特許第6111856号(P6111856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111856
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20170403BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20170403BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20170403BHJP
   H01G 2/18 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/26 A
   H01G11/74
   H01G1/11 102
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-106826(P2013-106826)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-229416(P2014-229416A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/049848(WO,A1)
【文献】 特開平06−196150(JP,A)
【文献】 特開2003−086154(JP,A)
【文献】 特開2008−171678(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/154166(WO,A1)
【文献】 特開2014−096225(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/164897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01G 2/18
H01G 11/74
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内の電極組立体と、
前記ケースの外部に露出した外部端子と、
前記電極組立体と前記外部端子との通電経路を遮断する電流遮断装置を備えた蓄電装置であり、
前記電流遮断装置は、
前記電極組立体と前記外部端子の一方と導通している通電板と、
前記電極組立体と前記外部端子の他方と導通しているとともに前記通電板と対向配置されており、かつ前記通電板と電気的に接続された突部、及び前記突部の基部に連なる基部フランジ部とを有する接点板と、
を備えており、
前記接点板は、所定の閾値荷重を超える荷重を受けると前記通電板から離れる方向に飛び移り座屈による形状変化を起こすように両端あるいは周囲が固定されており、
前記突部は、先端面を有しており、前記先端面に垂直な断面において、前記基部フランジ部と前記突部の側面とが鋭角をなしている、あるいは、前記基部フランジ部が前記通電板から離れる方向に突出するように湾曲している、
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記通電板には、前記閾値荷重を超える荷重を受けると破断して周囲から離間する破断部が設けられており、前記破断部が前記先端面と接しているとともに、
前記通電板は、前記破断部以外で電極組立体と前記外部端子の一方と導通していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記通電板は、前記接点板とは反対側の面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面しているとともに、前記接点板と対向する面がケース内部空間とは隔離された第2空間に面しており、ケース内圧が所定レベルを超えると前記破断部が破断することを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
一方の面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面しているとともに、他方の面がケース内部空間とは隔離された第2空間にて前記通電板と対向しており、全体が第1空間側に突出するすり鉢形状を有しているとともに中央に前記破断部に向けて突出するパンチング突部が設けられており、ケース内圧が所定レベルに達すると全体が前記第2空間側に突出するすり鉢形状へと飛び移り座屈を起こしてパンチング突部が前記破断部と衝突する変形板をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記接点板は、前記通電板と対向する面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面しているとともに、前記通電板とは反対側の面がケース内部空間とは隔離された第2空間に面しており、ケース内圧が所定レベルを超えると飛び移り座屈を起こすことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型の蓄電装置に関する。詳しくは、過充電などによりケース内圧が上昇した際に電流を遮断する電流遮断装置を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)等の蓄電装置は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。このような二次電池の典型的な構造の一つとして、電極組立体及び電解質が収容されたケースを密閉して成る密閉構造の電池(密閉型電池)が挙げられる。
【0003】
