(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主走査方向に往復動するキャリッジに搭載されたインクジェットヘッドに液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する記録媒体に前記インクジェットヘッドのノズルより液体を吐出するインクジェット記録装置であって、
支持部材によって高さ方向における下端が支持された平板状のブレードを有し、前記ブレードを一方向へ移動させ、前記インクジェットヘッドのノズル面に下方側から前記ブレードの移動方向の前方側の面の上端辺を摺動させて該ノズル面のインクを拭き取るワイピング手段と、
前記ブレードの前記上端辺より高さ方向における上側に洗浄液を流出させる吐出口となる流出部が配置されており、前記吐出口から前記ブレードの前記上端辺の幅方向の一部のみへ前記洗浄液のかけ流しを行い、少なくとも前記ブレードの移動方向の前方側の面に付着したインクの洗浄を行う洗浄手段と、を備え、
前記支持部材は、少なくとも前記ブレードの前記前方側の面に、前記ブレードの前記前方側の面よりも前記ブレードを移動させる方向に突出し、高さ方向において前記ブレードの前記上端辺よりも所定の長さだけ下側に形成された段差部を有し、
前記段差部が配設される位置は、前記ブレードの前記上端辺の幅方向の前記一部にかけ流された前記洗浄液が下側に流れた後、前記段差部に到達した前記洗浄液が突起した段差部の上面を前記幅方向に向かって流れ、前記洗浄液が前記ブレードの前記移動方向の前方側の面および前記上端辺に付着したインクのうち、前記幅方向の一部よりも幅方向に広い範囲のインクを洗浄できる位置であること
を特徴とするインクジェット記録装置。
前記洗浄液誘導部材は、所定位置の前記ブレードに対して、先端部を該ブレードの先端部に対向させて、該ブレードの前後両面側に前記洗浄液が分流される位置に配設されること、
を特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に例示される構成においては、ワイピングを行うことによってワイパーのブレードにインクが付着した状態となる。したがって、そのままの状態で継続してワイピングを行うと、ブレードに付着したインクがノズルに入り込んで目詰まりを生じさせたり、インクの混色を生じさせたりする原因となってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクが付着したワイパーのブレードを洗浄することができ、それによってインクジェットヘッドのノズルの目詰まりやインクの混色を防止して、高画質の記録が可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
開示のインクジェット記録装置は、
支持部材によって高さ方向における下端が支持された平板状のブレードを有し、前記ブレードを一方向へ移動させ、インクジェットヘッドのノズル面に
前記ブレード
の移動方向の前方側の面の上端辺を摺動させてインクを拭き取るワイピング手段と、前記ブレード
の前記上端辺より高さ方向における上側に洗浄液を流出させる吐出口が配置されており、前記吐出口から前記ブレードの前記上端辺の幅方向の一部のみへ前記洗浄液のかけ流しを行
い、少なくとも前記ブレードの移動方向の前方側の面に付着したインクの洗浄を行う洗浄手段と、を備え
、前記支持部材は、少なくとも前記ブレードの前記前方側の面に、前記ブレードの前記前方側の面よりも前記ブレードを移動させる方向に突出し、高さ方向において前記ブレードの前記上端辺よりも所定の長さだけ下側に形成された段差部を有し、前記段差部が配設される位置は、前記ブレードの前記上端辺の幅方向の前記一部にかけ流された前記洗浄液が下側に流れた後、前記段差部に到達した前記洗浄液が突起した段差部の上面を前記幅方向に向かって流れ、前記洗浄液が前記ブレードの前記移動方向の前方側の面および前記上端辺に付着したインクのうち、前記幅方向の一部よりも幅方向に広い範囲のインクを洗浄できる位置であることを特徴とする。
【0009】
また、開示のインクジェット記録装置は、主走査方向に往復動するキャリッジに搭載されたインクジェットヘッドに液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する記録媒体に前記インクジェットヘッドのノズルより液体を吐出するインクジェット記録装置であって、
支持部材によって高さ方向における下端が支持された平板状のブレードを有し、前記ブレードを一方向へ移動させ、前記インクジェットヘッドのノズル面に下方側から
前記ブレードの移動方向の前方側の面の上端辺を摺動させて該ノズル面のインクを拭き取
るワイピング手段と、前記ブレード
の前記上端辺より高さ方向における上側に洗浄液を流出させる吐出口となる流出部
