(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機溶媒が、クロロ炭化水素系溶媒、フッ素含有分岐アルコール系溶媒、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である請求項13記載の方法。
有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、トルエン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、およびブチルカルビトールアセテートからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項13記載の方法。
ポリα−アミノ酸含有インキを基板上に塗布する工程が、ポリα−アミノ酸含有インキを基板上に印刷する工程であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項記載の方法。
有機溶媒が、クロロ炭化水素系溶媒、フッ素含有分岐アルコール系溶媒、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である請求項22記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、トルエン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、およびブチルカルビトールアセテートからなる群から選択される1種または2種以上である請求項22記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
ポリα−アミノ酸が、式(IV)の単位からなるホモポリマーか、或いは、式(IV)の単位と、式(I)の単位とを含むコポリマーである、請求項22〜24のいずれか1項に記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
当該インキ中にp−トルエンスルホン酸を含まないか、または当該インキ中のp−トルエンスルホン酸の濃度が0.5重量%以下である請求項22〜30のいずれか1項記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、様々な溶媒に溶解させることができ、製膜性が良好であり、かつ、安定してメモリ性を発現するポリα-アミノ酸を提供すること、成形・加工性に優れ、さらに高温度下に曝しても動作安定性に優れた、強誘電体メモリ素子、該強誘電体メモリ素子を用いるタグ及びポリα-アミノ酸を有するインキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリαアミノ酸は様々な溶媒に溶解させることができ、かつ均一な膜厚の薄膜を容易に形成することができ、しかも、その薄膜を強誘電体層に用いた強誘電体メモリ素子は極めて高い耐熱性を有するものになることを見出した。なお、特許文献2、3において、その薄膜を用いて実際に強誘電体メモリ素子が作製されているのは数種のα−アミノ酸のホモポリマーのみであり、本発明の特定のポリα−アミノ酸からなる薄膜のメモリ性については記載も示唆もされていない。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 強誘電体層を有する強誘電体メモリ素子において、当該強誘電体層が、式(I):
【化1】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(II):
【化2】
(式中、R
2は炭素数が3〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
1と同一となることはない。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位、または、式(III):
【化3】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)
で表されるアラニン、フェニルアラニンもしくはN−置換リジンの単位とを含み、
式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位との含有量比((I)/(II)または(I)/(III))がモル比で10/90〜90/10のコポリマーであるポリα−アミノ酸を含有することを特徴とする、強誘電体メモリ素子。
[2] 式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基であり、式(II)中のR
2が炭素数が6〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくは炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基で置換された炭素数が1〜6のアルキル基であり、式(III)中のR
3がメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはベンジルオキシカルボニル基を表す。)である、請求項1記載の強誘電体メモリ素子。
[3] ポリα−アミノ酸が式(I)の単位と式(II)の単位を含むコポリマーである上記[1]または[2]に記載の強誘電体メモリ素子。
[4] ポリα−アミノ酸が、式:−COOR
1(式中、R
1は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物と、式:−COOR
2(式中、R
2は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物を重合して得られたものである、上記[3]に記載の強誘電体メモリ素子。
[5] 強誘電体層を有する強誘電体メモリ素子において、当該強誘電体層が、式(IV):
【化4】
(式中、R
4は炭素数が1〜12のアルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基、または、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位からなるホモポリマーか、或いは、該式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、式(I):
【化5】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位とを含み、式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が40モル%以上のコポリマーであるポリα−アミノ酸を含有することを特徴とする、強誘電体メモリ素子。
[6] ポリα−アミノ酸が式(I)の単位と式(IV)の単位を含むコポリマーであって、式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基であり、コポリマーにおける式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が80モル%以上である、上記[5]記載の強誘電体メモリ素子。
[7] ポリα−アミノ酸が、式:−COOR
5(式中、R
5は、
【化6】
(式中のR
4、lおよびmは前記と同義である。)を示す。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物を重合するか、或いは、当該N−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物と、式:−COOR
1(式中、R
1は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物とを重合して得られたものである、上記[5]または[6]記載の強誘電体メモリ素子。
[8] ポリα−アミノ酸の数平均分子量が2,000〜50,000である、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の強誘電体メモリ素子。
[9] 100℃においてメモリ性を示すことを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の強誘電体メモリ素子。
[10] 強誘電体メモリ素子がトランジスタ型である、上記[1]〜[9]のいずれか1つに記載の強誘電体メモリ素子。
[11] 基板上に、強誘電体層、ゲート電極、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を有する強誘電体メモリ素子である、上記[1]〜[10]のいずれか1つに記載の強誘電体メモリ素子。
[12] 半導体層上にソース電極及びドレイン電極が配置された強誘電体メモリ素子である、上記[11]記載の強誘電体メモリ素子。
[13] 上記[1]〜[12]のいずれか1つに記載の強誘電体メモリ素子を有するタグ。
[14] 強誘電体メモリ素子の製造方法であって、
(A−1)式(I):
【化7】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(II):
【化8】
(式中、R
2は炭素数が3〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
1と同一となることはない。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位、または、式(III):
【化9】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)
で表されるアラニン、フェニルアラニンもしくはN−置換リジンの単位とを含み、
式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位との含有量比((I)/(II)または(I)/(III))がモル比で10/90〜90/10のコポリマーであるポリα−アミノ酸、
(A−2)式(IV):
【化10】
(式中、R
4は炭素数が1〜12のアルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基、または、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位からなるホモポリマー、或いは、該式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、式(I):
【化11】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位とを含み、式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が40モル%以上のコポリマーであるポリα−アミノ酸
からなる群から選択される1種以上のポリα−アミノ酸を有機溶媒に溶解させ、ポリα−アミノ酸含有インキを調製する工程:
当該ポリα−アミノ酸含有インキを基板上に塗布する工程;および
塗布したポリα−アミノ酸含有インキを乾燥する工程
を含む方法。
[15] 有機溶媒が、クロロ炭化水素系溶媒、フッ素含有分岐アルコール系溶媒、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である上記[14]に記載の方法。
[16] 有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、トルエン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、およびブチルカルビトールアセテートからなる群から選択される1種または2種以上である上記[14]に記載の方法。
[17] ポリα−アミノ酸含有インキを基板上に塗布する工程が、ポリα−アミノ酸含有インキを基板上に印刷する工程であることを特徴とする上記[14]〜[16]のいずれか1つに記載の方法。
[18] 式(I):
【化12】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(II):
【化13】
(式中、R
