特許第6111743号(P6111743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111743蓄熱式燃焼装置およびガスの燃焼処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111743
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】蓄熱式燃焼装置およびガスの燃焼処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20170403BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   F23G7/06 101Z
   F23G7/06ZAB
   F23G7/06 103
   B01D53/38 150
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-43036(P2013-43036)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169844(P2014-169844A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−308814(JP,A)
【文献】 特開2010−201373(JP,A)
【文献】 特開2011−133131(JP,A)
【文献】 特開2010−051932(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0070549(US,A1)
【文献】 米国特許第04409006(US,A)
【文献】 特開2008−82673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/00− 7/14
B01D53/34−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含むガスを燃焼処理する燃焼室と、
前記燃焼室に連通し、蓄熱材が配置され、処理後のガスから前記蓄熱材への蓄熱と、蓄熱した前記蓄熱材から処理前のガスへの放熱とを交互に繰り返す第1蓄熱室および第2蓄熱室と、
有機溶剤を含むガスを、前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室に交互に供給するガス供給部と、
有機溶剤を吸着可能な吸着部を有し、前記吸着部への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、前記第1蓄熱室または前記第2蓄熱室に供給する清浄ガス供給部と、
前記ガス供給部および前記清浄ガス供給部のいずれか一方に、有機溶剤を含むガスを選択的に導く切替手段とを備える、蓄熱式燃焼装置。
【請求項2】
前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室から交互に処理後のガスが排出されるガス排出部と、
前記ガス排出部を通じて排出される処理後のガスの一部を、前記吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、前記吸着部に導く処理後ガス導入部とをさらに備える、請求項1に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項3】
空気を加熱する加熱部を有し、前記加熱部により加熱された空気を、前記吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、前記吸着部に導く加熱空気導入部をさらに備える、請求項1または2に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項4】
前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室から交互に処理後のガスが排出されるガス排出部をさらに備え、
前記加熱部は、空気と、前記ガス排出部を通じて排出される処理後のガスとの熱交換により、空気を加熱する熱交換器である、請求項3に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項5】
前記ガス供給部を通じて前記燃焼室に供給される処理前のガスの一部を、前記吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、前記吸着部に導く処理前ガス導入部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項6】
前記吸着部から有機溶剤を脱着した脱着ガスを、前記燃焼室に戻すガス戻り部をさらに備える、請求項2から5のいずれか1項に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項7】
前記ガス供給部に設けられ、ガスを前記燃焼室に向けて送り出すファンをさらに備え、
前記ガス戻り部は、前記ファンよりも前記ガス供給部におけるガス流れの上流側で、前記ガス供給部に接続される、請求項6に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項8】
前記燃焼室に戻される脱着ガスの風量は、前記ガス供給部を通じて前記燃焼室に供給される処理前のガスの風量の1/100以上1/5以下である、請求項6または7に記載の蓄熱式燃焼装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の蓄熱式燃焼装置を用いて、有機溶剤を含むガスを燃焼処理する方法であって、
前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室のいずれか一方を通じて、前記燃焼室にガスを供給しつつ、前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室のいずれか他方を通じて、前記燃焼室からガスを排出することにより、前記燃焼室において有機溶剤を含むガスを燃焼処理する工程と、
前記ガスを燃焼処理する工程の後、ガスに含まれる有機溶剤を前記吸着部に吸着するとともに、前記吸着部への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室のいずれか一方に供給する工程と、
前記清浄ガスを第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方に供給する工程の後、前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室のいずれか他方を通じて、前記燃焼室にガスを供給しつつ、前記第1蓄熱室および前記第2蓄熱室のいずれか一方を通じて、前記燃焼室からガスを排出することにより、前記燃焼室において有機溶剤を含むガスを燃焼処理する工程とを備える、ガスの燃焼処理方法。