が配置されており、前記吐出口から前記ブレードの前記上端辺の幅方向の一部のみへ前記洗浄液のかけ流しを行い、少なくとも前記ブレードの移動方向の前方側の面に付着したインクの洗浄を行う洗浄手段と、を備え
、前記支持部材は、少なくとも前記ブレードの前記前方側の面に、前記ブレードの前記前方側の面よりも前記ブレードを移動させる方向に突出し、高さ方向において前記ブレードの前記上端辺よりも所定の長さだけ下側に形成された段差部を有し、前記段差部が配設される位置は、前記ブレードの前記上端辺の幅方向の前記一部にかけ流された前記洗浄液が下側に流れた後、前記段差部に到達した前記洗浄液が突起した段差部の上面を前記幅方向に向かって流れ、前記洗浄液が前記ブレードの前記移動方向の前方側の面および前記上端辺に付着したインクのうち、前記幅方向の一部よりも幅方向に広い範囲のインクを洗浄できる位置であることを特徴とする。
【0010】
開示のインクジェット記録装置によれば、ワイピング手段のブレードによって、インクジェットヘッドのノズル面をワイピングすることができるため、ノズル面に付着したインクを除去することが可能となる。さらに、洗浄手段によって、ワイピングを行ったブレードを洗浄することができ、ブレードに付着したインクを除去することができるため、継続してワイピングを行う場合にもインクジェットヘッドのノズルの目詰まりやインクの混色を防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記洗浄手段は、前記主走査方向の一端部であって、前記インクジェットヘッドを待機させるための待機位置に配設されていることが好ましい。
また、本発明において、前記洗浄手段は、前記インクジェットヘッドが前記待機位置に移動した状態において、前記ブレードの先端部側に洗浄液を流出することが好ましい。
これによれば、インクジェットヘッドの待機時間を利用して、ノズル面のワイピングおよびワイピング手段のブレードの洗浄を行うことができる。また、印刷加工中に当該ワイピングや洗浄を行ってしまうと印刷加工への悪影響が生じてしまうおそれがあるため、そのような悪影響を防止することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、さらに、前記洗浄液を貯留する貯留部と、前記貯留部に一端が連結されると共に他端に前記流出部を有し、内部に前記洗浄液が流通する流通部材と、前記洗浄液の前記流出部からの流出、停止を制御する制御部材と、を備えることが好ましい。これによれば、インクジェット記録装置内に設けられた貯留部から洗浄液を供給してワイピング手段のブレードの洗浄を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記洗浄手段は、前記ブレードの先端部と前記流出部との間に、前記洗浄液のかけ流し領域を拡げると共に、かけ流し位置の位置決めを行う洗浄液誘導部材を有することが好ましい。これによれば、横長のブレードの板面に対して、当該ブレードの長手方向におけるより広い領域に亘って洗浄液をかけることが可能となる。さらに、かけ流し位置すなわち洗浄液が流れ落ちる位置を容易且つ高精度に設定することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記洗浄液誘導部材は、所定位置の前記ブレードに対して、先端部を該ブレードの先端部に対向させて、該ブレードの前後両面側に前記洗浄液が分流される位置に配設されることが好ましい。これによれば、洗浄液を吐出するだけで同時にブレードの前後両面に対してかけ流しを行うことができ、付着したインクを洗い流すことができる。したがって、洗浄液の吐出方向をブレードの両面側に向けて変化させるといった複雑な機構を設ける必要が無いため、装置構成の簡易化が可能となり、装置コストの低減を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明において、前記洗浄液誘導部材は、その先端部が直線状に形成された直線部を有し、前記ブレードは、その先端部が直線状に形成された直線部を有し、前記洗浄液誘導部材の直線部と前記ブレードの直線部とが互いに平行になるように対向させて配設され、前記洗浄液誘導部材は、その先端部が、前記流出部から流出した洗浄液が前記ブレードの幅方向の略全域に亘って広がる幅に形成されていることが好ましい。
また、本発明において、前記洗浄液誘導部材は、その先端部が直線状に形成された直線部を有し、前記ブレードは、その先端部が直線状に形成された直線部を有し、前記洗浄液誘導部材の直線部と前記ブレードの直線部とが互いに平行になるように対向させて配設され、前記洗浄液誘導部材および前記ブレードの互いの先端部は、前記流出部から流出した洗浄液が該ブレードの幅方向の略全域に亘って広がる間隔で配設されていることが好ましい。
