【文献】
尾崎 英美,會田 信子,杉浦 伸一,履物の相違が歩行動作に与える影響,日本看護医療学会雑誌,2011年,第13巻,第2号,第56−65頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置は、ヒトが普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間に着目し、当該期間にわたって継続的に歩行姿勢を評価し、当該期間内における歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)をユーザに報知するものではなかった。そのため、ユーザは、日常的な一連の歩行において常に正しく歩くことができているか否か、どのようなタイミングで歩行姿勢が悪くなるのか、といった情報を知ることが難しかった。
【0007】
以上を鑑み、本発明の一態様により、日常生活での連続した歩行における歩行姿勢の良否の時間的な推移をユーザにとってよりわかりやすく提示できる歩行姿勢計が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様により、日常生活での連続した歩行における歩行姿勢の良否の時間的な推移をユーザにとってよりわかりやすく提示できる方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による歩行姿勢計は、被測定者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢計であって、被測定者の腰の正中線上に装着される加速度センサと、10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、前記加速度センサの出力に基づいて前記被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求める評価部と、繰り返し求められた前記評価量を時系列で並べて表示画面に表示する表示処理部と、を備え
、
前記評価部は、前記単位期間それぞれにおいて、前記単位期間よりも短い予め設定されたロギング期間においてのみ前記加速度センサの出力を取得し、当該取得した出力に基づいて当該単位期間についての前記評価量を求める、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様による歩行姿勢計では、加速度センサが腰の正中線上に装着される。評価部は、10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、加速度センサの出力に基づいて被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求め、表示処理部は、繰り返し求められた評価量を時系列で並べて表示画面に表示する。したがって、当該歩行姿勢計では、ヒトが普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間にわたって継続的に歩行姿勢を評価して当該期間内における歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)をユーザに報知する。そのため、ユーザは、日常の連続した歩行期間にわたる歩行姿勢の良否の推移を知ることができ、日常の連続歩行において良い歩き方ができた期間(単位期間)とそうでない期間(単位期間)とを容易に知ることができる。
さらに、この歩行姿勢計では、加速度センサの出力の取得は単位期間よりも短いロギング期間においてのみ行われる。すなわち、この歩行姿勢計は、単位期間全域にわたって加速度センサの出力の取得を行うわけではなく、断続的に取得(ロギング)を行う。したがって、歩行姿勢計の電力消費を抑制することができる。
【0011】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記表示処理部は、前記繰り返し求められた評価量を、棒グラフ、または、折れ線グラフとして前記表示画面に表示する、ことを特徴とする。
【0012】
この一実施形態による歩行姿勢計では、日常の連続した歩行期間にわたる歩行姿勢の良否の推移を視覚的により解り易いかたちでユーザに知らせることができる。
【0013】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記評価量の優劣に関する基準値が予め定められており、前記表示処理部は、前記棒グラフ、または、前記折れ線グラフの表示において、前記棒グラフまたは前記折れ線グラフの前記基準値以上に相当する部分を強調表示する、ことを特徴とする。
【0014】
この一実施形態による歩行姿勢計では、ユーザは、日常の歩行において良い歩き方ができた期間(単位期間)をより直観的に知ることができる。
【0015】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記繰り返し求められた評価量の間で優劣の順位をつける順位決定部を備え、前記表示処理部は、前記繰り返し求められた評価量のうち前記順位が予め定められた数の上位に相当する評価量の表示形態を、他の評価量の表示形態と異ならせる、ことを特徴とする。
【0016】
この一実施形態による歩行姿勢計では、ユーザは、日常の歩行において良い歩き方ができた期間(単位期間)を一目で知ることができる。
【0017】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記加速度センサの出力に基づいて、当該単位期間ごとに、前記評価量を求めることができるか否かを判断するエラー判断部を備え、前記エラー判断部が或る単位期間について前記評価量を求めることができないと判断した場合には、前記表示処理部は、その単位期間について前記評価量の表示に代えてエラー表示をする、ことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態による歩行姿勢計では、歩行姿勢計が被測定者の歩行姿勢を正しく評価できなかった期間(単位期間)については、評価量を表示しない。そのため、ユーザは、歩行姿勢計が被測定者の歩行姿勢を正しく評価できなかったことに起因してなされた評価を目にすることがなく、ユーザが自身の歩行姿勢について誤った認識を持つことを未然に防止できる。
