特許第6112000号(P6112000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6112000微粒子分級装置における分級部故障診断装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6112000
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】微粒子分級装置における分級部故障診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20170403BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20170403BHJP
   G01N 27/60 20060101ALI20170403BHJP
   G01N 1/02 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G01N15/02 F
   G01N15/06 D
   G01N27/60 C
   G01N1/02 K
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-252081(P2013-252081)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108578(P2015-108578A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩史
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−119094(JP,A)
【文献】 特開2013−213763(JP,A)
【文献】 特表2011−506954(JP,A)
【文献】 米国特許第05214386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00
G01N 27/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料吸込み口から吸引したガスを帯電させる荷電部と、前記荷電部により帯電させられたガスが流れる流路を構成する内面のうちの一つの面に配置された少なくとも1つの吸引電極と、前記内面のうちの他の面上に前記吸引電極に対向して配置され、前記吸引電極との間に前記流路を流れるガス中の帯電粒子を前記吸引電極側に引き付ける電界を発生させる分級電極と、を備えた微粒子分級装置における前記分級電極が正常であるか否かを判定する分級部故障診断装置であって、
前記吸引電極に接続されて電荷量を検出する検流回路と、
前記分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げるとともに、前記分級電極への電源供給のオン/オフを切り換える分級電源供給制御部と、
前記検流回路の出力信号を取り込み、前記分級電極への電源供給のオン/オフ切換えにおけるその出力信号変化の大きさがしきい値以上であるか否かにより前記分級電極が正常であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が使用する前記しきい値を保持し、保持したしきい値を前記判定部に供給するしきい値保持部と、
を備えた分級部故障診断装置。
【請求項2】
前記判定部による判定結果を表示する表示部をさらに備えている請求項1に記載の分級部故障診断装置。
【請求項3】
試料吸込み口から吸引したガスを帯電させる荷電部と、前記荷電部により帯電させられたガスが流れる流路を構成する内面のうちの一つの面に配置された少なくとも1つの吸引電極と、前記内面のうちの他の面上に前記吸引電極に対向して配置され、前記吸引電極との間に前記流路を流れるガス中の帯電粒子を前記吸引電極側に引き付ける電界を発生させる分級電極と、を備えた微粒子分級装置における前記分級電極が正常であるか否かを判定する分級部故障診断装置であって、
前記吸引電極に接続されて電荷量を検出する検流回路と、
前記分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げるとともに、前記分級電極への電源供給のオン/オフを切り換える分級電源供給制御部と、
前記検流回路に接続され前記検流回路の出力信号を表示する表示装置と、を備えた分級部故障診断装置。
【請求項4】
前記試料吸込み口に配置され、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタをさらに備えており、
前記測定電極は前記流路を流れるガスの流れに沿って複数個が配置されており、前記判定部が出力信号を取り込む前記検流回路は、前記流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極につながる検流回路である請求項1から3のいずれか一項に記載の分級部故障診断装置。
【請求項5】
試料吸込み口から吸引したガスを帯電させる荷電部と、前記荷電部により帯電させられたガスが流れる流路を構成する内面のうちの一つの面に配置された少なくとも1つの吸引電極と、前記内面のうちの他の面上に前記吸引電極に対向して配置され、前記吸引電極との間に前記流路を流れるガス中の帯電粒子を前記吸引電極側に引き付ける電界を発生させる分級電極と、を備えた微粒子分級装置における前記分級電極が正常であるか否かを判定する分級部故障診断方法であって、
