特許第6111381号(P6111381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111381ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111381
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 279/18 20060101AFI20170327BHJP
   C07D 279/20 20060101ALI20170327BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALN20170327BHJP
   A61P 39/02 20060101ALN20170327BHJP
   A61K 49/00 20060101ALN20170327BHJP
   A61P 33/06 20060101ALN20170327BHJP
   A61P 31/12 20060101ALN20170327BHJP
   A61P 25/24 20060101ALN20170327BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   C07D279/18
   C07D279/20
   !A61K31/5415
   !A61P39/02
   !A61K49/00 Z
   !A61P33/06
   !A61P31/12
   !A61P25/24
   !A61P25/28
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-533750(P2016-533750)
(86)(22)【出願日】2014年8月15日
(65)【公表番号】特表2016-528237(P2016-528237A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】AU2014000807
(87)【国際公開番号】WO2015021500
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】2013903099
(32)【優先日】2013年8月15日
(33)【優先権主張国】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512264910
【氏名又は名称】ユーファーマ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ユーティック マルヴィン
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542786(JP,A)
【文献】 特表2009−542781(JP,A)
【文献】 特表2008−513535(JP,A)
【文献】 特表2007−512297(JP,A)
【文献】 Journal of AOAC International,1997年,80,31−35
【文献】 Gensler WJ et al,J Org Chem,1966年,Vol.31, No.7,p.2324-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 279/18〜20
A61K 31/5415
A61K 49/00
A61P 25/24
A61P 25/28
A61P 31/12
A61P 33/06
A61P 39/02
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミノフェノチアジニウム化合物をアスコルビン酸と接触させて、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを生成する工程(i)と、
工程(i)で得られたプロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを精製する工程(ii)と、
工程(ii)で得られた精製されプロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを酸化剤と接触させて、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物に戻す工程(iii)とを含み、
それによって前記ジアミノフェノチアジニウム化合物を精製する、
ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製方法。
【請求項2】
前記ジアミノフェノチアジニウム化合物を提供するために後工程で精製および酸化されるプロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスが、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ジアミノフェノチアジニウム化合物が式Vの化合物である、請求項1または請求項2の方法。
【化1】
式V
ここで、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルから選ばれる。なお、アルキル基およびアルケニル基はそれぞれ、ヒドロキシ、ハロゲン、またはアルコキシで置換されていてもよい。
、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、ニトロ、ハロゲン、ハロアルキル、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルから選ばれる。
Xは、アニオン性の対イオンである。
【請求項4】
前記ジアミノフェノチアジニウム化合物が、メチレンブルー、メチレングリーン、アズールA、アズールB、およびアズールCからなる群より選ばれた、請求項1〜3のうちいずれか1項の方法。
【請求項5】
メチレンブルーをアスコルビン酸と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを生成する工程(i)と、
安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスを精製する工程(ii)と、
精製され安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーを酸化剤と接触させて、メチレンブルーを生成する工程(iii)とを含み、
それによって前記メチレンブルーを精製する、
メチレンブルーの精製方法。
【請求項6】
前記ジアミノフェノチアジニウム化合物またはメチレンブルーは、酸性pHでアスコルビン酸と接触させる、請求項1〜5のうちいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記酸性pHは3未満である、請求項6の方法。
【請求項8】
前記酸性pHは1未満である、請求項6の方法。
【請求項9】
アスコルビン酸が一塩基または二塩基の無機酸から選ばれた酸で酸性化された溶液である、請求項1〜8のうちいずれか1項の方法。
【請求項10】
前記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸、および過塩素酸からなる群より選ばれた、請求項9の方法。
【請求項11】
アスコルビン酸との接触は有機溶媒中で行う、請求項1〜10のうちいずれか1項の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒がC1−C8のアルコールである、請求項11の方法。
【請求項13】
プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスまたは安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスの精製は、クロマトグラフィ、イオン交換、ろ過、洗浄、および再結晶化からなる群より選ばれた方法による、請求項1〜12のうちいずれか1項の方法。
【請求項14】
前記精製は再結晶化による、請求項13の方法。
【請求項15】