ところで、この種の電池を充電処理する際、不良電池の存在や充電装置の故障による誤作動があった場合、電池に通常以上の電流が供給され過充電状態に陥ることが想定される。かかる過充電等の電池異常の際には、密閉された電池ケースの内部でガスが発生してケースの内圧が上昇し、異常内圧(ガス圧)によって電池が膨らみ、不具合を生じることがある。このような異常に対処すべく、従来技術として、密閉された電池ケースの内圧が所定のレベルを超えると、電流を遮断し電池の安全性を確保するための電流遮断装置を備えた電池構造が提案されている(例えば、特許文献1−4参照)。電流遮断装置は、電池組立体と、ケース外部に露出する電極端子(外部端子)との間の通電経路を遮断する。
【0004】
特許文献1の技術は、電極組立体と導通する内部電極と、外部端子と導通するダイヤフラムを備える。内部電極とダイヤフラムは対向している。内部電極に孔が設けてある。ダイヤフラムの中央に、内部電極の孔に嵌合する突起が設けられている。内部電極の孔にダイヤフラムの突起が嵌合している間は電極組立体と外部端子が導通する。ダイヤフラムは、その全体の形状が、内部電極に向けて突出するすり鉢形状であり、その中央に、すり鉢の突出方向と同じ方向に突出する上記突起が設けられている。ダイヤフラムは、内部電極に面している側はケース内部空間と通じており、反対側はケース内圧と隔離されている空間に面している。ケース内圧が上昇すると、ダイヤフラムに圧力が加わる。その圧力は、ダイヤフラムを内部電極から離間する方向、すなわち、突部を孔から引き抜く方向に作用する。ケース内圧が所定レベルを超えるとダイヤフラムがケース内圧に押されて突起が内部電極の孔から離脱し、通電経路が遮断される。特許文献2にも同様の技術が開示されている。
【0005】
特許文献3に開示された構造は、特許文献1の技術と類似している。ただし、特許文献1における内部電極に相当する部材は絶縁材で作られている。特許文献3ではその部材はインシュレータ(絶縁体)である。インシュレータに対向するように安全弁が配置されている。安全弁が、特許文献1のダイヤフラムに相当する。安全弁の全体形状は、インシュレータに向けて突出するすり鉢形状であり、その中央にすり鉢の突出方向と同じ方向に突出する突起が設けられている。インシュレータの中央に、安全弁の突起と係合する孔が設けられている。突起の先端はインシュレータを通過しており、安全弁とは反対側の面で、電極組立体と導通している導電板に接合されている。インシュレータと安全弁の間の空間がケース内空間に通じており、ケース内圧と同じ圧力に維持されている。ケース内圧は安全弁をインシュレータから離れる方向に作用し、その内圧が所定レベルを超えると、安全弁の突起はインシュレータの孔から離脱する。そのとき、安全弁の突起と接合されている導電板の一部が破断し、通電経路が遮断される。
【0006】
特許文献4にも同様の技術が開示されている。特許文献4の蓄電装置も、ケース内圧が上昇すると変形する板を有している。その板は、通常は一方の側に突出するすり鉢形状であり、その中央にすり鉢の突出と同じ方向に突出する突起を有している。突起は内部端子と接触している。ケース内圧が上昇すると、すり鉢の湾曲が反転し、突起が内部端子から離れる方向に移動し、突起と内部端子との接触が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−077058号公報
【特許文献2】特開2000−113873号公報
【特許文献3】特開2009−266714号公報
【特許文献4】特開2000−113874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1から4の技術はいずれも、ケース内空間の圧力と同じ圧力を保持する空間に面しており、ケース内圧が上昇すると変形する接点板を有している。特許文献1、2ではダイヤフラムと呼ばれており、特許文献3では安全弁とよばれている。いずれの接点板も、すり鉢形状であり、その中央に、すり鉢の突出方向と同じ方向に突出する突起を備える。通常は突起の先端面が他の導電部材と接しており、電極組立体と外部端子の導通が確保されている。ケース内圧が高まると、接点板が当初とは反対側に突出するように変形する。そうすると、中央の突起が導電部材と離反し、あるいは、接点板の変形とともに、導電部材において突起と接触している部位が破断し、通電経路が遮断される。
【0009】
ケース内圧が所定レベルを超えたときに接点板が予定通りに変形すればよいが、予定外の変形を生じた際、接点板と導電部材が接近し、一旦は通電経路が遮断されても再導通する虞がある。あるいは、ケース内圧が所定レベルを超えて接点板が変形し、通電経路が遮断された後、蓄電池に衝撃や振動が加わると接点板が予定外にさらに変形し、再導通する虞がある。
【0010】
本明細書が開示する技術は、接点板の予定外の変形箇所が導通部材と接触して再導通する可能性を低減した通電遮断装置を備える蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述したように、従来の電流遮断装置は、一方向に突出するすり鉢形状に形成されており、その中央にすり鉢の突出方向と同じ方向に突出する突起が設けられた接点板を有する。別言すれば、接点板は、全体がすり鉢であり、その中央部に突起が設けられている。その突起の先端面が別の部材と接触して外部端子と電極組立体の通電経路が確保されている。なお、以下では、接点板の突起の先端面と接触する別の部材を通電板と称する。
【0012】
発明者らの検討によると、接点板が変形して突起の先端面が通電板と離間した後、すり鉢形状の中央部で突起の基部に連なる板面が通電板の近くに位置することになり、突起の周囲の部位が通電板と不測の接触を生じやすいことに気が付いた。なお、理解し易いように、突部の基部に連なる板面を、以下では「基部フランジ部」と称する。
【0013】