前記吸引電極に電荷量を検出する検流回路を接続し、
(S1)前記分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げるステップ、
(S2)その後、前記分級電極への電源供給のオン/オフを切り換えるステップ、及び
(S3)前記検流回路の出力信号に基づき、前記分級電極への電源供給のオン/オフ切換えにおけるその出力信号変化の大きさに基づいて前記分級電極が正常であるか否かを判定するステップ、
を含む分級部故障診断方法。
【請求項6】
この分級部故障診断方法を実施する際に、前記試料吸込み口に、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタを設け、
前記測定電極として前記流路を流れるガスの流れに沿って複数個が配置されている場合は、前記流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極につながる検流回路の出力信号に基づいて前記ステップS3の判定を行う請求項5に記載の分級部故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車排ガス中のナノ微粒子濃度のモニタリング、ビル衛生管理、労働安全衛生などで使用するのに適する微粒子測定装置、特に微粒子を粒径に応じて分級して測定する微粒子分級測定装置など、電界により微粒子を分級する装置に関し、特に分級電界のための電圧を印加する分級電極が正常であるか否かを診断するための装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルオーダーの微粒子径の微粒子に対して、微粒子サイズの分級を行う分級機構をもつ測定装置として微分型電気移動度分析装置(DMA)又は積分型電気移動度分析装置が知られている。分級機構としては、分級部側壁面から試料ガスを導入し、同じく分級部側壁面から所望の粒径に分離された微粒子を含むガスを吸いだすものが用いられている(特許文献1〜5、非特許文献1、2参照。)。
【0003】
DMAによる分級においてはシースガス流に対し垂直に分級電界を印加し、それにより惹起される静電吸引力によって帯電微粒子がシースガス流を横断し、対向電極へ移動する過程において粒径に依存した抵抗をシースガス流から受けることで微粒子を分級するものである。
【0004】
一対の電極間に分級電圧を印加し、それにより発生する分級電界によって帯電微粒子を粒子サイズに基づいて分級する原理を利用した分級装置は、DMAに限らず、広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0162173号
【特許文献2】米国特許第6,230,572号
【特許文献3】米国特許第6,828,794号
【特許文献4】米国特許第6,230,572号
【特許文献5】米国特許第6,787,763号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chen, D-R, D.Y.H. Pui, D. Hummes, H. Fissan, F.R. Quant, and G.J. Sem, [1998], "Design and Evaluation of a Nanometer Aerosol Differential Mobility Analyzer (Nano-DMA), Journal of Aerosol Science 29/5:497-509.
【非特許文献2】Fissan, H.J., C. Helsper, and H.J. Thielen [1983], "Determination of Particle Size Distribution by Means of an Electrostatic Classifier." Journal of Aerosol Science, 14:354.
【非特許文献3】粉体工学会誌,Vol.22, No.4, pp.231 - 244 (1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分級電極により分級電圧を印加しそれにより発生する分級電界によって帯電微粒子を粒子サイズに基づいて分級するには、所定の分級電圧が安定して印加されなければならない。分級電極は電圧を印加するために、分級装置を構成するボディとは絶縁されている。ボディは通常は金属からなり、接地されている。
【0008】
しかし、使用中に分級電極とボディの間に試料ガス中の汚れが付着したり結露が生じたりして、分級電極とボディの間の絶縁が低下すると、分級電極に所定の電圧を印加できなくなり、所望の分級機能を発揮できなくなる。分級電極に電圧を印加する電源装置の出力電圧をモニタすることは行われているが、電源装置の出力電圧が一定であっても分級電極とボディの間の絶縁状態が低下すると分極電圧は低下してしまうので、電源装置の出力電圧で分級電極とボディの間の絶縁状態を正しく判断することはできない。
【0009】
