特許第6111374号(P6111374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111374交信手段とチップカードに対する受け部材とを有する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111374
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】交信手段とチップカードに対する受け部材とを有する装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/02 20060101AFI20170327BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H04B5/02
   G06K19/077 236
   G06K19/077 244
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-505806(P2016-505806)
(86)(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公表番号】特表2016-515737(P2016-515737A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014056592
(87)【国際公開番号】WO2014161883
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】102013005619.5
(32)【優先日】2013年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513327078
【氏名又は名称】セルトガーテ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ワン
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0145135(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099559(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0061933(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02472730(EP,A1)
【文献】 国際公開第2009/075023(WO,A1)
【文献】 特表2013−529019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一ハードウェアインターフェース(311)との非接触交信と、接触ベースの交信との両方用に構成されるデュアルインターフェースチップカード(200)を収受するよう構成された受け部材(110)と、
− 第二ハードウェアインターフェース(321)との非接触交信を可能にするよう構成された交信手段(120)であって、前記第一ハードウェアインターフェース(311)と前記第二ハードウェアインターフェース(321)とは相異なる種類のハードウェアインターフェースである前記交信手段と、
を含む装置(100)であって、
前記交信手段(120)は、前記チップカード(200)が前記受け部材(110)中に収受されたとき、前記交信手段を介して前記第二ハードウェアインターフェースと前記チップカードとの交信が直接実行できるように、前記チップカード(200)と前記交信手段(120)との接触ベースの交信を可能にするよう構成される装置(100)。
【請求項2】
前記第二ハードウェアインターフェースと前記チップカードとの前記交信は、両者の間に追加の交信コンポーネントを接続する必要なしに、前記交信手段を介して直接行うことができる請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記第二ハードウェアインターフェースと前記交信手段とを介する前記チップカードへのアクセスは、あたかも前記チップカードそれ自体が前記第二ハードウェアインターフェースとの交信のために設計されたかのように行うことが可能である請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記チップカード(200)はセキュリティ用途に使用可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記装置(100)は、前記チップカード(200)が前記受け部材(110)中に収受されたときトークンを形成する請求項4に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記チップカード(200)が構成された対象の前記非接触交信は、前記交信手段(120)が可能にするよう構成された前記非接触交信の前記到達範囲よりも小さい到達範囲を有する非接触交信である請求項1〜のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記チップカード(200)が構成された対象の前記非接触交信は、前記交信手段(120)が可能にするよう構成された前記非接触交信の前記送信速度よりも小さい送信速度を有する非接触交信である請求項1〜のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記チップカード(200)が構成された対象の前記非接触交信はパッシブ交信であり、前記交信手段(120)が可能にするよう構成された前記非接触交信はアクティブ交信である請求項1〜のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装置(100)がエネルギ供給手段(130)を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記交信手段(120)は、前記第二ハードウェアインターフェース(321)とのBluetooth通信を可能にするよう構成される請求項1〜のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記チップカード(200)が構成された対象の前記非接触交信は近距離無線通信である請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記装置(100)は、前記第一ハードウェアインターフェース(311)と前記チップカード(200)との前記非接触交信を可能にするよう構成された追加の交信手段(150)を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記追加の交信手段(150)は少なくとも部分的に作動停止可能である請求項12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記チップカード(200)が前記装置(100)中に収受される請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記チップカード(200)が前記装置(100)中に恒久的に収受される請求項14に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記装置は自動車キーの一部である請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項17】
