(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付着面の温度と、前記本体部における当該付着面から予め定められた距離内側の温度をそれぞれ測定する温度測定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼灰測定装置。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉と、燃焼炉の内側に配され、水が流通する伝熱水管とを含んで構成される石炭焚きボイラが知られている。石炭焚きボイラでは、燃焼炉で石炭を燃焼させ、当該燃焼により生じた熱を伝熱水管内に伝えることで伝熱水管内の水を加熱している。このように、石炭焚きボイラの燃焼炉では、石炭を燃焼させているため燃焼灰が生じる。したがって、運転を継続すると、燃焼炉の内側に燃焼灰が蓄積し、伝熱水管にも燃焼灰が付着することになる。燃焼灰は、伝熱水管を構成する材料(例えば、金属)よりも熱伝導率が小さいため、伝熱水管への燃焼灰の付着量が増加するに従って、燃焼炉から伝熱水管内への伝熱効率が低下してしまう。
【0003】
そこで、石炭焚きボイラには、伝熱水管に付着した燃焼灰を取り除くスートブロワ(灰除去装置)が設けられている。スートブロワは、伝熱水管への燃焼灰の付着量が予め定められた閾値を超えると、伝熱水管の表面に蒸気や圧縮空気等を吹き付けて燃焼灰を除去する。
【0004】
従来、伝熱水管への燃焼灰の付着量を測定するために、伝熱水管の内部に予め温度計を埋め込んでおき、当該温度計による計測値から、伝熱水管への燃焼灰の付着量を推定していた。具体的に説明すると、上述したように燃焼灰が付着すると伝熱水管への伝熱効率が低下するため、燃焼灰が付着していない状態よりも燃焼灰が付着した状態の方が伝熱水管内の温度が低下する。したがって、燃焼灰が付着していない状態との相対的な温度差や温度変化を計測することにより、燃焼灰の付着量を間接的に推定していた。
【0005】
しかし、スートブロワでは、完全に燃焼灰を除去することは困難であり、伝熱水管に定常的に燃焼灰が付着する状態となることがある。そうすると、上述した温度計を用いて燃焼灰の付着量を推定する方法では、温度計によって計測される温度の変化が鈍くなり、燃焼灰の付着量がどの程度変化したかを推定しにくくなる。また、温度計を介した測定では、燃焼灰の付着量を間接的にしか推定することができないため、燃焼させる石炭の種類や運転状況によっては、実際の付着量と推定量との間に誤差が生じるおそれもある。
【0006】
そこで、石炭焚きボイラの建設時に、燃焼灰を自身の表面に付着させるプローブを、燃焼炉で生じる排ガスの排出経路内に予め固定しておき、石炭焚きボイラの運転中に当該プローブの重量を燃焼炉の外側から計量することで、プローブに付着した燃焼灰の量を直接測定する燃焼灰測定装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特許文献1に記載されたプローブを既存の石炭焚きボイラに設置するためには、一旦運転を停止しなければならない。通常、石炭焚きボイラは、一度運転を開始すると、数年間停止しないため、プローブを設置するためだけに運転を停止させると、石炭焚きボイラ自体の運転効率が低下してしまう。
【0009】
また、石炭焚きボイラでは、燃焼させる石炭の種類や運転状況によって、燃焼灰が多く蓄積(付着)する位置が異なるため、燃焼炉の内側の燃焼灰の付着量の分布を把握したいという要望がある。そこで、上述した特許文献1の技術を利用して、燃焼灰の付着量の分布を計測することが考えられるが、燃焼炉全体に亘ってプローブを設置する必要があり、コスト高になってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、燃焼炉の運転を停止せずに燃焼炉の内側に付着した燃焼灰の量を測定することが可能な燃焼灰測定装置および燃焼灰測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼灰測定装置は、燃焼炉の内側に付着する燃焼灰の量を測定する燃焼灰測定装置であって、燃焼炉に設けられた孔に挿抜可能な本体部と、本体部の表面の一部であり、燃焼灰を付着させる付着面と、燃焼炉に設けられた孔への本体部の挿抜を案内するとともに、付着面の位置が燃焼炉の内側となる位置で本体部を保持するガイド部と、を備え