分級電極に所定の電圧が印加されているか否かは、分級電極にかかっている電圧を直接測定すればわかる。しかし、分級電圧は高圧、例えば数kV、であるため、正確に測定しようとすれば、正しく校正された分圧抵抗を用いて電圧を測定するなど、装置コストを押し上げる要因になる。
【0010】
本発明は、分級装置の分級電圧を測定しなくても所定の分級電圧が印加されているかどうかを判定することのできる装置と方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象とする微粒子分級装置は、試料吸込み口から吸引したガスを帯電させる荷電部と、前記荷電部により帯電させられたガスが流れる流路を構成する内面のうちの一つの面に配置された少なくとも1つの吸引電極と、前記内面のうちの他の面上に前記吸引電極に対向して配置され、前記吸引電極との間に前記流路を流れるガス中の帯電粒子を前記吸引電極側に引き付ける電界を発生させる分級電極と、を備えたものである。
【0012】
本発明は、そのような微粒子分級装置おける分級電極が正常であるか否かを判定する分級部故障診断装置である。吸引電極に吸引された帯電粒子の電荷量を検出するために、吸引電極に検流回路が接続されている。故障診断用の電圧印加のために、分級電源供給制御部が設けられている。分級電源供給制御部は分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げ、その後、分級電極への電源供給のオン/オフを切り換える。その一定電圧とは、分級部故障診断に必要な程度に帯電微粒子を測定電極に引き付けることができる大きさの分級電圧である。
【0013】
第1の実施形態は、分級部故障診断を自動的に行うように構成されたものであって、分級電極が正常であるか否かを判定するために判定部が設けられている。判定部は、検流回路の出力信号を取り込み、分級電極への電源供給のオン/オフ切換えにおけるその出力信号変化の大きさがしきい値以上であるか否かにより分級電極が正常であるか否かを判定する。判定部が使用するしきい値はしきい値保持部に保持されており、判定部はしきい値保持部に保持されているしきい値を取り込んで分級電極が正常であるか否かを判定する。
【0014】
第1の実施形態の分級部故障診断装置では、分級電極が正常であるか否かの判定結果がこの微粒子分級装置を使用している操作者に容易にわかるようにするために、判定部による判定結果を表示する表示部をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
第2の実施形態は、分級部故障診断を作業者が行うように構成されたものである。第2の実施形態は第1の実施形態における判定部を必要としない。検流回路と分級電源供給制御部を備えている点は第1の実施形態と同じであるが、第2の実施形態は、検流回路に接続され検流回路の出力信号を表示する表示装置を備えている。作業者は、その表示装置に表示された検流回路の出力信号変化の大きさがしきい値以上であるか否かにより分級電極が正常であるか否かを判定する。
【0016】
第3の実施形態は、第1、第2の実施形態をともに実現できるものであり、判定部と表示装置の両方を備えている。
【0017】
好ましい形態では、試料吸込み口に配置され、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタをさらに備えている。試料吸込み口から吸引されるガス中の粒子濃度は時間的に変化するが、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタを介してガスを吸引することにより、試料ガスが吸引されてもそのガス中の粒子濃度は0となり、時間的な変化を抑えることができる。ガスフィルタ透過後のガスを帯電させガスイオンとする非常に微小なガスイオンを測定するために、測定電極として流路を流れるガスの流れに沿って複数個が配置されている場合には、判定部が出力信号を取り込む検流回路として、流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極につながる検流回路を使用することが好ましい。
【0018】
分級部故障診断装置は、分級電極が正常であるか否かの判定結果がこの微粒子分級装置を使用している操作者に容易にわかるようにするために、判定部による判定結果を表示する表示部をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
本発明の分級部故障診断方法は、微粒子分級装置の測定電極に電荷量を検出する検流回路を接続した状態で、以下のステップ(S1)〜(S3)を行う。
(S1)分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げるステップ、
(S2)その後、分級電極への電源供給のオン/オフを切り換えるステップ、及び
(S3)検流回路の出力信号に基づき、分級電極への電源供給のオン/オフ切換えにおけるその出力信号変化の大きさに基づいて分級電極が正常であるか否かを判定するステップ。
【0020】
この分級部故障診断方法のプロセスは、分級装置の専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータなどのコンピュータのCPUにより自動的に行うようにすることができる。その際、この分級部故障診断方法を定期的に自動で起動するようにプログラムを組んでおいてもよく、又は測定開始前などに操作者が随時、起動するようにしてもよい。また、この分級部故障診断方法は操作者が手動で行うこともできる。
