特許第6111475号(P6111475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111475ヒトインスリン又はその類似体もしくは誘導体を含む安定な水性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111475
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ヒトインスリン又はその類似体もしくは誘導体を含む安定な水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20170403BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K37/26
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61P3/10
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-548793(P2015-548793)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2016-503784(P2016-503784A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】IB2013054286
(87)【国際公開番号】WO2014096985
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】3563/MUM/2012
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】506224012
【氏名又は名称】ウォックハート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】サヒーブ マハラジ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】アンブルゲ ジーテンドラ カシナート
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル ガウラヴクマール ラマンラール
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241213(JP,A)
【文献】 特表2002−504908(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/156476(WO,A1)
【文献】 特開昭58−192818(JP,A)
【文献】 特開2006−117634(JP,A)
【文献】 特開昭63−200774(JP,A)
【文献】 特表2014−532667(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/067022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)-ヒトインスリン
尿素、及び0.1mg/ml〜2.5mg/mlのグリシンからなる群から選ばれた溶解性増強剤;
を含み、3.9〜4.2 のpHを有する水性医薬組成物。
【請求項2】
酸とアルカリの組み合わせから選択される、一種以上のpH調節剤を更に含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに防腐剤、等張剤又は希釈剤から選択される医薬上許される賦形剤含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
酸がo-リン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、フマル酸又はリンゴ酸を含む群から選ばれる、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
アルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はトリエタノールアミンを含む群から選ばれる、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1載の水性医薬組成物の調製方法であって、
a) 尿素、及び0.1mg/ml〜2.5mg/mlのグリシンからなる群から選ばれた溶解性増強剤を含む溶液を調製する工程、
b) Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)-ヒトインスリン溶液を別に調製る工程、
c) 工程a)及びb)の溶液を混合する工程、及び
pH調節剤を添加して、水性医薬組成物を得る工程を含み、
前記組成物のpHが3.9〜4.2である方法。
【請求項7】
糖尿病の治療用の請求項1記載の水性医薬組成物。
【請求項8】
Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン;
尿素、及び0.1mg/ml〜2.5mg/mlのグリシンから選ばれた可溶化剤;及び
pH調節剤;
を含み、6.8-7.6 のpHを有する、水性医薬組成物。
【請求項9】
さらに防腐剤、等張剤又は希釈剤から選択される医薬上許される賦形剤含む、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項8又は9記載の医薬組成物の調製方法であって、
a) pH調節剤を含む溶液を調製する工程、
b) 性の注射用の水でGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)-ヒトインスリン溶液を調製する工程、
c) 尿素、及び0.1mg/ml〜2.5mg/mlのグリシンから選ばれた可溶化剤の溶液を調製する工程、
d) 工程(b) の溶液を工程(c) の溶液と混合する工程、
e) 工程(a) の溶液を工程(d) の溶液に添加して、pHが6.8〜7.6の医薬組成物を得る工程、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、可溶化剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は前記製剤を含む非経口製剤に関する。また、本発明は前記医薬組成物の調製方法、インスリン製剤の安定性を改良するための方法、及び糖尿病の治療のためのそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は真性糖尿病及び尿崩症のように過度の尿排泄を有するヒトの疾患についての一般的な用語である。真性糖尿病はグルコースを利用する能力が多かれ少なかれ完全に失われている代謝障害である。全てのヒトの約2%が糖尿病を患っている。
インスリン注射は糖尿病を患っている患者に処方される。インスリンは天然ホルモンであり、これは血液中の糖グルコースのレベルを調節する。健康なヒトでは、血液グルコースの濃度が増大するにつれて、インスリンが膵臓により血液中に放出される。増大されたグルコースレベルは、食後に生じ、インスリン分泌の相当する増大により迅速に相殺される。インスリンは過剰の血液グルコースをグリコーゲンに変換し、それを肝臓中に貯蔵するのに重要な役割を果たす。
1920年代におけるインスリンの導入以来、絶え間ない進歩が真性糖尿病の治療を改善するためになされてきた。過度の血糖レベルを回避することを助けるために、糖尿病患者はしばしば多くの注射治療を実施し、それによりインスリンが夫々の食事とともに投与される。
インスリンは51のアミノ酸のポリペプチドであり、これらは2種のアミノ酸鎖:21のアミノ酸を有するA鎖及び30のアミノ酸を有するB鎖に分けられる。鎖は二つのジスルフィドブリッジにより互いに連結される。インスリン製剤は長年にわたって糖尿病治療に使用されてきた。
【0003】
従来、短時間作用性のレギュラーインスリン製剤又はその中時間作用性インスリンプロタミン製剤が真性糖尿病の患者を治療するのに使用された。やがて、新しいインスリン類似体及び誘導体が開発された。インスリン類似体及び誘導体は一つ又は一つより多いアミノ酸位置及び/又はアミノ酸鎖長でヒトインスリンとは異なる。
