば、方法は公知であって、酵素活性は、試薬エレメントおよび/またはテストエレメントから酵素を抽出し、次に例えば紫外吸収によって活性を決定することによって測定される。これに関しては、例えば、H. U. Bergmeyer: Methoden der enzymatischen Analyse (Methods of Enzymatic Analysis), Verlag Chemie, 2nd. Ed., 1970, pg. 417またはBanauch et al.: A glucose dehydrogenase for the determination of glucose concentrations in body fluids, Z. Klin. Chem. Klin. Biochem. 1975 Mar; 13(3):101-7が参照されてもよい。例えば安定性および/または活性の減少の試験のために、テストストリップなどのテストエレメントが、試薬エレメントと共に製造されてもよい。試薬エレメントの酵素の酵素活性は、次に通常用いられる方法によって測定され、高温での上記の保管が続き、次に前記方法による酵素活性の測定が続く。この処理は通常、代表的なグループのテストエレメントおよび/または試薬エレメントを用いて行われる。
【0110】
熱安定性の試薬エレメントの例としては、例えば、国際公開第2007/012494号、および上に引用した特許文献1、特許文献12、およびA. v. Ketteler et al.: Fluorescence properties of carba-nicotinamide adenine dinucleotide for glucose sensing, ChemPhysChem 2012, 13, 1302-1306が参照されてもよい。これらの参考文献に提示された試薬エレメントはまた、本発明の範囲内で、単独でまたは1つまたは2つ以上のその他の試薬エレメントと組み合わせて用いられてもよい。しかしながら、代替的または付加的には、他の試薬エレメントもまた用いられてもよい。
【0111】
上述のように、試薬エレメントは、特に少なくとも1つの酵素および少なくとも1つの補酵素、例えば少なくとも1つの安定な補酵素を含んでいてもよく、これらは一緒に保管される。安定な補酵素を用いることによって、特に、高い相対湿度でまたは液相でおよび高温での温度安定化および/または数週間および/または数か月間の長期の安定化を行うことが可能である。この発見は、酵素が天然の補酵素の存在下に2〜3時間の短期間の増加した安定性を有するが、より長い期間に亘って貯蔵安定性不良を示すことが知られているため、驚くべきものである。先行技術と矛盾するこれらの発見から考えて、特に、安定な補酵素が天然の補酵素に比べて酵素との低い結合定数を有するので、安定な補酵素の存在下における酵素が、天然の補酵素の存在下における酵素よりもより高い熱安定性および長期間の安定性を示したことは驚くべきことであった。
【0112】
酵素、特には補酵素によって安定化された酵素は、特に補酵素依存性酵素であり得る。好適な酵素の例としては、グルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.47および/またはEC 1.1.5.2)、乳酸脱水素酵素(EC 1.1.1.27、1.1.1.28)、リンゴ酸脱水素酵素(EC 1.1.1.37)、グリセロール脱水素酵素(EC 1.1.1.6)、アルコール脱水素酵素(EC 1.1.1.1)、α−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素、ソルビトール脱水素酵素、またはL−アミノ酸脱水素酵素(EC 1.4.1.5)などのアミノ酸脱水素酵素から選択される脱水素酵素が挙げられる。さらに好適な酵素としては、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)またはコレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)などのオキシダーゼおよび/または例えばアスパラギン酸またはアラニンアミノトランスフェラーゼなどのアミノトランスフェラーゼ、5’−ヌクレオチダーゼまたはキナーゼが挙げられる。酵素のグルコース脱水素酵素が好ましい。
【0113】
突然変異体のグルコース脱水素酵素の使用は、特に好ましいと分かっていた。この点に関しては、例えば、上記の国際公開第2007/118647号が参照されてもよい。しかしながら、原則的にはその他の突然変異体が代替的または付加的に用いられてもよい。
【0114】
本出願の範囲内で使用される用語「突然変異体」は、同数のアミノ酸を有するが、野生型酵素と比較して改変された、すなわち少なくとも1つのアミノ酸が野生型酵素と異なるアミノ酸配列を有する天然の酵素が遺伝的に改変された変異体をいう。突然変異体の導入は、先行技術において公知の再結合方法を用いて、部位特異的にまたは非部位特異的に、好ましくは部位特異的に起こってもよく、それぞれの要求事項および条件に従って、天然の酵素のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸置換が起こる。特に好ましい実施形態において、突然変異体は、野生型酵素と比較して熱安定性または加水分解安定性の増加を示す。
【0115】
突然変異されたグルコース脱水素酵素は、対応する野生型グルコース脱水素酵素と比較して、原則的としてそのアミノ酸配列の任意の所望の位置で、改変されたアミノ酸を含み得る。好ましくは、突然変異されたグルコース脱水素酵素は、野生型グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列の位置96、170および252位の少なくとも1つにおける突然変異を含み、96位および170位に突然変異を有する突然変異体および/または170位および252位に突然変異を有する突然変異体が特に好ましい。突然変異されたグルコース脱水素酵素が、これらの突然変異以外にさらなる突然変異を含まないことが有利であることが分かっている。
【0116】
96位、170位および252位における突然変異は、原則的には、野生型酵素の安定化、例えば熱安定性または加水分解安定性における向上をもたらす、任意の所望のアミノ酸交換を含むことができる。好ましくは、突然変異は、96位においてグルタミン酸のグリシンへのアミノ酸交換を含み、一方、170位に関しては、グルタミン酸のアルギニンまたはリジンへのアミノ酸交換、特にはグルタミン酸のリジンへのアミノ酸交換が好ましい。252位における突然変異に関しては、これは、好ましくはリジンのロイシンへのアミノ酸交換を含むべきである。
【0117】
突然変異されたグルコース脱水素酵素は、任意の所望の生物学的源から野生型グルコース脱水素酵素の突然変異を介して得ることができ、ここで、本発明の範疇における用語「生物学ソース」とは、例えば細菌などの原核生物、および例えば哺乳類および他の動物などの真核生物の両方を含む。野生型グルコース脱水素酵素は、好ましくは、細菌由来であり、特に好ましくは、バチルス メガテリウム、バチルス ズブチルスまたはバチルス チューリンゲンシス由来のグルコース脱水素酵素が好ましく、バチルス ズブチルス由来のグルコース脱水素酵素が特に好ましい。
【0118】
本発明の特に好ましい実施形態において、突然変異されたグルコース脱水素酵素は、バチルス ズブチルス由来の野生型グルコース脱水素酵素の突然変異により得られるグルコース脱水素酵素であり、配列番号1に示すアミノ酸配列(GlucDH_E96G_E170K)、または配列番号2に示すアミノ酸配列(GlucDH_E170K_K252L)を有する。
【0119】
安定な補酵素は、好ましくは、天然の補酵素と比較して化学的に改変されており、天然の補酵素よりも高い安定性(例えば加水分解安定性)を示す。好ましくは、安定な補酵素は、試験条件下において加水分解に対し安定である。天然の補酵素と比較して、安定な補酵素は、酵素に対して低下した結合定数を示してもよく、例えば2倍またはそれ以上に低下した結合定数を示してもよい。
【0120】
安定な補酵素の好ましい例としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)の安定な誘導体、または、AMP部位を有さないもしくは例えば疎水性残基などの非ヌクレオシド残基を有する切断型NAD誘導体が挙げられる。同様に本発明の意味では、安定な補酵素として好ましいのは、式(I)の化合物である。
【化1】
【0121】
NAD/NADHおよびNADP/NADPHの好ましい安定な誘導体は、前述の参考文献に記載されており、その開示が本明細書によって明確に参照される。特に好ましい安定化された補酵素は、国際公開第2007/012494号および米国特許出願第11/460366号明細書に記載されており、その開示が本明細書によって明確に参照される。安定な補酵素は、特に好ましくは一般式(II)の化合物
【化2】
式中、
A=アデニンまたはその類似体、
T=それぞれ独立してO、S、
U=それぞれ独立してOH、SH、BH3-、BCNH2-
V=それぞれ独立してOHまたはリン酸基、または環状リン酸基を形成する2つの基、
W=COOR、CON(R)2、COR、CSN(R)2、R=それぞれ独立してHまたはC1〜C2−アルキル、
