【実施例】
【0059】
[測定方法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各種物性の測定方法を記載する。
(1).ポリエステル樹脂の酸価(P)
ポリエステル樹脂2.0gを、水/1,4−ジオキサン(体積比1/9)100mLに温度80℃にて溶解し、クレゾールレッドを指示薬として、0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液によって滴定した。中和に消費された水酸化カリウム量から、ポリエステル樹脂の酸価を、当量/ポリエステル1tの値で示した。
(2).カルボジイミド化合物の数平均分子量、分子内のカルボジイミド基数ならびにカルボジイミド基量(C)
(A)数平均分子量の測定
多価カルボジイミド化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件にて測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた。なお、測定は2回実施しその平均値とした。
・装置 :東ソー(株)製GPC−17
・検出機:東ソー(株)製RI8020(示差屈折率検出機)
・カラム:東ソー(株)製TSKgel α−M、TSKgel α−3000
・展開溶媒:テトラヒドロフラン、0.7mL/分
・温度 :40℃
(B)分子内の平均カルボジイミド基数
得られた数平均分子量と、多価カルボジイミド化合物の理論化学式との比較により算出される、多価カルボジイミド化合物を形成する構成成分であるジイソシアネート化合物の平均縮合度nを算出し、平均縮合度nから分子内に存在する平均カルボジイミド基数を得た。
【0060】
(C)カルボジイミド基量C(当量/t)
(B)項にて得られた平均カルボジイミド基数と数平均分子量から、カルボジイミド化合物1tあたりのカルボジイミド基量C(当量/t)を算出した。
(3).ポリエステル樹脂の数平均分子量ならびに重量平均分子量
ポリエステル樹脂の数平均分子量ならびに重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件にて測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた。なお、測定は2回実施しその平均値とした。
・装置 :東ソー(株)製GPC−17
・検出機:東ソー(株)製RI8020(示差屈折率検出機)
・カラム:東ソー(株)製TSKgel α−M、TSKgel α−3000
・展開溶媒:ジメチルアセトアミド(0.05M LiCl添加)、0.7mL/分
・温度 :40℃
(4).ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)
セイコー電子工業(株)製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続した装置を用いて測定を実施した。試料(樹脂固形物)10mgをアルミニウムパンに秤量し、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素にて急冷処理を実施した。その後20℃/分の速度で昇温しながら測定を実施し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線より以下方法によりガラス転移温度(Tg)を算出した。ガラス転移温度(Tg)近傍に、DSC曲線に沿って2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線とDSC曲線の交点からガラス転移温度(Tg)を算出した。(
図1参照)。
(5).ヘイズ
JIS K7105(1981)6.4ヘーズ(曇価)に準じて積層フィルムのヘイズを測定した。
(6).ハードコート層との初期接着力評価
(A)ハードコートフィルムの調整
ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂(日本合成化学工業(株)製 紫光UV−1700B[屈折率:1.50〜1.51])を積層ポリエステルフィルムの易接着層(A)表面上にバーコーターを用いて硬化後の膜厚が1.5μmとなるように均一に塗布した。次いで、ハードコート層の表面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H03−L31)で、積算照射強度が150mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層されたハードコートフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
【0061】
(B)初期接着性
上記ハードコートフィルムのハードコート層に、1mm
2のクロスカットを100個入れた。作業は、下記の点を除きJIS K5600−5−6(1999)の7項の手順に従って行った。
・試験条件及び試験数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.1項に規定にかかわらず、試験条件は23℃、相対湿度65%とした。また、試験数は1とした。
・試験板の養生:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.2項に規定にかかわらず、養生条件は、23℃、相対湿度65%とし、養生時間は1時間とした。
・カット数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.3項に規定にかかわらず、カット数は11とした。
・カットの間隔:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.4項に規定にかかわらず、カットの間隔は1mmとした。
・手動手順による塗膜の切込み及び除去:JIS K5600−5−6(1999)の7.2.5項の規定は準用しないものとする。すなわち、はけを用いたブラッシングは行わないものとする。また、JIS K5600−5−6(1999)の7.2.6項は第2段落の規定(「テープの中心を、JIS K5600−5−6(1999)の
図3に示されるように角カットの一組に平行な方向で格子の上に置き、格子の部分にかかった箇所と最低20mmを超える長さで、指でテープを平らになるようにする」)のみ準用し、他の規定は準用しないものとする。なお、テープはセロハンテープ(ニチバン(株)製 セロテープ(登録商標)CT405AP)を用いるものとする。