【請求項10】
前記吸着部に脱着ガスを供給することにより前記吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するとともに、前記吸着部から有機溶剤を脱着した脱着ガスを前記燃焼室に戻す工程をさらに備え、
前記脱着ガスを燃焼室に戻す工程を、前記ガスを燃焼処理する工程の開始時から終了時に渡って継続的に実行する、請求項9に記載のガスの燃焼処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、蓄熱式燃焼装置およびガスの燃焼処理方法に関し、より特定的には、各種工場や研究施設等から発生した有機溶剤を含むガスを燃焼処理するための蓄熱式燃焼装置、およびそのような蓄熱式燃焼装置を用いて有機溶剤を含むガスを燃焼処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を含むガスを燃焼処理する装置として、直接燃焼装置、触媒燃焼装置および蓄熱式燃焼装置がある。この中でも蓄熱式燃焼装置は、熱回収効率が高く、ランニングコストが低く抑えられる装置として知られている。
【0003】
このような蓄熱式燃焼装置に関して、たとえば、特開昭54−128171号公報には、単純かつコンパクトに構成されており、少ないエネルギ損失で有害物質を完全に焼却することを目的とした、廃ガス中の有害物質の焼却装置が開示されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示された焼却装置は、加熱バーナを備えた昇温ゾーンと、昇温ゾーンの左右に設けられた2つの蓄熱ゾーンとを有する。まず、左側の蓄熱ゾーンを通過するガスは、その蓄熱ゾーンに蓄えられた熱量で予熱され、昇温ゾーンに移動する。ガスは、昇温ゾーンにおいて、加熱バーナよりの燃焼ガスにより加熱処理される。ガスは、続いて右側の蓄熱ゾーンを通過し、その間、蓄熱ゾーンと熱交換する。左側の蓄熱ゾーンによる予熱効果が低下すると、右側の蓄熱ゾーン、昇温ゾーンおよび左側の蓄熱ゾーンを順に通過するように、ガス流れが切り替えられる。
【0005】
また、このほか、特開2003−130323号公報(特許文献2)、特開2011−102664号公報(特許文献3)、特開平10−43538号公報(特許文献4)および特開2000−18564号公報(特許文献5)にも、各種の蓄熱式燃焼装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−128171号公報
【特許文献2】特開2003−130323号公報
【特許文献3】特開2011−102664号公報
【特許文献4】特開平10−43538号公報
【特許文献5】特開2000−18564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された焼却装置では、左右の蓄熱ゾーンにおいて、蓄熱ゾーンから処理前のガスへの放熱と、処理後のガスから蓄熱ゾーンへの蓄熱とを交互に繰り返すことによって、高い熱回収効率を実現している。
【0008】
しかしながら、このような構成を備える焼却装置においては、ガス流れの切替時に、加熱バーナを備えた昇温ゾーンに対してガス流れの上流側にあって、処理前のガスに放熱していた放熱側の蓄熱ゾーンが、ガス流れの下流側にあって、処理後のガスから蓄熱する蓄熱側の蓄熱ゾーンにシフトする。この際、放熱側から蓄熱側にシフトした蓄熱ゾーンに残留するガスが、処理が不十分なまま排出される可能性がある。これにより、蓄熱式燃焼装置の処理能力の低下を招く懸念が生じる。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、処理能力に優れた蓄熱式燃焼装置およびガスの燃焼処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った蓄熱式燃焼装置は、有機溶剤を含むガスを燃焼処理する燃焼室と、燃焼室に連通し、蓄熱材が配置され、処理後のガスから蓄熱材への蓄熱と、蓄熱した蓄熱材から処理前のガスへの放熱とを交互に繰り返す第1蓄熱室および第2蓄熱室と、有機溶剤を含むガスを、第1蓄熱室および第2蓄熱室に交互に供給するガス供給部と、有機溶剤を吸着可能な吸着部を有し、吸着部への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、第1蓄熱室または第2蓄熱室に供給する清浄ガス供給部と、ガス供給部および清浄ガス供給部のいずれか一方に、有機溶剤を含むガスを選択的に導く切替手段とを備える。
【0011】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、切替手段によりガスを導く先をガス供給部から清浄ガス供給部へと切り替えることによって、吸着部によりガスに含まれる有機溶剤を吸着し、これにより得られた清浄ガスを第1蓄熱室または第2蓄熱室に供給する。これにより、その第1蓄熱室または第2蓄熱室に残留するガスが燃焼室に送り出されるため、処理が不十分なガスが装置から排出されることを防止できる。したがって、本発明によれば、処理能力に優れた蓄熱式燃焼装置を実現することができる。
【0012】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、第1蓄熱室および第2蓄熱室から交互に処理後のガスが排出されるガス排出部と、ガス排出部を通じて排出される処理後のガスの一部を、吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、吸着部に導く処理後ガス導入部とをさらに備える。
【0013】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、ガス排出部を通じて排出された処理後のガスの一部を脱着ガスとして利用することにより、有機溶剤を吸着した吸着部を再生することができる。
【0014】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、空気を加熱する加熱部を有し、加熱部により加熱された空気を、吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、吸着部に導く加熱空気導入部をさらに備える。
【0015】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、加熱部により加熱された空気を脱着ガスとして利用することにより、有機溶剤を吸着した吸着部を再生することができる。
【0016】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、第1蓄熱室および第2蓄熱室から交互に処理後のガスが排出されるガス排出部をさらに備える。加熱部は、空気と、ガス排出部を通じて排出される処理後のガスとの熱交換により、空気を加熱する熱交換器である。
