(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負極に対する前記正極の電位を0.0Vに到達するまで放電した後に一定時間保持する時間が、5時間以上、500時間以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
前記充放電処理工程が、さらに、前記負極に対する前記正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電した後に一定時間保持する工程を含む、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
前記負極に対する前記正極の電位を、2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電した後に一定時間保持する時間が、5時間以上、500時間以下である請求項3に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
前記非水電解質二次電池に備わる負極に含まれる負極活物質が、リチウムの脱離及び挿入が0.3V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)で進行する負極活物質である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
リチウムイオンの脱離及び挿入が0.3V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)以下で進行する前記負極活物質が、チタン含有複合酸化物である、請求項1〜請求項6いずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
<1.負極>
本発明の非水電解質二次電池の負極に含まれる負極活物質は、正極よりも低い電位で、リチウムイオンの挿入・脱離反応が進行すればよく、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ及びグラファイトなどの炭素材料、Si、Sn、その酸化物及び窒素等との化合物、チタン酸リチウム、二酸化チタン、五酸化ニオブ、二酸化モリブデンなどが例示される。
【0015】
負極に対する正極の電位を0.0Vに到達させたときに、負極にリチウム金属が析出する可能性が極めて低いことから、本発明の非水電解質二次電池に用いる負極活物質は、リチウムイオンの挿入・脱離反応が、0.1V(vs.Li
+/Li)以上2.0V(vs.Li
+/Li)以下で進行するものであることが好ましい。
特に、リチウムイオンの挿入・脱離反応が0.3V(vs.Li
+/Li)以上2.0V(vs.Li
+/Li)以下で進行する負極活物質が好ましい。
【0016】
リチウムイオンの挿入・脱離反応が0.1V(vs.Li
+/Li)以上2.0V(vs.Li
+/Li)以下で進行する負極活物質は、Si、Sn、その酸化物及び窒素等との化合物などが挙げられる。
リチウムイオンの挿入・脱離反応が0.3V(vs.Li
+/Li)以上2.0V(vs.Li
+/Li)以下で進行する負極活物質は、チタン酸リチウム、二酸化チタン、五酸化ニオブ及び二酸化モリブデンなどが好ましく、負極活物質の安定性が高い点から、チタン酸リチウム、二酸化チタン、H
2Ti
12O
25がより好ましい。また、これら負極活物質には導電性、あるいは安定性の向上のため、たとえばNbなどのリチウム、チタン以外の元素が微量含まれていてもよい。
【0017】
リチウムイオンの挿
入反応が0.1V(vs.Li+/Li)以上2.0V(vs.Li+/Li)以下で進行するとは、負極活物質へのリチウムイオン挿入が2.0V(vs.Li+/Li)以下で開始し、0.1V(vs.Li+/Li)以上で終了することである。一方、リチウムイオンの脱離反応が0.1V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)以下で進行するとは、負極活物質からのリチウムイオン脱離が0.1V(vs.Li+/Li)以上で開始し、2.0V(vs.Li+/Li)以下で終了することである。
【0018】
これら負極活物質は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
リチウムイオン挿入・脱離反応の電位(vs.Li
+/Li)は、例えば、負極活物質を用いた動作極、リチウム金属を対極とした半電池の充放電特性を測定し、プラトー開始時、及び終了時の電圧値を読み取ることによって求めることができる。プラトーが2箇所以上あった場合は、もっとも低い電位のプラトーが0.1V(vs.Li
+/Li)以上であればよく、もっとも高い電位のプラトーが2.0V(vs.Li
+/Li)以下であればよい。前記半電池に用いる動作極、電解液、セパレータは後述のものと同様のものを用いることができる。
【0019】
前記負極には、さらに導電助材を含有してもよい。導電助材としては、特に限定されないが、金属材料、炭素材料が好ましい。金属材料の場合は、銅、及びニッケルなど、炭素材料の場合は天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックなどが挙げられる。これら導電助材は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0020】
本発明において、負極に含まれる導電助材の量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、30重量部以下、より好ましくは2重量部以上、15重量部以下である。前記範囲であれば、負極の導電性が確保される。また、後述のバインダーとの接着性が維持され、集電体との接着性が十分に得ることができる。
本発明において、負極には、活物質を集電体に結着させるため、バインダーを使用してよい。バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、アクリル樹脂及びそれらの誘導体からなる群からえらばれる少なくとも1種を用いることができる。バインダーは負極の作製しやすさから、非水溶媒又は水に、溶解又は分散されていることが好ましい。非水溶媒は、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0021】