【0019】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記上位に相当する評価量を合算または平均することにより得点を求める得点演算部と、前記得点演算部が求めた前記得点を前記表示画面に表示する得点表示処理部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態による歩行姿勢計では、歩行期間中の優れた歩行がなされた期間(単位期間)のみに基づく得点を表示することができる。そのため、全ての期間(単位期間)についての評価量を合算または平均して得点を導出する場合よりも、日常の連続歩行において特に歩行姿勢が改善され易い期間(歩行期間)における歩行姿勢の改善の成果をユーザに通知することができるようになる。そして、そのようにして導出された得点を見たユーザは、自身の歩行姿勢の改善の成果をいち早く知ることができる。そうすることで、ユーザの歩行姿勢改善への意欲をさらに掻き立てることができ、ユーザの歩行姿勢の改善を促進することができるようになる。
【0023】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記繰り返し求められた評価量を記憶する記憶部を備え、前記記憶部は、前記被測定者の歩行条件に関するデータを前記繰り返し求められた評価量に関連づけて記憶する、ことを特徴とする。
【0024】
この一実施形態による歩行姿勢計では、歩行姿勢に関する評価結果に影響を与える可能性がある被測定者の歩行条件に関するデータを評価量に関連付けて記憶することができ、歩行姿勢の分析において有用な情報を記憶することができる。
【0025】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記被測定者が歩行に用いた履物の情報を受け付ける条件入力部を備え、前記記憶部は、前記条件入力部が受け付けた情報を用いて、前記歩行条件に関するデータとして、前記被測定者が歩行する際に履いていた履物の種類に関するデータを記憶し、前記表示処理部は、前記表示画面に前記履物の種類を表す情報を表示する、ことを特徴とする。
【0026】
この一実施形態による歩行姿勢計では、被測定者の歩行姿勢に影響を及ぼすことがある被測定者の履物についての情報を記憶することができる。したがって、歩行姿勢の分析において履物の影響を考慮した分析をするために必要な情報を評価量と併せて記憶することが可能である。なお、履物の種類には、スリッパ、サンダル、スニーカ、ハイヒール等が含まれてよく、さらに、素足が含まれてもよく、かつこれに限定されない。
【0027】
本発明の別の一態様によるプログラムは、被測定者の歩行姿勢を評価する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記方法は、被測定者の腰の正中線上に装着された加速度センサの出力を取得するステップと、10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、前記加速度センサの出力を用いて前記被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求めるステップと、繰り返し求められた前記評価量を時系列で並べて表示画面に表示するステップと、を備え
、
前記取得するステップは、前記単位期間それぞれにおいて、前記単位期間よりも短い予め設定されたロギング期間においてのみ前記加速度センサの出力を取得し、前記評価量を繰り返し求めるステップは、前記取得するステップにおいて当該取得した出力に基づいて当該単位期間についての前記評価量を求める、ことを特徴とする。
【0028】
当該プログラムを実行させることにより、コンピュータは、まず被測定者の腰の正中線上に装着された加速度センサの出力を取得する。そして、10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、加速度センサの出力に基づいて被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求め、繰り返し求められた評価量を時系列で並べて表示画面に表示する。したがって、コンピュータは、ヒトが普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間において継続的に歩行姿勢を評価して当該期間内における歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)をユーザに報知することができる。そのため、ユーザは、日常の連続した歩行期間にわたる歩行姿勢の良否の推移を知ることができ、日常の歩行において良い歩き方ができた期間(単位期間)とそうでない期間(単位期間)とを容易に知ることができる。
さらに、このプログラムでは、加速度センサの出力の取得は単位期間よりも短いロギング期間においてのみ行われる。すなわち、このプログラムは、単位期間全域にわたって加速度センサの出力の取得を行うわけではなく、断続的に取得(ロギング)を行う。したがって、コンピュータの電力消費を抑制することができる。
本発明の別の一態様による歩行姿勢計は、
被測定者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢計であって、
被測定者の腰の正中線上に装着される加速度センサと、
10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、前記加速度センサの出力に基づいて前記被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求める評価部と、
繰り返し求められた前記評価量を時系列で並べて表示画面に表示する表示処理部と、
前記加速度センサの出力に基づいて、当該単位期間ごとに、前記評価量を求めることができるか否かを判断するエラー判断部と、を備え、
前記エラー判断部が或る単位期間について前記評価量を求めることができないと判断した場合には、前記表示処理部は、その単位期間について前記評価量の表示に代えてエラー表示をする、ことを特徴とする。
本発明のさらに別の一態様による歩行姿勢計は、
被測定者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢計であって、