1、X2=それぞれ独立してO、CH2、CHCH3、C(CH32、NH、NCH3
Y=NH、S、O、CH2、および
Z=直鎖状または環状有機残基、
ただし、Zおよびピリジン残基は、グリコシド結合により連結されない
またはその塩、もしくは該当する場合は、還元型
から選択される。
【0122】
式(II)の化合物において、Zは、好ましくは4〜6個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を有する直鎖状残基であって、1個または2個の炭素原子が任意に、O、SおよびNから選択される1つまたは2つ以上のヘテロ原子で置換されている直鎖状残基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状基を含む残基であって、任意にはO、SおよびNから選択されるヘテロ原子および任意には1つまたは2つ以上の置換基を含む残基、ならびにCR42残基(CR4は環状基およびX2に結合され、R4はそれぞれ独立してH、F、Cl、CH3である)である。
【0123】
特に好ましい実施形態において、Zは、飽和または不飽和の炭素環式または複素環式の5員環、特に一般式(III)の化合物:
【化3】
式中、単結合または二重結合がR5'およびR5''との間に存在でき、
4=それぞれ独立してH、F、Cl、CH3
5=CR42
5'およびR5''との間に単結合が存在する場合、R5'=O、S、NH、NC1〜C2−アルキル、CR42、CHOH、CHOCH3、および、R5''=CR42、CHOH、CHOCH3、ならびに
5'およびR5''との間に二重結合が存在する場合、R5'=R5''=CR4、ならびに
6、R6'=それぞれ独立してCHまたはCCH3
が好ましい。
【0124】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、アデニンまたはC8−置換およびN6−置換されたアデニンなどのアデニン類似体、7−デアザなどのデアザ変異体、8−アザなどのアザ変異体、または7−デアザもしくは8−アザの組合せ、またはホルモマイシンなどの炭素環類似体を含み、7−デアザ変異体はハロゲン、C1〜C6−アルキニル、C1〜C6−アルケニルまたはC1〜C6−アルキルによって7位が置換され得る。
【0125】
さらなる好ましい実施形態において、前記化合物は、リボースの代わりに、例えば、2−メトキシデオキシリボース、2’−フルオロデオキシリボース、ヘキシトール、アルトリトールおよび/またはビシクロ、LNAおよびトリシクロ糖などの多環類似体を含むアデノシン類似体を含む。
【0126】
特に式(II)の化合物において、ジ)ホスフェート酸素は、等数的におよび/または共有結合的におよび/または等電子的に、例えばO-をS-および/またはBH3-によって、OをNH、NCH3および/またはCH2によって、および=Oを=Sによって置換されていてもよい。
【0127】
本発明による式(II)の化合物において、Wは、好ましくはCONH2またはCOCH3である。
【0128】
式(III)の基において、R5は好ましくはCH2である。さらに、5’は、好ましくはCH2、CHOHおよびNHから選択される。特に好ましい実施形態において、R5’およびR5”はそれぞれCHOHである。さらに好ましい実施形態において、R5’はNHであり、かつR5”はCH2である。
【0129】
最も好ましい実施形態において、補酵素、特に安定な補酵素は、特に上記の式(I)、(II)または(III)の1つまたは2つ以上に応じて、cNADまたは「カルバNAD」である。代替的または付加的には、補酵素はまた、NAD、cNAD、PQQおよびFADよりなる群から選択される1つまたは2つ以上の補酵素を含んでもよい。
【0130】
好ましい試薬エレメントは、特に、そこに含まれる酵素が長期間安定化されるように構成される。これは、安定な補酵素を使用して安定化された酵素が、例えば乾燥物質として、例えば少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、および特に好ましくは少なくとも8週間の期間にわたって保存され、そして、酵素活性が好ましくは、酵素活性の初期値に対して、50%未満、特に好ましくは30%未満、および最も好ましくは20%未満しか低下していないことを意味する。
【0131】
安定化により、安定な補酵素を使用して安定化された酵素を、上記に示されるように、長期間乾燥剤さえもなしに、および/または、上記に示されるように、高温で保管することが可能である。加えて、安定化された酵素は、例えば少なくとも50%の相対湿度などの高い相対湿度において保管され得、酵素活性は、好ましくは、初期値に対して、50%未満、特に好ましくは30%未満、および最も好ましくは20%未満しか低下しない。
【0132】
安定な補酵素を使用して安定化された酵素は、一方では、乾燥物質として、および他方では液相中で保管されてもよい。好ましくは安定化された酵素は、検体の測定に適切であるテストエレメント上またはその中に保管される。安定な補酵素を使用して安定化された酵素は、好ましい試薬エレメントの成分であって、試薬エレメントはまた任意に塩、緩衝剤などのさらなる成分を含んでいてもよい。試薬エレメントは、好ましくはメディエータを含んでいるべきではない。
【0133】
安定な補酵素を使用して安定化された酵素は、通常検体、例えば血液、血清、血漿または尿などの体液中のおよび/または排水サンプルまたは食品中のパラメータを測定するために使用されてもよい。
【0134】
検体としては、酸化還元反応によって検出され得る任意の生物学的または科学的物質、例えば補酵素依存性酵素の基質または補酵素依存性酵素自体が測定されてもよい。検体の好ましい例としては、グルコース、乳酸、リンゴ酸、グリセロール、アルコール、コレステロール、トリグリセリド、アスコルビン酸、システイン、グルタチオン、ペプチド、尿素、アンモニウム、サリチル酸塩、ピルビン酸塩、5’−ヌクレチオダーゼ、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、二酸化炭素などが挙げられる。グルコースが検体として好ましい。特に好ましい実施形態において、グルコースは、グルコース脱水素酵素(GlucDH)によって検出される。
【0135】
検体との反応による試薬エレメント、例えば安定な補酵素の変化は、原則的として少なくとも1つの光学測定変数を用いて任意の方法で検出されてもよい。この場合、酵素反応を検出するための先行技術から公知のあらゆる方法が用いられてもよい。しかしながら、補酵素の変化は、好ましくは、光学的な方法によって測定される。光学的検出方法には、例えば反射および/または反射率、吸光、蛍光、円偏光二色性(CD)、旋光分散(ORD)の測定、屈折率測定法などが含まれる。
【0136】
本発明の範囲内の使用における好ましい光学的検出法は、測光法である。検体との変換結果としての補酵素の変化の光度的な測定には、還元された補酵素の反応性を増加させ、そして、好適な光学的指示薬および/または光学的指示薬系への電子の移動を可能にする少なくとも1つのメディエータが試薬エレメントに任意に用いられてもよい。しかしながら、代替的には、メディエータの存在なしに直接検出することも行われてよい。
【0137】
本発明の目的のための任意の使用に適切であって、試薬エレメントに含まれてもよいメディエータとしては、例えば、[(4−ニトロソフェニル)イミノ]ジメタノール塩酸塩などのニトロソアニリン、キノン、例えばフェナントレンキノン、フェナントロリンキノンもしくはベンゾ[h]キノリンキノンなどのキノン、例えば1−(3−カルボキシプロポキシ)−5−エチレンフェナジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのフェナジン、および/または、ジアホラーゼ(EC 1.6.99.2)がある。フェナントロリンキノンの好ましい例としては、1,10−フェナントロリン−5,6−キノン、1,7−フェナントロリン−5,6−キノン、4,7−フェナントロリン−5,6−キノン、およびそれらのN−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩を挙げることができ、N−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩の場合には、好ましいカウンターイオンは、ハロゲン化物、トリフルオロメタンスルホン酸塩または溶解性を増加させる他のアニオンである。
【0138】
特に、試薬エレメントに含まれてもよい光学的指示薬としてまたは光学的指示薬系としては、還元可能であり、そして、還元にともない、例えば色、蛍光、反射率、透過率、偏光および/または屈折率などの光学的性質に検出可能な変化が起こる任意の物質を用いてもよい。サンプル中の検体の存在および/またはその量の測定は、肉眼でおよび/または、当業者には適切であることが明らかな測光法を用いた検出装置により行うことができる。好ましくは、ヘテロポリ酸、および特には2,18−リンモリブデン酸が、光学的指示薬として好ましく使用され、対応するヘテロポリブルーに還元される。
【0139】