本明細書が開示する技術では、電極組立体と外部端子の一方と導通している通電板と、電極組立体と外部端子の他方と導通しているとともに通電板に対向している接点板を備える電流遮断装置において、接点板に次の構造的特徴を付加する。即ち、接点板に、先端面が通電板と接触する突部を設ける。さらに、前述の先端面に垂直な断面において、突部の基部フランジ部(基部に連なる板面)と突部の側面とが鋭角をなしている。あるいは、突部の基部フランジ部が通電板から離れる方向に突出するように湾曲している。基部フランジ部が突部側面との間で鋭角をなしている構造は、すなわち、基部フランジ部から先端面までの突部の高さを高くできることを意味し、このことは、突部の先端面が通電板から離間した状態において基部フランジ部と通電板の間の距離を大きくできることを意味する。基部フランジ部を通電板から離れる方向に湾曲させる構造も、同様に、突部の先端面が通電板から離間した状態において基部フランジ部と通電板の間の距離を大きくすることができる。突部の先端面が通電板から離間した状態において通電板と基部フランジ部の間の距離を大きくすることで、基部フランジ部(即ち接点板)が通電板と再導通する可能性を低減する。
【0014】
本明細書が開示する蓄電装置の一態様は、次の構成を備える。その蓄電装置は、ケース内圧が所定レベルを超えるとケース内部の電極組立体とケース外部に露出する外部端子との間の通電経路を遮断する電流遮断装置を備える。その電流遮断装置は、電極組立体と外部端子の一方と導通している通電板と、電極組立体と外部端子の他方と導通しているとともに通電板と対向配置されている接点板を備える。接点板の略中央には、先端面が通電板と接触する突部が設けられている。突部の先端面が通電板と電気的に接続する。さらに接点板は、突部の先端面に垂直な断面において、基部フランジと突部の側面とが鋭角をなしている、あるいは、基部フランジ部が通電板から離れる方向に突出するように湾曲している。接点板は、所定の閾値荷重を超える荷重を受けると突部の先端面が通電板から離れるように変形する。具体的には、接点板は、閾値荷重を超える荷重を受けると通電板から離れる方向に飛び移り座屈による形状変化を起こすように両端あるいは周囲が固定されている。接点板の両端あるいは周囲は、電流遮断装置の筐体に直接的あるいは間接的に固定される。「関節的に」とは、例えば樹脂製の部品が筐体に固定され、その樹脂製の部品に接点板が固定されている場合である。なお、典型的には、電流遮断装置の筐体は筒状であり、接点板は、筐体の筒の内側に固定される。
【0015】
飛び移り座屈(snap buckling)とは、全体が湾曲して中央が一方側に突出するように両端あるいは周囲が支持されている板材に対して湾曲突出方向から荷重を加えていくと、荷重が閾値荷重を超えたところで板材の湾曲方向が他方側に一気に反転するように不連続な変形を生じ、荷重を除去しても反転した形状が元に戻らない現象をいう。
【0016】
飛び移り座屈を起こすようにするために、接点板は、基部フランジ部の縁に連続して基部フランジ部を囲むダイヤフラム部を有している。ダイヤフラム部は、通電板に向かって突出するすり鉢状の板であり、このダイヤフラム部あるいは突部に所定の閾値荷重を超える荷重(通電板から離れる方向の荷重)を受けると、ダイヤフラム部が通電板から離れる方向に突出するすり鉢状に飛び移り座屈を生じる。この場合、ダイヤフラム部は変形するが、突部と基部フランジ部は変形しない。
【0017】
本明細書が開示する上記の蓄電装置では、接点板は通電板と接触する突部を有するとともに、突部側面に連なる基部フランジ部が通電板から遠ざかっているので通電板との再導通の可能性を低減できる。また、同時に、接点板は飛び移り座屈を起こして通電板から離間するので、ケース内圧が減少しても接点板が元の形状に戻ることがなく、再導通が防止される。
【0018】
ケース内圧の上昇によって接点板に飛び移り座屈を生ぜしめる構成には次の3通りが考えられる。
【0019】
第一の構成は、ケース内圧を接点板が直接に受けるようにする構成である。具体的には、接点板を、通電板と対向する面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面するとともに、通電板とは反対側の面がケース内部空間とは隔離された第2空間に面するように配置する。そのように配置することで、接点板のダイヤフラム部が所定レベルを超えるケース内圧を受けると飛び移り座屈を起こす。ここで、「ケース内部空間とは隔離された第2空間」とは、ケース内部空間の圧力の影響を受けない空間という意味である。
【0020】
第二の構成は、通電板に破断し易い破断部を設け、その破断部がケース内圧を受けるようにする構成である。具体的には、通電板に、所定の閾値荷重を超える荷重を受けると破断して周囲から離間する破断部を設けるとともに、その破断部を接点板の先端面に接するようにする。そして、通電板を、接点板とは反対側の面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面するとともに、接点板と対向する面がケース内部空間とは隔離された第2空間に面するように配置する。ケース内圧が所定レベルを超えると破断部が破断する。ここで、ケース内圧が所定レベルに達して破断部が破断する際に先端面に加わる総圧が、前述した所定の閾値荷重に相当するように調整する。そのように調整することで、破断の勢いによって接点板が飛び移り座屈を生じる。なお、通電板には破断部を破断し易くするために、破断部と残部を区画するミシン目(パーフォレイション)あるいは溝を環状に設ける。この溝が、通電板において破断部と残部を区画する。
【0021】