車両ロックシステムに対する認証のための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の前記装置(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップカードを収受するよう構成された受け部材を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップカードは、多くのいろいろな用途に用いられている。使用の一分野に、例えば、銀行取引の電子決済(オンラインバンキング)に関連する、または現金自動預払機(ATM)における認証がある。使用の別の分野には、例えば、自動車のロック、または建物の入り口のロックなどの電子ロックのためのキーとしての使用がある。また、チップカードは、例えば、電気通信サービス提供の使用に対するクレジットなど、クレジットのストレージおよび証明のためにも使用される。多くの場合、チップカードは、格納部、簡単な論理ユニット、またはプロセッサを包含する。プロセッサの処理能力は、例えば、プログラムコードを処理するために用いることができ、プログラムコードは、例えば、チップカードのメモリ中に格納でき、各種の用途に役立てることができる。
【0003】
チップカードにアクセスし、結果としてそれを使えるようにするためには、外部から、チップカード、すなわちそのメモリ、論理ユニットまたはプロセッサへのアクセスが可能でなければならない。このアクセスは、接触ベースもしくは非接触とすることができる。接触ベースの交信は、いくつかの用途状況において技術セキュリティ面で有利であり得る。さらに、接触ベースの交信を可能にするための複雑さはより少なくて済む。接触ベースの交信のため、チップカードの表面にコンタクト部を設けることができる。しかしながら、いくつかの用途状況において、チップカードのユーザに対しては非接触交信の方が簡単な場合がある。チップカードによって制御可能な非接触交信技術の例には、Bluetooth(登録商標)、RFID(無線周波数識別:radio-frequency identification)、および近距離無線通信(NFC:near field communication)が含まれる。接触ベースの交信および非接触交信の両方を備えた、いわゆるデュアルインターフェースチップカードが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、チップカードとの交信の可能な選択肢を拡張する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明による、チップカードを収受するよう構成された受け部材を含む装置によって達成される。このチップカードは、第一ハードウェアインターフェースとの非接触交信用に構成される。本装置は、第二ハードウェアインターフェースとの非接触交信を可能にするよう構成された交信手段をさらに含む。第一ハードウェアインターフェースと第二ハードウェアインターフェースとは、相異なる種類のハードウェアインターフェースである。この交信手段は、チップカードが受け部材中に収受されたとき、チップカードと交信手段との交信を可能にするよう構成される。
【0006】
第一ハードウェアインターフェースとの非接触交信用に構成されたチップカードが、本発明による装置の受け部材によって収受されると、該装置の交信手段はチップカードと交信することができる。該交信手段は、第二ハードウェアインターフェースと非接触交信を可能にするよう構成されているので、第二ハードウェアインターフェースとチップカードとの間の交信は、しかして、この交信手段を使って実行することができる。第二ハードウェアインターフェースと交信手段とを介してチップカードへのアクセスが可能である。この例において、あたかもチップカードそれ自体が第二ハードウェアインターフェースと交信するために設計されているかのように、チップカードと交信することが可能である。この交信選択肢は、第一ハードウェアインターフェースを介して非接触的な仕方でチップカードと交信する選択肢に加えて実施される。第一ハードウェアインターフェースと第二ハードウェアインターフェースとは、相異なる種類のハードウェアインターフェースなので、チップカードには、2つの異なる種類のハードウェアインターフェースを介して到達可能である。チップカードとの非接触交信の可能な選択肢が拡張される。いろいろな作動状況において、持てる特定の特性によって各々の場合に適するハードウェアインターフェースをチップカードとの交信に用いることができる。
【0007】
本発明による装置は、とりわけ、携帯可能な装置とすることが可能である。本装置は、いずれの場合にあっても、外部のエネルギ供給源に恒久的には依存しない独立した装置とすることができる。本装置は、スペース的にコンパクトに構築することが可能である。このために、例示的な実施形態のコンテキストにおいて、本装置はいかなる表示手段および/または、例えば、ボタン、ダイヤル、またはタッチスクリーンなどのいかなるユーザ入力手段もなしに作動することが可能である。すなわち、この装置は一切の表示手段および/または入力手段なしに構築することができる。例示的な実施形態において、本装置の寸法は、フルサイズのチップカードに対するISO規格7810:2003により定められた寸法以下である。これは、少なくとも本装置の表面積に対して適用される。但し、本装置の寸法、特にその表面積は、チップカードの寸法に対する現行の規格にだけによって限定できるものでなく、代わりに、本装置の形状は、チップカードに対するかかる規格によって定められた形状に完全に合致させることも、かかる規格から完全に切り離すことも可能である。
【0008】
チップカードは、少なくとも一つの集積回路(IC:integrated circuit)、すなわち、キャリヤ、特にプラスチックキャリヤ上に配置さるかまたはその中に内蔵されたチップを包含する。該回路には、例えば、メモリを含めることが可能である。このメモリは不揮発性メモリとすればよい。このメモリは、いくつか例を挙げると、読み取り専用メモリ(ROM:read-only memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的消去可能プログラム可能ROM:electrically erasable programmable read-only memory)、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM(登録商標):ferroelectric random access memory)、または相変化ランダムアクセスメモリ(PCRAM:phase-change random access memory)とすることができる。上記に加えまたは上記に換えて、該回路は、例えばランダムアクセスの揮発性メモリ(RAM:random access memory)などの揮発性メモリを包含してもよい。回路の他の例は、単純な論理ユニットまたはプロセッサを含む。本明細書中におけるプロセッサは、マイクロ制御ユニット、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specifc integrated circuit)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)などの、とりわけ、制御ユニット、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラを言及すると理解されるよう意図されている。
【0009】
いろいろな形態のチップカードが知られている。1つの可能な形態はSIMカードである(SIM:subscriber identity module=加入者識別モジュール)。この例において用語「SIMカード」は、SIMカードの各種の実施形態を含む。これらには、例えば、ミニSIMカード、マイクロSIMカード、およびナノSIMカードが含まれる。但し、チップカードは、例えば、銀行カードまたは電話カードであってもよく、ISO7816 ID−1による、かかるチップカードに対する従来の形状を有することが可能である。