【0017】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、吸着部に導く空気を、ガス排出部を通じて排出された処理後のガスを利用して加熱することができる。
【0018】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、ガス供給部を通じて燃焼室に供給される処理前のガスの一部を、吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するための脱着ガスとして、吸着部に導く処理前ガス導入部をさらに備える。
【0019】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、ガス供給部を通じて燃焼室に供給される処理前のガスの一部を脱着ガスとして利用することにより、有機溶剤を吸着した吸着部を再生することができる。
【0020】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、吸着部から有機溶剤を脱着した脱着ガスを、燃焼室に戻すガス戻り部をさらに備える。
【0021】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、吸着部から有機溶剤を脱着した脱着ガスを、燃焼室において燃焼処理することができる。
【0022】
また好ましくは、蓄熱式燃焼装置は、ガス供給部に設けられ、ガスを燃焼室に向けて送り出すファンをさらに備える。ガス戻り部は、そのファンよりもガス供給部におけるガス流れの上流側で、ガス供給部に接続される。
【0023】
このように構成された蓄熱式燃焼装置によれば、ガス供給部に設けられたファンを利用して、ガス戻り部からガス供給部を通じて燃焼室へと脱着ガスを戻すことができる。
【0024】
また好ましくは、燃焼室に戻される脱着ガスの風量は、ガス供給部を通じて燃焼室に供給される処理前のガスの風量の1/100以上1/5以下である。
【0025】
このように構成された蓄熱式燃焼装置においては、燃焼室に戻される脱着ガスの風量をガス供給部を通じて燃焼室に供給される処理前のガスの風量の1/100以上とすることによって、有機溶剤を吸着した吸着部を十分に再生させることができる。また、燃焼室に戻される脱着ガスの風量をガス供給部を通じて燃焼室に供給される処理前のガスの風量の1/5以下とすることによって、燃焼室で燃焼処理するガスの風量の変動を抑制することができる。これにより、燃焼室の大きさに過分な余裕を持たせる必要がなくなり、装置を小型に構成することができる。
【0026】
この発明に従ったガスの燃焼処理方法は、上述のいずれかに記載の蓄熱式燃焼装置を用いて、有機溶剤を含むガスを燃焼処理する方法である。ガスの燃焼処理方法は、第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方を通じて、燃焼室にガスを供給しつつ、第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか他方を通じて、燃焼室からガスを排出することにより、燃焼室において有機溶剤を含むガスを燃焼処理する工程と、ガスを燃焼処理する工程の後、ガスに含まれる有機溶剤を吸着部に吸着するとともに、吸着部への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方に供給する工程と、清浄ガスを第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方に供給する工程の後、第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか他方を通じて、燃焼室にガスを供給しつつ、第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方を通じて、燃焼室からガスを排出することにより、燃焼室において有機溶剤を含むガスを燃焼処理する工程とを備える。
【0027】
このように構成されたガスの燃焼処理方法によれば、ガスの供給が第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方からいずれか他方に切り替わる際に、有機溶剤を吸着部に吸着して得られた清浄ガスを、ガスが供給されていた第1蓄熱室および第2蓄熱室のいずれか一方に供給する。これにより、処理が不十分なガスが装置から排出されることを防止できる。
【0028】
また好ましくは、ガスの燃焼処理方法は、吸着部に脱着ガスを供給することにより吸着部に吸着した有機溶剤を脱着するとともに、吸着部から有機溶剤を脱着した脱着ガスを燃焼室に戻す工程をさらに備える。脱着ガスを燃焼室に戻す工程を、ガスを燃焼処理する工程の開始時から終了時に渡って継続的に実行する。
【0029】
このように構成されたガスの燃焼処理方法によれば、燃焼室で燃焼処理するガスの風量の変動を抑制することができる。これにより、燃焼室の大きさに過分な余裕を持たせる必要がなくなり、装置を小型に構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上に説明したように、この発明に従えば、処理能力に優れた蓄熱式燃焼装置およびガスの燃焼処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】この発明の実施の形態1における蓄熱式燃焼装置を示す図である。
図2図1中の蓄熱式燃焼装置における各種ダンパの開閉状態を示す表である。
図3】実施例における各種条件や測定結果を示す表である。
図4】実施例において、脱着ガスの風量/原ガスの風量と、清浄ガス平均濃度との関係を示すグラフである。
図5図1中の蓄熱式燃焼装置の第1変形例を示す図である。
図6図1中の蓄熱式燃焼装置の第2変形例を示す図である。
図7図1中の蓄熱式燃焼装置の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における蓄熱式燃焼装置を示す図である。図1を参照して、まず、本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100の構造について説明する。
【0034】
蓄熱式燃焼装置100は、有機溶剤を含むガス(原ガス)を燃焼処理することにより、ガスから有機溶剤を分離除去するための装置である。
【0035】
蓄熱式燃焼装置100において処理可能な有機溶剤は、特に限定されないが、一例として、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノールまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