前記再結晶化は、水、アルコール、およびエーテルからなる群より選ばれた溶媒から行う、請求項14の方法。
【請求項16】
前記酸化剤が金属を含まない酸化剤である、請求項1〜15のうちいずれか1項の方法。
【請求項17】
前記酸化剤が、酸素、オゾン、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、硝酸、硝酸塩化合物、リン酸、ペルオキソ二硫酸、過硫酸、硫酸、亜硫酸、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、および他の類似のハロゲン含有化合物、次亜塩素酸塩、および他の次亜ハロゲン酸塩化合物、過マンガン酸塩、亜酸化窒素、およびキノンからなる群より選ばれた、請求項16の方法。
【請求項18】
安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーがロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである、請求項5の方法。
【請求項19】
工程(i)より前に、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物または前記メチレンブルーを酸性溶液から再結晶化する工程をさらに含む、請求項1〜18のうちいずれか1項の方法。
【請求項20】
工程(iii)より後に、精製された前記ジアミノフェノチアジニウム化合物または前記メチレンブルーを酸性溶液から再結晶化する工程をさらに含む、請求項1〜19のうちいずれか1項の方法。
【請求項21】
ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製における、N−10プロトン化され安定化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製、およびこの精製方法を通じて生成された新規なジアミノフェノチアジニウム化合物に関する。本発明は特に、これに限定されるものではないが、新規な中間コンプレックスを用いたメチレンブルーおよび近縁関連化合物の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで、背景技術に関するいずれの文献も、オーストラリアまたは他国においてそのような技術が一般的な知識であることを認めるものとして解釈されるものではない。
【0003】
ジアミノフェノチアジニウム染料は、よく知られている。特に、医療用の染料または解毒剤であり、「メチレンブルー」として知られるメチルチオニニウムクロライド(3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン−5−イリウムクロライド)は、比較的近年、その歴史的な用途以外の医学的用途にもその利用が広がってきている。この染料に対する他の一般的な名称には、テトラメチルチオニンクロライド、C.I.ソルベントブルー、スイスブルー、C.I.ベーシックブルー8、アニリンバイオレット、およびウロレンブルー等がある。これは、以下の構造(式I)を有するが、当業者であれば、ある種の共鳴構造および互変異性の形態の存在を認識するであろう。
【化1】
【0004】
メチレンブルーは、歴史的に長く、種々の用途に用いられている。工業的な用途としては、着色剤、酸化還元指示薬、染料、光電子像における免疫学的または微生物学的な染料、環境金属捕捉剤、皮染料、および防腐剤としての用途等があった。
【0005】
臨床分野において、それには2つの主な確立された用途がある。第1に、メトヘモグロビン血症の解毒剤、時としてシアン化物および一酸化炭素の中毒の解毒剤としての用途、第2に、例えばバレット食道における細胞成形異常の検査、内視鏡ポリープ切除、卵管開存、および瘻検出等の広く種々の臨床に用いられる色彩診断剤または色素内視鏡剤として用途である。
【0006】
1891年、Paul Ehrlichは、メチレンブルーがマラリア治療薬であることを見出した。近年、その用途は、タウオパシー(または神経変性疾患)、ウィルス感染、および躁うつ病の治療、リンパ節およびリンパドレナージュのトレーシングを含む範囲に広がるであろうことが提唱されてきた。歯科医術において、その用途には、歯の微小クラックの発見および慢性歯周病治療用の光線力学的染料が含まれる。メチレンブルーは、天然と合成の骨の識別のために骨セメントに添加される。それはまた、骨セメントの硬化速度を効果的に増加させる促進剤として使用されてきた。人以外の用途でも、水族館の魚の「鰭腐敗病」から農場の犬のキツネ用の毒餌の偶発的な摂取によって引き起こされるメトヘモグロビン血症の治療まで広範囲に使用できる。
【0007】
最初のメチレンブルーの合成は、1877年にドイツで開発され(ドイツ特許第1886号明細書(Badische Anilin und Soda Fabrik))、それ以来、いくつかの他の方法論が開示または特許化されてきた。いずれの方法論においても、一般的な手法では、鉄、マンガン、銅、クロム(クロム酸塩として)、アルミニウム、および亜鉛の塩(または金属自身)を含むある種の金属触媒が用いられ、触媒からの金属イオン汚染の可能性が残っている。さらに、金属汚染は、合成プロセスで使用される金属設備から生じる可能性もある。
【0008】
金属残渣に加えて、メチレンブルーはそれ自身が、製造中の3つの他の化学構造的に類似の有機物質の生成または転換という化学的性質を有している。これらは、メチレンブルーの工業的用途への影響は小さく、また同様の細胞学的染色目的に使用されるかもしれないが、臨床用途において、これらは望まれない含有物として考慮され得、特に、米国薬局方(USP)および英国/ヨーロッパ薬局方(BP/EP)では汚染物として挙げられている。
【0009】
これらの有機汚染物は「アズール」と総称され、メチレンブルーの環構造の3位および5位にある2つのジメチルアミノ基の脱メチル化によって生じる。これらは具体的には、アズールB(式II)として知られるトリメチル誘導体、アズールA(式III)として知られるジメチル誘導体、およびアズールC(式IV)として知られるモノメチル誘導体である。
【化2】
【0010】
アズールのメチレンブルーに対する化学構造的類似のために、これらの「汚染物」は、標準的な手法による混合物からの分離または除去が難しい。また、メチレンブルーの合成中のその発生を低減することも難しいとされてきた。にもかかわらず、合成プロセスにおけるアズールの除去または低減のために、最終メチレンブルー生成物自身の再結晶化等の多くの手法による再精製を含む多くの試みがなされてきた。Marshall and Lewis(1975年)は、四塩化炭素を用いた高pH9.5での溶媒抽出およびそれに続く再結晶化による市販のメチレンブルーおよびアズールBの精製について開示している。彼らはまた、低温度低pHでの結晶化による金属イオン除去について開示している。Lohr et al(1975年)は、カラムイオンクロマトグラフィを用いた精製方法について開示しているが、この方法は工業スケールでは実用的ではない。
【0011】
近年、2005年に、Storey et al(国際公開第2006/032879号)は、制御されたpHおよび温度条件下の段階的プロセスにおいて、触媒としていくつかの金属イオン(クロム酸塩(IV)、銅(II)硫酸塩、および鉄(II)酸化物を含む)を用いる新規なメチレンブルーおよび誘導体の製造と精製の方法を開示している。この方法では、続いて、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル、クロロベンゼン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、および酢酸メチル等の有機溶媒を用いた洗浄/溶媒抽出を行う。この方法の最終段階は主に、ジメチルジチオカルバメート(DT)、硫化物、塩化ナトリウム等の塩化物塩、炭酸ナトリウム等の炭酸塩の添加、それに続く、再度の有機溶媒洗浄とEDTA(エチレンジアミン四酢酸)の添加、それに続く再度の有機溶媒洗浄と、ジクロロメタンまたはテトラヒドラフラン等の有機溶媒の存在下、低pHでの再結晶化と洗浄を含む。
