特許第6111523号(P6111523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111523
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/44 20060101AFI20170403BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   B41F15/44 B
   B41M1/12
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-52015(P2012-52015)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-184402(P2013-184402A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】深田 隆之
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−014095(JP,A)
【文献】 特開平10−211688(JP,A)
【文献】 特開2000−272091(JP,A)
【文献】 特開2004−042644(JP,A)
【文献】 特開2007−021881(JP,A)
【文献】 特開2010−036443(JP,A)
【文献】 特開2011−020395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/40 − 15/46
H05K 3/12
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版上のインクをスキージングして印刷を行う印刷装置であって、
版上のインクをスキージングするスキージと、
前記スキージのインクが付着する付着面に先端部が当接するインク押出し板とを備え、
前記インク押出し板は、その断面が円弧形状であり、
前記円弧形状の開口方向が下方に向き、かつ、前記先端部の反対側の端部が、前記先端部より下方に位置するように、前記先端部が前記付着面に当接し、
前記付着面上を前記先端部が当接して移動することを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
前記インク押出し板の内壁の直径は、前記スキージング中に前記版上に生じる円柱形状で集まったインクの直径よりも小さい、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
版上のインクをスキージングして印刷を行う印刷方法であって、
版上のインクをスキージによってスキージングするスキージングステップを備え、
前記スキージングステップにおいて、前記スキージのインクが付着する付着面に、断面が円弧形状であるインク押出し板の先端部を、前記円弧形状の開口方向が下方に向き、かつ、前記先端部の反対側の端部が、前記先端部より下方に位置するように当接させ
前記付着面上を前記先端部が当接して移動させることを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキージによって版上のインクを掻き取る方式を用いる印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スクリーン印刷やグラビアオフセット印刷のように、スキージを用いて印刷を行なう場合、版上にインクを滴下して、版上でスキージを摺動させながらスキージでインクを版上に広げるようにスキージングして、被印刷物に印刷を行う。
【0003】
このようにスキージを用いる印刷方法では、多数の枚数印刷を行うと、徐々にインクがスキージに付着していくので版上のインク量が少なくなってしまい、この結果として、余分にインクを足さなければならず、材料費がかかってしまうという問題があった。さらに、手作業でスキージに付着したインクを除去するため、非効率であった。
【0004】
図3は、上記した一般的なスキージを用いる印刷方法を用いる印刷装置が備える、スキージホルダー11とスキージ21と版41とを側面から見た概略図である。この印刷装置は、スキージ21を下方に移動させて版41と接触させた後に、スキージ21を水平方向に移動(摺動)させながら版41上のインク31を掻き取ることで、版41上面に配置されているマスクの開口部分にインク31の充填を行う。スキージ21によって水平方向に押されたインク31は、進行方向にローリングしながら移動を行う。その際、インク31の大部分はローリングしながら移動するが、インク31の一部は図4に示すようにスキージ21に沿って上方へ移動し、スキージ21に付着する。スキージ21の上方へのインクの付着量は、印刷する毎に増加し、その結果として、版41上のインク31の残量が徐々に少なくなる。
【0005】
上記問題に対して、例えば特許文献1では、スキージに付着したインクを自動的に除去する機構として、スキージのインク掻き取り面に沿って摺接可能なインク押出し板をスキージに設置して、バネによってスキージに付着したインクを押出して除去する方式を提案している。具体的には、図5に示すように、インク押出し板5の下方先端が、スキージ21のインクが付着した面に添って移動することで、付着したインク33を掻き取って版41上に落下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−36443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の方式では、インク押出し板5によって、何回もスキージ21に付着したインクを除去していると、図6に示すように、次第にインク押出し板5上にもインク33が付着していき、スキージ21に加えてインク押出し板5に付着したインクも除去しなければならなくなるという問題があった。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用できる印刷装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号、説明文言等は、本発明の理解を助けるために後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0010】
本発明の第1の局面は、版(41)上のインク(31)をスキージングして印刷を行う印刷装置であって、版上のインクをスキージングするスキージ(21)と、スキージのインクが付着する付着面に先端部が当接するインク押出し板(61)とを備え、インク押出し板は、その断面が円弧形状であり、円弧形状の開口方向が下方に向き、かつ、先端部の反対側の端部が、先端部より下方に位置するように、先端部が付着面に当接し、付着面上を先端部が当接して移動することを特徴とする。