蓄熱式燃焼装置100は、燃焼室10と、蓄熱室13および蓄熱室14の2室の蓄熱室とを有する。燃焼室10は、原ガスを燃焼処理するための内部空間を形成する。燃焼室10内には、バーナ11が設けられている。
【0037】
蓄熱室13および蓄熱室14は、燃焼室10に連通して設けられている。燃焼室10に対して給排出されるガスの流れ方向において、燃焼室10を中心にその両側に蓄熱室13および蓄熱室14が設けられている。蓄熱室13および蓄熱室14は、燃焼室10を中心に対称に設けられている。蓄熱室13および蓄熱室14は、互いに等しい容積を有する。
【0038】
蓄熱室13および蓄熱室14には、蓄熱材12が設けられている。蓄熱材12は、原ガスに含まれる有機溶剤に対しての耐性や、燃焼室10内の温度に対して耐熱性を有していれば、特に限定されない。蓄熱材12としては、たとえば、コージェライトやアルミナを主成分とするセラミック担体が用いられる。蓄熱材12の構造も特に限定されないが、圧力損失を抑える観点から、ハニカム構造体が好ましい。
【0039】
蓄熱式燃焼装置100は、原ガス送風ライン51、原ガス用ファン15および排ガス送風ライン50をさらに有する。
【0040】
原ガス送風ライン51は、流体が流通可能な管路を構成する。原ガス送風ライン51は、図示しない原ガス供給源から燃焼室10に向けて原ガスを供給するように設けられている。原ガス送風ライン51は、蓄熱室13および蓄熱室14に連通している。原ガス送風ライン51は、蓄熱室13および蓄熱室14の各蓄熱室に並列に連通している。原ガス送風ライン51は、蓄熱室13および蓄熱室14を介して燃焼室10に連通している。原ガス用ファン15は、原ガス送風ライン51の経路上に設けられている。原ガス用ファン15の駆動に伴って、原ガスが原ガス送風ライン51を流れて燃焼室10に向けて供給される。
【0041】
排ガス送風ライン50は、流体が流通可能な管路を構成する。排ガス送風ライン50は、燃焼室10において燃焼処理された処理後のガスを、排ガスとして装置の系外に排出するように設けられている。排ガス送風ライン50は、蓄熱室13および蓄熱室14に連通している。原ガス送風ライン51は、蓄熱室13および蓄熱室14の各蓄熱室に並列に連通している。排ガス送風ライン50は、蓄熱室13および蓄熱室14を介して燃焼室10に連通している。
【0042】
蓄熱式燃焼装置100は、ダンパ(バルブ)61およびダンパ62と、ダンパ63およびダンパ64とをさらに有する。
【0043】
ダンパ61は、蓄熱室13に連通する原ガス送風ライン51の経路上に設けられている。ダンパ61は、原ガス送風ライン51を通って蓄熱室13に向かう原ガスの流れを許容または規制するように設けられている。ダンパ62は、蓄熱室14に連通する原ガス送風ライン51の経路上に設けられている。ダンパ62は、原ガス送風ライン51を通って蓄熱室14に向かう原ガスの流れを許容または規制するように設けられている。
【0044】
ダンパ63は、蓄熱室13に連通する排ガス送風ライン50の経路上に設けられている。ダンパ63は、蓄熱室13から排ガス送風ライン50に排出された排ガスの流れを許容または規制するように設けられている。ダンパ64は、蓄熱室14に連通する排ガス送風ライン50の経路上に設けられている。ダンパ64は、蓄熱室14から排ガス送風ライン50に排出された排ガスの流れを許容または規制するように設けられている。
【0045】
なお、ダンパ61〜64および後述するダンパ31,35,36,66,67の開閉操作は、図示しない制御部により自動制御される。また、本実施の形態では、これらのバルブに、流路を開閉可能な二方弁が用いられているが、流路を二分化可能な三方弁を適当に用いて、バルブの総数を削減してもよい。
【0046】
本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100においては、処理後のガスから蓄熱材12への蓄熱と、蓄熱した蓄熱材12から処理前のガスへの放熱とを繰り返しながら、原ガスの燃焼処理を連続的に行なう。
【0047】
より具体的には、ダンパ61およびダンパ64が開状態とされ、ダンパ62およびダンパ63が閉状態とされている場合、原ガスが原ガス送風ライン51を流れて蓄熱室13に供給される。原ガスは、蓄熱室13に配置された蓄熱材12の熱によって予熱されて、燃焼室10へと移動する。原ガスは、燃焼室10において燃焼処理され、蓄熱室14へと移動する。燃焼処理により高温となったガスは、蓄熱室14に配置された蓄熱材12に放熱して、排ガス送風ライン50に流出する。一方、ダンパ61およびダンパ64が閉状態とされ、ダンパ62およびダンパ63が開状態とされている場合、先の場合から、ガスの流れ方向が反転する。すなわち、原ガスが原ガス送風ライン51を流れて蓄熱室14に供給される。原ガスは、蓄熱室14に配置された蓄熱材12の熱によって予熱されて、燃焼室10へと移動する。原ガスは、燃焼室10において燃焼処理され、蓄熱室13へと移動する。燃焼処理により高温となったガスは、蓄熱室13に配置された蓄熱材12に放熱して、排ガス送風ライン50に流出する。
【0048】
蓄熱式燃焼装置100は、吸着チャンバ41と、分岐送風ライン52とをさらに有する。
【0049】
吸着チャンバ41は、分岐送風ライン52の経路上に設けられている。吸着チャンバ41には、有機溶剤を吸着可能な吸着部として吸着材42が配置されている。
【0050】
吸着材42の種類および構造は、特に制限されない。吸着材42としては、たとえば、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ等の吸着剤において、粒状、ペレット状、ハニカム状、フェルト状等の形態で用いられる。但し、圧力損失を抑える観点より、吸着材42の構造は、最も低圧損であるハニカム状であることが好ましい。
【0051】
分岐送風ライン52は、流体が流通可能な管路を構成している。分岐送風ライン52は、図示しない原ガス供給源から供給される原ガスを吸着チャンバ41に導くとともに、吸着材42により有機溶剤が吸着された清浄ガスを蓄熱室13または蓄熱室14に供給するように設けられている。
【0052】
本実施の形態では、分岐送風ライン52が、原ガス送風ライン51から分岐し、再び原ガス送風ライン51における原ガス流れの下流側で原ガス送風ライン51に合流するように設けられている。分岐送風ライン52は、原ガス用ファン15よりも原ガス送風ライン51における原ガス流れの下流側で、原ガス送風ライン51から分岐している。分岐送風ライン52は、ダンパ61およびダンパ62よりも原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側で、原ガス送風ライン51に合流している。
【0053】
蓄熱式燃焼装置100は、ダンパ31と、ダンパ35およびダンパ36とをさらに有する。