本発明において、負極に含まれるバインダーの量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。前記範囲であれば、負極活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との接着性が十分に得ることができる。
本発明において好ましい負極の一形態としては、負極活物質、導電助材、及びバインダーの混合物を集電体上に形成することによって作製されるが、作製方法の容易さから、前記混合物及び溶媒でスラリーを作製し、得られたスラリーを集電体上に塗工した後に、溶媒を除去することによって負極を作製する方法が好ましい。
【0022】
前記負極に用いることのできる集電体は、銅、SUS、ニッケル、チタン、アルミニウム及びそれらの合金が好ましい。
なお、集電体は、金属材料(銅、SUS、ニッケル、チタン、及びそれらの合金)の表面に負極の電位で反応しない金属を被覆したものも用いることもできる。
スラリーの作製方法は、特に限定されないが、負極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を均一に混合できることから、ボールミル、プラネタリミキサ、ジェットミル、薄膜旋回型ミキサーを用いることが好ましい。スラリーの作製は、特に限定されないが、負極活物質、導電助材、及びバインダーを混合した後に溶媒を加えて作製してもよいし、負極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を一緒に混合して作製してもよい。
【0023】
スラリーの固形分濃度は、30wt%以上80wt%以下であることが好ましい。30wt%未満の場合、スラリーの粘度が低すぎる傾向があり、一方、80wt%より高い場合は、スラリーの粘度が高すぎる傾向があるため、後述の電極の形成が困難となる場合がある。
スラリーに用いる溶媒は、非水溶媒、あるいは水であることが好ましい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。また、これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0024】
集電体上への負極の形成は、特に限定されないが、例えば前記スラリーをドクターブレード、ダイコータ、コンマコータ等により塗布した後に、溶剤を除去する方法、あるいはスプレーにより塗布した後に溶剤を除去する方法が好ましい。溶媒を除去する方法は、オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が簡単であり好ましい。雰囲気としては室温、あるいは高温とした空気、不活性ガス、真空状態などが挙げられる。負極の形成は、前述の正極を形成する前でも、後でもよい。また、負極作製後、ロールプレス機などを用いて負極を圧縮させてもよい。前記電極の圧縮は、前述の正極を形成する前でも、後でもよい。
【0025】
本発明において、負極の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましい。10μm以下では、所望の容量を得ることが難しい場合があり、200μmより厚い場合は、所望の出力密度を得ることが難しい場合がある。
本発明において、負極の密度は、1.0g/cm
3以上3.0g/cm
3以下であることが好ましい。1.0g/cm
3未満であれば、負極活物質、導電助材との接触が不十分となり電子伝導性が低下する場合がある。3.0g/cm
3より大きい場合は、後述の電解液が負極内に浸透しにくくなり、リチウム伝導性が低下する場合がある。負極は、所望の厚み、密度まで圧縮させてもよい。圧縮は、特に限定されないが、例えば、ロールプレス、油圧プレス等を用いておこなうことができる。電極の圧縮は、前述の正極を形成する前でも、後でもよい。
【0026】
本発明において、負極の単位面積、例えば1cm
2あたりの電気容量は、0.5mAh以上6.0mAh以下であることが好ましい。0.5mAh未満である場合は所望する容量の電池の大きさが大きくなる場合があり、一方、6.0mAhより多い場合は所望の出力密度を得ることが難しい場合がある。負極の1cm
2あたりの電気容量の算出は、負極作製後、リチウム金属を対極とした半電池を作製した後に、充放電特性を測定することによって算出できる。負極の負極1cm
2あたりの電気容量の制御は、特に限定されないが、集電体単位面積あたりに形成させる負極の重量で制御する方法、例えば、前述の負極塗工時の塗工厚みで制御することができる。
【0027】
<2.正極>
本発明の非水電解質二次電池の正極に用いられる正極活物質は、特に限定されないが、リチウム遷移金属化合物であればよく、リチウムコバルト化合物、リチウムニッケル化合物、リチウムマンガン化合物、リチウム鉄化合物などが例示される。また、遷移金属は1種類に限定されず、2種類以上であってもよい。例えば、リチウムコバルトニッケルマンガン化合物、リチウムニッケルマンガン化合物などが例示される。また、リチウム遷移金属化合物の安定性を向上する効果が高いことから、たとえばアルミニウム、マグネシウム、チタンなどの元素が微量含まれていてもよい。
【0028】
リチウムマンガン化合物としては、正極活物質の安定性が高いことから、Li
1+xMyMn
2―x―yO
4(0≦x≦0.2、0<y≦0.6、Mは2〜13族でかつ第3〜4周期に属する元素からなる群から選ばれる少なくとも1種)で表されるリチウムマンガン化合物であることが特に好ましい。x<0の場合は、正極活物質の容量が減少する傾向がある。また、x>0.2の場合は炭酸リチウムなどの不純物が多く含まれるようになる傾向がある。y=0の場合は、正極活物質の安定性が低くなる傾向がある。また、y>0.6の場合はMの酸化物などの不純物が多く含まれるようになる傾向がある。
【0029】
前記正極活物質の表面には、導電性向上、あるいは安定性向上のため、炭素材料、金属酸化物、あるいは高分子等で覆われてもよい。