これらによれば、ブレードの幅方向(長手方向)における略全域に亘って洗浄液をかけることが可能となるため、インクの除去効果を高めることができる。
【0016】
また、本発明において、前記洗浄液誘導部材は、前記ワイピング手段が支持される支持部材に支持されていることが好ましい。これによれば、洗浄液誘導部材とワイピング手段(特にブレード)が同一の支持部材によって支持されていることによって、洗浄液誘導部材およびブレードの相互の配置における位置精度を向上させることが可能となる。
【0017】
また、本発明において、前記ワイピング手段は、前記ブレードの両面側において、該ブレードの先端部よりも所定長さ低い位置に段差部を有することが好ましい。これによれば、ブレードにかけられた洗浄液は、段差部の上を左右方向に向かって流れて長手方向の広い範囲まで到達する作用が得られるため、ブレードの表面が広範囲に洗浄される効果が得られる。さらに、中央から左方向、右方向のそれぞれへ向かう洗浄液の流れが生じることによって、洗浄効果が一層高められる。
【発明の効果】
【0018】
開示のインクジェット記録装置によれば、ワイピング手段と洗浄手段とを備えて、インクが付着したワイパーのブレードを洗浄することができ、それによってインクジェットヘッドのノズルの目詰まりやインクの混色を防止して、高画質の記録が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の概略図(平面図)を示す。また、
図2に、当該インクジェット記録装置1の概略図(側面図)を示す。説明の便宜上、各図において矢印方向でインクジェット記録装置1の前後、左右、および上下方向を示す。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
インクジェット記録装置1は、紙、布、樹脂シート(例えば、塩化ビニル、ポリエステル等からなる)等の記録媒体Mの記録面(印刷面)に対してインクジェットヘッドのノズルから液体(ここでは、インク)を吐出することにより文字や図形等の印刷加工を行う装置である。
【0022】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録媒体Mが搭載されるプラテン10の上方において、記録媒体Mの搬送方向(
図1における前方向)と直交する方向(
図1における左右方向)にYバー12が掛け渡されており、このYバー12に、キャリッジ14が移動可能に保持されている。このため、キャリッジ14は、Yバー12に案内されて左右方向に移動可能となっている。なお、キャリッジ14は、ワイヤーやボールなどを用いた牽引機構に連結されており、モータなどの駆動源を駆動制御することで、左右方向に移動することが可能となっている。
【0023】
このキャリッジ14には、インク液滴を吐出するインクジェットヘッド20が搭載されたヘッドユニット18が固定されている。
【0024】
インクジェットヘッド20には、インク液滴を吐出する複数のノズル23が形成されたノズルプレート22が設けられている(
図2、
図5参照)。そして、このノズルプレート22のプラテン10および記録媒体M側の面に、インク液滴が吐出されるノズル面24が形成されている。なお、インクの種類は特に限定されるものではなく、UVインク、ラテックスインク等のインクジェット用インクが用いられる。
【0025】
ここで、本実施形態においては、UV(紫外線)の照射によって硬化するUVインクを用いる場合を例に挙げる。したがって、ヘッドユニット18には、左右方向における両側に、UVを照射するUV照射器16が固定されている。なお、UVインク以外のインク(例えば、ラテックスインク等)を用いる場合には、UV照射器16を設けない構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によって、キャリッジ14を左右方向に移動させることで、ヘッドユニット18とUV照射器16とを同時に左右方向に移動させることが可能となっている。そして、キャリッジ14を左右方向に移動させる際に、ヘッドユニット18からインク液滴を吐出すると共に、UV照射器16からUVを照射することで、1スキャンで、インク液滴の吐出と、記録媒体Mに着弾したインク液滴の硬化とを行うことができる。
【0027】
また、本実施形態においては、ヘッドユニット18を一方側(
図1、
図2では右側)端部に移動させたときのインクジェットヘッド20の下方に、インクジェットヘッド20のノズル面24をワイピングするワイピング手段30が設けられている。ここで、ワイピング手段30の構成例および後述する洗浄手段40の構成例を
図3の斜視図(概略図)に示す。なお、同
