(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該転写装置が、表面にコーティングがなされていない第1種類の用紙と表面にコーティングがなされている第2種類の用紙との中なら選択された種類の用紙上への前記ベルト上の画像の転写を担うものであって、
前記制御部が、前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を、前記ベルト上の画像の転写を受ける用紙の種類に応じて、前記第1種類の用紙上への転写の場合には前記幅方向両側で互いに均等に保つ制御を行ない、前記第2種類の用紙上への転写の場合には前記幅方向両側で互いに異ならせる制御を行なうものであることを特徴とする請求項1又は2記載の転写装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、中間転写ベルトから用紙上に画像を転写する際の画像欠陥の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、
表面に画像を保持して走行するベルトとの間に搬送されてきた用紙を挟んで搬送する第1ロールと、
前記ベルト裏面側であって該ベルトを挟んで前記第1ロールと対向する位置に配置されて該ベルトを裏面側から支える第2ロールと、
前記ベルトを間に挟んで互いに押圧する前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を前記幅方向両側それぞれについて調整する調整機構と、
前記第1ロール又は前記第2ロールに電圧を印加して前記ベルト上の画像を用紙上に転写させる電源と、
前記電源により電圧が印加されて電流が流れるときの電気抵抗値を測定するセンサと、
前記調整機構を制御して、前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離が前記幅方向両側について均等な初期軸間距離に調整された初期状態に
調整させて前記センサにより測定される初期電気抵抗値を取得し、該第1ロールと該第2ロールとの間の軸間距離を、該センサにより測定される電気抵抗値が該初期電気抵抗値と比べあらかじめ定められた上昇率に到達するまで、前記幅方向両側のうちの一方が他方よりもさらに広がるように該幅方向両側について広げさせることにより、前記ベルトと該第1ロールとが互いに接する、該ベルトの走行方向のニップ幅を、該ベルトの幅方向一端側と他端側とで異ならせる制御部とを備えたことを特徴とする転写装置である。
【0007】
請求項
2は、前記制御部が、
前記第1ロールと前記第2ロールを前記初期状態に調整させて前記初期電気抵抗値を取得した後、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を前記幅方向両側について均等に広げさせ、
その後、前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を、前記幅方向片側について、前記センサにより測定される電気抵抗値が前記初期電気抵抗と比べあらかじめ定められた上昇率に到達するまで、さらに広げさせるものであることを特徴とする請求項
1記載の転写装置である。
【0008】
請求項3は、
当該転写装置が、表面にコーティングがなされていない第1種類の用紙と表面にコーティングがなされている第2種類の用紙との中なら選択された種類の用紙上への前記ベルト上の画像の転写を担うものであって、
前記制御部が、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を、前記ベルト上の画像の転写を受ける用紙の種類に応じて、前記第1種類の用紙上への転写の場合には前記幅方向両側で互いに均等に保つ制御を行ない、前記第2種類の用紙上への転写の場合には前記幅方向両側で互いに異ならせる制御を行なうものであることを特徴とする請求項1又は2記載の転写装置である。
請求項4は、