幾つかのインスリン、インスリン類似体及び誘導体が市場で入手し得る。インスリン、インスリン類似体又はインスリン誘導体の普通に使用される型は以下のように類別される:
迅速作用性インスリン類似体:例えば、インスリンアスパルト(Novolog(登録商標))又はインスリンリスプロ(Humalog(登録商標))。これらの類似体は投与の5〜15分以内に作用し始め、3〜4時間にわたって活性である。
短時間作用性インスリン:例えば、レギュラーインスリン(Humulin(登録商標)又はNovolin(登録商標))。レギュラーインスリンは投与後30分以内に作用を開始し、作用の期間が約5時間から8時間まで持続する。
中時間作用性インスリン:例えば、イソファンインスリン。それは投与後1〜3時間で作用を開始する。その作用の期間は16〜24時間の間で変化する。
長時間作用性インスリン:例えば、インスリングラルギン及びインスリンデテミル。これらの類似体の両方が1〜2時間以内で作用を開始し、それらの作用の期間は約12時間から約24時間まで変化する。
混合インスリン:例えば、NPH とレギュラーインスリンの混合物。混合インスリンの異なる比率で幾つかの変化がある。これらの混合製剤の作用の開始は約30分である。
理想的には、外因性インスリンは正常な個体中の内因性インスリンの血漿プロフィールを模擬する、血漿プロフィールを生じる時間及び用量で投与される。ヒトインスリンの類似体を含むインスリン製剤は正常な血漿プロフィールに非常に近い吸収プロフィールを示した。
【0004】
インスリン代替のための市場での天然産インスリンのインスリン製剤はインスリンの起源(例えば、ウシ、ブタ、ヒトインスリン、又は別の哺乳類もしくは動物のインスリン)、そしてまた組成(それにより作用のプロフィール(作用の開始及び作用の期間)が影響し得る)を異にする。種々のインスリン製剤の組み合わせにより、作用の非常に異なるプロフィールが得られる。天然産インスリンの製剤だけでなく、変更された速度論を示すインスリン誘導体又はインスリン類似体の製剤が、或る時に市販されていた。今日の組換えDNA 技術がこのような変性インスリンの調製を可能にする。
これらとして、作用の延長された期間を有するインスリングラルギンGly(A21)-Arg(B31)-Arg(B32)- ヒトインスリンが挙げられる。インスリングラルギンは酸性の、透明な溶液として注射され、安定な6量体が会合するにつれて皮下組織の生理pH範囲におけるその溶解性のために沈澱する。インスリングラルギンは毎日1回注射され、その平らな血清プロフィール及びそれと関連する夜間の低血糖の危険性の低減によりその他の長時間作用性インスリンと較べて区別される(Schubert-Zsilaveczら, 2:125-130(2001))。
一種以上の速効性インスリンは糖レベルの食後の増大を制御するのに使用される。速効性インスリンとして、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト及びインスリングルリシンが挙げられる。インスリンアスパルト、AspB28ヒトインスリンは、非常に迅速に作用し始める速効性薬物である。それは1型(インスリン依存性)糖尿病及び2型(非インスリン依存性)糖尿病を治療するのに使用される。インスリンアスパルトはその他の長時間作用性インスリンと一緒に通常使用される。
作用の促進された開始を有するインスリン類似体は欧州特許第0214826 号、同第0375437号及び同第0678522 号に記載されている。欧州特許第0124826 号は、とりわけ、B27 及びB28 の置換に関する。欧州特許第0678522 号は位置B29 に、種々のアミノ酸、好ましくはプロリンを有するが、グルタミン酸を有しない、インスリン類似体を記載している。
【0005】
欧州特許第0375437 号はB28 にリシン又はアルギニンを有するインスリン類似体を含み、これらは必要によりB3及び/又はA21 で更に変性し得る。欧州特許第0419504 号に、化学変性に対し保護されているインスリン類似体が開示されており、B3におけるアルギニン及び位置A5、A15 、A18又はA21 における少なくとも一つの更なるアミノ酸が変性される。WO 92/00321に、位置B1-B6 の少なくとも一つのアミノ酸がリシン又はアルギニンにより置換されているインスリン類似体が記載されている。WO 92/00321 によれば、この型のインスリンが延長された作用を有する。
作用の期間に加えて、製剤の安定性が患者に非常に重要である。増大された物理的長期安定性を有する安定化インスリン製剤が特別な機械ストレス又は比較的高い温度に暴露される、製剤に特に必要とされる。これらとして、例えば、投与システム、例えば、ペン、吸入システム、無針注射システン又はインスリンポンプが挙げられる。インスリンポンプは患者の体に着用又は移植される。両方の場合に、製剤が体及び移動の熱並びにポンプの送出運動、ひいては非常に高い熱機械的ストレスに暴露される。インスリンペン(使い捨てペン及び再利用可能なペン)がまた通常体に着用されるので、同じことがここでも適用される。従来の製剤はこれらの条件下で制限された安定性を有するにすぎない。
インスリンは一般に安定化亜鉛含有6量体の形態で医薬濃度で中性溶液中に存在し、その6量体は3つの同じ二量体単位を含む(Brangeら著, Diabetes Care 13:923-954 (1990))。しかしながら、インスリン製剤の作用のプロフィールはそれが含むインスリンのオリゴマー状態を減少することにより改善し得る。アミノ酸配列の変更により、インスリンの自己会合が減少し得る。こうして、例えば、インスリン類似体リスプロは、主に単量体として存在し、それにより一層迅速に吸収され、作用の一層短い期間を示す(HPT Ammon 及びC. Werning 著; Antidiabetika [Antidiabetics];第2編;Wiss. Verl.-Ges. Stuttgart; 2000; 94.f頁)。しかしながら、迅速作用性インスリン類似体(これらはしばしば単量体形態又は二量体形態で存在する)は、6量体インスリンよりも安定ではなく、しかも熱ストレス及び機械ストレスの下で凝集し易い。これがそれ自体を曇り及び不溶性凝集物の沈澱の点で目につきやすくする(Bakaysaらの米国特許第5,474,978号)。これらの一層高い分子量の変換生成物(二量体、三量体、ポリマー)及び凝集物は投与されるインスリンの用量を減少するだけでなく、患者の刺激又は免疫反応を誘発し得る。更に、このような不溶性凝集物はカニューレ及びポンプの管材又はペンのニードルに影響し、それらを詰まらせることがある。亜鉛は亜鉛含有6量体の生成によりインスリンの付加的な安定化をもたらすので、インスリン及びインスリンの無亜鉛又は低亜鉛製剤は不安定性を特に受けやすい。特に、作用の迅速な開始を有する単量体のインスリン類似体は凝集しやすく、しかも非常に迅速に物理的に不安定になる。何とならば、不溶性凝集物の生成がインスリンの単量体により進行するからである。
【0006】
インスリン製剤の品質を維持するために、凝集物の生成を回避することが必要である。インスリン製剤を安定化するのに種々のアプローチがある。こうして、国際特許出願WO98/56406に、TRIS又はアルギニン緩衝剤により安定化された製剤が記載されていた。米国特許第5,866,538 号は5-100Mmの濃度のグリセロール及び塩化ナトリウムを含み、増大された安定性を有するべきであるインスリン製剤を記載している。米国特許第5,948,751 号は増大された物理安定性を有するインスリン製剤を記載しており、これはマンニトール又は同様の糖の添加により達成される。亜鉛含有インスリン溶液への過剰の亜鉛の添加は同様に安定性を増大し得る(J. Brange ら著, Diabetic Medicine, 3: 532-536, 1986)。インスリン製剤の安定性についてのpH及び種々の賦形剤の影響がまた詳しく記載されていた(J. Brange & L. Langkjaer 著, Acta Pharm. Nordica 4: 149-158 )。