被測定者の腰の正中線上に装着される加速度センサと、
10分以下の予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、前記加速度センサの出力に基づいて前記被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求める評価部と、
繰り返し求められた前記評価量を時系列で並べて表示画面に表示する表示処理部と、
前記繰り返し求められた評価量の間で優劣の順位をつける順位決定部と、を備え、
前記表示処理部は、前記繰り返し求められた評価量のうち前記順位が予め定められた数の上位に相当する評価量の表示形態を、他の評価量の表示形態と異ならせ、
さらに、前記上位に相当する評価量を合算または平均することにより得点を求める得点演算部と、
前記得点演算部が求めた前記得点を前記表示画面に表示する得点表示処理部と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明のさらに別の一態様による歩行姿勢計は、被測定者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢計であって、被測定者の腰の正中線上に装着される加速度センサと、予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、前記加速度センサの出力に基づいて前記被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求める評価部と、前記繰り返し求められた評価量を記憶する記憶部と、前記被測定者が歩行に用いた履物の情報を受け付ける条件入力部と、を備え、前記記憶部は、前記条件入力部が受け付けた情報を用いて、歩行条件に関するデータとして、前記被測定者が歩行する際に履いていた履物の種類に関するデータを前記繰り返し求められた評価量に関連づけて記憶する。
【0030】
本発明のさらに別の一態様による歩行姿勢計では、加速度センサが腰の正中線上に装着される。評価部は、予め定められた連続した歩行期間内において、予め定められた単位期間ごとに、加速度センサの出力に基づいて被測定者の歩行姿勢を定量的に表した評価量を繰り返し求めるとともに、条件入力部によって、被測定者が歩行に用いた履物の情報が取得される。そして、条件入力部が受け付けた情報を用いて、歩行条件に関するデータとして、被測定者が歩行する際に履いていた履物の種類に関するデータが、繰り返し求められた評価量と関連づけられて記憶部に記憶される。そのため、日常の歩行における歩行姿勢についての評価量を、当該歩行に用いられた履物の種類と関連付けて容易に蓄積することが可能となり、歩行姿勢の詳細な分析に資する有用なデータを容易に蓄積することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
以上より明らかなように、この発明の一態様による歩行姿勢計によれば、ユーザは、普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間にわたる歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)を容易に知ることができるようになる。したがって、ユーザは、日常的な一連の歩行において常に正しく歩くことができているか否か、どのようなタイミングで歩行姿勢が悪くなるのか、といった情報を知ることが容易になる。
【0032】
また、この発明の一態様によるプログラムをコンピュータに実行させることにより、ユーザは、普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間にわたる歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)を容易に知ることができるようになる。したがって、ユーザは、日常的な一連の歩行において常に正しく歩くことができているか否か、どのようなタイミングで歩行姿勢が悪くなるのか、といった情報を知ることが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1は、この発明の実施の形態の歩行姿勢計(全体を符号1で示す。)のシステム構成を示している。この歩行姿勢計1は、活動量計100と、スマートフォン200とを含んでいる。活動量計100とスマートフォン200とは、この例ではBLE(Bluetooth low energy;低消費電力Bluetooth、Bluetooth Core Specification Ver. 4.0において規定。)通信によって互いに通信可能になっている。
【0036】
図2に示すように、活動量計100は、ケーシング100Mと、このケーシング100Mに搭載された、制御部110と、発振部111と、加速度センサ112と、メモリ120と、操作部130と、表示部140と、BLE通信部180と、電源部190と、リセット部199とを含む。
【0037】
ケーシング100Mは、この活動量計100を携帯し易いように、ヒトの手のひらに収まる程度の大きさに形成されている。
【0038】
発振部111は、水晶振動子を含み、この活動量計100の動作タイミングの基準となるクロック信号を発生する。発振部111は、クロックジェネレータとしての機能を有するモジュールチップでよい。
【0039】
加速度センサ112は、ケーシング100Mが受ける3軸(3方向)の加速度をそれぞれ検出して、制御部110へ出力する。加速度センサ112は、3軸加速度センサのモジュールチップでよい。
【0040】
メモリ120は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、この活動量計100を制御するためのプログラムのデータを記憶する。また、RAMは、この活動量計100の各種機能を設定するための設定データ、加速度測定結果および演算結果のデータなどを記憶する。メモリ120は、以下で詳細に説明する記憶部を構成してもよい。
【0041】
制御部110は、上記クロック信号に基づいて動作するCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)を含み、メモリ120に記憶された活動量計100を制御するためのプログラムに従って、加速度センサ112からの検知信号に基づいて、この活動量計100の各部(メモリ120、表示部140およびBLE通信部
