特許第6111769号(P6111769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111769
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ガス化ガス生成システム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/54 20060101AFI20170403BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20170403BHJP
   F23C 10/04 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C10J3/54 E
   C10J3/54 L
   C10J3/00 K
   F23C10/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-57509(P2013-57509)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181306(P2014-181306A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 慎也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 修三
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−057126(JP,A)
【文献】 特開2005−041959(JP,A)
【文献】 特開平11−181450(JP,A)
【文献】 特開2005−207643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体を加熱する燃焼炉と、
前記燃焼炉によって加熱された流動媒体が導入され、該流動媒体が有する熱でガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉と前記燃焼炉との間を流通する流動媒体を冷却する冷却機構と、
前記燃焼炉の入口の流動媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定された温度に基づいて、前記流動媒体を予め定められた温度範囲に冷却するように前記冷却機構を制御する制御部と、
を備え、
前記流動媒体は、前記燃焼炉と前記ガス化炉との間を循環し、
前記燃焼炉には、前記ガス化炉から前記流動媒体および前記ガス化原料の残渣が導入され、該燃焼炉は、該残渣を燃焼させて該流動媒体を加熱することを特徴とするガス化ガス生成システム。
【請求項2】
前記ガス化炉と前記燃焼炉との間に設けられ、該ガス化炉で生成されたガス化ガスの該燃焼炉への流出および該燃焼炉から該ガス化炉への気体の流入のいずれか一方または双方を防止するループシールを備え、
前記冷却機構は、前記ループシール内において流動媒体を冷却することを特徴とする請求項1に記載のガス化ガス生成システム。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記ガス化炉の下流側であって、前記燃焼炉の上流側を流通する流動媒体を冷却することを特徴とする請求項1または2に記載のガス化ガス生成システム。
【請求項4】
前記冷却機構は、水と前記流動媒体とを熱交換することで、該流動媒体を冷却するとともに水蒸気を生成し、
前記冷却機構によって生成された水蒸気を前記ガス化炉に導入する導入部を備え、
前記ガス化炉において前記ガス化原料は前記水蒸気によってガス化されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス化ガス生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成するガス化ガス生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油に代えて、石炭やバイオマス、タイヤチップ等のガス化原料をガス化してガス化ガスを生成する技術が開発されている。このようにして生成されたガス化ガスは、発電システムや、水素の製造、合成燃料(合成石油)の製造、化学肥料(尿素)等の化学製品の製造等に利用されている。ガス化ガスの原料となるガス化原料のうち、特に石炭は、可採年数が150年程度と、石油の可採年数の3倍以上であり、また、石油と比較して埋蔵地が偏在していないため、長期に亘り安定供給が可能な天然資源として期待されている。
【0003】
石炭等のガス化原料をガス化する技術として、800℃程度の水蒸気によって流動媒体が流動層を形成しているガス化炉内で、ガス化原料をガス化する技術(水蒸気ガス化)が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の技術では、燃焼炉とガス化炉とを含んで構成され、燃焼炉で加熱した流動媒体をガス化炉に導入し、ガス化炉においてガス化原料のガス化を遂行した後、ガス化炉から燃焼炉へ流動媒体が導入されるというように、流動媒体が燃焼炉とガス化炉との間を循環する構成となっている。また、特許文献1の技術では、ガス化後のガス化原料の残渣(チャー)が、流動媒体とともに、燃焼炉に導入され、燃焼炉において残渣を燃焼させて流動媒体を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3933105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された、流動媒体が循環するガス化ガス生成システムにおいて、燃焼炉の燃料は、ガス化原料の残渣である。したがって、燃焼炉における流動媒体の加熱量は、残渣を燃焼させることによって得られる発熱量と、燃焼炉からの放熱量との差分となる。