【0010】
チップカードが非接触交信用に構成されるということは、それが、チップカードとの非接触交信を可能にするために必要な少なくとも1つのコンポーネントを含むことを意味し得る。但し、チップカードの非接触交信に必要な全てのコンポーネントがそのチップカードに含まれていなければならないことはない。例えば、チップカードは、制御システム、すなわちチップカードの非接触交信を可能にするコントローラを含むことができるが、他方、交信のため追加して必要になるアンテナはチップカードのコンポーネントではない。
【0011】
チップカードが構成された対象の交信が非接触交信であるということは、チップカードと第一ハードウェアインターフェースとの間に、チップカードが第一ハードウェアインターフェースと交信できるような直接の物理的な接続が存在しないことを意味し得る。また、非接触交信は、ワイヤレスであり無接触であると言ってもよい。この非接触交信のために、チップカードは、例えば、ISO10536、ISO14443、またはISO15693規格の1つに対応することが可能である。この交信は、単方向性としてもまたは双方向性としてもよい。
【0012】
ハードウェアインターフェースと言う用語は、ソフトウェアインターフェース単独とは異なるインターフェースであることを明瞭にし、ソフトウェアインターフェースは、例えば、コンピュータプログラム(アプリケーションプログラミングインターフェース、API:application programming interface)のプログラムコンポーネントを呼び出す機能を有する。第一ハードウェアインターフェースは、チップカードとの非接触交信のため必要なハードウェアコンポーネントを含むことができる。
【0013】
第一ハードウェアインターフェースのいくつかの可能な例には、Bluetoothインターフェース、NFCインターフェース、RFIDインターフェース、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN:wireless local area network)インターフェース、認証ワイヤレスUSB(CWUSB:certified wireless USB)インターフェース、および赤外線(IR)インターフェースがある。
【0014】
第一ハードウェアインターフェースは、本装置の外部にあるハードウェアインターフェースである。例えば、これは、本装置とは異なるデバイスのコンポーネントであってよい。かかるデバイスの例には、例えば、デスクトップPC(パーソナルコンピュータ)、タブレットPC、または他の種類の携帯型PC(ノートブック型、ラップトップ型)などのPCがある。他の例には、例えばスマートフォンなどの携帯電話、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、ゲーム機、セットトップボックス、例えば自動車のロックまたは建物のロックなどの電子ロック、現金自動預払機(ATM)、および、例えばクレジットカード端末などの端末装置がある。
【0015】
第一ハードウェアインターフェースに関する上記の説明は、第二ハードウェアインターフェースに対しても適用される。
【0016】
チップカードを収受するための受け部材の構成は、該チップカードに適合された受け部材を含み得る。具体的には、該部材をチップカードの形状に合わせればよい。本装置の交信手段とチップカードとが、チップカードが受け部材中に収受されたとき接触ベースの仕方で相互に交信するよう構成されている場合、該受け部材は、チップカードのコンタクト部に対応するコンタクト部を有するとよい。また、この受け部材には、例えばロック装置を含めることができ、チップカードと交信手段とが相互に交信できるためには、この装置がロックされた状態でなければならない。なぜなら、例えば、受け部材のコンタクト部とチップカードのコンタクト部との間の十分に良好な接触は、両者がロックされた状態においてだけ得られるものだからである。
【0017】
本装置の交信手段は、第二ハードウェアインターフェースとの非接触交信のための機能を果たす本装置の全コンポーネントを含み得る。
【0018】
例えば、この交信手段は、第二ハードウェアインターフェースとの交信に必要なアンテナを含み得る。この交信手段に所属し得るコンポーネントの別の例にコントローラがある。例えば、該コントローラは、第二ハードウェアインターフェースからデータが、例えば本交信手段のアンテナを介し、第二ハードウェアインターフェースが用いるプロトコルによって受信されたとき、該受信データから、第二ハードウェアインターフェースを介して送信されてきた有用な情報(ペイロード)を抽出する機能を有することができる。また一方、該コントローラは、本装置または収受されたチップカードから、有用な情報が第二ハードウェアインターフェースに送信されるとき、その情報を該プロトコルに従って作成する機能も有し得る。実際の送信を第二ハードウェアインターフェースに向かわせるために、コントローラは、例えば、対応する信号を生成し、例えば、それを交信手段のアンテナに供給し該アンテナがそれを送信するようにしてもよい。この交信手段は、第二ハードウェアインターフェースに対応する本装置のハードウェアインターフェースであると理解すればよい。
【0019】
第一ハードウェアインターフェースと第二ハードウェアインターフェースとが相異なる種類のハードウェアインターフェースであるということは、具体的には、交信手段が、第二ハードウェアインターフェースとだけ交信ができるように構成されているが、第一ハードウェアインターフェースとは交信可能に構成されていない、という事実を含み得る。このとき、交信手段は第二ハードウェアインターフェースだけに対応するが、第一ハードウェアインターフェースには対応しない。同様に、チップカードが、第一ハードウェアインターフェースとだけは交信が可能なように構成されているが、第二ハードウェアインターフェースとは交信可能に構成されていないこともあり得る。例えば、第一ハードウェアインターフェースが、例として前述したハードウェアインターフェース(Bluetooth、NFC、RFID、WLAN、CWUSB、IR)の1つである場合、第二ハードウェアインターフェースは、それと種類は異なるので、上記のハードウェアインターフェースの別の1つであり得る。
【0020】
交信手段が、チップカードが受け部材に収受されているとき、該チップカードと該交信手段との交信が可能になるよう構成されるということは、チップカードと第二ハードウェアインターフェースとの交信が、両者の間に追加の交信コンポーネントを接続する必要なしに、交信手段を介して直接行えることを意味し得る。交信手段によるチップカードへの直接のアクセスが可能である。このことが、交信手段とチップカードとの間に、例えばチップカードとの交信以外の機能も遂行し、そしてチップカードとの交信を実施可能にするため起動する必要のある、例えばプロセッサが接続されている諸システムから、本発明を差別化している。対照的に、本発明によれば、あたかもチップカードそれ自体が、第二ハードウェアインターフェースとの交信のために設計されたかのように、チップカードと交信することが可能である。第二ハードウェアインターフェースに対し、チップカード自体が該第二ハードウェアインターフェースと交信するよう構成されたものでないことは見えない。
【0021】