180を含む。)を制御する。この制御部110は、少なくとも、上下軸加速度、左右軸加速度、および、前後軸加速度の少なくともいずれかの時系列データを処理することができる信号処理系を含む。制御部110は、以下で詳細に説明する評価部、および、エラー判断部として動作することができる。
【0042】
操作部130は、この例ではボタンスイッチからなり、電源オン・オフ切り替えの操作、表示内容切り替えの操作など、適宜の操作入力を受け付ける。
【0043】
表示部140は、この例ではLCD(液晶表示素子)または有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイからなる表示画面を含み、この表示画面に制御部110から受けた信号に従って所定の情報を表示する。表示部140は、以下で詳細に説明する報知部として動作してもよい。表示部140は、電源のオン/オフ、動作状態等を点灯、消灯、点滅、等で表示するLED(発光ダイオード)であってもよい。
【0044】
電源部
190は、この例ではボタン電池からなり、この活動量計100の各部へ電力を供給する。
【0045】
BLE通信部
180は、スマートフォン200との間でリアルタイムで通信を行う。例えば、スマートフォン200へ測定結果を表す情報などを送信する。また、スマートフォン200から操作指示を受信する。BLE通信部
180は、BLE機能を備えたモジュールチップでよい。
【0046】
リセット部199は、スイッチからなり、制御部110の動作やメモリ120の記憶内容をリセットして初期化する。
【0047】
図3に示すように、スマートフォン200は、本体200Mと、この本体200Mに搭載された、制御部210と、メモリ220と、操作部230と、表示部240と、BLE通信部280と、ネットワーク通信部290とを含む。このスマートフォン200は、市販のスマートフォンに、活動量計100への指示を行わせるようにアプリケーションソフトウェア(コンピュータ・プログラム)をインストールしたものである。
【0048】
制御部210は、CPUおよびその補助回路を含み、スマートフォン200の各部を制御し、メモリ220に記憶されたプログラムおよびデータに従って処理を実行する。すなわち、操作部230、および、通信部280,290から入力されたデータを処理し、処理したデータを、メモリ220に記憶させたり、表示部240(表示画面)で表示させたり、通信部280,290から出力させたりする。制御部210は、以下で詳細に説明する表示処理部、順位決定部、得点演算部、および、得点表示処理部として動作することができる。
【0049】
メモリ220は、制御部210でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAMと、制御部210で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROMとを含む。また、メモリ220の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などが用いられてもよい。メモリ220や補助記憶装置は、以下で詳細に説明する記憶部を構成する。
【0050】
操作部230は、この例では、表示部240上に設けられたタッチパネルからなっている。なお、キーボードその他のハードウェア操作デバイスを含んでいてもよい。
【0051】
表示部240は、表示画面(例えばLCDまたは有機ELディスプレイからなる)を含む。表示部240は、制御部210によって制御されて、所定の画像を表示画面に表示させる。
【0052】
BLE通信部280は、活動量計100との間でリアルタイムで通信を行う。例えば、活動量計100へ操作指示を送信する。また、活動量計100から測定結果を表す情報などを受信する。
【0053】
ネットワーク通信部290は、制御部210からの情報をネットワーク900を介して他の装置へ送信するとともに、他の装置からネットワーク900を介して送信されてきた情報を受信して制御部210に受け渡すことができる。
【0054】
例えば
図4(A)に示すように、この歩行姿勢計1が例えばユーザとしての被測定者90によって使用される場合、活動量計100が装着クリップ100C(
図1中に示す)によって被測定者90の正中線91上の腰の背面側に装着される。
【0055】
この例では、
図4(B)に示すように、被測定者90にとって前後方向をX軸、左右方向をY軸、上下方向をZ軸とする。そして、活動量計100の加速度センサ112は、被測定者90が前方へ歩行するのに伴ってケーシング100Mが受けるX軸(前後軸)の加速度、Y軸(左右軸)の加速度、Z軸(上下軸)の加速度をそれぞれ出力するものとする。
【0056】
この歩行姿勢計1によって測定を行う場合、被測定者90は、活動量計100とスマートフォン200の電源をオンする。それとともに、スマートフォン200のアプリケーションソフトウェアを起動して、操作部230、BLE通信部280を介して、活動量計100へ測定スタートを指示する(
図12参照)。
図12は、スマートフォン200の操作部230(表示部240)の表示例である。ここでの「はじめる」ボタン241が、ユーザ(被測定者90)から測定スタートの指示を受け付ける部分である。また、この画面には、被測定者の歩行条件に関するデータを入力するためのボタンとしてボタン242が設けられている。これは、ユーザ(被測定者90)が歩行条件に関するデータとして歩行に用いる履物の種類に関する情報を入力するためのボタンである。ユーザは当該ボタン242をタップすることにより履物の種類を選択するためのメニューを呼び出し、メニューから、素足、サンダル、ハイヒール等といった履物を選択することにより歩行に用いる履物の種類を入力することができる。入力されたデータは、歩行姿勢および左右バランスの評価量と関連付けて記憶部(メモリ220等)に記憶される。
【0057】
その状態で、被測定者90は日常生活での普通の歩行(たとえば、家から駅まで、駅から勤務先までといった歩行)を行う。
【0058】
すると、活動量計100の制御部110は評価部として働いて、後述する演算を行う。そして、その評価結果を表す情報を、BLE通信部180を介して、スマートフォン200へ送信する。スマートフォン200の制御部210は表示処理部として働いて、後述する処理を行い、評価結果の表示を行う。