第三の構成は、通電板に上記の破断部を備えるが、ケース内圧によって別の板が変形し、その別の板の変形部位が破断部に衝突して破断部を破断させる構成である。具体的には、接点板が存在する側の反対側で通電板と対向するように変形板を設ける。その変形板は次の構造を備える。変形板は、一方の面がケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間に面するとともに、他方の面がケース内部空間とは隔離された第2空間にて通電板と対向するように配置される。変形板は、全体が第1空間側に突出するすり鉢形状を有しているとともに中央に破断部に向けて突出するパンチング突部が設けられている。変形板は、ケース内圧が所定レベルに達すると全体が第1空間側に突出するすり鉢形状から第2空間側に突出するすり鉢形状へと飛び移り座屈を起こしてパンチング突部が破断部と衝突する。破断部が破断すると、その衝撃により接触板も飛び移り座屈を起こすように、接触板の剛性と変形板の剛性を調整しておく。この構成は、ケース内圧による荷重に加え、パンチング突部が衝突するその衝撃で破断部を破断する。即ち、破断部を従来よりも確実に破断することができる。
【0022】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の発明を実施するための形態の項にて詳しく説明する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄電装置において、ケース内圧が所定レベルを超えると電極組立体と外部端子との間の通電を遮断する通電遮断装置の再導通の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施例に係る蓄電装置の縦断面図を示す。
図2】第1実施例の電流遮断装置の詳細を示す縦断面図であって、(A)は通電状態における構造を示し、(B)はケース内圧が上昇して通電経路が遮断された状態における構造を示す。
図3図3(A)は、図2(A)における電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電状態)。図3(B)は、図2(B)における電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電経路遮断状態)。
図4図4(A)は、第2実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電状態)。図4(B)は、第2実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電経路遮断状態)。
図5図5(A)は、第3実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電状態)。図5(B)は、第3実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電経路遮断状態)。
図6図6(A)は、第4実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電状態)。図6(B)は、第4実施例の電流遮断装置の拡大縦断面図である(通電経路遮断状態)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の蓄電装置を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本明細書において電流遮断装置以外の構成は、様々なものを使用することができる。また、以下に説明する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。
【0026】
蓄電装置の一例として、密閉型の二次電池、密閉型のキャパシタ等が挙げられる。二次電池の一例として、比較的高容量で大電流の充放電が行われる種類の電池、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池が挙げられる。なお、二次電池の電極組立体の一例として、セパレータを介して対向する電極対(正極電極及び負極電極)を有するセルが複数積層された積層タイプの電極組立体、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の電極組立体が挙げられる。なお、以下の説明では、正極外部端子と負極外部端子の双方がケースの一方向に露出している蓄電装置について説明する。しかしながら、本明細書で開示する技術は、円筒型の電池のように、ケースが一方の極性(例えば負極)の端子として機能し、他方の極性(例えば正極)の端子がケースから絶縁された状態でケースに固定されているタイプの蓄電装置等にも適用することができる。
【0027】
(第1実施例)図1は、第1実施例に係る積層型の蓄電装置100の断面図である。蓄電装置100は、ケース1と、電極組立体60と、タブ群65、67と、第1正極用導電部材13と、第2正極用導電部材68と、負極用導電部材64と、正極外部端子19と、負極外部端子119と、絶縁部材61、66と、電流遮断装置2を備えている。電極組立体60は、正極活物質と正極金属箔とを含む正極シートと、負極活物質と負極金属箔とを含む負極シートと、正極シートと負極シートとの間に挟まれてそれぞれを分離する、シート状のセパレータとを備えている。電極組立体60は、正極シート、セパレータ、負極シートが層状にこの順序でそれぞれ多数積層された積層体であり、液状の電解質が含浸されている。
【0028】
ケース1は略直方体形状の箱型部材であり、内部に電極組立体60と、タブ群65、67と、第1正極用導電部材13と、第2正極用導電部材68と、負極用導電部材64と、絶縁部材61、66と、電流遮断装置2とを収容している。ケース1の上端面には、正極外部端子19と負極外部端子119がケースから露出している。電極組立体60の複数の正極シートの金属箔はそれぞれタブ部を有し、複数のタブ部が束ねられてタブ群67が形成されている。同様に、複数の負極シートの金属箔はそれぞれタブ部を有し、複数のタブ部が束ねられてタブ群65が形成されている。電極組立体60は、絶縁性のフィルムによって覆われており、タブ群67、65に接続する部分において、絶縁性のフィルムから突出している。