米国特許第7,476,652 号及び同第7,713,930 号はGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)-ヒトインスリン;多価アルコールのエステル及びエーテルから選ばれた少なくとも一種の化学物体;少なくとも一種の防腐剤;及び水を含む医薬製剤を開示しており、その医薬製剤は1から6.8 までの酸性範囲のpHを有する。多価アルコールのノニオン性の表面活性剤、特にエステル及びエーテル(ポリソルベート20及びポリソルベート80)が酸性インスリン製剤の安定性を増大し、こうして温度ストレス下で数ヶ月にわたって疎水性凝集核に対して優れた安定性を有する製剤が製造し得ることが更に開示されていた。
また、表面活性剤がポリペプチド溶液中で電荷生成を生じ、凝集プロセスを増大し、ペプチド製剤を長期で不安定にし得ることが幾つかの従来技術に開示されていた。
【0007】
米国特許第5,866,538 号はヒトインスリン、その類似体、その誘導体からなる群から選ばれたポリペプチド、グリセロール、マンニトール、又はグリセオール及びマンニトール並びに5〜100 mMのハロゲン化物を含む医薬製剤を開示している。優れた化学安定性のインスリン製剤が低いハロゲン化物濃度の存在下で得られることが前記特許に示されていた。更に、Acta Pharmaceutica Nordica 4(4), 1992, 149-158頁は塩化ナトリウム(ハロゲン化物)濃度が0〜250 mMの範囲で変化されたインスリン製剤を開示している。しかしながら、全ての製剤を含む、製剤の大部分がかなり多量の塩化ナトリウム、即ち、120 mMの濃度にほぼ相当する0.7 %を含む。塩化ナトリウムは一般にインスリン製剤に安定化効果を有し、グリセロール及びグルコースは増大された化学劣化をもたらすことがこの書類に記述されている。
時間の充分に長い期間にわたって化学的に安定に留まるインスリンを含む製剤を提供しようとする多くの試みが今日までなされてきた。
米国特許第4,476,118 号は防腐剤、等張剤、及びpH緩衝剤を含む安定なインスリン溶液を開示しており、その溶液は実質的にイオン化された亜鉛を含む。
米国特許第6,906,028 号、同第6,551,992 号及び同第6,034,054 号はTRIS及びアルギニンからなる群から選ばれた生理学上寛容される緩衝剤、単量体のインスリン類似体(そのインスリン類似体はLysB28ProB29- ヒトインスリンである)、亜鉛、及びフェノール性防腐剤を含む溶液製剤を開示している。
米国特許第6,174,856 号はインスリン組成物の安定性が緩衝剤、例えば、グリシルグリシン(Gly−Gly)と金属イオン、例えば、Ca2+の組み合わせを使用して組成物を製剤化することにより有意に改良し得ることを開示している。
【0008】
米国特許第6,734,162 号はポリペプチドを遊離アミン基を含まず、かつ炭酸の生成から生じるpHの変化を軽減する緩衝分子と混合されたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)を含む緩衝剤、亜鉛、及びフェノール性防腐剤と凝集を抑制するのに有効な時間及び条件下で合わせることを含むポリペプチドの凝集を抑制する方法を開示している。
米国特許第6,737,401 号は新規表面活性剤安定化インスリン製剤の予期しない性質を開示している。
米国特許第8,263,551 号はインスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体又は以上の混合物、及びプロタミンの塩を含む医薬製剤を開示しており、この場合、プロタミン塩がインスリンを含む製剤の物理的かつ化学的安定性を増大するために使用された。
米国特許第8,097,584 号は増大された化学安定性を有する医薬ポリペプチド製剤が緩衝剤としてのエチレンジアミン又はその塩を前記製剤に添加することにより得られることを開示している。
米国特許出願第20090175840 号はインスリン、注射に適した希釈剤、酸化剤又は酵素及び還元剤又は酵素を含む注射可能な製剤を開示しているが、但し、その製剤がキトサン−グリセロールホスフェートヒドロゲルを含まないことを条件としている。
米国特許出願第20090325860 号はインスリン分子、可溶化剤、表面活性剤、及び増粘剤の水性混合物を含む水性医薬製剤を開示しており、その医薬製剤は超迅速作用性インスリンプロフィールを非超迅速作用性インスリンに与える。
米国特許出願第20100069292 号は必要により安定剤、緩衝剤及び沈澱剤と組み合わせて、3.5 〜4.5 、好ましくは3.8 〜4.2 、又は7.5 〜8.5 のpHの組換えヒトインスリンの溶液を含む基礎インスリン製剤を開示しているが、プロタミンを含まない。
米国特許出願第20120252724 号はインスリン、インスリン類似体もしくはインスリン誘導体、又はこれらの薬理学上許される塩、及びメチオニンを含む水性医薬製剤を開示している。
米国特許出願第20130011378 号は治療有効量の速効性インスリン、ヒアルロナン分解酵素、NaCl、抗菌性防腐剤、及び安定剤を含む安定な共製剤を開示している。
【0009】
米国特許出願第20100203014 号は対象の鼻粘膜にi)治療活性ペプチド、及びii)双性イオン性アミノ酸で緩衝された水溶液を含む医薬組成物を投与することを含む対象への酸性医薬組成物の鼻内投与方法を開示しており、その組成物は約3.0 〜4.5 のpHを有し、それにより酸性医薬組成物を対象に投与する。
米国特許出願第20120094903 号は鼻内送出のために、ヒトインスリン、可溶化剤、表面活性剤、及び増粘剤の水性混合物を含む、患者へのインスリンの鼻内送出のための医薬製剤を開示している。
中国特許出願第101045158 号はインスリン類似体、並びに糖、有機塩、アミノ酸、及びタンパク質を含む医療アジュバントを含む医薬組成物を開示している。
インド特許出願第2008MUM01454 号はヒトインスリン類似体、亜鉛イオン、プロタミン並びにベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、安息香酸、マンデル酸、2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエタノール、フェニルホスホン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた一種以上のリガンドを含むインスリン類似体プロタミン結晶を開示している。
PCT 公開第2001000312 号は乾燥粉末製剤を製造するための系及び方法を開示している。
PCT 公開第2012066086A1 号はインスリングラルギン及びスルホブチルエーテル7-[ベータ]-シクロデキストリンを含む医薬製剤を開示している。
PCT 公開第2007/041481 号は中時間又は長時間作用性インスリンと有効量のキレーター及び患者による摂取の速度又は量を高めるための酸性化剤を含む製剤を開示している。
PCT 公開第2010149772 号はインスリン化合物又は2種以上のインスリン化合物の混合物、ニコチン化合物及びアミノ酸を含む組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
安定なインスリン、インスリン類似体及び誘導体製剤を提供しようとする幾つかの試みが既に記載されてきた。しかしながら、インスリンが化学変換を受けず、しかも時間の充分に長い期間にわたって安定に留まる製剤を開発するようにとの要望が依然として存する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くことに、本発明の発明者らは良好な溶解性及び化学安定性を有するインスリン製剤が尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性強化剤とハロゲン化物以外のpH調節剤の存在下で得られることを見い出した。
本明細書に使用される“インスリン”という用語は哺乳類インスリン、インスリン類似体又は誘導体を含む。
本発明において使用される“インスリン類似体”とい用語は天然産インスリン、即ち、ヒトインスリン又は動物インスリンの類似体を含み、これらはその他のアミノ酸残基による少なくとも一つの天然産アミノ酸残基の置換及び/又は相当する、それ以外は同じ、天然産インスリンからの少なくとも一つのアミノ酸残基の付加/除去を異にする。付加及び/又は置換されるアミノ酸残基はまた天然に生じないものであってもよい。