前記制御部が、前記第1種類の用紙上への転写の場合には前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を前記幅方向両側で互いに均等に保つとともに電気抵抗を前記初期電気抵抗と比べ予め定められた第1の上昇率以内に抑えた制御を行ない、前記第2種類の用紙上への転写の場合には前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を前記幅方向両側で互いに異ならせるとともに電気抵抗を前記初期電気抵抗と比べ前記第1の上昇率を越えた予め定められた第2の上昇率以内に抑えた制御を行なうものであることを特徴とする請求項3記載の転写装置である。
【0009】
請求項5は、
走行するベルト表面に画像を形成する画像形成部と、
前記ベルト表面に形成された画像を、搬送されてきた用紙上に転写する画像転写部とを備え、
前記画像転写部が、
搬送されてきた用紙を前記ベルトとの間に挟んで搬送する第1ロールと、
前記ベルト裏面側であって該ベルトを挟んで前記第1ロールと対向する位置に配置されて該ベルトを裏面側から支える第2ロールと、
前記ベルトを間に挟んで互いに押圧する前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離を前記幅方向両側それぞれについて調整する調整機構と、
前記第1ロール又は前記第2ロールに電圧を印加して前記ベルト上の画像を用紙上に転写させる電源と、
前記電源により電圧が印加されて電流が流れるときの電気抵抗値を測定するセンサと、
前記調整機構を制御して、前記第1ロールと前記第2ロールとの間の軸間距離が前記幅方向両側について均等な初期軸間距離に調整された初期状態に
調整させて前記センサにより測定される初期電気抵抗値を取得し、該第1ロールと該第2ロールとの間の軸間距離を、該センサにより測定される電気抵抗値が該初期電気抵抗値と比べあらかじめ定められた上昇率に到達するまで、前記幅方向両側のうちの一方が他方よりもさらに広がるように該幅方向両側について広げさせることにより、前記ベルトと該第1ロールとが互いに接する、該ベルトの走行方向のニップ幅を、該ベルトの幅方向一端側と他端側とで異ならせる制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の転写装置および請求項5の画像形成装置によれば、中間転写ベルトから用紙上に画像を転写する際の画像欠陥の発生が防止される。
【0011】
また、請求項
1の転写装置
および請求項5の画像形成装置によれば、正確な調整が可能である。
【0012】
請求項
2の転写装置によれば、さらに正確な調整が可能である。
【0013】
請求項
3および請求項4の転写装置によれば、用紙に応じた適切な調整が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態であるカラープリンタを示す構成図である。
【0017】
図1に示すカラープリンタ1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)のトナーをそれぞれ用いる画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kを並列的に配置してなるタンデム型のカラープリンタである。トナーカートリッジ18Y,18M,18C,18Kには、YMCK各色のトナーが収容されており、各画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kを構成する現像装置14Y,14M,14C,14Kに供給される。
【0018】
これら4つの画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kは、異なる色のトナーを用いることを除きほぼ同一の構成を有する。そこで以下では、それらの画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kに共通の説明については、トナーの色を表わす‘Y’,‘M’,‘C’,‘K’の添字を省き、数字のみの符号を付して説明する。
【0019】
画像形成エンジン10は、感光体ドラム11、帯電装置12、露光装置13、現像装置14、一次転写装置15、および感光体クリーナ16を備えている。画像形成エンジン10を構成するこれらの要素のうち、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14および感光体クリーナ16は、プロセスカートリッジCRに備えられている。プロセスカートリッジCRは、このカラープリンタ1の本体に対し着脱自在に装着される。
