特許第6111786号(P6111786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6111786積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルム
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  • 特許6111786-積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルム 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111786
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   B32B27/36
【請求項の数】7
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-68390(P2013-68390)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188938(P2014-188938A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】横田 直
(72)【発明者】
【氏名】大河内 基裕
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】太田 一善
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043352(JP,A)
【文献】 特開2013−049790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ポリエステルフィルム(S)の少なくとも片面に易接着層(A)を有する積層ポリエステルフィルムであって、該易接着層(A)が下記(a)〜(b)を満たす樹脂組成物(α)を用いて形成され、下記(a)に記載のポリエステル樹脂Aが、少なくともガラス転移点が100℃以上、数平均分子量5,000以上15,000以下、重量平均分子量25,000以上50,000以下のポリエステル樹脂を含有する積層ポリエステルフィルム。
(a)樹脂組成物(α)が、少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを1種以上含有するポリエステル樹脂Aと分子内に2以上のカルボジイミド基を有する多価カルボジイミド化合物Bを含む
(b)前記ポリエステル樹脂Aの酸価をP(当量/t)、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量をC(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量をc重量部とした時に、以下式(1)を満たす
0.5≦ (C×c) /(100×P) ≦2.5 ・・・式(1)
【請求項2】
前記多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量Cが1,500当量/t以上3,000当量/t以下である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記多価カルボジイミド化合物Bの数平均分子量が1,000以上2,000以下である請求項1または2のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記易接着層(A)が、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を、ポリエステル樹脂A100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下含有する樹脂組成物(α)を用いて形成される事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルムのヘイズが0.5%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの少なくとも易接着層(A)上にハードコート層を積層してなるハードコートフィルム。
【請求項7】
基材ポリエステルフィルム(S)を形成するポリエステル樹脂を溶融しシート状に成型する工程と、長手方向と幅方向に二軸延伸する工程、および少なくともフィルムの片面に積層膜を積層する工程を有し、かつ前記易接着層を積層する工程が、基材ポリエステルフィルム(S)の少なくとも片側に以下の樹脂組成物(α)が塗布されることによって易接着層(A)が積層される工程を含み、ポリエステル樹脂Aが、少なくともガラス転移点が100℃以上、数平均分子量5,000以上15,000以下、重量平均分子量25,000以上50,000以下のポリエステル樹脂を含有する積層ポリエステルフィルムの製造方法。
(樹脂組成物(α))
少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂Aと、少なくとも分子内に2以上のカルボジイミド基を含有する多価カルボジイミド化合物Bを含有し、樹脂組成物(α)中の該ポリエステル樹脂Aの酸価をP(当量/t)、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量をC(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量をc重量部とした時に、以下式(1)を満たす樹脂組成物。
0.5≦ (C×c) /(100×P) ≦2.5 ・・・式(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮沸試験など過酷な環境下においても機能層との接着性が低下しない、接着耐久性に優れた積層ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、活性線硬化型樹脂からなるハードコート層を機能層として設けた場合に、ハードコート層との初期接着性と接着耐久性の両方が優れており、かつ透明性などの外観に優れた積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムはその優れた機械特性、電気的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、耐薬品性などから各種工業材料用途、包装材料用途、磁気材料用途等に使用されている。特にポリエステルフィルムの表面硬度や耐擦過性を補完する目的で表面にハードコート層を設け、耐スクラッチ性や耐摩耗性を向上させたハードコートフィルムは、それらの主な用途である液晶ディスプレイやプラズマディスプレイといったフラットパネルディスプレイの表面保護フィルムや反射フィルム、タッチパネル、表示板、銘板、窓貼り、表面加飾材などの拡大により、近年益々大きな市場に成長しつつあり、将来に渡っても大きな成長が見込まれている。
【0003】
これらハードコート層を有するポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層する事で得る事が出来るが、基材ポリエステルフィルムとハードコート層間の接着性に課題があった。近年、特にスマートフォンなどの携帯機器用途に使用されるハードコートフィルムの市場が伸張しており、高温多湿地域、寒冷地での結露等にも耐えうる様な、接着力の高い耐久性が要求されている。さらに高温地帯での車載用途や、浴室などの高湿環境下などで使用されるタッチパネルについては、沸騰水中での耐久性試験(煮沸試験)においても剥がれが無い事が要求されており、このような過酷な条件下でも接着性が保持され、さらに透明性や干渉ムラといった外観上の問題も生じない事が必要となってきている。
【0004】
上記のハードコートフィルムおよびハードコート用フィルムに対する要求を満たすために、ポリエステルフィルム上に特定の構成の積層膜による易接着層を設けることが一般的に用いられている。接着力の耐久性を増すためには、温度・湿度に強くかつハードコート層との接着力が強い積層膜組成とする必要がある。耐久性を向上させる手法として、例えば樹脂のガラス転移温度を上げる事や樹脂そのものの耐水性向上や架橋成分による補強等が検討されているが、これらの手法はハードコート層との反応性を悪化させ、その結果、初期接着力が悪化しハードコートの硬化工程での生産性があがらない等の問題があった。また、易接着の柔軟性が低下する事で、膜厚均一性が低下し、その結果外観を悪化させる問題もあった。
【0005】
これらの問題を改善するために、種々の積層膜が検討されている。(特許文献1,2,3)
特許文献1では、実質的にカルボン酸基を有さない数平均分子量が15,000以上のポリエステル樹脂と、カルボジイミド化合物を主成分として積層膜が設けられたフィルムについて開示されている。また、特許文献2では、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂と架橋剤からなる積層膜が設けられた耐湿熱接着性に優れたフィルムについて開示さている。また、特許文献3では、カルボジイミド構造を複数個有する化合物を含有する積層膜が設けられた積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−208147号公報
【特許文献2】国際公開第2009/145075号