図3に示すように、ワイピング手段30(特にブレード34)と洗浄手段40とが同一の支持部材(支持部材2)によって支持されている。これによれば、ワイピング手段30および洗浄手段40の相互の配置の位置精度を向上させることが可能となる。
【0028】
本実施形態においては、ワイピング手段30は、主走査方向(
図1、
図2における左右方向)の一端部であって、インクジェットヘッド20を待機させるための所定の待機位置に配設されていることが好ましい(
図1、
図2参照)。これによれば、インクジェットヘッド20が印刷加工の間等の待機時間を利用して、ノズル面24のワイピングを行うことができる。また、ワイピングに起因する意図しないインク滴下等で記録媒体Mを汚損してしまうことが防止できる。
【0029】
本実施形態に係るワイピング手段30は、
図3の斜視図(概略図)に示すように、支持部材32によって両面側から挟持されたブレード34を有するワイパー36が、所定範囲(ここでは、
図3におけるA−B間)を往復移動可能なように移動手段38に取り付けられて構成されている。ここで、ワイパー36の構成例を
図4の三面図(概略図)に示す。なお、
図4(a)は平面図、
図4(b)は正面図、
図4(c)は側面図である。
【0030】
上記の構成によれば、インクジェットヘッド20のノズル面24にブレード34の先端部(上端辺)34aを当接させ、移動手段38によってワイパー36(すなわちブレード34)を所定方向に移動させてワイピング(拭き取り)を行い、ノズル23の先端部(開口部)を含むノズル面24に付着したインクを除去することができる(
図5参照)。なお、具体的なワイピング動作については後述するが、ブレード34の一回のワイピング動作は所定の一方向(
図5における矢印方向)の摺動で行われる。
【0031】
ここで、ブレード34は、柔軟性があり且つ機械的にインクの除去が可能な強度があること、ノズル面24の表面に傷をつけないこと、酸・アルカリ等の洗浄液に対して耐性を有すること、等の特性を満たす材料からなることが好ましく、例えば、ポリプロピレン等の樹脂材料、もしくはEPDM等のゴム材料が用いられる。ただし、これらの材料に限定されるものではない。一例として、本実施形態に係るブレード34は、ポリプロピレンを用いて略長方形の平板状に形成されており、先端部(上端辺)34aがノズル面24と線接触する構成となっている。
【0032】
また、ワイピング手段30は、支持部材32の上端部が、ブレード34の先端部(上端辺)34aよりも高さ方向において低い位置に形成されると共に、当該支持部材32の上端部が、前後方向・左右方向に所定幅を有する上面32aを備える構成となっている。すなわち、ワイピング手段30は、ブレード34の両面側における当該ブレード34の先端部よりも所定長さ低い位置において、前後方向に突起して且つ左右方向に延びる段差部33を有する構成となっている(
図4参照)。一例として、本実施形態に係る支持部材32は、EPDM等の材料を用いて直方体状に形成されており、
図5に示すように、ブレード34が変形(湾曲)可能なようにこれを支持する構成となっている。また、段差部33を有することによって、後述の洗浄動作を有効に行うことが可能となる。
【0033】
また、ワイパー36を移動させる移動手段38は、駆動モータ38aで駆動する駆動ローラ(不図示)と従動ローラ(不図示)に巻き回されたタイミングベルト38bを備えて構成されており、インクジェットヘッド20のノズル面24を清掃する位置、例えばインクジェットヘッド20を走査するキャリッジ14のホームポジションの近傍の所定の位置において、ワイパー36をインクジェットヘッド20のノズル面24と一定間隔をおいて当該ノズル面24に対向して移動させることができるように配置されている。
【0034】
駆動モータ38aは、例えばパルスモータからなり、相励磁を正/逆に切り換えてタイミングベルト38bを正回転/逆回転する。なお、ワイパー36の位置は例えば位置検出センサ(不図示)によって検出が行われる。
【0035】
次に、本実施形態に特徴的な洗浄手段40について説明する。洗浄手段40は、ワイパー36(特に、ブレード34)に洗浄液のかけ流し(洗浄液をかけて洗い流す動作)を行ってブレード34の洗浄を行うものである。なお、洗浄液は、使用されるインクの種類に応じて適宜選択すればよく、増粘化・固形化したインクを膨潤させて剥離する作用等を持つ液体が好適である。一例として、有機カルボン酸を含有するpH1.5〜4.0程度の酸性液体等が用いられる。
【0036】
本実施形態においては、洗浄手段40は、ワイピング手段30と一致させた位置、すなわち、主走査方向(
図1、
図2における左右方向)の一端部であって、インクジェットヘッド20を待機させるための所定の待機位置に配設されていることが好ましい(
図1、