本発明の非水電解質二次電池に用いる正極には導電助材を含有させてもよい。前記導電助材は、特に限定されないが、前記負極と同様のものを用いることができる。
前記正極にはバインダーを含有させてよい。バインダーは、特に限定されないが、前記負極と同様のものを用いることができる。
【0030】
前記正極に含まれるバインダーの量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。前記範囲であれば、正極活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との接着性が十分に得ることができる。
前記正極の作製方法としては、正極活物質、導電助材、及びバインダーの混合物を集電体上に塗工することによって作製する方法が挙げられるが、作製方法の容易さから、前記混合物及び溶媒でスラリーを作製し、得られたスラリーを集電体上に塗工した後に、溶媒を除去することによって正極を作製する方法が好ましい。
【0031】
前記正極に用いる集電体は、アルミニウム及びその合金であることが好ましい。前記アルミニウムは、正極反応雰囲気下で安定であることから、特に限定されないが、JIS規格1030、1050、1085、1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムであることが好ましい。
なお、集電体は、アルミニウム以外の金属(銅、SUS、ニッケル、チタン、及びそれらの合金)の表面にアルミニウムを被覆したものも用いることもできる。
スラリーの作製は、特に限定されないが、正極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を均一に混合できることから、ボールミル、プラネタリミキサ、ジェットミル、薄膜旋回型ミキサーを用いることが好ましい。スラリーの作製は、特に限定されないが、正極活物質、導電助材、及びバインダーを混合した後に溶媒を加えて作製してもよいし、正極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を一緒に混合して作製してもよい。
【0032】
スラリーの固形分濃度は、30wt%以上80wt%以下であることが好ましい。30wt%未満の場合スラリーの粘度が低すぎる傾向があるため、一方、80wt%より高い場合はスラリーの粘度が高すぎる傾向があるため、後述の電極の形成が困難となる場合がある。
スラリーに用いる溶媒は、非水溶媒、あるいは水であることが好ましい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。また、これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0033】
集電体上への正極の形成は、特に限定されないが、例えば前記スラリーをドクターブレード、ダイコータ、コンマコータ等により塗布した後に、溶剤を除去する方法、あるいはスプレーにより塗布した後に溶剤を除去する方法が好ましい。溶媒を除去する方法は、オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が簡単であり好ましい。溶媒を除去する雰囲気としては、空気、不活性ガス、真空状態などが挙げられる。また、溶媒を除去する温度は、特に限定されないが、60℃以上250℃以下であることが好ましい。60℃未満では溶媒の除去に時間を要する場合があり、250℃より高いと、バインダーが劣化する場合がある。なお、正極の形成は、後述の負極を形成する前でも、後でもよい。
【0034】
前記正極の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましい。10μm未満では所望の容量を得ることが難しい場合があり、一方、200μmより厚い場合は所望の出力密度を得ることが難しい場合がある。
本発明の正極の密度は、1.0g/cm
3以上4.0g/cm
3以下であることが好ましい。1.0g/cm
3未満であると、正極活物質、導電助材との接触が不十分となり電子伝導性が低下する場合がある。一方、4.0g/cm
3より大きいと、電解液が正極内に浸透しにくくなり、リチウム伝導性が低下する場合がある。
【0035】
本発明の正極は、所望の厚み、密度まで圧縮させてもよい。圧縮は、特に限定されないが、例えば、ロールプレス、油圧プレス等を用いておこなうことができる。電極の圧縮は、後述の負極を形成する前でも、後でもよい。
本発明の正極は、単位面積、例えば正極1cm
2あたりの電気容量が0.5mAh以上5.0mAh以下であることが好ましい。0.5mAh未満である場合は所望する容量の電池の大きさが大きくなる傾向があり、5.0mAhより多い場合は所望の出力密度を得ることが難しくなる傾向がある。正極1cm
2あたりの電気容量の算出は、正極作製後、リチウム金属を対極とした半電池を作製した後に、充放電特性を測定することによって算出してもよい。
【0036】
前記正極の正極1cm
2あたりの電気容量の制御は、特に限定されないが、集電体単位面積あたりに形成させる正極の重量で制御する方法、例えば、前述のスラリー塗工時の塗工厚みで制御することができる。
<3.セパレータ>
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータは、前述の正極と負極との間に設置され、電子伝導性がなくかつリチウムイオン伝導性を有する物質であればよく、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、及びそれらを2種類以上複合したものの織布、不織布、微多孔膜などが挙げられる。セパレータには、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤が含まれてもよいし、金属酸化物等が被覆されていてもよい。
【0037】
セパレータの厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。10μm未満の場合、正極と負極との接触する場合があり、100μmより厚い場合は電池の抵抗が高くなる場合がある。経済性、取り扱いの観点から、15μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