【0059】
図11は、実施の形態による活動量計100の制御部110による動作フローを示している。活動量計100の制御部110は、電源がオンされると、ステップS1に示すように、スマートフォン200からの測定スタートの指示を待つ。スマートフォン200からの測定スタートの指示を受信すると(ステップS1でYES)、ステップS2およびステップS3に示すように、制御部110は、発振部111の出力を利用したタイマによる計時を開始する。ステップS2においては、日常の連続歩行に合わせた歩行期間(たとえば10分)を計時する第1タイマによる計時を開始する。ステップS3においては、歩行期間中の複数の歩行姿勢評価の単位期間(たとえば30秒)を計時する第2タイマによる計時を開始する。なお、歩行期間は、10分に限定されない。たとえば、3分といった長さでもよい。同じく、単位期間は、30秒に限定されない。たとえば、1分といった長さでもよい。
【0060】
そして、各単位期間の最初の10秒間(これは、被測定者の歩行周期が1秒である場合の20歩分の時間に相当する。これを「ロギング期間」と呼ぶ。)、制御部110は、評価部として動作することにより、加速度センサ112からの出力を取得する。加速度センサ112から10秒間にわたり出力を取得した後、評価部は、加速度センサの出力の取得を停止する(ステップS4)。ここでの取得の停止は、省電力化を目的としてなされるものである。
【0061】
ステップS4の処理が完了した時点で、評価部である制御部110は、加速度センサの出力から生成した3軸方向加速度の時系列データをメモリ120に保持する。次に、制御部110は、エラー判断部として動作することにより、1方向または複数方向の加速度時系列データに基づいて、当該単位期間における加速度時系列データが適切に歩行姿勢を評価することができる程度に正しく測定されたか否かを判断する(ステップS5)。たとえば、当該単位期間において、被測定者が曲がり角を曲がらなかったかどうか、あるいは、被測定者がカバンを持つ手をかえたりしなかったか、といった判断がなされる。
【0062】
そして、ステップS6において、当該単位期間における加速度時系列データが適切に歩行姿勢を評価することができる程度に正しく測定されたと判断された場合(ステップS6における「YES」)、制御部110は、評価部として動作することにより、当該単位期間における被測定者の歩行姿勢(たとえば、重心の前後方向の偏り)を推定する(ステップS7)。また、評価部は、当該単位期間における被測定者の歩行姿勢の左右バランス(たとえば、左足が支持脚であるときの歩行動作と右脚が支持脚であるときの歩行動作との差異)を推定する(ステップS8)。そして、評価部は、ステップS7およびステップS8における推定に基づいて、当該単位期間における被測定者の歩行姿勢、および、左右バランスを多段的に評価する(ステップS9)。
【0063】
他方、ステップS6において、当該単位期間における加速度時系列データが適切に歩行姿勢を評価することができる程度に正しく測定されなかったと判断された場合(ステップS6における「NO」)、制御部110は、評価部として動作することにより、当該単位期間における被測定者の歩行姿勢および左右バランスを評価することができなかった旨を示すデータを記録する(ステップS12)。
【0064】
ステップS10において、評価部は、ステップS9においてなされた評価の結果、または、ステップS12において記録された測定エラーを示すデータをスマートフォン200へ出力する。
【0065】
制御部110は、第2タイマの計時が30秒を超えるまで、待機する(ステップS11)。
【0066】
第2タイマの計時が30秒を超えると次に制御部110は、第1タイマの計時が10分を超えたか否かを判断する(ステップS13)。第1タイマの計時が10分を超えていない場合(ステップS13における「NO」)、処理は、ステップS3へ移行する。第1タイマの計時が10分を超えていた場合(ステップS13における「YES」)、処理は、終了する。
【0068】
図5は、ヒトの歩容と、歩行周期のうち1歩分に相当する基準期間(図中のT7(=StepT))の間に、腰に装着された活動量計100の加速度センサ112から出力される上下軸加速度(鉛直上方を正とするZ軸方向加速度)の時間変化波形の典型例との関係を示す図である。
【0069】
繰り出された前足(図では右足)の踵が移動面と接地するタイミング(踵接地タイミング)の近傍において、上下軸加速度は、ゼロクロス点を通過して負から正へ転じる。
【0070】
その後、上下軸加速度には、3つのピーク(極大点)(P
1(時間t=T
1)、P
2(時間t=T
3)、P
3(時間t=T
5))およびその間の谷(極小点)(V
1(時間t=T
2)、V
2(時間t=T
4))が現れる。歩容における、立脚(図では右足)と遊脚(図では
左足)とが進行方向に関して略一致するタイミング(立脚中期タイミング)は、第3のピークP3が現れたタイミング近傍に対応する。
【0071】
歩容における立脚中期タイミングを超えると、上下軸加速度は、再びゼロクロス点を通過して正から負に転じ、最小点(V
3(時間t=T
6))を通過し、やがて時間t=T
7において再度ゼロクロス点(時間t=T
7)を通過して負から正へ転じる。時間t=T
7におけるゼロクロス点は、(図では左足を前足とする)次の一歩の踵接地タイミングである。
【0072】
このように、上下軸加速度には、ヒトの歩行の一歩の間に図示して説明したような波形が現れる。本明細書では、前足の踵が接地したタイミング(踵接地タイミング)から次の踵接地タイミングまでの期間(StepT)を、基準期間として規定する。なお、以下の説明において特に区別する必要がある場合に限り、左足の踵接地タイミングから右足の踵接地タイミングまでの期間を左足基準期間と称し、右足の踵接地タイミングから左足の踵接地タイミングまでの期間を右足基準期間と称することとして、左足による一歩と右足による一歩のそれぞれの基準期間を区別する。
【0073】
上方を正とする前記上下軸加速度の時間的な変化波形においては、加速度値が負から正へ変化するゼロクロス点の出現タイミングから次の負から正へ変化するゼロクロス点の出現タイミングまでの期間が一基準期間に相当する。