特に好ましい試薬エレメントは、グルコースの検出のために、酵素のグルコース脱水素酵素をNADおよび/または安定なNAD誘導体、例えばcNADと共に使用することを含み、好ましくは還元された補酵素NADHの誘導体が形成される。代替的または付加的には、補酵素NAD、PQQおよびFADの1つまたは2つ以上も用いられてもよい。その他の補酵素も原則的には用いられてよい。NADHの検出は、光学的な方法、例えばUV励起後に測光または蛍光測定によって行われる。特に好ましい検査システムが、米国特許出願公開第2005/0214891号明細書に記載され、参照によって明確に本明細書に組み込まれる。
【0140】
特に、試薬エレメントは、安定な補酵素で安定化された酵素を含むように構成され、安定化された酵素は、好ましくは少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも25℃、最も好ましくは少なくとも30℃の温度で、任意には高湿度で乾燥試薬なしで、好ましくは少なくとも2週間、特に好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも8週間の保存経過において、初期値に比べて50%未満の、好ましくは30%未満の、最も好ましくは20%未満の酵素力の低下を示す。
【0141】
テストエレメントは、特に少なくとも1つの担体エレメントを有していてもよく、試薬は好ましくは担体エレメントに結合される。この結合は、例えば、少なくとも1つの試薬エレメント層の形態の試薬エレメントを担体エレメントに直接または間接的に適用することにより行われてもよい。例えば、適用は、ブレードコーティング、プリンティング(特にスクリーンプリンティング、ステンシルプリンティングまたはパッドプリンティング)およびスピンコーティングよりなる群から選択された方法によって行われてもよい。
【0142】
特に、担体エレメントは、全体としてまたは部分的に少なくとも1つのプラスチック材料から製造されてもよい。具体的にはこのプラスチック材料は、DIN ENISO 306に従って測定可能な、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも110℃、特に好ましくは少なくとも120℃の軟化温度、例えば少なくとも130℃、さらに少なくとも140℃、または少なくとも150℃の軟化温度を有するプラスチック材料であってもよい。かかるプラスチックの例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルおよびポリカーボネート(PC)またはこれらとおよび/またはその他のプラスチックとの組み合わせが挙げられる。しかしながら、原則的には、その他のプラスチックが用いられてもよい。
【0143】
担体エレメントは、特には少なくとも1つのフィルムエレメントを含んでもよい。このフィルムは、単層または多層構造を有していてもよい。担体エレメントは、1つまたは2つ以上の試薬エレメントを支持してもよい。例えば試薬エレメントは、サンプルを受け取るための少なくとも1つのアクセス可能なテスト領域面を提供してもよい。
【0144】
装置のさらなる可能な実施形態は、検出装置に関する。上に説明したように、検出装置が、同じ波長で少なくとも1つの阻害変数および少なくとも1つの検体の濃度を判定するように構成されていることが好ましい。したがって、光学検出装置は、具体的には同じ少なくとも1つの波長で第1時間間隔および第2時間間隔における光学測定変数を判定するように構成されていてもよい。したがって、例えば第1時間間隔および第2時間間隔中の光学測定変数の判定のために、同じ光源および/または同じ検出器、例えば同じ問合せ光源および同じ検出器が用いられてもよい。
【0145】
上に説明したように、光学検出装置は、1つまたは2つ以上の半導体光源、特には1つまたは2つ以上の発光ダイオードを備えてもよい。具体的には、検出装置は、少なくとも1つの第1発光ダイオードおよび少なくとも1つの第2発光ダイオードおよび試薬エレメントによって散乱して反射される発光ダイオードからの光の検出のための少なくとも1つのフォトダイオードを備えてもよい。もしいくつかの発光ダイオードが設けられる場合、これらは、同時に、時間をずらせて、または一時的に重なるような方法で光を照射してもよい。特には、装置は、発光ダイオードの反射された光を、同じ検出器で、より具体的には同じフォトダイオードで交互に検出するように構成されてもよい。
【0146】
もしいくつかの発光ダイオードが設けられる場合、評価装置は、特には、血液または血液成分で試薬エレメントが湿潤していることを認識するために、第2発光ダイオードによって反射された光を使用するように構成されてもよい。この湿潤の認識は、例えば、反射率値のモニタリングを介して行われてもよい。具体的には第2発光ダイオードによって反射された光の反射率値は、試薬エレメント領域において1つまたは2つ以上の閾値と比べられてもよく、反射率の主要な変化が湿潤の開始および湿潤に起因する急激な変化の開始を示す。評価装置はさらに、例えば上記のアルゴリズムに従って、第1時間間隔および第2時間間隔中の光学測定変数、特には反射率値の判定、およびそれから少なくとも1つの検体の濃度などの血中の少なくとも1つの阻害変数を判定するために、第1発光ダイオードからの反射光を用いるように構成されてもよい。したがって、第1発光ダイオードは、例えば上記実施形態の1つまたは2つ以上に従って方法を行うために用いられてもよい。第2発光ダイオードは、例えば反射率の急な変化の開始点を確認し、この開始点を例えば第1時間間隔の開始時間として選択するために用いられてもよい。しかしながら、その他の実施形態もまた可能である。
【0147】
本発明のさらなる実施形態において、血中の阻害変数を判定するため、および特に血中の阻害成分の百分率を判定するため、および特に好ましくはヘマトクリット値を判定するために、光学測定変数の時間推移における湿潤に起因する急激な変化、テストエレメントの領域、特には反射値の使用が提案される。使用は、特には、このような方法で測定された阻害変数が、依然として血中の少なくとも1つの検体の判定された濃度の補正のために、特に、判定された血中グルコース濃度の補正のために用いられてもよいように構成されてもよい。特には、阻害変数および検体濃度の判定のために、同じ光学測定変数、具体的には同じ波長の光学反射値が用いられてもよい。使用の更なる可能な実施形態のために、方法に関する上記の記載、装置に関する上記の記載および以下にさらに詳細に記載された例示的な実施形態が参照されてもよい。
【0148】
提案された方法、提案された装置および使用が、公知の方法、装置および用途に対して大きな利点を示す。特に阻害効果の効率的な補正、特に効率的なヘマトクリットの補正は、光学的血中グルコース測定において行われ得る。通常赤血球の分離に関して高いレベルのテスト要件を含む従来の方法に対比して、提案された方法への変換のための装置の費用は、テストエレメントおよびおそらくテストユニットのどちらに関してもかなり低く維持され得る。特に提案された方法は、本質的に対応するソフトウェアによって公知の装置において実施されてもよい。
【0149】
特許文献6に対比して、同明細書では段落[0030]から明確に理解されるように、湿潤中の反射率挙動が定数として理解されるが、湿潤に起因する急激な変化の光学測定変数の時間推移の分画が、阻害成分、特にヘマトクリット値の判定のために正確に用いられ得る。特許文献6に示された唯一の目的は、サンプルの適用を補正することによって光学透過システムの透過挙動を変化させることである。具体的には特許文献6では、時間軸をいくつかの時間間隔に分割している。しかしながら、時点t1とt2の間の時間間隔において、例えば第6欄の2〜6行から明確に分かるように、測定値は判定されていない。この時間間隔において連続測定曲線のみが外挿されている。したがって特許文献6では、試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移が第1時間間隔において判定され、血中の少なくとも1つの阻害変数が第1時間間隔におけるこの時間から判定されるという本発明の特徴を明らかに開示できていない。具体的には特許文献6では、t1とt2の間の時間間隔において測定曲線が判定されていない。この時間間隔において、外挿曲線のみが有効である。さらに、特許文献6におけるこれらの外挿曲線は、血中の阻害変数の判定に使用されるのではなく、むしろ光学透過システムの透過挙動の開始時間および変化が判定される。上に説明したように、本発明の範囲内において、血中の阻害変数は、特に検出される検体それ自身の濃度を除く血液の特性である任意の影響を与える変数をいい、血液の特性は、検体濃度の判定に影響し得る。したがって、本発明の提案された方法は、実際の測定曲線を少なくとも2つの時間間隔に分画することにより、血液自身の阻害変数を判定し、および/またはそれらの変数が検体濃度の判定に影響を与えることを減らし、補正しまたは修正することを可能にする。
【0150】
