特許第6111535号(P6111535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111535熱硬化性樹脂組成物、半導体装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111535
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20170403BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20170403BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20170403BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20170403BHJP
   C09J 169/00 20060101ALI20170403BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170403BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J133/06
   C09J171/00
   C09J167/00
   C09J169/00
   C09J11/04
   H01L21/52 E
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-125388(P2012-125388)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249390(P2013-249390A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村山 竜一
(72)【発明者】
【氏名】下邊 安雄
(72)【発明者】
【氏名】三戸手 啓二
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013294(JP,A)
【文献】 特開2010−267721(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063747(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/133767(WO,A1)
【文献】 特開2008−231335(JP,A)
【文献】 特開2011−225856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 11/04
C09J 133/06
C09J 167/00
C09J 169/00
C09J 171/00
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂と硬化促進剤とを含み、
前記硬化促進剤が融点180℃以上のイミダゾール化合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物がラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂と重合開始剤とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂は、(メタ)アクリル基を有する、分子量が500以上10000以下のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記ポリ(メタ)アクリレートが、極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体であって、
極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートのモル比が1/20以上1以下である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後、半導体素子をマウントして加熱硬化する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、半導体素子がリードフレームやヒートシンク、基板などの基材上に接着層を介して固定されている。このような接着層は、接着性に加えて、導電性や熱伝導性が要求され、例えば、特許文献1、2のように、熱伝導性フィラーを含むペースト状の樹脂組成物によって形成できることが知られている。
このような樹脂組成物は、金属粒子の含有量を高くすることで高熱伝導性を得られる傾向にあるが、同種の樹脂、同種の金属粒子を同一の組成比で用いた樹脂組成物であっても、用いる金属粒子の粒径や形状により、樹脂組成物の熱伝導性が大きく変化し、半導体装置に用いた際に効率よく熱を放散できず、信頼性に問題が発生する場合があった。
【0003】
また熱伝導性フィラーを多量に含有すると樹脂組成物の粘度が増加してしまい塗布が困難になるため、使用する樹脂の粘度を下げる必要があった。しかしながら、熱伝導性フィラーは樹脂成分に比べて比重が大きいため、樹脂の粘度が下がると使用中や保存中に熱伝導性フィラーの沈降速度が速くなってしまう。そのため、熱伝導性フィラーを多量に含む樹脂組成物は不安定で粘度の経時的変化が大きく取り扱いが困難であった。また、使用中のフィラーの沈降は、塗布量が安定せずバラつきの原因になり、製品の特性を十分に発揮しないと言う問題があった。更に、使用する導電性フィラーに粒径の大きい粒子が含まれる場合には、沈降した大きい粒子がニードルの先端に溜まり、ニードル詰まりを起こし塗布できなくなる場合もあった。これらが原因で、例えば安定して少量のペーストを塗布しなければならない小チップのダイボンドなどには適さないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−89721号公報
【特許文献2】特開平7−118616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、信頼性および作業性に優れた樹脂組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明によれば、
[1]半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂と硬化促進剤とを含み、
前記硬化促進剤が融点180℃以上のイミダゾール化合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。

【0007】
また、本発明は、以下のものを含む。
[2] 半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物がラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂と重合開始剤とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
[] 前記[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂は、(メタ)アクリル基を有する、分子量が500以上10000以下のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
[] 前記[]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記ポリ(メタ)アクリレートが、極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体であって、
極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートのモル比が1/20以上1以下である、熱硬化性樹脂組成物。
[] 前記[1]ないし[]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
[] 半導体素子と基材とを接着する液状の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は
熱硬化性樹脂と、
熱伝導性粒子を含み、