【0021】
この分級部故障診断方法を実施する際に、微粒子分級装置の試料吸込み口に、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタを設けることが好ましい。この分級部故障診断方法のプロセスを自動で行うようにした場合には、ガスフィルタの着脱もCPUからの命令により自動で行うようにしてもよく、又はガスフィルタの着脱を手動でおこなって、そのことをコンピュータに入力するようにしてもよい。微粒子分級装置の試料吸込み口にガスフィルタを設ける形態では、測定電極として流路を流れるガスの流れに沿って複数個が配置されている場合は、流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極につながる検流回路の出力信号に基づいて分級部故障診断方法を実施することが好ましい。これは、ガスフィルタを透過したガスはほぼ全ての粒子成分が除去された状態となっているので、帯電されたごく微細なガスイオンはガスの流れの最も上流側にある測定電極に引き付けられるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、分級電極への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げ、分級電極への電源供給のオン/オフを切り換え、そのときの測定電極につながる検流回路の出力信号変化の大きさに基づいて分級電極が正常であるか否かを判定するようにしたので、分級電圧を直接測定しなくても分級電極の故障の有無を診断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の分級部故障診断装置が適用される分級測定装置の一例を示す概略斜視図である。
図2】一実施例を他の分級測定装置とともに示す概略構成図である。
図3】同分級測定装置における概略平面断面図である。
図4】同分級測定装置の流路に沿った断面図である。
図5】本発明の分級部故障診断装置が適用されるさらに他の分級測定装置を示す概略斜視図である。
図6】一実施例の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
微粒子分級装置の一例としての微粒子分級測定装置の一例を図1に概略的に示す。流路10は入口12と出口14に開口をもち、流れ方向も流路幅方向もともに断面が長方形の扁平な形状になっている。その流路の寸法、形状は、特に限定されるものではないが、例えば縦(高さ)4mm、横(流路幅)250mm、奥行き(流路長さ)450mmの扁平な直方体である。
【0025】
流路10の出口14側には試料吸引用に送風機構としてのファン15が配置されている。ファン15を回転させるモータ16は駆動回路17により駆動される。ファン15の試料ガス吸入側には流量調整弁18として手動のバタフライ弁が設けられており、流量調整弁18を調節することにより試料ガス流量を変化させることができるようになっている。ファン15は流路10の幅全体にわたって均一に吸引し、流路10の入口12から試料ガスを吸入する。ファン15は、吸入された試料ガスが流路10内を層流となって流れる条件で駆動される。層流となる条件はレイノルズが概ね2000以下となる条件である。
【0026】
流路10の出口側にはファン15の下流に流路を流れる試料ガス流量を測定する流量計19が設けられている。流量計19は流路10の入口側と出口側のいずれに配置してもよいが、試料ガス中の粒子が流量計19にも付着するため出口側に配置する方が好ましい。
【0027】
流路10の入口付近には試料ガス中の微粒子を帯電させる帯電器が配置されている。この実施例では、帯電器は単極荷電の様式をとるように構成されている。帯電器は流路10を挟んで一方の側に取り付けられたワイヤー状の放電電極20と、それらの放電電極20に対向して流路10の他方の側に配置された対向電極22とからなる。放電電極20と対向電極22との間で放電を起こさせるように、放電電極20には荷電電源21が接続されている。放電電極20の形状はワイヤー状のものに限らず、対向電極22に垂直に取り付けられた1又は複数の針であってもよい。後述する図2の実施例で示されるような、流路10のガスの流れに垂直に設けられた、中心に開口をもつ対向電極と、その対向電極の開口の中心に針の先端が対向するように配置された放電電極とからなるものであってもよい。帯電器は放電電極と対向電極との間で放電できるものであれば特にその構造は限定されない。
【0028】
流路10の幅広の対向する一対の底面(実施例では天井面と下底面)は互いに平行で、同じ広さをもっている。その一方の底面である下底面上には、流路方向に沿って入口12から互いに異なる距離の位置に複数の吸引電極24,26が配置されている。吸引電極24,26は流路方向に沿ってそれぞれ所定の電極幅をもち、互いに電気的に分離されている。吸引電極24,26には測定電極24−1〜24−n(測定電極24−1〜24−nの符号は包括的に単に「24」とのみ表示されることもある。検流回路28についても同様である。)とトラップ電極26が含まれる。各測定電極24−1〜24−nには測定電極に到達した微粒子がもつ電荷量を検出するためにそれぞれの検流回路28−1〜28−nが接続されている。測定電極24−1〜24−nは互いに近接して配置することもでき、図示の実施例のように測定電極間に隙間をもって配置することもできる。トラップ電極26には検流回路は接続されていないが、極微小粒径を測定したい場合はここに検流回路を接続してもよい。隣接する吸引電極間には絶縁部材が挟まれて、又は空気層を介して電極間が互いに電気的に分離されている。それらの絶縁部材は電極間を電気的に分離することができればよいので、厚くする必要はなく、例えば0.5mm程度でよいが、もちろんこの厚みは、絶縁部材の体積抵抗率に依存する。
