(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111527
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】逆阻止型半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20170403BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20170403BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20170403BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20170403BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20170403BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 652L
H01L29/78 652R
H01L29/78 658F
H01L29/50 B
H01L21/28 301R
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-83937(P2012-83937)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-214609(P2013-214609A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】脇本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 治雄
【審査官】
早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−187916(JP,A)
【文献】
特開2011−258833(JP,A)
【文献】
特開2009−177039(JP,A)
【文献】
特開2011−166004(JP,A)
【文献】
特開2007−335431(JP,A)
【文献】
特開平04−359431(JP,A)
【文献】
特開2010−062477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/331
H01L 21/28−21/288
H01L 21/44−21/445
H01L 29/40−29/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンよりなる第1導電型半導体基板と、
前記第1導電型半導体基板の一方の主面から、半導体機能領域を取り囲むリング状平面パターンで所要の深さに形成される第2導電型分離層と、
該分離層に対向する位置の他方の主面から前記分離層の底部に達する深さでリング状平面パターンのV字溝と、
前記V字溝に囲まれた他方の主面に設けられた第2導電型第1半導体層と、
前記V字溝の側壁面に設けられ、前記分離層の底部と前記第1半導体層とを連結し、前記第1半導体層より薄い第2導電型半導体薄層と、
アルミニウムを主成分とする金属電極と、
を備え、
前記金属電極は前記第1半導体層に直接オーミック接触しており、前記半導体薄層との間には高融点金属を主成分とするバリア層が設けられていることを特徴とする逆阻止型半導体装置。
【請求項2】
前記バリア層がチタン、タングステン、白金から選ばれる高融点金属であることを特徴とする請求項1記載の逆阻止型半導体装置。
【請求項3】
前記逆阻止型半導体装置が、一方の主面側で、主電流の流れる活性領域にMOSゲート構造を備え、ゲート電極とエミッタ電極を有し、他方の主面側の第2導電型コレクタ層にオーミック接触するコレクタ電極を有する逆阻止IGBTであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載の逆阻止型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置などに使用されるパワー半導体装置、特には、順逆の双方向に高信頼性の耐圧特性を有するIGBT(以降、逆阻止IGBT)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置の一つであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)の高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性とを併有するパワー半導体装置である。その応用範囲は、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)またはスイッチング電源などの産業分野から、電子レンジ、炊飯器またはストロボなどの民生機器分野へと拡大してきている。