また、テープの貼付けは、ハンドローラー((株)オーディオテクニカ製 HP515)を用いて、荷重19.6N/mでローラー移動速度5cm/秒で3往復させ押しつけることによって行った。次いで、テープをハードコート層表面方向に対して90度方向に秒速10cm/秒の早さで引きはがし、ハードコート層に設けた格子の残存個数により5段階評価を行った。5を初期接着性がきわめて良好、4を良好、3を実用レベル、2以下を初期接着性が不良とした。
【0062】
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(7).ハードコート層との耐煮沸接着性評価
(6)項の方法にて調製したハードコートフィルムを純水からなる沸騰水(100℃)中に規定時間(2時間、5時間、12時間)放置し、耐煮沸接着性試験用サンプルを得た。得られた耐湿熱接着試験用サンプルについて、(6)(B)と同様の方法で、接着性試験を行い、残存した格子の個数により5段階評価を行い、耐湿熱接着指数とした。規定時間2時間の時の耐湿熱接着指数が5を耐湿熱接着性が良好、4を実用レベル、3以下を耐湿熱接着性が不良とし、4以上が合格とした。また、規定時間5時間の時の耐湿熱接着指数が5を極めて良好、4を良好、3を実用レベル、2以下を不良とし、3以上を合格とした。なお、規定時間12時間の試験は、非常に高いレベルの耐湿熱性を評価するために実施したものであり、合否の判定は実施しなかった。
【0063】
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(8).分光反射率
反射率の測定は、測定面の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛みこまないように(A)の方法で採取したサンプルの中央部に、サンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、該サンプルの中央部から約40mm角のサンプル片に切り出し、分光光度計(島津製作所(株)製 UV2450、鏡面反射率測定ユニットを使用)にて入射角5°での分光鏡面反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl
2O
3板を用いた。反射率は波長400〜700nmの範囲で測定し、反射率が極小と成る波長をλmin(nm)、波長λmin(nm)での反射率をRmin(%)とした。
(9).干渉ムラ
(5)項と同様の方法でハードコートフィルムを得た。次いで、得られたハードコートフィルムから、幅方向1m、長手方向1mのサンプルを採取した。 得られたサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点から8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(松下電器産業(株)製 3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉縞の程度を観察し、以下の評価を行った。実用レベルのものはBとし、S,Aのものは良好、Cは不合格とした。なお、干渉ムラは(1)(A)と同様の方法にてハードコートフィルムロールからサンプリングした。結果の判定は以下基準で実施し、S,Aが良好、Bが実用レベル、Cが不合格である。
【0064】
S :いずれのサンプルも干渉ムラがほぼ見えない
A :一部および/またはすべてのサンプルにおいて干渉ムラがわずかに見える。
【0065】
B :一部および/またはすべてのサンプルにおいて弱い干渉ムラが見える。
【0066】
C :一部および全てのサンプルにおいて干渉ムラが強い。
(10).易接着層(A)の層厚み
幅方向1m×長手方向1m長のサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点を測定サンプルとして用いた。フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO
4染色、OsO
4 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で断面構造が目視可能な以下の条件にて観察し、その断面写真からC層の厚みを測定した。測定値は、4点の平均値を用いた。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法
・倍率:30万倍。
【0067】
次に、各実施例・比較例で用いる樹脂等の調製法を参考例として示す。
【0068】
[参考例1] 多価カルボジイミド(b1)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて20時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量200)37重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40重量%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,500であり、理論化学式より算出した平均縮合度は5.1、1分子あたりのカルボジイミド基数は4.1、カルボジイミド基量は2,730当量/tであった。
【0069】
[参考例2] 多価カルボジイミド(b2)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて32時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)38重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40重量%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は2,950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は10.2、1分子あたりのカルボジイミド基数は9.2、カルボジイミド基量は3,120当量/tであった。
【0070】
[参考例3] 多価カルボジイミド(b3)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて15時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部と2−ジメチルアミノエタノール24重量部を80℃で24時間反応させた後、p−トルエンスルホン酸メチル50重量部を加えて1時間撹拌し末端アミンを4級化した。これに蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端が封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は3.4、1分子あたりのカルボジイミド基数は2.4、カルボジイミド基量は2,530当量/tであった。