【0007】
燃焼炉に導入される残渣の量は、ガス化炉において要求されるガス化ガスの生成量に依存し、燃焼炉からの放熱量は、燃焼炉の大きさ(容積)に依存する。具体的に説明すると、燃焼炉が小さいほど、すなわち、ガス化ガス生成システムの規模が小さいほど、燃焼炉の容積に対する表面積(比表面積)が大きくなるため、燃焼炉からの放熱量が大きくなり、燃焼炉が大きいほど、比表面積が小さくなるため、燃焼炉からの放熱量が小さくなる。
【0008】
ここで、ガス化ガスの生成量の増加を試みて、ガス化ガス生成システムの規模を拡大すると、燃焼炉に導入される残渣の量が増加するとともに、燃焼炉からの放熱量が小さくなるため、燃焼炉における流動媒体の加熱量が大きくなりすぎてしまう(燃焼炉が過熱されてしまう)。そうすると、流動媒体が溶解して、流動媒体として機能しなくなるおそれがある。また、流動媒体の温度が上がりすぎると、燃焼炉や、燃焼炉とガス化炉とを接続する配管等の耐熱強度を上げる必要があり、コスト高になってしまう。
【0009】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、ガス化ガス生成システムにおいて、ガス化ガスの生成量を低下させることなく、燃焼炉の過熱を防止することが可能なガス化ガス生成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のガス化ガス生成システムは、流動媒体を加熱する燃焼炉と、燃焼炉によって加熱された流動媒体が導入され、流動媒体が有する熱でガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成するガス化炉と、ガス化炉と燃焼炉との間を流通する流動媒体を冷却する冷却機構と、燃焼炉の入口の流動媒体の温度を測定する温度測定部と、温度測定部によって測定された温度に基づいて、流動媒体を予め定められた温度範囲に冷却するように冷却機構を制御する制御部と、を備え、流動媒体は、燃焼炉とガス化炉との間を循環し、燃焼炉には、ガス化炉から流動媒体およびガス化原料の残渣が導入され、燃焼炉は、残渣を燃焼させて流動媒体を加熱することを特徴とする。
【0011】
また、ガス化炉と燃焼炉との間に設けられ、ガス化炉で生成されたガス化ガスの燃焼炉への流出および燃焼炉からガス化炉への気体の流入のいずれか一方または双方を防止するループシールを備え、冷却機構は、ループシール内において流動媒体を冷却してもよい。
【0012】
また、冷却機構は、ガス化炉の下流側であって、燃焼炉の上流側を流通する流動媒体を冷却してもよい。
【0014】
また、冷却機構は、水と流動媒体とを熱交換することで、流動媒体を冷却するとともに水蒸気を生成し、冷却機構によって生成された水蒸気をガス化炉に導入する導入部を備え、ガス化炉においてガス化原料は水蒸気によってガス化されるとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス化ガス生成システムにおいて、ガス化ガスの生成量を低下させることなく、燃焼炉の過熱を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ガス化ガス生成システムの具体的な構成を説明するための図である。
図2】冷却機構の具体的な構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(ガス化ガス生成システム100)
図1は、ガス化ガス生成システム100の具体的な構成を説明するための図である。図1に示すように、ガス化ガス生成システム100は、燃焼炉110と、媒体分離器(サイクロン)120と、ループシール130と、ガス化炉140と、ループシール150と、冷却機構160と、温度測定部170と、制御部180とを含んで構成される。なお、図1中、流動媒体、ガス化原料、ガス化ガス、水、水蒸気、燃焼排ガス等の物質の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0019】
本実施形態において、ガス化ガス生成システム100は、循環流動層式ガス化システムであり、全体として、粒径が300μm程度の硅砂(珪砂)等の砂で構成される流動媒体を熱媒体として循環させている。具体的には、まず、流動媒体は、燃焼炉110で900℃〜1000℃程度に加熱され、燃焼排ガスと共に媒体分離器120に導入される。媒体分離器120において、燃焼排ガスと高温の流動媒体とが分離され、当該分離された燃焼排ガスは、不図示の熱交換器(例えば、ボイラー)等で熱回収される。
【0020】
一方、媒体分離器120で分離された高温の流動媒体は、ループシール130を介してガス化炉140に導入される。詳しくは後述するが、ループシール130は、内部に流動層が形成されており、媒体分離器120からガス化炉140への燃焼排ガスの流入およびガス化炉140から媒体分離器120へのガス化ガスの流出を防止する役割を担う。
【0021】
ループシール130を介して、媒体分離器120からガス化炉140に導入された流動媒体は、水蒸気分配部142から導入されるガス化剤(ここでは水蒸気)によって流動し、ループシール150を介して燃焼炉110に戻される。
【0022】
このように、本実施形態にかかるガス化ガス生成システム100において、流動媒体は、燃焼炉110、媒体分離器120、ループシール130、ガス化炉140、ループシール150を、この順に移動し、再度燃焼炉110に導入されることにより、これらを循環することとなる。
