特許第6111792号(P6111792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111792
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20170403BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   B60C11/12 A
   B60C11/03 300A
   B60C11/12 C
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-69965(P2013-69965)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193629(P2014-193629A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】平間 充
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−046426(JP,A)
【文献】 特開平07−052613(JP,A)
【文献】 特開平02−216304(JP,A)
【文献】 特開2001−063320(JP,A)
【文献】 特開平10−052824(JP,A)
【文献】 特開2011−020591(JP,A)
【文献】 特開2002−356105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主溝と、前記主溝に区画されて成ると共にサイプを有する複数のブロックとをトレッド部に備える空気入りタイヤであって、
前記サイプが、少なくとも一方の端部を前記ブロック内に有すると共に前記端部にてタイヤ幅方向に延在する本体部と、相互に噛み合う凸部および凹部を対向するサイプ壁面に有すると共に前記本体部の端部を通ってタイヤ周方向に延在する周方向部とを備え
前記本体部の前記端部とタイヤ幅方向とのなす角φが、−45[deg]≦φ≦45[deg]の範囲内にあり、
前記周方向部とタイヤ周方向とのなす角θが、−30[deg]≦θ≦30[deg]の範囲にあり、且つ、
前記本体部のサイプ深さD1と、前記周方向部のサイプ深さD2とが、0.2≦D2/D1≦0.8の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記本体部が、トレッド平面視にて、波状形状あるいはジグザグ形状を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周方向部が、トレッド平面視にて、直線形状あるいは円弧形状を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凸部の高さHが、0.5[mm]≦H≦3.0[mm]の範囲にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックの踏面から前記凸部の中心点までの距離Ddと、前記周方向部の深さD2とが、0.1≦Dd/D2≦0.6の関係を有する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記サイプが、タイヤ周方向にオフセットして配置された複数の前記本体部と、前記複数の本体部の端部同士を連結する前記周方向部とを備える請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記周方向部が、前記ブロック内で終端する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、サイプを起点としたクラックの発生を抑制できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスタッドレスタイヤは、ブロックの踏面に多数のサイプを配置することにより、氷表面の水膜除去作用を生じさせて、タイヤの氷上制動性能を向上させている。
【0003】
ここで、サイプがブロック内に終端部を有する場合には、応力集中により、この終端部を起点としてクラックが発生するという課題がある。かかる課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−301217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、サイプを起点としたクラックの発生を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、複数の主溝と、前記主溝に区画されて成ると共にサイプを有する複数のブロックとをトレッド部に備える空気入りタイヤであって、前記サイプが、少なくとも一方の端部を前記ブロック内に有すると共に前記端部にてタイヤ幅方向に延在する本体部と、相互に噛み合う凸部および凹部を対向するサイプ壁面に有すると共に前記本体部の端部を通ってタイヤ周方向に延在する周方向部とを備え、前記本体部の前記端部とタイヤ幅方向とのなす角φが、−45[deg]≦φ≦45[deg]の範囲内にあり、前記周方向部とタイヤ周方向とのなす角θが、−30[deg]≦θ≦30[deg]の範囲にあり、且つ、前記本体部のサイプ深さD1と、前記周方向部のサイプ深さD2とが、0.2≦D2/D1≦0.8の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、本体部がブロック内に端部を有し、この端部がタイヤ幅方向に延在する構成において、周方向部が、この本体部の端部を通ってタイヤ周方向に延在することにより、本体部の端部を起点としたクラックの発生が抑制される。これにより、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載した空気入りタイヤのブロックを示す平面図である。