例えば、特許文献9または特許文献10に対比して、提案された方法では、試薬エレメント自身の光学測定変数の時間推移が判定される。この処理では、例えば光学測定変数は、全試薬エレメント領域に亘って均一におよび/または空間的に平均化される方法で、および/または好ましくは空間分解能なしに試薬エレメント領域の測定域を超えて判定されてもよい。例えば試薬エレメントを含むか、または試薬エレメント領域の1つまたは2つ以上の領域に亘って空間的に平均化された試薬エレメント領域の1つの部位での単一の光学測定変数は、時間分解方法で検出されてもよく、第1時間間隔におけるこの光学測定変数の時間推移は、阻害変数を判定するために、および第2時間間隔においては、検体の濃度を判定するために使用され得る。言い換えれば、提案された方法は、特に少なくとも1つの光学測定変数の空間的に分解された測定なしにおよび/または少なくとも1つの光学測定変数の空間的に平均化された検出のみで行われてもよい。特に本発明の方法は、運転時間の測定なしにおよび/またはテストエレメントの充填時間の測定なしに、特には運転時間または充填時間を判定するための異なる部位での時間分解測定なしに行われ得る。試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数のこのような単一の光学測定は、いかなる場合でも通常光学テストエレメントによって提供されるものであるが、例えば特許文献69または特許文献10に記載された充填時間測定に対比して、対応するテストユニットにおける主要な装置変更なしに容易に実施され得る。充填時間測定に必要とされるであろう、また実施に当たって複雑な装置を必要とする高精度空間分解は、省かれ得る。したがって、比較的に簡単なデザインの1つまたは2つ以上の検出器が、例えば1つの単独の光源のみ、例えば単独の発光ダイオードと共に使用されてもよい。なお、充填時間測定は、サンプルを受け取る時間が通常分からないので常に装置の問題を伴い、したがって、例えば予め決められたセグメントにおいて異なる測定が行われることが必要となる。
【0151】
本発明の、少なくとも1つの光学測定変数の時間推移の検出において、他方では、ヘマトクリット値の影響が試薬エレメントに関して直接判定される。この場合、原則としては、拡散処理、溶媒和作用、屈折率変化などの多数の物理化学的処理およびヘマトクリット値によって影響されるその他の処理が同時に判定される。検出は、ヘマトクリット値の影響が判定されるべき位置、すなわち試薬エレメントにおいて、上記の充填時間測定などの間接的測定に対比して直接的に行われる。原則としては、さらに、直接的に検出された物理化学的反応および処理は、阻害変数、特には阻害成分に基づいて試薬エレメントにおいて検体の検出に影響し得るものである。
【0152】
例えば特許文献14に対比して、提案された方法は、特に光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔および少なくとも1つの第2時間間隔への提案された分画によって、阻害変数の判定と検体濃度の判定とを効率的に分離することを可能にする。驚くべきことに、この時間分離によって、検体含有量のいかなる影響もなしに阻害変数を有利に検出することが、1つの波長および同じ波長においてさえ可能となる。特許文献14においては、対照的に、700nmと635nmにおける光学測定のどちらもが、異なる程度ではあるが、ヘマトクリット値および検体含有量の両方によって影響を受ける。これらの2つの効果の分離は、実際問題として、かろうじて達成され得る。本発明の提案された時間分離は、簡単におよび簡潔な方法でこの問題を解決する。
【0153】
特に、1つの波長のみで簡単な方法で少なくとも1つの光学測定変数の時間推移を測定し、このようにして、例えば個々のサンプルのグルコース含有量およびヘマトクリット値の両方を判定可能である。検体測定、例えばグルコース測定に関して公知のまたは少なくとも判定可能なヘマトクリット値の影響に基づいて、経験的に判定された検体含有量の数学的補正などのより効率的な補正が、評価の間または以降の引き続く補正の形態で行われ得る。1つの波長のみで光学測定変数を判定する可能性は、いくつかの光源の使用が避けられるので、明確な装置関連の利点を提供する。これにもかかわらず、上記のように、いくつかの光源が、例えば、湿潤に起因する急激な変化の開始を認識し、したがってはっきりとした時点、例えば、第1の時間間隔の開始時間を判定するために、依然として提供されてもよい。
【0154】
驚くべきことに、ヘマトクリット値が、例えば、880nmの波長で湿潤に起因する急激な変化に基づいて信頼をもって判定されてもよいことが分かり、このことは、実験に関して以下にさらに詳細に説明されるであろう。グルコース濃度の判定は、対応する波長の選択に関して非常に柔軟であるので、第1時間間隔および第2時間間隔中に同じ波長が光学測定変数の検出のために用いられてもよい。したがって、単一の光学測定変数の単一の時間推移の評価のみが要求され、このことは、評価の難しさと、およびしたがって、演算性能と分析装置のリソース要件に対する要求とをかなり低減し得る。
【0155】
さらに本発明の方法、本発明の装置および本発明の使用は、検体検出のためのヘマトクリット依存性測光システム、例えば血中グルコース検出のための測光システムなどの装置の費用のかなりの低減を可能にする。このことは、装置および方法が、装置の費用のいかなる著しい増加もなしに用いられ得るようなヘマトクリット範囲のかなりの増加をも可能にする。このことは、代わって、本発明の実施形態および方法の実施を通して、装置の適用範囲の著しい展開を可能にする。この展開は、簡単な方法で、例えば本発明の方法を実施するための新規な評価ソフトウェアを用いることによって達成され得る。
【0156】
少なくとも1つの光学測定変数の時間推移、例えば反射率または相対反射率(ブランク値反射率に対する率として示される反射率)は、しばしば「カイネティックス」といわれる。というのは少なくとも第2の時間間隔におけるこの時間推移は、検体の検出のための反応の経過を特徴づけるためである。驚くべきことに、上記のように、特に湿潤に起因する急激な変化、例えば血液または血液成分による試薬エレメントの湿潤によって起こされる反射率値の最初の急な低下に基づいて、阻害変数、特には阻害成分の濃度、特に好ましくはヘマトクリット値が、容易におよび信頼をもって判定され得る。例示目的のために以下にさらに詳細に記載されるカイネティックデータの評価と分析は、例えばヘマトクリット値と湿潤に起因する急激な変化との信頼できる相関関係を示す。この依存性は、高い程度の再現性で様々なサンプルにおいて証明された。このことに基づいて、引き続きまたは評価の間でさえ、検体濃度、例えばグルコース濃度の測定値の補正を考慮に入れるために、特に使用されるサンプルのヘマトクリット値の判定が可能である。特に、この方法では、例えば反射率値の湿潤に起因する急激な変化に基づいて、±5〜10%、特には5%未満の誤差でヘマトクリット値を判定することが可能である。測定された検体濃度のヘマトクリット値に対する公知の依存性の場合、これによって、簡単で信頼できる方法で数学的補正または対応する補正関数および/または補正係数および/または補正オフセットを用いる補正を行うことが可能になる。
【0157】
要するに、以下の実施形態が、本発明の範囲内において特に好ましい。
【0158】
実施形態1:血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定するための、特に血中グルコース濃度を判定するための方法であって、テストエレメントが用いられ、テストエレメントが少なくとも1つの試薬エレメントを有し、試薬エレメントが、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成され、血液がテストエレメントに適用され、試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移が判定され、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔から、血液中の少なくとも1つの阻害変数、特に阻害成分の濃度、好ましくは血液のヘマトクリット値が判定され、検体の濃度が、時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔から判定されることを特徴とする方法。
【0159】
実施形態2:第1時間間隔が時間推移の最初の時間間隔であり、第2時間間隔が第1時間間隔に続く実施形態1に記載の方法。
【0160】
実施形態3:第1時間間隔における光学測定変数の時間推移が、光学測定変数における湿潤に起因する急激な変化を含む実施形態1または2に記載の方法。
【0161】
実施形態4:光学測定変数が少なくとも1つの第1の波長で判定され、血液が到着して試薬エレメントを湿潤させる湿潤時点が、血液がテストエレメントに適用された後の光学測定変数の大きな変化に基づいて、判定される実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態5:第1時間間隔および第2時間間隔が、少なくとも部分的に第1時間間隔に続いて起こる実施形態4に記載の方法。
【0163】
実施形態6:第1時間間隔における光学測定変数が少なくとも1つの第2の波長で判定され、第2の波長が第1の波長と同じである実施形態4または5に記載の方法。
【0164】
実施形態7:光学測定変数が、試薬エレメントの少なくとも1つの反射率値を含む実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0165】