交信手段が、チップカードが受け部材に収受されているとき、該チップカードと交信手段との交信が可能になるよう構成されるということは、少なくとも、チップカードまたは受け部材と交信手段との間に導電性接続が存在する場合において、チップカードとの接触ベースの交信のため必要となり得るチップカードとの交信のための全てのコンポーネントが交信手段の側に存在するということを含み得る。例えば、交信手段は、チップカードと交信するよう構成されたコントローラを含むことができる。このコントローラは、同時に、第二ハードウェアインターフェースとの非接触交信を可能にするよう構成することができる。あるいは、このために交信手段中に別のコントローラを含めてもよい。交信手段は、第二ハードウェアインターフェースとの交信のためのプロトコル、およびチップカードとの交信のためのプロトコルの双方を制御するよう構成することができる。この交信は、単方向または双方向データ交換を含むことが可能である。
【0022】
交信手段とチップカードとの交信が、チップカードが受け部材に収受されているときに可能であるということは、随意的に、チップカードを受け部材の中に単にチップカードを挿入または別の仕方で導入する他に、チップカードと交信手段との間の交信を可能にするために他のステップを実行する必要があるということを含む。かかるステップは、例えばチップカードを受け部材中にロック固定し、例えば、チップカードと受け部材との間に十分な接触が形成されるようにすることであり得る。
【0023】
一例示的な実施形態によれば、チップカードは、セキュリティ用途に使用可能である。
【0024】
かかるセキュリティ用途の例には、とりわけ、識別用途および/または認証用途および/または暗号化用途がある。チップカードがセキュリティ用途に使用可能な場合、該チップカードをセキュアエレメントと言うこともできる。
【0025】
例えば、チップカードのメモリ中に、チップカードの所有者を識別する一意的識別子を格納し、所有者は、これを使って別のエンティティに対し自分を証明することができる。この使用分野には、例えば、自動車または建物へのアクセス制御があり、認証に合格した後にだけアクセスが許可され、または同様にコンピュータへのログオンが許可される。また、チップカードは、デュアルファクタ認証用にも使用可能であり、この認証においては、例えば、チップカードに加えて、例えば現金自動預払機(ATM)の使用に対しほとんどの場合に要求されるように、個人識別番号(PIN)が要求される。他にも多くの例がある。また一方、一意的識別子は、例えば、文書の電子署名にも用いることもできる。この識別子は、例えば、チップカードの所有者の秘密鍵とすることが可能で、これは公開鍵と一緒になって非対称鍵ペアを形成する。この鍵ペアは、例えば、RSA鍵ペア(RSA=Rivest,Shamir,Adleman)としてもよい。また一方、例えば文書または通信の対称暗号化または復号のために使用可能な、チップカード上に格納されたシークレット鍵もあり得る。また、プロセッサをチップカード中に含めることができ、それを、具体的には、識別用途および/または認証用途および/または暗号化用途などのセキュリティ用途に使うことを可能にできる。例えば、該プロセッサは、暗号化オペレーションを実施することができ、あるいは、チャレンジ/レスポンス手法に関連するオペレーションの過程で、該プロセッサは、チャレンジのセットに対するレスポンスの生成に関与することができる。
【0026】
チップカードをセキュリティ用途に使用することが可能な一例示的な実施形態によれば、本装置は、チップカードが受け部材中に収受されているときトークンを形成する。
【0027】
チップカードが受け部材中に収受されている場合、チップカードがセキュリティ用途に使用可能なので、本発明による装置もセキュリティ用途に使用可能であると見なすことができる。セキュリティ用途に使用可能な携帯装置、具体的には、識別用途および/または認証用途に使用可能な携帯装置はトークンまたはセキュリティトークンと言われる。トークンはいろいろな形態で存在するが、ここではそのすべてが含まれるものとする。かかる形態のいくつかの例には、例えば、キーホルダとしてのトークンの構成、および在来のメモリスティック、例えばUSB(登録商標)スティック(USB:Universal Serial Bus=ユニバーサルシリアルバス)に似た構成がある。
【0028】
一例示的な実施形態によれば、チップカードは接触ベースの交信用に構成され、本装置は、該チップカードが受け部材中に収受されているとき、該チップカードとの接触ベースの交信を可能にするよう構成される。
【0029】
交信手段とチップカードとの接触ベースの交信は、接触ベースの交信が、非接触交信に比べてより単純でセキュアな方式で実施可能にできる点に利点があり得る。
【0030】
この例示的な実施形態のコンテキストにおいて、チップカードは、第一ハードウェアインターフェースを用いる非接触交信と、接触ベースの交信との両方用に構成されるので、この例示的な実施形態におけるチップカードは、いわゆるデュアルインターフェースチップカードである。かかるデュアルインターフェースチップカードの例には、ISO7816による接触ベースの交信、およびISO14443による非接触交信の両方に対して装備されたチップカードがある。接触ベースの交信のためのチップカードの構成は、例えばコンタクト部がチップカードの表面に配列されていて、それらの外部側から接触できるコンタクト部を有するチップカードを含み得る。チップカードとの接触ベースの交信を可能にする装置の構成は、該装置の側、例えば該装置の受け部材中に存在するチップカードと接触するためのコンタクト部、および該装置の該コンタクト部と交信手段との間に設けられた導電性接続を含み得る。
【0031】
一例示的な実施形態によれば、チップカードが構成された対象の非接触交信は、交信手段が可能にするよう構成された非接触交信の到達範囲より小さな範囲を有する非接触交信である。
【0032】
この異なる範囲のため、交信手段は、チップカード自体が構成された対象の非接触交信に比べてより大きな交信範囲を可能にする。本発明による装置の例示的な実施形態の使用によって、チップカードによる交信をしかしてより大きな距離に亘って可能にすることができる。
【0033】
一例示的な実施形態によれば、チップカードが構成された対象の非接触交信はパッシブ交信であり、交信手段が可能にするように構成された非接触交信はアクティブ交信である。
【0034】
非接触交信用に構成されるチップカードは、多くの場合、パッシブ非接触交信の方がアクティブ交信に対する構成よりも低い複雑度で可能にできるので、パッシブ非接触交信用だけに構成される。これに対する1つの理由は、パッシブ交信に対しては、チップカードは、例えば、コンデンサまたはバッテリなどのエネルギ供給手段を備える必要がないことである。しかしながら、パッシブ交信の到達範囲および送信速度は、多くの場合、アクティブ交信と比べて限定的である。本発明による装置の交信手段がアクティブ非接触交信を可能にするよう構成されている場合、しかして、本装置の使用によって、より大きな距離に亘りより高い送信速度による、チップカードとの交信を可能にすることができる。
【0035】
この例において、パッシブ交信とは、具体的には、交信を行うために一方の交信相手が別個のエネルギ供給源を必要としない交信であると理解すればよい。この交信相手は、交信に必要なエネルギを、例えば、エネルギ供給源に接続されたもう一方の交信相手の電界から取得することができる。パッシブ交信相手を可能にする交信技術の例には、NFCおよびRFIDが含まれる。したがって、アクティブ交信とは、交信を実施できるようにするために、両方の交信相手がエネルギ供給源に接続されている必要がある交信であると理解すればよい。
【0036】
チップカードがパッシブ非接触交信用に構成されているということは、そのチップカードが、パッシブ交信においてパッシブな交信相手としての役割をするように構成されているということを意味する。
【0037】
一例示的な実施形態によれば、本装置はエネルギ供給手段を含む。
【0038】