【0054】
ダンパ31は、原ガス送風ライン51の経路上に設けられている。ダンパ31は、原ガス送風ライン51を通って燃焼室10に向かう原ガスの流れを許容または規制するように設けられている。ダンパ31は、原ガス送風ライン51に対する分岐送風ライン52の分岐位置と合流位置との間に設けられている。
【0055】
ダンパ35およびダンパ36は、分岐送風ライン52の経路上に設けられている。ダンパ35は、分岐送風ライン52を通って吸着チャンバ41に向かう原ガスの流れを許容または規制するように設けられ、ダンパ36は、分岐送風ライン52を通って燃焼室10に向かう清浄ガスの流れを許容または規制するように設けられている。ダンパ35は、吸着チャンバ41よりも分岐送風ライン52におけるガス流れの上流側に設けられている。ダンパ36は、吸着チャンバ41よりも分岐送風ライン52におけるガス流れの下流側に設けられている。
【0056】
ダンパ31、ダンパ35およびダンパ36は、原ガスを原ガス送風ライン51および分岐送風ライン52のいずれか一方に選択的に導く切替手段として設けられている。より具体的には、ダンパ31が開状態とされ、ダンパ35およびダンパ36が閉状態とされている場合、図示しない原ガス供給源からの原ガスは、原ガス送風ライン51を通って蓄熱室13または蓄熱室14に供給される。一方、ダンパ31が閉状態とされ、ダンパ35およびダンパ36が開状態とされている場合、図示しない原ガス供給源からの原ガスは、分岐送風ライン52に導かれ、吸着チャンバ41において吸着材42に有機溶剤が吸着される。吸着材42への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスは、分岐送風ライン52を通って再び原ガス送風ライン51に合流し、その後、蓄熱室13または蓄熱室14に供給される。
【0057】
蓄熱式燃焼装置100は、排ガス導入ライン53と、戻りガス導入ライン54と、ダンパ66およびバルブ67とをさらに有する。
【0058】
排ガス導入ライン53は、流体が流通可能な管路を構成する。排ガス導入ライン53は、排ガス送風ライン50を流れる排ガスの一部を、吸着材42を再生するための脱着ガスとして吸着チャンバ41に導入するように設けられている。排ガス導入ライン53は、排ガス送風ライン50から分岐し、分岐送風ライン52に合流するように設けられている。排ガス導入ライン53は、吸着チャンバ41と、原ガス送風ライン51に対する分岐送風ライン52の合流位置との間で、分岐送風ライン52に合流している。排ガス導入ライン53は、吸着チャンバ41とバルブ36との間で分岐送風ライン52に合流している。
【0059】
戻りガス導入ライン54は、流体が流通可能な管路を構成する。戻りガス導入ライン54は、吸着材42から有機溶剤を脱着し、吸着チャンバ41から排出された脱着ガスを燃焼室10に戻すように設けられている。戻りガス導入ライン54は、分岐送風ライン52から分岐し、原ガス送風ライン51に合流するように設けられている。戻りガス導入ライン54は、原ガス供給ライン52に対する分岐送風ライン52の分岐位置と、吸着チャンバ41との間で、分岐送風ライン52から分岐している。戻りガス導入ライン54は、ダンパ35と吸着チャンバ41との間で分岐送風ライン52から分岐している。戻りガス導入ライン54は、原ガス用ファン15よりも原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側で、原ガス送風ライン51に合流している。
【0060】
ダンパ66は、排ガス導入ライン53の経路上に設けられている。ダンパ66は、排ガス導入ライン53を通って吸着チャンバ41に向かう脱着ガスの流れを許容または規制するように設けられている。ダンパ67は、戻りガス導入ライン54の経路上に設けられている。ダンパ67は、戻りガス導入ライン54を通って原ガス送風ライン51に向かう脱着ガスの流れを許容または規制するように設けられている。
【0061】
ダンパ66およびダンパ67が開状態とされている場合、排ガス送風ライン50を流れる排ガスの一部が、脱着ガスとして、排ガス導入ライン53を流れて吸着チャンバ41に導かれる。吸着チャンバ41に導かれた脱着ガスは、吸着材42に吸着された有機溶剤を脱着する。有機溶剤を脱着した脱着ガスは、戻りガス導入ライン54を通って原ガス送風ライン51に戻される。本実施の形態では、戻りガス導入ライン54が原ガス用ファン15よりも原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側で原ガス送風ライン51に合流しているため、原ガス用ファン15を利用して、脱着ガスを原ガス送風ライン51に戻すことができる。
【0062】
吸着チャンバ41の内部においては、吸着材12が、円柱状を有する回転駆動可能な筒状吸着体として設けられてもよい。このような構成においては、原ガスおよび脱着ガスが別々のライン上で筒状吸着体の軸方向に流通可能なように設けられ、筒状吸着体が回転することによって、吸着処理を行なうエリアと脱着処理を行なうエリアとが入れ替わる。
【0063】
続いて、本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100を用いて、原ガスを燃焼処理する方法について説明する。図2は、図1中の蓄熱式燃焼装置における各種ダンパの開閉状態を示す表である。
【0064】
図1および図2を参照して、予め、バーナ11より燃焼室10内を800〜900℃の温度にまで加熱する。蓄熱室13を通じて燃焼室10に原ガスを供給しつつ、蓄熱室14を通じて燃焼室10からガスを排出することにより、燃焼室10において原ガスを燃焼処理する(第1燃焼処理工程)。
【0065】
本工程では、ダンパ31を開状態とし、ダンパ35およびダンパ36を閉状態とすることによって、原ガスを原ガス送風ライン51に導く。さらに、ダンパ61およびダンパ64を開状態とし、ダンパ62およびダンパ63を閉状態とすることによって、原ガス送風ライン51を流れる原ガスを蓄熱室13に供給するとともに、燃焼室10において燃焼処理されたガスを、蓄熱室14を通じて排ガス送風ライン50に排出する。
【0066】
次に、吸着材42により原ガスに含まれる有機溶剤を吸着するとともに、吸着材42への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、先の第1燃焼処理工程において原ガスが供給されていた蓄熱室13に供給する(第1切替工程)。
【0067】
本工程では、ダンパ61〜64の開閉状態を維持したまま、ダンパ31を閉状態とし、ダンパ35およびダンパ36を開状態とすることによって、原ガス用ファン15により送り出された原ガスを分岐送風ライン52に導く。蓄熱室13には、先の第1燃焼処理工程で原ガス送風ライン51から供給された未処理の原ガスが残留している。吸着チャンバ41で有機溶剤が吸着された清浄ガスを蓄熱室13に供給することによって、その残留する原ガスを燃焼室10に向けて押し出す。