<4.非水電解質>
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質などを用いることができる。
【0038】
非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示される。鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び鎖状エーテルなどが例示される。また、前記に加えアセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いても良い。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、1、2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合しても用いてもよいが、後述の溶質を溶解させやすさ、リチウムイオンの伝導性の高さから、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。また、高分子に電解液をしみこませたゲル状電解質も用いることができる。
【0039】
溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、LiN(SO
2CF
3)
2などは溶媒に溶解しやすいことから好ましい。電解液に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。0.5mol/L未満では所望のリチウムイオン伝導性が発現しない場合があり、一方、2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合がある。非水電解質には、難燃剤、安定化剤などの添加剤が微量含まれてもよい。
【0040】
<5.非水電解質二次電池>
本発明の非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、バイポーラ電極であってもよい。
本発明の非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回したものであってもよいし、積層したものであってもよい。正極、負極、及びセパレータには、リチウムイオン伝導を担う非水電解質が含まれている。
【0041】
本発明の非水電解質二次電池における正極の電気容量と負極の電気容量との関係は、下記不等式(1)を満たすことが好ましい。
A<B (1)
但し、前記不等式(1)中、Aは正極1cm
2あたりの電気容量を示し、Bは負極1cm
2あたりの電気容量を示す。
【0042】
前記不等式(1)を満たすならば、非水電解質二次電池の放電により負極に対する正極の電位を0.0Vに到達させたときに、正極の電位を電解液あるいは添加剤の分解電位まで低くすることができる。
本発明の非水電解質二次電池における正極の電気容量と負極の電気容量との関係は、下記不等式(2)を満たすことがさらに好ましい。
【0043】
1<B/A≦1.2 (2)
但し、前記不等式(2)中、Aは正極1cm
2あたりの電気容量を示し、Bは負極1cm
2あたりの電気容量を示す。
B/Aが1以下である場合は、非水電解質二次電池の放電により、負極に対する正極の電位を0.0Vに到達させたときに、正極の電位を電解液あるいは添加剤の分解電位まで低くすることができない場合があり、一方、B/Aが1.2より大きい場合は電池反応に関与しない負極活物質が多いために副反応が起こる場合がある。また、余分な負極を使用することから、電池のコストが増大するからである。
【0044】
本発明の非水電解質二次電池における正極と負極との面積比は、特に限定されないが、下記不等式(3)を満たすことが好ましい。
1≦D/C≦1.2 (3)
但し、Cは正極の面積、Dは負極の面積を示す。
D/Cが1未満である場合は、負極に対する正極の電位を0.0Vに到達させたときに、正極の電位を電解液あるいは添加剤の分解電位まで低くすることができない部分があり、この部分で保護被膜が形成されず、ガス発生の箇所になる可能性がある。
一方、D/Cが1.2より大きい場合は、正極と接していない部分の負極が大きいため、電池反応に関与しない負極活物質が副反応を起こす場合がある。正極及び負極の面積の制御は特に限定されないが、例えば、スラリー塗工の際、塗工幅を制御することによって行うことができる。
【0045】
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータと負極との面積比は特に限定されないが、下記不等式(4)を満たすことが好ましい。
1≦E/D≦1.5 (4)
但し、Dは負極の面積、Eはセパレータの面積を示す。
E/Dが1未満である場合は、正極と負極とが接触し、1.5より大きい場合は外装に要する体積が大きくなり、電池の出力密度が低下する場合がある。
【0046】
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質の量は、特に限定されないが、電池容量1Ahあたり、0.1mL以上であることが好ましい。0.1mL未満の場合、電極反応に伴うリチウムイオンの伝導が追いつかず、所望の電池性能が発現しない場合がある。
非水電解質は、あらかじめ正極、負極及びセパレータに含ませてもよいし、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回、あるいは積層した後に添加してもよい。
【0047】
本発明の非水電解質二次電池は、前記積層体を倦回、あるいは複数積層した後にラミネートフィルムで外装してもよいし、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、シート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガスを放出するための機構が備わっていてもよい。積層体の積層数は、所望の電圧値、電池容量を発現するまで積層させることができる。
【0048】