、ガイド部は、筒形状であり、内側に本体部を支持する支持部と、燃焼炉に設けられた孔内に支持部を固定する固定部と、を備え、測定時において付着面は、支持部より燃焼炉の内側に突出して配され、燃焼炉に設けられた孔から本体部が抜脱される前に、付着面から落下した燃焼灰を支持部が収容可能な位置に、本体部を移動可能であることを特徴とする。
【0012】
また、付着面の温度と、本体部における当該付着面から予め定められた距離内側の温度をそれぞれ測定する温度測定部をさらに備えるとしてもよい。
【0014】
また、付着面は、本体部における燃焼炉の内側に曝される側の先端面であり、本体部に設けられ、付着面のガイド部への接触を防止するスペーサ部をさらに備えるとしてもよい。
【0015】
また、本体部内に設けられた流路に熱媒体を流通させることで、付着面を予め定められた温度に冷却する制御部をさらに備えるとしてもよい。
【0016】
また、本体部は、中空形状であり、本体部内に当該本体部の内壁と離隔して配され、付着面側の端部が開放された流通管を備え、制御部は、流通管の内部空間、流通管の端部の開放口、本体部の内壁と流通管の外壁との間の空隙にこの順で熱媒体を流通させるとしてもよい。
【0017】
また、流通管の端部において、流通管の延伸方向と交差する方向に突出したリブをさらに備えるとしてもよい。
【0018】
また、燃焼炉の内側には、内部に流体が流通する伝熱管が配されており、当該伝熱管の内部を流通する流体は、当該燃焼炉で生じた熱によって加熱され、測定時において、付着面を含む燃焼炉の水平断面の中心を基準とした当該付着面の相対的な位置が、伝熱管を含む燃焼炉の水平断面の中心を基準とした当該伝熱管の相対的な位置となるように、燃焼炉の内側に付着面が配されるとしてもよい。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼灰測定方法は、燃焼炉に設けられた孔に挿抜可能な本体部と、当該本体部の表面の一部であり、燃焼灰を付着させる付着面と、
筒形状の支持部、および、燃焼炉に設けられた孔に当該支持部を挿抜する固定部を有し、燃焼炉に設けられた孔への本体部の挿抜を案内するとともに、付着面の位置が燃焼炉の内側となる位置で当該本体部を保持するガイド部とを備えた燃焼灰測定装置を用いた燃焼灰測定方法であって、ガイド部を介して燃焼炉に設けられた孔に本体部を挿入する工程と、
支持部における燃焼炉の内側に配される側の先端よりも付着面を突出させて、本体部を孔に挿入した状態を維持することで、付着面に燃焼炉で生じた燃焼灰を付着させる工程と、
付着面から落下した燃焼灰を支持部が収容可能な位置に、本体部を移動させる工程と、予め定められた時間が経過すると
、付着面に燃焼灰を付着させた状態で、
ガイド部ごと本体部を燃焼炉に設けられた孔から抜脱する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃焼炉の運転を停止せずに燃焼炉の内側に付着した燃焼灰の量を測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、石炭焚きボイラ100の具体的な構成を説明するための図であり、
図2は、燃焼炉110を説明するための図である。また、本実施形態の
図1および
図2では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。なお、
図2中、バーナ112の位置を黒丸で、OAP114の位置をハッチングの丸で、覗き窓116の位置を白丸で示す。
【0025】
図1および
図2に示すように、石炭焚きボイラ100を構成する燃焼炉110は、例えば、X軸方向の幅Wが10m程度、Y軸方向の奥行きDが20m程度、Z軸方向の高さHが60m程度であり、側面にバーナ112が設けられており、バーナ112の上方に設けられたOAP(Over Air Port)114から供給された空気を用いて、底部110aに投入された石炭等の燃料を燃焼させる。また、燃焼炉110には、外部から燃焼炉110の内側を観察するための覗き窓116が複数設けられている。覗き窓116は、燃焼炉110に設けられた孔116aと、当該孔116aを封止する窓部116bとを含んで構成される。なお、孔116aの径は、例えば、100mm程度であるため、
図1、2では、理解を容易にするために、燃焼炉110に対して覗き窓116を実際より大きく示している。
【0026】
また、燃焼炉110の内側には、
図1に示すように、伝熱管120(