このエネルギ供給手段のおかげで、第二ハードウェアインターフェースとのアクティブ非接触交信を可能にするよう構成された交信手段を備えながら、独立した装置を構成することが可能なように、外部のエネルギ供給源からの本装置の独立を維持することが可能となる。
【0039】
エネルギ供給手段は、例えば、コンデンサ、バッテリ、アキュムレータ、または太陽電池を含み得る。エネルギ供給手段は交信手段と関連付けることが可能で、具体的には交信手段に接続することができる。本装置を、エネルギ供給手段を充電するように構成するための対処があり得る。例えば、本装置には、エネルギ供給手段に関連付けられたコイルを含めることが可能で、これを使って誘導により充電のためのエネルギを該エネルギ供給手段に供給することができる。
【0040】
一例示的な実施形態によれば、チップカードが構成された対象の非接触交信は、交信手段が可能にするよう構成された非接触交信の送信速度よりも低い送信速度の非接触交信である。
【0041】
この異なる送信速度により、交信手段は、チップカード自体が構成された対象の非接触交信に比べてより高い送信速度を可能にする。しかして、本発明による装置の例示的な実施形態の使用によって、チップカードとのより高速な交信が可能になり得る。
【0042】
一例示的な実施形態によれば、この交信手段は、第二ハードウェアインターフェースとのBluetooth通信を可能にするよう構成される。
【0043】
この例示的な実施形態のコンテキストにおいて、第二ハードウェアインターフェースは、Bluetoothインターフェースと呼称されることがある。交信手段は、Bluetooth通信手段と呼称されることがある。Bluetoothインターフェースは、昨今、いろいろな種類の多くの装置に備えられている。例えば、多数のスマートフォン、ラップトップおよびタブレットPCが、Bluetoothインターフェースを有する。本実施形態による装置により、この装置を用いるチップカードへのアクセスが可能となる。これにより、チップカードへのアクセスのため特に設計された端末装置なしで済ますことができる。例えばNFCなど他の非接触で動作する交信技術に比べて、Bluetoothは、より高い送信速度およびより大きな到達範囲を提供する。例えば、この範囲は最高100mまでに、送信速度は数Mビット/秒までにすることができる。
【0044】
この例において、用語Bluetooth通信は、低消費電力版Bluetooth規格(BLE)に従った交信を含むことが意図されている。本発明のコンテキストにおいて、BLE規格による交信は、交信手段への比較的低いエネルギ必要性をもたらすことが可能なので、交信手段をこの規格による交信用の交信手段として構成するのが有益であり得る。これは、本装置によるBluetooth通信手段のオペレーションに必要となり得る、エネルギストレージ手段のエネルギ消費容量のより小さな量設定を可能にすることができる。より低いエネルギストレージ容量を有するエネルギストレージ手段は、より大きなエネルギストレージ容量を有するエネルギストレージ手段に対し、より小さな寸法によって差別化することが可能である。したがって、これらは、より簡単な仕方で本発明による装置に組み込むことを可能にできる。BLEが用いられる場合、いくつかのシステムによるチップカードへのアクセスが可能になるので、追加のペア設定は必要がない。
【0045】
一例示的な実施形態によれば、チップカードが構成された対象の非接触交信は、近距離無線通信(NFC)である。
【0046】
この例示的な実施形態のコンテキストにおいて、第一ハードウェアインターフェースはNFCインターフェースと呼称されることがある。近距離無線通信は、これを使って多くのチップカードが既に構成されている技法である。これは、異なった応用分野での使い易さの利点をもたらすことができる。同時に、NFCを使ってパッシブ交信を実行することが可能である。しかして、本発明によるチップカードは、パッシブ非接触近距離無線通信用に構成することができ、換言すれば、近距離無線通信に対して本発明による装置によってエネルギを供給する必要がないようにしながら、近距離無線通信におけるパッシブ交信相手としての役割をさせることができる。近距離無線通信を使う到達範囲は、多くの場合、せいぜい数センチメートルのオーダーで、最高送信速度は0.5Mビット/秒を下回る。
【0047】
交信手段に対し、第二ハードウェアインターフェースを使ってBluetooth通信を可能にし、同時に、チップカードが構成された対象の非接触交信が近距離無線通信であるように構成するのが特に有利であると考えられ得る。こうすれば、近距離無線通信を使ってチップカードにアクセスすることが可能で、また他方では、本装置によりBluetoothを使ってアクセスを行うこともできる。近距離無線通信によるよりも大きな到達範囲および高い送信速度を有するチップカードとの交信も可能になる。近距離無線通信とBluetooth通信とは、特にうまく相互に補完することができる。
【0048】
例えば、この場合、Bluetooth通信を使って、チップカードを初期化または個人専用化するために本装置を用いることが可能である。Bluetooth通信を使って、チップカード上にソフトウェアをインストール、設定、または削除することもできる。また、Bluetoothを使って、チップカードのブロックおよびブロック解除、クレジットのチャージ、またはチップカードのステータスの問い合わせを行うことが可能である。したがって、これら全ての処置を、無線(OTA)でワイヤレスに実行することができる。また一方、例えば、支払い用途、アクセス制御用途、および電子旅行券または入場券用途などにおけるチップカードの他の日常的使用は、近距離無線通信を使って実行することが可能である。但し、Bluetooth通信も上記の用途に関連して使用することができる。本装置がトークンを形成する場合、チップカードが受け部材に収受されていれば、NFCばかりでなくBluetoothを介して該トークンの機能を使用可能にすることができ、例えば、トークンを使ってBluetooth通信を介し電子署名を実行することが可能であり、認証を実行することが可能であり、トランザクションを承認することが可能であり、支払いを有効化することが可能であり、またはデータを暗号化または復号することが可能である。また、Bluetoothを介する使用に関連して上記で述べた機能および用途は、NFCを介しても使用可能にすることができる。一般に、この点での機能および用途の列挙は最終的なものでなく、単に明瞭化のためここで述べない多くの他の例がある。
【0049】
一例示的な実施形態によれば、本装置は、第一ハードウェアインターフェースとのチップカードの非接触交信を可能にするよう構成された追加の交信手段を含む。
【0050】
チップカードは、この交信に必要な全ての手段を含めることなく、第一ハードウェアインターフェースと非接触交信するよう構成することが可能である。追加の交信手段が、第一ハードウェアインターフェースとの非接触交信に対し、チップカードのこの構成を補完し、しかして第一ハードウェアインターフェースとの交信を可能にすることができる。このとき、この追加の交信手段は、チップカードおよび本発明による装置の外部に設ける必要はない。
【0051】
この追加の交信手段は、例えば、チップカードの第一ハードウェアインターフェースとの交信に必要なアンテナを含むことができるが、但しこれはチップカード自体には含まれていない。他方で、第一ハードウェアインターフェースとチップカードとの交信に必要なコントローラはチップカードによって備えることが可能で、該コントローラは、第一ハードウェアインターフェースとの非接触交信のためのチップカードの構成を提供することができる。
【0052】
一例示的な実施形態によれば、この追加の交信手段は、少なくとも部分的に作動停止可能である。
【0053】