【0012】
さらに、同グループ(国際公開第2008/007074号)は、N10位のアシル誘導体化(または飽和脂肪族誘導体を含むいくつかの他の有機誘導体)、精製(活性炭等の作用剤を用いた)、および酸化による元のメチレンブルーへの転換によるメチレンブルーの精製を開示している。この文献はまた、同一方法によるメチレンブルー前駆体のアシル化と精製の概念を含んでいる。
【0013】
いくつかの同様の文献の著者は、金属および有機残渣の除去は、アズールとメチレンブルーとの間の相違を増加させて金属残渣除去を容易にする、製造後のさらなるメチレンブルーの誘導体化によって可能となるであろうと主張してきた。1959年に、Buc et al (米国特許第2,909,520号明細書)は、アシル化されたロイコメチレンブルー、特にベンゾイルロイコメチレンブルーの製造方法について開示している。
【0014】
1966年に、Gensler et alは、N−ベンゾイルロイコメチレンブルーのメチレンブルーへの簡便な酸化再転換を開示している。実際、自己転換に必要なことは、酸素の存在だけである。
【0015】
Feraud et al(国際公開第2008/006979号)はメチレンブルーおよび他の類似化合物の工業的な精製方を開示しており、この方法では、ジアミノフェノチアジニウム化合物のN10位におけるN−C結合生成反応によるメチレンブルーの大きな有機誘導体の生成によって、アズールと金属の双方のレベルが低減されると述べられている。
【0016】
このメチレンブルーのコンプレックス多段誘導体化(または関連誘導体)は、N位の還元で始まり、ある種の誘導体を選択肢としたときに結果的に生じるアミンを用いた反応に続く。彼らはまた、誘導有機材料の金属を捕捉する支持体を通したろ過による金属イオンレベルの低減、適切な溶媒からの結晶化、および他の公知方法を含む有機誘導体コンプレックスの精製のための標準的な方法および/または概念を開示している。彼らは、この誘導体中のアズールのレベルを低減するために、溶媒洗浄または再結晶化を用いている。ここでも、最終プロセスは、キノン、硝酸、過塩素酸、ヨウ素、塩酸、硫酸、過酸化水素、またはUV光、好ましくは2,3ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)を用いたメチレンブルーへの再転換または酸化である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
要約すれば、そのような歴史的な合成アプローチを考慮したとき、メチレンブルーサンプル中の金属および/または有機不純物のレベルは予期されないものではなく、これらの潜在的残渣が使用にあまり影響のない多くの工業的および細胞学的な目的に使用される工業製品では容認されるかもしれない。しかしながら、近年、薬学的な目的に使用されるメチレンブルーではこれらの不純物に対してより低いレベルが要求されてきており、効率的で簡便で費用効果的な精製方法において不純物を除去することが必要となってきている。
【0018】
本発明の1つの目的は、上記の1つまたはそれ以上の欠点を克服または改善する、あるいは、少なくとも有用な代替のまたはより簡便な方法論を提供する精製方法および中間物を提供することである。
【0019】
本発明の他の好ましい目的は、以下の説明から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様によれば、
ジアミノフェノチアジニウム化合物を還元剤と接触させて、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを生成する工程(i)と、
プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを精製する工程(ii)と、
精製されプロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを酸化剤と接触させて、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物に戻す工程(iii)とを含み、
それによって前記ジアミノフェノチアジニウム化合物を精製する、
ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製方法が提供される。
【0021】
前記ジアミノフェノチアジニウム化合物は、メチレンブルー、アズールA、アズールB、およびアズールCからなる群より選ばれることができる。
【0022】
一実施形態において、還元剤との接触により、後工程で精製および酸化されてジアミノフェノチアジニウム化合物に戻される、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを生成することができる。
【0023】
第1の態様の好ましい一実施形態において、
メチレンブルーを還元剤と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを生成する工程(i)と、
安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスを精製する工程(ii)と、
精製され安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーを酸化剤と接触させて、メチレンブルーを生成する工程(iii)とを含み、
それによって前記メチレンブルーを精製する、
メチレンブルーの精製方法が提供される。
【0024】
第1の態様およびその好ましい実施形態における還元剤は、金属を含まない還元剤である。
【0025】
一実施形態において、第1の態様およびその好ましい実施形態における還元剤は、アスコルビン酸、亜ジチオン酸ナトリウム、水素、ギ酸、シュウ酸、ジチオスレイトール、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、亜リン酸エステル、次亜リン酸塩、および亜リン酸からなる群より選ばれる。
【0026】
好適には、第1の態様およびその好ましい実施形態における還元剤は、アスコルビン酸である。好ましくは、L−アスコルビン酸である。
【0027】
好ましくは、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物または前記メチレンブルーは、酸性pHで前記還元剤と接触させる。より好ましくは、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物または前記メチレンブルーは、pH3未満で前記還元剤と接触させる。さらにより好ましくは、前記ジアミノフェノチアジニウム化合物または前記メチレンブルーは、pH1未満で前記還元剤と接触させる。
【0028】
好ましくは、前記還元剤は一塩基または二塩基の無機酸から選ばれた酸で酸性化された溶液である。
【0029】
好適には、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸、および過塩素酸からなる群より選ばれる。
【0030】
一実施形態において、前記無機酸は塩酸または硫酸である。
【0031】
好適には、前記無機酸は塩酸である。
【0032】
好ましくは、第1の態様およびその好ましい実施形態における前記還元剤との接触は有機溶媒中で行う。好適には、前記有機溶媒はC1−C8のアルコールまたはC1−C4のアルコールである。好ましくは、前記アルコールはメタノールまたはエタノールである。
【0033】
プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックス(一実施形態において、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックス)または安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスの精製は、好ましくは再結晶化による。
【0034】
一実施形態において、前記再結晶化は、水、アルコール、およびエーテルからなる群より選ばれた溶媒から行う。
【0035】