2は水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
1と同一となることはない。)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位、または、式(III):
【化14】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)
で表されるアラニン、フェニルアラニンもしくはN−置換リジンの単位とを含み、
式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位との含有量比((I)/(II)または(I)/(III))がモル比で10/90〜90/10のコポリマーであるポリα−アミノ酸。
[19] 式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基であり、式(II)中のR
2が水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、で置換された炭素数が1〜6のアルキル基であり、式(III)中のR
3がメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはベンジルオキシカルボニル基を表す。)である、上記[18]記載のポリα−アミノ酸。
[20] 式(IV):
【化15】
(式中、R
4は水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(I):
【化16】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位とを含むコポリマーであって、式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が40モル%以上のコポリマーであるポリα−アミノ酸。
[21] ポリα−アミノ酸が式(I)の単位と式(IV)の単位を含むコポリマーであって、式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基であり、コポリマーにおける式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が80モル%以上である、上記[20]記載のポリα−アミノ酸。
[22] 100℃においてメモリ性を示すことを特徴とする、上記[18]〜[21]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸。
[23] (A-1)式(I):
【化17】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(II):
【化18】
(式中、R
2は炭素数が3〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
1と同一となることはない。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位、または、式(III):
【化19】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)
で表されるアラニン、フェニルアラニンもしくはN−置換リジンの単位とを含み、
式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位との含有量比((I)/(II)または(I)/(III))がモル比で10/90〜90/10のコポリマーであるポリα−アミノ酸、
(A−2)式(IV):
【化20】
(式中、R
4は炭素数が1〜12のアルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基、または、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位からなるホモポリマーで、或いは、該式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、式(I):
【化21】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位とを含み、式(IV)で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位の含有量が40モル%以上のコポリマーであるポリα−アミノ酸
からなる群から選ばれる1種または2種以上のポリα−アミノ酸;および
(B)有機溶媒
を含有するポリα−アミノ酸含有インキ。
[24] 有機溶媒が、クロロ炭化水素系溶媒、フッ素含有分岐アルコール系溶媒、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である上記[23]に記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[25] 有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、トルエン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、およびブチルカルビトールアセテートからなる群から選択される1種または2種以上である上記[23]に記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[26] ポリα−アミノ酸が式(I)の単位と式(II)の単位を含むコポリマーである、上記[23]〜[25]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[27] ポリα−アミノ酸が、式:−COOR
1(式中、R
1は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物と、式:−COOR
2(式中、R
2は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物を重合して得られたものである、上記[26]に記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[28] ポリα−アミノ酸が、式(IV)の単位からなるホモポリマーか、或いは、式(IV)の単位と、式(I)の単位とを含むコポリマーである、上記[23]〜[25]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[29] ポリα−アミノ酸が、式:−COOR
5(式中、R
5は、
【化22】
(式中のR
4、lおよびmは前記と同義である。)を示す。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物を重合するか、或いは、当該N−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物と、式:−COOR
1(式中、R
1は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物とを重合して得られたものである、上記[28]に記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[30] ポリα−アミノ酸の数平均分子量が2,000〜50,000である、上記[23]〜[29]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[31] 当該インキ中のポリα−アミノ酸の濃度が、1〜20重量%である上記[23]〜[30]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
[32] 当該インキ中にp−トルエンスルホン酸を含まないか、または当該インキ中のp−トルエンスルホン酸の濃度が0.5重量%以下である、上記[23]〜[31]のいずれか1つに記載のポリα−アミノ酸含有インキ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、成形・加工性に優れ、さらに高温度に曝しても動作安定性に優れた強誘電体メモリ素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本明細書において、強誘電体メモリとは、Ferroelectric Memoryとも言い、電圧を加えることによって物質内の自発分極の方向を変化させ、電圧をかけなくてもその分極方向を持続させることのできる強誘電体を利用するメモリをいう。強誘電体メモリ素子とは、強誘電体メモリに使用される素子(強誘電体メモリを構成する電子部品)であり、少なくとも、基板、電極および強誘電体層(ferroelectric layer)を有する。
本発明においてメモリ性とは、強誘電体メモリ素子に電圧を印加したときの電流−電圧特性(伝達特性)において特異的なヒステリシスを示すことを指す。
伝達特性とは、ドレイン電極とソース電極間を流れる電流Idsとゲート電圧Vgの関係を示した電流−電圧特性を指す。
ON/OFF比とは、伝達特性を測定した際のソースとドレイン間に流れる電流Idsの最大値をON値、最小値をOFF値としたときのON値とOFF値の比を指す。
高温度での動作安定性とは、高温度においてもメモリ性を示すことであり、また、別の側面では、室温で示すメモリ性が高温度に曝されても維持され得ることを指す。
【0014】
[ポリα−アミノ酸]
本発明に使用する第1態様のポリα−アミノ酸(A−1)は、
式(I):
【化21】
(式中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位と、
式(II):
【化22】
(式中、R
2は炭素数が3〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
1と同一となることはない。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位、または、式(III):
【化23】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基、−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)
で表されるアラニン、フェニルアラニンもしくはN−置換リジンの単位とを含むコポリマーである。
【0015】
該コポリマーにおいて、式(I)〜式(III)の単位は、それぞれ、式中の置換基が異なる2種以上の単位を含んでいてもよいが、式中の置換基が同一の単一の単位であることが好ましい。また、式(I)の単位及び式(II)の単位を構成するグルタミン酸−γ−エステル、式(III)の単位を構成するアラニン、フェニルアラニン、N−置換リジンはいずれもL体でも、D体でもよいが、好ましくは、L体である。
【0016】
式(I)中、R
1は炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基を表す。好ましくは、式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基を表す。
【0017】
「炭素数が1〜8のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−エチルブチル基、4−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、6−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、3−エチルヘプチル基、4−プロピルヘプチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、4,4−ジプロピルブチル基、2−メチル−3−エチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基などが挙げられる。なかでも、炭素数が1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソプロピル基がより好ましく、炭素数が1〜2のメチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。上記のアルキル基の水素原子の一部または全部は置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基等で置換されたアルキル基が挙げられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでもフッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0018】