【0074】
次に、
図6A、
図6B、
図7A、および、
図7Bを参照し、エラー判断部として動作する制御部110がする、加速度時系列データが適切に歩行姿勢を評価することができる程度に正しく測定されたか否かについての判断を説明する。
【0075】
図6Aは、被測定者がまっすぐに歩行した場合に得られる、左右軸加速度時系列データの例を示す図である。ここでは、各基準期間の境界が破線で示されている。
図6Aより明らかなように、被測定者がまっすぐに歩行する場合、左右軸加速度時系列データにおいては、極端に大きな値(たとえば、絶対値が8[m/s
2]を超えるような値)は見られない。
【0076】
他方、
図6Bは、被測定者が曲がり角などを曲がったときに得られる、左右軸加速度時系列データの例を示す図である。
図6Bより明らかなように、被測定者が曲がり角などを曲がったとき、左右軸加速度時系列データにおいて極端に大きな値(たとえば、絶対値が8[m/s
2]を超えるような値)が現れる。
【0077】
そこで、エラー判断部は、当該単位時間において得られた左右軸加速度時系列データにおいて、予め定めた閾値(たとえば、閾値+THY=+8[m/s
2]、閾値−THY=−8[m/s
2])を超えることがあったか否かを判定する(ステップS5)。そして、エラー判断部は、左右軸加速度時系列データにおいて、当該閾値を超えることがあったと判定した場合に当該単位期間においては適切に歩行姿勢を評価するためのデータが得られなかったとして、測定条件エラーであると判断する(ステップS6における「NO」)。
【0078】
図7Aは、被測定者がカバンを持ちかえることなく歩行した場合に得られる、上下軸加速度時系列データの例を示す図である。
図7Aより明らかなように、被測定者がカバンを持ちかえることなく歩行する場合、上下軸加速度時系列データにおいては、極端に小さな値(たとえば、−5[m/s
2]を下回るような値)は見られない。
【0079】
他方、
図7Bは、被測定者が歩きながらカバンを持ちかえたときに得られる、上下軸加速度時系列データの例を示す図である。
図7Bより明らかなように、被測定者が歩きながらカバンを持ちかえたときには、上下軸加速度時系列データにおいて極端に小さな値(たとえば、−5[m/s
2]を下回るような値)が現れる。
【0080】
そこで、エラー判断部は、当該単位時間において得られた上下軸加速度時系列データにおいて、予め定めた閾値(たとえば、閾値THZ=−5[m/s
2])を下回ることがあったか否かを判定する(ステップS5)。そして、エラー判断部は、上下軸加速度時系列データにおいて、予め定めた閾値を下回ることがあったと判定した場合に当該単位期間においては適切に歩行姿勢を評価するためのデータが得られなかったとして、測定条件エラーであると判断する(ステップS6における「NO」)。
【0081】
このように、エラー判断部は、各単位時間において歩行者が歩行姿勢の評価に影響を及ぼすような特異な動作(曲がり角を曲がる動作、カバンを持ちかえる動作等)を歩行中に行ったか否か、を、同単位時間に取得した1軸または複数軸の加速度に基づいて判断し、被測定者が歩行中にそのような特異な動作をしたと判断した場合、当該単位期間については歩行姿勢、左右バランス等の評価を行わない。また、後述の評価結果の表示においても、当該単位期間の評価量の表示を行わず、測定エラーである旨を表示する。そうすることによって、ユーザに誤った評価結果が提示されずにすむ。また、特異な動作には、曲がり角を曲がる動作、カバンを持ちかえる動作に加え、障害物を避ける動作や、信号待ちのために単位期間において所定歩数(たとえば10歩)歩かなかった場合などを含めてもよい。その場合にも、エラー判断部は、加速度センサ112の出力に基づいて、そういった動作の有無を判断することができる。
【0082】
次に、歩行姿勢の推定(ステップS7)について説明する。制御部110は評価部として動作することにより、単位期間の上下軸加速度時系列加速度データを用いて、被測定者の歩行中の重心の前後方向の位置の偏り(前寄り/後寄り)に対応する量(前寄り度/後寄り度)を算出する。
【0083】
図
8を参照し、歩行姿勢の推定(重心の位置の推定)の方法について説明する。図
8(A)、図
8(B)、および、図
8(C)は、ヒトの歩行中の姿勢(前脚の踵が接地したタイミング)を示す図である。図
8(A)は、歩行中の重心位置が前寄りの位置にあるヒトを横から見たときの模式図であり、図
8(B)は、歩行中の重心位置が中央付近にあるヒトを横から見たときの模式図であり、図
8(C)は、歩行中の重心位置が後寄りの位置にあるヒトを横から見たときの模式図である。
【0084】
図
8(D)、図
8(E)、および、図
8(F)は、前脚の踵が接地したタイミングから遊脚である後脚が進行方向に関して立脚である前脚と一致するタイミングまでの期間において加速度センサが出力する上下軸加速度の時間変化波形の典型例を示す図である。図
8(D)は、重心位置が前寄りの位置にあるヒト(図
8(A))の上下軸加速度時間変化波形の典型例であり、図
8(E)は、重心位置が中央付近にあるヒト(図
8(B))の上下軸加速度時間変化波形の典型例であり、図
8(F)は、重心位置が後寄りの位置にあるヒト(図
8(C))の上下軸加速度時間変化波形の典型例である。
【0085】
図
8(D)、図
8(E)、および、図
8(F)を比較すればわかるように、重心位置を前寄りに偏らせて歩行するヒトの上下軸加速度の時間変化波形(図
8(D))においては、重心位置を身体の中心部に近い領域に置いて歩行するヒトの上下軸加速度の時間変化波形(図
8(E))との比較において、(負から正へ転じるゼロクロス点を始期とする)一基準期間において最初に現れる極大点の値ZAP1が小さくなり、3番目に現れる極大点の値ZAP3が大きくなる傾向がある。これらの傾向は、重心の前方向への偏りの程度が強くなるにつれ、より顕著になる。
【0086】
逆に、重心位置を後寄りに偏らせて歩行するヒトの上下軸加速度の時間変化波形(図
8(F))においては、重心位置を身体の中心部に近い領域に置いて歩行するヒトの上下軸加速度の時間変化波形(図
8(E))との比較において、(負から正へ転じるゼロクロス点を始期とする)一基準期間において最初に現れる極大点の値ZAP1が大きくなり、3番目に現れる極大点の値ZAP3が小さくなる傾向がある。これらの傾向は、重心の後方向への偏りの程度が強くなるにつれ、より顕著になる。