図4図4は、図3に記載したブロックのサイプを示すA視断面図である。
図5図5は、図3に記載したブロックのサイプを示すB−B視断面図である。
図6図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図7図7は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図8図8は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図9図9は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図10図10は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図11図11は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図12図12は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図13図13は、図12の変形例に対する比較例を示す説明図である。
図14図14は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図15図15は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図16図16は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図17図17は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図18図18は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図19図19は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図20図20は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤ1の一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。なお、同図において、符号CLは、タイヤ赤道面である。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸(図示省略)に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0011】
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0013】
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0014】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上40[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0015】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびビードフィラー12、12のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて、左右のビード部を構成する。
【0016】
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、スタッドレスタイヤのトレッドパターンを示している。なお、同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
【0017】
この空気入りタイヤ1は、複数の主溝(図2では、周方向主溝2およびラグ溝4)と、これらの主溝2、4に区画されて成る複数のブロック5とをトレッド部に備える(図2参照)。また、ブロック5が、サイプ6を備える。
【0018】
例えば、図2の構成では、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画された複数の陸部3と、これらの陸部3に配置された複数のラグ溝4とをトレッド部に備えている。また、ストレート形状を有する3本の周方向主溝2が、タイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝2により、2列のセンター陸部と、左右一対のショルダー陸部とが区画されている。また、各陸部3が、タイヤ周方向に所定間隔で配置された複数のラグ溝4を備えている。このため、各陸部3が、複数のラグ溝4によりタイヤ周方向に分断されて、複数のブロック5から成るブロック列となっている。また、各ブロック5が、サイプ6をそれぞれ備えている。
【0019】
主溝とは、4[mm]以上の溝幅を有する溝をいう。かかる主溝には、上記のようなタイヤ周方向に延在する周方向主溝2、タイヤ幅方向に延在するラグ溝4、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜溝(図示省略)などが含まれる。主溝の溝幅は、トレッド踏面の溝開口部に形成された切欠部や面取部を除外して測定される。また、サイプとは、陸部に形成された切り込みであり、1.0[mm]未満のサイプ幅を有する。
