特許第6111487号(P6111487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111487
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20170403BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20170403BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170403BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20170403BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H05B33/14 A
   G09F9/30 365
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-504002(P2015-504002)
(86)(22)【出願日】2013年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2013004909
(87)【国際公開番号】WO2014136150
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-41517(P2013-41517)
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 利幸
(72)【発明者】
【氏名】安喰 博之
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−060518(JP,A)
【文献】 特開2010−080268(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138816(WO,A1)
【文献】 特開2007−035347(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/113935(WO,A1)
【文献】 特開2009−054608(JP,A)
【文献】 特開2009−302042(JP,A)
【文献】 特開2010−118509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも赤色、緑色および青色の発光色で発光する発光部と、前記発光部の発光を制御する薄膜トランジスタアレイ装置とを備え、前記発光部は、バンクにより区画された領域に少なくとも赤色、緑色および青色の発光層を配置することにより構成され、
前記発光部は、前記バンクの下部に延在するように形成される電極と、前記バンク内において前記電極上に形成される正孔輸送層と、前記正孔輸送層上に形成される発光層とを有し、
前記正孔輸送層は、バンクの側面に接する周端部が中央部から盛り上がり、前記発光層は、バンクの側面に接する周端部が前記正孔輸送層の周端部上に形成されており、
前記発光層は、中央部の平均膜厚に対し、バンクの側面に接する周端部の平均膜厚が20%以上25%以下である
EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示装置が盛んに開発されており、駆動用基板に、第1電極、発光層を含む複数の有機層および第2電極を順に積層したEL(Electroluminescence)表示装置が注目されている。EL表示装置は、自発光型であるので視野角が広く、バックライトを必要としないので省電力が期待でき、応答性が高く、装置の厚みを薄くできるなどの特徴を有している。そのため、テレビ等の大画面表示装置への応用が強く望まれている。
【0003】
カラーディスプレイ用としては赤と青と緑の三色の画素による表示が最も一般的であり、省電力化や信頼性などを目的として、赤と青と緑と白の四色の画素や、赤と青と緑と薄青の四色の画素による表示技術も各社で開発が進んでいる。
【0004】
有機EL発光素子においては、画素毎に赤と青と緑の三色や、赤と青と緑と白などの四色に有機EL発光部を形成する必要がある。
【0005】
個別の有機EL部を形成する工法として最も一般的な工法は、微細な穴の開いたファインメタルマスクを用いて、穴の部分だけに蒸着により有機EL部を形成する工法である。例えば、赤用ファインメタルマスクにより赤色に発色する有機EL部を蒸着により形成し、緑用ファインメタルマスクにより緑色に発色する有機EL部を蒸着により形成し、青用ファインメタルマスクにより青色に発色する有機EL部を蒸着により形成して、赤と緑と青の発光部が形成される。
【0006】
一方大型の有機EL発光素子の作成やコストダウンには、大型基板による有機EL発光素子技術の開発が重要である。
【0007】
近年、大型基板による有機EL発光素子を形成する方法として二つの方法が注目されている。
【0008】
一つ目の工法は、白色有機EL素子を表示領域全域に形成し、赤と緑と青と白の四色のカラーフィルターにより着色表示させる方法である。この方法は大画面を形成したり、高精細ディスプレイ作成には有効な方法である。
【0009】
もう一つの工法は、塗布法により有機EL発光部を形成する方法である。塗布法としては様々な工法が検討されてきたが、大きく分けると、凸版印刷やフレキソ印刷やスクリーン印刷やグラビア印刷などを用いるものと、インクジェット法を用いるものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−249089号公報
【発明の概要】
【0011】
