特許第6111946号(P6111946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6111946-ガラス材の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6111946
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ガラス材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/09 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   C03B19/09
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-193020(P2013-193020)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-59057(P2015-59057A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史雄
(72)【発明者】
【氏名】榎本 朋子
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−048245(JP,B1)
【文献】 特開2012−121762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 19/00−20/00
C03B 1/00− 5/44
C03B 8/00− 8/04
C03C 1/00−14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊させたガラス原料を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、前記溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得るガラス材の製造方法であって、
前記ガラス原料として原料バッチ粉末を用い
成形面に開口する複数のガス噴出孔を有する成形型の前記成形面上に前記原料バッチ粉末を配し、前記ガス噴出孔からガスを噴出させることにより前記原料バッチ粉末を浮遊させる、ガラス材の製造方法。
【請求項2】
前記原料バッチ粉末の少なくとも一部を加熱融解、凝固させた後、浮遊させる、請求項1に記載のガラス材の製造方法。
【請求項3】
前記成形型が連続気泡を有する多孔質体からなり、前記連続気泡により前記ガス噴出孔が構成されている、請求項1又は2に記載のガラス材の製造方法。
【請求項4】
前記原料バッチ粉末の粒子径が前記ガス噴出孔の直径よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス材の製造方法として、無容器浮遊法に関する研究がなされている。例えば、特許文献1には、ガス浮遊炉で浮遊させたAl、La及びZrO等の金属酸化物を含む原料塊にレーザービームを照射して加熱溶融した後に、冷却することにより、ガラス化させる方法が記載されている。このように、無容器浮遊法では、容器の壁面との接触に起因する結晶化の進行を抑制できるため、従来の容器を用いた製造方法ではガラス化させることができなかった材料であってもガラス化し得る場合がある。従って、無容器浮遊法は、新規な組成を有するガラス材を製造し得る方法として注目に値すべき方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/071143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ガラス原料塊の作製方法として以下の方法が記載されている。金属酸化物等のガラス原料を所望の比率で調合して得られた原料バッチ粉末にエタノールを加えてさらに混合してから、焼成を行う。焼成後のガラス原料を乳鉢ですりつぶし、エタノールを加えて粘度を調製してからプレスすることにより、円板状のガラス原料塊を得る。
【0005】
特許文献1に記載の方法で製造されたガラス原料塊を用いた場合、ガラス材中に結晶が生じやすいという問題がある。
【0006】
本発明の主な目的は、無容器浮遊法により結晶を含まないガラス材を製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス材の製造方法は、浮遊させたガラス原料を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得るガラス材の製造方法である。本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料として原料バッチ粉末を用いる。
【0008】
本発明に係るガラス材の製造方法では、原料バッチ粉末の少なくとも一部を加熱融解、凝固させた後、浮遊させてもよい。
【0009】
本発明に係るガラス材の製造方法では、成形面に開口する複数のガス噴出孔を有する成形型の成形面上に原料バッチ粉末を配し、ガス噴出孔からガスを噴出させることにより原料バッチ粉末を浮遊させてもよい。また、成形型が連続気泡を有する多孔質体からなり、連続気泡によりガス噴出孔が構成されていてもよい。その場合、原料バッチ粉末の粒子径がガス噴出孔の直径よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無容器浮遊法により結晶を含まないガラス材を製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0013】