【0020】
なお、図2の構成では、空気入りタイヤ1が、周方向主溝2およびラグ溝4を格子状に配置して成るトレッドパターンを備えている。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、複数の傾斜ラグ溝から成る網目状のトレッドパターンを備えても良い(図示省略)。
【0021】
また、図2の構成では、周方向主溝2およびラグ溝4が、ストレート形状を有している。このため、各ブロック5が、いずれも矩形状を有している。しかし、これに限らず、周方向主溝2およびラグ溝4が、ジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。また、その結果として、各ブロック5が、ジグザグ形状あるいは波状形状のエッジ部を有しても良い。
【0022】
また、図2の構成では、すべての陸部3が、複数のブロック5から成るブロック列となっている。しかし、これに限らず、一部の陸部3が、非貫通のラグ溝4を有することにより、タイヤ周方向に連続するリブであっても良い。
【0023】
[ブロックのサイプ構造]
近年のスタッドレスタイヤは、ブロックの踏面に多数のサイプを配置することにより、氷表面の水膜除去作用を生じさせて、タイヤの氷上制動性能を向上させている。
【0024】
ここで、サイプがブロック内に終端部を有する構成では、応力集中により、この終端部を起点とするクラックが発生し易い。かかるクラックの発生は、サイプがタイヤ幅方向に延在する構成において、特に顕著である。
【0025】
そこで、この空気入りタイヤ1は、サイプを起点としたクラックの発生を抑制するために、以下の構成を採用している。
【0026】
図3は、図2に記載した空気入りタイヤのブロックを示す平面図である。図4および図5は、図3に記載したブロックのサイプを示すA視断面図(図4)およびB−B視断面図(図5)である。これらの図において、図3は、センター陸部3にある単体のブロック5を示している。また、図4は、サイプ6の本体部61のサイプ壁面に沿った断面図を示し、図5は、周方向部62のサイプ壁面に沿った断面図を示している。
【0027】
この空気入りタイヤ1では、図3に示すように、ブロック5が、少なくとも1本のサイプ6を備え、このサイプ6が、本体部61と周方向部62とを有する。
【0028】
本体部61は、サイプ6全体から後述する周方向部62を除いた部分のうち、少なくとも一方の端部611をブロック5内に有すると共に、その端部611にてタイヤ幅方向に延在する部分をいう。
【0029】
すなわち、本体部61は、上記のように、少なくとも一方の端部611をブロック5内に有する。したがって、本体部61は、一方の端部がブロック5内で終端すると共に他方の端部がブロック5のエッジ部に開口するセミクローズド構造(図3参照)を有しても良いし、双方の端部がブロック5内で終端するクローズド構造(例えば、後述する図18参照)を有しても良い。
【0030】
また、本体部61は、図3に示すように、その端部611にてタイヤ幅方向に延在する。すなわち、本体部61の端部611がタイヤ幅方向に延在すれば良いため、本体部61の全体は、タイヤ幅方向に対して任意の角度で傾斜し得る。また、本体部61の端部611とタイヤ幅方向とのなす角φが、−45[deg]≦φ≦45[deg]の範囲内にあれば、本体部61の端部611がタイヤ幅方向に延在していると言える。なお、角度φは、トレッド平面視にて、本体部61の端部611を延長した直線とタイヤ幅方向とのなす角として測定される。
【0031】
また、本体部61は、トレッド平面視にて、直線形状、円弧形状、波状形状、ジグザグ形状などの任意の形状を有し得る。したがって、本体部61の形状自体には、特に限定がない。
【0032】
また、本体部61は、二次元サイプであっても良いし、三次元サイプであっても良い。二次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状のサイプ壁面を有するサイプをいう。三次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて、サイプ幅方向に屈曲した形状のサイプ壁面を有するサイプをいう。三次元サイプは、二次元サイプと比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、陸部の剛性を補強する作用を有する。かかる三次元サイプとして、例えば、特許第3894743号公報、特許第4316452号公報などに記載される技術が知られている。
【0033】
周方向部62は、サイプ6の部分のうち、相互に噛み合う凸部621および凹部622を対向するサイプ壁面に有し、且つ、本体部61の端部を通ってタイヤ周方向に延在する部分をいう。
【0034】
すなわち、周方向部62は、図4および図5に示すように、一方のサイプ壁面に配置された凸部621と、他方のサイプ壁面に配置された凹部622とを有する。これらの凸部621および凹部622は、タイヤ接地時にて周方向部62が塞がったときに、相互に噛み合うことにより、ブロック5の剛性を補強する。
【0035】
なお、凸部621および凹部622は、例えば、半球形状、円錐台形状などを有し得る。また、複数組の凸部621および凹部622が設けられても良い。また、図4において、凸部621の高さHが、0.5[mm]≦H≦3.0[mm]の範囲にあることが好ましい。また、図5において、ブロック5の踏面から凸部621の中心点までの距離Ddと、周方向部62の深さD2とが、0.1≦Dd/D2≦0.6の関係を有することが好ましい。このとき、凸部621が踏面に現れないように、凸部621の距離Ddが設定される。
