特許第6111392号(P6111392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6111392-耐候性試験機 図000002
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  • 特許6111392-耐候性試験機 図000004
  • 特許6111392-耐候性試験機 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111392
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】耐候性試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-127139(P2013-127139)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-1487(P2015-1487A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】菅藤 功
(72)【発明者】
【氏名】小澤 博
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−201269(JP,A)
【文献】 特開2001−028232(JP,A)
【文献】 特開平04−109144(JP,A)
【文献】 特開昭58−107526(JP,A)
【文献】 特開2007−305316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽に設置された放電灯と、試料が載置される試料載置枠と、暗黒試験時に前記試料と前記放電灯との間に設けられる遮光カバーと、前記遮光カバーを任意に移動又は停止させる移動機構とを有し、
前記遮光カバーはシャッター機構が付属されたスリットを備え、
照射試験と暗黒試験とを任意に組合せて行う耐候性試験機。
【請求項2】
前記遮光カバーと一体に組み合わせることができる補助カバーを有し、前記補助カバーは前記遮光カバーと一体になることにより、放電灯の光を試験槽内に漏らさない請求項1に記載の耐候性試験機。
【請求項3】
前記遮光カバーが回転装置を有し、任意に回転又は停止する請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験機。
【請求項4】
前記シャッター機構が付属された前記スリット、前記シャッター機構が「開」状態のときに、前記放電灯の電極が完全に露出し、試料の上段側から下段側まで全てを均一に照射する請求項1乃至請求項に記載の耐候性試験機。
【請求項5】
前記試験槽外部に送風機を設け、前記遮光カバーと前記放電灯の間に前記送風機からの風を送り込み、排出孔から排出して放電灯を冷却する請求項1乃至請求項に記載の耐候性試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光に近似した分光放射照度分布を持つ放電灯を備え、点灯した放電灯に試料を曝す照射試験と、消灯した状態の暗黒試験とを繰り返す耐候性試験機において、遮光カバーを用いて照射試験と暗黒試験を行う耐候性試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候性試験は、試験槽内に試料を配し、所定の温度及び湿度のもとで所定の光を試料に照射して促進劣化させることによって試料の寿命を短期間で求めるものである。耐候性試験機は、試験槽内に放電灯を設置し、その周囲に試料及びブラックパネル温度計を装着した試料枠を有し、それらを露光させることが記載されている(非特許文献1)。
【0003】
キセノンランプの消灯及び点灯を自動的に交互に繰り返す明暗サイクルを行うデューサイクルウエザーメーターの技術が記載されている(特許文献1)。
【0004】
放電灯を点灯開始時、所定の低い定電力で一定時間放電させ、その後、規定の電力で放電させることで、放電灯と電極に過大な負荷を与えずに放電灯の寿命を延ばす技術が記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭43―29719
【特許文献2】実用新案登録第3072096号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS B 7754 キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性試験機
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の耐候性試験機では、照射試験から暗黒試験に移行する際に放電灯を消灯し、暗黒試験から照射試験に移行する際に点灯するという、消灯と点灯をする放電灯のサイクルを繰り返していた。しかし、耐候性試験機で使用する放電灯は、点灯する際に高電圧をかけることが必要であり、電極に過大な負荷がかかる。したがって、放電灯の消灯、点灯を繰り返す明暗サイクル試験を行うと、放電灯の寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0008】