【0023】
また、ガス化炉140の下方には水蒸気分配部142が設けられており、不図示の水蒸気供給源から供給された水蒸気が、水蒸気分配部142を経由して、ガス化炉140の底面から当該ガス化炉140内に導入されている。このように、媒体分離器120から導入された高温の流動媒体に水蒸気を導入することにより、ガス化炉140内において流動層(気泡流動層)が形成される。
【0024】
ガス化炉140には、石炭やバイオマス、タイヤチップ等のガス化原料(固体原料)が導入され、導入されたガス化原料は、流動媒体が有する800℃〜900℃程度の熱によってガス化され、これによってガス化ガス(合成ガス)が生成されることとなる。
【0025】
このような流動媒体が燃焼炉110とガス化炉140とを循環するガス化ガス生成システム100においては、ガス化炉140においてガス化原料がガス化した後に残留した残渣が燃焼炉110に導入される。したがって、ガス化炉140から燃焼炉110に導入される残渣が、燃焼炉110における燃料(熱源)となり、燃焼炉110では、残渣を燃焼させることで生じた熱によって流動媒体が加熱されることとなる。つまり、燃焼炉110における流動媒体の加熱量は、残渣を燃焼させることによって得られる発熱量と、燃焼炉110からの放熱量との差分となる。
【0026】
ここで、燃焼炉110に導入される残渣の量は、ガス化炉140において要求されるガス化ガスの生成量に依存し、燃焼炉110からの放熱量は、燃焼炉110の大きさ(容積)に依存する。例えば、ガス化炉140におけるガス化原料の処理量が5t/日程度といった相対的に小さいガス化ガス生成システム100では、燃焼炉110の比表面積が大きく放熱量が大きいため、残渣のみでは、ガス化炉140で要求される温度(800℃〜900℃)まで流動媒体を加熱することができないこともある。その場合、燃焼炉110には、残渣に加えて、別途燃料(補助燃料)が導入されることとなる。
【0027】
また、例えば、ガス化炉140におけるガス化原料の処理量が50t/日程度といったガス化ガス生成システム100では、残渣のみで、ガス化炉140で要求される温度に流動媒体を加熱することできるため、燃焼炉110に補助燃料を導入する必要はない。
【0028】
一方、例えば、ガス化炉140におけるガス化原料の処理量が500t〜2000t/日程度といった相対的に大きいガス化ガス生成システム100では、燃焼炉110の比表面積が小さく放熱量が小さいため、残渣のみを燃焼させたとしても、ガス化炉140で要求される温度を上回る温度まで流動媒体を過熱してしまうことがある。
【0029】
流動媒体が過熱されると、流動媒体が溶解するおそれがある。また、燃焼炉110や、燃焼炉110とガス化炉140とを接続するループシール150や配管等の耐熱強度を上げる必要があり、ガス化ガス生成システム100自体のコストが上昇してしまう。ここで、燃焼炉110の過熱を抑制するために、ガス化炉140から燃焼炉110へ導入される残渣の量を低減する、すなわち、ガス化炉140に導入するガス化原料の量を低減することも考えられるが、要求されるガス化ガスの生成量を確保できないという問題が生じる。
【0030】
そこで、本実施形態にかかるガス化ガス生成システム100では、冷却機構160によって、流動媒体の過熱を防止する。冷却機構160は、流通管162と、ポンプ164とを含んで構成され、ガス化炉140と燃焼炉110との間、本実施形態では、ループシール150を流通する流動媒体を冷却する。
【0031】
図2は、本実施形態にかかる冷却機構160の具体的な構成を説明するための図である。図2に示すように、本実施形態のループシール150は、下部に水蒸気分配部152が設けられており、不図示の水蒸気供給源から供給された水蒸気が、水蒸気分配部152を経由して、ループシール150の上部に設けられた本体154の底面から当該本体154内に導入されている。
【0032】
このように、ループシール150の入口150aを介して、ガス化炉140から導入された流動媒体および残渣に水蒸気を導入することにより、ループシール150(本体154)内において流動層(気泡流動層)が形成される。そして、ガス化炉140からのさらなる流動媒体および残渣の導入によって流動層の鉛直方向の位置が高くなると、流動媒体および残渣は、ループシール150の出口150bをオーバーフローして、燃焼炉110へ導入されることとなる。
【0033】
ループシール150を備える構成により、ガス化炉140で生成されたガス化ガスの燃焼炉110への流出および燃焼炉110からガス化炉140への気体の流入を防止することができる。なお、ループシール130の構成は、ループシール150の構成と実質的に等しいので、重複説明を省略する。
【0034】
冷却機構160を構成する流通管162は、一端がポンプ(導入部)164に接続されるとともに、他端が水蒸気分配部142に接続される(図1参照)。また、流通管162の一部162aは、ループシール150の本体154内に配される。
【0035】
ポンプ164は、後述する制御部180の制御指令に応じて、流通管162に水を導入する。ポンプ164によって流通管162に水が導入されると、水がループシール150を通る際に、流動媒体および残渣と、水とで熱交換がなされ、流動媒体および残渣が冷却されるとともに、水が加熱されて水蒸気となる。
【0036】
冷却機構160を備える構成により、残渣の量を変更せずに、すなわち、ガス化ガスの生成量(ガス化原料の導入量)を低下させることなく、流動媒体を冷却(抜熱)することが可能となる。