【0087】
これらの傾向をまとめると、以下のとおりである。
・(1)第1の極大点の値ZAP1を同一基準期間の第2の極大点の値ZAP2で除した値(前寄り度Kg1(Kg1=ZAP1/ZAP2))が大きいほど、歩行中のヒトの重心の位置の前方向への偏りの程度(前寄り度)は大きい。
・(2)第3の極大点の値ZAP3を同一基準期間の第2の極大点の値ZAP2で除した値(後寄り度Kg3(Kg3=ZAP3/ZAP2))が大きいほど、歩行中のヒトの重心の位置が後方向への偏りの程度(後寄り度)は大きい。
なお、上記前寄り度Kg1および後寄り度Kg3導出過程において第1の極大点の値ZAP1および第3の極大点の値ZAP3を同一基準期間における第2の極大点の値ZAP2で除しているのは、測定環境や被測定者の個体差による影響を低減させることを目的とする規格化である。
【0088】
評価部として動作する制御部110は、前寄り度Kg1、後寄り度Kg3を比較することにより、たとえば、前寄り度Kg1と後寄り度Kg3との比を求めることにより、単位期間における被測定者の歩行姿勢を推定する。この比が1に近いほど、前後方向に関し、重心が被測定者の中心に近い位置にあることを示すものである。
【0089】
次に、左右バランスの推定(ステップS7)について説明する。制御部110は評価部として動作することにより、単位期間の1つまたは複数の軸方向の加速度時系列加速度データを用いて、被測定者の歩行中の左右バランス(左足での一歩における動作と右足での一歩における動作との差異)に対応する量を算出する。
【0090】
図9は、ある単位期間において測定された上下軸加速度時系列データのグラフである。制御部110は評価部として動作することにより、各基準期間(904,905,906,…)において加速度の最大値と最小値を検出し、最大値と最小値との差であるPP値(PP904,PP905,PP906,…)を求める。そして、評価部は、偶数番目の基準期間のPP値(左脚または右脚を支持脚とする一歩に相当する基準期間のPP値(PP904,PP906,…))と、奇数番目の基準期間のPP値(右脚または左脚を支持脚とする一歩に相当する基準期間のPP値(PP905,PP907,…))と、の比を求める。当該比は、1に近いほど、左脚および右脚を支持脚とする一歩に相当する基準期間における歩行動作(この場合、特に上下方向の揺れ)に差異が小さいことを示すものである。
【0091】
同様、評価部は、左右軸加速度時系列データ、および、前後軸加速度時系列データそれぞれを用いて同様に、偶数番目の基準期間のPP値と、奇数番目の基準期間のPP値と、の比を求める。当該比もまた、1に近いほど、左脚および右脚を支持脚とする一歩に相当する基準期間における歩行動作(この場合それぞれ、左右方向の揺れ、および、前後方向の揺れ)に差異が小さいことを示すものである。
【0092】
なお、上述したように、各単位期間の最初の10秒間のみ、制御部110は、評価部として動作することにより、加速度センサ112からの出力を取得する。加速度センサ112から10秒間にわたり出力を取得した後、評価部は、加速度センサの出力の取得を停止する。
図10は、この制御部による加速度センサ112からの出力の取得のON/OFFについてのタイミングチャートである。このように、制御部110は、各単位期間において最初の10秒間(ロギング期間)でのみ加速度データの取得(ロギング)を行い、残る20秒間(非ロギング期間)では、加速度データの取得を行わない。このように断続的に加速度データのロギングを行っても、全歩行期間にわたって加速度データを連続的に取得した場合と同様の歩行姿勢および左右バランスの評価を行うことが可能である。さらに、このように断続的に加速度データのロギングを行うことで、活動量計100の電力消費を格段に抑制することができる。
【0093】
最後に、制御部110は評価部として動作することにより、歩行姿勢および歩行動作左右バランスそれぞれを多段的に評価する(ステップS9)。
【0094】
評価部は、各単位期間の歩行姿勢(重心位置の偏り)を、たとえばステップS7で得た推定結果を複数の基準値と比較することにより多段的に評価する。評価部は、重心の位置が中心に近ければ近いほど(Kg1とKg3との比が1に近いほど)、当該単位期間における歩行姿勢について高評価を与える。
【0095】
また、評価部は、各単位期間の左右バランスを、たとえばステップS8で得た推定結果を複数の基準値と比較することにより多段的に評価する。評価部は、偶数番目の基準期間のPP値と、奇数番目の基準期間のPP値との比が、1に近いほど、当該単位期間における左右バランスについて高評価を与える。なお、上下軸加速度、左右軸加速度、前後軸加速度のそれぞれについて、偶数番目の基準期間のPP値と気数番目の基準期間のPP値との比が得られている場合には、それぞれについて独立して評価を与え、一単位期間について3種類の左右バランス評価量を出力してもよい。
【0096】
このようにして、評価部は、歩行姿勢について1つの評価量をスマートフォン200へ出力するとともに、左右バランスについて1つまたは複数の評価量をスマートフォン200へ出力する。
【0097】
以下、スマートフォン200の動作について説明する。
図16は、スマートフォン200の制御部210がする動作のフローを示す図である。
【0098】
ステップS21において、スマートフォン200の制御部210は、歩行期間全期間についての歩行姿勢および左右バランスの評価量をすでに活動量計100から受け取ったかどうかをチェックする。制御部210が取得した評価量は、記憶部(メモリ220)に記憶される。
【0099】
ステップS22において、制御部210は順位決定部として動作することにより、単位期間毎に繰り返し求められた複数の評価量について、その優劣に基づいて順位を決定する。
【0100】
ステップS23において、制御部210は得点演算部として動作することにより、順位決定部が求めた順位に従い、上位の3つの評価量を合算することにより得点を導出する。なお、得点演算部は、上位3つの評価量の平均を得点として導出してもよい。また、得点の導出に使用する評価量は上位3つに限らない。得点演算部は、予め定められた数の上位評価量を用いて得点を導出すればよい。
【0101】