実施形態8:第1時間間隔および第2時間間隔における光学測定変数の検出のために、前記試薬エレメントが、少なくとも1つの問合せ光源からの少なくとも1つの問合せ光線によってそれぞれ照射され、試薬エレメントからの少なくとも1つの応答光線が少なくとも1つの検出器によってそれぞれ検出される実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
【0166】
実施形態9:問合せ光線が、第1時間間隔および第2時間間隔において同じ波長および/または同じスペクトル特性を示す実施形態8に記載の方法。
【0167】
実施形態10:応答光線が、第1時間間隔および第2時間間隔において同じ波長および/または同じスペクトル特性を示す実施形態8または9に記載の方法。
【0168】
実施形態11:応答光線が、試薬エレメント上に問合せ光線の反射および/または拡散によって形成される実施形態8〜10のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態12:第1時間間隔および/または第2時間間隔における問合せ光線が、300〜1100nmの波長範囲、特には、365nm、375nm、440nm、525nm、550nm、580nm、635nm、660nm、740nm、770nm、815nmおよび880nmよりなる群から選択された波長を有する実施形態8〜11のいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態13:少なくとも1つの補正が、阻害変数、特にヘマトクリット値によって特定され、検体の補正濃度が、この補正を考慮に入れて第2時間間隔から特定される実施形態1〜12のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態14:第2時間間隔における光学測定変数の変化が検出され、光学測定値の時間的変化が予め設定された閾値未満の時点で判定された光学測定変数が、検体の濃度の判定に用いられる実施形態1〜13のいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態15:血液がテストエレメント上の少なくとも1つの適用部位に適用され、血液または血液成分が適用部位から試薬エレメントへ移送される実施形態1〜14のいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態16:血液または血液成分がサンプル受取位置と試薬エレメントとの間の通路上を少なくとも1つの分離エレメントを経由して通り、少なくとも1つの血液成分が分離エレメント内において分離可能である実施形態15に記載の方法。
【0174】
実施形態17:分離エレメントが、試薬エレメントに接触している少なくとも1つの分離層を有する実施形態16に記載の方法。
【0175】
実施形態18:少なくとも1つの毛管エレメントが、適用部位と試薬エレメントとの間に設けられ、特に、毛管エレメントは、少なくとも1mm、特に好ましくは少なくとも3mmの長さ、または少なくとも10mmの長さを有している実施形態15〜17のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態19:血液中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度、特に血中グルコース濃度を判定するための装置であって、装置が少なくとも1つのテストエレメントを備え、テストエレメントが少なくとも1つの試薬エレメントを有し、試薬エレメントが、検体の存在下に少なくとも1つの光学的に検出可能な検出反応を行うように構成され、血液がテストエレメントに適用可能であり、装置が少なくとも1つの光学検出装置を有し、光学検出装置が試薬エレメントの少なくとも1つの光学測定変数の時間推移を検出するように構成され、装置はさらに少なくとも1つの評価装置を有し、評価装置は、光学測定変数の時間推移の少なくとも1つの第1時間間隔から、血液中の少なくとも1つの阻害変数、特に血中ヘマトクリット値を判定するように構成され、評価装置はさらに、時間推移の少なくとも1つの第2時間間隔から、検体の濃度を判定するように構成される装置。
【0177】
実施形態20:装置が、方法の実施形態1〜18に記載の方法を行うように構成される実施形態19に記載の装置。
【0178】
実施形態21:検出装置が、少なくとも1つの問合せ光線を試薬エレメントに照射するための少なくとも1つの問合せ光源と、および試薬エレメントによって照射された応答光線の少なくとも1つの検出のための検出器とを有する実施形態19または20に記載の装置。
【0179】
実施形態22:評価装置が、少なくとも1つのデータ処理ユニット、特には少なくとも1つのマイクロコンピュータを備える実施形態19〜21に記載の装置。
【0180】
実施形態23:テストエレメントがテストストリップであり、装置が少なくとも1つのテストストリップホルダを有し、テストストリップホルダ内の少なくとも1つのテストストリップが適用場所に配置されることが可能であり、適用場所において、テストストリップの少なくとも1つの適用部位にユーザが血液を適用可能であり、テストストリップは、適用部位から試薬エレメントへ血液または血液成分を移送するための少なくとも1つの毛管エレメントを有する実施形態19〜22に記載の装置。
【0181】
実施形態24:血液から少なくとも1つの血液成分を分離するための少なくとも1つの分離エレメントが毛管エレメントと試薬エレメントとの間に設けられる実施形態23に記載の装置。
【0182】
実施形態25:分離エレメントが、少なくとも1つの分離層を備えている実施形態24に記載の装置。
【0183】
実施形態26:テストストリップが、試薬エレメントに入ってくる入射問合せ光線が最初に試薬エレメントを通過し、次に少なくとも部分的に分離エレメントを通過し、次に少なくとも1つの反射面、特に分離層またはその後ろに位置する担体エレメントの反射面によって反射され、任意に再度分離エレメントを通過し、再度試薬エレメントを通過し、最終的にテストストリップから出るように構成されていてもよい実施形態23〜25に記載の装置。
【0184】
実施形態27:テストエレメント、特にテストストリップが、テストエレメントの外部から見える試薬エレメントの少なくとも1つの試薬エレメント領域を有し、光学検出装置が、試薬エレメント領域の試薬エレメントの少なくとも1つの光学特性を判定するように構成される実施形態19〜26に記載の装置。
【0185】
実施形態28:光学検出装置が、第1時間間隔および第2時間間隔における光学測定変数を同じ波長で検出するように構成される実施形態19〜27に記載の装置。
【0186】
実施形態29:光学検出装置が、少なくとも1つの第1発光ダイオード、少なくとも1つの第2発光ダイオードおよび試薬エレメントによって散乱して反射される発光ダイオードからの光の検出のための少なくとも1つのフォトダイオードを有する実施形態19〜28に記載の装置。
【0187】
実施形態30:装置が、発光ダイオードの反射された光を、同じフォトダイオードで交互に検出するように構成される実施形態29に記載の装置。
【0188】
実施形態31:評価装置は、血液または血液成分で試薬エレメントが湿潤していることを認識するために、第2発光ダイオードによって反射された光を使用するように構成され、評価装置はさらに、第1時間間隔および第2時間間隔中の光学測定変数、特に反射率値の検出、およびそれから血中の少なくとも1つの阻害変数および検体の濃度を判定するために、第1発光ダイオードの反射光を用いるように構成されてもよい実施形態29または30に記載の装置。
【0189】
実施形態32:血液中の阻害変数の判定、特にヘマトクリット値を判定するための、テストエレメントで検出された光学測定変数の時間推移における湿潤に起因する急激な変化、特に反射値の使用。
【0190】
実施形態33:上記方法で判定された阻害変数がさらに、血中の少なくとも1つの検体濃度の判定の補正のために、特に血中グルコース濃度の判定の補正のために用いられる実施形態32に記載の使用。
【0191】
実施形態34:阻害変数および検体濃度の判定のために、同じ光学測定変数が、具体的には同じ波長の光学反射値が用いられる実施形態33に記載の使用。
【0192】
本発明のさらなる詳細と特徴が、好適な例示的な実施形態の以下の説明から、特に従属請求項とあわせて、明らかになる。ここで、それぞれの特徴は、単独で実施することができ、あるいはこれらのいくつかは組み合わせて実施することができる。本発明はこれらの例示的な実施形態に制限されない。これらの例示的な実施形態は、図において概略的に示されている。ここで、それぞれの図における同じ符号は、同等または機能的に同等の要素、または機能に関して互いに対応する要素であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0193】
個々の図は以下のものを示す。
【0194】
図1】テストエレメントおよびテストユニットを有する本発明の装置の概略断面図である。
図2】光学検出装置の概略平面図である。
図3】相対反射率および第1時間間隔と第2時間間隔の時間推移を示す概略図である。
図4】本発明に使用することができるテストストリップの概略平面図である。
図5図4の概略断面図である。
図6】異なるヘマトクリット値を有する2つの血液サンプルのための相対反射率の測定値を示す図である。