【0037】
ところで、ガス化反応は吸熱反応であるため、過熱された流動媒体がガス化炉140に導入されたとしても、ガス化炉140において流動媒体は冷却されることとなる。したがって、過熱された流動媒体がガス化炉140に導入されたとしても、さほど問題にはならない。しかし、燃焼反応は発熱反応であるため、過熱された流動媒体が燃焼炉110に導入されると、燃焼炉110において流動媒体がさらに過熱されることとなる。したがって、過熱された流動媒体が燃焼炉110に導入されると、燃焼炉110において流動媒体が溶融するおそれが生じる。
【0038】
そこで、本実施形態において冷却機構160は、ガス化炉140と燃焼炉110との間(ガス化炉140の下流側であって、燃焼炉110の上流側)を流通する流動媒体を冷却する。これにより、燃焼炉110に導入される流動媒体を冷却することができ、燃焼炉110が過熱されて流動媒体が溶融する事態を回避することが可能となる。
【0039】
また、ループシール150は、内部に流動層を形成する必要があるため、ある程度の体積を確保しなければならず、流通管162の設置体積を相対的に大きく採ることができる。したがって、冷却機構160がループシール150内で流動媒体を冷却することにより、効率よく流動媒体を冷却することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態において、ループシール150に配された流通管162の一部162aにおいて生成された水蒸気は、水蒸気分配部142を介して、ガス化炉140に導入される。つまり、ポンプ164を駆動することにより、流通管162の一部162aにおいて生成された水蒸気はガス化炉140に導入されることになる。
【0041】
これにより、ガス化原料のガス化に要する水蒸気を生成するためのエネルギーを削減することができる。
【0042】
温度測定部170は、例えば、熱電対で構成され、燃焼炉110の入口の流動媒体の温度を測定する。
【0043】
制御部180は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してガス化ガス生成システム100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部180は、温度測定部170が測定した流動媒体の温度に基づいて、流動媒体を予め定められた温度範囲に冷却するように、ポンプ164(冷却機構160)の駆動量を制御する。
【0044】
温度測定部170および制御部180を備える構成により、燃焼炉110に導入される流動媒体の温度を予め定められた温度範囲に維持することができる。したがって、燃焼炉110において加熱された後の流動媒体の温度が、流動媒体が溶融しない温度であり、かつ、ガス化炉140において要求される温度となる温度範囲に設定することで、流動媒体の過熱を防止しつつ、ガス化炉140における流動媒体の温度をガス化に適した温度に維持することが可能となる。なお、燃焼炉110における流動媒体の加熱量は、ガス化原料の導入量(ガス化ガスの要求量)に基づいて、燃焼炉110に導入される残渣量を導出し、導出した量の残渣を燃焼することにより得られる発熱量を導出して、当該発熱量と燃焼炉110の放熱量とに基づいて導出することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態にかかるガス化ガス生成システム100によれば、ガス化ガスの生成量を低下させることなく、燃焼炉110の過熱を防止することが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、上述した実施形態において、冷却機構160は、ガス化炉140の下流側であって、燃焼炉110の上流側に設けられたループシール150内を流通する流動媒体を冷却しているが、ガス化炉140と燃焼炉110との間を流通する流動媒体を冷却すれば、冷却位置に限定はない。例えば、ガス化炉140とループシール150とを接続する配管や、ループシール150と燃焼炉110とを接続する配管を流通する流動媒体を冷却してもよい。また、ガス化炉140と燃焼炉110との間に、熱交換器を設けてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態において、冷却機構160が、ガス化炉140と燃焼炉110との間を流通する流動媒体を冷却する構成を例に挙げて説明したが、ガス化炉140と燃焼炉110との間に加えて、媒体分離器120とガス化炉140との間(媒体分離器120の下流側であって、ガス化炉140の上流側、例えば、ループシール130)を流通する流動媒体を冷却してもよい。これにより、ガス化炉140内の流動媒体の温度を所望する温度範囲に維持することが可能となる。
【0049】
また、上述した実施形態において、流通管162と、ポンプ164とを含んで構成される冷却機構160について説明した。しかし、冷却機構160は、水と流動媒体とを熱交換することで、流動媒体を冷却するとともに水蒸気を生成することができればよく、例えば、ポンプ164が不要な自然循環ボイラ(ドラムボイラ)で構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成するガス化ガス生成システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 …ガス化ガス生成システム
110 …燃焼炉
140 …ガス化炉
150 …ループシール
160 …冷却機構
162 …流通管
164 …ポンプ(導入部)
170 …温度測定部
180 …制御部
図1
図2