本発明の非水電解質二次電池は、複数接続することによって電池モジュールとすることができる。本発明の電池モジュールは、所望の大きさ、容量、電圧によって適宜直列、並列に接続することによって作製することができる。また、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、前記電池モジュールに制御回路が付属されていることが好ましい。
<6.非水電解質二次電池の製造方法>
本発明の非水電解質二次電池の製造方法には、非水電解質二次電池の初期充放電処理工程として、負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電した後に一定時間保持する工程が含まれる。
【0049】
負極に対する正極の電位差とは、電池の電圧のことを意味する。すなわち、負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電とは、電池電圧0.0Vまで放電することを意味する。
本発明で、非水電解質二次電池における正極の電気容量と負極の電気容量との関係について前述した不等式(1)が満たされていれば、負極と正極との電位差が0.0Vになるまで放電することによって、正極の電位を負極の電位まで下げることが可能となる。
【0050】
正極の電位を負極まで下げることによって、正極で電解液あるいは添加剤を分解させることができる。その結果、負極のみならず、正極にも電解液あるいは添加剤の分解物由来の保護被膜を形成させることができる。この点に関し特許文献1は、「負極」に保護被膜を形成することにのみ注目しているが、本発明によれば、正極にも電解液あるいは添加剤の分解物由来の保護被膜を形成させることが確実にできる。
【0051】
すなわち一般的な電解液および添加剤は、負極電位付近で分解し保護被膜を形成させるものが多い。前記負極に対する前記正極の電位を0.0Vに到達するまで放電した場合、負極の電位を電解液あるいは添加剤の分解電位に保持しながら、正極の電位を電解液あるいは添加剤の分解電位まで低下することができる。このことから、負極のみならず、正極にも電解液あるいは添加剤の分解物由来の保護被膜を形成させることができる。
【0052】
負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電する方法としては、電気的履歴がない非水電解質二次電池を少なくとも1回充電した後に、0.0Vまで放電すればよく、放電方法は、定電流放電で0.0Vまで達したときに放電を停止する方法(いわゆるCC放電)でも良いし、定電流放電で0.0Vまで放電した後に、0.0Vの低電位で、電流値が一定値になるまで定電圧放電(いわゆるCCCV放電)しても良い。
【0053】
定電流放電する場合の電流値は、電池の容量に対して、0.05倍以上、5倍以下であることが好ましい。0.05倍未満では、放電に時間を要するため製造工程が長くなりコストが上昇する。一方、5倍より大きい場合は、電流値が大きいために電池が発熱し、その結果電池性能が低下する恐れがある。
前記コスト及び電池の発熱の観点から、定電流放電する場合の電流値は、電池の容量に対して、0.1倍以上、3倍以下であることが好ましい。
【0054】
定電圧放電を停止するための電流値は、定電流放電の電流値に対して、0.01倍以上、0.5倍以下であることが好ましい。0.01倍未満では、放電に時間を要するため製造工程が長くなりコストが増大する。一方、0.5倍より大きい場合は、定電流放電で放電をとめたときとの影響が変わらない。
負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電したのちに、一定時間保持する時間は、5時間以上、500時間以下であることが好ましい。5時間未満では、サイクル運転時のガス発生抑制の効果が小さく、500時間より長い場合は、製造工程が長くなりコストが上昇する。ガス発生抑制及びコストの関係より、より好ましくは、8時間以上、400時間以下であり、特に好ましくは、10時間以上、350時間以下である。
【0055】
負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電したのちに、一定時間保持するときの温度は、10℃以上、100℃以下であることが好ましい。10℃未満では、電解液と正極と負極との反応が進行しない恐れがあり、100℃より高い場合は、電解液単独で劣化する恐れがある。より好ましくは20℃以上、80℃以下、特に好ましくは20℃以上、60℃以下である。
【0056】
負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電したのちに、一定時間保持するときの状態は、特に限定されないが、開回路状態であることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法には、非水電解質二次電池の充放電処理工程として、「負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電した後に一定時間保持する工程」とともに、「負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電した後に一定時間保持する」工程が含まれても良い。この場合、「負極に対する正極の電位差を0.0Vに到達するまで放電した後に一定時間保持する工程」の後に、「負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電した後に一定時間保持する工程」をおこなっても良いし、その逆でも良いし、間に、充電放電のサイクルを挟んでも良い。
【0057】
負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電する方法としては、定電流充電で2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで達したときに充電を停止する方法(いわゆるCC充電)でも良いし、定電流充電で2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで達するまで充電した後に、定電圧で2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値で、電流値が一定値になるまで定電圧充電(いわゆるCCCV充電)しても良い。