本発明において使用される“インスリン誘導体”という用語は天然産インスリン又はインスリン類似体の誘導体を含み、これらは化学変性により得られる。化学変性は、例えば、一つ以上のアミノ酸への一つ以上の特別な化学基の付加、置換又は欠失からなり得る。それはまた、例えば、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端における、ペプチド主鎖の一つ以上の化学基の付加、置換又は欠失を伴い得る。
本明細書に使用される“ヒトインスリンの類似体”は一つ以上のアミノ酸が欠失され、かつ/又はコードし得ないアミノ酸を含む、その他のアミノ酸により置換されたヒトインスリン、又は付加的なアミノ酸、即ち、51より多いアミノ酸を含むヒトインスリンを意味する。
【0012】
本明細書に使用される“ヒトインスリンの誘導体”は少なくとも一つの有機置換基がアミノ酸の一つ以上に結合されているヒトインスリン又はその類似体を意味する。
本明細書に使用される“ハロゲン化物”は一部分がハロゲン原子であり、かつその他の部分がハロゲン原子よりも電気陰性ではない元素又は基である2成分化合物、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウムの如き塩化物を意味する。
本明細書に使用される“錯生成剤”は複数の電荷を有し、かつインスリン化合物コンジュゲートに結合し、又は錯生成する分子を意味する。本発明における使用に適した錯生成剤の例として、プロタミン、スルフェン、グロビンタンパク質、スペルミン、スペルミジンアルブミン、カルボン酸、ポリカチオン性ポリマー化合物、カチオン性ポリペプチド、アニオン性ポリペプチド、ヌクレオチド、及びアンチセンスが挙げられる。Brange J.著, Galenics of Insulin compound, Springer-Verlag, ベルリン・ハイデルベルグ(1987)を参照のこと。その開示が本明細書に参考として含まれる。
本明細書に使用される“錯生成剤を欠いている”は前記錯生成剤が全組成物の0.01%w/v 未満の濃度で存在することを意味する。
本発明の局面の一つはヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含み、その医薬上許されるが錯生成剤を欠いている安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、及びpH調節剤、任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含み、そのpH調節剤がハロゲン化物以外である、安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はAspB28ヒトインスリン、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、一種以上のpH調節剤及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含み、そのpH調節剤がハロゲン化物以外である、安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、ハロゲン化物以外のpH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、pH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、ハロゲン化物以外のpH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、pH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はAspB28ヒトインスリン、溶解性増強剤としての一種以上のアミノ酸、ハロゲン化物以外のpH調節剤及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面はこのような組成物の調製方法を提供し、前記方法は
a)その他の医薬上許される賦形剤とともに溶解性増強剤を含む溶液を調製し、
b)インスリン溶液を別々に調製し、必要によりpH調節剤をそれに添加してもよく、
c)工程a)及びb)の溶液を混合することを含む。
本発明の更に別の局面はこのような組成物を使用して治療効果を得る方法を提供し、その方法はそれを要する対象に有効量のその組成物を投与することを含む。
本発明の別の局面はGly(A21) 、Arg(B31)、Arg(b32)- ヒトインスリン、可溶化剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供することである。
Gly(A21) 、Arg(B31)、Arg(b32)- ヒトインスリンは一般にインスリングラルギンとして知られている。現在、インスリングラルギンは“ランタス”のブランド名でサノフィにより、また“グラリタス”のブランド名でウォックハルトにより市販されている。
本発明の別の局面はGly(A21) 、Arg(B31)、Arg(b32)- ヒトインスリン、尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供することである。
本発明の別の局面はGly(A21) 、Arg(B31)、Arg(b32)- ヒトインスリン、尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤、pH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供することであり、前記組成物は3.9-4.2 のpHを有する。
【0015】
本発明の別の局面はGly(A21) 、Arg(B31)、Arg(b32)- ヒトインスリン、一種以上のアミノ酸、pH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供することであり、前記組成物は3.9-4.2 のpHを有する。
本発明の局面はこのような組成物の調製方法を提供することであり、その方法は
a.pH調節剤を含む溶液を調製し、
b.インスリンを注射のための酸性水に溶解することによりインスリン溶液を調製し、
c. 尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤の溶液を調製し、
d.工程 (a)の溶液を工程 (b)の溶液と混合し、
e.工程 (c)の溶液を工程 (d)の溶液に添加することを含む。
本発明の更に別の局面は対象に本発明の医薬組成物を投与することによる糖尿病を患っている患者のグルコースのレベルを制御する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発明者らは尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤がインスリングラルギンの安定な長時間作用性組成物に一層良好な溶解性及び化学安定性を与え得ることを驚くことに見出した。更に、本発明の発明者らは安定なインスリン製剤が従来技術の開示とは対照的に種々の条件を変更することによりカチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤、両性表面活性剤の存在下で得られることを驚くことに見い出した。
本発明者らは溶解性増強剤としてのアミノ酸がインスリンの溶解性を増大するだけでなく、それらをそれらの未変性状態に保つことによりインスリンを熱力学的に安定化することを助けることを見い出した。インスリングラルギン又はアスパルト及び一種以上のアミノ酸を含む製剤は表面活性剤が製剤中に存在しない場合でさえも安定であり、かつ凝集物を含まないことがわかった。
本発明はヒトインスリン、その類似体又は誘導体及びその他の一種以上の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性組成物を提供する。