【0003】
一方、AC(交流)/AC変換や、AC/DC(直流)変換、DC/AC変換などを行うための電力変換回路では、電解コンデンサや直流リアクトルなどで構成される直流平滑回路を不要にできる直接変換回路として、マトリクスコンバータが注目されている。このマトリクスコンバータは交流電圧下で使用されるため、その構成部品として用いられる複数のスイッチングデバイスには、順、逆方向に電流制御可能な双方向性の電気特性を有する双方向スイッチングデバイスを必要とする。そのような双方向スイッチングデバイスとして、逆阻止IGBTを逆並列接続したデバイス構成にすると、マトリクスコンバータの小型化、軽量化、高効率化、高速応答化および低コスト化等を図ることができるので、逆阻止IGBTが市場から強く要望されている。この逆阻止IGBTとは、通常の順耐圧に加えて逆方向耐圧にも高信頼性の特性を持つIGBTのことであり、そのような逆阻止IGBTの低コストでの提供が期待される。
【0004】
従来の逆阻止IGBTの一例の要部断面図を
図5に示す。逆阻止IGBTの逆方向耐圧を高信頼性にするためには、まず、逆阻止IGBT100の活性領域と耐圧構造領域を取り囲み、チップ化の際の切断部101を外周端とする周辺部102に、半導体基板103(以降、基板)の表面から基板裏面に達するp型分離層104を形成する。このp型分離層104は、基板表面側の周辺部102に設けられたp型チャネルストッパー領域105と基板裏面側のp型コレクタ層106とを同導電型で連結させ電気的にも導電接続させる機能を有する(特許文献1、2)。そのように、基板表面から裏面に達するような深い拡散を必要とするp型分離層の形成は半導体基板の厚さが厚くなると困難になる。必要とする基板の厚さは逆阻止IGBT100の耐圧に依存して決まる。例えば、600V耐圧クラスでは、逆阻止IGBT100の基板の厚さは100μm以上、1200V耐圧クラスでは180μm以上を必要とする。従って、前述のp型分離層104の深さは、600V耐圧クラスでは120μm、1200Vクラスでは200μm以上とすることが好ましい。120μm以上の深さの不純物拡散層を不純物の熱拡散で形成するためには、1300℃で100時間以上の高温長時間の熱拡散工程が必要になる。しかし、このような高温長時間の拡散工程を経て形成したデバイスは耐圧特性が低下し易くなり良品率も低下するだけでなく、熱拡散処理装置の劣化も著しいので、できる限り、拡散時間の短いプロセスとすることが強く望まれる。
【0005】
そのような拡散時間の短いプロセスによりp型分離層を形成することができる製造方法に関して、エッチングにより形成した溝を利用してp型分離層の拡散深さを浅くする方法(特許文献3)、トレンチにより形成した溝を利用してp型分離層の拡散深さを浅くする方法(特許文献4)などが公開されている。
【0006】
そこで、高温拡散時間を短くするために、
図4の逆阻止IGB150の断面図に示すように、基板表面から基板裏面に達するような深いp型分離層ではなく、基板表面からある所定の深さまでの、より浅いp型分離層104aをまず形成する。このp型分離層104aによって囲まれた内側の基板表面層に公知の技術によりMOSゲート構造(図示せず)やp型フィールドリミッティングリング114、絶縁膜115、低抵抗導電膜116などからなる耐圧構造領域107を形成する。前記基板表面側のp型分離層104aに対向する基板裏面側の位置からシリコンエッチングによりp型分離層104aの底部に達するV字溝108を形成する。基板裏面側にp型コレクタ層109を形成する時に、V字溝108の側壁面110にも、一端側がp型分離層104aの底部に連結し、他端側がp型コレクタ層109に連結するp型薄層111を同時形成する。このような構成にすることにより、前述より短い拡散時間で形成した浅いp型分離層104aでも、p型薄層111により前述の高温長時間で形成した深いp型分離層104を有する逆阻止IGBT100と同等の逆方向耐圧機能を有する逆阻止IGBT150が既に開発されている(特許文献5)。
【0007】