「ハロゲン原子もしくはアルコキシ基、またはニトロ基で置換されてもよいベンジル基」における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでもフッ素原子、臭素原子または塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素数が1〜6のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、およびメチレンジオキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基n−プロポキシ基、またはメチレンジオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。
【0019】
「ハロゲン原子もしくはアルコキシ基、またはニトロ基で置換されてもよいベンジル基」としては、例えば、p−ブロモベンジル基、p−クロロベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−メトキシベンジル基、2,6−ジメトキシベンジル基、3,4−メチレンジオキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル基、ベンジル基が挙げられる。なかでも、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ベンジル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0020】
式(I)の単位における置換基R
1を炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基とするか、ハロゲン原子、アルコキシ基、もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基とするかは特に限定されないが、高いON/OFF比の強誘電体メモリ素子が得られる点から、炭素数が1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基とすることが好ましく、炭素数が1〜8の非置換のアルキル基とすることがより好ましく、炭素数が1〜6の非置換のアルキル基とすることがより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0021】
式(II)の単位において、置換基R
2における、炭素数が3〜16の非置換のアルキル基は、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、3−エチルブチル基、4−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、6−エチルヘキシル基、4−プロピルヘキシル基、5−プロピルヘキシル基、6−プロピルヘキシル基、5−ブチルヘキシル基、6−ブチルへキシル基、6−ペンチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、3−エチルヘプチル基、4−プロピルヘプチル基、5−ブチルヘプチル基、6−ペンチルヘプチル基、7−ヘキシルヘプチル基、2−メチルオクチル基、3−エチルオクチル基、4−プロピルオクチル基、5−ブチルオクチル基、6−ペンチルオクチル基、7−ヘキシルオクチル基、8−ヘプチルオクチル基、2−メチルノニル基、3−エチルノニル基、4−プロピルノニル基、5−ブチルノニル基、6−ペンチルノニル基、7−ヘキシルノニル基、8−ヘプチルノニル基、2−メチルデシル基、2−メチルウンデシル基、2−メチルドデシル基、2−メチルトリデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルペンタデシル基、3,3−ジエチルプロピル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、4,4−ジプロピルブチル基、2−メチル−3−エチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基、2−メチル−3−プロピルヘキシル基などが挙げられ、なかでも、直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数が3〜12の直鎖状アルキル基(すなわち、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等)がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基またはn−ドデシル基がさらに好ましい。
【0022】
また、置換基R
2における、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)、もしくはフェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)で置換された炭素数が1〜6のアルキル基における、「炭素数が1〜6のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−エチルブチル基などが挙げられる。なかでも、炭素数が1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、より好ましくは炭素数が1〜2のメチル基、エチル基である。
【0023】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでもフッ素原子、臭素原子、または塩素原子が好ましい。
「炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、好ましくは飽和炭化水素基であり、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキシルシクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基などが挙げられ、中でも、炭素数が6〜8のシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基が好ましく、より好ましくは、シクロヘキシル基、ノルボルニル基であり、さらに好ましくは、ノルボルニル基である。
「炭素数が1〜6のアルコキシ基」は、直鎖状または分岐状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−メトキシエトキシ基、n−エトキシエトキシ基、n−メトキシエトキシエトキシ基およびn−エトキシエトキシエトキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基またはn−プロポキシ基であり、より好ましくはエトキシ基である。
フェニル基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)としては、フェニル基、p−フルオロフェニル基、p−クロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−プロポキシフェニル基、p−ブトキシフェニル基、p−ペンチルオキシフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、p−エトキシメトキシフェニル基、p−エトキシエトキシフェニル基、p−メトキシエトキシフェニル基がなど挙げられ、より好ましくはフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、p−エトキシエトキシフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基、p−メトキシフェニル基である。
フェニルアルコキシ基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)としては、ベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、ベンジルオキシエトキシ基、ベンジルオキシエトキシエトキシ基、フェニルエトキシエトキシ基、フェニルエトキシプロポキシ基、フェニルプロポキシエトキシ基、フェニルプロポキシプロポキシ基、p−フルオロベンジルオキシ基、3,5−ジフルオロベンジルオキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基、3,5−ジメトキシベンジルオキシ基などが挙げられ、好ましくはベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、p−フルオロベンジルオキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基であり、さらに好ましくはベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基である。
フェニルアルキルカルバメート基(水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよい)としては、ベンジルカルバメート基、p−フルオロベンジルカルバメート基、3,5−ジフルオロベンジルカルバメート基、p−メトキシベンジルカルバメート基、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート基、p−メトキシベンジルカルバメート基、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート基、フェニルエチルカルバメート基、フェニルプロピルカルバメート基が挙げられ、好ましくはベンジルカルバメート基である。
【0024】
置換基R
2の好ましい例としては、炭素数3〜12の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子、塩素原子、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、エトキシ基、もしくはシアノ基で置換された炭素数が1〜6の置換アルキル基が挙げられる。置換基R
2の特に好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等が挙げられる。
【0025】
式(III)の単位は、アラニン、フェニルアラニンまたはN−置換リジンの単位であり、これらの中でも、N−置換リジンの単位(置換基R
3が−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはハロゲン原子もしくはアルコキシ基で置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはアルキルオキシカルボニル基を表す。)の単位)が好ましい。Xはより好ましくは、2−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、または9−フルオレニルメトキシカルボニル基であり、さらにより好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基である。
【0026】
当該コポリマーのより限定された特定の一態様は、式(I)中のR
1がメチル基またはベンジル基であり、式(II)中のR
2が炭素数が6〜16の非置換のアルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくは炭素数が3〜12の脂環式炭化水素基で置換された炭素数が1〜6のアルキル基であり、式(III)中のR
3がメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(基中、Xはベンジルオキシカルボニル基を表す。)である、コポリマーである。
【0027】
コポリマー中の、式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位との含有量比((I)/(II)または(I)/(III))は優れた耐熱性を示すポリマーを得るためには、モル比で10/90〜90/10が好ましい。
【0028】
コポリマーが式(I)の単位と式(II)の単位とからなるコポリマーの場合、コポリマー中の、式(I)の単位と、式(II)の単位との含有量比((I)/(II))はモル比で10/90〜90/10が好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、15/85〜80/20がより好ましく、15/85〜60/40がより好ましく、30/70〜60/40がより好ましく、30/70〜50/50がより好ましい。
【0029】
コポリマーが式(I)の単位と式(III)の単位とからなるコポリマーの場合、コポリマー中の、式(I)の単位と、式(III)の単位との含有量比((I)/(III))はモル比で10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、40/60〜60/40が更に好ましい。
【0030】
コポリマーの重合形態は、式(I)の単位と、式(II)の単位または式(III)の単位とが、ランダムに存在するランダムコポリマーであっても、式(I)の単位からなるブロックと、式(II)の単位または式(III)の単位からなるブロックとを含むブロックコポリマーであってもよいが、ランダムコポリマーが好ましい。
【0031】
コポリマーの分子量は特に限定されないが、分子間相互作用が適切に制御されてメモリ性を発現し、製膜に適したものを得るためには、重量平均分子量(Mw)が1,000〜500,000が好ましく、5,000〜300,000がより好ましく、10,000〜200,000がさらに好ましい。
数平均分子量(Mn)は2,000〜50,000が好ましく、2,500〜45,000がより好ましい。なお、コポリマーが式(I)の単位と式(II)の単位とからなるコポリマーの場合、数平均分子量(Mn)が3,000〜40,000が特に好ましく、コポリマーが式(I)の単位と式(III)の単位とからなるコポリマーの場合、数平均分子量(Mn)が3,500〜45,000が特に好ましい。
【0032】
かかる第1態様のポリα−アミノ酸の調製方法は特に限定されない。式(I)と式(II)の単位とからなるコポリマーの場合、例えば、式:−COOR
1(式中、R
1は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(すなわち、下記の式(V)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(V))と、式:−COOR
2(式中、R
2は前記と同義である。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(すなわち、下記の式(VI)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(VI))とを任意の割合で有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて直接重合する方法(直接合成法)をあげることができる。
【0037】
また、別の調製方法として、N−カルボキシ−α−グルタミン酸無水物を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて、重合させ、ポリα−グルタミン酸を調製した後、式:R
1−OH(式中、R
1は前記と同義)で表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、所定のグルタミン酸単位のγ位にエステル基(−COOR
1)を導入し、さらに式:R
2−OH(式中、R
2は前記と同義)表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、残りのグルタミン酸単位のγ位にエステル基(−COOR
2)を導入することで調製するか、或いは、上記の式(V)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(V)または式(VI)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(VI)を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて重合させ、ポリα−グルタミン酸−γ−エステルを調製した後、式:R
2−OH(式中、R
2は前記と同義)表されるアルコールまたは式:R
1−OH(式中、R
1は前記と同義)で表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、γ位のエステル基(−COOR
1または−COOR
2)をエステル基(−COOR
2または−COOR
1)に変換することで調製する方法(エステル交換法)を挙げることができる。安定して、メモリ性を示すポリα−アミノ酸を得るためには、直接重合する方法で調製することが好ましい。
【0038】
一方、式(I)と式(III)の単位とからなるコポリマーの場合、N−カルボキシ−α−グルタミン酸無水物またはN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(上記のN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(V))と、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物またはN−カルボキシ−α−アミノ酸誘導体無水物を適宜混合して有機溶剤または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて共重合する方法をあげることができる。
【0039】
ここで、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物またはN−カルボキシ−α−アミノ酸誘導体無水物はアラニン、フェニルアラニン、N−置換リジンの無水物であり、N
ε−ベンジルオキシカルボニルリジン無水物がより好ましい。
【0040】
前記有機溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、石油エーテル、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロアセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等を挙げることができる。有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記重合開始剤の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、イソホロンジアミン等の一級ジアミン;メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン等の一級モノアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルコールアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の二級アミン;N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級三級ジアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン;ポリエーテルジアミン、ポリエステルジアミン等のアミノ基含有ポリマー;メタノール、エタノール等の一級アルコール;イソプロパノール等の二級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール類;ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等の水酸基含有ポリマー;チオール類等を挙げることができる。重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、シアン化カリウム、二酸化炭素、チタン(IV)テトライソプロポキシド、1,3−置換型テトラアルキルジスタンノキサンスズ(IV)錯体、テトラシアノエチレン、4−ジメチルアミノピリジン、ジフェニルアンモニウムトリフラート−トリメチルシリルクロリドなどを挙げることができる。触媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。効率および取扱いのしやすさの観点で、好ましくは、p−トルエンスルホン酸である。
【0043】
触媒量は、反応により適宜設定されるが一般には、適切な反応時間を実現し、反応後の触媒除去が困難とならない範囲で適宜選択することができ、例えば、使用するアミノ酸無水物のモル数に対して0.0001〜1当量、好ましくは0.01〜0.75当量、より好ましくは0.1〜0.5当量とすることができる。一方、安定して、メモリ性を示すポリα−アミノ酸を得るためには、重合後、残留する触媒を実質的に含まないことが好ましい。
【0044】
原料となるアルコールの量は、反応により適宜設定されるが一般には、側鎖の変換が十分に行われ、未反応アルコールの除去が困難とならない範囲で適宜選択することができ、例えば、ポリα−アミノ酸のグルタミン酸単位に対して0.01〜50当量、好ましくは0.1〜25当量、より好ましくは0.15〜20当量とすることができる。
【0045】
本明細書において、「γ−エステル−グルタミン酸」、「グルタミン酸−γ−エステル」および「γ−エステル−グルタメート」は同義である。
【0046】
本発明で使用する第1態様のポリα−アミノ酸の特に好適な具体例としては以下のものが挙げられる。
式(I)の単位と式(II)の単位とからなるコポリマーとしては、例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−プロピル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−オクチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ノニル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2,2,2−トリフルオロエチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−エトキシエチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−6−クロロヘキシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−シクロヘキシルエチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−((S)−3−メチル−1−ペンチル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−シアノエチル−L−グルタミン酸共重合体などが好ましい。
【0047】
より限定された態様として、γ−メチル−L−グルタミン酸(15〜85モル%)/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸(15〜85モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−ドデシル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−ドデシル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(30〜70モル%)/γ−2,2,2−トリフルオロエチル−L−グルタミン酸(30〜70モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体が挙げられる。