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた一種以上の溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供される。
本発明に使用されるインスリン類似体として、位置B28 がAsp 、Lys 、Leu 、Val 又はAla である類似体;位置B29 がLys 又はPro である類似体;又はdes(B28-B30)、des(B27)もしくはdes(B30)ヒトインスリン又はA21 がGly であり、Arg がB31 及びB32に付加された類似体;又はB28-B30 中のアミノ酸残基が欠失された類似体;又はB27 におけるアミノ酸残基が欠失された類似体;又はB30 におけるアミノ酸残基が欠失された類似体が挙げられるが、これらに限定されない。市販のインスリン類似体として、インスリンアスパルト(AspB28ヒトインスリン)、インスリンリスプロ(LysB28ProB29ヒトインスリン)、インスリングルリシン、インスリングラルギン(GlyA21ArgB31ArgB32- ヒトインスリン又はGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に使用されるインスリン誘導体として、B29-Nε-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-ミリストイルヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイルヒトインスリン、B28-Nε-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28-Nε-パルミトイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B30-Nε-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-Nε-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-Nε-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた一種以上の溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供され、そのヒトインスリン、その類似体又は誘導体が組換えヒトインスリン、インスリンNPH 、インスリンリスプロ、インスリンリスプロプロタミン、インスリングルリシン及びインスリンアスパルト、インスリンアスパルトプロタミン、インスリングラルギン、並びにインスリンデテミルの一種以上から選ばれる。
本発明の一局面において、AspB28-ヒトインスリン、溶解性強化剤としての一種以上のアミノ酸及び/又は表面活性剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供される。
本発明の医薬組成物のpHは2-8 である。
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、pH調節剤及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供され、そのpH調節剤はハロゲン化物以外である。
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、ハロゲン化物以外のpH調節剤及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供され、そのヒトインスリン、その類似体又は誘導体は組換えヒトインスリン、インスリンNPH 、インスリンリスプロ、インスリンリスプロプロタミン、インスリングルリシン及びインスリンアスパルト、インスリンアスパルトプロタミン、インスリングラルギン、並びにインスリンデテミルの一種以上から選ばれる。
本発明の一局面において、AspB28ヒトインスリン、ハロゲン化物以外のpH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性組成物が提供される。
【0018】
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、ハロゲン化物以外のpH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供され、そのヒトインスリン、その類似体又は誘導体は組換えヒトインスリン、インスリンNPH 、インスリンリスプロ、インスリンリスプロプロタミン、インスリングルリシン及びインスリンアスパルト、インスリンアスパルトプロタミン、インスリングラルギン、並びにインスリンデテミルの一種以上から選ばれる。
本発明の一局面において、AspB28ヒトインスリン、ハロゲン化物以外のpH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性組成物が提供される。
本発明の一局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、ハロゲン化物以外のpH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供され、そのヒトインスリン、その類似体又は誘導体は組換えヒトインスリン、インスリンNPH 、インスリンリスプロ、インスリンリスプロプロタミン、インスリングルリシン及びインスリンアスパルト、インスリンアスパルトプロタミン、インスリングラルギン、並びにインスリンデテミルの一種以上から選ばれる。
本発明の一局面において、AspB28ヒトインスリン、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤から選ばれた溶解性増強剤、ハロゲン化物以外のpH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性医薬組成物が提供される。
本発明の更に別の局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、溶解性増強剤としてのアミノ酸、ハロゲン化物以外のpH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性組成物が提供される。
本発明の更に別の局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、溶解性増強剤としての表面活性剤、ハロゲン化物以外のpH調節剤(その剤形のpHは6.8 〜7.6 である)、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む安定な水性組成物が提供される。
【0019】
本発明の別の局面において、AspB28-ヒトインスリン、アルギニン、m-クレゾール、フェノール、グリセロール、亜鉛及びハロゲン化物以外のpH調節剤を含む安定な水性組成物が提供される。
本発明の別の局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体を含む医薬組成物の安定性の改良方法が提供され、その方法は尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤からなる群から選ばれた一種以上の溶解性増強剤をその組成物に添加することを含む。
本発明の別の局面において、ヒトインスリン、その類似体又は誘導体を含む医薬組成物の安定性の改良方法が提供され、その方法はヒトインスリン、その類似体又は誘導体を可溶化し、安定化するために一種以上のアミノ酸をその組成物に添加することを含む。
本発明はGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン、溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明の一局面において、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン、尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた一種以上の溶解性増強剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