【0036】
また、周方向部62は、図3に示すように、本体部61の端部611を通って、タイヤ周方向に延在する。したがって、周方向部62は、上記のようにタイヤ幅方向に延在する本体部61の端部611を起点として、タイヤ周方向に延在する。このとき、周方向部62とタイヤ周方向とのなす角θが、−45[deg]<θ<45[deg]の範囲にあれば、周方向部62がタイヤ周方向に延在していると言える。また、周方向部62とタイヤ周方向とのなす角θが、−30[deg]≦θ≦30[deg]の範囲にあることが好ましく、−10[deg]≦θ≦10[deg]の範囲にあることがより好ましい。
【0037】
なお、周方向部62は、トレッド平面視にて、単一直線形状あるいは単一円弧形状を有することが好ましい。周方向部62が円弧形状を有する構成(後述する図12および図13参照)では、周方向部62とタイヤ周方向とのなす角θが、サイプ6のブロック5内での終端部(周方向部62の終端部)における周方向部62とタイヤ周方向とのなす角θとして測定される。
【0038】
また、周方向部62は、図4に示すように、本体部61よりも浅い。また、本体部61のサイプ深さD1と、周方向部62のサイプ深さD2とが、0.2≦D2/D1≦0.8の関係を有することが好ましい。なお、本体部61のサイプ深さD1は、周方向主溝2の溝深さよりも浅く設定される。また、サイプ深さD1、D2は、サイプの最大深さ位置にて測定される。
【0039】
例えば、図3の構成では、矩形状のブロック5が、1本のサイプ6を有している。また、サイプ6が、トレッド平面視にて、ステップ状に屈曲した形状を有し、また、ブロック5をタイヤ幅方向に貫通して左右の周方向主溝2、2に開口するオープン構造を有している。また、サイプ6が、左右一対の本体部61、61と、1本の周方向部62とを備えている。また、左右の本体部61、61が、トレッド平面視にて、タイヤ幅方向に延在するジグザグ形状を有している。また、左右の本体部61、61が、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置されている。また、左右の本体部61、61が、一方の端部にて左右の主溝2、2にそれぞれ開口し、また、他方の端部611をブロック5の中央部に有している。また、各本体部61、61の端部611、611が、タイヤ周方向に対してφ≦45[deg]となる傾斜角φを有している。また、周方向部62が、トレッド平面視にて、タイヤ周方向に平行(傾斜角θ=0[deg])に延在する直線形状を有し、一方の端部にて一方の本体部61の端部611に接続し、他方の端部にて他方の本体部61の端部611に接続している。これにより、左右の本体部61、61の端部611、611が周方向部62を介して連結して、1本のサイプ6が形成されている。また、サイプ6が、本体部61と周方向部62との接続部にて、本体部61の端部611からタイヤ周方向に屈折した形状を有している。
【0040】
また、図4および図5に示すように、本体部61が、サイプ深さ方向に一様な断面を有する二次元形状を有している。また、周方向部62が、平面形状を有するサイプ壁面に、球面形状を有する凸部621および凹部622を配置した構造を有している。また、凸部621と凹部622とが、対向するサイプ壁面の同位置に配置されることにより、タイヤ接地時にて周方向部62が塞がったときに、凸部621と凹部622とが相互に噛み合う構造を有している。
【0041】
この空気入りタイヤ1では、本体部61がブロック5内に端部611を有し、この端部611がタイヤ幅方向に延在する構成において、周方向部62が、この本体部61の端部611を通ってタイヤ周方向に延在することにより、本体部61の端部611を起点としたクラックの発生が抑制される。また、タイヤ接地時にて周方向部62が塞がったときに、周方向部62の凸部621と凹部622とが相互に噛み合うことにより、ブロック5の倒れ込みが抑制される。これにより、タイヤの旋回性能が向上して、タイヤの操縦安定性能が向上する。
【0042】
[変形例]
図6図12は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。また、図13は、図12の変形例に対する比較例を示す説明図である。これらの図は、ブロック5におけるサイプ6の平面図を示している。
【0043】
図3の構成では、上記のように、サイプ6が、一対の本体部61、61と、これらの本体部61、61を接続する1つの周方向部62とから構成されている。また、トレッド平面視にて、本体部61が、タイヤ幅方向に延在するジグザグ形状を有し、本体部61の端部611がタイヤ幅方向に対して所定の傾斜角φで傾斜している。また、周方向部62が、タイヤ周方向に延在する直線形状を有し、タイヤ周方向に対して所定の傾斜角θで傾斜している。
【0044】
しかし、これに限らず、サイプ6が、以下の構成を有しても良い。
【0045】
図6の構成では、サイプ6が、1つの本体部61と1つの周方向部62とから構成される。また、図3の構成と同様に、本体部61が、タイヤ幅方向に延在するジグザグ形状を有し、本体部61の端部611がタイヤ幅方向に対して所定の傾斜角φで傾斜する。また、周方向部62が、タイヤ周方向に延在する直線形状を有し、タイヤ周方向に対して所定の傾斜角θで傾斜する。そして、周方向部62が、一方の端部にて本体部61の端部611に接続し、他方の端部にてブロック5の内部で終端する。これにより、本体部61の端部611からタイヤ周方向に屈折した周方向部62を有する、1本のサイプ6が構成される。
【0046】