前記熱伝導性粒子が、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、アルミナ、シリカの中から少なくとも一種類以上であり、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布における d50をD1とし、
前記熱伝導性粒子のフロー式粒子像分析装置による個数基準粒度分布における d50をD2とし、
前記D1から前記D2を差し引いた値をDとしたとき
D<2μm
を満たし、
前記D1が
D1<3.5μm
を満たし、
前記熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後、半導体素子をマウントして加熱硬化する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性、作業性に優れた熱硬化性樹脂組成物および信頼性に優れた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】実施例の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性粒子を含有している。そして熱伝導性粒子は、フロー式粒子像解析装置による体積基準粒度分布におけるd50をD1、個数基準粒度分布におけるd50をD2としたとき、その差Dが6μm未満である。ここで体積基準粒度分布におけるd50とは、累積体積分布曲線において累積体積割合が50%となる粒子径を示す。また、個数基準粒度分布におけるd50とは、累積粒子分布曲線において累積粒子数の割合が50%となる粒子径を示す。D2は粒子数を基準にしているので、粒径の大きな粒子も小さな粒子も同じ1つと数えられるが、D1は体積を基準にしているので、粒径の大きな粒子は小さな粒子と比べて粒径の3乗分D1も大きくなる。つまり、Dが小さいほど粒度分布がシャープな粒子であることを示し、Dが大きいほど粒度分布が粒径の大きい側にブロードな粒子であることを意味する。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造工程において、リードフレーム(LF)などの支持体に本発明の熱硬化性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として塗布し、チップ等をマウントする工程があるが、チップを押しつぶす際の熱硬化性樹脂組成物の拡がり方をダイアタッチ(DA)層中心部とLF界面で分けて考えると、LF界面付近でのペーストの拡がる速度はDA層中心部のそれよりも相対的に遅いため、DA層中心部のペーストがLF界面付近のペーストを巻き込みながらLF界面へと拡がる。熱硬化性樹脂組成物内に小さい粒子と大きい粒子が存在すると大まかに考えると、小さい粒子はその重量から動きやすく、DA層中心部からLF界面に拡がる際に樹脂とともにLF界面に拡がっていく。一方で大きい粒子は重量が大きく動きにくく、樹脂とともに拡がらずDA層中心部に残る。つまり、D(D1−D2)が6μm未満であると、それだけ粒度分布曲線がシャープであることを示し、同じ粒径のものが多く存在するので、より熱伝導性粒子が均一に分散し、DA層中心部、チップ界面およびLF界面における熱伝導性粒子の含有率の差が小さくなり、熱伝導性が良くなる。Dはさらに、3μm未満であることが好ましく、特に2μm未満であることが好ましい。Dを前記範囲とすることにより、粒度分布がブロードにならず、DA層中心部、チップ界面部およびLF界面部における熱伝導性粒子の含有率の差が小さくなり、熱伝導率がより向上する。
【0013】
さらに、D1が8μm未満であると、小さい粒子が多いのでLF界面に熱伝導性粒子が分散しやすく、DA層の銀含分布にムラが少なくなり熱伝導性が向上するため好ましい。
また、D1が8μm未満であれば、分散性が良好であり、保存中または作業中における熱伝導性粒子の沈降が起こりにくい。よって熱伝導性粒子の沈降による粘度の経時的変化が起こりにくくなり、製品特性にバラつきが生じにくく、粗粒子によるニードル詰まりを起こしにくくなる。以上により、本実施形態における樹脂組成物は粘度変化が小さく作業性に優れており、小さいチップのダイボンドに対しても安定して少量のペーストを塗布できるといった効果が発現される。D1はさらに、5μm未満であることが好ましく、特に、3.5μm未満であることが好ましい。D1を前記範囲とすることにより、大きい粒子がDA層中心部に残ることがなく、チップ界面部およびLF界面部の熱伝導性粒子含有率が上昇し、熱伝導性を向上させることができる。
なお、熱伝導性粒子の粒子径は、特に限定されないが、例えばフロー式粒子像分析装置シスメックス株式会社製FPIA−3000を用いた粒度分布測定装置などを用いて測定することができる。フロー式粒子像分析装置FPIA−3000は、熱伝導性粒子を純水に均一に分散させた試料を装置内に流し込み、試料を外から加わるシース液によって扁平な試料流に変化させて、その試料に含まれる粒子をカメラで撮影した画像をもとに粒子径を測定する装置である。
【0014】
(熱硬化性樹脂)
(A)熱硬化性樹脂としては、加熱により3次元的網目構造を形成する一般的な熱硬化性樹脂である。この(A)熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0015】
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4'−ジ
シアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0016】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
また、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0017】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。グリシジ
ル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましい。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物を用いることにより、硬化反応が十分に進行し、好適な硬化物物性が得られるためである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。また樹脂組成物として室温で液状であることが作業性において好ましいので、単独でまたは混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を併用することができる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0019】
ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール樹脂としては1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。さらに好ましいフェノール性水酸基の数は2〜5であり、特に好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つまたは3つである。この範囲とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の粘度を作業性に優れたものとするとともに、硬化時に架橋構造を形成して熱硬化性樹脂組成物の硬化物特性を優れたものとすることができる。このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類およびその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類およびその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのものおよびその誘導体などが挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物およびその塩類などが挙げられるが、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジ
アミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物が好適に用いられる。なかでも特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。また、エポキシ樹脂は、シアネート樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0022】
ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上有する必要があるが、2つ以上含まれていることが好ましい。特に好ましいアクリル樹脂は分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物である。ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリエーテルは、たとえば、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返された構造が好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリエステルは、たとえば、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリカーボネートは、たとえば、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0023】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、カルボキシル基、水酸基などの極性基を有することが望ましい。極性基を持つポリ(メタ)アクリレートを使用すると金属表面との密着性が向上する。一方極性基が多すぎると粘度が高くなりすぎることで塗布作業性を悪化させる恐れがあるため、望ましいポリ(メタ)アクリレートは極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体であり、極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートのモル比は1/20〜1が好ましく、更に1/20〜1/2が望ましく、1/15〜1/8がもっとも望ましい。
【0024】
必要により以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0026】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキ
サイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α'−ビス(t−ブチルパ
ーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α'−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼ
ン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、上記のラジカル重合性のアクリル樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0027】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。アリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500〜10,000が好ましく、特に500〜8,000が好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、密着性の低下を防止することができる。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0028】
熱硬化性接着剤組成物には、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などであり、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の半導体装置の一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置10の構成を示す断面図である。
半導体装置10は、基材2と、半導体素子3と、基材2および半導体素子3の間に介在し、両者を接着する接着層1と、を備える。接着層1は、前述した熱硬化性樹脂組成物を半導体素子3と基材2とで圧着することにより形成される。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、接着層1に好適に用いることができる。
本実施形態において、ダイパット2は、特に限定されないが、リードフレーム、他の半導体素子、ヒートシンク、BGA基板、回路基板を含む実装基板、半導体ウエハ等の各種基材を用いることができる。
また、半導体素子3は、パッド7及びボンディングワイヤ6を介して、リード4に電気的に接続している。また、半導体素子3は、その周囲が封止材層5により封止されている。
【0030】
半導体装置において用いられる熱硬化性樹脂組成物が液状の場合、上述したような各種成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練を行い、更に真空脱泡することにより、液状樹脂組成物を得ることができる。得られた液状樹脂組成物は、例えば半導体用途の接着剤として用いることができ、市販のダイボンダーを用いて、例えば支持体(特にリードフレーム)の所定の部位にディスペンス塗布された後、半導体素子をマウントして加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂等を主成分とする封止樹脂を用いてトランスファー成形することにより半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0032】
実施例1〜14および比較例1〜5について、表1に示す配合割合で各種原材料を配合した上で3本ロールを用いて混練、脱泡することで熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1に示す配合割合は重量部である。
【0033】
(評価試験)
実施例1〜14および比較例1〜5において、それぞれ得られた熱硬化性樹脂組成物について以下の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0034】
(熱拡散率測定試験)
熱硬化性樹脂組成物に平均粒径20μmのスペーサー(積水化学工業(株)製、ミクロパールSP−220)を微量混合し、2枚のシリコンチップ(8.4×8.4mm、厚み0.35mm)に熱硬化性樹脂組成物を圧着して三層構造の試験片を作製した。(硬化条件は175℃4時間。ただし175℃までは30℃から30分間かけて昇温した。)得られた三層構造の試験片(チップ−硬化物−チップ)をレーザーフラッシュ法(t1/2法)にて熱拡散率を測定した。熱拡散率の単位はcm/secである。
【0035】
(沈降試験)
実施例の各樹脂組成物30gを充填したシリンジ(10cc)を0℃に調整した恒温槽内でシリンジの先が下になるように30日間保管した。保管後の外観を目視で確認し変化がなければ○、銀粉と樹脂成分の分離が少し確認されれば△、顕著に観察されれば×とした。
【0036】
【表1】

【0037】
図2は、実施例の評価結果を示すグラフである。横軸がD1−D2(μm)、縦軸がD
1μmであり、各要素のポイントは熱拡散率が0.45cm/sec以上であれば○(excellent)、0.4cm/sec以上であれば△(good)、0.4cm/sec未満であれば×(bad)とした。D1−D2が6μm未満かつD1が8μm未満である実施例は熱拡散率が0.4cm/sec以上となり、比較例に比べ、熱伝導性に優れることが確認された。
【0038】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 接着層
2 基材
3 半導体素子
4 リード
5 封止材層
6 ボンディングワイヤ
7 パッド
10 半導体装置
図1
図2