【0020】
感光体ドラム11は、円筒状の基体表面に感光層が設けられたものであり、円筒の軸周りである矢印A方向に回転しながら表面に像が形成される。
【0021】
この感光体ドラム11の周りには、矢印A方向に順に、帯電装置12、露光装置13、現像装置14、一次転写装置15、および感光体クリーナ16が配置されている。
【0022】
帯電装置12は、感光体ロール11Yの表面を帯電させる装置である。この実施形態における帯電装置12には、感光体ドラム11の表面に接触する帯電ロールが備えられている。この帯電ロールに電圧が印加され、この帯電ロールが接触する感光体ドラムの表面を帯電させる。
【0023】
露光装置13は、外部からこのカラープリンタ1に供給される画像信号に応じて変調されたレーザ光を発光し、そのレーザ光で感光体ドラム11の表面を走査し、その表面に静電潜像を書き込む装置である。
【0024】
現像装置14は、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像をトナーで現像し、感光体ドラム11の表面に未定着のトナー像を形成する。
【0025】
一次転写装置15は、中間転写ベルト30を挟んで感光体ドラム11に対向した位置に配置されている。この一次転写装置15は電圧の印加を受けて感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト30に転写する。
【0026】
さらに感光体クリーナ16は、感光体ドラム11の表面に突き当てられた硬質ゴム製のクリーニングブレード161を備えており、このクリーニングブレード161により、感光体ドラム11の表面の、一次転写装置15で転写が行なわれた後に残存するトナー等の不要物を感光体ドラム11の表面から掻き落とすことによって、感光体ドラム11の表面を清掃する。
【0027】
このカラープリンタ1にはさらに、中間転写ベルト30、二次転写装置50、定着装置60、用紙搬送装置80、ベルトクリーナ90、制御装置100、および入力操作装置110が備えられている。
【0028】
中間転写ベルト30は、ベルト支持ロール31〜35に架け渡された無端のベルトである。中間転写ベルト30は、4つの画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kを経由する矢印B方向に循環移動する。この中間転写ベルト30には、4つの画像形成エンジン10Y,10M,10C,10Kから各色のトナー像が順次重なるように転写される。中間転写ベルト30は、その転写されたトナー像を保持しながら移動し、そのトナー像を二次転写装置50に運ぶ。
【0029】
二次転写装置50は、ベルト支持ロール31〜35の1つであるバックアップロール34を含んで構成され、この二次転写装置50はさらに、そのバックアップロール34との間に中間転写ベルト30を挟んで回転する二次転写ロール51を備えている。
【0030】
この中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写装置50に搬送されるのと同期して用紙搬送装置80により搬送されてきた用紙Pが、中間転写ベルト30と二次転写ロール51との間に挟み込まれる。
【0031】
ここで、バックアップロール34には、電源52により二次転写のために電圧が印加される。その印加された電圧と中間転写ベルト30上の帯電しているトナー像との相互作用により、中間転写ベルト30上のトナー像が用紙Pに転写される。
【0032】
また、ここでは、電流計53により電源52とバックアップロール34との間に流れる電流の電流値が測定され、電源52により印加する電圧と電流計53により測定された電流とから電気抵抗値が算出される。この電気抵抗値を求める理由については後述する。
【0033】
本実施形態では、バックアップロール34に、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに向けて押す向きの極性の電圧が印加され、この電圧の作用により、中間転写ベルト30上のトナー像が用紙Pに転写される。ただし、二次転写ロール51に、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙P側に引き寄せる向きの極性の電圧を印加し、その電圧の作用により中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写してもよい。