さらに、このような逆阻止IGBTを製造する技術に関して、アルミニウムスパイク現象により生じる耐圧不良を、コレクタ層8の表面に、厚さが0.3μm以上1.0μm以下で、シリコン濃度が0.5wt%以上2wt%以下、好ましくは1wt%以下のアルミニウムシリコン膜を第1層目とするコレクタ電極を設けることにより、低減させる記載が見られる(特許文献6)。
【0008】
またさらに、前述のような基板裏面からのエッチングによる溝の形成のために、アルカリエッチング法を用いると、所定の傾斜角を有するV字溝108が形成されることとが知られている(特許文献3、5)。V字溝108の側壁面110が斜めに形成できれば、p型コレクタ層109を形成するため、基板裏面側からボロンなどの不純物のイオン注入時に側壁面110にも同時にイオン注入されるので、p型コレクタ層109と側壁面110のp型薄層111とを一度の処理で同時に形成できる利点がある。
【0009】
一般的には、p型コレクタ層109の形成には、ボロンイオンを注入する。イオン注入後にレーザーアニール等により活性化を行う。その後に、Al−Si/Ti/Ni/Auなどの薄膜積層金属膜などからなる裏面金属電極112を形成すると、逆阻止IGBT150のウェハプロセスが完了する。裏面金属電極112には、一般的にスパッタ法による「Al−Si/Ti/Ni/Au」薄膜電極が用いられる。ここで「Al−Si」とはSiを微量に含むAlであることを意味する。
図4を参照する前述の逆阻止IGBTの説明に用いなかった符号107は耐圧構造領域、符号113はコレクタ平面部、符号114はp型フィールドリミッティングリング、符号115は絶縁膜、符号116は低抵抗導電膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−136064号公報(
図6)
【特許文献2】特開2006−303410号公報(
図8)
【特許文献4】特開2005−93972号公報(
図2)
【特許文献5】特開2011−181770号公報(
図1〜
図3)
【特許文献6】特開2007−36211号公報(要約、0016段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の
図4に示す逆阻止IGBT150は、チップでの耐圧測定では良品であっても、マトリクスコンバータ用の半導体モジュール製品などにするために、はんだ付け組み立てすると、逆方向耐圧の特性不良が増加するという課題が発生した。
【0012】
本発明は、そのような課題の発生を解消するためになされたものであり、本発明は、はんだ付けによる半導体製品組み立ての際にも、逆方向耐圧特性の劣化が生じ難い逆阻止型半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述した課題を解消するために、シリコンよりなる第1導電型半導体基板と、前記第1導電型半導体基板の一方の主面から、半導体機能領域を取り囲むリング状平面パターンで所要の深さに形成される第2導電型分離層と、該分離層に対向する位置の他方の主面から前記分離層の底部に達する深さでリング状平面パターンのV字溝と、前記V字溝に囲まれた他方の主面に設けられた第2導電型第1半導体層と、前記V字溝の側壁面に設けられ、前記分離層の底部と前記第1半導体層とを連結し、前記第1半導体層より薄い第2導電型半導体薄層と、アルミニウムを主成分とする金属電極と、を備え、該前記金属電極は前記第1半導体層に直接オーミック接触しており、前記半導体薄層との間には高融点金属を主成分とするバリア層が設けられている逆阻止型半導体装置とする。前記バリア層としてチタン、タングステン、白金などの高融点金属から選ぶことができる
。前記逆阻止型半導体装置を、一方の主面側で、主電流の流れる活性領域にMOSゲート構造を備え、ゲート電極とエミッタ電極を有し、他方の主面側のp型コレクタ層にオーミック接触するコレクタ電極を有する逆阻止IGBTとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、はんだ付けによる半導体製品組み立ての際にも、逆方向耐圧特性の劣化が生じ難く、安定的に半導体モジュール製品が製造できるため、良品率の向上が期待できる。また、半導体モジュール製品などを回路装置の部品として使用時にも長期的な動作安定性が得られるなどの高信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の逆阻止IGBTにかかる耐圧構造領域とその外周部の拡大断面図である(その1)。
【