【特許文献3】特開2009−199001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている方法では、煮沸試験のような過酷な環境下において、密着や外観を保持するには耐久性が不十分であり、また数平均分子量が大きなポリエステル樹脂を使用しているため、易接着層の膜厚均一性を保持する事が難しく、生産において外観のバラツキが大きくなる問題があった。特許文献2に開示されている方法では、さらに耐湿熱接着性を改善するためにポリエステル樹脂中のスルホン酸基量を規定しているが、本技術を用いた場合でも煮沸試験のような過酷な環境下において、接着力や外観を保持するには耐久性が不十分であった。また、特許文献3に開示されている方法は、プリズムシート用の積層フィルムに関するものであり、ハードコートの種類による初期接着力のバラツキが大きく、また接着耐久性についても不十分であった。さらに、ハードコート層を積層させた場合に、ハードコートフィルムの外観が虹色状に見える干渉ムラが目立ち外観に劣る問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、過酷な環境下においてもハードコート層との接着力に優れ、さらに良好な外観を保持することができる積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を用いるものである。
(1).基材ポリエステルフィルム(S)の少なくとも片側表面に易接着層(A)を有する積層ポリエステルフィルムであって、該易接着層(A)が下記(a)〜(b)を満たす樹脂組成物(α)を用いて形成される積層ポリエステルフィルム。
(a)樹脂組成物(α)が、少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを1種以上含有するポリエステル樹脂Aと分子内に2以上のカルボジイミド基を有する多価カルボジイミド化合物Bを含む
(b)前記ポリエステル樹脂Aの酸価をP(当量/t)、多価カルボジイミド化合物のカルボジイミド基量をC(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量をc重量部とした時に、以下式(1)を満たす
0.5≦ (C×c) /(100×P) ≦2.5 ・・・式(1)
(2).前記多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量Cが1,500当量/t以上3,000当量/t以下である(1)に記載の積層ポリエステルフィルム。
(3).前記多価カルボジイミド化合物Bの数平均分子量が1,000以上2,000以下である(1)または(2)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(4).前記ポリエステル樹脂Aが、少なくともガラス転移点が100℃以上、数平均分子量5,000以上15,000以下、重量平均分子量25,000以上50,000以下のポリエステル樹脂を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(5).前記易接着層(A)が、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を、ポリエステル樹脂A100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下含有する樹脂組成物(α)を用いて形成される事を特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(6).フィルムのヘイズが0.5%以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(7).(1)〜(6)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの少なくとも易接着層(A)上にハードコート層を積層してなるハードコートフィルム。
(8).基材ポリエステルフィルム(S)を形成するポリエステル樹脂を溶融しシート状に成型する工程と、長手方向と幅方向に二軸延伸する工程、および少なくともフィルムの片側表面に積層膜を積層する工程を有し、かつ前記易接着層を積層する工程が、基材ポリエステルフィルム(S)の少なくとも片側に以下の樹脂組成物(α)が塗布されることによって易接着層(A)が積層される工程を含む、積層ポリエステルフィルムの製造方法。
(樹脂組成物(α))
少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを含有するポリエステル樹脂Aと、少なくとも分子内に2以上のカルボジイミド基を含有する多価カルボジイミド化合物Bを含有し、樹脂組成物(α)中の該ポリエステル樹脂Aの酸価をP(当量/t)、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量をC(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量をc重量部とした時に、以下式(1)を満たす樹脂組成物。
【0010】
0.5≦ (C×c) /(100×P) ≦2.5 ・・・式(1)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過酷な環境下においてもハードコート層との接着力に優れ、さらに良好な外観を保持することができる積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】DSC曲線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルム(S)の少なくとも片面に樹脂組成物(α)を用いて形成される易接着層(A)が積層される事が必要である。易接着層(A)が無い場合は、フィルム上に積層されるハードコート等の機能層との接着性が不足する。
【0014】
本発明において、分子内に2以上カルボジイミド基を有する多価カルボジイミド化合物Bとしては、例えば、ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成するなどの公知の方法を用いて得ることができる。ポリカルボジイミド化合物の合成原料であるジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。黄変の問題から、芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類が好ましい。
【0015】

また、上記ジイソシアネートは、モノイソシアネート等の末端イソシアネートと反応する化合物を用いて分子を適当な重合度に制御して使用しても差し支えない。このようにポリカルボジイミドの末端を封止してその重合度を制御するためのモノイソシアネートとしては、例えばフェニルイソシアネート、トルイレンイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。また、この他にも末端封止剤としてOH基、NH基、COOH基、SOH基を有する化合物を使用することができる。
【0016】
ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、カルボジイミド化触媒の存在下に進行する事ができる。触媒としては、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドや、これらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドなどが挙げられ、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好ましい。なお、上記触媒の使用量は触媒量とすることができる。又、上記縮合反応における反応温度としては、80℃〜180℃の範囲内とすることが好ましく、反応温度がこの範囲を下回ると反応時間が極めて長くなり、反応温度が上記範囲を上回ると副反応がおこって良質のカルボジイミドは得られなくなり、いずれの場合も好ましくない。更に、縮合度は3以上30以下が好ましく、縮合度が30を超える場合は水分散性が低下する。尚、反応を速やかに完結させるため、窒素等の不活性ガスの気流下にて反応を行う事が好ましい。
【0017】
上記した多価カルボジイミド化合物Bは、その安定性や、樹脂組成物(α)への均一な分散性、架橋反応性の観点から、多価カルボジイミド化合物Bの分子構造内に親水性のセグメントを付加して自己乳化物、あるいは自己溶解物の形態とする事が好ましい。
【0018】
多価カルボジイミド化合物を水溶性にするためには、ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性部位を付加することにより製造することができる。親水性部位としては、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩、反応性ヒドロキシル基を少なくとも1個有するアルキルスルホン酸塩、アルコキシ基で末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの混合物などが挙げられる。多価カルボジイミド化合物Bの安定性や、樹脂組成物(α)を形成する他の樹脂との親和性、易接着層(A)表面の均一性の観点から、アルコキシ基で末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの混合物が親水性部位の好ましい例として挙げられる。アルコキシ基で末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの分子量は100〜1,000が好ましく、より好ましくは200〜800である。分子量が100未満である場合は、親水性が低下する傾向があり、1,000を越えると反応性が低下する事と、多価カルボジイミド化合物B自身の親水性が強くなりすぎるため、耐湿熱耐久性が低下する場合がある。
【0019】
本発明において、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量(当量/t)は1,500以上3,000以下が好ましい。カルボジイミド基量が1,500未満である場合は、架橋反応性が劣る傾向があり、結果として接着力の耐湿熱耐久性(特に、耐煮沸試験における接着耐久性)が低下する場合がある。また、3,000を越える場合は反応性が高くなりすぎて、易接着層(A)の均一性が劣り積層ポリエステルフィルムのヘイズが上昇したり、樹脂組成物(α)の安定性が悪化し、易接着層(A)中の異物が増加する等、外観上の不具合が発生する場合がある。また、多価カルボジイミド化合物Bの数平均分子量は1,000以上2,000以下が好ましい。数平均分子量が1,000未満である場合は、接着力の耐湿熱耐久性(特に、耐煮沸試験における接着耐久性)が悪化する場合があり、また2,000を越える場合は、易接着層(A)の均一性が悪化し、積層ポリエステルフィルムのヘイズが上昇する等、外観が悪化する場合がある。