【0048】
式(I)の単位と式(III)の単位とからなるコポリマーとしては、例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/L−フェニルアラニン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/L−フェニルアラニン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/L−アラニン共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン−γ−メチル−L−グルタミン酸ブロック共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体が好ましい。
【0049】
より限定された態様として、γ−メチル−L−グルタミン酸(20〜80モル%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(20〜80モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(40〜60モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−フェニルアラニン(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−フェニルアラニン(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−アラニン(40〜60モル%)共重合体が挙げられる。
【0050】
本発明で使用する第2態様のポリα−アミノ酸(A−2)は、
式(IV):
【0052】
(式中、R
4は炭素数が1〜12のアルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基、または、アルキルの炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるグルタミン酸−γ−エステル単位からなるホモポリマーであるか、或いは、該式(IV)のグルタミン酸−γ−エステル単位と前記の式(I)の単位とからなるコポリマーである。
【0053】
式(IV)単位と式(I)の単位とからなるコポリマーの場合、高い耐熱性を実現させるためには、式(IV)の単位の含有量はコポリマー全体の40モル%以上である。式(IV)の単位の含有量は45モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに一層好ましく、85モル%以上が殊更好ましく、90モル%以上が最も好ましい。
【0054】
コポリマーの場合、その重合形態は、式(IV)の単位と、式(I)の単位とが、ランダムに存在するランダムコポリマーであっても、式(IV)の単位からなるブロックと、式(I)の単位からなるブロックとを含むブロックコポリマーであってもよいが、ランダムコポリマーが好ましい。
【0055】
式(IV)中のR
4における炭素数が1〜12のアルコキシ基は、直鎖状または分岐状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、tert−オクチルオキシ基などが挙げられる。なかでも、炭素数が1〜6の、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピル基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが好ましい。
【0056】
また、R
4における水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基は、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。かかるハロゲン置換アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロジメチルエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロブチル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロペンチル基、トリフルオロヘプチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロノニル基、トリフルオロデシル基、トリフルオロウンデシル基、トリフルオロドデシル基、ペンタフルオロペンチル基、ヘプタフルオロペンチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘキシル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ヘンイコサフルオロウンデシル基、ヘプタデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサフルオロデシル基、ヘンイコサフルオロドデシル基、トリクロロメチル基、トリクロロエチル基、トリブロモメチル基、トリブロモエチル基、トリヨードメチル基、トリヨードエチル基等が挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基が好ましい。
【0057】
また、R
4における、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基は、直鎖状または分岐状であり、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソヘキシルカルボニル、3−メチルペンチルカルボニル、n−ヘプチルカルボニル、n−オクチルカルボニル、n−ノニルカルボニル、n−デシルカルボニル、n−ウンデシルカルボニル、n−ドデシルカルボニル等を挙げることができる。なかでも、アルキル基の炭素数が3〜9である、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソヘキシルカルボニル、n−ヘプチルカルボニル、n−オクチルカルボニルなどが好ましい。
【0058】
式(IV)中のlは6〜12の整数、好ましくは6〜10の整数を表す。また、mは1〜3の整数、好ましくは1または2を表し、mが2または3の場合、2個または3個のR
4は同一でも、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0059】
コポリマーのより限定された特定の一態様は、式(IV)中のR
4が炭素数が1〜12のアルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数が1〜12のアルキル基、または、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルカルボニル基である、コポリマーである。
【0060】
かかる第2態様のポリα−アミノ酸の調製方法は特に限定されない。
式(IV)のグルタミン酸−γ−エステル単位からなるホモポリマーの場合、例えば、式:−COOR
5(式中、R
5は、
【0061】
【化27】
(式中のR
4、lおよびmは前記と同義である。)を示す。)で表されるエステル基を導入したN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(すなわち、下記の式(VII)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(VII))を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて直接重合する方法(直接合成法)をあげることができる。
【0064】
【化29】
(式中のR
4、lおよびmは前記と同義である。)を示す。)
【0065】
また、式(IV)のグルタミン酸−γ−エステル単位と前記の式(I)の単位とからなるコポリマーの場合、例えば、上記の式(VII)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(VII)と、前記の式(V)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(V)を任意の割合で有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて直接重合する方法(直接合成法)をあげることができる。
【0066】
また、別の調製方法として、N−カルボキシ−α−グルタミン酸無水物を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて、重合させ、ポリα−グルタミン酸を調製した後、式:R
5−OH(式中、R
5は前記と同義)で表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、所定のグルタミン酸単位のγ位にエステル結合含有基(−COOR
5)を導入し、さらに式:R
1−OH(式中、R
1は前記と同義)表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、残りのグルタミン酸単位のγ位にエステル基(−COOR
1)を導入することで調製するか、或いは、上記の式(VII)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(VII)または上記の式(V)で表されるN−カルボキシ−α−グルタミン酸−γ−エステル無水物(V)を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要量の重合開始剤を加えて重合させ、ポリα−グルタミン酸−γ−エステルを調製した後、式:R
1−OH(式中、R
1は前記と同義)で表されるアルコールまたは式:R
5−OH(式中、R
5は前記と同義)表されるアルコールを適量加え、必要量の触媒を加えて、γ位のエステル基(−COOR
5または−COOR
1)をエステル基(−COOR
1または−COOR
5)に変換することで調製する方法(エステル交換法)を挙げることができる。安定して、メモリ性を示すポリα−アミノ酸を得るためには、直接重合する方法で調製することが好ましい。
【0067】
なお、第2態様のポリα−アミノ酸の調製方法において、有機溶媒、重合開始剤、触媒は第1態様のポリα−アミノ酸の調製方法と同様のものを使用することができる。
【0068】
第2態様のポリα−アミノ酸の特に好適な具体例としては以下のものが挙げられる。
例えば、γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−(6−(p−ペンチルカルボニルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ペンチルカルボニルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(10−(p−メトキシフェノキシ)−1−デシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ブトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ヘキシルオキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体等が好ましい。
【0069】