図7】湿潤に起因する急激な変化の範囲とヘマトクリット値との間の相関関係を示す図である。
図8】阻害変数としてのヘマトクリット値の依存性における参考方法に対するグルコース濃度の偏差の依存性の人為的に生成された例を示す図である。
図9】異なる血中グルコース濃度およびヘマトクリット値におけるcNAD試薬エレメントに関する基準反射率値測定の時間推移を示す図である。
図10】異なる血中グルコース濃度を有するサンプルの測定における湿潤に起因する急激な変化とヘマトクリット値との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0195】
図1は、血中の検体の濃度を判定するための、特に血中グルコース濃度を判定するための、本発明の装置110の例示的な実施形態であって、概略断面図で示されている。装置110は、この例示的な実施形態では、例えば手動ユニットとして構成し得るテストユニット112、およびテストエレメント114、この場合例えばテストストリップ116を備える。テストユニット112は、テストストリップ116が保持されるテストエレメントホルダ118を備え、(図1に示される)適用位置に移動可能となっている。この適用位置において、小滴などの血液サンプル120がテストエレメント114の適用部位122に適用される。
【0196】
テストエレメント114は、図1に示すように、試薬エレメント124を備え、試薬エレメント124は、例えば試薬エレメント領域126の構成要素とすることができる。
【0197】
さらに、図1に示される例示的な実施形態において、装置110は、光学検出装置128を備え、それによって試薬エレメント124の少なくとも1つの光学測定変数、特に光学測定変数の時間推移が検出され得る。この目的のために、光学検出装置128は、例えば、少なくとも1つの問合せ光線132の生成のための少なくとも1つの光源130および少なくとも1つの応答光線136の検出のための少なくとも1つの検出器134を有してもよく、応答光線136は、例えば試薬エレメント124によって拡散された、または散乱して反射された問合せ光であってもよい。光学検出装置128のさらに可能な詳細については、以下でより詳細に説明する。
【0198】
さらに、示された例示的な実施形態における装置110は、少なくとも1つの評価装置138を備える。この評価装置138は、少なくとも1つのデータ線140を介して光学検出装置128に一方向にまたは双方向に接続されてもよく、および/または、例えば評価装置138を光学検出装置128に完全にまたは部分的に一体化することにより完全にまたは部分的に光学検出装置128と組み合わされてもよい。その他の実施形態、例えば周辺の実施形態も可能である。評価装置138は、例えば、少なくとも1つのデータ処理ユニット142、例えばマイクロプロセッサを含んでもよい。データ処理ユニット142は、例えば、血液120中の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの濃度を判定する本発明の方法の実施形態のプログラムシーケンスを制御し、および/または評価するようにプログラム的に構成されてもよい。さらに、評価装置138はまた、少なくとも1つの揮発性のおよび/または少なくとも1つの不揮発性のデータ記憶ユニット144を含んでいてもよい。
【0199】
図1に示す例示的な実施形態の装置110はまた、例えば装置110のユーザと装置110との間のインターフェースを構成するために、さらなる要素を含んでもよい。したがって、1つまたは2つ以上の操作エレメント146、例えば1つまたは2つ以上のキーおよび/または1つまたは2つ以上の表示エレメント148が設けられてもよく、これらはまた、図1に示すように、評価装置138に対して一方向にまたは双方向に設けられてもよい。さらに、装置110は、任意に1つまたは2つ以上のインターフェース、例えば1つまたは2つ以上のデータインターフェースを含んでもよく、これらによって、例えばデータが、装置110と1つまたは2つ以上の装置、例えば測定データおよび/または測定結果との間でやりとりされてもよい。
【0200】
図2は、可能な実施形態における光学検出装置128の平面図を示す。光学検出装置128は、少なくとも1つの光源130および少なくとも1つの検出器134を備える。これらの要素は全体として特に半導体部品で構成することができる。問合せ光源130は、示される例示的な実施形態において、任意に少なくとも1つの第1発光ダイオード150と少なくとも1つの第2発光ダイオード152とを備える。第1発光ダイオード150は、以下においてLED1とも呼ばれ、第2発光ダイオード152は、LED2とも呼ばれる。図2から分かるように、第1発光ダイオードはまた、特に複数の部品で構成されてもよく、この例示的な実施形態においては、テストエレメント114の長手方向の延在方向を横切って、第1発光ダイオードA(符号154、LED1A)および第1発光ダイオードB(符号156、LED1B)を備えている。第1発光ダイオード150のこの複数部品の実施形態は、例えば問合せ光で試薬エレメント領域126のより良いカバー領域を提供するために用いられる。例えば660nmで光線を照射できる第1発光ダイオード150が検体濃度を判定するために反射率値を確認するのに用いることができる一方、第2の任意の発光ダイオード152が、例えば湿潤に起因する急激な変化の開始を認識するために用いることができる。第2発光ダイオード152は、例えば880nmで光線を照射し得る。応答光線136の形態で反射、すなわち拡散散乱によって試薬エレメント領域126により照射された問合せ光132は、検出器134、例えばフォトダイオードによって検出される。図3は、例示目的のために、光学測定値の時間推移の例として、典型的には検出器134によって検出される信号の時間推移を示している。いわゆる相対反射率(rR)が、時間tの関数としてパーセントで図面中に示されている。
【0201】
図3の概略図からわかるように、血液120のサンプルの適用前の反射率はいわゆるブランク値であり、任意に100%の相対反射率に設定され、引き続き検出される信号の基準値として使用される。
【0202】
血液または血液成分が試薬エレメント124に到達した後、図3に示された時間推移によって認識され得る湿潤段階が開始する。この湿潤段階は、第2発光ダイオード152によって任意に認識され得る。例えば、第1発光ダイオード150および第2発光ダイオード152が、例えば間欠的なパルス操作で交互にスイッチオンされてもよい。代替的または付加的には、湿潤段階の開始は、第1発光ダイオード150によって判定されてもよく、それによりトータルでただ1つの発光ダイオードが必要となる。
【0203】
湿潤段階が開始すると、図3に示された相対反射率は急激に低下する。この時点は、図3においてt0として示されている。この時点は、例えば閾値と反射率との比較によりおよび/または反射率の変化を観察することにより認識することができる。
【0204】
この時点t0またはt0よりも早い時点は、通常、図3において符号158で示される第1時間間隔の開始時点として設定され得る。時点t0は、相対反射率または相対反射率の時間推移の導関数と、閾値とを比較することによりおよび/または相対反射率の時間推移の導関数を観察することにより、例えば自動的に判定されてもよい。しかしながら、原則的には、相対反射率は時点t0の前にはほとんど変化しないので、時点t0の正確な測定は必要なく、したがって、t0よりも早い時点がまた、第1時間間隔158の開始時点として用いられてもよい。通常、時点t0で、明確な最初の屈曲が起こる。時点t0から開始して、ΔrRの量だけの相対反射率の低下があり、これはまた、湿潤に起因する急激な変化ともいわれ、図3に符号160で示されている。
【0205】
湿潤に起因する急激な変化160の終点で、相対反射率がΔrRの量だけ低下した後、一般的に相対反射率の時間推移は、明確な第2の屈曲162を示す。図3における時間推移の導関数を観察することにより、および/または、相対反射率の絶対値および/または相対反射率の時間的変化と、少なくとも1つの閾値とを比較することにより自動的に認識され得るこの屈曲は、図3においてt1で示される時点に起こる。湿潤に起因する急激な変化160の終点を特徴づけるこの時点t1は、第1時間間隔158の終了時点として設定することができる。同時に、この時点t1は、図3において符号164で示される第2時間間隔の開始時点として設定することができる。図3における時間推移の第1時間間隔は、試薬エレメント124の湿潤効果に左右され、一方、第2時間間隔164では、相対反射率の時間推移は、試薬エレメント124内において起こる光学検出反応の進捗に左右される。第2時間間隔164は、開区間として構成されてもよく、例えば時間t≧t1の全時間推移を含んでもよい。代替的には、第2時間間隔164はまた、予め設定された時点、例えば図3におけるt2の時点で終了してもよく、これについては、以下にさらに詳細に説明する。一般的に時間間隔158および164が、閉区間、半開区間または開放時間間隔として構成されてもよいことに留意すべきである。
【0206】