【0068】
次に、蓄熱室14を通じて燃焼室10に原ガスを供給しつつ、蓄熱室13を通じて燃焼室10からガスを排出することにより、燃焼室10において原ガスを燃焼処理する(第2燃焼処理工程)。
【0069】
本工程では、ダンパ31を開状態とし、ダンパ35およびダンパ36を閉状態とすることによって、原ガスを原ガス送風ライン51に導く。さらに、ダンパ61およびダンパ64を閉状態とし、ダンパ62およびダンパ63を開状態とすることによって、原ガス送風ライン51を流れる原ガスを蓄熱室14に供給し、燃焼室10において燃焼処理されたガスを、蓄熱室13を通じて排ガス送風ライン50に排出する。この際、先の第1切替工程の実施によって、蓄熱室13には原ガスが残留しないため、処理が十分でないガスが蓄熱室13から排ガス送風ライン50に排出されることを防止できる。
【0070】
次に、吸着材42により原ガスに含まれる有機溶剤を吸着するとともに、吸着材42への有機溶剤の吸着により得られた清浄ガスを、先の第2燃焼処理工程において原ガスが供給されていた蓄熱室14に供給する(第2切替工程)。
【0071】
本工程では、ダンパ61〜64の開閉状態を維持したまま、ダンパ31を閉状態とし、ダンパ35およびダンパ36を開状態とすることによって、原ガス用ファン15により送り出された原ガスを分岐送風ライン52に導く。蓄熱室14には、先の第2燃焼処理工程で原ガス送風ライン51から供給された未処理の原ガスが残留している。吸着チャンバ41で有機溶剤が吸着された清浄ガスを蓄熱室14に供給することによって、その残留する原ガスを燃焼室10に向けて押し出す。
【0072】
以降、第1燃焼工程、第1切替工程、第2燃焼工程および第2切替工程からなるサイクルを繰り返すことによって、有機溶剤を含むガスの燃焼処理を連続的に行なう。
【0073】
さらに本実施の形態においては、上記の第1燃焼工程および第2燃焼工程時、排ガス導入ライン53を通じて吸着チャンバ41に導入される排ガスを脱着ガスとして利用して、有機溶剤を吸着した吸着材42を再生させる。
【0074】
具体的には、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程時、ダンパ66を開状態とすることによって、排ガス送風ライン50を流れる排ガス(処理後のガス)の一部を脱着ガスとして、排ガス導入ライン53を通じて吸着チャンバ41に導く。吸着チャンバ41に導かれた脱着ガスは、吸着材42から有機溶剤を脱着して、吸着材42を再生させる。さらに、ダンパ67を開状態とすることによって、有機溶剤を脱着した脱着ガスを、戻りガス導入ライン54を通じて原ガス送風ライン51に戻す。原ガス送風ライン51に戻された脱着ガスは、原ガス送風ライン51を流れる原ガスと一緒になって燃焼室10に向けて送り出され、再び燃焼処理される。
【0075】
本実施の形態においては、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程時に、戻りガス導入ライン54を通じて原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスが原ガスに加算される。しかしながら、吸着チャンバ41に導入する脱着ガスの風量を原ガスの風量と比較して低く抑えることによって、燃焼室10、蓄熱室13および蓄熱室14の空塔速度が大幅に速くなることはない。このため、燃焼室10、蓄熱室13および蓄熱室14が大きくなって蓄熱式燃焼装置100の大型化を招くことはほとんどない。
【0076】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100は、バーナ11を有する燃焼室10と、燃焼室10に連通する蓄熱室13および蓄熱室14の2室の蓄熱室と、吸着材42が充填されている吸着チャンバ41とを備える。蓄熱式燃焼装置100は、原ガス用ファン15より原ガスを燃焼室10に送風する原ガス送風ライン51と、原ガス送風ライン51に流れる原ガスを吸着チャンバ41に導入する分岐送風ライン52との2つの送風ラインを備える。このような構成により、有機溶剤を含む原ガスを、蓄熱室13または蓄熱室14を通じて燃焼室10へ導入させることと、吸着チャンバ41に原ガスを導入することにより、原ガス中の有機溶剤が吸着材42に吸着除去されて清浄化されたガス(清浄ガス)を、蓄熱室13または蓄熱室14を通じて燃焼室10に導入させることとが可能となる。
【0077】
原ガス送風ライン51に原ガスが通風されている場合、分岐送風ライン52には通風されず、逆に、分岐送風ライン52に原ガスが通風されている場合、原ガス送風ライン51には通風されない。本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100は、このような原ガス流れの切替手段として、制御部によって自動制御されるダンパ31、ダンパ35およびダンパ36を有する。
【0078】
分岐送風ライン52より吸着チャンバ41に原ガスが導入される場合、吸着材42には原ガスに含有される有機溶剤が吸着するため、吸着材42を脱着操作にて再生させる必要がある。このため、本実施の形態では、原ガス送風ライン51に原ガスが通風されている時に、排ガスの一部を排ガス導入ライン53を通じて吸着チャンバ41に導入することによって、この脱着操作を実施する。これにより、次に分岐送風ライン52に原ガスが通風される時には、吸着材42が再生されている。この結果、吸着材42を繰り返し用いることができるため、吸着材42の交換期間が著しく長くなり、経済的である。
【0079】
本実施の形態では、吸着チャンバ41から排出され、有機溶剤を含有した脱着ガスを再び燃焼室10に導入するための戻りガス導入ライン54が設けられている。これより、吸着材42より脱着して排出された有機溶剤を、燃焼室10において燃焼処理することができる。さらに本実施の形態では、戻りガス導入ライン54が、原ガス用ファン15よりも、原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側に接続されるため、戻りガス導入ライン54が負圧となる。これにより、脱着ガスを原ガス送風ライン51に戻すためのファンを別に設ける必要がなくなり、より経済的である。
【0080】
続いて、本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100およびこれを用いたガス燃焼処理方法のより好ましい形態について説明する。
【0081】
(1)上記の第1切替工程において、蓄熱室13に供給する清浄ガスの流量Wは、蓄熱室13の容積V以上であることが好ましい(W≧V)。上記の第2切替工程において、蓄熱室14に供給する清浄ガスの流量Wは、蓄熱室14の容積V以上であることが好ましい(W≧V)。これらの場合、清浄ガスの供給によって、蓄熱室13または蓄熱室14に残留する原ガスをより確実に燃焼室10に向けて押し出すことができる。