図1中、120a、120bで示す)が露出して設けられており、燃焼炉110において燃焼によって生じた熱および高温(例えば、1300℃〜1400℃程度)の燃焼排ガスで、伝熱管120の内部を流通する流体(例えば、水)が加熱される。そして、燃焼炉110で生じた燃焼排ガスは、ガス排出路110bを介して石炭焚きボイラ100の後段側に排出される。また、燃焼炉110には、高さ方向(
図1中、Z軸方向)における予め定められた位置にくびれ部110cが設けられており、くびれ部110cは、燃焼排ガスの流れを制御し、伝熱管120a内を流通する流体を効率的に加熱する。
【0027】
伝熱管120は、燃焼炉110の上部に配される伝熱管120aと、燃焼炉110の内周面に沿って、らせん状に配される伝熱管120bとを含んで構成される。伝熱管120の外径は、例えば、30mm程度であるため、
図1では、理解を容易にするために、燃焼炉110に対して伝熱管120を実際より大きく示している。
【0028】
燃焼炉110において燃料を燃焼させると燃焼灰が生じるが、当該燃焼灰が伝熱管120や燃焼炉110の内周面に付着すると、燃焼炉110から伝熱管120内を流通する流体への伝熱効率が低下し、流体の加熱効率が低下したり、ガス排出路110bやくびれ部110cが閉塞してしまったりする。そこで、不図示の灰除去装置(スートブロワ)を用いて、伝熱管120の表面や燃焼炉110の内周面に蒸気や圧縮空気等を吹き付け、付着した燃焼灰を除去する。ここで、灰除去装置を駆動する契機(タイミング)を見極めるために、伝熱管120の表面や燃焼炉110の内周面といった燃焼炉110の内側に付着した燃焼灰の量(以下、単に「燃焼灰の付着量」と称する)の測定が望まれている。そこで、
図1に示すように、燃焼炉110に燃焼灰測定装置200を設置し、燃焼炉110の内側に付着した燃焼灰の付着量を測定する。以下、燃焼灰測定装置200の具体的な構成について詳述する。
【0029】
(燃焼灰測定装置200)
図3は、燃焼灰測定装置200の具体的な構成を説明するための図であり、
図3(a)は、燃焼灰測定装置200の全体構成を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)の破線Aで囲った部分の拡大図を示す。また、本実施形態の
図3では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。さらに、
図3(a)中、制御信号の流れを破線の矢印で示し、
図3(b)中、熱媒体の流れを破線の矢印で示す。
【0030】
燃焼灰測定装置200を用いて、燃焼炉110の内側の燃焼灰の付着量を測定する場合、
図3(a)に示すように、燃焼灰測定装置200を、覗き窓116を構成する孔116aに挿通して測定を行う。
【0031】
図3(a)に示すように、燃焼灰測定装置200は、本体部210と、温度測定部220と、制御部230と、流通管250と、ガイド部260とを含んで構成される。
【0032】
本体部210は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料で構成され、中空の円柱形状をなしており、孔116aに挿抜可能である。本体部210における燃焼炉110に挿入され、燃焼炉110の内側に曝される側の先端面には、付着面212が設けられている。燃焼灰測定装置200が燃焼炉110の内側に挿入され、付着面212が燃焼炉110の内側に露呈されて、燃焼炉110において燃料の燃焼が継続すると、付着面212に燃焼灰が付着することとなる。
【0033】
具体的に説明すると、燃料としての石炭を燃焼させると、燃焼炉110の内部は、1300℃〜1400℃程度となり、燃焼灰は溶融スラグとなって存在する。したがって、溶融スラグとなった燃焼灰が有する粘着力で付着面212に付着することとなる。また、石炭を燃焼させると、燃焼灰には硫黄または硫黄化合物が含まれることとなる。硫黄や硫黄化合物は、金属と反応して結合する性質を有することから、燃焼灰に含まれる硫黄や硫黄化合物が付着面212を構成する金属と反応することで、燃焼灰が付着面212に付着することとなる。
【0034】