【0034】
本実施形態では、二次転写装置50が本発明の転写装置の一例に相当する。また、バックアップロール34が本発明にいう第1ロールの一例に相当し、二次転写ロール51が本発明にいう第2ロールの一例に相当する。
【0035】
トナー像の転写を受けた用紙Pは、定着装置60に搬送される。この定着装置60は、トナー像を用紙P上に定着させる装置である。
【0036】
定着装置60は、加熱ロール61および加圧ロール62を備えており、加熱ロール61内には、加熱器が配置されている。加熱ロール61および加圧ロール62は、定着前の未定着トナー像の転写を受けて搬送されてきた用紙Pをさらに下流側に搬送する向きにそれぞれが回転して、その用紙Pを互いの間に挟んで加熱および加圧する。定着装置60では、このようにして、その未定着トナー像が用紙P上に定着されてその用紙Pがさらに搬送方向下流側に送り出される。
【0037】
このカラープリンタ1の下部には、2台の用紙収容器T1,T2が配置されている。
【0038】
これらの用紙収容器T1,T2は、それぞれがこのカラープリンタ1の本体から引出自在となっており、その中には用紙Pが収容されている。用紙搬送装置80は、用紙収容器T1,T2に収容されている用紙Pの中の1枚を取り出して搬送する。2台の用紙収容器T1,T2のうちのいずれの用紙収容器から用紙Pを取り出すかは、ユーザによる入力操作装置110からの入力操作に応じて、制御装置100で制御される。
【0039】
用紙搬送装置80は、用紙収容器T1,T2に収容された用紙Pを取り出す取出ロール81、取り出されたロールを搬送する搬送ロール82、用紙Pを中間転写ベルト30上のトナー像の搬送とタイミングを合わせて二次転写装置50に搬送するレジストレーションロール84、および用紙Pをこのカラープリンタ1の外部に排出する排出ロール86を備えている。用紙搬送装置80は、用紙Pを二次転写装置50および定着装置60を経由する用紙搬送経路Rに沿って搬送する。
【0040】
制御装置100は、このカラープリンタ1の全体の制御を担っている。また、入力操作装置110は、ユーザによる入力操作を受け、その操作内容を制御装置100に伝達する。制御装置100は、このカラープリンタ1にその操作内容に従った動作を行なわさせる。
【0041】
図1に示すカラープリンタ1の基本動作を説明する。
【0042】
各画像形成エンジン10では、感光体ドラム11が矢印A方向に回転駆動され、感光体ドラム11が帯電装置12によって帯電される。露光装置13は、外部から供給される画像信号のうちの、そのトナーの色に応じた画像信号に基づいて変調されたレーザ光を生成して感光体ドラム11に照射することで、感光体ドラム11上に静電潜像を形成する。現像装置14には、トナーカートリッジ18からトナーが供給される。現像装置14は感光体ドラム11上の静電潜像をトナーで現像することで感光体ドラム11上にトナー像を形成する。感光体ドラム11上に形成されたトナー像は一次転写装置15によって中間転写ベルト30上に転写される。転写後の感光体ドラム11上に残存するトナーは感光体クリーナ16によって除去される。
【0043】
中間転写ベルト30は、矢印B方向に循環移動している。各画像形成エンジン10でそれぞれ形成された各色トナーによるトナー像は、中間転写ベルト30上に、その中間転写ベルト30の移動に従って順次重なるように転写される。
【0044】
用紙収容器T1又は用紙収容器T2からは取出ロール81によって用紙Pが1枚取り出される。取り出された用紙Pは搬送ロール82によって矢印C方向に搬送され、その用紙Pの先端部がレジストレーションロール84に挟まれた状態で一旦停止する。そして、レジストレーションロール84は、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写装置50に搬送されるタイミングで用紙Pが二次転写装置50に搬送されるように、用紙Pを送り出す。二次転写装置50は、中間転写ベルト30上のトナー像を、レジストレーションロール84により送り出されてきた用紙P上に転写する。トナー像が転写された用紙Pは、さらに定着装置60に搬送され、この定着装置60を構成する加熱ロール61と加圧ロール62とに挟み込まれて加熱および加圧を受け、用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。これにより、用紙P上に定着トナー像からなる画像が形成される。画像が形成された用紙Pは排出ロール86によって、このカラープリンタ1の外部に排出される。中間転写ベルト30上に残存するトナーは、ベルトクリーナ90によって除去される。