このように、サイプ6は、周方向部62にてブロック5の内部で終端しても良い。かかる構成では、周方向部62がタイヤ周方向に所定の傾斜角θで傾斜するため、サイプ6の終端部(周方向部62の終端部)を起点としたクラックの発生が抑制される。また、本体部61の端部611が周方向部62に接続するため、本体部61の端部611を起点としたクラックの発生が抑制される。
【0047】
図7の構成では、図6の構成において、本体部61がタイヤ幅方向に延在する直線形状を有している。このように、本体部61が、ジグザグ形状以外の形状を有しても良い。なお、図6および図7の構成に限らず、本体部61が、例えば、波状形状、円弧形状などを有しても良い(図示省略)。
【0048】
図8の構成では、図6の構成において、周方向部62が、タイヤ周方向に対してθ≠0[deg]となる傾斜角にて傾斜する。このように、周方向部62は、所定の傾斜角θにてタイヤ周方向に対して傾斜しても良い。
【0049】
図9の構成では、図6の構成において、周方向部62が、本体部61の端部611を通過して、その両端部にてブロック5の内部で終端する。また、周方向部62が、直線形状を有し、その中央部にて本体部61の端部611に接続する。また、周方向部62が、本体部61の端部611との接続部を境界とする各部分に、それぞれ凸部621および凹部622を有する。このように、本体部61と周方向部62とが、T字状に接続しても良い。
【0050】
図10および図11の構成では、図9の構成において、周方向部62が、本体部61の端部611との接続部にて屈曲した形状を有する。すなわち、周方向部62が、本体部61の端部611を起点としてタイヤ周方向の一方向に延在する部分と、タイヤ周方向の他方向に延在する部分とを有し、これらの部分がタイヤ周方向に対して所定の傾斜角θ1、θ2でそれぞれ傾斜する。このとき、周方向部62の各部分の傾斜角θ1、θ2は、同一の絶対値を有しても良いし、相異なる絶対値を有しても良い。また、周方向部62の各部分が、それぞれ直線形状あるいは円弧形状(図示省略)を有し、屈曲あるいは蛇行しないことが好ましい。
【0051】
また、図10の構成と図11の構成との比較では、図10の構成のように、本体部61と周方向部62とがY字状に鈍角で接続することが好ましい。かかる構成では、本体部61と周方向部62とが矢印状に鋭角で接続する図11の構成と比較して、タイヤ加硫成形時にて、サイプ金型の抜けが良好となる。
【0052】
図12の構成では、図6の構成において、周方向部62が、円弧形状を有する。すなわち、周方向部62が、一方の端部にて本体部61の端部611に接続し、この本体部61の端部611から円弧状に延在して、他方の端部にてブロック5の内部で終端する。このように、周方向部62が変曲点を有することなく湾曲する形状を有しても良い。なお、かかる構成では、周方向部62の曲率半径が、3[mm]以下であることが好ましい。
【0053】
また、図12の構成と図13の構成(比較例)との比較では、図12の構成のように、ブロック5内における周方向部62の終端部(サイプ6の終端部)が、タイヤ周方向に延在することが好ましい。すなわち、周方向部62が、終端部にて所定の傾斜角θにて傾斜することにより、この周方向部62の終端部を起点としたクラックの発生が抑制される。
【0054】
図14図19は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、ブロック5の平面図を示している。
【0055】
図3の構成では、ブロック5が、図2におけるセンター陸部3のブロックであり、一対の周方向主溝2、2と一対のラグ溝4、4とに区画されている。このため、1本のサイプ6が、ステップ状に屈曲しつつブロック5をタイヤ幅方向に貫通して、左右の本体部61、61が、ブロック5の周方向主溝2、2側のエッジ部にそれぞれ開口している。
【0056】
これに対して、図14の構成では、ブロック5が、図2におけるショルダー陸部3のブロックであり、1本の周方向主溝2と一対のラグ溝4、4とトレッド端とに区画されている。また、ブロック5が、タイヤ接地端Tを跨いで配置される。また、サイプ6が、一対の本体部61、61と、これらの本体部61、61の端部611、611を連結する1つの周方向部62とから成り、一方の本体部61にて周方向主溝2のエッジ部に開口し、他方の本体部61にてタイヤ接地端Tを越えてブロック5の内部で終端する。このように、ブロック5がタイヤ接地端Tを跨ぐ構成では、サイプ6が、タイヤ接地面の外側にてタイヤ幅方向に延在しつつ終端したとしても、この終端部を起点としたクラックが発生し難い。したがって、かかる構成では、タイヤ接地面内における本体部61の端部611にのみ、周方向部62が配置されれば足りる。
【0057】
なお、タイヤ接地端Tとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置をいう。
【0058】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0059】
図15の構成では、図3の構成において、周方向部62が、タイヤ周方向に対して所定の傾斜角θ(≠0)にて傾斜する。かかる構成としても、本体部61、61の端部611、611を起点としたクラックの発生が適正に抑制される。
【0060】