【0020】
上記、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量C(当量/t)や数平均分子量は、多価カルボジイミド化合物の原材料であるジイソシアネート化合物の種類や縮合反応時の温度・時間を調整する事による縮合度の調整や、導入する親水性部位の種類や分子量を適宜選択することにより、調整することが可能である。なお、多価カルボジイミド化合物B1分子当たりのカルボジイミド基の含有量(1分子あたりのカルボジイミド基数)およびカルボジイミド基量C(当量/t)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定し得られた多価カルボジイミド化合物Bの分子量と、原料として用いたジイソシアネート化合物および親水性部位を形成する化合物から想定される多価カルボジイミド化合物の理論化学式との比較により算出されたジイソシアネート化合物の縮合度を用いて、算出する事が出来る。例えば、両末端基に親水性部位を有する多価カルボジイミド化合物の平均縮合度nは、原料として用いたジイソシアネート化合物の分子量をMa、親水性部位を形成する化合物の分子量をMb、GPCにて測定された多価カルボジイミド化合物の数平均分子量をMcとすると、縮合反応に脱離する二酸化炭素(CO)の分子量が44である事から、方程式「n*Ma−(n−1)*44+2*Mb=Mc」を解くことで平均縮合度nを得ることができる。
【0021】
本発明において、樹脂組成物(α)は、少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを1種以上含有するポリエステル樹脂Aを含むことが必要である。前記、多価カルボジイミド化合物Bとポリエステル樹脂中に含有されるカルボキシル末端基が架橋反応する事により、易接着層(A)の耐湿熱耐久性が向上すると考えられる。少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いるポリエステル樹脂xは、前記多価カルボジイミド化合物との多くの反応点を形成し、ポリエステル樹脂xの分子鎖間、または基材ポリエステル層(S)や易接着層(A)の表面に形成されるハードコート層などの機能層とポリエステル樹脂xとの間で架橋反応が進む事により耐湿熱耐久性を高める事ができる。さらにポリエステル鎖に分岐鎖を導入する事ができる事から、ポリエステル鎖が交絡する事で耐久性を向上することが出来ると考えられる。
【0022】
本発明において、ポリエステル樹脂xの酸価は500当量/t以上である事が必要であり、好ましくは800当量/t以上である。この様に架橋反応点が多いポリエステル樹脂xをポリエステル樹脂A中に含有することで、局所的に強固な架橋構造を形成する事ができるため、耐湿熱耐久性が大幅に向上すると考えられる。ポリエステル樹脂xの酸価が500当量/t未満である場合は、耐湿熱接着性が不足する。ポリエステル樹脂A中には、ポリエステル樹脂x以外の他のポリエステル樹脂を含有しても良いが、耐湿熱耐久性の観点からポリエステル樹脂Aの酸価Pは300当量/t以上とする事が好ましい。また、ポリエステル樹脂xはポリエステル樹脂A100重量部に対し、30重量部以上含有することが好ましく、さらに好ましくは40重量部以上である。
【0023】
本発明において、前記ポリエステル樹脂Aの酸価をP(当量/t)、多価カルボジイミド化合物
のカルボジイミド基量をC(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量をc重量部とした時に、以下式(1)を満たす事が必要である。
0.5≦ (C×c) /(100×P) ≦2.5 ・・・式(1)
上記は樹脂組成物(α)を形成する樹脂中において、架橋反応を形成しうるポリエステル樹脂A中の酸成分(カルボン酸成分)と多価カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基量の官能基数の比率を表したものであり、値が小さいとカルボジイミド基量が相対的に少なく、値が大きいとカルボジイミド基量が相対的に多いことを表している。「(C×c) /(100×P)」の値が0.5未満であった場合は架橋が不十分となり耐湿熱耐久性が低下し、値が2.5を越える場合は未反応のカルボジイミド化合物が増加する事で、耐湿熱耐久性が低下したり、干渉ムラが悪化する事がある。なお、耐湿熱性とフィルム外観(干渉ムラ)を考慮した場合、「(C×c) /(100×P)」の値は1.0以上2.0未満がさらに好ましい範囲として挙げられる。
【0024】
本発明において、前記ポリエステル樹脂A中にガラス転移点(Tg)が100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、数平均分子量が5,000以上15,000以下、重量平均分子量が25,000以上50,000以下のポリエステル樹脂を少なくとも1種以上含有することが好ましい。ガラス転移点(Tg)が100℃未満である場合や、数平均分子量が5,000未満、重量平均分子量が25,000未満である場合は、耐煮沸試験における接着耐久性が劣る傾向が見られる。ガラス転移点(Tg)が100℃未満の場合は、耐煮沸試験中において温度が易接着層(A)中のポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)以上となるため、ポリエステル樹脂の分子鎖が動きやすく、その結果、分子間に水分子が侵入しやすく加水分解反応が促進されると考えられる。また、数平均分子量が5,000未満、重量平均分子量が25,000未満である場合は、ポリエステル樹脂の分子鎖が短く、分子鎖が動きやすい状況になっており、その結果加水分解速度が早くなっていると考えられる。ポリエステル樹脂の分子鎖の動きを有る程度拘束し、耐湿熱耐久性を得るためには、ガラス転移点(Tg)が100℃以上で、かつ長い分子鎖成分を一定以上含有した数平均分子量を5,000以上、重量平均分子量を25,000以上のポリエステル樹脂を含有することが好ましい。また、数平均分子量が15,000を越えたり、重量平均分子量が25,000を越える場合は、分子鎖の運動性が悪化するために、積層フィルム製造時において、易接着層(A)の膜厚均一性が悪化したり、易接着層の表面に微小なクラックが入り積層フィルムのヘイズが上昇する事があり好ましくない。
【0025】
本発明の樹脂組成物(α)に含有するポリエステル樹脂Aとは、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するポリエステル樹脂の事を指し、以下のI)またはII)の方法によって得ることができる。また、I)とII)を併用する方法(ジカルボン酸成分、グリコール成分、および1以上のアルコール性の官能基(ヒドロキシル基)と1以上のカルボキシル基を有する成分を構成成分とし、これらを重縮合反応せしめる方法)を用いても良い。
I)ジカルボン酸成分と、グリコール成分とを構成成分とし、両者を重縮合反応せしめる方法。
II)1以上のアルコール性の官能基(ヒドロキシル基)と、1以上のカルボキシル基を有する成分を構成成分とし、重縮合反応せしめる方法。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂A中に含有されるポリエステル樹脂xは、少なくともカルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られる。少なくともカルボン酸基数が3以上である成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)等の多価カルボン酸の他、酸無水物を用いることもできる。具体的には、1,2,4,5−ブタンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,4,5,−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、カルボン酸基数が3以上である成分の共重合に際しては、ジカルボン酸成分とグリコール成分を反応させたポリエステルポリオール(ポリエステルオリゴマー)に、3価以上の多価カルボン酸無水物を反応させることでポリエステル樹脂の側鎖にカルボキシル基を導入する方法を用いることが好ましい。かかる方法を用いることで、ポリエステル樹脂の側鎖にカルボキシル基をより効率的に導入する事ができる。また、ポリエステル樹脂x中に用いられるカルボン酸基数が3以上である成分の含有量は、ポリエステル樹脂xに用いられるカルボン酸基数が2以上である成分の合計量を100モル部とした時に、5〜30モル部が好ましく、より好ましくは8〜20モル部である。含有量が5モル部未満である場合は、酸価500当量/t以上を達成するためには、ポリエステル鎖の分子量が小さくなりすぎるため、接着性や接着の耐湿熱耐久性が劣る場合がある。また30モル部を越える場合は、ポリエステル樹脂がゲル化しやすく、樹脂の安定性が悪化する事がある。
【0027】
本発明において、ポリエステル樹脂A中に含有するガラス転移点(Tg)が100℃以上のポリエステル樹脂に用いられる構成成分として、少なくとも1種がナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有している事が好ましい。ポリエステル樹脂にナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格のような高剛性の成分を付与せしめることでポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)を上げることができ、上述のとおり耐湿熱耐久性を向上させることができる。さらに、フルオレン骨格および/またはナフタレン骨格を付与せしめることでポリエステル樹脂の高屈折率化が可能となり、後述する様な易接着層(A)上にハードコート層を積層した際の干渉ムラを低減する事ができる。