【0045】
図2は、二次転写装置での転写時に発生することがある画像欠陥の発生メカニズムの説明図である。
【0046】
二次転写装置50(
図1を合わせて参照)では、バックアップロール34により裏面側から押されている中間転写ベルト30と二次転写ロール51との間に、未定着のトナー像Iを保持した用紙Pが挟まれる。ここで、このトナー像Iには、用紙搬送方向(矢印C方向)前方のトナーの塊りi1と後方のトナーの細線i2とが存在し、それらの塊りi1と細線i2との間にはトナーが保持されていないトナー不存在領域nが存在している。中間転写ベルト30と二次転写ロール51とに挟まれた用紙Pは、それら中間転写ベルト30と二次転写ロール51とに押し潰されるようにして矢印C方向に移動する。トナー不存在領域nが押し潰されたとき、その領域に存在している空気の抜け道がないと、この
図2に示すように、例えば細線i2を壊して空気が抜ける。この現象が生じると、画像が崩れ、最終的に形成される画像上に画像欠陥が発生することになる。
【0047】
このような画像崩れの現象は、表面が平らにコーティングされた、いわゆるコート紙を使用した場合に発生し易い。これに対し、通常のコピー用紙の場合は、表面が粗く凹凸があり、また用紙の表裏に抜ける隙間も存在することから、このような画像崩れの現象は生じにくい。
【0048】
図3は、バックアップロール34の回転軸と二次転写ロール51の回転軸との間の軸間距離を、軸方向(
図3の紙面に垂直な方向)一方の端部と他方の端部とで異ならせた状態を示した模式図である。ここでは、バックアップロール34の一方の端部341に対し他方の端部342を相対的に二次転写ロール51から離すことにより、軸方向で軸間距離を異ならせている。
【0049】
図4は、
図3に示すように軸間距離を軸方向に異ならせたことによるニップ領域の形状の構成図である。
【0050】
バックアップロール34(
図1〜
図3参照)と二次転写ロール51との間の軸間距離を軸方向で異ならせたことにより、用紙搬送方向(矢印C方向)の、中間転写ベルト30に接する用紙P上のニップ幅Wは、軸方向一端側のニップ幅W
1が広く他端側のニップ幅W
2が狭くなる。この場合、用紙Pが用紙搬送方向(矢印C方向)に進むと、
図2に示すトナー不存在領域nの、広いニップ幅W
1を有する一端側が先に押し潰され、その後その押し潰される領域が順次他端側に広がっていく。このため、そのトナー不存在領域n内の空気は、矢印D方向に流れ、用紙Pの幅方向端部から抜け出ることになる。これにより、そのトナー不在領域n内の空気圧が異常に高まることが防止され、
図2を参照して説明したような画像崩れの発生が防止される。
【0051】
図1に示す本実施形態のカラープリンタ1では、以上の知見を活かし、バックアップロール34の、二次転写ロール51との間の軸間距離を軸方向両側それぞれについて調整する構造を備えている。
【0052】
図5は、ニップ量および傾斜量に対する電気抵抗値の上昇率を示した図である。
【0053】
ここで、ニップ量[mm]は、バックアップロール34に押された中間転写ベルト30と二次転写ロール51とが互いの間の押圧力ゼロで接するときバックアップロール34と二次転写ロール51との間の基準軸間距離(ニップ量=0.0mm)からの軸間距離の差分をいう。
【0054】
例えば、ニップ量[mm]=0.5は、上記の基準軸間距離よりも0.5mmだけ軸間距離が縮まり、その分だけ二次転写ロール51が押し潰された状態をいう。ニップ幅W(
図4参照)は、その押潰された分だけ広がっている。また、傾斜量[mm]は、一端部の軸間距離と他端部の軸間距離との差分をいう。傾斜量=0.0mmは両端部が同一の軸間距離にあることを意味し、傾斜量=0.2mmは一端部の軸間距離と他端部の軸間距離との差分が0.2mmであることを意味している。傾斜量=0.4mmも同様である。