ステップS24において、制御部210は得点表示処理部として動作することにより、表示画面(表示部240)に、得点(10分歩行評価スコア)を表示させる。
図13は、得点の表示例である。このように表示画面(表示部240)には、ステップS23で求めた上位3つの評価量に基づく得点SCR1が表示される。このように上位評価量のみに基づく得点をユーザに提示することで、ユーザは、歩行姿勢の計測を重ねるたびに歩行姿勢が改善されていることを容易に実感することができるようになり、歩行姿勢改善への意欲が亢進される。また、表示画面(表示部240)には、得点SCR1のほかに、歩行姿勢に関するコメントおよび得点SCR2や、左右バランス(歩行バランス)に関するコメントおよび得点SCR3を表示してもよい。また、スタート指示画面(
図12)と同様、被測定者の歩行条件に関するデータを入力するためのボタン242が設けられてもよい。
【0102】
ステップS25において、制御部210は表示処理部として動作することにより、表示画面(表示部240)に、歩行期間(10分間)内の各単位期間において求められた評価量を時系列で並べて表示させる。
図14は、単位期間ごとに繰り返し求められた評価量を棒グラフとして表示画面(表示部240)に表示させた例の図である。このとき、表示処理部は、ステップS22において順位決定部が決定した順位に従って、ユーザが、上位評価量を、その他の評価量と視覚的に識別可能に表示する。ここでは、単位期間「1」(歩行期間1分経過後から始まる単位期間)、単位期間「2」(同様に歩行期間2分経過後から始まる単位期間)、および、単位期間「3.5」(歩行期間3分30秒経過後から始まる単位期間)の表示MKを、他の単位期間の表示NMKと異ならせることにより、ユーザが上位の評価量が得られた時間帯を識別できるようになっている。
【0103】
また、表示処理部は、予め定めた評価量の優劣に関する基準値(ここでは、歩行姿勢についてLv20、左右バランス(歩行バランス)についてLv10)を用いて、棒グラフ244のうち当該基準値以上に相当する部分244bを強調表示させてもよい。この強調表示においては、基準値以上に相当する部分244bと、基準値未満の部分244aとを、ユーザが視覚的に識別可能なように両者の表示形態を異ならせて表示すればよい。また、活動量計100の制御部110(エラー判断部)が、加速度時系列データが適切に歩行姿勢を評価することができる程度に正しく測定されなかったと判断した単位期間の評価量表示については、表示処理部は、評価量に代えてエラー表示243を行う。
【0104】
図15は、評価量の時系列表示の別例を示す図である。本図に示されるように、評価量の時系列表示は、折れ線グラフの形態で行われてもよい。この場合も、折れ線グラフは、予め定めた評価量の優劣に関する基準値(ここでは、歩行姿勢についてLv20)を用いて、折れ線グラフ245のうち当該基準値以上に相当する部分を強調表示させてよい。このように、評価量の時系列表示を棒グラフや折れ線グラフとして実施することは、ユーザの理解をより容易にするという点で、非常に有用である。
【0105】
以上述べたように、本発明の実施形態による歩行姿勢計においては、ユーザが普段日常生活において連続歩行する期間、例えばせいぜい10分、といった期間における歩行姿勢の推移(良否の時間的な変化)をユーザに知らせることができる。そのため、ユーザは、日常的な一連の歩行において常に正しく歩くことができているか否か、どのようなタイミングで歩行姿勢が悪くなるのか、といった情報を容易に知ることができる。
【0106】
最後に、被測定者が歩行に用いる履物の違いが、測定される加速度、ひいては歩行姿勢の評価結果に及ぼす影響について説明する。本発明の発明者らは、研究により、履物の違いにより歩き方が変化する被測定者が少なからず存在することを認識するに至った。
図17は、被測定者がスニーカを履いて歩行したときに得られた上下軸前後軸合成加速度の波形グラフである。
図18は、同被測定者がハイヒールを履いて歩行したときに得られた上下軸前後軸合成加速度の波形グラフである。このように、各ケースにおける基準期間
の波形PS172と波形182
の各波形の前半を見れば明らかなように同じ被測定者から得られる加速度は履物の影響を受けて異なる傾向を示すことがある。したがって、歩行姿勢および左右バランスの評価においては、被測定者の歩行条件(たとえば、本例で説明する履物の種類といった条件)の違いを考慮することは有意である。そこで、本発明の実施形態による歩行姿勢計においては、ユーザが歩行条件(たとえば、履物の種類)を入力するための構成を追加している。ユーザが入力した歩行条件の情報は、評価量と関連付けて記憶され、後の分析において利用される。
【0107】
上述の実施形態では、活動量計100とスマートフォン200とは、BLE通信によって互いに通信を行ったが、これに限られるものではない。例えば、活動量計100とスマートフォン200とは、NFC(Near Field Communication;近距離無線通信)によって、スマートフォン200と活動量計100とが互いに接近したときに通信を行うようにしてもよい。
【0108】
また、上述の実施形態では、本発明の歩行姿勢計を、活動量計100とスマートフォン200とを含むシステムとして構成したが、これに限られるものではない。
【0109】
例えば、本発明の歩行姿勢計を、スマートフォン200のみで構成しても良い。その場合、スマートフォン200が加速度センサを含むものとする。また、スマートフォン200のメモリ220には、制御部210に、ヒトの歩行姿勢が正しい姿勢であるか否かを定量的に評価するプログラム、より詳しくは、
日常生活での歩行姿勢の良否の時間的な推移を評価するプログラムをインストールする。これにより、本発明の歩行姿勢計を小型かつコンパクトに構成することができる。
【0110】
また、そのプログラムは、アプリケーションソフトウェアとして、CD、DVD、フラッシュメモリなどの記録媒体に記録することができる。この記録媒体に記録されたアプリケーションソフトウェアを、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)などの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、ヒトの歩行姿勢が正しい姿勢であるか否かを定量的に評価する方法を実行させることができる。