特許第6111366号(P6111366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6111366-電線引留クランプカバー 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6111366
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電線引留クランプカバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/02 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
   H02G7/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-149709(P2016-149709)
(22)【出願日】2016年7月29日
【審査請求日】2017年1月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595027125
【氏名又は名称】恒和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】作田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】周藤 晴彦
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−096687(JP,A)
【文献】 特開2000−078732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーロッドに連結された電線引留クランプをヒンジによって連結されて開閉自在になっている一対のカバー部材で被覆する電線引留クランプカバーであって、
電線および電線にクランプされた電線引留クランプを収容するクランプ部カバーと、電線引留クランプに接続されたハンガーロッドを収容するロッド部カバーとが一体的に連設されており、
前記ロッド部カバーは、ハンガーロッドの出入り口となるハンガーロッド導入開口部を備え、
前記ハンガーロッド導入開口部は、中心から放射状に切り込まれた放射状切り込み部と、ハンガーロッド導入開口部の周縁部に前記放射状切り込み部に連なる切り込み部とが形成され、ハンガーロッドの径と略同じ幅と長さを有する舌片部が周方向に複数形成されている
ことを特徴とする電線引留クランプカバー。
【請求項2】
前記ハンガーロッド導入開口部は、カバー外側へ向かう円錐状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電線引留クランプカバー。
【請求項3】
前記クランプ部カバーのヒンジが設けられている辺と対向する辺に、下方へ突出する仮止め部が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電線引留クランプカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等に電線を引き留める電線引留クランプのカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
電線引留クランプは、銅電線やアルミ電線等の電線をくさび体により保持して電柱等に引き留めるものである。電線引留クランプは、金属部材で構成されており、露出させたままで放置すると鳥獣害による故障や短絡等が生じうるため、これを絶縁状態で覆う電線引留クランプカバーが必要とされる。電線引留クランプカバーについては、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、絶縁材からなり内面に引留クランプの収容凹部を設けた一対のカバー片を開閉自在に連結し、一側端を電線導入開口部、他側端を碍子導入開口部、斜め上方部を立上り電線導出開口部とし、立上り電線導出開口部の下方と碍子導入開口部の上方を係止具と連結杆により一体的に連設し、その内側に活線工具の挟着部の入る空間部を設けた電線引留クランプカバーが開示されている。
【0003】
電線引留クランプそのものについても種々の提案がなされており、電線引留クランプの一つとして、クランプ本体−くさび体−ロッド保持体−ハンガーロッドが一体的に連結されて構成されたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。ハンガーロッドは、くさび体に対して回動可能となるようロッド保持体によって保持されており、電柱の碍子金具等に連結して使用するものである。
【0004】
このハンガーロッドを用いた電線引留クランプでは、ハンガーロッドおよびロッド保持体が回動するため特許文献1のような碍子導入開口部も一体的に連設されたものではなく、クランプ部を覆うカバーとハンガーロッドおよびロッド保持体とを覆うカバーとを分離した構成の電線引留クランプカバーが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−78732号公報