【0058】
定電流充電する場合の電流値は、電池の容量に対して、0.05倍以上、5倍以下であることが好ましい。0.05倍未満では、充電に時間を要するため製造工程が長くなりコストが上昇する。一方、5倍より大きい場合は、電流値が大きいために電池が発熱し、その結果電池性能が低下する恐れがある。
前記コスト及び発熱の観点から、定電流充電する場合の電流値は、電池の容量に対して、0.1倍以上、3倍以下であることが好ましい。前記範囲の場合、充電に要する時間と、電池の発熱が少ない。
【0059】
充電を停止するための電流値は、定電流充電の電流値に対して、0.01倍以上、0.5倍以下であることが好ましい。0.01倍未満では、充電に時間を要するため製造工程が長くなりコストが上昇する。一方、0.5倍より大きい場合は、定電流充電で充電をとめたときとの影響が変わらない。
負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電したのちに、一定時間保持する時間は、5時間以上、500時間以下であることが好ましい。5時間未満では、サイクル運転時のガス発生抑制の効果が小さく、500時間より長い場合は、製造工程が長くなりコストが増大する。ガス発生抑制及びコストの関係より、より好ましくは、8時間以上、400時間以下であり、特に好ましくは、10時間以上、350時間以下である。
【0060】
負極に対する正極の電位差を負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電したのちに、一定時間保持するときの温度は、10℃以上、100℃以下であることが好ましい。10℃未満では、充放電処理工程の効果が得られない恐れがあり、100℃より高い場合は、電解液単独で劣化する恐れがある。より好ましくは20℃以上、80℃以下、特に好ましくは20℃以上、60℃以下である。
【0061】
負極に対する正極の電位を2.5V以上、3.5V以下の範囲の中から選ばれる値に到達するまで充電したのちに、一定時間保持するときの状態は、特に限定されないが、開回路状態であることが好ましい。
本発明の製造方法において、充放電処理工程後に発生したガスを除去する工程が含まれることが好ましい。前記充放電処理工程によって発生したガスを除去しない場合、電池性能が低下する恐れがある。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(1.負極の製造)
負極活物質のLi
4Ti
5O
12を、文献("Zero-Strain Insertion Material of Li [Li1/3Ti5/3] O4 for Rechargeable Lithium Cells" J. Electrochem. Soc., Volume 142, Issue 5, pp. 1431-1435 (1995))に記載されている方法で作製した。
【0063】
すなわち、まず二酸化チタンと水酸化リチウムを、チタンとリチウムとのモル比を5:4となるように混合し、次にこの混合物を窒素雰囲気下800℃で12時間加熱することによって実施例及び比較例に用いる負極活物質を作製した。
前記負極活物質を100重量部、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、及びバインダー(固形分濃度12wt%、NMP溶液)を固形分6.8重量部混合して、スラリーを作製した。このスラリーをアルミニウム箔(20μm)に塗工した後に、170℃で真空乾燥することによって負極(50cm
2)を作製した。
【0064】
負極の容量は次の充放電試験で測定した。
前述と同様の条件でアルミニウム箔の片面に電極を塗工し、16mmΦに打ち抜き動作極を作製した。Li金属を16mmΦに打ち抜き対極とした。これらの電極を用いて、動作極(片面塗工)/セパレータ/対極(Li金属)の順に試験セル(HSセル、宝泉社製)内に積層し、非水電解質(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70vol%、LiPF
6 1mol/L)を0.15mL入れ、半電池を作製した。この半電池を25℃で一日放置した後、充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。この半電池を25℃、1.0mAで定電流放電(終止電圧:1.0V)及び定電流充電(終止電圧:2.0V)を5回繰り返し、1回目の結果を負極の容量とした。その結果、負極の容量は、2.6mAh/cm
2であった。
【0065】
(2.正極の製造)
正極活物質のLi
1.1Al
0.1Mn
1.8O
4は、文献("Lithium Aluminum Manganese Oxide Having Spinel-Framework Structure for Long-Life Lithium-Ion Batteries" Electrochemical and Solid-State Letters Volume9, Issue12, Pages A557 (2006))に記載されている方法で作製した。
【0066】
すなわち、二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、及びホウ酸の水分散液を調製し、スプレードライ法で混合粉末を作製した。このとき、二酸化マンガン、炭酸リチウム及び水酸化アルミニウムの各量は、リチウム、アルミニウム及びマンガンのモル比が1.1:0.1:1.8となるように調製した。次に、この混合粉末を空気雰囲気下900℃で12時間加熱した後、再度650℃で24時間加熱した。最後に、この粉末を95℃の水で洗浄後、乾燥させることによって正極活物質を作製した。
【0067】
この正極活物質を100重量部、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、及びバインダー(固形分濃度12wt%、NMP溶液)を6.8重量部混合してスラリーを作製した。このスラリーをアルミニウム箔(厚さ20μm)に塗工した後に、170℃で真空乾燥することによって正極(50cm