図2参照)。これによれば、インクジェットヘッド20が印刷加工の間等の待機時間を利用して、ワイパー36(ブレード34)の洗浄を行うことができる。また、洗浄液やインクの滴下等で記録媒体Mを汚損してしまうことが防止できる。
【0037】
本実施形態に係る洗浄手段40は、
図3の斜視図(概略図)に示すように、洗浄液吐出パイプ42、洗浄液誘導部材44、洗浄液トレイ46を備えて構成されている。より詳細の構成例および洗浄動作を説明するための概略図を
図6(
図6(a)は正面図、
図6(b)の側面図である)に示す。洗浄液は貯留部(不図示)に貯留されており、ポンプ等の送液手段(不図示)によって送液され、流通部材(洗浄液吐出パイプ)42内を通過して当該洗浄液吐出パイプ42の端部の流出部(吐出口)42aから吐出される。ここで、洗浄液吐出パイプ42は、流出部(吐出口)42aが洗浄液誘導部材44の上方に位置して、吐出された洗浄液が洗浄液誘導部材44上を流れるように配置される。また、洗浄液の流出部(吐出口)42aからの流出、停止を制御する制御部材(一例として、ポンプ、バルブ等)が設けられている(不図示)。なお、洗浄液の流出(吐出)は、インクジェットヘッド20が前述の待機位置に移動した状態において行われる。
【0038】
洗浄液誘導部材44は、洗浄液のかけ流し領域をワイパー36のブレード34における横方向(左右方向)に拡げると共に、かけ流し位置の正確な位置決めを行う部材である。より詳しくは、
図6(a)の正面図(概略図)に示すように、洗浄液誘導部材44は、所定幅の先端部(下端辺)44aを有する傾斜面44bを備えて構成されている。一例として、本実施形態に係る洗浄液誘導部材44は、逆台形状の傾斜面44bを有する平板状に形成されているが、この構成に限定されるものではない。
【0039】
また、洗浄液誘導部材44は、ワイパー36が所定位置(一例として、
図3におけるAの位置)に移動されて、当該ワイパー36のブレード34に対して洗浄液のかけ流しが実施される状態において、
図6(b)の側面図(概略図)に示すように、先端部(上端辺)44aをワイピング手段30のブレード34の先端部(上端辺)34aに平行に対向させて配置されると共に、ブレード34の前後両面に対して洗浄液のかけ流しが行われる位置すなわち、洗浄液誘導部材44から流れ落ちる洗浄液がブレード34の先端部(上端辺)34aによって分流されて当該ブレード34の前後両面側を流れる位置となるように配置される。
【0040】
上記構成によれば、
図6(a)の正面図(概略図)に示すように、洗浄液吐出パイプ42から吐出された洗浄液は、傾斜面44bを流れることによって吐出時よりも横幅(
図6(a)の左右方向における幅)が拡張された状態で、先端部(下端辺)44aから下方に流れ落ちる作用が生じる。すなわち、横長のブレード34の板面に対して、より広い領域(左右方向に広い領域)に亘って洗浄液をかけることが可能となる。
【0041】
また、ワイピング動作によってブレード34は前後両面にインクが付着することとなるが、洗浄液を吐出するだけで同時にブレード34の前後両面に対してかけ流しを行うことができ、付着したインクを洗い流すことができる。これは、洗浄液吐出パイプ42および洗浄液誘導部材44を固定したままで実現できるため、洗浄液の吐出方向をブレード34の両面側に向けて変化させるといった複雑な機構を設ける必要が無く、簡易な装置構成とすることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
さらに、洗浄液を分流させるための位置決めは高精度に行う必要があるが、洗浄液を洗浄液吐出パイプ42の吐出口42aから直接、ワイパー36のブレード34に対してかけ流しを行う構成とする場合には、所望の分流を生じさせるように吐出口42aの位置決めを行うことが非常に難しいという課題が生じる。しかし、本実施形態においては、洗浄液誘導部材44を備える構成によって、所望の分流を生じさせるための位置決めが非常に容易になるという効果が得られる。
【0043】
特に、本実施形態においては、洗浄液誘導部材44の先端部(下端辺)44aが直線状に形成された直線部を有している。また、ワイピング手段30のブレード34の先端部(上端辺)34aが直線状に形成された直線部を有している。さらに、洗浄液誘導部材44の直線部(下端辺44a)とブレード34の直線部(上端辺34a)とが互いに平行になるように対向させて配設されている。
【0044】
このとき、洗浄液誘導部材44の先端部(下端辺)44aが、流出部(吐出口)42aから流出した洗浄液がブレード34の幅方向(
図6(a)における左右方向)の略全域に亘って広がる幅に形成されていることが好ましい。
また、洗浄液誘導部材の先端部(下端辺)44aとブレードの先端部(上端辺)34aとは、互いに、流出部(吐出口)42から流出した洗浄液がブレード34の幅方向(
