(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6111372
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】圧延ローラーの結合構造
(51)【国際特許分類】
B21B 27/03 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
B21B27/03
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-244317(P2016-244317)
(22)【出願日】2016年12月16日
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0004536
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380186
【氏名又は名称】朴 銀 洙
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 銀 洙
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−079143(JP,A)
【文献】
特開昭57−011708(JP,A)
【文献】
実開昭57−060701(JP,U)
【文献】
実開平01−027101(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング装着部、及び前記リング装着部の両端に取りつけられた軸受部を備えたシャフト、
内周面が前記リング装着部の外周面に嵌合されるリング部、および前記リング装着部から前記リング部の離脱を防ぐ固定部からなるローラの結合構造において、
前記シャフトと前記リング部が結合される際、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング部の外周面の中心は同一で、
前記シャフトの前記リング装着部の中心と前記リング部の内周面の中心は同一で、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング装着部の中心は互いに離隔され、
前記軸受部の直径は前記リング装着部の直径より小さく、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング装着部の中心が、互いに離隔された偏差は、前記リング装着部の直径と前記軸受部の直径間の差より小さいか、或いは同じであり、
前記固定部は、前記リング部の内側に配置され、また、前記リング部の側面から突出しないように配置されることを特徴とする 圧延ローラーの結合構造。
【請求項2】
前記固定部は、
前記リング装着部の外周面の一端が突出したカラー部と、
前記リング装着部の他端に形成されたクランプ装着ねじ部と、
前記カラー部を受容するために、前記リング部に形成されたカラー部挿入部と、
前記クランプ装着ねじ部に結合されるクランプを挿入するために、前記リング部に形成されたクランプ挿入部と、
クランプからなることを特徴とする請求項1に記載の圧延ローラーの結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ローラーの結合構造に係り、より詳しくはシャフトに結合されるリング(Ring)部がシャフトに対してスリップを生じないようにした圧延ローラーの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラーは、円筒形状をしており物体を加圧して変形させたり、物体の移動をさせるために用いられる。物体を加圧して変形させる代表的な圧延ローラーとしては、圧延ローラーがある。
従来の圧延ローラーは、回転力の伝達を受けるシャフトが一体に製造されていたが、 圧延作業中に圧延ローラーの表面が損傷すれば、圧延ローラー全体を交換する必要があるため、経済的な損失が大きくなるほか、圧延ローラー自体もかなりの重量があるため、作業が難しいという問題点があった。
このような問題点を解決する方法が、韓国公開特許10−2012−0070208号に開示されている。これは、
図1に示す通り、被加工物を加圧するための圧延ローラーの外周部を別に製造してシャフト(10)と嵌合することで、リング部(20)だけを交換/修理できるようにした圧延ローラー(1)である。
この圧延ローラー(1)は、シャフトに圧延リング(20)を締め付けた後、圧延リング(20)をカラー部(Collar Unit、 30)またはスペーサ(Spacer、 50)側に圧力を加えるクランプ(40)を備えている。つまり、シャフト(10)の回転力はシャフト(10)に固定されるクランプ(40)が圧延リング(20)の側面部を加圧し、圧延リング(20)に伝えられる。
しかし、圧延リング(20)に作用する被加工物との摩擦力が、圧延リング(20)とシャフト(10)の間にスリップを発生させて被加工物の表面の状態を不良にし、圧延ローラー自体も損傷を受ける問題点がある。
【0003】
これを解決するために、韓国登録特許10−0782751号では、
図2に示す通り、シャフト(10)のカラー部(30)と圧延リング(20)の側方の接合部が傾斜面をなす構造を 開示している。さらに、圧延リング(20)を2個に分けた場合、中央のスペーサの傾斜面を 両側に設けるようにした構造が韓国登録特許10−1242980号に開示されている。