【特許文献2】特開2011−15497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のクランプ部のカバーとロッド部のカバーとを分離した構成の電線引留クランプカバーでは、それぞれカバーを被せて係止させなければならないためカバーの包被作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ハンガーロッドを用いた電線引留クランプについてカバーの包被作業を簡易にすることができる電線引留クランプカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る電線引留クランプカバーは、ハンガーロッドに連結された電線引留クランプをヒンジによって連結されて開閉自在になっている一対のカバー部材で被覆する電線引留クランプカバーであって、電線および電線にクランプされた電線引留クランプを収容するクランプ部カバーと、電線引留クランプに接続されたハンガーロッドを収容するロッド部カバーとが一体的に連設されており、前記ロッド部カバーは、ハンガーロッドの出入り口となるハンガーロッド導入開口部を備え、前記ハンガーロッド導入開口部は、中心から放射状に切り込まれた放射状切り込み部と、ハンガーロッド導入開口部の周縁部に前記放射状切り込み部に連なる切り込み部とが形成され、ハンガーロッドの径と略同じ幅と長さを有する舌片部が周方向に複数形成されていることを特徴とする。そして、前記ハンガーロッド導入開口部は、カバー外側へ向かう円錐状に形成されているのが好ましい。
【0009】
これによれば、クランプ部カバーとロッド部カバーとが一体的に連設されているので、電線引留クランプの包被作業を簡易にすることができる。また、ロッド部カバーのハンガーロッド導入開口部は、中心から放射状の切り込みを入れ、これに連なる形で周縁部に切り込みを入れて、ハンガーロッドの径と略同じ幅と長さを有する舌片部が周方向に複数形成されているので、回動自在のハンガーロッドを回動角度(通常は垂直向きと水平向きとその中間の3つ)を問わずに収容することができる。
【0010】
ここで、前記クランプ部カバーのヒンジが設けられている辺と対向する辺に、下方へ突出する仮止め部が形成されているのが好ましい。
【0011】
これによれば、一対のカバー部材を閉じる際に仮止め部によってカバーが閉じた状態を保持するので、電線引留クランプの包被作業をさらに簡易化することができる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に係る電線引留クランプカバーによれば、ハンガーロッドを用いた電線引留クランプについてカバーの包被作業を簡易化できる電線引留クランプカバーが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電線引留クランプカバーの斜視図である。
図2】電線引留クランプカバーの正面図である。
図3】ハンガーロッド導入口側のカバー側面図である。
図4】電線引留クランプカバーを開いた状態を示す図である。
図5】電線引留クランプカバーを開いて電線引留クランプを載置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電線引留クランプカバーについて図を参照しながら説明する。
【0015】
図1は電線引留クランプカバーの斜視図であり、図2は正面図である。図3は、ハンガーロッド導入口側のカバー側面図である。図4は、電線引留クランプカバーを開いた状態を示し、図5は電線引留クランプを載置した状態を示している。
【0016】
本実施の形態の電線引留クランプカバー1は、電線を電柱等に引き留める電線引留クランプを覆うカバーであり、ハンガーロッド支持体7を介してハンガーロッド6に接続された電線引留クランプ4のカバーとして使用するものである。ハンガーロッド6は従来のものと同じであり、ハンガーロッド6はU字形状で大部分がポリエチレン等の合成樹脂やゴムで絶縁被覆されている。また、ハンガーロッド支持体7も従来と同じであり、ハンガーロッド6を回動自在に保持するものである。
【0017】
この電線引留クランプカバー1は、ポリエチレン等の合成樹脂又はゴム等の素材で形成されており、クランプ部カバー2とロッド部カバー3とが一体的に連設されて構成されている。また、電線引留クランプカバー1は、一対のカバー部材で構成されており、一対のカバー部材をカバーヒンジ2aで連結することにより開閉自在になっている。閉じられたカバー部材を複数個所に設けられた係止部12,12aで留め合わせるによって、電線引留クランプの包被作業が完了する。
【0018】
クランプ部カバー2は、内部に電線5と電線5をクランプする電線引留クランプ4とを収容できるようになっており、一方の端部に電線5の入り口となる電線導入開口部10と、他方の端部に電線5の出口となる立上り電線導出開口部11とを備えている。クランプ部カバー2のカバーヒンジ2aが設けられている辺と対向する辺には仮止め部30が下方へ突出して設けられている。この仮止め部30は、一対のカバー部材を閉じる際に係止部12,12aが留め合わされるまでの間、カバーが閉じた状態を保持するためのものであり、一対のカバー部材にそれぞれ設けられた突出部が係合するようになっている。
【0019】
ロッド部カバー3は、内部にハンガーロッド6およびハンガーロッド支持体7を収容できるようになっており、クランプ部カバー2と一体的に連設され、クランプ部カバー2側の端部にハンガーロッド支持体7の受け部となるロッド支持体保持部3aを備え、ハンガーロッド6の出入り口側の端部にハンガーロッド導入開口部20を備えている。
【0020】