図6(a)における左右方向)の略全域に亘って広がる間隔で配設されていることが好ましい。
これらの構成によれば、ブレードの幅方向(
図6(a)における左右方向)における略全域に亘って洗浄液をかけることが可能となるため、インクの除去効果を高めることができる。
【0045】
洗浄液トレイ46は、洗浄液吐出パイプ42の吐出口、洗浄液誘導部材44、およびワイパー36(移動範囲を含む)の下方に設置されており、ワイパー36のブレード34に対してかけ流しが行われた洗浄液を捕集するためのトレイである。なお、洗浄液トレイ46の底面には排水用穴46aが設けられており、廃液タンク(不図示)へと連通している。
【0046】
続いて、以上の構成を備えるインクジェット記録装置の動作について、ワイピング手段30によるワイピング動作、および洗浄手段40による洗浄動作を中心に説明する。
【0047】
通常印刷時において、インクジェット記録装置1は、プラテン10上の記録媒体Mに対して、キャリッジ14(ヘッドユニット18)をYバー12に沿って左右に往復移動させながら、インクジェットヘッド20のノズル23から下方に向けてインクを吐出させて、所望のパターンで記録媒体Mに印刷加工を行う。このとき、使用するインクの種類に応じて、記録媒体Mに付着したインクが所望の硬化状態となるように加熱や紫外線照射等を行う。
【0048】
記録媒体M上の所定前後幅に対する印刷が完了すると、記録媒体Mを前方にスライド移動させ、再びキャリッジ14(ヘッドユニット18)を左右に往復移動させながら、インクジェットヘッド20からインクを吐出させて、硬化させる作動を繰り返す。このようにして、記録媒体M上の印刷領域全体に所望の文字や図柄が印刷加工される。
【0049】
インクジェット記録装置1において、印刷加工が行われると、次第にノズル23の開口部周辺をはじめとするノズル面24に、吐出されたインクが付着することがあり、また、付着したインク同士が合体してインク滴が形成されることがある。さらに、このインク滴は徐々に硬化して、例えばゲル状の増粘インクとなってしまう場合もある。このように、インクジェットヘッド20のノズル面24に、増粘インクやインク滴等が付着した状態のままで継続して印刷を行うと、インク滴が記録媒体Mに滴下したり、ノズル23の目詰まりを生じさせたりして印刷品質を低下させてしまうおそれがあるため、インクジェットヘッド20のノズル面24をワイピング手段30を用いてワイピングを行うことによって定期的にクリーニングを行う。
【0050】
上記のワイピングによるクリーニングは、例えばオペレータが、インクジェットヘッド20のノズル面24のメンテナンスが必要であると判断して操作パネル(不図示)を操作した場合、または、コントローラ(不図示)が、前回のメンテナンスからの稼動時間(印刷時間)が所定時間に達したと判断した場合、等をトリガーとして開始される。
【0051】
上記のトリガーによってクリーニングが開始されると、まず、コントローラからの作動信号に基づいて、左右駆動機構によりキャリッジ14(ヘッドユニット18)がワイピング手段30の上方の位置に移動されて、インクジェットヘッド20のノズル面24とワイピング手段30とが対向した状態となる。
【0052】
次いで、ワイピング手段30の移動手段38によってワイパー36を移動させる。より具体的には、ワイパー36のブレード34をノズル面24に対して摺動(当接した状態で所定方向へスライド移動)させることにより、ノズル面24がワイピングされて当該ノズル面24に付着しているインクが除去される(
図5参照)。なお、本実施形態においては、ブレード34による一回のワイピング動作は所定の一方向(
図5における矢印方向)への移動によって行われる。ただし、これに限定されるものではなく、往復移動によってワイピングを行う構成としてもよい。
【0053】
このように、ワイピング手段30によるワイピングを行うことによって、インクジェットヘッド20のノズル面24およびノズル23の内部に、インク滴や増粘インク等が付着していない清潔な状態とすることができ、ノズル23からのインク吐出が正確に行われ、また、不要なインク滴下が防止できるため、高品質な印刷が可能となる。
【0054】
一方、上記のワイピング動作を行うことによって除去されたインクは、ワイパー36のブレード34に付着する。付着したインクは、徐々に硬化して、例えばゲル状の増粘インクとなってしまう場合もある。このように、除去したインクあるいはそれらが硬化した増粘インク等がブレード34に付着した状態のままでワイピング動作を継続して行うと、ワイピング実施時に、それらのインクが逆にインクジェットヘッド20のノズル面24に付着して記録媒体M上に滴下する、あるいはノズル23に入り込んでしまって目詰まりや混色を生じさせる等の原因となって、印刷品質を低下させてしまうおそれがある。