図3では例として相対反射率で示される光学測定変数の時間推移の評価において、ヘマトクリット値などの阻害変数は、第1時間間隔158から判定される。この目的のために、湿潤に起因する急激な変化160の間に起こり、図3においてΔrRで示される急な反射値の変化を観察してもよい。このΔrRは、以下に詳細に述べるアルゴリズムを用いて阻害変数、特にヘマトクリット値を判定するための特徴的な変数として用いることができる。対照的に、検体濃度、例えば、グルコース濃度は、第2時間間隔164から導き出される。これは、例えば、第2時間間隔164内の所定の時点で、相対反射率rRが例えば時点t0または時点t1の後の予め設定された時間に検出されるような方法で行われてもよい。この時間に判定された反射率rRは、例えば検体濃度が判定される第2の特徴的な変数として用いられてもよい。代替的または付加的には、検体濃度を判定するために反射率が記録される時点t2はまた、いわゆる「終了時点」とされ、種々選択されてもよい。これに関して、終了時点は、一般的に検出反応が本質的に完全に完了された時点をいうものと理解される。検出反応のこの本質的に完了した推移は、例えば、相対反射率ΔrRが、予め設定された短い時間間隔Δt内で、予め設定された閾値を超えてまたは予め設定された閾値よりも低く変化しないことを確認することによって決定されてもよい。この閾値によって、時点t2を決定することができ、t2での反射率rRが、第2時間間隔164の時間推移から検体濃度を測定するためのさらなる特性変数または第2の特性変数として決定されてもよい。
【0207】
図4および図5は、本発明の使用に対して好ましい、テストストリップ116の形態でのテストエレメント114の例示的な実施形態の平面図(図4)および断面図(図5)を示す。この例示的な実施形態において、テストストリップ116は、毛管ストリップとして設けられ、図4において点線で示される毛管エレメント166を備える。図5における断面のレベルは、毛管エレメント166を通って長手方向に伸びるように選択される。毛管エレメント166は、サンプルが適用される適用部位122から、毛管力により試薬エレメント124、特に試薬エレメント領域126へと血液を移送するように適用される。図5において理解できるように、毛管エレメント166は、例えばテストストリップ116における層構造として構成されてもよい。この目的のために、層構造は、1つまたは2つ以上の離間エレメント170(スペーサ)が置かれる担体エレメント168を含んでいてもよい。これらのスペーサ170は、毛管エレメント166がスペーサ170間に形成されるように、互いに中央で離間される。スペーサ170は、次に毛管エレメント166を密閉する少なくとも1つのカバーフィルム172によって覆われる。カバーフィルム172は、開口174(図5参照)、例えばウインドウを有する。示された例示的な実施形態において、この開口174は、試薬エレメント124を有する試薬エレメント領域126によって覆われ、毛管エレメント166と試薬エレメント領域126との間で、少なくとも1つの分離エレメント176、例えば少なくとも1つの分離層178が任意に設けられてもよい。これらのエレメントは、赤血球などの血液成分を、それらを少なくとも大部分は試薬エレメント124から離れるように分離するために用いられる。
【0208】
図5から理解されるように、問合せ光線132は、試薬エレメント領域126と、任意には分離層178を通過する。問合せ光線132は、任意には、試薬エレメント124上で、および/または分離エレメント176上で、および/または図5に示すように担体エレメント178の反射面180上で任意に反射されおよび/または散乱されてもよい。この目的のために、担体エレメント168および/または反射面180は、付加的に例えば担体エレメント168を白くすることによりおよび/または二酸化チタンなどの白色顔料に混ぜることにより、反射特性を有する反射面を示してもよい。もし赤血球などの阻害要素が分離層178に、および/または分離層178と毛管エレメント166との間の界面に蓄積すれば、これらの蓄積物は、図5において明確に理解できる光学構造の場合、少なくとも2回通過され、光学検出がヘマトクリット値によってかなりの程度影響され得ることを示す。本発明のヘマトクリット補正は、したがって、図4および図5の構造の場合、検出精度のかなりの向上に大いに寄与するであろう。
【0209】
図6は、第1時間間隔158の間の反射率の急激な変化がまさにヘマトクリット値に依存することを理解し得る測定例を示す。この例示的な実施形態は、本発明の方法を行うために、第1時間間隔158および第2時間間隔164の境界点の正確な判定が必ずしも必要ではないことを示す。
【0210】
図6は、図3の例示と類似した相対反射率を示す。時間tは、ここでは測定のクロックタイム、例えばテストユニット112および/またはデータ処理ユニット142の内部時計の任意の単位を示す。サンプル120がテストエレメント114に置かれた時点が時間のゼロ点として任意に設定された。
【0211】
図6は、異なる血液サンプル120で得られた2つの測定曲線を示す。具体的には、符号182は、ヘマトクリット値が25%の血液サンプル120の測定を示し、符号184は、ヘマトクリット値が55%の血液サンプル120の測定を示す。両サンプルのグルコース含有量は、等しくなるように選択された。使用されるテストエレメント114および試薬エレメント124の構造に関しては、例示目的のために欧州特許第1035921号明細書、欧州特許第1039298号明細書、国際公開第2007/118647号、欧州特許第0821234号明細書を参照することができる。また、用いられてもよい付加的実施形態は、例えば欧州特許第1035919号明細書または欧州特許第1035920号明細書に記載されている。
【0212】
サンプルが湿潤に起因する急激な変化ΔrRを生成することは、図6から明確に理解可能である。曲線182が約12%の湿潤に起因する急激な変化ΔrRを示し、一方、曲線184は約20%の湿潤に起因する急激な変化ΔrRを示している。
【0213】
図7は、湿潤に起因する急激な変化の間の反射率変化ΔrRの、ヘマトクリット値Hctに関する依存性の系統的な測定を示す。ヘマトクリット値あたり10の血液サンプルが、それぞれグルコースの50mg/dL、120mg/dL、300mg/dLで準備され、評価された。これらの異なるグルコース濃度は、異なる記号で図7に示される。この場合、クロス(×)は50mg/dLの濃度を示し、白丸(○)は150mg/dLの濃度を示し、垂直の線(−)は300mg/dLの濃度を示す。実線は、全測定点を通しての適合で、その式を図7の右上に示す。
【0214】
図7の測定結果は、湿潤に起因する急激な変化ΔrRが、高い再現性でヘマトクリットへの依存性を有することを示す。点線および図7の右上の表示は、図7における各点の測定推移に対する直線の任意の適合を示す。これは、湿潤に起因する急激な変化ΔrRのヘマトクリット値への依存性が、直線の形態で良好に近似して示されていることを示す。
【0215】
ヘマトクリット(HCTまたはHctと略されている)は、したがって、湿潤に起因する急激な変化ΔRem(例えば、図6のΔrRに相当)に関して計算された反射率の変化に基づいて、以下の式によって求められてもよい。
HCT=a*ΔRem(湿潤に起因する急激な変化)b+c. (1)
【0216】
記号a、bおよびcは、例えば特定の試薬について一回、決定されてもよい。例えば、これらの記号a、bおよびcは、データ処理ユニット142のデータ記憶ユニット144に保存され、および/または異なる方法で処理されてもよく、例えば、上に述べたように、例えば少なくとも1つのインターフェースを介しておよび/または少なくとも1つのROMキーによりおよび/または少なくとも1つのRFIDチップにより、装置110および/またはテストユニット112への補正として確認されてもよい。代替的または付加的には、上記の記号は、テストの後に調節され、このように提供されてもよい。代替的または付加的には、その他の可能性も考えられ得る。
【0217】
ヘマトクリット値が、反射率の時間推移に基づいて高い精度でこのように決定され得るので、第2時間間隔164からのグルコースの測定値の補正は、既知のヘマトクリット値を用いて行うことができる。上に説明したように、この補正は、後で行われてもよく、または検体含有量の最初の計算の間の変換において既に含まれていてもよい。
【0218】
ヘマトクリット値および/または他の阻害変数を考慮したグルコース濃度の補正は、上に述べたように、特に、1つまたは2つ以上の補正関数を使用して行われてもよい。例えば、補正式の形態の補正関数は、測定されたグルコース濃度が、例えば、ヘマトクリット値および/または他の阻害変数に依存する補正条件を使用して補正される際に使用されてもよい。例えば、1つまたは2つ以上の補正係数および/または1つまたは2つ以上の補正オフセットが使用されてもよい。上に説明したように、ヘマトクリット値に依存する補正オフセットは、例えば阻害量とも呼ぶことができる。具体的には、ヘマトクリット値によるグルコース濃度の補正は、例えば、補正オフセットの加算または減算によって行うことができ、この補正オフセットは、ヘマトクリット値および/またはその他の種類の阻害変数の関数である。ヘマトクリット値によるグルコース濃度の補正は、例えば、以下の式によって行われてもよいことが実際にわかった。
c(Gluc)corr=c(Gluc)+m*HCTi+n (2)