すなわち、電線引留クランプカバー1は、電線5の出入り口として電線導入開口部10と立上り電線導出開口部11、そして、ハンガーロッド6の出入り口としてハンガーロッド導入開口部20の3つの開口部を備えており、それぞれの開口部の内側には侵入防止柵8が設けられている。なお、侵入防止柵8は鳥獣等が内部へ侵入しないようにするためのものであり、電線5やハンガーロッド6を載置する際に障害とならないよう左右への弾力性を有し、電線5やハンガーロッド6が載置されたときに折れ曲がるようになっている。
【0021】
ハンガーロッド導入開口部20は、カバー外側へ向かう円錐状に形成されている。図3に示すように、ハンガーロッド導入開口部20は、円錐の頂点から放射状に切り込まれた放射状切り込み部21と、放射状切り込み部21に連なってU字状に切り込まれたU字状切り込み部22とが形成されている。この放射状切り込み部21とU字状切り込み部22とによって、ハンガーロッド導入開口部20は先端が尖った複数の槍状片23と複数のU字状片24とが周方向に配列された構成となる。
【0022】
ハンガーロッド6を載置して電線引留クランプカバー1を閉じると、ハンガーロッド6のロッド部分は、当接するU字状片24のみを外側へ折り曲げ、その他の槍状片23およびU字状片24は閉じられたままとなる。なお、電線引留クランプカバー1が一対の分割されたカバー部材であるため、鉛直方向の一対のU字状片24は分割されている。
【0023】
ここで、放射状切り込み部21は、連結先の電柱の碍子金具等に合わせてハンガーロッド6が垂直向きと水平向きとその中間の3つの角度に回動されるため、8方向に切り込みを入れて形成されており、放射状切り込み部21に合わせてU字状切り込み部22も形成されている。放射状切り込み部21を4方向にしても差し支えはないが、閉塞状態を保つために、形成されるU字状片24の幅は8方向の場合と同様にハンガーロッド6のロッド径と同等程度に抑えるのが好ましい。また、同様に閉塞状態を保つために、形成されるU字状片24の長さもハンガーロッド6のロッド径と同等程度にするのが好ましい。
【0024】
このように、本実施の形態に係る電線引留クランプカバー1によれば、クランプ部カバー2とロッド部カバー3とを一体的に連設して構成するので、電線引留クランプの包被作業の簡易化を図ることができる。また、ロッド部カバー3のハンガーロッド導入開口部20を、放射状切り込み部21およびU字状切り込み部22を形成することで複数の槍状片23と複数のU字状片24とが周方向に配列された構成としているので、回動自在のハンガーロッド6をその回動角度に依らずに収容することができる。さらに、一対のカバー部材を閉じる際に係止部12,12aが留め合わされるまでの間、カバーが閉じた状態を保持する仮止め部30が形成されているので、電線引留クランプの包被作業をより簡易にすることができる。
【0025】
以上、本発明に係る電線引留クランプカバーについて、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0026】
例えば、上記実施の形態では、ハンガーロッド導入開口部に放射状切り込み部を形成し、これに連なってU字状切り込み部を形成してU字状片を構成することとしたが、放射状切り込み部に連なってV字状の切り込み部を形成してV字状片を構成するとしてもよく、放射状切り込み部に連なってコの字状の切り込み部を形成してコの字状片を構成するとしてもよい。要するに、ハンガーロッドのロッド径と略同じ幅と長さを有する舌片部が周方向に形成されるよう放射状切り込み部に連なる切り込み部が周縁部に複数形成されていればよい。
【0027】
また、ハンガーロッド導入開口部を円錐状に形成するとしたが、円柱形状の平坦面としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、アルミ電線等の電線を電柱等に引き留める電線引留クランプを覆う電線引留クランプカバーとして有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 電線引留クランプカバー
2 クランプ部カバー
2a カバーヒンジ
3 ロッド部カバー
3a ロッド支持体保持部
4 電線引留クランプ
5 電線
6 ハンガーロッド
7 ハンガーロッド支持体
8 侵入防止柵
10 電線導入開口部
11 立上り電線導出開口部
12,12a 係止部
20 ハンガーロッド導入開口部
21 放射状切り込み部
22 U字状切り込み部
23 槍状片
24 U字状片
30 仮止め部
【要約】
【課題】 ハンガーロッドを用いた電線引留クランプについてカバーの包被作業を簡易にすることができる電線引留クランプカバーを提供する。
【解決手段】 電線5および電線5にクランプされた電線引留クランプ4を収容するクランプ部カバー2と、電線引留クランプ4に接続されたハンガーロッド6を収容するロッド部カバー3とが一体的に連設されており、ロッド部カバー3は、ハンガーロッド6の出入り口となるハンガーロッド導入開口部20を備え、ハンガーロッド導入開口部20は、中心から放射状に切り込まれた放射状切り込み部21と、ハンガーロッド導入開口部20の周縁部に放射状切り込み部に連なるU字状切り込み部21とが形成され、ハンガーロッド6の径と略同じ幅と長さを有するU字状片24が周方向に形成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5