【0028】
ナフタレン骨格又はフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分としては、例えば、9,9−ビス(t−ブトキシカルボニルメチル)フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)エチル]フルオレン、9,9−ビス[1−(t−ブトキシカルボニル)エチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−シクロヘキシルエチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−フェニルエチル]フルオレン、9,9−ビス[1−(t−ブトキシカルボニル)プロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)プロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルエチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルプロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)ブチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルブチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(t−ブトキシカルボニル)ペンチル]フルオレン、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0029】
また、ナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を有するグリコール成分としては9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ) 10−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、1,4−ジヒロドキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂において、上述したカルボン酸基数が3以上である成分、ナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有する成分の他に、例えば以下の成分を用いることができる。ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。また、かかる脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができるが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0031】
本発明における易接着層(A)は、易接着層(A)上にハードコート層を積層した場合に生ずる干渉ムラを改善する観点において、本発明にかかる易接着層(A)側における反射光が可視光領域で最も小さくなるように設計する事が好ましい。ハードコートフィルムの干渉ムラは、空気/ハードコート層界面での反射光とハードコート層/フィルム層界面の反射光が干渉する事により発生するため、ハードコート層/フィルム層界面の反射光を極力小さくすることで、干渉ムラを抑制する事が可能となる。上記の様な特性を有するために本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、易接着層(A)側の表面反射率が極小値となる波長λminが480〜600nmの間に存在する事が好ましく、より好ましくは500nm〜580nmの間に存在する事である。波長λminが可視光領域の中心に近い480〜600nmの範囲にある場合は、干渉ムラが見えにくく良好であるが、上記の範囲を外れる場合は干渉ムラが悪化する傾向がある。反射率が極小となる波長λminは、空気層/易接着層(A)間界面の反射光と易接着層(A)/基材ポリエステルフィルム(S)界面の反射光が互いに逆位相となって打消し合っていると考えられ、両者の光が進む光路長の差(易接着層(A)の厚み×易接着層(A)の屈折率×2)が波長480〜600nmの1/2となる様に易接着層(A)の組成及び厚さを調整することで達成される。
【0032】
また、本発明において、易接着層(A)側の表面反射率が極小値となる波長λminでの反射率Rminが4.5%以上5.5%以下である事が好ましく、さらに好ましくは4.8%以上5.2%以下である。Rminが上記の範囲を外れる場合は、干渉ムラが悪化する場合がある。易接着層(A)と基材ポリエステルフィルム(S)の屈折率差、および易接着層(A)とハードコート層との屈折率差が同程度である事が、ハードコート層/易接着層(A)間および易接着層(A)/基材ポリエステルフィルム(S)間界面での反射率が小さくなるため好ましい。一般的なハードコート層の屈折率は1.45〜1.55、基材ポリエステルフィルム(S)の屈折率は1.60〜1.70であり、その範囲において上記の干渉ムラが良い状態を保つためには、積層ポリエステルフィルムの易接着層(A)側の反射率Rminが前述の範囲となることが好ましい。
【0033】
λminおよびRmin値を上記の範囲とする方法として、具体的には易接着層(A)の屈折率を1.55〜1.60の範囲に、易接着層(A)の厚みを70〜110nmの範囲で、その組み合わせを調整することが好ましい方法として挙げられる。易接着層(A)の屈折率を向上させ、Rminを上記の範囲に調整する手段としては、特には限定されないが、易接着層(A)中に屈折率を調整するための樹脂成分を導入したり、あるいは金属粒子や中空粒子を含有させる等の方法が挙げられする。本発明においては、易接着層(A)を構成する樹脂組成物(α)中に含有されるポリエステル樹脂Aにおいて、上述したナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を含有する成分を用いる方法が、接着性や透明性、生産性の観点で好ましい例として挙げられる。
【0034】
本発明における易接着層(A)において、ハードコート層との接着性や耐湿性を向上させるために、樹脂組成物(α)中に、カルボジイミド以外の架橋剤成分を導入することが出来る。具体的には、ハードコート層との接着性の観点からメラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有することが特に好ましく、その含有量は樹脂組成物(α)中に含まれるポリエステル樹脂Aを100重量部とした時に、10〜50重量部が好ましい。含有量が10重量部未満である場合は、接着力の耐湿熱耐久性(特に、耐煮沸試験における接着耐久性)の向上効果が不十分である場合があり、また50重量部を越えると、樹脂組成物(α)の安定性が悪化したり、易接着層(A)中の異物欠陥が増加する場合がある。
【0035】
本発明で用いられるメラミン系架橋剤は、特には限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。またメラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0036】
また、本発明に用いることができるオキサゾリン系架橋剤は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。また、イソシアネート架橋剤としては該化合物中に官能基としてイソシアネート基、またはイソシアネート基の安定性向上のためにブロック剤を導入したイソシアネート基を分子内に1個または2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではない。
本発明において、樹脂組成物(α)の表面張力を低下させ、欠陥個数を低減させるために、樹脂組成物(α)中に界面活性剤を添加させても良く、その含有量はポリエステル樹脂A100重量部に対して0.5重量部以下が好ましい。本発明で添加する界面活性剤は、特に限定される物ではなく、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、イオン性界面活性剤(例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドなど)、フッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられ、これらを1種あるいは2種以上を混合して用いても良い。中でもフッ素界面活性剤が易接着層(A)の均一性および塗布欠陥抑制にすぐれており好ましい。しかしながら、界面活性剤が易接着層(A)に残存することで、易接着層(A)とハードコート層の初期接着性が低下したり、耐湿熱接着性が悪化する場合があるため、含有量は可能な限り少ない方が好ましい。
【0037】
本発明において、樹脂組成物(α)中に微粒子を含有させると、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので更に好ましい。使用する微粒子としては、本発明効果を阻害しない範囲内で特に限定されないが、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、“テフロン”(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられ、これら粒子のいずれを用いてもあるいは複数種を併用してもよい。これら粒子の数平均一次粒径(以下、単に平均一次粒径ということがある。)は、10〜600nmの範囲内であることが好ましい。ここで平均一次粒径とは、JIS H7008(2002)において単一の結晶核の成長によって生成した粒子と定義される一次粒子の粒子径の平均である。粒子の平均一次粒径は、より好ましくは20〜500nmの範囲内、さらに好ましくは20〜400nmの範囲内である。なお粒子には、単分散粒子を用いても、複数の粒子が凝集した凝集粒子を用いてもよい。また、場合によっては平均一次粒径の異なる複数種の粒子を併用してもよい。粒子の添加量は、易接着層(A)の厚みや樹脂組成、平均一次粒径、求められる易滑性や用途などによって適切に調節設計されるべきであるが、易接着層(A)全体を100重量部とした時に0.05〜8重量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲内である。平均一次粒径が10nm未満である場合や粒子添加量が0.05重量部未満である場合は、易滑性や耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、平均一次粒径が600nmを越える場合や粒子添加量が8重量部を越える場合は粒子が脱落したり、外観が悪化する傾向がある。