【0011】
第1の局面によれば、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用することができる。また、より確実に、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用することができる。さらに、インク押出し板の円弧部分の他端をインクが乗り越えて版上に落ちないことを防止できる。また、任意のタイミングで付着面に付着したインクを版上に落とすことができる。
【0014】
また、第の局面では、インク押出し板の内壁の直径は、スキージング中に版上に生じる円柱形状で集まったインク(31)の直径よりも小さくてもよい。
【0015】
の局面によれば、より確実に、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用することができる。
【0020】
また、第の局面では、版上のインクをスキージングして印刷を行う印刷方法であって、版上のインクをスキージによってスキージングするスキージングステップを備え、スキージングステップにおいて、スキージのインクが付着する付着面に、断面が円弧形状であるインク押出し板の先端部を、円弧形状の開口方向が下方に向き、かつ、先端部の反対側の端部が、先端部より下方に位置するように当接させ、前記付着面上を前記先端部が当接して移動させることを特徴とする。
【0021】
の局面によれば、第の局面と同様の効果を得ることができる
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用できる印刷装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージとインク押出し板と版とを側面から見た概略図の一例
図2】本発明の一実施形態に係る印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージとインク押出し板と版とを側面から見た概略図の他の例
図3】従来の印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージと版とを側面から見た概略図
図4】従来の印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージと版とを側面から見た概略図
図5】従来の印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージとインク押出し板と版とを側面から見た概略図
図6】従来の印刷装置が備える、スキージホルダーとスキージとインク押出し板と版とを側面から見た概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置(以下、本印刷装置という)が備える、スキージホルダー11とスキージ21とインク押出し板61と版41とを側面から見た概略図である。図1に示す本印刷装置は、図5を用いて説明した従来の印刷装置に対して、インク押出し板5をインク押出し板61に置き換えた構成である。
【0026】
図1に示すように、インク押出し板61は、断面が円弧形状の板であり、その開口方向が版41方向(つまり、下方)に向くようにスキージ21上に設置されている。そして、本印刷装置によって、スキージ21を水平方向に移動(摺動)させながら版41上のインク31を掻き取って版41上面に配置されているマスクの開口部分にインク31を充填する行程において、図6の矢印で示すように円弧形状のインク押出し板61がスキージ21上を下方に移動(摺動)することによって、スキージ21に付着したインク35は、円弧形状のインク押出し板61の一端によってスキージ21から掻き取られ、インク押出し板61の円弧形状の内壁に沿って流れて行き、インク押出し板61の他端から版41上に落ちる。なお、インク押出し板61は、スキージ21に付着したインク35を落とした後、スキージ21上の元の位置に戻る。
【0027】
このことによって、本印刷装置によれば、スキージ21に付着したインクを自動的に版41上に落として再利用でき、又、従来のようにインク押出し板にインクが付着する(図5および図6参照)ことを効果的に防止することができる。この結果として、本印刷装置によれば、スキージ21に付着したインクを自動的に効率良く版41上に落として再利用することができる。
【0028】
なお、本印刷装置において、インク押出し板61の設置角度は、円弧形状のインク押出し板61の開口方向を下方として、インク押出し板61の円弧部分の一端とスキージ21との接点よりも、インク押出し板61の円弧部分の他端が低くなることが好ましい(図1参照)。この設置角度とすることで、インク押出し板61の円弧部分の上記他端をインクが乗り越えて版41上に落ちないことを防止できる。
【0029】
また、本印刷装置において、図2に示すようにインク押出し板61の円弧の寸法が大きすぎると、インク押出し板61の内壁に付着したインク35が押し出され難いためにインク35が下方に落ち難い場合がある。そのため、これに限るわけではないが、円弧形状のインク押出し板61の内壁の直径Aは、最大のインクローリング径aに対して、A<aの関係であることが望ましい。ここで、最大のインクローリング径aは、スキージング中に版41上に生じる円柱形状で集まったインク31の最大直径である(図1参照)。
【0030】
また、上記した実施形態では、インク押出し板61がスキージ21上を当接して移動(摺動)することによってスキージ21に付着したインク61を落とす構成を説明した。しかし、インク押出し板61がスキージ21に固定されて移動しない構成として、インク押出し板61が、スキージ21に付着してスキージ21の上方に押し上げられてくるインク35を、この押し上げられる力を利用してスキージ21から自動的に剥がして落とす構成としてもよい。
【0031】
また、上記した実施形態では、インク押出し板61を、断面が円弧形状のものとして説明した。しかし、インク押出し板61において、版41と対向する面(つまり、下方の面)の断面が円弧形状であれば良く、インク押出し板61の上方の面はどのような形状であってもよい。
【0032】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、スキージングを行う印刷等に利用可能であり、スキージに付着したインクを自動的に効率良く版上に落として再利用したい場合等に有用である。
【符号の説明】
【0034】
5、61・・・インク押出し板
11・・・スキージホルダー
21・・・スキージ
31、32、33、35・・・インク
41・・・版
図1
図2
図3
図4
図5
図6