追加の交信手段を少なくとも部分的に作動停止させることによって、チップカードとの第一ハードウェアインターフェースの交信を防止することができる。これは、このとき第一ハードウェアインターフェースを介するチップカードへのアクセスが不可能になるので、セキュリティの面で利点を提供することができる。
【0054】
この追加の交信手段を作動停止させる少なくとも部分的な能力は、この例では、該作動停止状態では、追加の交信手段が使用できないので、第一ハードウェアインターフェースとチップカードとの交信が不可能であるということを意味し得る。この作動停止の能力は、例えば、本発明による装置に含まれるスイッチによって提供することが可能である。このスイッチは、チップカードと追加の交信手段との間の接続を提供または遮断し、遮断状態において追加の交信手段が使用できないように構成することができる。但し、追加の交信手段の電子コンポーネントを、例えばエネルギ供給源からの分離によって、オフにすることも可能である。追加の交信手段は、少なくとも部分的に機械的に作動停止可能にすることができる。機械的に作動停止できる能力は、作動停止および随意的に再起動が簡単な仕方で、特に操作者に特別な知識がなくても実施できるという利点を有し得る。例えば、作動停止/再起動のため設けられたスイッチの場合において、機械的に作動可能な作動エレメントを備えることが可能で、これを使って、スイッチを1つのスイッチ状態から他の状態へと移動することができる。
【0055】
一例示的な実施形態によれば、チップカードは本装置の中に収受される。
【0056】
例えば、チップカードは、本装置の中に恒久的に収受される。例えば、チップカードは、受け部材の中に恒久的に収受される(しかして、本装置の中に恒久的に収受される)。例えば、前述したように、本装置および本装置の中に恒久的に収受されたチップカードは、トークン、具体的にはセキュリティトークンを形成する。
【0057】
例えば、チップカードは、取り外し不可能に受け部材に接続されていれば、受け部材に収受されていると理解される。取り外し不可能な接続は、破壊によってだけ分離が可能である。取り外し不可能な接続の例には、接着ボンド、はんだ接続、溶接接続、ボンド接続、およびリベット接続がある。
【0058】
前述のように、本装置の交信手段とチップカードとが相互接触ベースで交信するように構成されている場合、受け部材には、チップカードが受け部材に収受されるときチップカードのコンタクト部に対応する、コンタクト部を含めることができる。例えば、チップカードが受け部材中に恒久的に収受されるようにするため、チップカードのコンタクト部が、対応する受け部材のコンタクト部にはんだ付けまたは(例えば、導電接着剤によって)ボンドされる。これは、例えば、チップカードと本装置との間の電気接触を可能な限り良好にし、チップカードと本装置との分離を防止することを確実にするために有益である。
【0059】
チップカードを収受するよう構成された、本装置の取り付けスペースは、例えばこの受け部材であると理解される。例えば、この取り付けスペースには、チップカードがそこに収受できるように、それ以外に配置された装置のエレメントはない。例えば、本装置は、チップカードと接触するためのコンタクト部を備えた回路基板を含むことができる。例えば、チップカードが中に置かれる取り付けスペースは、チップカードが該回路基板の対応するコンタクト部に接続されたとき、これを受け部材であると理解すればよい。例えば、この取り付けスペースにおいて、回路基板上にはさらなるエレメントは一切配置されない。
【0060】
一例示的な実施形態によれば、本装置は自動車キーの一部である。例えば、本装置は、自動車キーとして形成されおよび/または自動車キーの部品として自動車キー中に配置される。
【0061】
例えば、本装置はチップカードとともに、車両ロックシステムに対し本装置の所有者、本装置のユーザ、および/または本装置の持ち主を証明するよう構成される。さらに、本装置はチップカードとともに、例えば、建物ロックシステム、駐車管理システム、事務管理システム、および/またはマネジメントシステムなど他のシステムに対し本装置の所有者、ユーザ、および/または持ち主を証明するよう構成される。
【0062】
例えば、チップカードおよび/または追加の交信手段および/または当該交信手段は、自動車の車両ロックシステムおよび/または他のシステムとの非接触交信用に構成される。例えば、チップカードおよび/または追加の交信手段は、前述のように、NFC通信をサポートする。例えば、当該交信手段は、前述のように、Bluetooth通信をサポートする。このことは、例えば、相異なる通信プロトコルをサポートし、複数の他の既存のシステムとのできるだけ高い両立性を可能にするために有利である。
【0063】
チップカードのメモリ中に、例えば、チップカードおよび/または本装置の所有者、ユーザ、および/または持ち主を識別し、それらの人がこれを使って車両ロックシステムに対し自分を証明することが可能な、一意的識別子を格納することができる。例えば、この一意的識別子を、チップカードおよび/または追加の交信手段および/または当該交信手段によって、車両ロックシステムに直接に通信する(例えば送信する)ことが可能である。例えば、車両ロックシステムが、一意的識別子によって自動車開放の許可対象となる本装置の所有者を認識した場合にだけ、自動車が開放される、および/または自動車のイモビライザが作動解除される。
【0064】
機械的な自動車キーと対照的に、このことは、例えば、本装置がその一部である自動車キーが、1つの自動車に対してだけでなく複数の自動車(例えば、カーシェアプロバイダの複数の自動車)に対する証明のために使われる場合には有益である。例えば、自動車群の全ての車両ロックシステムにおいて、この一意的識別子をプログラムすることが可能で、プログラミングを調整することによって、これら自動車のユーザグループを拡大または縮小することができる。
【0065】
例えば、チップカードおよび/または本装置の所有者、ユーザ、および/または持ち主は、1つ以上の他のシステムに対し、この一意的識別子を使って自分を証明することが可能である。あるいは、チップカードのメモリ中に、少なくとも一つの追加の一意的識別子を格納することが可能で、この識別子はチップカードの所有者を識別し、これを使って、所有者は他の諸システムに対し自分を証明することができる。例えば、この一意的識別子は、チップカードおよび/または追加の交信手段および/または当該交信手段によって他のシステムに直接通信する(例えば送信する)ことが可能である。
【0066】
このことは、例えば、各種の応用分野において、本装置のできるだけ効率的な使用を可能にする上で有益である。例えば、本装置は、本装置の所有者、ユーザ、および/または持ち主によって、車両ロックシステムに対する証明のためだけでなく、(例えば駐車料の)支払いにも使用することができる。
【0067】
この一意的識別子は、例えば、一人の人または人々のグループに割り当てられる。一意的識別子の例には、ユーザ証明書および/または1つ以上の鍵がある。前述したように、この識別子は、例えば、チップカードの所有者の秘密鍵とすることができ、これは公開鍵と併さって非対称鍵ペアを形成する。また、これは、例えば、チップカードに格納されたシークレット鍵とすることもでき、これは、例えば文書または通信の対称暗号化のために使用が可能である。また、チップカード中に含まれるプロセッサは、セキュリティ用途、具体的には、識別用途および/または認証用途および/または暗号化用途に使用可能にすることができる。例えば、該プロセッサは、暗号化オペレーションを実施することができ、あるいは、チャレンジ/レスポンス手法に関連して、チャレンジに対するレスポンスの生成に関与することができる。
【0068】
或る例示的な実施形態において、装置は車両ロックシステムに対する認証のために使われる。
【0069】