図2】本発明の逆阻止IGBTにかかる耐圧構造領域とその外周部の拡大断面図である(その2)。
【
図3】逆方向耐圧特性の劣化前(a)と逆方向耐圧特性の劣化後(b)の逆方向耐圧特性波形図である。
【
図4】従来の逆阻止IGBTにかかる耐圧構造領域とその外周部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の逆阻止型半導体装置にかかる実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、第1導電型としてn型、第2導電型としてp型を用いて説明する。nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれ相対的に不純物濃度が高いまたは低いことを意味する。なお、以下の実施例の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例で説明される添付図面は、見易くまたは理解し易くするために正確なスケール、寸法比で描かれていない。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
以下の実施例の説明では、本発明の逆阻止型半導体装置として逆阻止IGBTを取り上げて本発明を詳細に説明する。前述したように、
図4に示す従来の逆阻止IGBT150のチップをマトリクスコンバータ用の半導体モジュール製品などを製造するために、はんだ付け組み立てすると、逆方向耐圧の特性不良が増加するという課題が発生する。その原因を調査したところ、逆阻止IGBT150のチップには、はんだ付けのために300〜330℃程度の熱処理が施される工程があって、この工程の前後で、
図3に示すように、エミッタを正、コレクタを負電圧とする逆方向電圧印加で、電流電圧波形が耐圧特性劣化前(a)から耐圧特性劣化後(b)に変化するものがあることが分かった。
【0018】
そこで、その原因を突き止めるために、逆阻止IGBTチップの裏面側のコレクタ電極の材料であるAl−Si合金膜の厚さとアロイスパイクの深さの相関を実験的に評価したところ、Al−Si合金膜の厚さが薄いほどアロイスパイクの深さが深くなる現象が関係していることが判明した。
【0019】
以下、その現象の詳細について説明する。Al−Si合金膜は半導体基板の裏面側からスパッタ蒸着で形成される。V字溝の側壁部は斜めになっている。このため、スパッタ時にスパッタ方向に対してほぼ垂直なコレクタ側の基板平面部(以降、コレクタ平面部)に付着するAl−Si合金膜厚よりも、傾斜したV字溝の側壁部表面に付着するAl−Si合金膜厚の方が薄くなる。その結果、側壁部分では、前述のスパイク深さがコレクタ平面部よりも深くなっている可能性がある。同様に、側壁部への不純物(例えば、ボロン)のイオン注入で形成されるp型薄層の深さについても、半導体基板の平面部に設けられるp型コレクタ層の深さよりも浅くなる。従って、深さの浅いV字溝の側壁部のp型薄層の方が、コレクタ平面部のp型コレクタ層よりも深いアロイスパイクができ易くかつ浅い接合への悪影響をより受け易くなる。その結果、p型薄層のpn接合に悪影響を及ぼすアロイスパイクに起因して、前述の逆方向耐圧特性の劣化が生じ易くなると考えられる。
【0020】
すなわち、はんだ付け処理の際に、逆阻止IGBT150のチップの裏面金属電極のうち、シリコン基板に直接接触するAl−Si合金膜中のAlとSi原子が前記V字溝の側壁部のシリコン基板との間で相互拡散して、側壁部のpn接合近辺にサブミクロン深さの”アロイスパイク”と呼ばれる微小な凹みを発生させるため、前述のような逆耐圧特性の劣化が発生すると考えられる。
【0021】
さらに具体的に説明すると、前記
図4に示す逆阻止IGBT150は、逆バイアスモード(エミッタ基準でコレクタに負電圧を印加)の際、p型コレクタ層109とn
−型ドリフト層117およびp型薄層111とn
−型ドリフト層117の間の各pn接合には高電界がかかる。通常、逆阻止IGBTの製造プロセスでは、このp型薄層111はイオン注入プロセスの効率的観点からp型コレクタ層109と同時形成とされる。一方、p型コレクタ層109はIGBTに求められる特性上の観点から、イオン注入のプロセスで、制御された少ないドーズ量でオーミック接触が得られる高い表面不純物濃度とするために1μm以下程度の薄層に形成されるので、傾斜した側壁面110に形成されるp型薄層111の厚さは1μm以下よりさらにいっそう薄くなる。従って、前述のように、このp型薄層111の浅いpn接合近辺に前述のような理由でアロイスパイクが発生すると、逆方向耐圧劣化や逆方向漏れ電流増加などの逆方向耐圧波形の不具合を起こす可能性が高くなるのである。