このように、燃焼炉110に予め設けられた覗き窓116の孔116aに挿抜可能な本体部210と、本体部210に設けられた付着面212を備える構成により、石炭焚きボイラ100の運転中であっても、本体部210を燃焼炉110の内側に挿入することができる。そうすると、付着面212は、燃焼炉110の内側に位置することとなり、燃焼炉110の内側と実質的に同じ条件で付着面212にも燃焼灰が付着することになる。そして、石炭焚きボイラ100の運転中であっても、本体部210を燃焼炉110から引き抜くことができるため、付着面212に燃焼灰を付着させた状態で、燃焼灰を燃焼炉110の外部に取り出すことが可能となる。こうして取り出した燃焼灰の質量を測定することで、燃焼炉110の内側に付着した燃焼灰の質量を測定することができる。
【0035】
また、取り出した燃焼灰の厚みを測定したり、燃焼灰を顕微鏡で観察して成分を分析したりすることも可能となる。さらに、上述したように、燃焼炉110には、様々な箇所に覗き窓116が設けられているため、覗き窓116が設けられる箇所それぞれに燃焼灰測定装置200を挿抜して燃焼灰を取り出せば、燃焼炉110の内側の燃焼灰の付着量の分布を把握することが可能となる。
【0036】
さらに、上述したように、覗き窓116の孔116aの大きさは、100mm程度と、燃焼炉110の大きさ(X軸方向の幅Wが10m程度、Y軸方向の奥行きDが20m程度、Z軸方向の高さHが60m程度)と比較して、極めて小さい。したがって、本体部210を挿抜するために孔116aを一時的に開放したとしても、石炭焚きボイラ100の運転状況に影響を与える事態を回避しつつ、燃焼灰の測定を行うことが可能となる。
【0037】
なお、
図3(a)に示すように、燃焼灰の測定時(付着時)において、付着面212を含む燃焼炉110の水平断面(
図3中、XY断面)の中心を基準とした付着面212の相対的な位置が、伝熱管120を含む燃焼炉110の水平断面の中心を基準とした伝熱管120の相対的な位置となるように本体部210を孔116aに挿入するとよい。こうすることで、伝熱管120と実質的に同じ条件で付着面212に燃焼灰を付着させることが可能となる。
【0038】
本実施形態において、付着面212は、YZ平面に沿った平面形状で構成したが、付着面212の形状に限定はなく、例えば、半球形状や、凸形状(例えば、伝熱管120bと曲率が実質的に同一な凸形状)、凹形状であってもよい。また、本実施形態において、付着面212は、本体部210の先端面であるが、本体部210の表面の一部であれば、位置に限定はなく、例えば、上面の一部であってもよい。
【0039】
温度測定部220は、例えば、熱電対で構成され、
図3(b)に示すように、例えば、付着面212の中心T1、中心T1から本体部210の内部方向に予め定められた距離内側の位置T2、付着面212の面内であって、中心T1から予め定められた距離離隔した位置T3、T4に配置され、それぞれの部位の温度を直接測定する。ここで、本実施形態における、温度測定部220が温度を測定する位置と、本体部210の寸法関係について説明すると、本体部210(付着面212)の外径Bは、例えば60mmであり、位置T1と位置T2との距離Cは例えば5mmであり、付着面212の厚みDは例えば15mmであり、付着面212の裏面から後述する流通管250の端部250aまでの距離Eは例えば5mmであり、本体部210の内部から後述するリブ252までの距離Fは例えば5mmである。
【0040】
制御部230は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して燃焼灰測定装置200全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部230は、温度測定部220が測定した温度に基づいて、燃焼炉110の内側の熱流束を導出したり、後述する流通管250に導入する熱媒体の温度や流量を制御することで付着面212を予め定められた温度に冷却したりする。
【0041】
具体的に説明すると、制御部230は、温度測定部220が測定した付着面212の中心T1の温度と、中心T1から本体部210の内部方向に予め定められた距離内側の位置T2の温度との測定に基づいて熱流束を導出する。熱流束は下記数式(1)によって導出することができる。
熱流束q=λ×(T
1−T
2)/C …数式(1)
ここで、λは付着面212の熱伝導率(ここでは、ステンレス鋼の熱伝導率)、T
1は位置T1の温度、T
2は位置T2の温度、Cは位置T1と位置T2との距離を示す。
【0042】