【0055】
本実施形態のカラープリンタでは、
図1を参照して説明した通り、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写するために、電源52によりバックアップロール34に転写のための電圧を印加している。この電圧印加により、そのバックアップロール34、中間転写ベルト30、および二次転写ロール51を通って電流が流れ、この電流の電流値が電流計53で計測される。ここでは、電源52により印加される電圧とそこを流れる電流の電流値とにより、電源52とバックアップロール34との間に電流が流れるときの電気抵抗値が算出される。
【0056】
この
図5に示す例では、ニップ量=0.9mmのときは、傾斜量=0.0mm,0.2mm,0.4mmのいずれの場合も電気抵抗値は同一であり、ここではこれを初期電気抵抗値とし、
図5の縦軸は、その初期電気抵抗値からの抵抗値の上昇率[%]を表わしている。
【0057】
この
図5は、ニップ量[mm]を、例えば0.3mmあるいは0.2mmと下げていく。傾斜量=0.0mmであっても電気抵抗値が上昇することを表わしている。この
図5はさらに、あるニップ量[mm]、例えばニップ量=0.3mmにしておいて軸方向一方の端部の軸間距離をニップ量=0.3mmよりもさらに広げることによって傾斜量[mm]を上げると、電気抵抗値がさらに上昇することを表わしている。
【0058】
本実施形態のカラープリンタ1では、この電気抵抗値の上昇率[%]をモニタすることによって、バックアップロール34を適切なニップ量および適切な傾斜量に調整している。
【0059】
図6は、バックアップロールの調整機構の第1例を示した模式図である。
【0060】
ここでは、中間転写ベルト30の図示は省略し、バックアップロール34と二次転写ロール51との関係を示している。
【0061】
バックアップロール34には、図示しない押当機構により、二次転写ロール51に押し当てる向きの力が常に作用している。
【0062】
バックアップロール34の両端は、一対の支柱341,342で支えられている。これらの支柱341,342は、カム駆動軸343に固定された一対の偏心カム344,345のそれぞれと干渉し、押当機構による、バックアップロール34を二次転写ロール51に押し当てる向きの力に抗して、持ち上げられる。このカム駆動軸343には、モータ346からの回転駆動力が、モータ346の回転軸に固定されたギア347およびカム駆動軸343に固定されたギア348を介してカム駆動軸343に伝達されてカム駆動軸343が回転し、バックアップロール34を二次転写ロール51から離れる方向に持ち上げる。
【0063】
ここで、2つの偏心カム344,345は、いずれもカム駆動軸343に固定されており、カム駆動軸343の回転に伴って回転する。ただし、それら2つの偏心カム344,345の形状は相互に異なっており、カム駆動軸343の回転に伴ってバックアップロール34の一端部および他端部を以下のように持ち上げる。
【0064】
図7は、バックアップロール34と二次転写ロール51との間の軸間距離dを示した模式図である。
【0065】
先ず、バックアップロール34を二次転写ロール51に最も近接させた状態では、
図7(A)に示すように、軸間距離dは両端部ともd=d
0となる。ここではこれを「ホーム位置」と称する。このホーム位置は、本発明にいう、「初期軸間距離に調整された初期状態」の一例に相当する。ここでは、このホーム位置は、一例として
図5におけるニップ量=0.9mmに対応する位置である。
【0066】
この
図7(A)の状態からモータ346が回転してカム駆動軸343を回転させると、軸間距離dが、
図7(B)に示すように、両端部ともd=d
1(d
1>d
0)となるようにバックアップロール34が持ち上げられる。ここではこれを「指定位置」と称する。この指定位置は、一例として
図5におけるニップ量=0.3mmに対応する位置である。
【0067】
モータ346がさらに回転してカム駆動軸343をさらに回転させると、
図7(C)に示すように、一端部(
図7(C)の右側の端部)の軸間距離dをd=d
1に保ったまま、他端部(