2)を作製した。
正極の容量は次の充放電試験で測定した。
【0068】
前述と同様にアルミニウム箔の片面に塗工した電極を16mmΦに打ち抜き動作極、Li金属を16mmΦに打ち抜き対極とした。これらの電極を用いて、動作極(片面塗工)/セパレータ/対極(Li金属)の順に試験セル(HSセル、宝泉社製)内に積層し、非水電解質(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70vol%、LiPF
6 1mol/L)を0.15mL入れ、半電池を作製した。この半電池を25℃で一日放置した後、充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。この半電池を25℃、0.4mAで定電流充電(終止電圧:4.5V)及び定電流放電(終止電圧:3.5V)を5回繰り返し、1回目の結果を正極の容量とした。その結果、正極の容量は、2.5mAh/cm
2であった。このように正極の面積は負極の面積と同じであるにもかかわらず、正極の単位面積当たりの容量は負極の単位面積当たりの容量よりも小さくなっている(前記不等式(1)参照)。
【0069】
(3.非水電解質二次電池の製造)
非水電解質二次電池を次のとおりに作製した。
電極は、アルミニウム箔の片面に正極、あるいは負極のみを片面塗工した電極を用いた。セパレータは、セルロース不職布(25μm、55cm
2)を用いた。最初に、前記作製した正極(片面塗工)、負極(片面塗工)、及びセパレータを、正極(片面塗工)/セパレータ/負極(片面塗工)の順に積層した。次に、両端の正極及び負極にアルミニウムタブを振動溶着させた後に、袋状のアルミラミネートシートに入れた。非水電解質(エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/メチルエチルカーボネート=15/15/70vol%、LiPF
6 1mol/L)を2mL入れた後に、減圧しながら封止することによって非水電解質二次電池Aを作製した。
【0070】
(4.本発明による初期充放電処理工程の実施)
<実施例1>
前記非水電解質二次電池Aを充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続し、25mAで2.7Vまで定電流定電圧充電した。すなわち充電当初、電圧は低いため25mAで定電流充電をし、次第に充電量が増加して、セル電圧が2.7Vに達すると、ここからは定電圧充電とした。定電圧充電は、充電電流値が2.5mAに下がっ
た時点で停止した。
【0071】
次に、25mAで0.0Vまで定電流放電した。この充放電は25℃の環境下でおこなった。
0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Aを開回路状態で、60℃で5時間保管したのち、前記アルミラミネートシートに孔を開けて発生ガスを除去した。除去した後はアルミラミネートシートの孔を塞いだ。このようにして、実施例1の非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
【0072】
<実施例2>
0.0Vまで放電した前記非水電解質二次電池Aを開回路状態で、60℃で24時間保管したこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
<実施例3>
0.0Vまで放電した前記非水電解質二次電池Aを開回路状態で、60℃で168時間保管したこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
【0073】
<実施例4>
実施例3において、「0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Aを開回路状態で、60℃で168時間保管した」工程と、「発生ガスを除去した」工程の間に下記工程Aを追加して、非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
(追加した工程A):25℃の環境下で、25mAで2.7Vまで定電流充電した。次に、前記充電した非水電解質二次電池Aを開回路状態で60℃の環境下で168時間保管した。最後に、25℃の環境下に2時間放置したのちに、25mAで2.0Vまで定電流放電した。
【0074】
<実施例5>
実施例3において、「0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Aを開回路状態で、60℃で168時間保管した」工程と、「発生ガスを除去した」工程の間に下記工程Bを追加して、非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
(追加した工程B):25℃の環境下で、25mAで3.0Vまで定電流充電した。次に、前記充電した非水電解質二次電池Aを開回路状態で60℃の環境下で168時間保管した。最後に、25℃の環境下に2時間放置したのちに、25mAで2.0Vまで定電流放電した。
【0075】
<実施例6>
この実施例6では、実施例1〜5で用いた非水電解質二次電池Aの正極とは違う正極を採用した。
正極活物質としてLiNi
0.5Mn
1.5O
4を、"Solid-state redox potentials for Li [Me1/2Mn3/2] O4 (Me: 3d-transition metal) having spinel-framework structures: a series of 5 volt materials for advanced lithium-ion batteries" Journal of Power Sources, Vol. 81-82, pp. 90-94(1999) に記載されている方法で作製した。
【0076】
すなわち水酸化リチウム、酸化水酸化マンガン、及び水酸化ニッケルをリチウム、マンガン及びニッケルのモル比が1:1.5:0.5となるように混合した。次に、この混合物を空気雰囲気下550℃で加熱した後に、再度750℃で加熱することによって正極活物質を作製した。