【0038】
更に本発明にかかる樹脂組成物(α)には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤、核剤、たとえばアクリル系樹脂など他の樹脂などが配合されてもよい。
【0039】
本発明の易接着層(A)を基材ポリエステルフィルム(S)に積層するにあたり、易接着層(A)を形成する樹脂組成物(α)を基材ポリエステルフィルム(S)上に塗布する方法が好ましい方法として挙げられる。かかる塗布方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程とは別工程で塗布を行う方法、いわゆるオフラインコーティング方法と、ポリエステルフィルムの製造工程中に塗布を行い、易接着層(A)が積層された積層ポリエステルフィルムを一気に得る、いわゆるインラインコーティング方法の両方を用いる事が可能である。本発明ではコストの面や、塗布厚みの均一化の面からインラインコーティング方法を採用することが好ましく、その場合に用いる塗液の溶剤は、環境汚染や防爆性の点から水系であることが最も好ましい。
【0040】
上記塗布工程における塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法などを用いることができるが、易接着層(A)の厚みムラを低減するためにはグラビアコート法およびバーコート法が好ましく、特に好ましくは計量バーによるバーコート方式である。バーコートにて使用される上記計量バーの直径は特には限定されないが通常10〜30mmの範囲である。また、計量のための溝は、ワイヤーを円筒形の部材に巻き付けたワイヤーバー方式でもよいし、部材表面に螺旋状溝を掘った方式のものを用いても良い。なお、計量バーは振れ量が150μm以下、更に好ましくは100μm以下であるものを用いることで、塗布均一性が安定するため好ましい。
【0041】
本発明にかかる基材ポリエステルフィルム(S)を構成するポリエステルは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが特に好ましい。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0042】
上述した基材ポリエステルフィルム(S)を構成するポリエステルの極限粘度(JIS K7367(2000)に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲内である。
【0043】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0044】
本発明における、基材ポリエステルフィルム(S)は二軸配向ポリエステルフィルムである事が好ましい。ここで言う「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5〜5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了させることにより、得ることができる。また、基材ポリエステルフィルム(S)は、自身が2層以上の積層構造体であっても良い。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部と有する複合体フィルムであって、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができ、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。本発明の主目的とするタッチパネルやディスプレイ用途においては、基材ポリエステルフィルム(S)中の粒子含有量は可能な限り低減した方が、透明性などの光学特性上好ましい。
本発明において、基材ポリエステルフィルム(S)の厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは38〜250μmである。
本発明において、積層ポリエステルフィルムのヘイズは1.0%以下が好ましく、さらに好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。特にタッチパネルやディスプレイ材料として用いられる場合は、その外観上の要求から積層ポリエステルフィルムの透明性が重要視されている。ヘイズを0.5%以下とするための方法は特には限定されないが、光の散乱を抑制するために基材ポリエステルフィルム(S)中に粒子を含有させない方法や、易接着層(A)表面での光の拡散を防止するために、易接着層(A)に含まれる、易滑粒子量を上述の範囲としたり、易接着層(A)表面を均一化するために、易接着層(A)を形成する樹脂組成物(α)中に含有されるポリエステル樹脂の分子量や多価カルボジイミド化合物の分子量を上述の範囲とする方法が好ましい方法として挙げられる。
【0045】
次に本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法を、基材ポリエステルフィルム(S)としてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルムを用いた場合を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0046】
基材ポリエステルフィルム(S)を構成する極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押出機に供給し260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製した。この未延伸フィルムを70〜100℃に加熱されたロール間で長手方向に2.5〜5.0倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面に空気中でコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に樹脂組成物(α)を塗布する。この塗布された積層フィルムをクリップで把持して乾燥ゾーンに導き、塗布層を乾燥させた後に75〜95℃の温度まで加熱乾燥を行い、引き続き連続的に90〜115℃の加熱ゾーンで幅方向に3.0〜5.0倍延伸し、続いて200〜240℃の加熱ゾーンで5〜60秒間熱処理を施し、100〜200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向の完了した基材ポリエステルフィルム(S)上に易接着層(A)が積層されたポリエステルフィルムを得る。なお、上記熱処理中に必要に応じて3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は長手方向、幅方向に逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また長手方向および幅方向に延伸後、長手方向あるいは幅方向のいずれか、あるいは両方向に再延伸してもよい。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの端部をカットした後に巻き取り中間製品とし、その後スリッターを用いて所望の幅にカット後、円筒状のコアに巻き付け所望の長さのポリエステルフィルムロールを得ることができる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルム両端部にエンボス処理を施しても良い。
【0047】
次に本発明にかかる積層ポリエステルフィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムについて述べる。
【0048】
本発明において、ハードコート層を構成する材料は特に限定されるものではなく、可視光線を透過するものであればよいが、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂などである。特に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂は、耐擦傷性、生産性などの点で好適に用いることができる。
【0049】
ハードコート層の構成成分として用いられる活性線硬化型樹脂は、該活性線硬化型樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフィド、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4− (メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いる。
【0050】
また、これら多官能(メタ)アクリル系化合物とともに、活性線硬化型樹脂の硬度、透明性、強度、屈折率などをコントロールするため、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジメタリルフタレート、ジアリルビフェニレート、あるいはバリウム、鉛、アンチモン、チタン、錫、亜鉛などの金属と(メタ)アクリル酸との反応物などを用いることができる。これらは1種もしくは2種以上を用いてもよい。
【0051】
なお、「(メタ)アクリル系化合物」という記載は、「メタアクリル(メタクリルともいう)系化合物およびアクリル系化合物」を略して表示したものであり、他の化合物についても同様である。