このように、温度測定部220が付着面212と、付着面212近傍の温度を測定することにより、制御部230は、燃焼炉110の内側の熱流束を導出することができる。ここで、上述したように、付着面212が、燃焼炉110における伝熱管120の位置に配されるように本体部210を孔116aに挿入しておけば、伝熱管120の熱流束を推定することが可能となる。
【0043】
続いて、制御部230による付着面212の冷却機構について説明すると、制御部230は、本体部210内に設けられた流路に熱媒体を流通させることで、付着面212を予め定められた温度に冷却する。具体的に説明すると、
図3(b)に示すように、本体部210内に当該本体部210の内壁と離隔して、流通管250が複数本(ここでは、4本)配されている。流通管250は、付着面212側の端部250aが開放されており、制御部230による制御指令に応じて、外部から流通管250に熱媒体(ここでは、水)が導入されると、
図3(b)中、破線の矢印で示すように、流通管250の内部空間、流通管250の端部250aの開放口、流路FC(本体部210の内壁と流通管250の外壁との間の空隙)をこの順で流通する。そうすると、熱媒体によって、付着面212が冷却されることになる。そして、流路FCを通過した熱媒体は、排出口210aを介して外部に排出されることとなる。なお、流通管250の流路断面積は、本体部210の鉛直断面積よりも小さいため、流通管250から付着面212の裏面に向かって熱媒体が吹き付けられる。
【0044】
また、制御部230は、温度測定部220が測定した位置T1、T3、T4の温度に基づいて、熱媒体の温度や、熱媒体の流量(または流速)を制御して、付着面212の温度を予め定められた温度(例えば、500℃)に維持する。これにより、付着面212の温度を伝熱管120の温度と実質的に等しくすることができ、伝熱管120と実質的に同じ条件で付着面212に燃焼灰を付着させたり、伝熱管120と実質的に同じ条件の熱流束を導出したりすることが可能となる。
【0045】
また、流通管250の端部250aにおいて、流通管250の延伸方向(
図3中X軸方向)と交差する方向(本実施形態では、
図3中Z軸方向)に突出したリブ252が設けられている。
【0046】
リブ252を設けない場合、端部250aから放出された熱媒体は、付着面212に衝突した後直ちに、流路FCに流れてしまう。したがって、この場合、付着面212における端部250aの近傍のみしか冷却することができない。一方、リブ252を設ける構成により、端部250aから放出された熱媒体は、付着面212の裏面に沿って流通する。つまり、付着面212の裏面と熱媒体との接触時間を増加させることができ、リブ252を設けない場合と比較して付着面212を広範囲かつ満遍なく冷却することが可能となる。
【0047】
ガイド部260は、支持部262と、固定部264とを含んで構成され、燃焼炉110に設けられた孔116aへの本体部210の挿抜を案内するとともに、付着面212の位置が燃焼炉110の内側となる位置で本体部210を保持する。支持部262は、筒形状(ここでは、円筒形状)であり、固定部264は、支持部262から垂直方向に立設され、支持部262を燃焼炉110に設けられた孔116aに挿抜する。具体的に説明すると、支持部262が燃焼炉110に設けられた孔116aに挿抜可能であり、支持部262の内側に本体部210を挿入して支持したり、抜脱したりすることで、本体部210の孔116aへの挿抜を案内する。支持部262は、外径が孔116aに挿通可能な寸法関係を維持しており、内径が本体部210を挿通可能な寸法関係を維持している。固定部264は、孔116aよりも径が大きく形成されており、ガイド部260を孔116aに挿通した場合、固定部264によって孔116aが閉塞されるように構成されている。
【0048】
そして、燃焼灰測定装置200による燃焼灰の測定時、すなわち、本体部210およびガイド部260の挿通状態においては、孔116aにガイド部260が挿通され、付着面212が、支持部262における燃焼炉110の内側に配される側の先端よりも突出した状態で、支持部262内に本体部210が挿通されることとなる。また、本体部210の外周には、支持部262と本体部210との間に形成される間隙をシールするための帯状のシール部(断熱帯)270が巻き回されている。固定部264およびシール部270を設ける構成により、孔116aを確実に閉塞することができる。ガイド部260を用いた本体部210の挿入方法および抜脱方法の具体的な処理については、後に詳述する。
【0049】