図16の構成では、サイプ6が、3つの本体部61、61、61と一対の周方向部62、62とを有する。また、2つの本体部61、61が、タイヤ幅方向に延在して、一方の端部にてブロック5の周方向主溝2側のエッジ部に開口し、他方の端部611にてブロック5の内部で終端する。また、残り1つの本体部61が、先の2つの本体部61、61に対してタイヤ周方向にオフセットして配置され、タイヤ幅方向に延在して、左右の端部611、611にてブロック5の内部で終端する。また、一対の周方向部62が、タイヤ周方向に延在して、ブロック5のエッジ部に開口する本体部61の端部611と、オフセットして配置された本体部61の端部611とをそれぞれ連結する。このため、サイプ6が、全体として、タイヤ周方向に凸となるステップ形状を有する。このように、サイプ6が、3つ以上の本体部61を有しても良い。また、かかる場合には、ブロック5の内部における本体部61の端部611が、周方向部62に接続することを要する。これにより、本体部61の端部611におけるクラックの発生が適正に抑制される。
【0061】
図17の構成では、一対のサイプ6、6が、ブロック5に配置されている。また、各サイプ6が、1つの本体部61と1つの周方向部62とを有し、周方向部62が、一方の端部にて本体部61の端部611に接続し、タイヤ周方向の相互に異なる方向にそれぞれ延在して、他方の端部にてブロック5の内部で終端する。このように、周方向部62が本体部61の端部611に接続することにより、本体部61の端部611を起点としたクラックの発生が抑制される。なお、図17の構成において、一対のサイプ6、6の周方向部62、62が、相互に連通しても良い。
【0062】
図18および図19の構成では、1本のサイプ6が、ブロック5に配置されている。また、サイプ6が、1つの本体部61と一対の周方向部62、62とを有する。また、本体部61が、タイヤ幅方向に延在して、左右の端部611、611にてブロック5の内部で終端する。また、一対の周方向部62、62が、一方の端部にて本体部61の左右の端部611、611にそれぞれ接続し、タイヤ周方向の相互に異なる方向にそれぞれ延在して、他方の端部にてブロック5の内部で終端する。これにより、本体部61の左右の端部611、611におけるクラックの発生が適正に抑制される。
【0063】
なお、図18の構成では、本体部61がタイヤ幅方向にほぼ並行に延在するジグザグ形状を有し、図19の構成では、本体部61がタイヤ幅方向に対して傾斜しつつ延在する直線形状を有する。このように、本体部61の形状には、限定が無く、また、本体部61が、タイヤ幅方向に対して傾斜しても良い。また、周方向部62が、図8に示すように、タイヤ周方向に対して傾斜しても良いし、図9図11に示すように、本体部61の端部611を通過して延在しても良いし、図12に示すように、円弧形状を有しても良い。
【0064】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、複数の主溝(図2では、周方向主溝2およびラグ溝4)と、これらの主溝2、4に区画されて成ると共にサイプ6を有する複数のブロック5とをトレッド部に備える(図2参照)。また、サイプ6が、少なくとも一方の端部611をブロック5内に有すると共に端部611にてタイヤ幅方向に延在する本体部61と、相互に噛み合う凸部621および凹部622を対向するサイプ壁面に有すると共に本体部61の端部611を通ってタイヤ周方向に延在する周方向部62とを備える(例えば、図3参照)。
【0065】
かかる構成では、本体部61がブロック5内に端部611を有し、この端部611がタイヤ幅方向に延在する構成において、周方向部62が、この本体部61の端部611を通ってタイヤ周方向に延在することにより、本体部61の端部611を起点としたクラックの発生が抑制される。これにより、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
【0066】
また、周方向部62がタイヤ周方向に延在することにより、周方向部62によるブロック剛性の低下が抑制される。また、タイヤ接地時にて周方向部62が塞がったときに、周方向部62の凸部621と凹部622とが相互に噛み合うことにより、ブロック5の倒れ込みが抑制される。これらにより、タイヤの旋回性能が向上して、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。また、周方向部62を有さない構成と比較して、周方向部62により、ブロック5のエッジ成分が増加する。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する利点がある。
【0067】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向部62とタイヤ周方向とのなす角θが、−45[deg]<θ<45[deg](好ましくは、−30[deg]≦θ≦30[deg])の範囲にある(図3参照)。これにより、周方向部62の角度θが適正化されて、周方向部62の終端部(サイプ6の終端部)を起点としたクラックの発生が抑制される利点がある。すなわち、角度θが上記の範囲を越えると、周方向部62のタイヤ幅方向の成分が大きくなる。すると、クラック発生の抑制効果が低下し、また、ブロック5の倒れ込みが生じ得てタイヤの操縦安定性能が低下するため、好ましくない。
【0068】
また、この空気入りタイヤ1では、本体部61の端部611とタイヤ幅方向とのなす角φが、−45[deg]≦φ≦45[deg]の範囲にある(図3参照)。本体部61の端部611の角度φがかかる範囲にある構成では、本体部61の端部611を起点としたクラックが発生し易い。したがって、かかる構成にて、周方向部62が本体部61の端部611に接続することにより、本体部61の端部611を起点としたクラック発生の抑制効果が顕著に得られる利点がある。
【0069】