再結晶溶媒の少なくとも1つがアルコールであるとき、それは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびiso−プロパノールを含むC−C10アルコールからなる群より選ばれることができる。
【0036】
再結晶溶媒の少なくとも1つがエーテルであるとき、それは、テトラヒドラフランまたはジエチルエーテルであることができる。
【0037】
好適には、第1の態様およびその好ましい実施形態における前記酸化剤は金属を含まない酸化剤である。
【0038】
第1の態様およびその好ましい実施形態における好ましい酸化剤は、酸素、オゾン、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、硝酸、硝酸塩化合物、リン酸、ペルオキソ二硫酸、過硫酸、硫酸、亜硫酸、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、および他の類似のハロゲン含有化合物、次亜塩素酸塩、および他の次亜ハロゲン酸塩化合物、過マンガン酸塩、亜酸化窒素、およびキノンからなる群より選ばれることができる。
【0039】
一実施形態において、第1の態様およびその好ましい実施形態における好ましい酸化剤は、酸素およびキノンからなる群より選ばれる。
【0040】
第1の態様およびその好ましい実施形態における酸化剤は、好ましくは2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、または、より好ましくは、p−ベンゾキノンである。
【0041】
安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスは、塩または他のイオンコンプレックスであることができる。
【0042】
一実施形態において、安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーは、ロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスであることができる。
【0043】
本発明の第2の態様によれば、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスが提供される。
【0044】
第2の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0045】
一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスである。
【0046】
本発明の第3の態様は、ジアミノフェノチアジニウム化合物をアスコルビン酸と接触させて、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスを生成する方法により製造された、第2の態様のプロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0047】
第3の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0048】
第3の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスは、メチレンブルーをアスコルビン酸と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスを生成する方法により製造された、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0049】
第3の態様の方法における種々の条件は、第1の態様で述べたのと同様とすることができる。
【0050】
本発明の第4の態様によれば、ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製における、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスの使用が提供される。
【0051】
一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスである。
【0052】
第4の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化された前記ジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、メチレンブルーの精製に使用される安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスである。
【0053】
一実施形態において、安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスは、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルー塩である。
【0054】
一実施形態において、安定化されプロトン化された前記ロイコメチレンブルーコンプレックスは、第2の態様の安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0055】
上記の個々の態様において、本発明の種々の特徴と実施形態は、必要な変更を加えた他の態様への適宜適用について言及した。したがって、一態様で規定される特徴は、他の態様で規定される特徴と適宜組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0056】
さらに、本発明の特徴と利点は、以下の詳細説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、少なくとも部分的には、合成されたまたは市販のサンプルを還元して、還元され安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックス(これは塩または他のイオンコンプレックスであり得る)を生成し、次いで例えば再結晶化によって精製し、次いでメチレンブルーに酸化して戻すことによって、メチレンブルーが簡便かつ効果的に精製できるという驚くべき所見を根拠としている。アズールタイプの不純物と金属汚染物の双方を除去するための精製方法としてのメチレンブルー自身の結晶化は、製薬グレード材料に近いレベルに到達することに効果的でないことが示されてきた。したがって、還元されたロイコメチレンブルーにはアズールに近い類似構造が依然として残っているにもかかわらず、その再結晶化がアズールと金属汚染物の双方からロイコメチレンブルーを分離する効果的な手段であることは特筆すべきことである。続く簡便な酸化工程によって、高度に精製されたメチレンブルーが提供される。
【0058】
特に明記しない限り、ここで使用されるすべての技術的科学的用語は、当業者による一般的理解と同様の意味を有している。
【0059】
ここで使用される用語「ロイコメチレンブルー」(「LMB」とも言う。)は、公知のN−10プロトン化され還元された形態のメチレンブルーを示し、これはまたN,N,N’,N’,−テトラメチル−10H−フェノチアジン−3,7−ジアミンとも言い、化学式がC1619Sであり、CAS番号が613−11−6であり、以下の構造で示される。
【化3】
【0060】
ここで使用される用語「コンプレックス(complex)」および「コンプレックス化された」は通常、イオンまたは電気的中性分子と化学結合したロイコメチレンブルーを示す。このコンプレックスは、塩であってもよい。特定の理論に束縛されるものではないが、好ましい実施形態において、このコンプレックスは、アスコルビン酸と結合した、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーであり、これは安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスとも言う。安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスの特性は、pHおよびイオン強度を含む、還元工程において塩形成に影響を与えるプロセス条件に影響を受けるかもしれない。