以降に、4つの図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明による装置の或る例示的な実施形態の概略図である。
図2a図1による装置の受け部材中に収受可能なチップカードの例の概略図である。
図2b図2aによるチップカードの内部のコンポーネントの概略図である。
図3図1による装置の概略図であって、図2aおよび図2bのチップカードが、本装置およびチップカードの使用のための環境の或る例の状況において、受け部材に収受されている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、本発明による装置100の或る例示的な実施形態の概略図である。
【0072】
装置100は、以降では単にSIMカードと称する、マイクロSIMカードに対する受け部材110を有する。受け部材110中には、SIMカードが受け部材110中に収受されたときSIMカードのコンタクト部と接触する配列されたコンタクト部111が在る。装置100は、Bluetooth通信手段120をさらに含む。これら手段は、低消費電力版Bluetooth規格による交信用に構成される。Bluetooth通信手段120は、Bluetoothアンテナ121およびマイクロコントローラ122を含む。マイクロコントローラ122にエネルギを供給するために、バッテリ130が備えられる。バッテリ130は使い捨てバッテリである。但し、これに換えて再充電可能なバッテリを使うことも可能である。この場合、バッテリを再充電するために、装置100はコイル(図示せず)を含むことができ、それを使って、誘導方式でバッテリを充電することが可能である。Bluetooth通信手段120は、接続140によって受け部材110のコンタクト部111に接続される。装置100は、NFC通信手段150をさらに含む。該手段はNFCアンテナ151およびスイッチ152を含む。スイッチ152は、スライド部材(図示せず)を使って機械的に作動することができる。スイッチ152が閉じた状態で、NFCアンテナ151は、接続160によって受け部材110のコンタクト部111に接続される。Bluetooth通信手段120を使って、受け部材110中に収受されたSIMカードとBluetoothインターフェースとの交信が可能にされる。この交信は、Bluetooth技術を用いて非接触方式で実行される。NFC通信手段150を使うことによって、スイッチ152が閉じられたとき、受け部材110中に収受されたSIMカードとNFCインターフェースとの同様な非接触交信が可能にされる。装置100中には、表示手段またはユーザ入力手段は含まれない。
【0073】
集積回路としてのマイクロコントローラ122を含め、装置100の諸コンポーネントはプラスチックキャリヤ101中に組み込まれる。
【0074】
図2aは、マイクロSIMカード200の一例の概略図を示し、該カードは、図1の装置100の受け部材110中に収受可能である。SIMカード200は、表面上に、複数のコンタクト部211を有するコンタクト面210を有する。
【0075】
図2bは、図2aによるチップカード200の内部のコンポーネントの概略図を示す。
【0076】
チップカード200は、入力/出力マイクロコントローラ(I/O μC)220と、プロセッサ(中央処理ユニット、CPU:central processing unit)230と、ROM240と、RAM250と、EEPROM260と、を含む。また、EEPROM260の代わりにまたはこれに加えて、例えば、フラッシュメモリを備えることも可能である。マイクロコントローラ220は、マイクロコントローラ220とプロセッサ230との間でデータ交換が可能なように、プロセッサ230に接続される。プロセッサ230は、ROM240、RAM250、およびEEPROM260に、これらコンポーネントにアクセス可能なようにさらに接続される。SIMカード200は、いわゆるデュアルインターフェースチップカードであり、これは、ISO7816による接触ベースの交信用、およびISO14443による非接触交信用の両方用に構成される。このため、マイクロコントローラ220はそれに沿って構成され、マイクロコントローラ220の、SIMカード200のコンタクト部211への接続が備えられた。
【0077】
製造者によってあらかじめ定められたSIMカード200の一意的識別子は、ROM240中に格納される。プロセッサ230上でソフトウェアプログラムを実行するために、まず、プログラムコードがRAM250中にロードされる。また、プログラムが実行されている間は、オペランドもRAM250中に置かれる。ユーザがSIMカード200上に格納するソフトウェアプログラムおよびデータは、EEPROM260中に格納される。ROM240、RAM250、およびEEPROM260の、マイクロコントローラ220への接続はプロセッサ230を介して設けられる。
【0078】
SIMカード200はセキュリティ用途に使用可能である。したがって、これはセキュアエレメントと称することもできる。例えば、これは識別用途および/または認証用途および/または暗号化用途に使用可能であり得る。例えば、SIMカード200の一意的識別子、この識別子は製造者によってあらかじめ定められROM240中に格納される、は、SIMカード200から対応するアクセス端末装置に送信されることによって、アクセス制御に用いることができる。同様にして、これは、例えば、コンピュータへのアクセスを得るために使うことも可能である。また、これは、例えば、PINと一緒に、例えば現金自動預払機(ATM)での引き出しを行う際のデュアルファクタ認証のために使うこともできる。別の例によれば、RSA鍵ペアの秘密鍵をEEPROM260中に格納し、文書の電子署名のために用いることが可能である。また一方、対称暗号化または復号のためのシークレット鍵をSIMカード200上に格納することもできる。別の例に関連して、プロセッサ230は、それがEEPROM260中に格納されたコンピュータプログラムを実行するとき、暗号化または復号オペレーションを実施することができ、あるいは、チャレンジ/レスポンス手法との関連で、レスポンスの生成に関与することができる。
【0079】
図3は、図1による装置100の概略図を示し、図2aおよび図2bのSIMカード200が、装置100およびSIMカード200を使用するための環境の或る例の状況において、受け部材110に収受されている。
【0080】
SIMカード200のコンタクト部211は、受け部材110のコンタクト部111に当接している。受け部材110は、ロック(図3に示されず)を含むことができ、これはロック固定された状態において、コンタクト部111とSIMカード200のコンタクト部211との間の良好な接触を確実にする。上記で説明したように、SIMカード200は、セキュリティ用途に使用可能で、装置100は、SIMカード200が受け部材110中に収受されているとき、トークンを形成する。図1aとは対照的に、図3では、スイッチ152は閉じられており、図3では、NFCアンテナ151と、受け部材110のコンタクト部111との接続、しかしてSIMカード200との接続が設けられている。
【0081】
図3は、装置100の外部にある端末装置310、および同様に装置100に対して外部のPC320を示す。端末装置310は、NFCハードウェアインターフェース311を含む。PC320は、Bluetoothハードウェアインターフェース321を含む。PC320はインターネット330に接続されている。図3に示されているのとは異なるが、当然、端末装置310もインターネット330に接続されていることがあり得る。この例における端末装置310およびPC320は、類似のハードウェアインターフェースを含み得る他の諸装置を代表している。
【0082】