また、この空気入りタイヤ1では、本体部61が、トレッド平面視にて、波状形状あるいはジグザグ形状を有する(図3参照)。かかる構成では、本体部61が直線形状を有する構成と比較して、本体部61におけるサイプ壁面の噛み合い力が強い。これにより、タイヤ接地時におけるブロック5の剛性が確保されて、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。
【0070】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向部62が、トレッド平面視にて、直線形状あるいは円弧形状を有する(例えば、図6および図12参照)。これにより、サイプ6の成形が容易となる利点がある。
【0071】
また、この空気入りタイヤ1では、凸部621の高さHが、0.5[mm]≦H≦3.0[mm]の範囲にある(図4参照)。これにより、凸部621の高さHが適正化される利点がある。すなわち、0.5[mm]≦Hであることにより、周方向部62における凸部621と凹部622との噛み合い力が適正に確保される。また、H≦3.0[mm]であることにより、タイヤ加硫成形時における凸部621を成形するための金型の抜けが容易となる。
【0072】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック5の踏面から凸部621の中心点までの距離Ddと、周方向部62の深さD2とが、0.1≦Dd/D2≦0.6の関係を有する(図5参照)。これにより、凸部621の位置が適正化される利点がある。すなわち、0.1≦Dd/D2であることにより、凸部621がブロック5の踏面に露出しないように配置される。また、Dd/D2≦0.6であることにより、タイヤ新品時から摩耗中期までの凸部621の機能が適正に確保されて、トレッド表面でのブロック5の変形が抑制される。
【0073】
また、この空気入りタイヤ1では、サイプ6が、タイヤ周方向にオフセットして配置された複数の本体部61、61と、これらの本体部61、61の端部611、611同士を連結する周方向部62とを備える(図3図14図16参照)。かかる構成では、複数の本体部61、61によりタイヤ幅方向のエッジ成分が確保され、また、周方向部62によりエッジ成分が増加するので、タイヤの氷上旋回性能が向上する利点がある。
【0074】
また、この空気入りタイヤ1では、本体部61のサイプ深さD1と、周方向部62のサイプ深さD2とが、0.2≦D2/D1≦0.8の関係を有する(図4参照)。これにより、周方向部62のサイプ深さD2が適正化される利点がある。すなわち、0.2≦D2/D1であることにより、周方向部62の機能が確保されて、本体部61の端部611を起点としたクラックの発生が適正に抑制される。また、D2/D1≦0.8であることにより、周方向部62によるブロック剛性の低下が抑制される。
【0075】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向部62が、ブロック5内で終端する(例えば、図3参照)。これにより、ブロック5の剛性が確保される利点がある。また、かかる構成においても、周方向部62がタイヤ周方向に延在するために、周方向部62の終端部を起点としたクラックの発生が生じ難いという利点がある。
【実施例】
【0076】
図20は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0077】
この性能試験では、相互に異なる複数の試験タイヤについて、(1)耐久性能および(2)氷上旋回性能に関する評価が行われた(図20参照)。この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15の試験タイヤがリムサイズ15×6JJのリムに組み付けられ、この試験タイヤに210[kPa]の内圧およびETRTOの規定荷重が付与される。
【0078】
(1)耐久性能に関する評価では、ドラム径1707[mm]の室内ドラム試験機が用いられ、ETRTOイヤーブック2012年版に規定される荷重耐久性試験が行われる。そして、試験終了後に、荷重を5時間毎に20[%]ずつ増加させて、タイヤが破壊するまでの走行時間が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0079】
(2)氷上旋回性能に関する評価では、試験タイヤを装着した試験車両が、氷路面を有する半径15[m]の円周コースを旋回走行し、そのラップタイムが測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0080】
実施例1〜8の試験タイヤは、図1および図2に記載した空気入りタイヤ1において、ブロック5のサイプ6が図3図15あるいは図16に記載した構造を有する。
【0081】
従来例の試験タイヤは、図3に記載した構造において、サイプ6が、周方向部62を有しておらず、一対の本体部61、61のみから成る。
【0082】
試験結果に示すように、実施例1〜8の空気入りタイヤ1では、タイヤの耐久性能および氷上旋回性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0083】
1:空気入りタイヤ、2:周方向主溝、3:陸部、4:ラグ溝、5:ブロック、6:サイプ、61:本体部、611:端部、62:周方向部、621:凸部、622:凹部、11:ビードコア、12:ビードフィラー、13:カーカス層、14:ベルト層、141、142:交差ベルト、143:ベルトカバー、15:トレッドゴム、16:サイドウォールゴム、17:リムクッションゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20