放電灯の寿命を長くするためには、放電灯を点灯する際に電極にかかる過大な負荷を軽減させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐候性試験機は、試験槽に設置された放電灯と、試料が載置される試料載置枠と、暗黒試験時に前記試料と前記放電灯との間に設けられる遮光カバーと、前記遮光カバー任意に移動又は停止させる移動機構とを有し、前記遮光カバーは、シャッター機構が付属されたスリットを備える。
【0010】
前記遮光カバーと一体に組み合わせることができる補助カバーを設け、前記補助カバーは前記遮光カバーと一体となることにより放電灯の光を試験槽内に漏らさない。
【0012】
前記遮光カバーは回転装置を有し、任意に回転又は停止する。
【0013】
前記シャッター機構が付属された前記スリットは、前記シャッター機構が「開」状態のときに、前記放電灯の電極が完全に露出し試料の上段側から下段側まで全てを均一に照射する。
【0014】
試験槽外部に送風機を設け、前記遮光カバーと前記放電灯の間に前記送風機からの風を送り込み、排出孔から排出して放電灯を冷却する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐候性試験機は、試験開始の際に放電灯を点灯した後は、暗黒試験中であっても放電灯を消灯せず、遮光カバーを使用して放電灯を覆うことで、試料に光の影響を与えずに暗黒試験を行うことができる。これにより、放電灯点灯時に電極にかかる過大な負荷を1度で済ませることができるため、放電灯の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に記述された暗黒試験実施時の耐候性試験機の例を示す。
図2】本発明の実施例1に記述された照射試験実施時の耐候性試験機の例を示す。
図3】本発明の実施例2に記述されたひとつ又は複数のスリットを均一な間隔で設けた遮光カバー3を装着した耐候性試験機の例を示す。
図4】本発明の明暗サイクル試験機に係わる主要構成部品の結合関連図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。ただし、以下の説明はあくまでも本発明の一例にすぎず、以下の記載によって発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1に示す本発明の耐候性試験機は、暗黒試験実施時の例である。試験槽の中央に備えられた放電灯5の周囲には、遮光カバー3と、上部補助カバー1及び下部補助カバー7と試料6及び試料載置台が配置されている。また、遮光カバー3と、上部補助カバー1及び下部補助カバー7は、一体として放電灯5を覆っている。遮光カバー3には、遮光カバー移動装置2が付属しており、図1においては上部から放電灯5の高さまで移動させている。
上部補助カバー1の下端及び下部補助カバー7の上端には、外側に折り返しがある。さらに遮光カバー3の上部及び遮光カバー3の下部には内側に折り返しがある。これらの折り返しは、上部補助カバー1の下端と遮光カバー3の上端で合わせると同時に、下部補助カバー7の上端と遮光カバー3の下端においても、合わさるようになっており、試験槽内に放電灯からの光が漏れず、暗黒試験を実現している。
また、上部補助カバー1は、前記遮光カバー3が移動する際のガイドラインの役割をしている。
図1では便宜上、遮光カバー3を透かして放電灯5が見えるように記載しているが、本来この状態は、遮光カバー3と上部補助カバー1及び下部補助カバー7が一体となって放電灯5を完全に覆っている状態である。なお、放電灯の放電電力、遮光カバー3の上下の移動、試料の回転、試験槽内の温度、湿度などは、全て図示しない制御部によって制御されている。
【0019】
図2に示す本発明の耐候性試験機は、照射試験実施時の例である。暗黒試験実施時の図1では放電灯5の周囲にあった遮光カバー3が上部へ移動している。なお、図2では便宜上、遮光カバー3を透かして放電灯5の上部が見えるようにしている。
【実施例2】
【0020】
図3は、ひとつ又は複数のスリット9を均一な間隔で設けた遮光カバー3を装着した耐候性試験機である。スリット9には、スリット9の開閉を行うシャッター機構(図示しない)が付属しており、シャッターを開けることで照射と暗黒をすばやく変更することが可能である。したがって、任意のタイミングで任意の時間光を通すことができる。このスリット9の上下両端の高さは、シャッター機構が「開」状態のときに、放電灯5の上下の電極が完全に露出し、試料6の上段側から下段側まで全てを均一に照射することができ、試料6に陰を作らないようになっている。
また、遮光カバー3には遮光カバー回転装置4がついており、遮光カバー3を任意に回転させることができる。これにより、試料6の回転を止めて遮光カバー3のみを動かすこと、試料6の回転と遮光カバー3の回転を同調または別にさせることが可能である。
【0021】
なお、照度を下げるために、例えば、7.5kWのキセノン放電灯の時間当たりの平均放射照度を低くするために3kW以下で点灯させると寿命が短くなるという不具合があったが、図3のように遮光カバー3を回転させながら用いることによって、放電電力を変更することなく7.5kWのままで試料面に与える時間当たりの平均放射照度をコントロールすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 上部補助カバー
2 遮光カバー移動装置
3 遮光カバー
4 遮光カバー回転装置
5 放電灯
6 試料
7 下部補助カバー
8 送風機
9 スリット
10 耐候性試験機
図1
図2
図3
図4