しかしながら、前記の従来技術によれば、圧延リング(20)の側面を傾斜面にする加工が困難であるほか、クランプ(40)が圧延リング(20)の側面と接触しながら突出した形で シャフト(10)に装着されるため、
図3のように幅が一定の圧延機(100)の内部では線材などの被加工物を圧延する加工溝のキャリバー(Caliber、 21)の設置面積が減るため、生産性が下がる問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】KR 10−2012−0070208 A
【特許文献2】KR 10−0782751 B
【特許文献3】KR 10−1242980 B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はシャフトと嵌合されるリング部とシャフトの間にスリップが生じないようにする圧延ローラーの結合構造、およびリング部の表面により多い数のキャリバーの配置ができるようにし、生産効率を上げることができる圧延ローラーの結合構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リング装着部、及び前記リング装着部の両端に取りつけられた軸受部を備えたシャフト、
内周面が前記リング装着部の外周面に嵌合されるリング部、および前記リング装着部から前記リング部の離脱を防ぐ固定部からなるローラの結合構造において、
前記シャフトと前記リング部が結合される際、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング部の外周面の中心は同一で、
前記シャフトの前記リング装着部の中心と前記リング部の内周面の中心は同一で、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング装着部の中心は互いに離隔され、
前記軸受部の直径は前記リング装着部の直径より小さく、
前記シャフトの前記軸受部の中心と前記リング装着部の中心が、互いに離隔された偏差は、前記リング装着部の直径と前記軸受部の直径間の差より小さいか、或いは同じであり、
前記固定部は、前記リング部の内側に配置され、また、前記リング部の側面から突出しないように配置されることを特徴とする。
【0008】
前記固定部は、
前記リング装着部の外周面の一端が突出したカラー部と、
前記リング装着部の他端に形成されたクランプ装着
ねじ部と、
前記カラー部を受容するために、前記リング部に形成されたカラー部挿入部と、
前記クランプ装着ねじ部に結合されるクランプを挿入するために、前記リング部に形成された
クランプ挿入部と、
クランプからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、別のキーホームとキーを備えず、またクランプによりリング部(圧延リング)に圧力を加えなくてもシャフトに挟まれたリング部(圧延リング)とシャフトの間にスリップが発生せず、またリング部(圧延リング)の表面により多数のキャリバーを配置することができ生産効率が上がる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の圧延ローラーの構造を示した図である。
【
図2】従来の圧延ローラーの構造を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例である圧延ローラーの分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施例である圧延ローラーの断面図である。
【
図6】本発明の一実施例である圧延ローラーが適用された圧延機を示した図である。
【
図7】本発明の一実施例である圧延ローラーの作動状態を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施例である圧延ローラーの作動状態を説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施例である圧延ローラーの作動状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
図4は本発明の実施例である圧延ローラーの分解斜視図を示したものであり、
図5は本発明の実施例の圧延ローラーの断面図である。
本実施例のシャフト(10)は圧延リング(20)が嵌合されるリング装着部(12)を中に置き、両側に軸受部(14)を備えている。リング装着部(12)の一端が突出し、圧延リング(20)が嵌合される時にストッパーとなるカラー部(30)を形成し、他端にはクランプ(40)を装着するためのクランプ装着ねじ部(42)が形成されている。
【0012】
本実施例の圧延リング(20)は、カラー部(30)を受け入れるカラー部挿入部(22)と、クランプ装着ねじ部(42)に結合されるクランプ(40)が挿入されるクランプ挿入部(24)が各々シャフト(10)のカラー部(30)、及びクランプ装着ねじ部(42)の位置と 対応する圧延リング(20)の位置に形成されている。
本実施例で圧延リング(20)の外径(D1)は400mm、内径(D2)は220mmである。シャフト(10)の軸受部(14)はシャフト支持及び動力伝達のために多様な直径を備えているが、本発明の「軸受部直径」は、リング装着部(12)とつながる端を除き、軸受部のうち、もっとも大きい直径で、軸受部直径(D3)は192mmである。
【0013】