【0055】
このような課題を解決するため、本実施形態においては洗浄手段40を用いて、ワイピング手段30のブレード34に対して洗浄液のかけ流しを行うことによって定期的にクリーニング(洗浄)を行う。なお、洗浄液のかけ流しを行う時間は、インクの種類に応じて適宜設定される。
【0056】
一例として、洗浄手段40によるブレード34の洗浄は、ワイピングの動作毎に行われる。洗浄動作について、より詳しくは、ワイピング動作が終了した後、移動手段38によって、ワイパー36を所定位置(一例として、
図3におけるAの位置)に移動させる。位置検出センサ(不図示)が、ワイパー36が所定位置に移動したことを検知すると、コントローラ(不図示)が、洗浄液吐出パイプ42から洗浄液を吐出させる指令を出す。
【0057】
次いで、洗浄液吐出パイプ42から吐出された洗浄液は、洗浄液誘導部材44の傾斜面44bを流れることによって、洗浄液吐出パイプ42から吐出された時よりも液幅(洗浄液の幅)がブレード34の長手方向(
図6(a)における左右方向)に拡張された状態で、先端部(下端辺)44aから下方に流れ落ち、それによって、ブレード34の板面に対して、左右方向のより広い領域に亘って洗浄液がかけられる作用が得られる。
【0058】
これに加えて、本実施形態においては、ブレード34の両面側における当該ブレード34の先端部(上端辺)34aよりも所定長さ低い位置において、前後方向に突起して且つ左右方向に延びる段差部33を有する構成を備えているため、ブレード34の板面に対して、左右方向のより広い領域に亘ってかけられた洗浄液が、段差部33の上(すなわち支持部材32の上面32a)を横方向(
図6(a)における左右方向)に向かって流れることによってさらに広範囲に達する作用が得られる。
【0059】
それらが相乗的に作用して、ブレード34の表面が、部分的ではなく全面的に洗浄が行われるという顕著な効果が得られる。さらに、中央から左方向、右方向のそれぞれへ向かう洗浄液の流れが生じることによって、洗い流しの効果が一層高められる。
【0060】
また、前述の通り、洗浄液誘導部材44は、洗浄液誘導部材44から流れ落ちる洗浄液がブレード34の先端部(上端辺)34aによって分流されて当該ブレード34の前後両面側を流れる位置となるように配置されている。したがって、洗浄液を吐出するだけでブレード34の前後両面の洗浄を同時に行うことが可能である。
【0061】
なお、洗浄液吐出パイプ42から吐出され、ワイパー36のブレード34に対してかけ流しが行われた洗浄液は、洗浄液トレイ46によって捕集され、排水用穴46aから廃液タンク(不図示)へと流下する。
【0062】
以上説明した通り、開示のインクジェット記録装置1によれば、ワイピング手段30と洗浄手段40とを備えて、インクが付着したワイパー36のブレード34を洗浄することができ、それによってインクジェットヘッド20のノズル23の目詰まりやインクの混色を防止して、高画質の記録(印刷)が可能となる。
【0063】
また、特に、本実施形態によって以下の特徴的な作用効果が奏される。
【0064】
開示のインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド20のノズル面24にブレード34を摺動させてインクを拭き取るワイピング手段30と、ブレード34に洗浄液のかけ流しを行って洗浄を行う洗浄手段40と、を備えることを特徴とする。
【0065】
また、開示のインクジェット記録装置1は、主走査方向(
図1、2における左右方向)に往復動するキャリッジ14に搭載されたインクジェットヘッド20に液体(インク)が供給され、キャリッジ14が主走査方向に往復動しながら対向する記録媒体Mにインクジェットヘッド20のノズル23より液体(インク)を吐出するインクジェット記録装置であって、インクジェットヘッド20のノズル面24に下方側から先端部34aを摺動させてノズル面24のインクを拭き取るブレード34を有するワイピング手段30と、ブレード34の先端部34a側に洗浄液を流出する流出部(吐出口)42aを有する洗浄手段40と、を備えることを特徴とする。
【0066】
開示のインクジェット記録装置1によれば、ワイピング手段30のブレード34によってインクジェットヘッド20のノズル面24をワイピングすることができるため、ノズル面24に付着したインクを除去することが可能となる。さらに、洗浄手段40によってワイピングを行ったブレード34を洗浄することができ、ブレード34に付着したインクを除去することができるため、継続してワイピングを行う場合にもインクジェットヘッド20のノズル23の目詰まりやインクの混色を防止することが可能となる。
【0067】
また、本発明において、洗浄手段40は、主走査方向(