【0029】
流路10の幅広の対向する一対の底面の他方の底面である天井面には、吸引電極24,26に対向して分級電極30が配置されている。分級電極30は吸引電極24,26との間に流路10を流れる試料ガス中の帯電微粒子を吸引電極側に引き付ける電界を発生させるものである。この電界が流路10を流れる試料ガスの流れの方向に対して垂直又はほぼ垂直になるように、分級電極30の面積と吸引電極24、26の合計面積がほぼ等しくなり、空間的にも正面どうしで対向していることが好ましい。そのため、吸引電極24、26は互いに電気的には分離されているが、隣接する吸引電極24、26の隙間は少ない方が好ましい。吸引電極24、26は到達した帯電微粒子の電荷量が測定される測定電極24のみで構成してもよいが、この実施例のように、帯電微粒子は到達するが測定電極としては使用されないトラップ電極26を含んでいてもよい。トラップ電極26を含んでいる場合には、流路10を流れる試料ガスの流れの方向に対して垂直方向又はほぼ垂直方向の電界を作用させるためには、トラップ電極26にも測定電極24と同じ電位が与えられる。トラップ電極26と測定電極24の電位にはグランド電位を含む。
【0030】
この実施例において、測定電極24のうちの流路の入口にもっとも近い第1の測定電極24−1より入口側に1つのトラップ電極26が配置され、そのトラップ電極26の入口側の先端位置と、分級電極30の入口側の先端位置は、流路方向の同じ位置になるように位置決めされており、その位置が分級領域の基点となっている。以後の説明において、測定電極24の位置と幅の特定は、この分級領域の基点からの距離として表示される。分級電極30と吸引電極24,26の間が分級領域となっている。流路の入口から分級領域の基点までの距離を助走距離と呼ぶ。助走距離では帯電微粒子は分級領域に達していないので、分級電界の影響を受けずに試料ガスの流れに乗って移動する。
【0031】
この実施例において、測定電極24−1〜24−nとトラップ電極26は同電位とされ、分級電極30との間に流路を流れる試料ガスの流れに対し垂直方向又はほぼ垂直方向の電界が形成される。分級電極30には分級電圧を印加するための分級電源32が接続されており、分級電源32からの電圧印加により、分級電極30と吸引電極24,26の間に試料ガス中の帯電微粒子が吸引電極側に吸引される方向の電界が形成される。例えば、フィルタを設けて粒子成分を除去した後のガスイオンにより動作確認する場合に、ガスイオンとして正の電荷をもったものにて動作確認したいときは分級電極30の電圧が正の電圧となり吸引電極24,26を接地電位とする。逆にガスイオンとして負の電荷をもったものにて動作確認したいときは分級電極30の電圧が負の電圧となるように、分級電源32から分級電極30に電圧印加を行う。
【0032】
分級電源32は測定時と分級部故障診断時とでは印加電圧値が異なるように、出力電圧を変化させることができるようになっている。流路10の寸法にもよるが、通常測定時の分級電源32への印加電圧値は数kV、例えばこの実施例では1〜4kV、一般には絶縁破壊が起きない範囲の電圧をかけることができる。分級部故障診断時の分級電源32への印加電圧値は数V、例えば3〜10Vとなるように切り換えられる。
【0033】
通常測定時は分級電源32から分級電極30に対して一定電圧が連続して供給される。一方、分級部故障診断時は分級電源32から分級電極30に対して測定時よりも低い一定電圧の供給がオン/オフと切り換えて供給される。
【0034】
例えば、対向電極22を接地電位として放電電極20を正側にして単極放電を行うと試料ガス中の微粒子は正の単極荷電をもつので、吸引電極の測定電極24−1〜24−nとトラップ電極26を接地電位として分級電極30を正側にする。
【0035】
この実施例において、帯電器を作動させ、分級電界を作用させた状態でファン16を作動させると、試料ガスが流路10の入口から導入され、試料ガスは帯電器の放電によって荷電される。分級電極30と吸引電極24、26の間には分級電界がかけられているので、荷電された試料ガスは流れに沿って分級電界中に送られる。帯電器で荷電された試料ガスは、分級電界が存在するところまでは試料ガスの流れの方向に移動し、分級電界に到達すると試料ガス流れ方向に移動しながら分級電界によって吸引電極24、26の方向に移動を始める。
【0036】
荷電されたイオンは分級部の電界中で、試料ガスの流れに沿って排気側に流されながら、吸引電極に向かって移動する。小さな微粒子は入口に近い吸引電極により多く捕捉される。しかし、吸引電極に近い位置、すなわち流路の下底面側の位置、で吸い込まれた大きな微粒子も入り口に近い吸引電極に捕捉される。吸引電極のうち、測定電極24−1〜24−nに到達した微粒子の電荷がそれぞれの測定電極24−1〜24−nに接続された検流回路28−1〜28−nによって検出される。