Bluetooth通信手段120のマイクロコントローラ122は、SIMカードとのBluetooth通信および接触ベースの交信の両方用に構成される。該コントローラは、SIMカードとのBluetooth通信および接触ベースの交信に対するプロトコルを制御する。さらに、該コントローラは、各場合において、対応する電気出力信号を生成し、また処理をすることもできる。SIMカード200とBluetooth通信手段120との間の電気接続は、コンタクト部111および接続140によって提供される。しかして、装置100は、SIMカード200が受け部材110中に収受されているとき、SIMカード200との接触ベースの交信を可能にするよう構成される。Bluetooth通信手段120へのSIMカード200の接触ベースの接続によって、SIMカード200とBluetooth通信手段120との間のセキュアな交信が、実装上の複雑さがほとんどなくして得られる。
【0083】
NFC通信手段150は、Bluetooth通信手段120に対する追加の交信手段を形成する。スイッチ152が閉じられ、SIMカード200が受け部材110に収受されると、SIMカードがNFCアンテナ151に接続される。このとき、NFCアンテナは、NFCインターフェース311とSIMカード200との非接触交信を可能にする。受け部材110からのそしてその結果としてSIMカード200からの、NFCアンテナ151の分離は簡単な仕方で行うことができる。このためには、スイッチ152を機械的に開状態に移動することが必要なだけである。このとき、NFCアンテナ151はもはや使用可能でなくなる、すなわち作動停止される。その後、端末装置310またはそのNFCインターフェース311とSIMカード200との間の望ましからぬNFC通信は不可能になる。セキュリティが向上する。
【0084】
SIMカード200が受け部材110中に収受されると、装置100は、SIMカード200との交信の可能な選択肢を拡大することができる。SIMカード200によってネイティブにサポートされているNFC通信だけでなく、SIMカード200とのBluetooth通信を行うことも可能になる。
【0085】
SIMカード200とBluetoothインターフェース321とのBluetooth通信は、他の交信コンポーネントを間に接続する必要なしに、Bluetooth通信手段120を介して直接行うことができる。この理由は、Bluetooth通信手段120には、SIMカード200との接触ベースの交信をし、およびBluetoothインターフェース321とBluetooth通信をするための全てのコンポーネントが存在するからである。具体的には、コントローラ122は、Bluetooth通信のための、およびSIMカードとの接触ベースの交信のためのプロトコルを制御する。Bluetooth通信手段120によるSIMカード200への直接アクセスが可能である。したがって、あたかもSIMカード200それ自体がBluetoothインターフェース321と交信するよう設計されたかのように、該カードと交信することが可能である。Bluetoothインターフェース321に対しては、SIMカード200自体はBluetoothインターフェース321と交信するように構成されていない、ということは見えない。
【0086】
NFC通信とBluetooth通信とは特にうまく相互補完する。例えば、Bluetooth通信手段120によって可能にされるBluetooth通信の到達範囲および送信速度は、SIMカード200が接触ベースの交信に加えて構成された対象のNFC通信に比べて大きい。反面、NFC通信は、これが、パッシブ交信、すなわち交信を行う交信相手がエネルギ供給源を有する必要がない交信を可能にするという利点を有する。この例において、SIMカード200は、パッシブなNFC通信用に構成される。しかして、該カードは、このNFC通信においてパッシブ交信相手としての役割を果たす。NFCインターフェース311とのNFC通信のために、SIMカード200または装置100に対してエネルギを供給する必要はない。このNFC通信に対し必要なエネルギは、端末装置310のNFCインターフェース311との交信の過程でNFCインターフェース311によって生成される電界から取得される。アクティブ交信であるBluetooth通信に対しては、関与する全ての交信相手がエネルギ供給を必要とするので、バッテリ130が、Bluetooth通信手段120のマイクロコントローラ121に供給する。しかしながら、Bluetooth通信に加えて別のアクティブ交信を可能にする必要がある場合に対して、バッテリ130のエネルギストレージ必要容量を低減することができる。必要なスペースの低減が得られる。また、同じ理由で、Bluetooth通信手段120をBLE規格による交信用に構成することは有益である。
【0087】
チップカードとのNFC通信のための端末装置310と同様な仕方で構成された端末装置が、多数、多岐にわたる用途のために用いられている。わずかな選定例には、支払い用途、アクセス制御用途、および電子旅行券または入場券用途が含まれる。かかる用途に関連して、SIMカード200はNFC通信を使って端末装置310と相互作用することができる。SIMカード200が、装置100の受け部材110に収受されると、さらにBluetoothを介して該カードにアクセスすることが可能になる。NFCに対する、到達範囲および送信速度に関するBluetoothの利点が使用可能になる。さらに、インターフェース321などのBluetoothインターフェースは、例えば、PCまたはスマートフォンなど非常に多くの装置において利用可能である。
【0088】
より大きな到達範囲およびより高い送信速度が有益な用途に対し、SIMカード200とのBluetooth通信を使用することができる。しかして、例えば、PC320およびそのBluetoothインターフェース321を介し、SIMカード200の初期化、個人専用化、ブロック、またはブロック解除を行うことが可能である。この例において、SIMカード200と簡単にやり取りするため、PC320の、例えばスクリーンなどの表示手段、ならびに例えばマウスおよびキーボードなどの入力手段を使うことができる。SIMカード200上へのソフトウェアのインストールのため、およびそのソフトウェアの設定または削除のため、PC320によって、Bluetoothを介し装置100を使って、SIMカード200にアクセスすることが可能である。PC320はインターネット330に接続されているので、SIMカード200へのリモートアクセスは、インターネット330、PC320、および装置100を介して行うことができる。例えば、PC320によって、ソフトウェアまたはメディアファイルを、インターネット330からSIMカード200上に、具体的にはEEPROM260中にロードして格納することも可能である。Bluetoothを介する使用に関して、ここで挙げた機能および用途は、NFCを介しても使用可能にすることができる。逆の場合についても、同じことが言える。一般に、この点におけるこれらの機能および用途の列挙は、決して最終的なものではなく多数の他の例があるが、単に明瞭化のためここでは述べない。
【0089】
装置100は携帯可能であり、独立して機能することができる。装置100は、そのオペレーションのために外部のエネルギ供給源には依存しない。というのは、NFC通信はパッシブ方式で実施することができ、Bluetooth通信手段120に対しては、装置100のエネルギ供給源はバッテリ130から成るからである。装置100は、SIMカード200とのBluetooth通信およびNFC通信を可能にするために必要な全てのコンポーネントを含む。この実施形態により、装置100によってSIMカード200の交信の可能な選択肢が拡張され、装置100はSIMカード200と一緒にSIMカード200単独の場合と同程度にうまく取り扱うことができる。
図1
図2a
図2b
図3