【0082】
(2)各蓄熱室に対する清浄ガスの供給量(パージ量)が増えると吸着材42に吸着する有機溶剤の量も増えるため、吸着材42を再生させるために必要な脱着ガスの流量も増大する。これにより、戻りガス導入ライン54を通じて原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスの流量が増大すると、燃焼室10や蓄熱室13,14の容積を大きくする必要が生じる。結果、蓄熱式燃焼装置100の大型化を招く懸念が生じる。
【0083】
このような懸念に鑑みて、上記の第1切替工程および第2切替工程の各切替工程において、蓄熱室13または蓄熱室14に供給する清浄ガスの流量Wは、蓄熱室13の容積Vと、燃焼室10の容積Xと、蓄熱室14の容積Vとの和以下であることが好ましい(W≦X+2V)。また、上記の第1切替工程および第2切替工程の各切替工程において、蓄熱室13または蓄熱室14に供給する清浄ガスの流量Wは、蓄熱室13または蓄熱室14の容積Vと、燃焼室10の容積Xとの和以下であることがさらに好ましい(W≦X+V)。また、上記の第1切替工程および第2切替工程の各切替工程において、蓄熱室13または蓄熱室14に供給する清浄ガスの流量Wは、蓄熱室13または蓄熱室14の容積Vと、燃焼室10の容積の半分(X/2)との和以下であることがさらに好ましい(W≦X/2+V)。
【0084】
(3)戻りガス導入ライン54を通じて原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスの風量は、原ガス送風ライン51を通じて燃焼室10に供給される原ガスの風量(脱着ガスが合流する前の原ガスの風量)の1/100以上1/5以下であることが好ましい。
【0085】
原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスの風量を、原ガス送風ライン51を通じて燃焼室10に供給される原ガスの風量の1/100以上とすることによって、有機溶剤を吸着した吸着材42を十分に再生させることができる。また、原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスの風量を、原ガス送風ライン51を通じて燃焼室10に供給される原ガスの風量の1/5以下とすることによって、燃焼室10で燃焼処理するガスの風量の変動を抑制することができる。これにより、燃焼室の大きさに過分な余裕を持たせる必要がなくなり、装置を小型に構成することができる。
【0086】
同様の観点から、戻りガス導入ライン54を通じて原ガス送風ライン51に戻される脱着ガスの風量は、原ガス送風ライン51を通じて燃焼室10に供給される原ガスの風量(再生用ガスが合流する前の原ガスの風量)の1/80以上1/20以下であることがさらに好ましい。
【0087】
脱着ガスの風量を原ガスの風量の1/100以上、より好ましくは1/80以上とすることによって奏される作用効果を、以下に説明する実施例により確認した。
【0088】
図3は、実施例における各種条件や測定結果を示す表である。図3を参照して、本実施例では、図1中に示す蓄熱式燃焼装置100により、有機溶剤として酢酸エチルを含む原ガスを燃焼処理した。吸着材42としては、ハニカム状のゼオライトを用いた。この際、脱着ガスの風量を変化させることによって、原ガスの風量に対する脱着ガスの風量の割合を変化させ、各風量比において吸着チャンバから蓄熱室に供給される清浄ガスの有機溶剤濃度(清浄ガス平均濃度)を測定した。
【0089】
図4は、実施例において、脱着ガスの風量/原ガスの風量と、清浄ガス平均濃度との関係を示すグラフである。図4を参照して、脱着ガスの風量/原ガスの風量の値が1/100より小さい範囲では、清浄ガス平均濃度が比較的高い値となり、脱着ガスの風量/原ガスの風量の値が1/100以上の範囲では、清浄ガス平均濃度がほぼ飽和して低い値となった。特に脱着ガスの風量/原ガスの風量の値が1/80以上の範囲では、低濃度の清浄ガスが得られることを確認できた。
【0090】
(4)脱着ガスを燃焼室10に戻す工程を、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程の開始時から終了時に渡って継続的に実行することが好ましい。このような構成によれば、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程の間、原ガス送風ライン51への脱着ガスの合流に起因して、燃焼室10で燃焼処理するガスの風量が大きく変動することを回避できる。これにより、燃焼室10の大きさに過分な余裕を持たせる必要がなくなり、装置を小型に構成することができる。
【0091】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100およびこれを用いたガス燃焼処理方法によれば、燃焼室10における原ガスの流れを反転させる際に、原ガスが供給されていた蓄熱室に清浄ガスを供給することによって、その蓄熱室に残留する原ガスを燃焼室10に向けて送り出す。これにより、排出されるガス中に未燃焼分の有機溶剤が含まれることのないシステムを実現することができる。また、吸着チャンバ41、原ガス送風ライン51および分岐送風ライン52を設けることによって、蓄熱室を2室式にすることが可能となる。これにより、有機溶剤ガスの除去性能が高く、設置面積を省スペース化した装置を実現することができる。
【0092】
本実施の形態における蓄熱式燃焼装置100は、蓄熱室2室式において、原ガス連続供給における有機溶剤含有ガスの高効率な除去性能と高効率な熱回収効率とを実現し、基本的に吸着材の交換が必要のない装置である。このため、設備増大を必要とせずに、吸着材の交換作業を省略でき、設置面積の省スペース化とコスト低減とが可能となる。これより、特に研究所や工場等の幅広い分野から発生する排ガスの処理を、低ランニングコストで処理することができ、産業界に大きく寄与することができる。
【0093】
なお、吸着チャンバ41と同様の構成を備える吸着チャンバを、原ガス送風ライン51の経路上に設けてもよい。このような構成によれば、原ガス中の有機溶剤の濃度変動がある場合であっても、吸着チャンバによるバッファ効果によって、有機溶剤の濃度を平準化することができる。有機溶剤の濃度を平準化させることにより、燃焼室10における燃焼処理が安定化し、燃焼室10の温度変動も小さくなる。このため、蓄熱材12による蓄熱および放熱効率が向上し、装置の制御性も向上させることができる。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100の各種変形例について説明する。以下、実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100と比較して重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0095】