【0037】
図2から図5により微粒子分級装置の他の例に一実施例の分級部故障診断装置を適用した実施例の具体的な構造を示す。図4は流路に沿った断面図を表わしている。
【0038】
流路10は扁平な直方体をなし、その入口12と出口14にはそれぞれ試料ガスの流れを平行流にするために整流抵抗11a、11bが配置されている。整流抵抗11a、11bは試料が流路幅方向に均一に分散するような流路抵抗になるように設定されている。流路につながる試料導入口13aと排出口13bは流れの断面積が流路10よりも小さくなっているが、整流抵抗11a、11bによって流路10での試料ガスの流れは流路幅にわたって均一な平行流となる。
【0039】
流路10の出口14につながる排出口13bには送風機構としてブロア40が接続され、ブロア40の上流に風量センサ42が配置されている。流路10を流れる試料ガス流量を調整して一定にするための流量調整弁18が風量センサ42とブロア40の間に配置されている。流量調整弁18は風量センサ42による検出風量が試料ガスを層流にするように予め定められた一定量になるように調整する。流量調整弁18は手動で調整することもでき、風量センサ42の信号に基づいてフィードバック制御するように構成することもできる。
【0040】
試料導入口13aに試料ガスを導入するために試料吸込み口12がある。分級部故障診断方法を実施する際には、試料吸込み口12に、吸引するガス中の粒子成分を除去するガスフィルタ50を設けることできるように、試料吸込み12口にはフィルタ取付け部(図示略)が設けられている。ガスフィルタ50は、HEPAフィルタ、ULPAフィルタなどが適当である。そのようなガスフィルタ50の例としてアドバンテック東洋製CCGシリーズがある。フィルタ取付け部にはガスフィルタ50が取り付けられたことを検知するマイクロスイッチなどのセンサを設け、そのセンサの出力信号をコンピュータ100に取り込むようにしてもよい。そのようなセンサが設けられていない場合は、ガスフィルタ50が取り付けられたことをコンピュータ100に入力するようにしてもよい。ガスフィルタ50の着脱をコンピュータ100のCPUからの命令により自動で行うようにすることができる。また、ガスフィルタ50の着脱を手動で行なうようにすることもできる。
【0041】
試料吸込み口12と試料導入口13aの間にはインパクタ13と帯電部が配置されている。インパクタ13は、流路を遮る板の中央にノズルが開けられ、そのノズルの下流にノズルに対向して捕集板が配置された構造をもっている。ノズルから噴出するエアロゾルの慣性衝突を利用してエアロゾル中の大きい側の微粒子を捕集板に採取して除去し、小さい側の微粒子を通過させる装置である。
【0042】
帯電部は放電電極20aと対向電極22aとからなり、インパクタ13と試料導入口13aの間に配置されている。放電電極20aは針状の形状をもち、対向電極22aは流路を遮る電極板からなり、その中央に開口をもっている。放電電極20aの先端が対向電極22aの開口の中央に向けて配置されている。対向電極22aは接地されている。放電電極20aに荷電電源21から荷電用の電圧が印加される。放電電極20aに正電圧が印加されるとこの荷電部は試料ガス中の微粒子を正に帯電させ、放電電極20aに負電圧が印加されるとこの荷電部は試料ガス中の微粒子を負に帯電させる。放電電極20aと対向電極22aの構造はこれに限定されるものではない。
【0043】
所望のイオン濃度や荷電の極性などに応じて放電電極20aに印加する電圧を調整するために、荷電電源21には荷電電圧調整器23aが接続されており、荷電電源21の出力電圧と電流を表示するための荷電電流・電圧モニタ装置23bが荷電電源21に接続されている。
【0044】
流路10の下底面上には、流路方向に沿って入口12から互いに異なる距離の位置に上流側から順にトラップ電極26及び6枚の測定電極24−1〜24−6が配置されている。測定電極24−1〜24−6は互いに近接して配置され、隣接する測定電極間に隙間をもって配置されている。トラップ電極26及び各測定電極24−1〜24−6には、流路方向に対して中央の位置にスタッド46が溶接されている。スタッド46はトラップ電極26及び測定電極24−1〜24−6について流路幅方向に沿って3個ずつ設けられている。各スタッド25はこの測定装置のベース基板48に開けられた穴に嵌め込まれていることによりトラップ電極26及び測定電極24−1〜24−6の流路方向の位置決めがなされている。
【0045】
測定電極24−1〜24−6のスタッド46のうち、流路幅方向の中央に配置されたものは検出した電流を取り出すための端子を兼ねており、それらのスタッド46はそれぞれの検流回路28−1〜28−6に接続されている。検流回路28−1〜28−6は増幅回路(アンプ)を備えている。検流回路28−1〜28−6はここでは全ての測定電極に設けられているが、電流値を検出しようとする測定電極のみに接続してもよい。トラップ電極26のスタッド46には検流回路は接続されておらず、接地されている。トラップ電極26及び各測定電極24−1〜24−6に対向して、流路10の天井面には1つの分級電極30が配置されている。トラップ電極26の入口12側の位置と分級電極30の入口12側の位置とが一致しており、測定電極24−6と分級電極30出口14側の位置が一致している。