【0061】
ここで使用される用語「再結晶化(recrystallisation)」、「再結晶化すること(recrystallising)」、「結晶化(crystallisation)」、および「結晶化すること(crystallising)」は、メチレンブルー等の物質、特に本発明の方法の還元工程を通じて生成されるロイコメチレンブルーコンプレックスの溶解とそれに続く溶液からの結晶化の方法を示す。
【0062】
ここでは、用語「ジアミノフェノチアジニウム化合物」およびジアミノフェノチアジニウム化合物の好ましい実施形態である「メチレンブルー」は、精製方法の成分としてほとんど同じ意味で使用されるかもしれない。
【0063】
本発明の第1の態様によれば、
ジアミノフェノチアジニウム化合物を還元剤と接触させて、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを生成する工程(i)と、
プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを精製する工程(ii)と、
精製されプロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを酸化剤と接触させて、ジアミノフェノチアジニウム化合物に戻す工程(iii)とを含み、
それによってジアミノフェノチアジニウム化合物を精製する、
ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製方法が提供される。
【0064】
ジアミノフェノチアジニウム化合物は、メチレンブルー、アズールA、アズールB、およびアズールCからなる群より選ばれることができる。
【0065】
一実施形態において、還元剤との接触により、後工程で精製および酸化されてジアミノフェノチアジニウム化合物に戻される、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスを生成することができる。これは、この化合物がメチレンブルーであるときの場合であり、還元剤との接触でN−10窒素のプロトン化が可能な置換基を有するジアミノフェノチアジニウム化合物である場合もある。
【0066】
精製されたジアミノフェノチアジニウム化合物と望ましい最終化合物であるそれとが異なっているかもしれないことが認識されるであろう。例えば、アズールB等のジアミノフェノチアジニウム化合物を精製し、これをメチル化によってメチレンブルーに転換していったん精製を完了することが望ましいかもしれない。したがって、第1の態様では、続く工程(iii)、工程(i)と(ii)の間、または工程(ii)と(iii)の間のいずれかにおける異なるジアミノフェノチアジニウム化合物の間の転換が明白に考慮される。
【0067】
したがって、一実施形態において、この方法はさらに、ジアミノフェノチアジニウム化合物を第2の関連ジアミノフェノチアジニウム化合物に転換する工程を含むことができる。
【0068】
一実施形態において、第1の態様のジアミノフェノチアジニウム化合物は、以下の式Vの化合物である。
【化4】

ここで、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルから選ばれる。なお、アルキル基およびアルケニル基はそれぞれ、ヒドロキシ、ハロゲン、またはアルコキシで置換されていてもよい。
、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、ニトロ、ハロゲン、ハロアルキル、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルから選ばれる。
Xは、アニオン性の対イオンである。
【0069】
一実施形態において、アルキル基またはアルケニル基は、置換される場合、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素で置換される。
【0070】
好ましくは、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル(n−プロピルおよびiso−プロピルを含む)、ブチル(n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルを含む)、ペンチル、iso−アミル、およびヘキシルから選ばれる。
【0071】
好ましくは、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、ニトロ、ハロアルキル、およびC−Cアルキルから選ばれる。
【0072】
好ましくは、Xは、ハロゲン化物アニオン、または、硫酸、硝酸、塩酸、およびリン酸等の無機酸の共役塩基からなる群より選ばれる。
【0073】
式Vに包含される構造はまた、いくつかの関連共鳴構造および互変異性の形態で表され得ることは、当業者によって認識および理解されるであろう。例えば、二重結合は、硫黄に隣接せず、環に連結している窒素の1つに表されるかもしれない。かかる例において、正電荷は、硫黄原子ではなく、二重結合された窒素原子上に存在するであろう。すべてのそのような共鳴および互変異性の構造は明白に式Vの構造に包含されるとみなされる。
【0074】
第1の態様の好ましい一実施形態において、
メチレンブルーを還元剤と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを生成する工程(i)と、
安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを再結晶によって精製する工程(ii)と、
精製され安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーを酸化剤と接触させて、メチレンブルーを生成する工程(iii)とを含み、
それによってメチレンブルーを精製する、
メチレンブルーの精製方法が提供される。
【0075】
第1の態様およびその好ましい実施形態における還元剤は、金属を含まない還元剤である。
【0076】
メチレンブルーをLMBに還元するに充分な還元力を有する当該技術における公知の任意の還元剤が好適であろう。
【0077】
一実施形態において、還元剤は、アスコルビン酸、亜ジチオン酸ナトリウム、水素、ギ酸、シュウ酸、ジチオスレイトール、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、亜リン酸エステル、次亜リン酸塩、および亜リン酸からなる群より選ばれる。好適には、アスコルビン酸はL−アスコルビン酸である。
【0078】
還元剤はアスコルビン酸であることが非常に好ましく、L−アスコルビン酸であることが最も好ましい。これは、L−アスコルビン酸を用いたメチレンブルーの還元は、プロトン化されたLMBアスコルビン酸塩コンプレックスを形成し、これは特に安定で、簡便な再結晶化による精製を可能とすると考えられるためである。
【0079】
好ましくは、ジアミノフェノチアジニウム化合物は、酸性pHで還元剤と接触させる。より好ましくは、ジアミノフェノチアジニウム化合物は、pH3未満で還元剤と接触させる。さらにより好ましくは、ジアミノフェノチアジニウム化合物は、pH1未満で還元剤と接触させる。
【0080】
還元されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、塩であってもよい。還元剤がアスコルビン酸であり、ジアミノフェノチアジニウム化合物がメチレンブルーであるとき、還元されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0081】
還元されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスの精製は、当該技術において公知の技術範囲内、例えばシリカまたは改質シリカのカラムを通したまたはHPLCを用いたクロマトグラフィ、イオン交換技術、ろ過、洗浄、および再結晶化等によって行うことができる。ただし、非常に好ましい実施形態において、還元されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスの精製は再結晶化による。