【0071】
[参考例4] 多価カルボジイミド(b4)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて21時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)73重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,900であり、理論化学式より算出した平均縮合度は5.3、1分子あたりのカルボジイミド基数は4.3、カルボジイミド基量は2,260当量/tであった。
【0072】
[参考例5] 多価カルボジイミド(b5)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて26時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量800)120重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は2,950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は6.5、1分子あたりのカルボジイミド基数は5.5、カルボジイミド基量は1,860当量/tであった。
【0073】
[参考例6] 多価カルボジイミド(b6)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて13時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)125重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,450であり、理論化学式より算出した平均縮合度は3.0、1分子あたりのカルボジイミド基数は2.0、カルボジイミド基量は1,380当量/tであった。
【0074】
[参考例7] ポリエステル樹脂(x1)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)85モル部、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)140モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で3時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。
【0075】
その後、3価以上の多価カルボン酸成分である1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(TMA)15モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(x1)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは60℃、酸価は890当量/t、数平均分子量は4,000、重量平均分子量は14,500であった。
<ポリエステル樹脂(A1)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・テレフタル酸(TPA) 85モル部
・1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(TMA) 15モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール(EG) 100モル部
[参考例8] ポリエステル樹脂(x2,x3,y1,y4)の調製
表2に示した通りのジカルボン酸成分並びにグリコール成分を用いて、分子量調整のために反応時間を調整した以外は参考例7と同様にしてポリエステル樹脂(x2,x3,y1,y4)を得た。なお、表2中のNDCAは2,6−ナフタレンジカルボン酸、SSIAは5−スルホイソフタル酸ナトリウム、PMAは1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、DEGはジエチレングリコール、BPEFは9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを指す。なお、x2とy4はジカルボン酸および多価カルボン酸成分の合計100モル部に対して、エチレングリコール(EG)とジエチレングリコール(DEG)をそれぞれ112モル部と28モル部をエステル交換反応器に仕込みポリエステル樹脂を製造した。また、x3は1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の替わりに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸を用いた。得られたポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
【0076】
[参考例9] ポリエステル樹脂(y2)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)88モル部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(SSIA)12モル部、グリコール成分としてエチレングリコール140モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で6時間エステル化反応を行った後、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(y2)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは120℃、酸価は40当量/t、数平均分子量は10,000、重量平均分子量は37,000であった。
<ポリエステル樹脂(y2)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA) 88モル部
・5−スルホイソフタル酸ナトリウム(SSIA)12モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール 100モル部。
【0077】
[参考例10] ポリエステル樹脂(y3,y5,y6)の調製