シャフト(10)に圧延リング(20)を差し込めば、圧延リング(20)の中空部位は、シャフト(10)の軸受部(14)を経てリング装着部(12)と差込み合わされ、カラー部(30)とカラー部挿入部(22)が結びつくまで挿入される。そして、クランプ装着ねじ部(42)にクランプ(40)を組立てた後、クランプ(40)を操作してシャフト(10)に圧延リング(20)を固定させる。これによって、カラー圧延リング(20)はリング装着部(12)に差込み合わされた後、カラー部(30)及びクランプ(40)により構成される固定部により軸方向の移動が抑えられる。
【0014】
本実施例でクランプ(40)は、一般に販売される油圧クランプを使用することが 可能である。従来は、圧延リング(20)をカラー部/スペーサ側へ(すなわち、軸方向へ)加圧するクランプ(40)を用いて圧延リング(20)の側面と各々接触しているカラー部/スペーサ及びクランプ(40)との摩擦力によってシャフトの回転力を伝達していた。そのため、軸方向の加圧力が大きいクランプが必要となり、このようなクランプはその体積が大きく
図1のように圧延リング(20)の側面に付着させる必要があった。しかし、本発明でシャフトの回転力を圧延リングに伝達するのは、クランプの軸方向の加圧力ではないため、クランプはリング 装着部に挿入された圧延リングが軸方向へ移動しないようにすれば充分で、大型である必要はない。
【0015】
従って、クランプ(40)は圧延リング(20)の内側に配置される。さらに、カラー部(30)も軸方向の荷重を耐える必要がないため、小型化がで、圧延リング(20) 内側に配置することができる。したがって、図 6に示す通り、圧延機(100)の圧延ローラーが配置される一定幅の空間において幅広の圧延リング(20)を備えた圧延ローラーが配置できる。
図3に示す従来の圧延リング(20)を備えた圧延機(100)に比べてクランプ(40)幅に相当する幅だけ広い圧延リング(20)が採用できるので、キャリバー(21)をさらに増やして配置することができ、生産効率を大幅上げることができる。
【0016】
本実施例では、リング装着部(12)の一端にだけクランプ(40)を配置して他端にはカラー部(30)が形成されていること、および固定部が形成されることを説明したが、カラー部無しで リング装着部の両端に各々クランプを配置するため、固定部を形成できることは明確である。
本発明のシャフト(10)と圧延リング(20)はそれぞれ2個の軸を持っている。
まず、シャフト(10)の軸受部(14)の中心とリング部(20)の外周面の中心はC1で同一であり、シャフト(10)のリング装着部(12)の中心とリング部(20)の内周面の中心はC2で同一である。
シャフトの軸受部の中心(及びリング部の外周面の中心)C1とシャフトのリング装着部の中心(及びリング部の内周面の中心)C2は互いに離隔されている。 本実施例でC1とC2の間隔は約 2.5mmで、図面上では識別し難いため、図 7以下の図面ではシャフトと圧延リングの大きさ及び偏差量を簡略に誇張して図示し、固定部は図示していない。
【0017】
図7に示す通り、リング装着部(12)に圧延リング(20)が挿入されるためには、軸受部(14)の直径D3はリング装着部(12)の直径D2より小さくなければならない。シャフトの軸受部(14)の中心C1とリング装着部(12)の中心C2の間隔は、リング装着部(12)直径D2と軸受部(14)直径D3の差より小さいか同じに形成する必要がある。
図8は、
図7の圧延ローラーが回転する過程を表したもので、シャフト(10)の軸受部(14)の中心と圧延リング(20)の中心はC1で同一であるので、圧延の全ての過程を通し、上下の圧延ローラー間の間隔は変化しない。
【0018】
このように、圧延ローラーが回転する過程でリング装着部(12)と圧延リング(20)の内周面の中心C1がシャフト(10)の軸受部(14)の中心C2と偏心して生じる
図9の斜線領域が、キー及びキー溝のような役割をするようになり、シャフト(10)と圧延リング(20)の間で回転する際、スリップが生じない。また、リング装着部(12)及び圧延リング(20)の内周面は、その形状が丸形であるため、一般的にシャフトとリング部(圧延リング)に加工される四角凹溝の形態のキー溝と違い、応力集中が発生せず、シャフトの疲労を誘発しないので、優秀な耐久性を持ち、故障の恐れがなくなる。
【符号の説明】
【0019】
1 圧延ローラー
10 シャフト
12 リング装着部
14 軸受部
20 圧延リング(リング部)
21 キャリバー
22 カラー部挿入部
24 クランプ挿入部
30 カラー部
40 クランプ
42 クランプ装着ねじ部
50 スペーサ
100 圧延機
【要約】
【課題】シャフトと嵌合されるリング部とシャフトの間にスリップが生じないようにする圧延ローラーを提供する
【解決手段】
本発明は、リング装着部、及びリング装着部の両端に取りつけられた軸受部を備えたシャフト、内周面がリング装着部の外周面に嵌合されるリング部、およびリング装着部からリング部の離脱を防ぐ固定部からなるローラの結合構造において、シャフトとリング部が結合される際、シャフトの軸受部の中心とリング部の外周面の中心は同一で、シャフトのリング装着部の中心とリング部の内周面の中心は同一で、シャフトの軸受部の中心とリング装着部の中心は互いに離隔され、軸受部の直径はリング装着部の直径より小さく、シャフトの軸受部の中心とリング装着部の中心が、互いに離隔された偏差は、リング装着部の直径と軸受部の直径間の差より小さいか、或いは同じであることを特徴とする。
【選択図】
図8