【0082】
再結晶化に加えて、特に金属イオンを除去するために、ろ過を行うことができる。これは金属結合フィルタ、例えば、シリカゲル、活性炭、中性、塩基性、または酸性のアルミナゲル、微細孔膜、金属捕捉基がグラフトされた樹脂、および金属捕捉基がグラフトされた繊維を含むろ過支持体を通したろ過によって効果的に行うことができるができる。金属イオンはまた、シリカ、珪藻土、または他の金属の結合または除去の目的のために製造された市販の物質等の任意の公知の金属結合吸収剤の中またはその上を通過させることで、除去することができる。
【0083】
一実施形態において、再結晶化は、水、アルコール、およびエーテルからなる群より選ばれた溶媒から行う。LMBコンプレックスの再結晶化のために、すべての3つの溶媒種が種々の割合で使用されること好ましいかもしれない。一実施形態において、すべての3つの溶媒種が再結晶化に使用されるとき、それらは体積基準で、水:アルコール:エーテルが1:2−4:6−10、好ましくはおおよそ1:3:8の割合で使用することができる。
【0084】
再結晶溶媒の少なくとも1つがアルコールであるとき、それは、C−C10アルコール、または、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびiso−プロパノールを含むC−Cアルコールからなる群より選ばれることができる。
【0085】
再結晶溶媒の少なくとも1つがエーテルであるとき、それは、テトラヒドラフランまたはジエチルエーテルであることができる。
【0086】
安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスは、塩または他のイオンコンプレックスであることができる。
【0087】
一実施形態において、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーは、ロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスであることができる。
【0088】
好ましくは、ジアミノフェノチアジニウム化合物またはメチレンブルーは、酸性pHで還元剤と接触させる。酸性環境は、還元反応が有用な速度で進み、メチレンブルーのLMBへの最適な転換を産むために必要である。より好ましくは、メチレンブルーは、pH3未満で還元剤と接触させる。さらにより好ましくは、メチレンブルーは、pH1未満で還元剤と接触させる。
【0089】
酸性環境は、反応を阻害しない有機酸または無機酸等の種々の酸の添加によって実現することができる。好ましくは、還元溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸、および過塩素酸等の一塩基および二塩基の無機酸から選ばれた酸で酸性化された溶液である。より好ましくは、無機酸は塩酸または硫酸である。最も好ましくは、無機酸は塩酸である。
【0090】
精製されたLMBコンプレックスをメチレンブルーに戻すために使用される酸化剤は特に制限されず、広い範囲で公知の市販の酸化剤が使用に好適であろう。実際、いったん還元剤が除去されれば、空気との接触でもLMBコンプレックスをメチレンブルーに酸化して戻すことができるであろう。
【0091】
好適には、酸化剤は金属を含まない酸化剤である。
【0092】
好ましい酸化剤は、酸素、オゾン、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、硝酸、硝酸塩化合物、リン酸、ペルオキソ二硫酸、過硫酸、硫酸、亜硫酸、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、および他の類似のハロゲン含有化合物、次亜塩素酸塩、および他の次亜ハロゲン酸塩化合物、過マンガン酸塩、亜酸化窒素、およびキノンからなる群より選ばれることができる。
【0093】
一実施形態において、好ましい酸化剤は、酸素およびキノンからなる群より選ばれる。
【0094】
好ましくは、酸化剤は、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、または、より好ましくは、p−ベンゾキノンである。
【0095】
さらに還元され安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスを精製するために、再結晶化工程に加えて、他の精製方法を行うことができる。特に、金属イオンを除去するために、ろ過を行うことができ、これは金属結合フィルタ、例えば、シリカゲル、活性炭、中性、塩基性、または酸性のアルミナゲル、微細孔膜、金属捕捉基がグラフトされた樹脂、および金属捕捉基がグラフトされた繊維を含むろ過材を通したろ過によって効果的に行うことができる。金属イオンはまた、シリカ、珪藻土、または他の金属の結合または除去の目的のために製造された市販の物質等の任意の公知の金属結合吸収剤の中またはその上を通過させることで、除去することができる。
【0096】
好ましくは、本発明の精製方法において、1つまたはそれ以上の工程は制御された段階的温度条件下で行うことができる。反応はまた、好ましくは、不活性雰囲気下で行うことができる。この方法で使用される溶媒、酸、および試薬は好ましくは、脱気され、金属イオン含有量が非常に低いレベルである超高純度のものである。これらのすべての方法は、還元され安定化されプロトン化されたLMBコンプレックス、最終メチレンブルー生成物、および反応工程の生成物を含む中間物の安定化に有効である。特に、全反応中、15〜30℃、より好ましくは20〜25℃の制御された温度条件下で、還元され安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスを生成することは有効である。続いて、反応の液体体積は、35〜45℃、好ましくは約40℃での真空蒸留で低減される。
【0097】
さらに、還元され安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスの精製および乾燥は好ましくは、窒素雰囲気下、15〜30℃、好ましくは20〜25℃の制御された温度条件下で行われる。加えて、安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスをメチレンブルーに酸化して戻す工程は好ましくは、窒素雰囲気下、はじめに5〜20℃、好ましくは10〜15℃、続いて15〜30℃、好ましくは20〜25℃の段階的温度条件下で行われる。
【0098】
再結晶化によって生成されたメチレンブルーの最終精製は、任意で行うことができ、もし行うなら、はじめに50〜75℃、好ましくは60〜65℃、続いて55〜60℃の低い温度、続いて30〜50℃、好ましくは40〜45℃のより低い温度、最終的に0〜5℃の冷条件の制御された段階的温度条件下で行うことができる。上記の種々の工程の限定内の温度制御は、種々の不純物の生成を低減し、例えば、脱メチル化を低減し、また収率を最適化する。
【0099】
一実施形態において、スタート材料のメチレンブルーははじめに、還元工程より前に精製工程を通すことができる。このことは市販のスタート材料の純度によっては望ましいであろう。酸性溶液からの再結晶化は好適であろう。
【0100】
したがって、第1の態様の一実施形態によれば、
酸性溶液からメチレンブルーを再結晶化する工程(i)と、
再結晶化されたメチレンブルーを還元剤と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを生成する工程(ii)と、
再結晶化によって安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスを精製する工程(iii)と、
精製され安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーを酸化剤と接触させて、精製されたメチレンブルーを生成する工程(iv)と、
酸性溶液から精製されたメチレンブルーを再結晶化する工程(v)とを含み、