このように、本実施形態にかかる燃焼灰測定装置200は、ガイド部260を介して、本体部210を燃焼炉110の内側に挿入したり抜脱したりするが、上述したように、本体部210内に熱媒体が導入されると、本体部210の先端(付着面212)が鉛直下方向(
図3中、Z軸方向)に傾くおそれがある。そこで、本実施形態では、本体部210にスペーサ部214を設け、付着面212のガイド部260への接触を防止する。スペーサ部214を備えることで、付着面212のガイド部260への接触により、付着面212に付着した燃焼灰が落下してしまう事態を回避することが可能となる。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態にかかる燃焼灰測定装置200によれば、燃焼炉110に予め設けられた覗き窓116の孔116aに挿入するだけで燃焼灰を付着させ、抜脱するだけで、付着した燃焼灰を取り出すことができるため、燃焼炉110の運転を停止せずに燃焼炉110の内側に付着した燃焼灰の量を測定することができる。
【0051】
また、燃焼灰の測定と並行して、燃焼灰の付着を開始したときの熱流束、燃焼灰を付着させている間の熱流束、燃焼灰を取り出したときの熱流束を導出することができるので、燃焼灰が付着する前の伝熱管120の熱流束、燃焼灰が付着している間の伝熱管120の熱流束、燃焼灰を取り出したときの熱流束をリアルタイムに把握することが可能となる。
【0052】
さらに、石炭焚きボイラ100の運転中に、燃焼灰の測定や熱流束の把握を実行することができるので、既存の石炭焚きボイラ100の燃焼灰の測定や熱流束の把握を遂行することが可能となる。また、上述したように、石炭焚きボイラ100を構成する燃焼炉110は、例えば、X軸方向の幅Wが10m程度、Y軸方向の奥行きDが20m程度、Z軸方向の高さHが60m程度と大きいため、石炭焚きボイラ100に予め熱電対を埋め込んだり、灰測定装置を埋め込んだりする工事を遂行するためには、足場を組んだり、重機を用いたりする等膨大な工事費を要する。しかし、本実施形態にかかる燃焼灰測定装置200を利用すれば、上記工事が不要となり、工事費を削減することが可能となる。
【0053】
(燃焼灰測定方法)
続いて、上記燃焼灰測定装置200を用いた燃焼灰測定方法について説明する。
図4、
図5は、燃焼灰測定方法の処理の流れを説明するための図であり、
図4は、燃焼灰測定装置200の燃焼炉110への挿入方法を説明するための図であり、
図5は、燃焼灰測定装置200の燃焼炉110からの抜脱方法を説明するための図である。
【0054】
燃焼灰測定装置200を燃焼炉110に挿入する場合、
図4(a)に示すように、まず、作業者の操作に応じて、本体部210の外周にシール部270を巻き回し、続いて、
図4(b)に示すように、本体部210をガイド部260に挿通して本体部210をガイド部260に固定する。ここで、ガイド部260の固定部264が孔116aを構成する覗き窓116の支持部に当接したときに、付着面212を含む燃焼炉110の水平断面の中心を基準とした付着面212の相対的な位置が、伝熱管120を含む燃焼炉110の水平断面の中心を基準とした伝熱管120の相対的な位置となるように、本体部210とガイド部260の位置を調整するとよい。また、本体部210は、付着面212が、支持部262における燃焼炉110の内側に曝される側の先端よりも突出した状態に配される。
【0055】
次に、
図4(c)に示すように、ガイド部260ごと本体部210を燃焼炉110の孔116aに挿入する。ここで、燃焼炉110の圧力は10kPa程度と外部(大気圧)と比較して極めて小さい。したがって、ガイド部260ごと本体部210が燃焼炉110の内側に引き込まれるおそれがあるが、
図4(d)に示すように、ガイド部260の固定部264が孔116aを構成する覗き窓116の外枠に当接することで、ガイド部260および本体部210のこれ以上の燃焼炉110の内側への移動が規制されることとなる。
【0056】
続いて、燃焼灰測定装置200を燃焼炉110から抜脱する方法について説明する。上述した挿入方法に従って、燃焼灰測定装置200が燃焼炉110の内側に挿入され、付着面212が燃焼炉110の内側に曝されて、予め定められた時間が経過すると、
図5(a)に示すように、付着面212に燃焼灰が付着する。そして、燃焼灰測定装置200の燃焼炉110からの抜脱を試みる場合、まず、