本実施形態では、通常のガラス材をはじめ、例えば、網目形成酸化物を含まないような、容器を用いた溶融法によってはガラス化しない組成を有するガラス材であっても好適に製造し得る方法について説明する。本実施形態の方法によれば、具体的には、例えば、チタン酸バリウム系ガラス材、ランタン−ニオブ複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−アルミニウム複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−タンタル複合酸化物系ガラス材、ランタン−タングステン複合酸化物系ガラス材等を好適に製造し得る。
【0014】
図1は、本実施形態に係るガラス材の製造装置1の模式的断面図である。図1に示されるように、ガラス材の製造装置1は、成形型10を有する。成形型10は、成形面10aを有する。成形面10aは、曲面である。具体的には、成形面10aは、球面状である。
【0015】
成形型10は、成形面10aに開口する複数のガス噴出孔を有する。具体的には、本実施形態では、成形型10は、連続気泡により構成されたガス噴出孔を有する多孔質体により構成されている。ガス噴出孔は、成形面10aに開口している。このガス噴出孔に、ガスボンベなどのガス供給機構11からガスが供給される。その結果、成形面10aからガスが噴出する。
【0016】
ガスの種類は、特に限定されない。ガスは、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
【0017】
製造装置1を用いて、ガラス材を製造するに際しては、まず、ガラス原料12を成形面10a上に配置する。次に、成形面10aに開口しているガス噴出孔からガスを噴出させることにより、ガラス原料12を成形面10a上で浮遊させる。すなわち、ガラス原料12が成形面10aに接触していない状態で、ガラス原料12を保持する。その状態で、レーザー光照射装置13からレーザー光をガラス原料12に照射する。これによりガラス原料12を加熱溶融してガラス化させ、溶融ガラスを得る。その後、溶融ガラスを冷却することにより、ガラス材を得ることができる。ガラス原料12を加熱溶融する工程と、溶融ガラス、さらにはガラス材の温度が少なくとも軟化点以下となるまで冷却する工程とにおいては、少なくともガスの噴出を継続し、ガラス原料12、溶融ガラスまたはガラス材と成形面10aとが接触することを抑制することが好ましい。
【0018】
なお、本実施形態では、レーザー光を照射することによりガラス原料12を加熱融解させる例について説明する。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、雰囲気加熱等によりガラス原料12を加熱融解させてもよい。
【0019】
ところで、ガラス原料12は、一般的には、特許文献1にも記載されているように、原料バッチ粉末をプレス成形したタブレットの焼結体により構成されている。しかしながら、本発明者は、鋭意研究の結果、原料バッチ粉末をプレス成形したタブレットの焼結体によりガラス原料を構成した場合は、製造されるガラス材中に結晶が生じやすいことを見出した。また、本発明者は、その一因が、プレス成形工程やタブレットの焼結工程等においてガラス原料に不純物が混入することにあることを発見した。
【0020】
そこで、本実施形態では、ガラス原料12として、原料バッチ粉末を用いる。すなわち、原料バッチ粉末を成形面10a上で浮遊させ、溶融することにより溶融ガラスを得る。ここで、原料バッチ粉末とは、例えば、金属酸化物粉末等のガラスの原料となる粉末を、所望のガラス組成が得られるように調合した後に混合することにより得られた粉末のことをいう。原料バッチ粉末をガラス原料12として用いることにより、ガラス原料12に不純物が混入することを抑制することができる。従って、製造されるガラス材に結晶が含まれることを抑制でき、結晶が含まれない均質なガラス材を製造することができる。なお、原料バッチ粉末は顆粒状であっても構わない。
【0021】
ガラス原料12として原料バッチ粉末を用いるため、本実施形態のように、多孔質体により構成された成形型10を用いることがより好ましい。そうすることにより、ガラス原料12を好適に浮遊させることができる。また、ガラス原料12を構成している原料バッチ粉末の粒子径は、成形型10のガス噴出孔の直径よりも大きいことが好ましい。この場合、ガス噴出孔中にガラス原料12が侵入し、ガス噴出孔が目詰まりすることを抑制することができる。
【0022】
また、安定してガラス原料12を浮遊させる観点から、原料バッチ粉末の少なくとも一部を加熱融解、凝固させた後、浮遊させるようにしてもよい。具体的には、原料バッチ粉末を成形面10a上に配置し、レーザー光照射装置13からレーザー光を原料バッチ粉末に照射して、原料バッチ粉末の少なくとも一部を加熱融解、凝固させることにより塊状にした後、成形面10aに開口しているガス噴出孔からガスを噴出させることにより、成形面10a上で浮遊させてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1:ガラス材の製造装置
10:成形型
10a:成形面
11:ガス供給機構
12:ガラス原料塊
13:レーザー光照射装置
図1