より限定された態様として、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル%)/γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル%)/γ−(6−(p−ヘキサノイルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(0〜16モル%)/γ−(10−(p−メトキシフェノキシ)−1−デシル)−L−グルタミン酸(84〜100モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(0〜8モル%)/γ−(6−(p−ブトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(92〜100モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(0〜14モル%)/γ−(6−(p−ヘキシルオキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(86〜100モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(0〜8モル%)/γ−(6−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(92〜100モル%)共重合体が挙げられる。
【0070】
該第2態様のポリα−アミノ酸の分子量は特に限定されないが、分子間相互作用が適切に制御されてメモリ性を発現し、製膜に適したものを得るためには、重量平均分子量(Mw)が1,000〜500,000が好ましく、5,000〜300,000がより好ましく、10,000〜200,000がさらに好ましい。
【0071】
数平均分子量(Mn)は2,000〜50,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、10,000〜45,000がさらに好ましい。
【0072】
本発明は上記のポリα−アミノ酸を強誘電体層として使用した強誘電体メモリ素子を提供する。
強誘電体メモリ素子には大きく分けて2種類の構成が提案されている。具体的には、強誘電体であるキャパシタとトランジスタを組み合わせる方法(キャパシタ型、または1T1C型)と、電界効果トランジスタを用いる方法(トランジスタ型、または1T型)である。トランジスタ型の強誘電体メモリ素子であることが好ましい。
【0073】
かかるトランジスタ型の強誘電体メモリ素子は、好ましくは、基板上に、強誘電体層、ゲート電極、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を有する形態の素子であり、より好ましくは、基板上に、強誘電体層、ゲート電極、及び半導体層を有し、該半導体層上にソース電極及びドレイン電極が配置された形態の素子である。
【0074】
特に好ましい一具体例の素子として、
図1に示す、基板1上に、ゲート電極2、上記の強誘電体層3および半導体層4が順次積層され、さらに該半導体層4上にソースおよびドレイン電極5が配置された形態の素子が挙げられる。
【0075】
本発明の強誘電体メモリ素子における強誘電体層は、本発明のポリα−アミノ酸を適当な有機溶媒に溶解させたポリマー溶液、すなわち、本発明のポリα−アミノ酸含有インキを調製し、基板上に塗布し、それを乾燥することによって形成することができる。
【0076】
塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、ドロップキャスト法などが簡便には用いられることも可能であるが、パターン制御をするという観点からは、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷技術を用いることが好ましい。また、マイクロコンタクトプリンティング、マイクロモルディングなどのソフトリソグラフィーと呼ばれる印刷法も同様に印刷技術に含まれる。
【0077】
乾燥方法は特に限定されず、放置処理による乾燥、送風乾燥機による乾燥等の種々のものを使用できる。
【0078】
ポリα−アミノ酸含有インキに使用される有機溶媒としては種々のものを使用でき、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのクロロ炭化水素系溶媒、パーフルオロ−tert−ブタノール、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール等のフッ素含有分岐アルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノンなどのアルキルケトン系溶媒、安息香酸メチル、安息香酸エーテル、安息香酸ブチルなどの安息香酸エステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびソルベントナフサなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒、メチルセロソルブアセテート、メトキシプロピルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられる。
有機溶媒は1種の溶媒を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
好ましくは、クロロ炭化水素系溶媒、フッ素含有分岐アルコール系溶媒、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である。
さらに好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、トルエン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、およびブチルカルビトールアセテートからなる群から選択される1種または2種以上である。
【0079】
ポリα−アミノ酸含有インキ中のポリα−アミノ酸の濃度は均一な製膜が達成できれば特に限定されないが、1〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
【0080】
安定してメモリ性を示す強誘電体層を得るために、ポリα−アミノ酸含有インキ中には、ポリα−アミノ酸の合成に使用された触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸等、上述の触媒が挙げられる)が、ポリα−アミノ酸含有インキ中に実質的に含まれないことが好ましい。残留触媒の濃度は6.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下がさらに好ましい。
【0081】
スピンコートの回転数は、特に限定されないが、1,000〜5,000rpmが好ましい。製膜温度は、特に限定されないが、10〜150℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
【0082】
ポリα−アミノ酸からなる強誘電体層の厚さは、300〜1,000nmが好ましく、500〜1,000nmがより好ましい。
【0083】
基板は特に限定されず、石英などのガラス基板、シリコンウェハーなどの半導体基板、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの柔軟性のあるプラスチック基板、紙などが挙げられる。
【0084】
ゲート電極ならびに、ドレイン電極およびソース電極の材料は金や銅などの金属が用いられることが多いが、これに限定されるものではない。その作製法は特に限定されず、いかなる方法を用いても良い。一般に用いられる方法は、メッキ配線などであるが、活版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの溶液から塗布されるあるいは付着される湿式製造プロセスなども適応される。この場合には、銀ペーストの他、チオフェン系導電性ポリマー(PEDOT)やポリアニリンおよびそれらの誘導体などの有機材料による電極をゲート電極ならびに、ドレイン電極およびソース電極として用いることができる。また、真空蒸着法やスパッタリング法など、上記とは異なる乾式製造プロセスを適応することも可能である。また、素子の安定化、長寿命化、高電荷注入効率化などを図るため、ゲート電極を複数の物質の混合物にて形成したり、数種の物質の層状構造にしたり、表面処理を施しておくことも可能である。
【0085】
半導体層には有機半導体材料が用いられる。その組成は、特に限定されず、単一物質で構成されても構わないし、また複数の物質の混合物によって構成されても構わない。さらに、数種の物質の層状構造によって構成することもできる。これまでに優れた特性を示す有機半導体材料としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセンまたはその末端が置換されたこれらの誘導体;α−セクシチオフェン;ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)およびその末端が置換された誘導体;ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)およびその末端が置換された誘導体;銅フタロシアニンおよびその末端がフッ素などで置換された誘導体;銅フタロシアニンの銅がニッケル、酸化チタン、フッ素化アルミニウム等で置換された誘導体およびそれぞれの末端がフッ素などで置換された誘導体;フラーレン、ルブレン、コロネン、アントラジチオフェンおよびそれらの末端が置換された誘導体;ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリアセチレンおよびこれらの末端もしくは側鎖が置換された誘導体のポリマー等が知られており、半導体層に適用される。
【0086】
半導体層の作製法は、特に限定されず、いかなる方法を用いても良い。一般に、真空蒸着などの気相成長法が用いられることが多いが、簡便で低コストでの作製という点からは、スクリーン印刷、インクジェット印刷など、材料を溶媒と混合させ溶液からの塗布などとして作製する印刷手法が適応される。また。マイクロコンタクトプリンティング、マイクロモルディングなどのソフトリソグラフィーと呼ばれる印刷法などを適応することもできる。
【0087】
以上は、トランジスタ型の強誘電体メモリ素子を示したが、ポリα−アミノ酸はキャパシタ型の強誘電体メモリ素子における強誘電体としても使用することができる。
【0088】
本発明の強誘電体メモリ素子における書き込みおよび読み出し動作の制御には従来公知の装置・システムを適用でき、特に限定されない。
【0089】
本発明の強誘電体メモリ素子は、100℃においてメモリ性を示す。すなわち、後述の実施例により明らかなように、100℃以上において良好なメモリ性を示し、特に150℃においても、良好なメモリ性を示し、高温度下に曝しても動作安定性に優れた、強誘電体メモリ素子を実現し得る。かかる高温でのメモリ性は、本発明の強誘電体メモリ素子の利点である。
【0090】
本発明の強誘電体メモリ素子はRFID(Radio Frequency Identification)タグに有用である。
図4は本発明の強誘電体メモリ素子を有するRFIDタグの一実施形態を示す模式図である。タグの形状をもつ基板31上に、基板32が設けられている。この基板32は、アルカリ金属含有量が少ないガラス、石英又はポリカーボネート若しくはポリイミド等のプラスティック材料等の安価な基板である。この基板32上に、受信データ符号化回路41、送信データ復号化回路42、外部とのデータの送受信を行うアンテナ素子43、データを格納しておく強誘電体メモリ素子45及びこれらの動作を制御する制御回路44が一体的に設けられている。
【0091】
図5は本発明の強誘電体メモリ素子を有するRFIDタグの他の実施形態を示す模式図である。このRFIDタグにおいては、基板31上に、単結晶シリコン基板51上に通常のLSIプロセスを経て形成されたICチップと、強誘電体メモリ素子49と、アンテナ素子50とが設けられている。ICチップは、単結晶シリコン基板51上に受信データ符号化回路46、送信データ復号化回路47、及び制御素子48が形成されている。
【0092】
本発明の強誘電体メモリ素子を使用したRFIDタグは、強誘電体メモリ素子が高温度での動作安定性に優れることかから、高信頼性のRFIDタグを実現できる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例と比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0094】