それによってメチレンブルーを精製する、
メチレンブルーの精製方法が提供される。
【0101】
本実施形態における種々の成分と条件は、第1の態様に対して前述したように、適宜変更できる。
【0102】
好ましくは、本発明の精製方法において、1つまたはそれ以上の工程は窒素等の不活性雰囲気下で行うことができる。これは、中間物、特に、還元され安定化されプロトン化されたLMBコンプレックス、および反応工程の生成物の安定化に有効である。
【0103】
メチレンブルー、アズールA、B、およびC(および金属等の他の汚染物)のスタート混合物における、本発明の方法のメチレンブルーの安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスへの還元は、アズールからの簡便な分離を可能とする。これは、還元された形態では、ある種の方法によって、安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスとアズールとの間の化学的特性の相違が大きくなったからである。安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスの精製は、金属汚染物の簡便な除去を可能とする。
【0104】
上記の本方法は、金属イオンの存在を有意に低減するが、もしスタート材料の金属汚染物レベルが特に高い場合には、安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスはさらに任意の多くの公知の方法によって金属汚染物を除いて浄化することができ、精製された濃コンプレックスは簡便にメチレンブルーに戻される。
【0105】
公知の方法に対する本発明の方法の1つの利点は、安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスを合成し、次いで、主精製工程を実施するという簡便さであり、このことは、残留汚染に対して追加の合成と脱保護の工程がしばしば付加されるメチレンブルーコンプレックス有機誘導体の用意を必要としない精製を可能とする。
【0106】
本発明の方法は、任意の製造者の「原料」、例えばメチレンブルーに適用できる確かな信頼できる方法であり、この方法は、工業スケールに適用可能である、経済的に実施可能な方法で、要求されるように金属および有機汚染物を実質的に低減し、高化学的純度を提供する。本発明の方法を用いたときのたいていの金属の低減量は3倍より大きく、質量基準で、最終メチレンブルー生成物中のアズールBのレベルは3%未満であり、好ましい実施形態における最終生成物中のアズールBのレベルは2.5%未満である。追加の再結晶化工程は、アズールBのレベルを2%未満に低減することができる。
【0107】
再結晶化と洗浄の工程を繰り返すことは、方法内において追加の工程として任意の特定金属吸収技術を導入した場合と同様に、さらなる汚染物量の低レベル化を可能とする。同様に、この段階で使用される水量の増加はまた、アズールレベルを実質的に低減することができる。
【0108】
本発明の方法において、任意の実用的な設備を使用することができる。追加の金属汚染が生じないことを確実にするために、好ましくは、ガラス、セラミック、またはプラスチックのライニング製の設備等の非金属の容器および設備が使用される。
【0109】
安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスの酸化の後に結果的に得られる精製されたメチレンブルー生成物は、上記したような、ろ過、再結晶化、または他の方法によってさらに精製することができる。本発明の一実施形態において、(i)水和が約2〜5であり、(ii)水に対する溶解性が約2%であり、(iii)金属レベルがヨーロッパ薬局方5.0で規定されるレベル以下であるメチレンブルー生成物が提供される。このメチレンブルー生成物はさらに、約5〜25%の水分を含むことができる。
【0110】
本発明の第2の態様によれば、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムのアスコルビン酸塩コンプレックスが提供される。
【0111】
一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスである。
【0112】
第2の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0113】
安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスは、ここで述べた精製方法の使用に特に有利な特性を有することが分かっている。この安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスは、優れた安定性を示し、アズールからの驚くべき良好な相違を有する安定化されプロトン化されたLMBコンプレックスであると考えられ、このことは1つの簡便な再結晶化工程で優れた精製を可能とする。したがって、合成後の工程または他の有機基を有するメチレンブルーの合成改質の必要がない。この安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスはまた、生成された後、サンプル内のさらなる不純物を与えることなく、続いて容易に除去される簡便な試薬を用いるだけでメチレンブルーに戻される。
【0114】
本発明の第3の態様は、ジアミノフェノチアジニウム化合物をアスコルビン酸と接触させて、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスを生成する方法により製造された、第2の態様のプロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0115】
第3の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0116】
第3の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムアスコルビン酸塩コンプレックスは、メチレンブルーをアスコルビン酸と接触させて、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスを生成する方法により製造された、第2の態様の安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0117】
第3の態様の方法における種々の条件は、第1の態様で述べたのと同様とすることができる。
【0118】
本発明の第4の態様によれば、ジアミノフェノチアジニウム化合物の精製における、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスの使用が提供される。
【0119】
一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、N−10プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスである。
【0120】
第4の態様の一実施形態において、プロトン化され安定化されたジアミノフェノチアジニウムコンプレックスは、メチレンブルーの精製に使用される安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスである。
【0121】
一実施形態において、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスは、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルー塩である。
【0122】
一実施形態において、安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスは、第2の態様の安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーアスコルビン酸塩コンプレックスである。
【0123】