導電助材の追加、スラリーのアルミニウム箔への塗工、負極の作製、非水電解質二次電池の作製の各工程は、前述したとおりである。これを非水電解質二次電池Bと称する。
【0077】
この非水電解質二次電池Bを充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続し、25mAで3.4Vまで定電流定電圧充電した。定電圧充電は、電流値が2.5mAに下がっ
た時点で停止した。
次に、25mAで0.0Vまで定電流放電した。この充放電は25℃の環境下でおこなった。0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で、60℃で5時間保管したのち、アルミラミネートシートに孔を開けて発生ガスを除去した。除去した後はアルミラミネートシートに孔を塞いだ。
【0078】
<実施例7>
0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で、60℃で24時間保管したこと以外は、実施例6と同様に非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
<実施例8>
0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で、60℃で168時間保管したこと以外は、実施例6と同様に非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
【0079】
<実施例9>
実施例8において、「0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で、60℃で168時間保管した」工程と、「発生ガスを除去した」工程の間に下記工程Cを加えて、非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
(追加した工程C):25℃の環境下、25mAで3.4Vまで定電流充電した。次に、前記充電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で60℃の環境下で168時間保管した。最後に、25℃の環境下に2時間放置したのちに、25mAで2.5Vまで定電流放電した。
【0080】
<実施例10>
実施例8において、「0.0Vまで放電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で、60℃で168時間保管した」工程と、「発生ガスを除去した」工程の間に下記工程Dを加えて、非水電解質二次電池の充放電処理を実施した。
(追加した工程D):25℃の環境下、25mAで3.5Vまで定電流充電した。次に、前記充電した非水電解質二次電池Bを開回路状態で60℃の環境下で168時間保管した。最後に、25℃の環境下に2時間放置したのちに、25mAで2.5Vまで定電流放電した。
【0081】
<比較例1>
非水電解質二次電池Aに対して、いかなる充放電処理も行わなかった。
すなわち、実施例1の充放電処理工程(非水電解質二次電池Aを充放電装置に接続し、25mAで2.7Vまで定電流定電圧充電した。定電圧充電は、電流値が2.5mAに到達した時点で停止した。次に、25mAで0.0Vまで定電流放電した。この充放電は25℃の環境下でおこなった。0.0Vまで放電した非水電解質二次電池を開回路状態で、60℃で5時間保管したのち、発生ガスを除去した工程。)を施すことなく、非水電解質二次電池Aをそのまま測定の対象とした。
【0082】
<比較例2>
非水電解質二次電池Bに対して、いかなる充放電処理も行わなかった。
すなわち、実施例6の充放電処理工程(非水電解質二次電池Bを充放電装置に接続し、25mAで3.4Vまで定電流定電圧充電した。定電圧充電は、電流値が2.5mAに到達した時点で停止した。次に、25mAで0.0Vまで定電流放電した。この充放電は25℃の環境下でおこなった。0.0Vまで放電した非水電解質二次電池を開回路状態で、60℃で5時間保管したのち、発生ガスを除去した工程。)を施すことなく、非水電解質二次電池Bをそのまま測定の対象とした。
【0083】
(5.サイクル特性の測定)
実施例1〜10、比較例1〜2の非水電解質二次電池を、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続し、サイクル特性を評価した。
サイクル特性は、60℃、25mA定電流充電、25mA定電流放電を500回繰り返した。このときの実施例1〜5と比較例1との充電終止電圧及び放電終止電圧は、それぞれ2.7V及び2.0Vとした。また、実施例6〜10と比較例2との充電終止電圧及び放電終止電圧は、それぞれ3.4V及び2.5Vとした。
【0084】
1回目の放電容量を100としたときの、500回目の放電容量の値(容量維持率%)及びガス発生の有無を表1に示す。なお、ガス発生の有無は、25℃で2時間放冷したのちに、セルのふくらみで確認した。
【0085】
【表1】
【0086】
表1から明らかなとおり、本発明の実施例1〜10の非水電解質二次電池は、ガスが発生することなく、且つ、比較例1〜2の非水電解質二次電池よりもサイクル安定性が向上していることが分かる。
(6.高温保存時のガス発生量の評価)
実施例1〜10、比較例1〜2の非水電解質二次電池を、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続し、高温保存時のガス発生量を評価した。
【0087】
実施例1〜10、比較例1〜2の非水電解質二次電池を60℃、25mA定電流充電した。このときの実施例1〜5と比較例1との充電終止電圧は、2.7Vとした。また、実施例6〜10と比較例2との充電終止電圧は、3.4Vとした。これらの非水電解質二次電池を60℃の環境下で2週間放置した。ガス発生の有無は、25℃で2時間放冷したのちに、セルのふくらみで確認した。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から明らかなとおり、本発明の実施例1〜10の非水電解質二次電池は、ガス発生することがないことが確認された。