表2に示した通りのジカルボン酸性分並びにグリコール成分を用いて、分子量調整のために反応時間を調整した以外は参考例9と同様にしてポリエステル樹脂(y3,y5,y6)を得た。得られたポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
【0078】
[参考例11] ポリエチレンテレフタレートペレット(PET)の調製
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、酸価40当量/tのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
【0079】
[実施例1]
参考例11の方法で得られたポリエチレンテレフタレートペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。なお、この時キャスティングドラムの反対面から温度10℃の冷風を長手方向に8段設置した間隙2mmのスリットノズルから風速20m/sでフィルムに吹き付け、両面から冷却を実施した。
【0080】
この未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向(一軸延伸)フィルムとした。このフィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとした。
【0081】
次いで、易接着層(A)を形成するために、下記塗液(樹脂組成物(α))を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。
【0082】
<塗液(樹脂組成物(α))>
ポリエステル樹脂成分を100重量部とした時に以下成分と、塗液として以下の溶媒を含有する、ポリエステル樹脂固形分換算の濃度が5.0重量%である水溶液。(成分)
・ポリエステル樹脂(x1) :50重量部
・ポリエステル樹脂(y1) :50重量部
・多価カルボジイミド化合物(b1) :30重量部
・メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”MW22:20重量部(有効成分換算)
・平均一次粒径140nmのコロイダルシリカ:1.5重量部
樹脂組成物(α)を塗布した1軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて10秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、基材ポリエステルフィルム(S)に、厚さ84nmの易接着層(A)が積層された合計厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0083】
得られた積層フィルムの特性を表4に示す。ハードコート層との初期接着ならびに煮沸試験後の耐湿熱接着性に優れ、高透明であり、かつハードコート層を積層した時の状態も非常に良好であった。
【0084】
[実施例2〜28,比較例1〜11]
易接着層(A)の組成を、表1、表2、表3−1、表3−2の通りとした以外は実施例1に従い積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を表4−1,表4−2に示す。なお表3−1、表3−2中の各種架橋剤の成分は以下の通り。
・オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”WS700
・イソシアネート系架橋剤(第一工業製薬(株)性“エラストロン”H3
<結果の検証>
易接着層(A)を形成する樹脂組成物(α)が、カルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを含有するポリエステル樹脂Aと多価カルボジイミド化合物Bからなり、かつポリエステル樹脂Aの酸価P(当量/t)、カルボジイミド基量C(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量c重量部の関係が式(1)を満たす場合に、初期接着性ならびに耐湿熱耐久性が良好な結果となり、式(1)の範囲が1.0〜2.0である場合にさらに良好な結果であった。
【0085】
また、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量Cが3,000当量/tを越えた実施例8や、1,500当量/t未満の実施例11は実施例3との比較で、耐湿熱性が低下傾向であった。また分子量については、1,000未満の実施例9は耐湿熱性が低下傾向であり、2,000を越える実施例8,10については、フィルムのヘイズが上昇したことから、多価カルボジイミド化合物のカルボジイミド基量は1,500〜3,000当量/tの範囲が、分子量が1,000〜2,000の範囲が耐湿熱性と外観性の観点から、より好ましい範囲であった。
【0086】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が100℃以上の樹脂を含有しなかったり、重量平均分子量が25,000以上の樹脂を含有しなかった実施例12では耐湿熱性がやや悪化傾向であり、また重量平均分子量が50,000以上のポリエステルを含有した実施例13では、易接着層(A)が白っぽく、フィルムのヘイズが上昇するなど外観がやや劣る結果であった。ポリエステル樹脂中に、Tgが100℃以上の樹脂を含有し、また、重量平均分子量が25,000〜50,000の範囲の樹脂を含有する事が耐湿熱性と外観性の観点から、より好ましい範囲であった。
【0087】
上記の好ましい範囲を満たした場合は、12時間の煮沸試験というような非常に過酷な試験条件においても、ハードコート層との接着性が良好となった。特に、実施例3,15,17,18,22,23,24,26,28においては、12時間煮沸試験後でも剥がれが全く無いか、ほとんど無く、非常に優れた耐湿熱特性を有していた。
【0088】
一方、比較例1〜4の様に式(1)が規定の範囲を満たさない水準や、カルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂を含有していない比較例5〜10、さらに分子内に2以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミドを含有していない比較例11においては、接着力の耐湿熱耐久性が不合格であった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3-1】
【0092】
【表3-2】
【0093】
【表4-1】
【0094】
【表4-2】