図5(b)に示すように、作業者の操作に応じて、本体部210を支持部262の先端より内側に引き込んで、付着面212から落下した燃焼灰を支持部262が収容可能な位置に移動させる。そして、
図5(c)に示すように、ガイド部260ごと本体部210を孔116aから抜脱する。最後に、
図5(d)に示すように、ガイド部260から本体部210を抜脱する。
【0057】
上述したように、燃焼炉110の圧力は外部(大気圧)と比較して極めて小さい。したがって、燃焼灰測定装置200の抜脱を試みて、燃焼灰測定装置200を摺動させている間に、燃焼灰測定装置200と孔116aとの間に形成された間隙を介して外部から燃焼炉110の内側に大気が流入する。そうすると、大気の流れによって、付着面212に付着した燃焼灰が燃焼炉110の内側に引き込まれてしまうおそれがある。
【0058】
そこで、本体部210を燃焼炉110から抜脱する場合に、一旦本体部210を支持部262内に引き込んでから、ガイド部260ごと本体部210を孔116aから抜脱することにより、流入した大気の流れは、支持部262の外周を通ることとなり、燃焼灰が付着面212から引き込まれる可能性を低減することができる。また、本体部210を支持部262内に引き込むことにより、仮に燃焼灰が付着面212から落下したとしても支持部262で受け止めることができ、燃焼灰を燃焼炉110外に取り出すことが可能となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の燃焼灰測定装置200によれば、燃焼炉110の運転を停止せずに燃焼炉110の内側に付着した燃焼灰の量を測定することができ、また、燃焼炉110の内側の燃焼灰の付着量の分布を把握することが可能となる。
【0060】
(実施例)
図6は、実施例で作製した燃焼灰測定装置200および燃焼灰測定装置200を用いて付着させた燃焼灰を説明するための図である。
図6(a)に示すように、本体部210、およびガイド部260をステンレス鋼で作製し、燃焼灰測定装置200を作製した。そして、石炭焚きボイラ100の燃焼炉110(覗き窓116の孔116a)に、作製した燃焼灰測定装置200を挿入した。その結果、
図6(b)に示すように、付着面212に燃焼灰が付着することが確認できた。
【0061】
図7は、実施例で作製した燃焼灰測定装置200を用いて、熱流束を測定した結果を示す図であり、縦軸は熱流束(kW/m
2)を示し、横軸は曝露時間(挿入時間)を示す。
図7中、Case1−1、Case1−2はバーナ112の下流側に、Case2はOAP114の下流側に、それぞれ燃焼灰測定装置200を設置して、熱流束を測定した結果を示す。Case1−1とCase1−2とでは、測定位置は同一であるが、測定日時が異なる。
【0062】
図7のCase1−1、Case1−2に示すように、測定日時が異なっても測定位置が同一であれば、曝露時間における熱流束の挙動は略同一となることが確認できた。つまり、燃焼灰測定装置200は、再現性を有するデータを取得できることが確認された。一方、Case2と、Case1−1、Case1−2とを比較すると、曝露時間における熱流束の挙動が著しく異なることから、測定位置の違いにおける熱流束の挙動の違いを測定できることが分かった。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記実施形態において、本体部210は、流通管250を4本備える構成について説明したが、流通管250の数に限定はない。流通管250の数は、熱媒体の温度、熱媒体の種類、熱媒体の流速、本体部210の外径および内径、付着面212の厚み、流通管250の流路断面積に基づいて、付着面212が所望する温度に冷却できるように決定すればよい。
【0065】
また、上記実施形態において、付着面212の厚みが15mmである場合を例に挙げて説明したが、付着面212の厚みに限定はない。付着面212の厚みは、付着面212の材質、熱媒体の温度、熱媒体の種類、熱媒体の流速、本体部210の外径および内径、流通管250の流路断面積に基づいて、付着面212が所望する温度になるように決定すればよい。
【0066】
また、上記実施形態において、制御部230は、流通管250の内部空間、流通管250の端部250aの開放口、流路FCにこの順で前記熱媒体を流通させることとしているが、付着面212を冷却できれば、流路FC、流通管250の端部250aの開放口、流通管250の内部空間にこの順で前記熱媒体を流通させるとしてもよい。