[ポリα−アミノ酸の合成]
合成例1:γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体の合成(エステル交換法)
(ステップ1)ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸(前駆ポリマー)の合成
1,2−ジクロロエタン410ml(関東化学社製)にN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(54.92g、293.45mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(366μl、2.93mmol、関東化学社製)を加え、25℃で1日間攪拌を行い、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸を得た。
【0095】
(ステップ2)ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸の側鎖置換反応(エステル交換反応)
上記で調製したポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸9.3gを1,2−ジクロロエタン45mlに溶解させ、1−ヘキサノール(16ml、130.00mmol、東京化成工業社製)ならびにp−トルエンスルホン酸1水和物(1.24g、6.50mmol、東京化成工業社製)を加え、80℃で1日間攪拌してエステル交換反応を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の組成を測定した。
【0096】
合成例9:γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L-グルタミン酸共重合体の合成(エステル交換法)
(ステップ1)ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(前駆ポリマー)の合成
1,2−ジクロロエタン265ml(関東化学社製)にN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(44.2g、167.98mmol)と開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(208.2μl、1.68mmol)を加え、25℃で3日間攪拌を行い、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸を得た。下記の方法(測定法1)で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを測定した。
(ステップ2)ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸の側鎖置換反応(エステル交換反応)
上記で調製したポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(10g、45.6mmol)を1,2−ジクロロエタン170mlに溶解させ、1−ドデカノール(10.2ml、45.6mmol、東京化成工業社製)ならびにp−トルエンスルホン酸1水和物(2.6g、13.68mmol)を加え、65℃で1日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の組成を測定した。
【0097】
合成例2〜8、10〜24:各種ポリα−アミノ酸の合成
合成例1または9と同様の方法により、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸またはポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸を得た後、1,2−ジクロロエタンに溶解させ、表1(導入アルコールの欄)に示すアルコールをポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸またはポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸のグルタミン酸単位に対して適量加え、触媒量のp−トルエンスルホン酸1水和物を加え、1〜5日間攪拌を行う手順により、各種ポリα−アミノ酸(共重合体)を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の組成を測定した。
【0098】
【表1】
【0099】
合成例25:γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−オクチル−L−グルタミン酸共重合体の合成(直接合成法)
1,2−ジクロロエタン15mlにN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(1.2g,4.21mmol)とN−カルボキシ−γ−オクチル−L−グルタミン酸無水物(0.52g, 2.80mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(17.64μl、0.14mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−オクチル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で組成を測定した。分子量は、重量平均分子量Mwが1.7×10
4、数平均分子量Mnが8.5×10
3であった。組成はγ−メチル−L−グルタミン酸が40モル%、γ−オクチル−L−グルタミン酸が60モル%であった。
【0100】
合成例26:γ−メチル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体の合成
1,2−ジクロロエタン130mlにN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(2.46g、13.12mmol)ならびにN
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(4.02g、13.12mmol)を入れ、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(32.78μl、0.262mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0101】
合成例27〜30:各種コポリマーの合成
合成例26と同様にして、1,2−ジクロロエタンに表2に示す2種のN−カルボキシ−L−アミノ酸無水物(成分A、成分B)を等モルずつ入れ、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンをアミノ酸無水物に対して1/100当量分加え、2〜3日間攪拌を行い、各種ポリアミノ酸共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0102】
合成例31:γ−メチル−L−グルタミン酸(68%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック(32%)共重合体合成
1,2−ジクロロエタン20mlにN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(5.00g、26.72mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(66.80μl、0.534mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行った後、再び0℃まで冷却し、1,2−ジクロロエタン20mlを加えた後、N
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(4.09g、13.36mmol)を添加して、25℃で1日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0103】
合成例32:γ−メチル−L−グルタミン酸(41%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(18%)−γ−メチル−L−グルタミン酸(41%)ブロック共重合体の合成
合成例31と同様にして、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体を得た後、再び0℃まで冷却し、1,2−ジクロロエタン10mlを加えた後、N−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(5.00g、26.72mmol)を添加して、25℃で2日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン−γ−メチル−L−グルタミン酸ブロック共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0104】
合成例33:γ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)ブロック共重合体の合成
1,2−ジクロロエタン10mlにN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(1.00g、3.80mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(9.56μl、0.076mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行った後、再び0℃まで冷却し、N
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(1.16g、3.80mmol)を添加して、25℃で1日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の分子量を測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0105】
【表2】
【0106】
[素子の作製]
上記で合成したポリα−アミノ酸を使用し、以下の素子作製法に基づいて
図1に示す素子を作製した。なお、ポリα−アミノ酸の薄膜(強誘電体層)の形成はスピンコートもしくはディップコートで行った。
(素子作製法)
ゲート電極2としてパターン化されたITO電極(厚み:120±20nm、縦:35mm、横:7mm)を作製したガラス基板1(厚み:1.13mm)を、純水にて5倍に希釈した中性洗剤(井内盛栄堂社製、ピュアソフト)にて15分間超音波洗浄を行い、その後、純水中にて15分間超音波洗浄を行い、洗剤除去を行った。さらにその後、基板を紫外線−オゾン洗浄器を用いて、酸素雰囲気下において20分間紫外線照射洗浄を行った。このように洗浄した基板上に、強誘電体層3として、ポリα−アミノ酸溶液からスピンコートもしくはディップコートでポリマー薄膜を作製した。次に、この上から半導体層4としてペンタセンの薄膜を真空蒸着法で作製した。ペンタセンは、昇華精製を5回繰り返して精製したものを用いた。真空蒸着条件は、基板を蒸着用ボートの上方に固定し、基板温度を23℃に調整し、真空度を1×10
−4Torrにまで減圧し、毎分6nmの速度で50nmの厚さに真空蒸着を行った。ソースおよびドレイン電極5として、金を幅5mm、厚さ50nmのサイズとなるようニッケル製のマスクを利用して真空蒸着した。ソース−ドレイン間の間隔は20μmとした。
【0107】
表3は、強誘電体層3の形成に用いた合成例のポリα−アミノ酸含有インキの溶媒と重合体の濃度、および、スピンコートでの回転数(rpm)を示したものである。
【0108】
【表3】
【0109】
比較例1:ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸を使用した素子の作製
素子作製法において、強誘電体層3としてポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸(PMLG、Mn:2.6×10