【0029】
タブ群65、67は、電極組立体60からケース1の上端面に向けて伸び、途中で図1の紙面の表側に向かって屈曲して、ケース1の上端面に略平行な平坦部を有する形状に形成されている。
【0030】
図1に示すように、負極用導電部材64は、平板状の導電性部材である。負極用導電部材64は、タブ群65から負極外部端子119に向かって、ケース1の上端面に対して略平行に伸びている。負極用導電部材64とタブ群65は溶接によって固定されている。このように、電極組立体60の負極から負極外部端子119までの負極通電経路は、この順で直列に接続されたタブ群65と、負極用導電部材64とによって構成されている。
【0031】
図1に示すように、第1正極用導電部材13は、電流遮断装置2と第2正極用導電部材68との間に直列に接続されており、溶接によって互いに固定されている。第2正極用導電部材68は、平板状の導電性部材である。第2正極用導電部材68は、正極外部端子19に向かってケース1の上端面に対して略平行に伸びている。第2正極用導電部材68は、タブ群67と溶接によって固定されている。電流遮断装置2は、その上面側において正極外部端子19と固定されている。正極外部端子19と第1正極用導電部材13とは、電流遮断装置2を介して電気的に接続されている。このように、電極組立体60の正極から正極外部端子19までの正極通電経路は、この順で直列に接続されたタブ群67と、第2正極用導電部材68と、第1正極用導電部材13と、電流遮断装置2とによって構成されている。つまり、正極外部端子19、および負極外部端子119は、電極組立体60との間で電気を授受することができる。なお、負極用導電部材64、第1正極用導電部材13および第2正極用導電部材68と、ケース1の上端面との間に、絶縁部材66が設けられており、これによって負極用導電部材64、第1正極用導電部材13および第2正極用導電部材68とケース1とは絶縁されている。
【0032】
ケース1は密閉されており、電極組立体60がガスを発生すると内部の圧力が上昇する。ケース内圧が所定レベルを超えると、電流遮断装置2が作動し、正極外部端子19と電極組立体60の間の通電経路が遮断される。
【0033】
図2に、電流遮断装置2の断面図を示す。図2(A)は、正極通電経路が確保されているときの構造を示し、図2(B)は、電流遮断装置2が作動して正極通電経路が遮断されたときの構造を示す。また、図3に電流遮断装置のみを拡大した断面図を示す。図3(A)は正極通電経路が確保された状態での電流遮断装置の拡大断面図であり、図3(B)は、電流遮断装置2が作動して正極通電経路が遮断された状態での電流遮断装置の拡大断面図である。図2では理解を助けるために主要な部品にのみ符号を付し、細かい部品への符号付けは図3で行った。
【0034】
まず、図2(A)、図3(A)を参照しつつ、電流遮断装置2の構成を説明する。電流遮断装置2は、主な構成部品として、筐体11、カシメ部材20、封口蓋7、接点板5、通電板4、及び、変形板3を備えている。電流遮断装置2そのものは、蓄電装置100のケース内に配置され、電流遮断装置2の外側はケース内部空間(空間42)の圧力となっている。空間42における圧力がケース内圧に相当する。電流遮断装置2の筐体は、カシメ部材20、筐体11、及び、封口蓋7で構成される。筐体11は樹脂で作られており、絶縁性を有する。カシメ部材20は、金属製であり、筐体11と後述するシール部材14、17、接点板5、通電板4、及び、変形板3を加締めている。カシメ部材20と筐体11は筒状であり、その一方の端部は封口蓋7で覆われ、他方の端部は変形板3で覆われる。筐体11の内側はケース内部空間(空間42)とは隔離されており、筐体11の内部空間(符号43、44、及び45が示す空間)は、ケース内圧の影響を受けない。
【0035】
封口蓋7は導電性の金属で作られている。封口蓋7のほぼ中央にはネジ溝が形成された貫通孔が設けられており、この貫通孔に正極外部端子19の下端が螺合する。正極外部端子19の上端はケース1の外部に露出している。封口蓋7は蓄電装置100のケース1の壁面の裏側直近に位置しており、ケース1の内面との間にシール部材10が配置されている。シール部材10により、ケース内部空間(空間42)の封止が確保されている。
【0036】
封口蓋7と変形板3の間に、接点板5、通電板4が挟持されている。接点板5と通電板4は、封口蓋7と変形板3と合わせて筐体11に支持されているともに、その内ケースを金属製のカシメ部材20が加締めて止めている。接点板5と変形板3は金属製で円板形状であり、円板の周縁が筐体11に固定されている。
【0037】
接点板5は導電性を有しており、封口蓋7の下端に接している。従って正極外部端子19と封口蓋7、及び、接点板5は導通している。封口蓋7とは反対側で接点板5の周囲にはシール部材17が取り付けられており、シール部材17を挟んで金属製の通電板4が取り付けられている。通電板4の周囲は接点板5から絶縁されている。
【0038】
通電板4は、板状であり、第1正極用導電部材13と電気的に接続されている。もしくは、通電板4と第1正極用導電部材13とは一部材である。通電板4には、変形板3、及び接点板5と重なる部分である円形部を有する。第1正極用導電部材13は第2正極用導電部材68を介して電極組立体60と電気的に接続されている。即ち、通電板4は電極組立体60と導通している。
【0039】
通常は接点板5と通電板4は接しており、両者は電気的に接続されている。詳しくは、接点板5は、通電板4に対向する側に突部23を備えており、その突部23の先端面が通電板4と接している。接点板5と通電板4が電気的に接続しているときには、電極組立体60と正極外部端子19が導通する。接点板5と通電板4は、電極組立体60と正極外部端子19の間の通電経路の一部を形成する。