【0219】
この場合、c(Gluc)corrは、補正されたグルコース濃度であり、c(Gluc)は、測定されたグルコース濃度である。記号mとiは、実験で確認される補正関数の補正記号であり、これらはまた、例えば温度およびグルコース濃度自体に依存し得る。
【0220】
ヘマトクリット値および/またはその他の種類の阻害変数の補正の上記の例は、例示としてのみ理解されるべきである。可能な多くの他の補正も考えられ得る。具体的には、二段階の方法の例が上に与えられており、そこでは、ヘマトクリット値が最初に湿潤に起因する急激な変化から式(1)によって判定され、次に補正されたグルコース濃度が、ヘマトクリット値から式(2)によって判定される。式(1)および(2)が組み合わされて、補正されたグルコース濃度が、湿潤に起因する急激な変化およびグルコース濃度から直接計算される一段階の方法にできることは明白である。多くの他の可能性も考えられ得る。さらなる簡略化において、例えば、システムのヘマトクリット依存性が、反射率の湿潤に起因する低下に基づいて、グルコース濃度から独立して判定できる。
【0221】
補正の技術的実行は、簡略な方法、例えばデータ処理ユニット142を用いて行うことができる。上に説明したように、補正は、グルコースの基準測定値として、グルコース濃度、ヘマトクリット値によって経験的に決定された1つまたは2つ以上の導関数の簡単な加算または減算で構成することができる。この目的のために、例えば1つまたは2つ以上の補正条件および/または補正関数がテストユニット112、例えば、データ記憶ユニット144に保存されてもよい。補正を記載する1つまたは2つ以上の依存性曲線および/または依存テーブルが、例えば多角形または超曲面の形態で保存され得る。測定の最後に、確認されたHCTおよび既知のグルコース濃度を用いて、この補正量が、例えば加算または減算され得る。
【0222】
この補正の保存が、例示目的のために図8に示される。図8は、測定され、補正されていないグルコース濃度の、信頼できる基準方法を用いて決定された実際のグルコース濃度からのずれΔの依存性の人為的に生成された例を示す。この場合、異なるヘマトクリット値を有する血液サンプルが製造され、例えば25%、30%、35%、43%、50%、55%、60%および65%の異なるヘマトクリット値を有するサンプルが使用されてもよく、すなわちヘマトクリット値は、実務上典型的におこる最大範囲をカバーするべきである。かかる血液サンプルは、異なるグルコース濃度、例えば、0〜20mg/dL、50mg/dL、100mg/dL、300mg/dLおよび450mg/dLのグルコース濃度で調製される。実際のグルコース濃度は、例えば検査室ユニットで、またはその他の方法で測定され、少なくとも1つの光学測定値(例えばサンプルの反射率)を用いて確認されたそれぞれの補正されていないグルコース濃度からのずれΔが判定される。具体的には、図8は、信頼すべき基準方法を用いて確認されたサンプルのmg/dL単位の実際のグルコース濃度cを示す横軸で、30%ヘマトクリット値を用いる例を示す。縦軸は、反射率に基づいて測定された補正されていないグルコース濃度とそれぞれ異なる実験の実際のグルコース濃度との間のずれを示す。100mg/dL未満の実際のグルコース濃度に関しては、ずれΔは、mg/dL単位の絶対値としてあたえられ、100mg/dLを超える実際のグルコース濃度に関しては、ずれはパーセントで示されている。図8に示されるように、かかる曲線または多角形は、多数のヘマトクリット値に対して連続して判定されてもよく、それにより、曲線が相互に隣り合って位置する場合、超曲面となり、そこでは、例えば実際の濃度cが第1の軸上に示され、ヘマトクリット値が第2の軸上に示され、ずれΔが第3の軸上に示される。かかる超曲面は、例えば、テーブル内に個々の値、分析、またはその他の形態によりデータ記憶ユニット144中に保存されてもよく、それによって、各ヘマトクリット値および各グルコース濃度について、関連Δが判定でき、グルコース濃度についての補正値に達するために、上記の式(1)および(2)に従って、ヘマトクリットの補正が未補正の測定されたグルコース濃度から引かれ、または未補正の測定されたグルコース濃度に加算され得る。ヘマトクリット依存性は、試薬エレメント124の異なるバッチに亘って少なくとも大部分は安定である。したがって、確認された補正値は、テストユニット112と所定の試薬エレメント124を有するテストエレメント114との組み合わせに対して全般的に有効である。
【0223】
図9および図10は、本発明の機能的原理を明らかにする測定のさらなる例示的な実施形態を示す。上記の場合のようなこれらの測定において、示された例示的な実施形態におけるテストエレメント114は、cNAD補酵素を有する試薬エレメント124を有していたが、A. v. Ketteler et al.: Fluorescence properties of carba-nicotinamide adenine dinucleotide for glucose sensing, ChemPhysChem 2012, 13, pp. 1302-1306頁に記載されたもののように変更された。
【0224】
上記の図3および図6と同様に、拡散反射率曲線の時間推移が再度記録され、湿潤に起因する急激な変化ΔrRが測定された。この場合、図9は、標準化されたRN、すなわち初期に反射率値1に標準化される拡散反射率曲線の時間推移を示す。秒sでの時間tが横軸にプロットされている。測定は、上記のcNAD試薬エレメントで行われ、時間推移および湿潤に起因する急激な変化が波長600nmで判定された。時間推移は、凡例に示された50mg/dL、100mg/dLおよび350mg/dLの様々な血中グルコース濃度に関して示され、20%、40%および60%のそれぞれのヘマトクリット値(ここでは、HCとして示される)を有するサンプルが各グルコース濃度に対して用いられた。血中グルコース濃度は、365nmの励起波長で判定された。
【0225】
図9の測定から、湿潤に起因する急激な変化が高さおよび時点において急激に変化することが明確に理解され得る。具体的には、湿潤に起因する急激な変化は、同じ血中グルコース濃度のサンプルについて、より低いヘマトクリット値においてよりもより高いヘマトクリット値において、より遅く起きる。なお、湿潤に起因する急激な変化は、同じ血中グルコース濃度のサンプルにおいて、より低いヘマトクリット値についてよりもより高いヘマトクリット値について相当により顕著である。
【0226】
この補正は、再度図10にはっきりと示される。この図において、再度、cNAD試薬エレメントに関して、パーセント相対反射率(rR)で与えられる湿潤に起因する急激な変化が縦軸に示されている。横軸は、関連するヘマトクリット値HCTをパーセントで示している。湿潤に起因する急激な変化の測定は、この場合880nmの照射波長を有する赤外発光ダイオードを使用して行われた。測定は、凡例に示すように、0mg/dLおよび550mg/dLのそれぞれの血中グルコース濃度に関して、20%、30%、40%、50%および60%のヘマトクリット値を有する血液サンプルで行われた。
【0227】
図10の測定は、既に図9において明らかであるが、測定値における避けることができない異常を除いて、湿潤に起因する急激な変化が、実務上関連する550mg/dLの血中グルコース濃度まで全範囲に亘ってさえ、本質的に血中グルコース濃度に依存しないという発見を明確にしている。しかしながら、図9の測定によって示されるように、湿潤に起因する急激な変化は、それぞれのヘマトクリット値に明確に依存している。上に説明したように、したがって、湿潤に起因する急激な変化の検出に基づいて、ヘマトクリット値が同様に、cNAD試薬エレメントについても、血中グルコース濃度に依存しないということができる。次に、非依存性のこの発見は、補正された血中グルコース濃度c(Gluc)corrを、例えば上記の式(2)に従って補正アルゴリズムによって決定するために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0228】
110 血液中の検体の濃度を判定するための装置
112 テストユニット
114 テストエレメント
116 テストストリップ
118 テストエレメントホルダ
120 血液サンプル
122 適用部位
124 試薬エレメント
126 試薬エレメント領域
128 光学検出装置
130 問合せ光源
132 問合せ光線
134 検出器
136 応答光線
138 評価装置
140 データ線
142 データ処理装置
144 データ記憶装置
146 操作エレメント
148 表示エレメント
150 第1発光ダイオード(LED1)
152 第2発光ダイオード(LED2)
154 第1発光ダイオードA(LED1A)
156 第1発光ダイオードB(LED1B)
158 第1時間間隔
160 湿潤に起因する急激な変化
162 屈曲
164 第2時間間隔
166 毛管エレメント
168 担体エレメント
170 スペーサ
172 カバーフィルム
174 開口
176 分離エレメント
178 分離層
180 反射表面
182 ヘマトクリット25%
184 ヘマトクリット55%
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10