4)を1,2−ジクロロエタンに溶解した溶液(2.8%(w/w))を1cm/secの速度でディップコートしてポリマー薄膜を作製し、素子を得た。
【0110】
比較例2:ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸を使用した素子の作製
素子作製法において、強誘電体層3としてポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(シグマアルドリッチ社製、分子量150,000〜350,000)を1,2−ジクロロエタンに溶解した溶液(5.0%(w/w))から、1,000rpmの速度でスピンコートして薄膜を作製し、素子を得た。
【0111】
比較例3:ポリ−L−アルギニンを使用した素子の作製
素子作製法において、強誘電体層3としてポリ−L−アルギニン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製、分子量15,000〜70,000)を超純水に溶解した溶液(10.0%(w/w))から、1,000rpmの速度でスピンコートして薄膜を作製し、素子を得た。
【0112】
[測定・評価]
【0113】
測定法1:重量平均分子量および数平均分子量の測定方法
重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。具体的には、分析カラム装置(昭和電工社製、Shodex K−802ならびにK−806M)をGPC用分析装置(日立社製、LaChrom Elite)に取り付け、別途調製した測定溶液を10〜80μl注入し、溶離液流速:1ml/分、カラム保持温度:40℃の条件にて測定を行った。測定溶液は、ポリアミノ酸濃度が0.25〜3.0%(w/v)となるようにクロロホルムに溶解させた後、フィルター濾過を行うことで調製した。得られたピークの保持時間と別途測定した較正用ポリスチレン(昭和電工社製、Shodex STANDARD SM−105)のピークの保持時間を比較することで、分子量を算出した。
【0114】
測定法2:共重合体の組成測定方法
サンプル十数mgを重クロロホルムもしくは重トリフルオロ酢酸に溶解した後、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1HNMR、BRUKER社、400MHz)を分析し、エステル交換前後もしくは共重合時のアミノ酸のα位のプロトンのピーク面積を比較することで、組成を算出した。測定例を以下に示す。
【0115】
γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体の組成測定例
合成した共重合体10mgを重トリフルオロ酢酸に溶解し、
1HNMRを測定したところ、3.8ppm付近にγ−メチル−L−グルタミン酸のメチル基由来ピークが、また4.7ppm付近にγ−メチル−L−グルタミン酸およびγ−ヘキシル−L−グルタミン酸のα位のプロトンに由来するピークが検出された。3.8ppm付近のピーク面積をA、4.7ppm付近のピーク面積をBとするとA/B=1.17であった。ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸の場合は、A/B=3.00であることから、減少分だけヘキシル基に置換していると考えられる。従って、ヘキシル基の含有率は、1.83/3.00=0.61から61%となる。故に共重合体の組成比は、γ−メチル−L−グルタミン酸(39%)/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸(61%)となる。
【0116】
γ−ベンジル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体の組成測定例
合成した共重合体10mgを重トリフルオロ酢酸に溶解し、
1HNMRを測定したところ、5.1ppm付近にγ−ベンジル−L−グルタミン酸のベンジル基およびN
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンのベンジル基由来ピークが、また4.7ppm付近にγ−ベンジル−L−グルタミン酸、4.4ppm付近にN
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンのα位のプロトンに由来するピークが検出された。5.1ppm、4.7ppm、4.4ppm付近のピーク面積をそれぞれA、B、CとするとA/B=4.00、A/C=4.00、B/C=1.00であった。B、Cはともにプロトン1個分の面積を表しているので、共重合体の組成比はγ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)となる。
【0117】
上記2例に示したとおり、γ−メチル−L−グルタミン酸を含む場合は、メチル基とα位のピーク面積、γ−ベンジル−L−グルタミン酸を含む場合は、ベンジル基とα位のピーク面積を比較することでエステル交換反応の変換率および共重合体の組成を算出することができる。
【0118】
評価法1:メモリ性の評価(1)
作製した素子においてITOゲート電極からゲートバイアスを印加した時に、ソースとドレイン間に流れる電流を測定することでメモリ性を評価した。まず室温において、ソースとドレイン間の電圧Vdsを一定に固定し、ゲート電圧Vgを+20〜+50Vの範囲で印加した。その後Vgを−50〜−20Vまでステップで電圧掃印し、その後連続して+20〜+50Vまで掃印した。電圧ステップ1秒後にソースとドレイン間に流れる電流Idsを測定した。その後、50℃もしくは85℃、100℃、150℃において室温と同様の測定を実施した。Idsの最大値をON値、最小値をOFF値としてIdsのON/OFF比を算出した。メモリ性を以下の基準で評価した。
◎:IdsのON/OFF比が、1.0×10
5以上
○:IdsのON/OFF比が、5.0×10
2以上1.0×10
5未満
△:IdsのON/OFF比が、1.0×10
2以上5.0×10
2未満
×:IdsのON/OFF比が、1.0×10
2未満
【0119】
評価法2:製膜性
作製した素子における膜厚を測定し、膜厚の標準偏差値を求めた。
評価基準は以下の通りである。
◎:標準偏差が30nm未満
○:標準偏差が30nm以上60nm未満
△:標準偏差が60nm以上100nm未満
×:標準偏差が100nm以上
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
本発明の特定のポリα−アミノ酸は、膜厚の均一性の高い薄膜を形成できるものであることがわかった。特許文献2に記載された比較例1のポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸(PMLG)の薄膜を使用した場合、温度を上げるにつれて、ON/OFF比の減少が顕著に見られたが、本発明の特定のポリα−アミノ酸の薄膜を使用した電界効果トランジスタにおいては、高温度下に曝してもON/OFF比の減少は見られなかった(
図2は合成例1のポリマーの電流−電圧特性(伝達特性)、
図3は比較例1のポリマーの電流−電圧特性(伝達特性)を示す。
図2、
図3において、横軸はV
G/V、縦軸はI
DS/Aである。)。尚、
図2、3中の「E−X」の表記は「10
-X」を表す。特に、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体(実施例1、2)は、製膜性およびメモリ性の全てにおいて好ましい結果であった。
【0123】
比較例2は特許文献2に記載された、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(PBLG)の薄膜の評価であり、特許文献2には芳香族置換基同士の静電相互作用のため分極変動に要する外部印加電圧、すなわち情報記録素子の駆動電圧が高くなってしまうことが記載されている。この問題の解決策として特許文献3では、阻害的な静電相互作用の効果を弱めるためにPBLGとPMMAのブレンド化を行っている。しかし、本発明者等の実験ではブレンドで薄膜を作成した際に相分離が生じてしまうため、均一組成の薄膜を形成することができないことがわかった。また、比較例3は特許文献2に記載されたポリ−L−アルギニンの薄膜の評価であり、ON/OFF比が小さい。また、ポリ−L−アルギニンは有機溶媒への溶解性が低いため、そもそもインキ化が困難であった。
【0124】
評価法3:溶媒に対する溶解度の評価
各種溶媒に、合成した化合物を加え室温で攪拌し、溶解性を評価した。
評価基準は以下の通りである。
○:完全に溶解
△:一部可溶
×:不溶
【0125】
【表6】
【0126】
なお、実験に使用した溶媒は以下の通りである。
ジクロロメタン:純正化学社製、特級
シクロヘキサノン:東京化成工業社製
N,N−ジメチルアセトアミド:関東化学社製、鹿特級
安息香酸メチル:関東化学社製、鹿特級
トルエン:純正化学社製、特級
【0127】
本発明のポリアミノ酸は、様々な溶媒に溶解させることが求められる印刷可能な材料としては、使用することができることが明らかとなった。
【0128】
なお、合成例1および9のポリアミノ酸は以下の溶媒を用いても、完全に溶解した。
トリエチレングリコールジメチルエーテル:ナカライテスク社製
メチルエチルケトン:関東化学社製、鹿特級
アセトン:純正化学社製、特級
ブチルカルビトールアセテート:関東化学社製、鹿特級
【0129】
評価法4:メモリ性の評価(2)
エステル交換法(ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸を重合後、オクタノールと酸触媒(p−トルエンスルホン酸)を用いてエステル交換反応を行う)により調製した重合体(合成例6)と、直接重合法(γ−メチル−L−グルタミン酸及びγ−オクチル−L−グルタミン酸のモノマーをそれぞれ調製し、そのモノマーを重合する)により調製した重合体(合成例25)について、1,2−ジクロロエタンに7重量%で溶解させ、ポリアミノ酸含有インクを調製し、当該インキを使用して、4つの素子を一度に作製し、安定してメモリ性を発現するかどうかを評価した。
【0130】
【表7】
【0131】
直接重合法により調製した重合体を用いて作成した実施例15の素子は、エステル交換法で調製した重合体を用いて作成した実施例16の素子よりも、安定してメモリ性を発現したことが明確となった。
【0132】
(インキ化ならびにメモリ素子アレイ化)
γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体をN-メチルピロリドン(関東化学社製、鹿特級)に溶解させ、50wt%の濃度に調製した。回転粘度計(Rheologia A300,エレクエスト社製)を用いてチキソトロピーインデックス(TI)値を算出したところ1.48となり、スクリーン印刷に適応可能なインキ特性を示すことを確認した。調製した溶液をインキとして用いてスクリーン印刷によるパターニングを行ったところ、線幅100μm、線長3mmの精細度でパターンを印刷することに成功した。このインキを用いることでメモリアレイ化が可能である。例えば、ゲート電極、ソース・ドレイン電極として銀インキ(RAFS059、東洋インキ社製)を、強誘電体層として、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体のN−メチルピロリドン溶液(50wt%)を順次スクリーン印刷により重ね合わせることで
図6に示すようなメモリアレイを作製することができる。
【0133】
(トランジスタを組み込んだ共振タグの製造)
ポリエチレンテレフタレート基板に銀インキを用いてアンテナ7を作製後、別途作製したトランジスタ型強誘電体メモリ素子6を直列で配列させることで
図7に示すタグを作製した。
図8に示すように、作製したタグのゲート電圧に−50Vの電圧を印加(書込み)した後、読み出し器にタグをかざすと“1”に相当する周波数で共振することを確認した。次にゲート電圧に+50Vの電圧を印加(消去)した後、読み出し器にタグをかざすと“2”に相当する周波数で共振することを確認した。