【0046】
検流回路28−1〜28−6は分級のための計算を行うためにコンピュータ(図示略)に接続されている。通常測定時においては、検流回路28−1〜28−6の検出信号は、流路10を流れる試料ガス中の帯電粒子が分級されて測定電極24−1〜24−6に吸引され結果を反映しているので、それらの検出信号に基づいて分級測定を行うことができる。
【0047】
本発明は通常測定が目的ではなく、分級電極が正常であるか否かを診断するのが目的であるので、手動でもその診断をできるように、検流回路28−1〜28−6には表示装置としてそれぞれの電流モニタ装置29−1〜29−6が接続されており、検流回路28−1〜28−6の検出電流値が表示されるようになっている。電流モニタ装置29−1〜29−6の少なくとも1つ、好ましくは最も上流側に配置された測定電極24−1に接続された検流回路28−1の電流モニタ装置29−1は、操作者が分級部の故障診断を行う際に利用することができる。
【0048】
この微粒子分級装置おいて、分級電極が正常であるか否かを自動で判定する分級部故障診断装置は、検流回路28−1〜28−6のいずれか、分級電源供給制御部102、判定部104及びしきい値保持部106を含んでいる。分級電源供給制御部102及び判定部104は分級装置の専用コンピュータ又はパーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータのCPUとブログラムにより実現されるものであり、しきい値保持部106はそのコンピュータのメモリ装置により実現される。
【0049】
分級部故障診断装置を構成する検流回路としては、検流回路28−1〜28−6のうち、もっとも微小な粒子の電荷量を検出できる検流回路28−1の検出電流を使用する。検流回路28−1は検流回路28−1〜28−6のうちで流路のガスの流れに対して最も上流側に配置された測定電極24−1に接続された検流回路である。
【0050】
分級電源供給制御部102は、分級電極30への供給電圧を通常測定時の電圧よりも低い診断用の一定電圧に下げるとともに、分級電極30への電源供給のオン/オフを切り換えるように構成されている。分級電極30への供給電圧を変化させることができるように、分級電源32には分級電源供給制御部102が接続されており、分級電源供給制御部102は分級電源32から分級電極30への供給電圧を変化させる。分級電極30への供給電圧を診断用の一定電圧に下げた後、分級電源供給制御部102は分級電源32に命令を出して分級電極30への電源供給のオン/オフを切り換える。
【0051】
判定部104は、検流回路28−1の出力信号を取り込み、しきい値保持部106からしきい値を取り込み、分級電極30への電源供給のオン/オフ切換えにおける検流回路28−1の出力信号変化の大きさがそのしきい値以上であれば分級電極30とボディ11との間の絶縁が正常に保たれていると判定し、そうでなければが分級電極30とボディ11との間の絶縁が低下していると判定する。
【0052】
分級部故障診断を手動によってもできるように、分級電源供給制御部102は手動によっても分級電源32から分級電極30への供給電圧を変化させることができるように構成されており、分級電源32は手動によっても分級電極30への電源供給のオン/オフを切り換えることができるように構成されている。
【0053】
好ましい実施例として、試料吸込み口12にガスフィルタ50を配置することができるようになっている。ガスフィルタ50は、吸引するガス中の濃度変化する粒子成分を除去する。そのため、試料吸込み口12から試料ガスを吸引しながら、濃度変化する粒子成分が除去された後のガスを用いて、帯電したガスイオンを用いて分級部故障診断を行うことができるようになる。その場合、測定電極として流路を流れるガスの流れに沿って複数個26−1〜26−6が配置されている場合には、判定部104が出力信号を取り込む検流回路として、流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極26−1につながる検流回路28−1を使用することが好ましい。検流回路28−1には微細な帯電粒子が取り込まれる。
【0054】
分級電極が正常であるか否かの判定結果がこの微粒子分級装置を使用している操作者に容易にわかるようにするために、判定部104による判定結果を表示する表示部108が設けられている。表示部108は、例えば、液晶表示装置、表示する色により判定結果を識別できるランプなどが好ましい。
【0055】
流路10を流れるガスの流れや検流回路は温度と相対湿度の影響も受ける。そのため、流路10を一定温度に保ち、相対湿度が高くならないようにするために、流路10のボディ11にはヒーター60と温度センサの温度検出端62が設けられている。ボディ11は熱伝導性のよい金属製であり、ヒーター60はボディ11全体が均一な温度になるような形態で設けられている。ヒーター60への通電は温度検出端62が検出する温度が所定の温度になるように、温度調節器64を介してフィードバック制御される。温度調節器64には温度モニタ装置66が接続されており、ボディ11の温度が表示される。
【0056】