図5は、図1中の蓄熱式燃焼装置の第1変形例を示す図である。図5を参照して、本変形例における蓄熱式燃焼装置200は、実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100と比較して、吸着チャンバ41に向けて脱着ガスを供給する構造が異なる。
【0096】
蓄熱式燃焼装置200は、吸着チャンバ41に向けて脱着ガスを供給する構造として、外気導入ライン56、脱着ガス用ファン16、加熱設備17およびダンパ66を有する。
【0097】
外気導入ライン56は、流体が流通可能な管路を構成する。外気導入ライン56は、外部空間の外気を吸着材42を再生するための脱着ガスとして吸着チャンバ41に導入するように設けられている。外気導入ライン56は、外部空間から延び、分岐送風ライン52に合流するように設けられている。外気導入ライン56は、吸着チャンバ41と、原ガス送風ライン51に対する分岐送風ライン52の合流位置との間で、分岐送風ライン52に合流している。
【0098】
ダンパ66、加熱設備17および脱着ガス用ファン16は、外気導入ライン56の経路上に設けられている。脱着ガス用ファン16の駆動に伴って、脱着ガスとしての外気が外気導入ライン56を流れて吸着チャンバ41に向けて供給される。加熱設備17は、外気導入ライン56を流れる外気を加熱する加熱部として設けられている。加熱設備17は、外気を加熱可能な設備であれば特に限定されないが、たとえば、電気ヒータや蒸気ヒータにより構成されている。
【0099】
本実施の形態では、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程時、ダンパ66を開状態とすることによって、外気を外気導入ライン56を通じて吸着チャンバ41に導く。この際、加熱設備17による加熱によって、高温の外気が吸着チャンバ41に導かれる。一般的に、吸着材の脱着操作は圧力を下げるか加熱することで行われるが、加熱する方が設備を簡便に構成することができる。
【0100】
このような構成によれば、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程時に、吸着チャンバ41に加熱ガスを導入することによって、吸着材42を効率良く再生することができる。
【0101】
図6は、図1中の蓄熱式燃焼装置の第2変形例を示す図である。図6を参照して、本変形例における蓄熱式燃焼装置300は、図5中の蓄熱式燃焼装置200と比較して、図5中の加熱設備17に替えて熱交換器40を有する。
【0102】
熱交換器40は、外気導入ライン56の経路上に設けられている。熱交換器40には、排ガス送風ライン50を流れる排ガスが導かれる。熱交換器40は、外気導入ライン56を流れる外気と、排ガス送風ライン50を流れる排ガスとの間の熱交換によって、外気を加熱可能なように設けられている。このような構成により、吸着チャンバ41には、熱交換器40において排ガスとの熱交換によって加熱された外気が供給される。
【0103】
このような構成によれば、吸着チャンバ41に供給する脱着ガスの加熱に燃焼室10から排出されるガスの排熱を利用するため、より経済的である。
【0104】
図7は、図1中の蓄熱式燃焼装置の第3変形例を示す図である。図7を参照して、本変形例における蓄熱式燃焼装置400は、実施の形態1における蓄熱式燃焼装置100と比較して、吸着チャンバ41に向けて脱着ガスを供給する構造が異なる。
【0105】
蓄熱式燃焼装置400は、吸着チャンバ41に向けて脱着ガスを供給する構造として、原ガス導入ライン71、脱着ガス用ファン16、熱交換器40およびダンパ66を有する。
【0106】
原ガス導入ライン71は、流体が流通可能な管路を構成する。原ガス導入ライン71は、原ガス送風ライン51を流れる原ガスの一部を、吸着材42を再生するための脱着ガスとして吸着チャンバ41に導入するように設けられている。
【0107】
原ガス導入ライン71は、原ガス送風ライン51から分岐し、分岐送風ライン52に合流するように設けられている。原ガス導入ライン71は、原ガス用ファン15よりも原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側で、原ガス送風ライン51から分岐している。原ガス導入ライン71は、原ガス送風ライン51に対する戻りガス導入ライン54の合流位置よりも、原ガス送風ライン51における原ガス流れの上流側で、原ガス送風ライン51から分岐している。原ガス導入ライン71は、脱着チャンバ41と、原ガス送風ライン51に対する分岐送風ライン52の合流位置との間で、分岐送風ライン52に合流している。原ガス導入ライン71は、吸着チャンバ41とバルブ36との間で分岐送風ライン52に合流している。
【0108】
ダンパ66、熱交換器40および脱着ガス用ファン16は、原ガス導入ライン71の経路上に設けられている。脱着ガス用ファン16の駆動に伴って、脱着ガスとしての原ガスが原ガス導入ライン71を流れて吸着チャンバ41に向けて供給される。熱交換器40には、排ガス送風ライン50を流れる排ガスが導かれる。熱交換器40は、原ガス導入ライン71を流れる原ガスと、排ガス送風ライン50を流れる排ガスとの間の熱交換によって、原ガスを加熱可能なように設けられている。
【0109】
このような構成によれば、第1燃焼工程および第2燃焼工程の各工程時に、吸着チャンバ41に加熱された原ガスを導入することによって、吸着材42を効率良く再生することができる。
【0110】
なお、以上に説明した実施の形態または各種変形例における蓄熱式燃焼装置の構造を適宜組み合わせて、新たな蓄熱式燃焼装置を構成してもよい。たとえば、図5中の蓄熱式燃焼装置200に、図7中の原ガス導入ライン71を組み合わせることによって、外気の替わりに原ガスを加熱設備17に供給する構成としてもよい。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この発明は、主に、有機溶剤を含むガスを燃焼処理する装置に適用される。
【符号の説明】
【0113】
10 燃焼室、11 バーナ、12 蓄熱材、13,14 蓄熱室、15 原ガス用ファン、16 脱着ガス用ファン、17 加熱設備、31,35,36,61,62,63,64,66,67 ダンパ、40 熱交換器、41 吸着チャンバ、42 吸着材、50 排ガス送風ライン、51 原ガス送風ライン、52 分岐送風ライン、53 排ガス導入ライン、54 戻りガス導入ライン、56 外気導入ライン、71 原ガス導入ライン、100,200,300,400 蓄熱式燃焼装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7