【0052】
活性線硬化型樹脂を硬化させる方法として、例えば、紫外線を照射する方法を用いることができるが、この場合には、前記化合物に対し、0.01〜10重量部程度の光重合開始剤を加えることが望ましい。
【0053】
本発明に用いる活性線硬化型樹脂には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を配合することができる。
【0054】
本発明において活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点から有利である。
【0055】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、易接着層(A)表面との界面における屈折率差が小さくなるよう調整されることで、干渉縞の原因となる光反射を抑制することが出来る。かかるハードコート層の屈折率は、1.45〜1.55であることが好ましく、1.48〜1.53がより好ましい。またハードコート層の厚みは、使用用途などによって適切に調節設計されるべきものであり、特に限定されるものではないが、通常は1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。ハードコート層の厚みがかかる好ましい範囲であるとハードコート性が十分に発現し、一方、ハードコート層の硬化時の収縮によりフィルムがカールすることもない。
【0056】
本発明においては、ハードコート層の表面に、ちらつきを抑えるための反射防止層を設けたり、また、汚れ防止のための防汚処理を施すことが好ましい。
【0057】
特に、本発明では、ハードコート層の上に反射防止層たる高屈折率ハードコート層および低屈折率層をこの順に積層し、これを反射防止フィルムとして用いても良い。反射防止層は特に限定されるものではないが、低屈折率化合物の積層やフッ化マグネシウムや酸化ケイ素などの無機化合物のスパッタリングや蒸着などにより形成することができる。防汚処理については、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などによる防汚処理を施すことができる。
【0058】
前記のようなハードコートフィルムの各界面で生じる干渉ムラは、ハードコート層側の分光反射率スペクトルのうねり振幅を小さくすることで低減させることができる。本発明にかかる積層ポリエステルフィルムを用いた光学フィルムにおいては、前述した易接着層(A)を有するポリエステルフィルムとハードコート層との積層構成を用いることで、干渉ムラのないハードコートフィルムを形成することができるのでより好ましい。
【実施例】
【0059】
[測定方法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各種物性の測定方法を記載する。
(1).ポリエステル樹脂の酸価(P)
ポリエステル樹脂2.0gを、水/1,4−ジオキサン(体積比1/9)100mLに温度80℃にて溶解し、クレゾールレッドを指示薬として、0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液によって滴定した。中和に消費された水酸化カリウム量から、ポリエステル樹脂の酸価を、当量/ポリエステル1tの値で示した。
(2).カルボジイミド化合物の数平均分子量、分子内のカルボジイミド基数ならびにカルボジイミド基量(C)
(A)数平均分子量の測定
多価カルボジイミド化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件にて測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた。なお、測定は2回実施しその平均値とした。
・装置 :東ソー(株)製GPC−17
・検出機:東ソー(株)製RI8020(示差屈折率検出機)
・カラム:東ソー(株)製TSKgel α−M、TSKgel α−3000
・展開溶媒:テトラヒドロフラン、0.7mL/分
・温度 :40℃
(B)分子内の平均カルボジイミド基数
得られた数平均分子量と、多価カルボジイミド化合物の理論化学式との比較により算出される、多価カルボジイミド化合物を形成する構成成分であるジイソシアネート化合物の平均縮合度nを算出し、平均縮合度nから分子内に存在する平均カルボジイミド基数を得た。
【0060】
(C)カルボジイミド基量C(当量/t)
(B)項にて得られた平均カルボジイミド基数と数平均分子量から、カルボジイミド化合物1tあたりのカルボジイミド基量C(当量/t)を算出した。
(3).ポリエステル樹脂の数平均分子量ならびに重量平均分子量
ポリエステル樹脂の数平均分子量ならびに重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件にて測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた。なお、測定は2回実施しその平均値とした。
・装置 :東ソー(株)製GPC−17
・検出機:東ソー(株)製RI8020(示差屈折率検出機)
・カラム:東ソー(株)製TSKgel α−M、TSKgel α−3000
・展開溶媒:ジメチルアセトアミド(0.05M LiCl添加)、0.7mL/分
・温度 :40℃
(4).ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)
セイコー電子工業(株)製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続した装置を用いて測定を実施した。試料(樹脂固形物)10mgをアルミニウムパンに秤量し、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素にて急冷処理を実施した。その後20℃/分の速度で昇温しながら測定を実施し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線より以下方法によりガラス転移温度(Tg)を算出した。ガラス転移温度(Tg)近傍に、DSC曲線に沿って2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線とDSC曲線の交点からガラス転移温度(Tg)を算出した。(図1参照)。
(5).ヘイズ
JIS K7105(1981)6.4ヘーズ(曇価)に準じて積層フィルムのヘイズを測定した。
(6).ハードコート層との初期接着力評価
(A)ハードコートフィルムの調整
ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂(日本合成化学工業(株)製 紫光UV−1700B[屈折率:1.50〜1.51])を積層ポリエステルフィルムの易接着層(A)表面上にバーコーターを用いて硬化後の膜厚が1.5μmとなるように均一に塗布した。次いで、ハードコート層の表面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H03−L31)で、積算照射強度が150mJ/cmとなるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層されたハードコートフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
【0061】
(B)初期接着性
上記ハードコートフィルムのハードコート層に、1mmのクロスカットを100個入れた。作業は、下記の点を除きJIS K5600−5−6(1999)の7項の手順に従って行った。
・試験条件及び試験数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.1項に規定にかかわらず、試験条件は23℃、相対湿度65%とした。また、試験数は1とした。
・試験板の養生:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.2項に規定にかかわらず、養生条件は、23℃、相対湿度65%とし、養生時間は1時間とした。
・カット数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.3項に規定にかかわらず、カット数は11とした。
・カットの間隔:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.4項に規定にかかわらず、カットの間隔は1mmとした。
・手動手順による塗膜の切込み及び除去:JIS K5600−5−6(1999)の7.2.5項の規定は準用しないものとする。すなわち、はけを用いたブラッシングは行わないものとする。また、JIS K5600−5−6(1999)の7.2.6項は第2段落の規定(「テープの中心を、JIS K5600−5−6(1999)の図3に示されるように角カットの一組に平行な方向で格子の上に置き、格子の部分にかかった箇所と最低20mmを超える長さで、指でテープを平らになるようにする」)のみ準用し、他の規定は準用しないものとする。なお、テープはセロハンテープ(ニチバン(株)製 セロテープ(登録商標)CT405AP)を用いるものとする。
また、テープの貼付けは、ハンドローラー((株)オーディオテクニカ製 HP515)を用いて、荷重19.6N/mでローラー移動速度5cm/秒で3往復させ押しつけることによって行った。次いで、テープをハードコート層表面方向に対して90度方向に秒速10cm/秒の早さで引きはがし、ハードコート層に設けた格子の残存個数により5段階評価を行った。5を初期接着性がきわめて良好、4を良好、3を実用レベル、2以下を初期接着性が不良とした。
【0062】
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(7).ハードコート層との耐煮沸接着性評価