図5は本発明の分級部故障診断装置が適用される微粒子分級装置のさらに他の例を概略的に示したものである。図1の微粒子分級装置と相違する点は、分級電極30に対向する吸引電極は測定電極24aとトラップ電極26aだけであるという点であり、他の構成は同じである。図1の実施例の構成部分と同じ部分は同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
分級電極30に対向する吸引電極は、1つの測定電極24aと、流路の試料ガスの流れの方向に対して測定電極24aよりも上流側、すなわち流路10の入口側、に配置されたトラップ電極26aとからなる。図1の実施例と同様に、分級電極30の流路入口側の先端位置とトラップ電極26aの流路入口側の先端位置が流路入口から同じ距離の位置に位置決めされており、その先端位置が分級領域の基点となり、流路入口から分級領域の基点までの距離が助走距離である。
【0058】
測定電極24aとトラップ電極26aは同電位とされ、測定電極24aには検流回路28aが接続され、トラップ電極26aには検流回路は接続されていない点も図1の実施例と同様である。
【0059】
流路入口から導入された試料ガスに含まれる微粒子は、放電電極20aの放電によって荷電される。分級電極30とトラップ電極26a、測定電極24a間には分級用の電界がかけられており、荷電された微粒子は試料ガス流れに沿ってこの分級電界中に送られる。
【0060】
荷電された微粒子は分級部の電界中で、試料ガスの流れに沿って排気側に流されながら、トラップ電極26a及び測定電極24aに向かって移動する。非常に小さな微粒子と、非常に大きな微粒子は入口側のトラップ電極26aに捕捉され、特定粒径範囲の微粒子だけが測定電極24aに到達し、その電荷が測定電極24aに接続された検流回路28aによって検出される。
【0061】
分級部故障診断装置は検流回路28aの出力電流を取り込み、その電流値に基づいて分級電極30の故障の有無を診断する。分級部故障診断装置の構成は図2に示されたものと同じである。
【0062】
分級部故障診断を行うプロセスを図6に示す。このプロセスはコンピュータ100により自動的に行う場合も、操作者が電流モニタ装置19−1の表示をみて判断する場合も含んでいる。
【0063】
まず、分級部故障診断装置が自動で診断動作を実行する場合を述べる。分級電源供給制御部102は、試料吸込み口12にフィルタ50が装着されていることをセンサ出力により、又は操作者によるコンピュータ100への入力による認識すると、分級電源供給制御部102から分級電顕32を介して分級電極30への供給電圧を通常測定時の電圧(数kV)よりも低い診断用の一定電圧(例えば、5V)に下げる。診断用の一定電圧は微細な帯電粒子が流路を流れるガスの流れの最も上流側にある測定電極26−1に取り込まれるには十分な大きさの電界を発生できる分級電圧である。そのような診断用の一定電圧は分級電源供給制御部102に設定しておく。
【0064】
分級電極30への供給電圧の低下後、分級電源供給制御部102は分級電極30への電源供給のオン/オフを切り換える。分級電極30とボディ11との間の絶縁が正常に保たれておれば、分級電極30への電源供給をオンからオフに切り換えると、電源供給のオン時に検流回路28−1に流れていた電流がなくなるので、その変化が大きいのに対し、分級電極30とボディ11との間の絶縁が正常に保たれていなければ、分級電極30への電源供給がオンのときも検流回路28−1に所定の電流が流れていないので、分級電極30への電源供給をオンからオフに切り換えてもその電流値の変化は小さい。分級電極30への電源供給のオンからオフへの切り換えに伴う電流値の変化の大きさをしきい値と比較し、しきいち値以上であれば分級電極30は正常であると判定し、そうでなければ故障と判定し、それぞれを表示部108に表示する。
【0065】
この動作を手動で行う場合は、試料吸込み口12にフィルタ50が装着されていることを目視で確認し、分級電極30への供給電圧を手動で下げ、その後、分級電極30への電源供給のオン/オフを手動で切り換える。その結果に基づく検流回路28−1の電流値の変化が所定の値よりも大きいか否かを電流モニタ装置29−1により目視で判断する。
【0066】
本発明の分級部故障診断装置と方法が適用される微粒子分級装置は、実施例に示したものに限定されない。たとえば、流路は、実施例では流路の流れ方向に対して垂直方向の断面形状が横方向に扁平な形状であるが、流路の断面形状を実施例のものから90度回転させた縦方向に扁平な形状のものとしてもよい。また、流路は、実施例に示したような断面が方形のものに限らず、円形のものや、吸引側電極(測定電極とトラップ電極)と分級電極を2重円筒状に互いに対向するように配した構造でもよい。一対の電極間に分級電圧を印加し、それにより発生する分級電界によって帯電微粒子を粒子サイズに基づいて分級する原理を利用した分級装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 流路
12 試料吸込み口
20,20a 放電電極
22,22a 対向電極
24−1〜24−n 測定電極
28−1〜28−n,28a 検流回路
29−1〜29−6 電流モニタ装置
30 分級電極
32 分級電源
50 ガスフィルタ
100 コンピュータ
102 分級電源供給制御部
104 判定部
106 しきい値保持部
108 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6