図1、2における左右方向)の一端部であって、インクジェットヘッド20を待機させるための待機位置に配設されていることが好ましい。
また、本発明において、洗浄手段40は、インクジェットヘッド20が待機位置に移動した状態において、ブレード34の先端部34a側に洗浄液を流出することが好ましい。
これによれば、インクジェットヘッド20の待機時間を利用して、ノズル面24のワイピングおよびワイピング手段30のブレード34の洗浄を行うことができる。また、印刷加工中に当該ワイピングや洗浄を行ってしまうと印刷加工への悪影響が生じてしまうおそれがあるため、そのような悪影響を防止することが可能となる。
【0068】
また、本発明において、さらに、洗浄液を貯留する貯留部(不図示)と、当該貯留部に一端が連結されると共に他端に流出部(吐出口)42aを有し、内部に洗浄液が流通する流通部材(洗浄液吐出パイプ)42と、洗浄液の流出部(吐出口)42aからの流出、停止を制御する制御部材(不図示)と、を備えることが好ましい。これによれば、インクジェット記録装置1内に設けられた貯留部から洗浄液を供給してワイピング手段30のブレード34の洗浄を行うことが可能となる。
【0069】
また、本発明において、洗浄手段40は、ブレード34の先端部34aと流出部(吐出口)42aとの間に、洗浄液のかけ流し領域を拡げると共に、かけ流し位置の位置決めを行う洗浄液誘導部材44を有することが好ましい。これによれば、横長のブレード34の板面に対して、当該ブレード34の長手方向におけるより広い領域に亘って洗浄液をかけることが可能となる。さらに、かけ流し位置すなわち洗浄液が流れ落ちる位置を容易且つ高精度に設定することが可能となる。
【0070】
また、本発明において、洗浄液誘導部材44は、所定位置のブレード34に対して、先端部(下端辺)44aをブレード34の先端部(上端辺)34aに対向させて、ブレード34の前後両面側に洗浄液が分流される位置に配設されることが好ましい。これによれば、洗浄液を吐出するだけで同時にブレード34の前後両面に対してかけ流しを行うことができ、付着したインクを洗い流すことができる。したがって、洗浄液の吐出方向をブレード34の両面側に向けて変化させるといった複雑な機構を設ける必要が無いため、装置構成の簡易化が可能となり、装置コストの低減を図ることが可能となる。
【0071】
また、本発明において、洗浄液誘導部材44は、その先端部が直線状に形成された直線部(下端辺44a)を有し、ブレード34は、その先端部が直線状に形成された直線部(上端辺34a)を有し、洗浄液誘導部材44の直線部(下端辺44a)とブレード34の直線部(上端辺34a)とが互いに平行になるように対向させて配設され、洗浄液誘導部材44は、その先端部(下端辺)44aが、流出部(吐出口)42aから流出した洗浄液がブレード34の幅方向の略全域に亘って広がる幅に形成されていることが好ましい。
また、本発明において、洗浄液誘導部材44は、その先端部が直線状に形成された直線部(下端辺44a)を有し、ブレード34は、その先端部が直線状に形成された直線部(上端辺34a)を有し、洗浄液誘導部材44の直線部(下端辺44a)とブレード34の直線部(上端辺34a)とが互いに平行になるように対向させて配設され、洗浄液誘導部材44およびブレード34の互いの先端部44a、34aは、流出部(吐出口)42aから流出した洗浄液がブレード34の幅方向の略全域に亘って広がる間隔で配設されていることが好ましい。
これらによれば、ブレード34の幅方向(長手方向)における略全域に亘って洗浄液をかけて洗浄することが可能となるため、インクの除去効果を高めることができる。
【0072】
また、本発明において、洗浄液誘導部材44は、ワイピング手段30が支持される支持部材2に支持されていることが好ましい。これによれば、洗浄液誘導部材44とワイピング手段30(特にブレード34)が同一の部材(支持部材2)によって支持されていることによって、洗浄液誘導部材44およびブレード34の相互の配置における位置精度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、本発明において、ワイピング手段30は、ブレード34の両面側において、ブレード34の先端部(上端辺)34aよりも所定長さ低い位置に段差部33を有することが好ましい。これによれば、ブレード34にかけられた洗浄液は、段差部33の上を左右方向に向かって流れて長手方向の広い範囲まで到達する作用が得られるため、ブレード34の表面が広範囲に洗浄される効果が得られる。さらに、中央から左方向、右方向のそれぞれへ向かう洗浄液の流れが生じることによって、洗浄効果が一層高められる。
【0074】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。