【0040】
接点板5は、突部23、突部の基部の周囲に設けられている基部フランジ部24、及び、基部フランジ部24の周縁と連続するダイヤフラム部25で構成されている(図3(A)参照)。基部フランジ部24は、別言すれば、突部23の基部に連なる板部分である。図3(A)によく示されているように、突部23の先端面に垂直な断面において(図3の断面において)、突部23の側面と基部フランジ部24は、鋭角な角度Agで連続している。なお、接点板5は、突部23の先端面に垂直な方向から見ると円形であり、突部23も先端面に垂直な方向からみると円形である。別言すれば突部23は円筒状である。従って、突部23の基部と基部フランジ部24は、突部23の周方向のいずれの場所でも角度Agで接続している。
【0041】
基部フランジ部24の周縁にはダイヤフラム部25が続いている。ダイヤフラム部25は、中央が通電板4に向かって突出するすり鉢状であり、その周縁が筐体11に支持されている。ダイヤフラム部25の中央に上述した突部23と基部フランジ部24が位置する。ダイヤフラム部25は、板に垂直な方向に飛び移り座屈を生ずるように、その周縁が筐体11に固定されている。「飛び移り座屈」とは、前に紹介した通りである。
【0042】
ダイヤフラム部25は飛び移り座屈により変形するが、突部23と基部フランジ部24は、ダイヤフラム部25の変形に伴い移動する。図3(B)は、突部23が荷重を受けてダイヤフラム部25が変形した後の状態を示している。なお、説明のため、変形前の接点板とダイヤフラム部をそれぞれ符号5aと符号25aで表し、変形後の接点板とダイヤフラム部をそれぞれ符号5bと25bで表す。変形の前後に関わりなく接点板とダイヤフラム部に言及するときには、それぞれ、接点板5、ダイヤフラム部25と記述する。
【0043】
接点板5の突部23の先端面は、通電板4の破断部6に接合(例えば溶接)されている。この破断部6は、破断溝16で囲まれており、この破断溝16が、通電板4を破断部6とそれ以外の領域とに区画している。破断溝16は、破断部6が衝撃を受けたときに破断するように、通電板の他の部分よりも強度を弱くしている部位である。
【0044】
筐体11の他方の端部(封口蓋7が取り付けられた端部とは反対側の端部)には変形板3が取り付けられている。変形板3は、シール部材14を介して通電板4と隣接している。別言すれば、変形板3は、接点板5が存する側の反対側で通電板4に対向している。変形板3は金属製であるが、シール部材14により通電板4とは絶縁されている。変形板3は、図2(A)、図3(A)に示すように、初期形状として、通電板4から離れる方向に突出するすり鉢形状を有している。変形板3の略中央で通電板4の破断部6に対向するようにパンチング突部12が設けられている。パンチング突部12は絶縁体(例えば樹脂)で作られている。
【0045】
変形板3は、接点板5と同様に、飛び移り座屈を生じるようにその周縁を筐体11に固定されている。パンチング突部12は、変形板3が通電板4から離れる方向のすり鉢形状であるときには破断部6から離間して位置しているが、変形板3が飛び移り座屈を生じて通電板4に向かって突出するすり鉢状に変形したときには破断部6と衝突する位置関係にある。
【0046】
図3(B)は、変形板3に、所定の閾値荷重を超えた荷重(所定のレベルを超えるケース内圧)が加わったときに飛び移り座屈を生じて変形した後の状態を示している。なお、説明のため、変形前の変形板を符号3aで表し、変形後の変形板を符号3bで表す。変形の前後に関わりなく変形板に言及するときには、変形板3と記述する。
【0047】
電流遮断装置2が通電経路を遮断するメカニズムを説明する。変形板3は、一方の面がケース1の内部空間(空間42)に面しており、他方の面が、通電板4が存在する電流遮断装置内部空間43に面しているとともに、空間42と空間43を区画する。そして、空間43はケース内圧の影響を受けない。このことは、別言すれば、変形板3が、ケース内圧と同じ圧力に保持されている第1空間(ケース内部空間42)に面しているとともに、他方の面がケース内部空間42とは隔離された第2空間(電流遮断装置内部空間43)にて通電板4と対向していることに相当する。変形板3は、初期状態では、全体がケース内部空間42の側に突出するすり鉢形状を有している。また、変形板3の中央には、破断部6に向けて突出するパンチング突部12が備えられている。この変形板3は、周囲が筐体11に固定されており、ケース内圧が所定レベルに達すると全体がケース内部空間42の側に突出するすり鉢形状から電流遮断装置内部空間43の側に突出するすり鉢形状へと飛び移り座屈を起こす。その際、パンチング突部12が破断部6と衝突し、破断部6を破断させる。図3(B)に、変形前の変形板3bを仮想線で描いてある。
【0048】
パンチング突部12が破断部6に与える荷重は、変形板3が受けるケース内圧と電流遮断装置内部空間43の圧力差と、パンチング突部12の衝突による衝撃を加えたものである。物体が衝突する際の衝撃による荷重は圧力差による荷重よりもはるかに大きく、破断部6は、圧力差と衝撃により確実に破断する。
【0049】
変形板3が飛び移り座屈を起こして破断部6が破断すると、その勢いにより、接点板5も飛び移り座屈を起こして通電板4から離れる方向に突出するすり鉢状に変形する。破断部6は、変形板3のパンチング突部12と接点板5の突部23に挟まれ、通電板4の残部から離間したまま保持される。なお、前述したように、破断部6は接点板5の突部23の先端面に接合されているため、パンチング突部12の衝突の衝撃によっても破断部6が接点板5の突部23から離れることはない。
【0050】