本技術によるEL表示装置は、少なくとも赤色、緑色および青色の発光色で発光する発光部と、発光部の発光を制御する薄膜トランジスタアレイ装置とを備えている。発光部は、バンクにより区画された領域に少なくとも赤色、緑色および青色の発光層を配置することにより構成される。発光部は、バンクの下部に延在するように形成される電極と、バンク内において電極上に形成される正孔輸送層と、正孔輸送層上に形成される発光層とを有している。正孔輸送層は、バンクの側面に接する周端部が中央部から盛り上がり、さらに発光層は、バンクの側面に接する周端部が正孔輸送層の周端部上に形成されている。
【0012】
本技術によれば、大画面のEL表示装置の製造に適するインクジェット法を用い、しかもサブピクセル毎の発光効率のばらつきを抑制し、高精細化が可能なEL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本技術の一実施の形態による有機EL表示装置の斜視図である。
図2図2は画素回路の回路構成を示す電気回路図である。
図3図3はEL表示装置において、RGBの画素部分の断面構造を示す断面図である。
図4図4はEL表示装置の発光層部分の要部構造を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の一実施の形態によるEL表示装置の製造方法について、図1図4の図面を用いて説明する。
【0015】
但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、発明者らは、当業者が本技術を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0017】
図1はEL表示装置の概略構成を示す斜視図、図2は画素を駆動する画素回路の回路構成を示す図である。
【0018】
図1図2に示すように、EL表示装置は、複数個の薄膜トランジスタを配置した薄膜トランジスタアレイ装置1と、下部電極である陽極2、有機材料からなる発光層3及び透明な上部電極である陰極4からなる発光部とを積層した構成である。発光部は、薄膜トランジスタアレイ装置1により発光制御される。また、発光部は、一対の電極である陽極2と陰極4との間に発光層3を配置した構成である。陽極2と発光層3の間には正孔輸送層が積層形成され、発光層3と透明な陰極4の間には電子輸送層が積層形成されている。薄膜トランジスタアレイ装置1には、複数の画素5がマトリックス状に配置されている。
【0019】
各画素5は、それぞれに設けられた画素回路6によって駆動される。また、薄膜トランジスタアレイ装置1は、行状に配置される複数のゲート配線7と、ゲート配線7と交差するように列状に配置される複数の信号配線としてのソース配線8と、ソース配線8に平行に延びる複数の電源配線9(図1では省略)とを備える。
【0020】
ゲート配線7は、画素回路6のそれぞれに含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ10のゲート電極10gが行毎に接続される。ソース配線8は、画素回路6のそれぞれに含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ10のソース電極10sが列毎に接続される。電源配線9は、画素回路6のそれぞれに含まれる駆動素子として動作する薄膜トランジスタ11のドレイン電極11dが列毎に接続される。
【0021】
図2に示すように、画素回路6は、スイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ10と、駆動素子として動作する薄膜トランジスタ11と、対応する画素に表示するデータを記憶するキャパシタ12とで構成される。
【0022】
薄膜トランジスタ10は、ゲート配線7に接続されるゲート電極10gと、ソース配線8に接続されるソース電極10sと、キャパシタ12及び薄膜トランジスタ11のゲート電極11gに接続されるドレイン電極10dと、半導体膜(図示せず)とで構成される。この薄膜トランジスタ10は、接続されたゲート配線7及びソース配線8に電圧が印加されると、当該ソース配線8に印加された電圧値を表示データとしてキャパシタ12に保存する。
【0023】
薄膜トランジスタ11は、薄膜トランジスタ10のドレイン電極10dに接続されるゲート電極11gと、電源配線9及びキャパシタ12に接続されるドレイン電極11dと、陽極2に接続されるソース電極11sと、半導体膜(図示せず)とで構成される。この薄膜トランジスタ11は、キャパシタ12が保持している電圧値に対応する電流を電源配線9からソース電極11sを通じて陽極2に供給する。すなわち、上記構成のEL表示装置は、ゲート配線7とソース配線8との交点に位置する画素5毎に表示制御を行うアクティブマトリックス方式を採用している。
【0024】
また、EL表示装置において、少なくとも赤色、緑色および青色の発光色で発光する発光部は、少なくとも赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光層を有する画素が複数個マトリクス状に配列されるように形成されている。各画素は、バンクによって互いに分離されている。このバンクは、ゲート配線7に平行に延びる突条と、ソース配線8に平行に延びる突条とが互いに交差するように形成することにより設けられる。そして、この突条で囲まれる部分、すなわちバンクの開口部にRGBの発光層を有する画素が形成されている。
【0025】