ここで例示される実施形態はメチレンブルーの精製に関するものであるが、本発明の幅広い形態を述べたように、本発明の概念が他のジアミノフェノチアジニウム化合物にも拡張可能であることが認識されるであろう。
【0124】
本発明の説明のために以下の実施例を挙げるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0125】
この実施例では、市販のメチレンブルーを以下の工程にしたがって精製する。
全体的な製造プロセススキーム
【化5】

工程1:スタート材料である市販のメチレンブルーの再結晶化
【0126】
この最初の再結晶化工程は任意であり、その適用は市販のスタート材料の純度によることは理解されよう。その適用は、スタート材料が有意水準の不純物を含むときに最上の結果を提供する。
【化6】

【0127】
ガラスライニング製の密閉ジャケット付き反応器に、メチレンブルー(5.5kg、1.0eq.)と無菌精製水(54kg)とを入れた。次いで、0.6kgの31%HCl溶液を入れた。このバッチを60〜65℃の温度に調整し、溶解するまで撹拌した。次いで、このバッチを最低9時間以上0〜5℃に冷却した。この懸濁液を0〜5℃でろ過し、3.8kgの冷水(0〜5℃)でろ塊を洗浄し、7.3kgの冷アセトン(0〜5℃)でリンスした。このろ塊を窒素気流下で乾燥して、5.16kgの生成物を得た。
工程2:メチレンブルーのロイコメチレンブルーへの還元工程
【化7】

【0128】
50Lのガラスライニング製反応器に、工程1で得られた2.8kgの精製されたメチレンブルーと1.3kgのL−アスコルビン酸と32.7kgのメタノールとを入れ、このバッチに、N下で撹拌しながら、1kgの31%塩酸を入れた。仕込み装置に対して0.5kgのメタノールを用いたリンスを実施して、転換を完了した。このバッチを20〜25℃で最低15分間撹拌した。pHを確認し(下記1となるべきである。)、このバッチを最低18時間撹拌した。IPCサンプルを取り、このバッチ内に残ったメチレンブルーは安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスに対して2%未満であった。次いで、真空下で外部温度を40℃以下にしながら、このバッチを蒸留して、スタート材料のメチレンブルーに対して5.0〜5.5部(14〜15L)とした。撹拌しながら2.2kgの水を添加し、次いで、バッチ温度を20〜25℃に調整した。攪拌下でバッチ温度を20〜25℃に維持しながら、1.5時間以上かけて19.5kgのTHFを添加した。このバッチ(懸濁液)を最低16時間以上、20〜25℃で撹拌した。この懸濁液を一定窒素気流下でろ過した。0.4kgのメタノールと4.4kgのTHF(10%MeOH/THF)との混合物を用いてろ塊を洗浄し、2.5kgのTHFでリンスした。このろ塊を窒素気流下で乾燥して、1.805kgの未精製の安定化されプロトン化されロイコメチレンブルーコンプレックスを得た。2回目の一連の操作を同様のスケールで実施し、1回目と2回目の操作で得られた生成物を再結晶化工程で使用した。
【0129】
50Lのガラス反応器に3.3kgの未精製の安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスと3.7kgの脱気されたSP水を入れ、この混合物を20〜25℃で10〜15分間撹拌した。次いで、8.8kgの脱気されたメタノールを添加し、このバッチを20〜25℃で10〜15分間撹拌し、溶液を確認した。次いで、26.1kgの脱気されたTHFを1.5時間以上かけて添加した。このバッチを20〜25℃で最低24時間撹拌して、結晶化を完了した。この懸濁液を窒素雰囲気下でろ過した。0.6kgのメタノールと5.9kgのTHF(10%MeOH/THF)との混合物を用いてろ塊を洗浄し、3.2kgのTHFでリンスした。このろ塊を窒素気流下で乾燥して、3.2kgのライトブルーから白の精製され安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスの固形物を得た。
工程3:精製され安定化されプロトン化されたロイコメチレンブルーコンプレックスのメチレンブルーへの酸化
【化8】
【0130】
50Lのガラス反応器に、3.2kgの精製されたロイコメチレンブルーと16.1kgのSP水とを入れた。このバッチを10〜15℃に冷却した。10〜15℃の温度を維持しながら、このバッチにカーボイを用いて1kgのp−ベンゾキノンと4.1kgのアセトンとの溶液を添加した。カーボイを0.9kgのアセトンでリンスし、転換を完了した。このバッチを10〜15℃で35分間撹拌し、次いで、20〜25℃に温め、さらにこの温度で5時間撹拌した。このバッチからHPLC用のサンプルを取って、反応完了を確認した(基本的に、ロイコメチレンブルーはほとんどまたは全く検出されなかった)。激しく撹拌しながら、混合物に20.2kgのアセトンを添加し、この懸濁液を20〜25℃で5時間撹拌した。この懸濁液を20〜25℃でろ過し、6.8kgのアセトンでろ塊を洗浄した。このろ塊を窒素気流下で移送可能まで乾燥した。この固形物を50Lの反応器に戻し、25.3kgのアセトンを添加し、温度を20〜25℃に調整し、このバッチを3時間撹拌した。この懸濁液を、20〜25℃でろ過し、7.8kgのアセトンでろ塊を洗浄した。このろ塊を窒素気流下で移送可能まで乾燥した。
再結晶化
【0131】
50Lの反応器に、上記のすべてのメチレンブルーと43.1kgのSP水と34.5kgの塩酸溶液とを入れた。このバッチを60〜65℃に調整し、10〜15分間撹拌した。バッチ温度を55〜60℃に調整し、このバッチを第2の50Lの反応器に入れ、この温度で最終清澄ろ過に供した。55〜60℃で3.4kgのHCl溶液を用いてリンスし、ろ過を完了した。撹拌しながら、このバッチを40〜45℃に冷却し、反応器に16.3kgのアセトンを30分間以上かけて入れた。次いで、このバッチを40〜45℃で25分間撹拌した。撹拌しながら、このバッチを最低8時間以上かけて0〜5℃に冷却した。さらに、このバッチを0〜5℃で3時間撹拌した。この懸濁液を0〜5℃で冷ろ過し、2.1kgの冷水(0〜5℃)でろ塊を洗浄し、190kgの冷アセトン(0〜5℃)でリンスした。このろ塊を加熱窒素気流下で乾燥して、3.1kgの精製されたメチレンブルーを得た。
【0132】
例示の方法において、本方法によって精製された3バッチシリーズのメチレンブルー生成物の純度のデータを表1にリストしたアズールに関連させた純度で示す。下記の表2は、本生成物をスタート材料である市販のメチレンブルーおよびヨーロッパ薬局方で規定される金属不純物レベルと比較するものである。
【表1】
【表2】
【0133】
すべての実施例において、金属不純物のレベルはヨーロッパ薬局方5.0により容認可能として規定されたレベルより有意に低く、いくつかの実施例では金属レベルは標準的な方法による検出限界に近いものであることが知見されよう。3つのアズール染料不純物の総レベルは質量でおよそ2.5%以下であった。
【0134】
上記の本発明の種々の実施形態の説明は、当業者に対する説明の目的のためのものである。それは網羅的であること、あるいは本発明を1つの開示された実施形態に限定することを意図するものではない。上記したように、上記教示の当業者にとって、本発明に対する多くの代替と変形は明らかであろう。したがって、いくつかの代替実施形態が具体的に検討され、他の実施形態が明らかとなったり、当業者によって比較的容易に開発されたりするであろう。したがって、この特許明細書は、ここで論じられた本発明のすべての代替、変更、および変形、並びに、上記の本発明の趣旨および範囲内の他の実施形態を包含することを意図する。
【0135】
以下の請求項および上記の本発明の説明において、文脈が明確に規定する場合、もしくは、言語表現あるいは必要な含意による場合を除いて、用語「含む(comprise, comprises)」、または「含んでいる(comprising)」を含むそのバリエーションは、包括的な意味で使用される。すなわち、述べられた態様の存在を明示するが、1つまたはそれ以上の本発明の実施形態におけるさらなる態様の存在または付加を排除しない。