図7(C)の左側の端部)の軸間距離dがd=d
2(d
2>d
1)となるように、バックアップロール34の一方の端部が持ち上げられ、バックアップロール34が傾斜した状態となる。
【0068】
モータ346を逆に回転させるとカム駆動軸343も逆に回転し、
図7(C)に示す、バックアップロール34が傾斜した状態から
図7(B)に示す指定位置に戻り、さらに回転して
図7(A)に示すホーム位置に戻る。
【0069】
図8は、バックアップロールと二次転写ロールとの間の軸間距離調整処理の第1例を示したフローチャートである。このフローチャートによる軸間距離調整処理は、
図6に示す調整機構に対応している。
【0070】
ここでは、先ずバックアップロール34と二次転写ロール51との間の軸間距離dをホーム位置(d=d
0;
図7(A)参照)に移動させ、バックアップロール34を通って電流が流れるときの電気抵抗値を測定する(ステップS11)。この状態における電気抵抗値は、本発明にいう初期電気抵抗値の一例に相当する。
【0071】
次に、軸間距離を指定位置(d=d
1;
図7(B)参照)に変更する(ステップS12)。
【0072】
この段階で、画像形成に用いる用紙の種別が判定される(ステップS13)。
図1に示すように、このカラープリンタ1には、2台の用紙収容器T1,T2が備えられており、ここでは、そのうちの上段側の用紙収容器T1には普通紙、下段側の用紙収容器T2にはコート紙が収容されているものとする。2台の用紙収容器T1,T2のそれぞれに収容されている用紙Pの種類の情報は、入力操作部110の操作によりあらかじめ入力されている。あるいは2台の用紙収容器T1,T2のそれぞれに例えば光沢度センサ等、用紙の種類を判別するためのセンサを設置しておき、それらのセンサで各用紙収容器T1,T2に収容されている用紙の種別を自動判別してもよい。
【0073】
画像形成にあたり、2台の用紙収容器T1,T2のうちのいずれの用紙収容器に収容されている用紙を用いるかは、今回の画像形成に先立って入力操作部110の操作により指定される。
【0074】
ステップS13において、画像形成に用いる用紙が普通紙であると判定されると、軸間距離がステップS12で指定距離に変更された状態のまま、この
図8に示す軸間距離調整処理を終了し、プリント(画像形成)に移行する。普通紙の場合、
図7(C)に示すように一端部と他端部とで軸間距離dを異ならせると転写不良が生じ易く、一方、
図2を参照して説明した画像崩れは生じ難いため、
図7(B)に示す、両端部の軸間距離が相互に同一に保たれた指定位置のままプリント(画像形成)が行なわれる。
【0075】
一方、ステップS13において、次の画像形成に用いる用紙がコート紙であると判定されると、ステップS12において軸間距離を指定位置に調整した後、さらに、初期電気抵抗値と比べ抵抗上昇率が10%以上となるまで(ステップS15)、バックアップロール34の傾斜量が調整される(ステップS14;
図7(C)参照)。
【0076】
本実施形態の例では、初期電気抵抗値と比べ抵抗上昇率が10%以上となる程度にバックアップロール34を傾斜させると、
図2を参照して説明した画像崩れが防止されることがあらかじめ確認されている。また、コート紙の場合、バックアップロール34をこの程度に傾斜させても転写性能に問題がないことも確認されている。
【0077】
このように、本実施形態では、バックアップロール34を傾斜させることにより、
図4を参照して説明したようにニップ幅Wを一端と他端とで異ならせ、これにより軸方向に空気流路を形成して、
図2を参照して説明したような画像崩れの発生を防止している。
【0078】
尚、本実施形態のカラープリンタ1は、普通紙とコート紙のいずれの用紙も用いることができるカラープリンタであるため、軸間距離を両端部で均等に調整した指定位置を経由した後、コート紙の場合にバックアップロール34を傾斜させている。ただし、コート紙専用機の場合は、ホーム位置(
図7(A))から両端部双方について互いに異なる移動量だけ移動させ、指定位置(
図7(B))を経由することなく
図7(C)に示すように傾斜させた状態に調整してもよい。
【0079】
図9は、バックアップロールの調整機構の第2例を示した模式図である。
【0080】
図1に示すカラープリンタ1において、
図6に示す調整機構に代えて、この