(6)項の方法にて調製したハードコートフィルムを純水からなる沸騰水(100℃)中に規定時間(2時間、5時間、12時間)放置し、耐煮沸接着性試験用サンプルを得た。得られた耐湿熱接着試験用サンプルについて、(6)(B)と同様の方法で、接着性試験を行い、残存した格子の個数により5段階評価を行い、耐湿熱接着指数とした。規定時間2時間の時の耐湿熱接着指数が5を耐湿熱接着性が良好、4を実用レベル、3以下を耐湿熱接着性が不良とし、4以上が合格とした。また、規定時間5時間の時の耐湿熱接着指数が5を極めて良好、4を良好、3を実用レベル、2以下を不良とし、3以上を合格とした。なお、規定時間12時間の試験は、非常に高いレベルの耐湿熱性を評価するために実施したものであり、合否の判定は実施しなかった。
【0063】
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(8).分光反射率
反射率の測定は、測定面の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛みこまないように(A)の方法で採取したサンプルの中央部に、サンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、該サンプルの中央部から約40mm角のサンプル片に切り出し、分光光度計(島津製作所(株)製 UV2450、鏡面反射率測定ユニットを使用)にて入射角5°での分光鏡面反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl板を用いた。反射率は波長400〜700nmの範囲で測定し、反射率が極小と成る波長をλmin(nm)、波長λmin(nm)での反射率をRmin(%)とした。
(9).干渉ムラ
(5)項と同様の方法でハードコートフィルムを得た。次いで、得られたハードコートフィルムから、幅方向1m、長手方向1mのサンプルを採取した。 得られたサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点から8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(松下電器産業(株)製 3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉縞の程度を観察し、以下の評価を行った。実用レベルのものはBとし、S,Aのものは良好、Cは不合格とした。なお、干渉ムラは(1)(A)と同様の方法にてハードコートフィルムロールからサンプリングした。結果の判定は以下基準で実施し、S,Aが良好、Bが実用レベル、Cが不合格である。
【0064】
S :いずれのサンプルも干渉ムラがほぼ見えない
A :一部および/またはすべてのサンプルにおいて干渉ムラがわずかに見える。
【0065】
B :一部および/またはすべてのサンプルにおいて弱い干渉ムラが見える。
【0066】
C :一部および全てのサンプルにおいて干渉ムラが強い。
(10).易接着層(A)の層厚み
幅方向1m×長手方向1m長のサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点を測定サンプルとして用いた。フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO染色、OsO 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で断面構造が目視可能な以下の条件にて観察し、その断面写真からC層の厚みを測定した。測定値は、4点の平均値を用いた。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法
・倍率:30万倍。
【0067】
次に、各実施例・比較例で用いる樹脂等の調製法を参考例として示す。
【0068】
[参考例1] 多価カルボジイミド(b1)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて20時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量200)37重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40重量%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,500であり、理論化学式より算出した平均縮合度は5.1、1分子あたりのカルボジイミド基数は4.1、カルボジイミド基量は2,730当量/tであった。
【0069】
[参考例2] 多価カルボジイミド(b2)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて32時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)38重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40重量%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は2,950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は10.2、1分子あたりのカルボジイミド基数は9.2、カルボジイミド基量は3,120当量/tであった。
【0070】
[参考例3] 多価カルボジイミド(b3)の調製
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて15時間反応させ、イソシアネート末端4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部と2−ジメチルアミノエタノール24重量部を80℃で24時間反応させた後、p−トルエンスルホン酸メチル50重量部を加えて1時間撹拌し末端アミンを4級化した。これに蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端が封止された4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は3.4、1分子あたりのカルボジイミド基数は2.4、カルボジイミド基量は2,530当量/tであった。
【0071】
[参考例4] 多価カルボジイミド(b4)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて21時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)73重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,900であり、理論化学式より算出した平均縮合度は5.3、1分子あたりのカルボジイミド基数は4.3、カルボジイミド基量は2,260当量/tであった。
【0072】
[参考例5] 多価カルボジイミド(b5)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて26時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量800)120重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は2,950であり、理論化学式より算出した平均縮合度は6.5、1分子あたりのカルボジイミド基数は5.5、カルボジイミド基量は1,860当量/tであった。
【0073】
[参考例6] 多価カルボジイミド(b6)の調製
m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(分子量244)100重量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)2重量部を窒素気流下180℃にて13時間反応させ、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体を得た。次いで、得られたカルボジイミド重合体100重量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)125重量部を100℃で48時間反応させた後に蒸留水を樹脂濃度が40%となる様に加えて、両末端がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されたテトラメチルキシリレンカルボジイミド重合体の水溶液を得た。得られたカルボジイミド重合体の数平均分子量は1,450であり、理論化学式より算出した平均縮合度は3.0、1分子あたりのカルボジイミド基数は2.0、カルボジイミド基量は1,380当量/tであった。
【0074】
[参考例7] ポリエステル樹脂(x1)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)85モル部、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)140モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で3時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。
【0075】
その後、3価以上の多価カルボン酸成分である1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(TMA)15モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(x1)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは60℃、酸価は890当量/t、数平均分子量は4,000、重量平均分子量は14,500であった。
<ポリエステル樹脂(A1)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・テレフタル酸(TPA) 85モル部
・1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(TMA) 15モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール(EG) 100モル部