図3は、EL表示装置において、RGBの画素部分の断面構造を示す断面図である。図3に示すように、EL表示装置は、ガラス基板、フレキシブル樹脂基板などのベース基板21上に、上述した画素回路6を構成する薄膜トランジスタアレイ装置22を形成している。また、薄膜トランジスタアレイ装置22には、平坦化絶縁膜(図示せず)を介して下部電極である陽極23が形成されている。そして、陽極23上には、正孔輸送層24、有機材料からなる赤色、緑色、青色に発光する発光層25、電子輸送層26、透明な上部電極である陰極27が順に積層形成され、これによりRGBの有機EL発光部が構成されている。
【0026】
また、発光部の発光層25は、絶縁層であるバンク28により区画された領域に形成されている。バンク28は、陽極23と陰極27との絶縁性を確保するとともに、発光領域を所定の形状に区画するためのものであり、例えば酸化シリコンまたはポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。
【0027】
なお、上記実施の形態においては、正孔輸送層24、電子輸送層26のみを示しているが、正孔輸送層24、電子輸送層26それぞれには、正孔注入層、電子注入層が積層形成されている。
【0028】
このように構成された発光部は、窒化ケイ素などの封止層29により被覆され、さらにこの封止層29上に接着層30を介して透明なガラス基板、フレキシブル樹脂基板などの封止用基板31が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0029】
ここで、ベース基板21としては、その形状、材質、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、無アルカリガラス、ソーダガラスなどのガラス材料やシリコン基板でも金属基板でも良い。また、軽量化やフレキシブル化を目的として高分子系材料を用いても良い。高分子系材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドなどが適しているが、その他のアセテート系樹脂やアクリル系樹脂やポリエチレンやポリプロピレンやポリ塩化ビニル樹脂などの既知の高分子基板材料を用いても良い。高分子系材料を基板として用いるときには、ガラスなどの剛性のある基材の上に高分子基板を塗布法や貼り付けなどで形成した後、有機EL発光素子を形成し、その後ガラスなどの剛性のある基材を除去する製造方法が用いられる。
【0030】
陽極23は、アルミニウムやアルミニウム合金や銅などの導電性の良い金属材料や、光透過性のIZO、ITO、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などの電気伝導度の高い金属酸化物や金属硫化物などにより構成される。成膜方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法やイオンプレーティング法などの薄膜形成法が用いられる。
【0031】
正孔輸送層24は、電荷輸送としての働きを行うもので、ポリビニルカルバゾール系材料、ポリシラン系材料、ポリシロキサン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系化合物や芳香族アミン系化合物などが用いられる。成膜方法としては、各種の塗布工法を用いることが可能であり、10nm〜200nm程度の厚みに形成される。また、正孔輸送層24に積層される正孔注入層は、陽極23からの正孔注入を高める層であり、酸化モリブデンや酸化バナジウムや酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物をスパッタ法により形成される。
【0032】
発光層25は、蛍光や燐光などを発光する有機系材料を主成分とし、必要に応じてドーパントを添加して特性を改善する。印刷法に適した高分子系有機材料としては、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体などが用いられる。ドーパントは、発光波長のシフトや発光効率の改善のために用いられるものであり、色素系および金属錯体系のドーパントが数多く開発されている。また、大型基板に発光層25を形成する場合には印刷法が適しており、各種の印刷法の中でもインクジェット法が用いられ、20nm〜200nm程度の厚みの発光層25が形成される。
【0033】
電子輸送層26は、ベンゾキノン誘導体、ポリキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体などの材料が用いられる。成膜方法としては、真空蒸着法や塗布法が用いられ、通常10nm〜200nm程度の厚みに形成される。また、電子注入層は、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウムなどの材料が用いられ、真空蒸着法や塗布法により形成される。
【0034】
陰極27は、光の取り出し方向により材料が異なり、陰極27側から光を取り出す場合は、ITO、IZO、酸化スズ、酸化亜鉛などの光透光性の導電材料を用いる。陽極23側から光を取り出す場合は、白金、金、銀、銅、タングステン、アルミニウム及びアルミニウム合金などの材料を用いる。成膜方法としては、スパッタ法や真空蒸着法が用いられ、50nm〜500nm程度の厚みに形成される。
【0035】
バンク28は、領域内に発光層25の材料を含む溶液を十分な量で充填するために必要な構造物で、フォトリソ法によって所定の形状に形成される。バンク28の形状により、有機EL発光部のサブピクセルの形状を制御することができる。
【0036】
ところで、有機EL発光部は、発光層25の膜厚ばらつきによりサブピクセル毎の発光効率が大きく変化する。このサブピクセル毎の発光効率のばらつきに対しては、サブピクセル毎に流す電流に補正を加える駆動方法が用いられているが、有機EL発光部におけるサブピクセル毎の発光効率のばらつきについては、十分な改善が行われていないのが現状である。