図9に示す調整機構を採用してもよい。ここでも
図6の場合と同様、中間転写ベルト30の図示は省略し、バックアップロール34と二次転写ロール51との関係を示している。
【0081】
バックアップロール34には、図示しない押当機構により、二次転写ロール51に押し当てる向きの力が常に作用している。
【0082】
バックアップロール34の両端は一対の支柱341,342で支えられている。これらの支柱341,342は、各モータ346a,346bの回転軸にそれぞれ固定された各偏芯カム344,345とそれぞれ干渉し、バックアップロール34は、押当機構による、バックアップロール34を二次転写ロール51に押し当てる向きの力に抗して持ち上げられる。
【0083】
図6に示す調整機構との相違点は、この
図9に示す調整機構の場合、2台のモータ346a,346bのそれぞれの駆動力により一対の偏心カム344,345が互いに独立に回転し、バックアップロール34の両端部がそれぞれ互いに独立に持ち上げられるという点である。
【0084】
図10は、バックアップロール34と二次転写ロール51との間の軸間距離調整処理の第2例を示したフローチャートである。このフローチャートによる軸間距離調整処理は、
図9に示す調整機構に対応している。
【0085】
ここでは、先ずバックアップロール34と二次転写ロール51との間の軸間距離dを両端部とも同一なホーム位置(d=d
0;
図7(A)参照)に移動させ、バックアップロール34を通って電流が流れるときの初期電気抵抗値を測定する(ステップS21)。
【0086】
次に、軸間距離を、両端部について均等に、指定位置(d=d
1;
図3(B)参照)に変更する(ステップS22)。
【0087】
この第2例の場合、軸間距離を指定位置に変更した段階で再度電気抵抗値が測定され、初期電気抵抗値と比べ抵抗上昇率が5%未満であるか否かが判定される(ステップS23)。抵抗上昇率が5%以上であったときは、軸間距離をホーム位置(
図7(A)参照)に近づける向きに、初期電気抵抗値に対する抵抗上昇率が5%未満となるまで微調整される。抵抗上昇率が5%以上になると、普通紙の場合に転写不良が生じるおそれがあるからである。
【0088】
軸間距離が両端部について均等に、かつ抵抗上昇率が5%未満となるように調整されると、次に画像形成に用いる用紙の種別が判定される(ステップS25)。
【0089】
このステップS25において、次のプリント(画像形成)に用いる用紙が普通紙であると判定されると、軸間距離がステップS22で指定距離に変更された段階のまま、この
図10に示す軸間距離調整処理を終了し、プリント(画像形成)が実行される。
【0090】
一方、ステップS25において、次のプリント(画像形成)に用いる用紙がコート紙であると判定されると、さらに、初期電気抵抗値と比べ抵抗上昇率が10%以上となるまで(ステップS27)、バックアップロール34の傾斜量が調整される(ステップS26;
図7(C)参照)。
【0091】
このように、この第2例の場合、軸間距離を両端部について均等に調整したときに抵抗上昇率が5%以上となったときには、抵抗上昇率が5%未満となるように軸間距離を調整しているため、第1例と比べ転写不良が生じる可能性が一層低く抑えられる。
【0092】
この第2例の、その他の点については第1例の場合と同様である。
【0093】
尚、ここでは、バックアップロール34と二次転写ロール51とのうちのバックアップロール34を移動させて軸間距離を調整しているが、二次転写ロール51を移動させて軸間距離を調整してもよい。
【0094】
また、ここでは、転写のための電圧をバックアップロール34に印加しているが、二次転写ロール51に転写用の電圧を印加し、その電圧とその二次転写ロール51と電源との間に流れる電流とから電気抵抗値を求めてもよい。
【0095】
さらに、ここでは、二次転写ロール51を採用した二次転写装置50を採用した例を示しているが、ここでいう二次転写ロール51に相当するロールで二次転写ベルトをその裏面側から押して、その二次転写ベルトを中間転写ベルト30に押し当てる構造の二次転写装置を採用してもよい。この場合は、バックアップロール34と、二次転写ロール51に相当する、二次転写ベルトをその裏面側から押すロールとの間で上記と同様の軸間距離調整が行なわれる。