本発明の別の局面において、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン、尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた一種以上の溶解性増強剤、pH調節剤、及び任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物が提供され、前記組成物が3.9-4.2 のpHを有する。
【0020】
本発明に使用されるアミノ酸として、グリシン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、ロイシン又はこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に使用されるアミノ酸として、グリシン、アルギニン、ヒスチジン又はこれらの塩が挙げられる。
本発明の別の局面において、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン、グリシン、m-クレゾール、亜鉛、グリセロール及び一種以上のpH調節剤、並びに任意の一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含む医薬組成物が提供され、前記組成物が3.9-4.2 のpHを有する。
本発明に使用されるアミノ酸は活性剤を可溶化することを助けるだけでなく、その分子を熱力学的に安定な未変性状態に保つことによりその分子を安定化することを助ける。
本発明の目的のために、表面活性剤がポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ベンザルコニウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアミン、アルカノールアミン脂肪酸エステル、四級アンモニウム脂肪酸エステル、ジアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩(ステアリルアミンを含む)、トリエタノールアミンオレイン酸塩、塩化ベンズエトニウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、硫酸処理アルコールエトキシレートのアンモニウム塩、ココイルイセチオン酸ナトリウム、N-メチル-N- オレオイルタウリンナトリウム塩、N-メチル-N- ココイルタウリンナトリウム塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、二ナトリウムモノオレアミドPEG-2 スルホスクシネート、石油スルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、又はアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ベータアミノプロピオン酸アルキル、2-アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩、リシノールアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、ステアリルアンホカルボキシグリシネート、ラウラミドプロピオン酸ナトリウム、ココアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルイミノジプロピオン酸二ナトリウム、牛脂イミノジプロピオネート、ココアンホ−カルボキシグリシネート、ココイミダゾリンカルボキシレート、ラウリックイミダゾリンモノカルボキシレート、ラウリックイミダゾリンジカルボキシレート、ラウリックミリスチックベタイン、ココアミドスルホベタイン、アルキルアミドホスホベタイン、レシチン及び水素化レシチン、リソレシチン及び水素化リソレシチン、リン脂質及びこれらの誘導体、又はリソリン脂質及びこれらの誘導体を含む群から選ばれてもよいが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の目的のために使用される表面活性剤はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーである。使用されるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーはシンペロニック(登録商標)F108、シンペロニック(登録商標)L121、シンペロニック(登録商標)L122、シンペロニック(登録商標)P105、シンペロニック(登録商標)P85 、シンペロニック(登録商標)F68 、シンペロニックPe(登録商標)/L61、シンペロニック(登録商標)F108、シンペロニック(登録商標)F68 、シンペロニック(登録商標)L61 、シンペロニック(登録商標)/L64、ポロキサマー(登録商標)118 、ポロキサマー(登録商標)124 、ポロキサマー(登録商標)181 、ポロキサマー(登録商標)182 、ポロキサマー(登録商標)184 、ポロキサマー(登録商標)188 、ポロキサマー(登録商標)237 、ポロキサマー(登録商標)331 、ポロキサマー(登録商標)338 、プルロニックポリオールF-68(登録商標)又はこれらの組み合わせである。
本発明の目的のために使用されるpH調節剤は酸とアルカリの組み合わせであり、pH調節剤はハロゲン化物以外であり、酸はo-リン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、1,2,3,4- ブタンテトラカルボン酸、フマル酸又はリンゴ酸を含む群から選ばれる。アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はトリエタノールアミンを含む群から選ばれる。
【0022】
医薬上許される賦形剤として、防腐剤、等張剤又は希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に使用される“防腐剤”は菌類及びその他の微生物の成長を阻止するのに使用し得るものを表す。好適な防腐剤として、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、m-クレゾール又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
“等張剤”は生理学的に寛容され、かつ好適な張度を製剤に付与して製剤と接触している細胞膜を横切っての水の正味の流れを防止する化合物である。グリセリンの如き化合物が既知の濃度でこのような目的のために普通使用される。その他の可能な等張剤として、塩、例えば、塩化ナトリウム、デキストロース、又はラクトースが挙げられる。
典型的には、インスリンは希釈剤に溶解又は分散されて液体形態のインスリンを与える。好適な希釈剤として、水、緩衝水溶液、希薄な酸、注射用の植物油又は不活性油、有機親水性希釈剤、例えば、1価のアルコール、及び低分子量グリコール並びにポリオール(例えば、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、及びブチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の医薬の発明は注射投与に意図される。
本発明の医薬の発明は皮下投与、筋肉内投与又は静脈内投与に意図される。
本発明において、インスリン組成物の調製方法が提供され、前記方法は
a)その他の医薬上許される賦形剤とともに溶解性増強剤を含む溶液を調製し、
b)インスリン溶液を別に調製し、pH調節剤をそれに添加し、
c)工程a)及びb)の溶液を混合することを含む。
【0023】
最終容積は注射用の水(WFI) の助けにより構成される。pHがpH調節剤で調節される。
本発明の別の局面において、下記の工程:
a) pH調節剤を含む溶液を調製する工程、
b) インスリンを酸性の注射用の水に溶解することによりインスリン溶液を調製する工程、
c) 尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤の溶液を調製する工程、