[参考例8] ポリエステル樹脂(x2,x3,y1,y4)の調製
表2に示した通りのジカルボン酸成分並びにグリコール成分を用いて、分子量調整のために反応時間を調整した以外は参考例7と同様にしてポリエステル樹脂(x2,x3,y1,y4)を得た。なお、表2中のNDCAは2,6−ナフタレンジカルボン酸、SSIAは5−スルホイソフタル酸ナトリウム、PMAは1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、DEGはジエチレングリコール、BPEFは9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを指す。なお、x2とy4はジカルボン酸および多価カルボン酸成分の合計100モル部に対して、エチレングリコール(EG)とジエチレングリコール(DEG)をそれぞれ112モル部と28モル部をエステル交換反応器に仕込みポリエステル樹脂を製造した。また、x3は1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の替わりに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸を用いた。得られたポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
【0076】
[参考例9] ポリエステル樹脂(y2)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)88モル部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(SSIA)12モル部、グリコール成分としてエチレングリコール140モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で6時間エステル化反応を行った後、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(y2)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは120℃、酸価は40当量/t、数平均分子量は10,000、重量平均分子量は37,000であった。
<ポリエステル樹脂(y2)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA) 88モル部
・5−スルホイソフタル酸ナトリウム(SSIA)12モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール 100モル部。
【0077】
[参考例10] ポリエステル樹脂(y3,y5,y6)の調製
表2に示した通りのジカルボン酸性分並びにグリコール成分を用いて、分子量調整のために反応時間を調整した以外は参考例9と同様にしてポリエステル樹脂(y3,y5,y6)を得た。得られたポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
【0078】
[参考例11] ポリエチレンテレフタレートペレット(PET)の調製
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、酸価40当量/tのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
【0079】
[実施例1]
参考例11の方法で得られたポリエチレンテレフタレートペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。なお、この時キャスティングドラムの反対面から温度10℃の冷風を長手方向に8段設置した間隙2mmのスリットノズルから風速20m/sでフィルムに吹き付け、両面から冷却を実施した。
【0080】
この未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向(一軸延伸)フィルムとした。このフィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとした。
【0081】
次いで、易接着層(A)を形成するために、下記塗液(樹脂組成物(α))を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。
【0082】
<塗液(樹脂組成物(α))>
ポリエステル樹脂成分を100重量部とした時に以下成分と、塗液として以下の溶媒を含有する、ポリエステル樹脂固形分換算の濃度が5.0重量%である水溶液。(成分)
・ポリエステル樹脂(x1) :50重量部
・ポリエステル樹脂(y1) :50重量部
・多価カルボジイミド化合物(b1) :30重量部
・メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”MW22:20重量部(有効成分換算)
・平均一次粒径140nmのコロイダルシリカ:1.5重量部
樹脂組成物(α)を塗布した1軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて10秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、基材ポリエステルフィルム(S)に、厚さ84nmの易接着層(A)が積層された合計厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0083】
得られた積層フィルムの特性を表4に示す。ハードコート層との初期接着ならびに煮沸試験後の耐湿熱接着性に優れ、高透明であり、かつハードコート層を積層した時の状態も非常に良好であった。
【0084】
[実施例2〜28,比較例1〜11]
易接着層(A)の組成を、表1、表2、表3−1、表3−2の通りとした以外は実施例1に従い積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を表4−1,表4−2に示す。なお表3−1、表3−2中の各種架橋剤の成分は以下の通り。
・オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”WS700
・イソシアネート系架橋剤(第一工業製薬(株)性“エラストロン”H3
<結果の検証>
易接着層(A)を形成する樹脂組成物(α)が、カルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂xを含有するポリエステル樹脂Aと多価カルボジイミド化合物Bからなり、かつポリエステル樹脂Aの酸価P(当量/t)、カルボジイミド基量C(当量/t)、ポリエステル樹脂Aを100重量部とした時の多価カルボジイミド化合物Bの含有量c重量部の関係が式(1)を満たす場合に、初期接着性ならびに耐湿熱耐久性が良好な結果となり、式(1)の範囲が1.0〜2.0である場合にさらに良好な結果であった。
【0085】
また、多価カルボジイミド化合物Bのカルボジイミド基量Cが3,000当量/tを越えた実施例8や、1,500当量/t未満の実施例11は実施例3との比較で、耐湿熱性が低下傾向であった。また分子量については、1,000未満の実施例9は耐湿熱性が低下傾向であり、2,000を越える実施例8,10については、フィルムのヘイズが上昇したことから、多価カルボジイミド化合物のカルボジイミド基量は1,500〜3,000当量/tの範囲が、分子量が1,000〜2,000の範囲が耐湿熱性と外観性の観点から、より好ましい範囲であった。
【0086】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が100℃以上の樹脂を含有しなかったり、重量平均分子量が25,000以上の樹脂を含有しなかった実施例12では耐湿熱性がやや悪化傾向であり、また重量平均分子量が50,000以上のポリエステルを含有した実施例13では、易接着層(A)が白っぽく、フィルムのヘイズが上昇するなど外観がやや劣る結果であった。ポリエステル樹脂中に、Tgが100℃以上の樹脂を含有し、また、重量平均分子量が25,000〜50,000の範囲の樹脂を含有する事が耐湿熱性と外観性の観点から、より好ましい範囲であった。
【0087】
上記の好ましい範囲を満たした場合は、12時間の煮沸試験というような非常に過酷な試験条件においても、ハードコート層との接着性が良好となった。特に、実施例3,15,17,18,22,23,24,26,28においては、12時間煮沸試験後でも剥がれが全く無いか、ほとんど無く、非常に優れた耐湿熱特性を有していた。
【0088】
一方、比較例1〜4の様に式(1)が規定の範囲を満たさない水準や、カルボン酸基数が3以上である成分を用いて得られた酸価が500当量/t以上のポリエステル樹脂を含有していない比較例5〜10、さらに分子内に2以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミドを含有していない比較例11においては、接着力の耐湿熱耐久性が不合格であった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3-1】
【0092】
【表3-2】
【0093】
【表4-1】
【0094】
【表4-2】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、ハードコート層との初期接着性および過酷な条件での耐湿熱接着性を有し、また、ハードコート層を設けたときに干渉ムラが抑制された良好な外観特性を発現する事が可能である。さらに、生産性・安定性にも優れ、ハードコート用フィルムとして有用である。特に、モバイル機器等に使用される表面保護や反射防止フィルム、タッチパネル用フィルム、表面加飾フィルム等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 DSC曲線
2 延長線
3 1/2直線
4 ガラス転移点(Tg)
図1