【0037】
このような課題に対して、発明者らが検討を行ったところ、発光層25において、バンク28に接する部分の膜厚が薄い場合、その部分に過大な電流が流れることが判明した。しかも、発光層25の薄い部分は光取り出し効率も悪いため、結果としてバンク28に接する部分の膜厚が薄い発光層25を有するサブピクセルは、発光効率が低下することが判明した。具体的には、発光層25のバンク28に接する部分の膜厚が薄くなり、発光層25において、陽極23上の中央の平坦部に流れる電流の約1000倍を越える過大な電流が流れると、発光効率が10%以上低下することが判明した。
【0038】
図4は、本技術によるEL表示装置の発光部の要部構造を拡大して示す断面図である。図4に示すように、発光部は、バンク28の下部に延在するように形成される一方の電極である陽極23と、バンク28内において陽極23上に形成される正孔輸送層24と、正孔輸送層24上に形成される発光層25とを有している。
【0039】
図4において、正孔輸送層24は、バンク28内に形成したとき、陽極23に接するように形成される中央部24aと、中央部24aから盛り上がり、かつバンク28の側面に接する周端部24bとを備える。また、発光層25は、バンク28内に形成したとき、正孔輸送層24に接するように形成される中央部25aと、中央部25aから盛り上がり、かつバンク28の側面に接する周端部25bとを備える。
【0040】
このように正孔輸送層24は、バンク28の側面に接する周端部24bが中央部24aから盛り上がっている。また、発光層25は、バンク28の側面に接する周端部25bが正孔輸送層24の周端部24b上に形成される。これにより、発光層25は、バンク28に接する周端部25bの膜厚が薄くなってしまうのを防ぐことができるため、発光層25のバンク28に接する部分に過大な電流が流れにくくなり、サブピクセル毎の発光効率の低下を抑制することが可能となる。
【0041】
なお、発明者らが検討したところ、発光層25の中央部25aの平均膜厚L1に対し、バンク28の側面に接する周端部25bの平均膜厚L2(バンク28の側面に直角に直交する方向の膜厚)が20%より小さくなると、周端部25bに過大な電流が流れやすくなることが判明した。
【0042】
表1は、発光層25の中央部25aの平均膜厚L1が120nm、160nmのサンプルを用意し、約1000倍を越える過大な電流が流れる周端部25bの平均膜厚L2を検討した結果を示すものである。表1は、発光層25の中央部25aの平均膜厚L1が120nmのサンプルについて、周端部25bの平均膜厚L2が18nm、24nm、30nmの3種類のサンプルを試作した。平均膜厚L1が160nmのサンプルについては、周端部25bの平均膜厚L2が24nm、32nm、40nmの3種類のサンプルを試作した。それぞれのサンプルについて、発光層25の周端部25bに流れる電流を測定し、中央の平坦部に流れる電流に対して、約1000倍を越える過大電流が流れるか否かを評価した結果を示している。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、平均膜厚L1が120nmのサンプルの場合、平均膜厚L2が24nm以上のサンプルは過大電流が流れなく、平均膜厚L1が160nmのサンプルの場合、平均膜厚L2が32nm以上のサンプルは、過大電流が流れない。すなわち、発光層25は、中央部25aの平均膜厚L1に対し、バンク28の側面に接する周端部25bの平均膜厚L2が20%より小さくなると、周端部25bの部分に過大な電流が流れやすくなることが判明した。
【0045】
したがって、発光層25は、バンク28の側面に接する周端部25bは、バンク28の側面に直角に直交する方向の平均膜厚L2が、中央部25aの平均膜厚L1に対し、20%以上であることが望ましい。
【0046】
以上のように本技術によれば、正孔輸送層24のバンク28の側面に接する周端部24bが中央部24aから盛り上がり、かつ発光層25のバンク28の側面に接する周端部25bが正孔輸送層24の周端部24b上に形成されることにより、発光層25のバンク28に接する周端部25bの膜厚が薄くなるのを防ぐことができ、発光層25のバンク28に接する部分に過大な電流が流れにくくなり、サブピクセル毎の発光効率の低下を抑制することが可能となる。
【0047】
また、発光層25は、周端部25bの平均膜厚L2が中央部25aの平均膜厚L1に対し、20%以上となるように形成することにより、過大電流の発生が抑制され、サブピクセル毎の発光効率の低下をより一層抑制することができる。
【0048】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0049】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0050】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように本技術によれば、EL表示装置の高精細化を容易に実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0052】
1 薄膜トランジスタアレイ装置
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 画素
6 画素回路
7 ゲート配線
8 ソース配線
9 電源配線
10,11 薄膜トランジスタ
21 ベース基板
22 薄膜トランジスタアレイ装置
23 陽極
24 正孔輸送層
24a 中央部
24b 周端部
25 発光層
25a 中央部
25b 周端部
26 電子輸送層
27 陰極
28 バンク
29 封止層
30 接着層
31 封止用基板
図1
図2
図3
図4