d) 工程(a) の溶液を工程(b) の溶液と混合する工程、
e) 工程(c) の溶液を工程(d) の溶液に添加する工程
を伴なうインスリン製剤の調製方法が提供される。
最終容積は注射用の水(WFI) の助けにより構成される。pHがpH調節剤で調節される。
前記インスリン組成物は高い化学安定性を有し、これは貯蔵後に二量体及びポリマー並びにデスアミドインスリンの生成の減少に反映される。更に、物理的安定性がハロゲン化物(これは従来技術で安定剤と称される)の不在により劣化されず、またインスリンがインスリン製剤の長期貯蔵により沈澱しない。
本発明の別の局面において、本発明の医薬組成物をそれを要する患者に投与することを含む糖尿病の治療方法が提供される。
本発明の別の局面において、糖尿病を患っている患者に本発明の医薬組成物を投与することを含む患者のグルコースのレベルを制御する方法が提供される。
以下に示される実施例は本発明の実施態様を説明するのに利用できる。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0024】
実施例1
【表1】
【0025】
実施例2
【表2】
【0026】
実施例3
【表3】
【0027】
実施例4
【表4】
【0028】
実施例5
【表5】
【0029】
実施例6
【表6】
【0030】
操作:実施例1〜6に記載された医薬組成物を以下に詳述される方法に従って調製した。
工程1:緩衝液調製
緩衝液:m-クレゾール(蒸留された)、フェノール、及び/又はグリセロール、一種以上の溶解性増強剤グリシン/アルギニン/ヒスチジン/グリセロール/ポロキサマー(実施例につき)、硫酸ナトリウム及び/又はo-リン酸水素二ナトリウム二水和物を注射用の水(WFI) に交互に溶解して緩衝液を調製する。
塩化亜鉛(1%w/v )溶液の調製:正解に計量された塩化亜鉛208 mgをWFI 10mlに溶解した。
工程2:API 溶液の調製
API 溶液の調製:正確に計量されたインスリン又はインスリンアスパルトをWFI に分散した。それに塩化亜鉛溶液(1%w/v )(API の内在亜鉛含量に基づいて計算された量)を充分な量で添加してペーストを生成した。上記ペーストにo-リン酸又は塩酸を充分な量で添加して透明な溶液を生成した。この溶液の最終容積をWFI により補給した。
工程3:最終溶液
API 溶液を緩衝液と混合した。その溶液のpHを最初に10%v/v のo-リン酸又は10%w/v のNaOHもしくは塩酸でpH2.9-3.4 に調節し、次いでpH7.2-7.4 に調節した。最終溶液を別の50.0mLのファルコン管中でLAF の下で0.2 μのシリンジフィルターにより濾過した。
実施例7:
【0031】
【表7】
【0032】
操作: m-クレゾール及びグリセロール(85%)をWFI に溶解することにより緩衝溶液を調製する。塩化亜鉛を水に溶解することにより塩化亜鉛の1%w/v 溶液を調製する。インスリングラルギンを酸性WFI に溶解することによりAPI 溶液を調製する。このAPI 溶液に、塩化亜鉛の1%w/v 溶液を添加してペーストを生成する。10%v/v の塩酸溶液を添加して透明な溶液を生成した。この透明な溶液に、緩衝溶液及びアルギニン溶液を添加した。その溶液のpHを10%v/v のNaOHで3.9-4.2 に調節した。
実施例8:
【0033】
【表8】
【0034】
操作: m-クレゾール及びグリセロール(85%)をWFI に溶解することにより緩衝溶液を調製する。塩化亜鉛を水に溶解することにより塩化亜鉛の1%w/v 溶液を調製する。インスリングラルギンを酸性WFI に溶解することによりAPI 溶液を調製する。このAPI溶液に、塩化亜鉛の1%w/v 溶液を添加してペーストを生成した。10%v/v の塩酸溶液を添加して透明な溶液を生成した。この透明な溶液に、緩衝溶液及びヒスチジン塩酸塩溶液を添加した。その溶液のpHを10%v/v のNaOHで3.9-4.2 に調節した。
実施例9:
【0035】
【表9】
【0036】
操作:m-クレゾール及びグリセロール(85%)をWFI に溶解することにより緩衝溶液を調製する。塩化亜鉛を水に溶解することにより塩化亜鉛の1%w/v 溶液を調製する。インスリングラルギンを酸性WFI に溶解することによりAPI 溶液を調製する。このAPI溶液に、塩化亜鉛の1%w/v 溶液を添加してペーストを生成した。それにo-リン酸を添加してAPI を溶解した。このAPI 溶液に、緩衝溶液及びグリシン溶液を添加した。その最終溶液のpHを10%w/v のNaOHで3.9-4.2 に調節した。
実施例10:
【0037】
【表10】
【0038】
操作:フェノール及びグリセロール(85%)をWFI に溶解することにより緩衝溶液を調製する。塩化亜鉛を水に溶解することにより塩化亜鉛の1%w/v 溶液を調製する。インスリングラルギンを酸性WFI に溶解することによりAPI 溶液を調製する。このAPI 溶液に、塩化亜鉛の1%w/v 溶液を添加してペーストを生成する。それにo-リン酸を添加してAPIを溶解した。このAPI 溶液に、緩衝溶液及びリン脂質溶液を添加した。最終溶液のpHを10%v/v のNaOHで3.9-4.2 に調節した。
実施例11:
【0039】
【表11】
【0040】
操作:フェノール及びグリセロール(85%)をWFI に溶解することにより緩衝溶液を調製する。塩化亜鉛を水に溶解することにより塩化亜鉛の1%w/v 溶液を調製する。インスリングラルギンを酸性WFI に溶解することによりAPI 溶液を調製する。このAPI 溶液に、塩化亜鉛の1%w/v 溶液を添加してペーストを生成する。それにo-リン酸を添加してAPI を溶解した。このAPI 溶液に、緩衝溶液及び尿素溶液を添加した。最終溶液のpHを10%v/v のKOH で3.9-4.2 に調節した。
実施例12:
【0041】
【表12】
【0042】
操作:
工程1:インスリングラルギンの亜鉛含有結晶を1M HCl数μLの助けにより注射用の水に溶解することにより200 IU/mL 濃度のインスリングラルギンの溶液を調製した。適当な容積の塩化亜鉛溶液(1%w/v )を添加することにより内在性亜鉛レベルを補給した。
工程2:m-クレゾール、グリセロール及びグリシンを溶解することにより防腐剤/安定剤系(2X)の別の溶液を調製した。
工程3:工程1のインスリン溶液及び工程2の溶液の両方を混合及び1M HCl又は1M NaOHによる4.0 ±0.2 へのpH調節後に最終濃度に希釈した。次いで最終製剤を0.2 フィルターにより濾過した。滅菌濾過後に、これらの製剤をバイアルに導入し、安定性試験にかけた。
安定性研究:
本発明の実施例6の医薬組成物を実時間安定性条件(5℃±3℃)並びに25℃±2℃及び60%RH±5%における促進安定性条件に暴露した。サンプルを初期に、また3ヶ月後に取り出し、HPLC分析にかけた。
【0043】
【表13】
【0044】
安定性から明らかなように、高分子量の不純物の統計上ごくわずかの増加があり(%HMWP)、こうしてAPI が充分に単量体状態に留まる。更に、製剤中の不純物レベルが促進条件でさえも有意に増加しなかった。これは本発明の組成物が促進条件でさえも安定であることを示す。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、並びに、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤からなる群から選ばれた溶解性増強剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、安定な水性医薬組成物。
〔2〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体が組換えヒトインスリン、インスリンNPH 、インスリンリスプロ、インスリンリスプロプロタミン、インスリングルリシン及びインスリンアスパルト、インスリンアスパルトプロタミン、インスリングラルギン、並びにインスリンデテミルの一種以上から選ばれる、前記〔1〕記載の医薬組成物。
〔3〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体がインスリンアスパルトである、前記〔2〕記載の医薬組成物。