図3(B)には、変形板3の周縁を含む平面に対して初期状態の変形板3aがなす角度が符号Ad1で示されており、飛び移り座屈後の変形板3bがなす角度が符号Ad2で示されている。角度Ad1とAd2は、その絶対値の大きさはほぼ同じであるが、変形板3の周縁を含む平面に対して互いに反対の向きとなる。図3(B)には、また、接点板5の周縁を含む平面に対して初期状態の接点板5aがなす角度が符号Ae1で示されており、飛び移り座屈後の接点板5bがなす角度が符号Ae2で示されている。角度Ae1とAe2も、その絶対値の大きさはほぼ同じであるが、接点板5の周縁を含む平面に対して互いに反対の向きである。電流遮断装置2では、ケース内圧が所定レベルに達するまでは変形板3と接点板5が夫々角度Ad1とAe1を保持し、ケース内活が所定レベルを超えると飛び移り座屈を生じ、角度がそれぞれAd2とAe2となるように一気にそのすり鉢形状の突出向きが反転する。ケース内圧が一旦、所定レベルを超えた後は、ケース内圧が低下しても、変形板3と接点板5は、それぞれ角度Ad2とAe2を保持し、元の形状には戻らない。飛び移り座屈のこのような特性により、変形板3が反転して破断部6が一旦破断すると、破断部6は通電板4から離間した位置に保持され、再び通電板4と接触する可能性、すなわち、通電経路が再導通する可能性が抑制される。
【0051】
また、接点板5は、中央の突部23の先端面で通電板4と接合されている。そして、突部23の側面と基部フランジ部24が鋭角(角度Ag)で連続している。この鋭角を含む構成が、変形板3と接点板5が飛び移り座屈を起こして破断部6が破断し、接点板5と通電板4の間の電気的接続が遮断された後、基部フランジ部24が通電板4に接触する可能性を低減する。
【0052】
(第2実施例)次に、図4を参照して第2実施例の蓄電装置を説明する。第2実施例の蓄電装置は、電流遮断装置の構造、特に、通電板204の破断部6を破断させるメカニズムが第1実施例の蓄電装置とは異なる。構造的には、第2実施例の電流遮断装置202は、変形板を有さない点で第1実施例の電流遮断装置2とは異なる。
【0053】
図4(A)は、接点板5と通電板204が電気的に接続している状態、即ち、電極組立体と正極外部端子が導通している状態における構造を示しており、図4(B)は、電極組立体と正極外部端子が電気的に遮断された状態における構造を示している。
【0054】
第2実施例の電流遮断装置202において、接点板5と通電板204の形状は第1実施例の接点板5と通電板4と同じであるが、突部23の先端面は通電板204の破断部6に接合されている。この接合は、突部23と通電板204の間の導電性を伴う接合であり、例えば溶接である。
【0055】
また、電流遮断装置202では、通電板204において破断部6とそれ以外の部位を区画する破断溝216が第1実施例における破断溝16よりも深く形成されており、第1実施例の電流遮断装置2と比較すると、破断部6が破断し易くなっている。具体的には、電流遮断装置202では、通電板204が、接点板5とは反対側の面がケース内部空間42に面しているとともに、接点板5と対向する面がケース内部空間とは隔離された空間(電流遮断装置内の空間44)に面しており、ケース内圧が所定レベルを超えると破断部6が破断する。破断部6が破断すると、接点板5と通電板204の間の通電経路が遮断される。即ち、正極外部端子と電極組立体との間の通電経路が遮断される。
【0056】
図4(A)は、破断前の状態を示しており、接点板5は、ダイヤフラム部25が、通電板204に向かって湾曲するすり鉢状をなしている。ケース内圧が上昇し、破断部6が破断すると、その破断の勢いで接点板5の突部23に荷重が加わり、ダイヤフラム部25が、通電板204から離れる方向に突出する形状に一気に変形する。すなわち飛び移り座屈を生じる。破断部6は突部23の先端面に接合しているから、破断部6は先端面と一体となって通電板204から離れる。変形後の形状が図4(B)に示されている。符号5aが飛び移り座屈前の接点板を示しており、符号5bが飛び移り座屈後の接点板を示している。図4(A)から図4(B)への接点板5の変形は飛び移り座屈であるから、一旦変形すると、加わっていた荷重が除去されても接点板5の形状は元には戻らない。即ち、接点板5の突部23の先端面に接合された破断部6も、通電板204の残部から離間した位置で保持される。
【0057】
第2実施例の蓄電装置でも、突部23の側面と基部フランジ部24は、鋭角な角度を有して接続している。それゆえ、破断部6が破断し、接点板5が飛び移り座屈により反転し、破断部6が通電板204の残部から離間した位置にあるとき、破断部6の周囲(即ち基部フランジ部24)が通電板204の残部と再び接触することを防止できる。
【0058】
(第3実施例)次に、図5を参照して第3実施例の蓄電装置を説明する。第3実施例の蓄電装置も、第2実施例の電流遮断装置と同様に、通電板204の破断部6を破断させるメカニズムが第1実施例の蓄電装置とは異なる。構造的には、第3実施例の電流遮断装置302は、変形板を有さず、また、通電板304に貫通孔304aを有する点で第1実施例の電流遮断装置2とは異なる。
【0059】
接点板305の形状は第1実施例の接点板5と同じであるが、電流遮断装置302では、接点板305の突部23の先端面が通電板304の破断部6と接合されている。この接合も、突部23と通電板304の間の導電性を伴う接合であり、例えば溶接である。また、通電板304において破断部6とそれ以外の領域を区画する破断溝316は、第2実施例の電流遮断装置202における破断溝216と同等に、破断し易いように作られている。
【0060】