【0022】
図3に、そのような逆方向耐圧特性劣化前後の逆方向耐圧波形(
図3の(a)と(b))を示す。耐圧特性劣化前の正常な波形(a)では、製品規格以下の逆バイアス印加では逆漏れ電流が非常に小さく、製品規格以上の逆バイアスを印加するとアバランシェ電流が流れ、電流が急激に増加する。一方、耐圧特性劣化後(b)では、製品規格以下の低い逆バイアス電圧印加から電圧の増加とともに逆漏れ電流が大きく増加する波形になる。
【0023】
アロイスパイクによる逆方向耐圧特性の劣化を防ぎ、より安定なpn接合を備えるデバイス構造とするためには、アロイスパイクが生じにくい構造にすればよい。アロイスパイクの発生を抑制するためには、V字溝の側壁部に形成されているp型薄層およびp型コレクタ層とコレクタ電極の間に、AlとSiの相互拡散を抑止する機能を有する高融点金属のバリアメタル(バリア層)を挿入することが有効であることが分かった。そのようなバリアメタルの例としては、Ti(チタン)、W(タングステン)、Pt(白金)などの高融点金属が考えられる。しかしながら、側壁部とp型コレクタ層の双方にバリアメタルを挿入すると、オン電流を通電したときの電圧降下(Von:オン電圧)が増大する問題がある。
【0024】
図1に、本発明の逆阻止型半導体装置にかかる逆阻止IGBTの部分断面図を示す。
図1では、裏面金属電極112下への高融点金属を用いたバリア層120の挿入を側壁面110のみとする電極膜構造を示している。コレクタ層平面部113の裏面金属電極112は、従来構造と同様にAl−Si/Ti/Ni/Auの積層電極膜である。この逆阻止IGBTでは、側壁面110のp型薄層111上にはバリア層120を介してコレクタ電極と同じ裏面金属電極112が形成されている。しかし、p型分離層104aに連結されるV字溝108の底部はオン電流の経路にはなり得ないので、前記底部へのバリア層の挿入は有っても無くても、どちらでもよい。オン電流が流れるコレクタ平面部にはバリア層が無いため、オン電圧を増大させることも無い。また、側壁面ではバリア層によりアロイスパイクの発生を抑えることができる。側壁面のみへのバリア層の形成は次のプロセスで行う。コレクタ電極形成前にコレクタ平面部にマスクとなる、例えばフォトレジストを形成する。バリア層となる高融点金属膜をスパッタで形成する。その後、コレクタ平面部のフォトレジストマスクごとバリア層をリフトオフし、コレクタ平面部のバリア層のみ除去すれば、側壁面のみにバリア層を形成することができる。
【0025】
図2に、前述とは異なる実施例を示す。この実施例では、側壁面110に裏面金属電極112が形成されていない構成を有する。V字溝104aの底部の平坦部には裏面金属電極112が形成されていてもよい。この実施例の逆阻止IGBT300の側壁面110に裏面金属電極112が形成されていなくても、側壁面110は元々オン電流が流れない領域であるので、側壁面110に裏面金属電極112が無くても、オン電圧(Von)は増大しない。
図2のような裏面電極構造は、V字溝108をあらかじめフォトレジストやCVD酸化膜などの充填材で埋めておき、裏面金属電極形成後に充填材ごと裏面金属電極を剥離することにより、形成することができる。
【0026】
以上の実施例で説明したように、オン電流を通電する場合、電流の経路は、最も低抵抗コレクタ平面部から対向するエミッタ電極方向に流れ、側壁面からエミッタ電極に至る電流経路は距離が長く電気抵抗が高くなるのでほとんど流れない。このことから、オン電圧(Von)の上昇を抑え、かつ、側壁面110でのアロイスパイク発生を抑制するためには、本発明は、側壁面110のみに裏面電極の下にバリア層120を挿入する構造にすることが有効である。異なる実施例として、裏面金属電極をコレクタ平面部のみに形成し、側壁面には裏面金属電極を形成しない構成の逆阻止IGBTも、本発明の効果を得るために有効である。
【符号の説明】
【0027】
104a p型分離層、第2導電型分離層
107 耐圧構造領域
108 V字溝
109 p型コレクタ層、第2導電型第1半導体層
110 側壁面
111 p型薄層、第2導電型半導体薄層
112 裏面金属電極、コレクタ電極
113 コレクタ平面部
114 p型フィールドリミッティングリング
115 絶縁膜
116 低抵抗導電膜
117 n
−ドリフト層、半導体基板
120 バリア層
200 逆阻止IGBT
300 逆阻止IGBT