〔4〕アミノ酸がグリシン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、ロイシン又はこれらの塩を含む群から選ばれる、前記〔1〕記載の医薬組成物。
〔5〕アミノ酸がグリシン、アルギニン及びヒスチジン又はこれらの塩から選ばれる、前記〔4〕記載の医薬組成物。
〔6〕表面活性剤がポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ベンザルコニウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアミン、アルカノールアミン脂肪酸エステル、四級アンモニウム脂肪酸エステル、ジアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩(たとえばステアリルアミン)、トリエタノールアミンオレアート、塩化ベンズエトニウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホナート、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、硫酸処理アルコールエトキシレートのアンモニウム塩、ココイルイセチオン酸ナトリウム、N-メチル-N- オレオイルタウリンナトリウム塩、N-メチル-N- ココイルタウリンナトリウム塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、二ナトリウムモノオレアミドPEG-2 スルホスクシネート、石油スルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、又はアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ベータアミノプロピオン酸アルキル、2-アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩、リシノールアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、ステアリルアンホカルボキシグリシネート、ラウラミドプロピオン酸ナトリウム、ココアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルイミノジプロピオン酸二ナトリウム、牛脂イミノジプロピオネート、ココアンホ−カルボキシグリシネート、ココイミダゾリンカルボキシレート、ラウリックイミダゾリンモノカルボキシレート、ラウリックイミダゾリンジカルボキシレート、ラウリックミリスチックベタイン、ココアミドスルホベタイン、アルキルアミドホスホベタイン、レシチン及び水素化レシチン、リソレシチン及び水素化リソレシチン、リン脂質及びこれらの誘導体、又はリソリン脂質及びこれらの誘導体を含む群から選ばれる、前記〔1〕記載の医薬組成物。
〔7〕表面活性剤がポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーである、前記〔6〕記載の医薬組成物。
〔8〕一種以上のpH調節剤を更に含む、前記〔1〕記載の医薬組成物。
〔9〕pH調節剤が酸とアルカリの組み合わせであり、pH調節剤がハロゲン化物以外である、前記〔8〕記載の医薬組成物。
〔10〕その他の医薬上許される賦形剤が防腐剤、等張剤又は希釈剤を含む、前記〔1〕記載の医薬組成物。
〔11〕防腐剤が安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、m-クレゾール又はこれらの組み合わせを含む群から選ばれる、前記〔10〕記載の医薬組成物。
〔12〕等張剤がグリシン、塩化ナトリウム、デキストロース、ラクトース又はこれらの組み合わせを含む群から選ばれる、前記〔10〕記載の医薬組成物。
〔13〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、並びに、尿素、アミノ酸及び/又は表面活性剤からなる群から選ばれた一種以上の溶解性増強剤、pH調節剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、安定な水性医薬組成物であって、そのpH調節剤がハロゲン化物以外である、医薬組成物。
〔14〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体がAspB28- ヒトインスリンである、前記〔13〕記載の医薬組成物。
〔15〕pH調節剤が酸とアルカリの組み合わせである、前記〔13〕記載の医薬組成物。
〔16〕酸がo-リン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、フマル酸又はリンゴ酸を含む群から選ばれる、前記〔14〕記載の医薬組成物。
〔17〕アルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はトリエタノールアミンを含む群から選ばれる、前記〔14〕記載の医薬組成物。
〔18〕組成物のpHが2-8 である、前記〔13〕記載の医薬組成物。
〔19〕前記〔1〕又は〔13〕記載の安定なインスリン組成物の調製方法であって、
a)その他の医薬上許される賦形剤とともに溶解性増強剤を含む溶液を調製する工程、
b)インスリン溶液を別に調製し、必要によりpH調節剤をそれに添加する工程、
c)工程a)及びb)の溶液を混合する工程、を含む方法。
〔20〕ヒトインスリン、その類似体又は誘導体、ハロゲン化物以外のpH調節剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、安定な水性医薬組成物であって、剤形のpHが6.8-7.6 である、医薬組成物。
〔21〕前記〔1〕、〔13〕又は〔20〕のいずれか1項記載の医薬組成物をそれを要する患者に投与する工程を含む、糖尿病の治療方法。
〔22〕Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン;尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、医薬組成物。
〔23〕表面活性剤が多価アルコール以外である、前記〔22〕記載の医薬組成物。
〔24〕pH調節剤を更に含む、前記〔22〕記載の医薬組成物。
〔25〕組成物のpHが3.9-4.2 である、前記〔22〕記載の医薬組成物。
〔26〕アミノ酸がグリシン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、ロイシン又はこれらの塩を含む群から選ばれる、前記〔22〕記載の医薬組成物。
〔27〕Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン;尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤;pH調節剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、医薬組成物であって、3.9-4.2 のpHを有する、医薬組成物。
〔28〕その他の医薬上許される賦形剤が防腐剤、等張剤又は希釈剤を含む、前記〔22〕又は〔27〕記載の医薬組成物。
〔29〕Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)- ヒトインスリン;一種以上のアミノ酸;pH調節剤を含み、一種以上のその他の医薬上許される賦形剤を含んでもよい、医薬組成物であって、3.8-4.2 のpHを有する、医薬組成物。
〔30〕前記〔22〕及び〔27〕記載の安定なインスリン組成物の調製方法であって、
a) pH調節剤を含む溶液を調製する工程、
b) インスリンを酸性の注射用の水に溶解することによりインスリン溶液を調製する工程、
c) 尿素、アミノ酸、カチオン表面活性剤、アニオン表面活性剤又は両性表面活性剤から選ばれた可溶化剤の溶液を調製する工程、
d) 工程(a) の溶液を工程(b) の溶液と混合する工程、
e) 工程(c) の溶液を工程(d) の溶液に添加する工程、を含む方法。