通電板304に貫通孔304aが設けられているので、通電板304と接点板305の間の空間44は、ケース内部空間42と通じており、ケース内圧と同じ圧力を保持する。接点板305は、一方の面が面する空間44と、他方の面が面する空間45(電流遮断装置302の内部空間を区画しており、空間45は空間44の圧力変動を受けない。従って、ケース内圧が上昇すると、空間44の圧力が空間45の圧力よりも高くなり、接点板305のダイヤフラム部25に荷重が加わる。その荷重は、接点板305を通電板304から離間させる方向であり、その荷重が所定の閾値荷重を超えると先端面で接合している破断部6を破断させ、さらに、接点板305に、通電板304から離間する方向に突出する形状に飛び移り座屈を生じさせる。図5(A)が、破断部6の破断前の状態、即ち、正極外部端子と電極組立体が導通している状態を示しており、図5(B)が破断した状態、即ち、正極外部端子と電極組立体の通電経路が遮断された状態を示している。符号305aが飛び移り座屈前の接点板を示しており、符号305bが飛び移り座屈後の接点板を示している。
【0061】
接点板305に一旦飛び移り座屈が生じると、ダイヤフラム部25に加わっていた圧力が減少しても元の形状にはもどらず、破断部6が通電板304の残部と再び接することはない。また、接点板305の突部側面と基部フランジ部24がなす角度が鋭角をなしているので、破断部が破断した後に基部フランジ部24が通電板304と接触する可能性は小さい。
【0062】
(第4実施例)次に、図6を参照して第4実施例の蓄電装置を説明する。第4実施例の蓄電装置の電流遮断装置402は、第3実施例の電流遮断装置の構造と比較して、接点板の基部フランジ部の形状が異なる。それ以外の構造は第3実施例の電流遮断装置と同じである。図6(A)、(B)も、電流遮断装置402の断面図である。図6(A)は、通電板304の破断部が破断する前の状態、即ち、正極外部端子と電極組立体の通電経路が確保されている状態を示しており、図6(B)は、破断部6が破断した後、即ち、正極外部端子と電極組立体の間の通電経路が遮断された状態を示している。符号405aは変形前の接点板を示しており、符号405bは変形後の接点板を示している。
【0063】
電流遮断装置402も、ケース内圧が所定レベルを超えて上昇すると、接点板405が破断部6を破断させて飛び移り座屈を起こす(図6(B)参照)。電流遮断装置402では、接点板405の突部23の基部に続く基部フランジ部424が、通電板304から離れる方向に湾曲している。この湾曲は、第1−第3実施例において鋭角に接続している基部フランジ部と同様に、接点板405が飛び移り座屈を起こした後、基部フランジ部424が通電板304と接触してしまう可能性を低減する。それゆえ、破断部6が破断し正極外部端子と電極組立体との間の通電経路が遮断された後に再導通してしまう可能性が低い。
【0064】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。第4実施例の接点板は、突部側面の基部に基部フランジ部424が通電板から離れる方向に突出するように湾曲している。第1実施例から第3実施例の蓄電装置においても、そのような形状の接点板を用いて良い。
【0065】
飛び移り座屈を生じる接点板あるいは変形板は、「所定レベルの圧力」が加わったときの圧力の総和が「所定の閾値荷重」となるようにそのサイズと剛性と形状が既定される。即ち、単位面積当たりの「所定の閾値荷重」が、「所定レベルの圧力」に相当する。
【0066】
実施例で説明した蓄電装置の電流遮断装置は、まとめると次の特徴を有する。電流遮断装置は、電極組立体と外部端子の一方と導通しており、周囲が固定されている通電板と、電極組立体と外部端子の他方と導通しており、周囲が固定されているとともに通電板と対向配置されている接点板を備える。接点板は、通電板に向かって突出するすり鉢状をなしている。また、接点板のすり鉢状の中央部が、先端面が通電板と接触する突部と、突部の基部の周囲に設けられている基部フランジ部とで構成されている。突部の先端面に垂直な断面において、突部の側面と基部フランジ部とが鋭角をなしている。あるいは、基部フランジ部が通電板から離れる方向に突出するように湾曲している。
【0067】
実施例の蓄電装置では、電流遮断装置の通電板に、破断部を囲む破断溝を設けた。溝の代わりにミシン目(パーフォレイション)でもよい。
【0068】
実施例の通電遮断装置2では、変形板3の周縁を含む平面に対して初期状態の変形板3aがなす角度Ad1と飛び移り座屈後の変形板3bがなす角度Ad2は、その絶対値の大きさがほぼ同じであり、変形板3の周縁を含む平面に対して互いに反対の向きとなる。また、接点板5の周縁を含む平面に対して初期状態の接点板5aがなす角度Ae1と、飛び移り座屈後の接点板5bがなす角度Ae2は、その絶対値の大きさはほぼ同じであり、変形板3の周縁を含む平面に対して互いに反対の向きとなる。この関係は、飛び移り座屈を生ぜしめる典型的な構造の特徴である。しかし、構造を工夫することにより、変形板あるいは接点板の初期状態の形状と変形後の形状が上記の関係を満たさない場合もあり得ることに留意されたい。
【0069】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0070】
1:ケース/2、202、302、402:電流遮断装置/3、305:変形板/4、204、304、404:通電板/5、405:接点板/6、316:破断部/7:封口蓋/10:シール部材/11:筐体/12:パンチング突部/13:正極用導電部材/14:シール部材/16:破断溝/17:シール部材/9:正極外部端子/20:カシメ部材/23:突部/24、424:基部フランジ部/25:ダイヤフラム部/42:ケース内部空間/43:電流遮断装置内部空間/60:電極組立体/61:絶縁部材/64:負極用導電部材/100:蓄電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6